特許第5794814号(P5794814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5794814-火花点火式内燃機関 図000002
  • 特許5794814-火花点火式内燃機関 図000003
  • 特許5794814-火花点火式内燃機関 図000004
  • 特許5794814-火花点火式内燃機関 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794814
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】火花点火式内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/01 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   F02P3/01 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-88990(P2011-88990)
(22)【出願日】2011年4月13日
(65)【公開番号】特開2012-219766(P2012-219766A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】尾井 宏朗
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−007157(JP,A)
【文献】 特開2009−036123(JP,A)
【文献】 特表2009−519570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00 − 3/12
7/00 − 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグに接続される点火コイルを介して印加される高電圧により生じる火花放電と、高周波電圧発生手段に接続される中心電極を介して燃焼室内に生成される電界とを反応させてプラズマを生成して、混合気に着火する火花点火式内燃機関であって、
前記高周波電圧発生手段が、一次側に複数の巻線を有する昇圧トランスを備えており、それら複数の一次側巻線にぞれぞれ位相の異なる高周波を印加するものとし、
火花点火式内燃機関の運転状況に応じて、前記複数の一次側巻線のうちの何れかへの高周波の印加を停止することにより、前記高周波電圧発生手段で印加する高周波の波形の間引きを実施する火花点火式内燃機関
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内に生成される電界と点火プラグによる火花放電により生成される生成物とを反応させてプラズマを生成して燃焼を促進する火花点火式内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用の内燃機関では、点火プラグの中心電極と接地電極との間に高電圧を印加し、両電極間のギャップに生成する火花放電により、点火時期毎に燃焼室内の混合気に着火している。このような点火プラグによる着火において例えば、火花エネルギが不足して火炎核ができにくい場合が生じたりする。
【0003】
上記したような火花点火時の不具合を解決するために例えば、特許文献1に記載のものでは、燃焼室内にプラズマを生成し、そのプラズマと火花放電とを反応させることにより、火炎核を確実に生成するようにしている。そしてこの特許文献1のものでは、内燃機関の負荷の変動、特には定常運転状態から定常運転状態に移る際の過渡運転状態に応じて、供給する燃料及び吸入空気量に対応させて、プラズマを生成するための電界の強度を制御する構成である。具体的には、特許文献1では、電界の強度を制御する場合、電界を生成するための電磁波発生装置が出力する電磁波例えばマイクロ波の出力つまり電圧の振幅あるいはその電圧の印加時間を制御するものである。
【0004】
しかしながら、減速の過渡運転となる場合に電磁波の電圧を下げると、プラズマの生成量が少なくなるために、火花放電により生成される生成物であるイオンや電子等が互いに衝突を繰り返しながら移動し得る範囲が狭くなる。これにより、プラズマにより生成した火炎核を中心にした燃焼が狭い範囲でしか拡大しなくなり、結果として燃焼の促進が抑えられることになった。又、電圧の印加時間を短縮すると、上述の生成物が反応する時間が短縮されることになり、十分な燃焼の促進が望めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011‐7157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は以上の点に着目し、プラズマを生成して火花点火を行う内燃機関において、その出力変更の要求に対する応答性を改善することで、燃焼効率の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の火花点火式内燃機関は、点火プラグに接続される点火コイルを介して印加される高電圧により生じる火花放電と、高周波電圧発生手段に接続される中心電極を介して燃焼室内に生成される電界とを反応させてプラズマを生成して、混合気に着火する内燃機関であって、前記高周波電圧発生手段が、一次側に複数の巻線を有する昇圧トランスを備えており、それら複数の一次側巻線にぞれぞれ位相の異なる高周波を印加するものとし、火花点火式内燃機関の運転状況に応じて、前記複数の一次側巻線のうちの何れかへの高周波の印加を停止することにより、前記高周波電圧発生手段で印加する高周波の波形の間引きを実施することを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、高周波電圧発生手段で印加する高周波の波形は、火花点火式内燃機関の運転状況に応じて間引きすることで、燃焼室内に生成される電界の強度が低くなる。したがって、生成されるプラズマも弱くなり、運転状況に応じた点火の際のエネルギを混合気に対して供給することが可能になり、燃焼効率を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上説明したような構成であり、運転状況に応じた点火の際のエネルギを混合気に対して供給することができ、燃焼効率を向上させることができる。しかも、高周波電圧発生手段の作動、停止を繰り返すよりもエネルギ損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態を適用するエンジンの要部を示す断面図。
図2】同実施形態における点火装置の電気回路図。
図3】同実施形態の制御手順を示すフローチャート。
図4】同実施形態の変形例における点火装置の電気回路図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、点火プラグ1を備える火花点火式内燃機関である二気筒のエンジン100の一気筒の構成を示すものである。このエンジン100は、吸気ポート2の開口3及び排気ポート4の開口5が、燃焼室6の天井部分のほぼ中央に取り付けられる点火プラグ1を中心として対向配置されて、1気筒当たりそれぞれ2ヶ所に開口するものである。すなわち、このエンジン100は、シリンダブロック7に取り付けられ、燃焼室6の天井部分を形成しているシリンダヘッド8には、吸気側と排気側とにそれぞれカムシャフト9、10が取り付けてある。シリンダヘッド8の吸気ポート2は、カムシャフト9が回転することにより往復作動する吸気弁11により、また排気ポート4は、カムシャフト10が回転することにより往復作動する排気弁12によりそれぞれ開閉されるものである。そして、燃焼室6の天井部分には、点火プラグ1が取り付けられてあり、吸気ポート2には燃焼室6へ供給する混合気を生成するための燃料噴射弁を備える。なお、エンジン100それ自体は、この分野で知られている火花点火式のものを適用するものであってよい。
【0013】
この実施形態の点火プラグ1は、導電材料からなるハウジング13と、ハウジング13内に絶縁されて取り付けられる中心電極14と、中心電極14から火花放電が発生する間隙14だけ離れてハウジング13の下端に設けられる接地電極15と、イグナイタと点火コイルとが構造上一体にされてなるイグナイタ付点火コイル(以下、点火コイルと称する)21、22が電気的に接続される接続端子17とを基本的に備える。点火プラグ1は、この分野でよく知られたものを用いるものであってよい。
【0014】
点火プラグ1に接続される点火装置20は、図2に示すように、点火プラグ1に接続される点火コイル21と、点火コイル21の二次側巻線21aにカソードが接続されるダイオード22と、昇圧トランス23をその出力段に備えて火花点火時の所定時期に、燃焼室6内、特には点火プラグ1の中心電極14を中心とする領域に電界を生成するための高周波電圧発生装置24とを備えている。高周波電圧発生装置24は、昇圧トランス23と、昇圧トランス23に接続される高周波発生回路25と、高周波電圧を少なくともその波高値だけバイアスするバイアス回路26とを備えている。図中、40は、車体と同電位にされるグランドである。
【0015】
昇圧トランス23は、以下に説明する高周波電圧発生回路25から出力される二種類の高周波を10〜20倍程度に合成して昇圧するとともに、高周波の波形を間引くように機能する。つまり、一次側第一巻線23bと一次側第二巻線23cとに印加される位相が1/2波長異なる高周波を合成することにより、昇圧トランス23は波形の間引きがない高周波を出力するとともに、一次側第二巻線23cに印加する高周波を停止することにより、波形の間引きを行った形態の高周波を出力する。
【0016】
高周波発生回路25は例えば、車両用のバッテリ27の電圧例えば約12V(ボルト)を昇圧回路であるDC‐DCコンバータ28にて300〜500Vに昇圧し、昇圧された直流をHブリッジ回路29にて周波数が約200kHz〜600kHzの交流に変化させる構成である。
【0017】
高周波電圧発生回路25は例えば、車両用のバッテリ27の電圧例えば約12V(ボルト)を昇圧回路であるDC‐DCコンバータ28にて300〜500Vに昇圧し、昇圧された直流をHブリッジ回路29にて周波数が約100kHz〜300kHzの交流に変化させる構成である。この実施形態の高周波電圧発生回路25は、上述した構成により主となる高周波つまり昇圧トランス23の一次側第一巻線23bに印加する高周波(以下、主高周波と称する)を発生させ、その主高周波を1/2波長遅延させる遅延回路(Hブリッジ回路29に内蔵)にて、昇圧トランス23の一次側第二巻線23cに印加する高周波(以下、副高周波と称する)を発生させている。したがって、主高周波と副高周波とは電圧及び周波数が同一である高周波である。又、主高周波及び副高周波は、デューティ比が0.25に設定してある。
【0018】
したがって、高周波電圧発生装置24は、昇圧トランス23により約4kVp‐p〜8kVp‐pに昇圧される、周波数が200kHz〜600kHzでデューティ比が0.25と0.50の高周波を出力するものである。デューティ比の切り替えつまり波形の間引きは、電子制御装置30により制御される。なお、出力する高周波の電圧は、火花放電における誘導放電を維持させるに十分な、言い換えれば誘導放電を減衰させない電圧(以下、維持電圧と称する)以上に設定する。これは、高周波の電圧が維持電圧より小さいと、生成される電界の強度が低くなり、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じたイオンやラジカルが、蛇行しなくなる可能性が生じ、プラズマによる燃焼の促進が低下することを考慮しているためである。
【0019】
バイアス回路26は、DC‐DCコンバータ28の出力電圧を分圧する抵抗26a、26bにより構成される。バイアス回路26は、Hブリッジ回路29の基準電圧側に接続されてHブリッジ回路29から出力される高周波を、その波高値だけバイアスする。具体的には例えば、Hブリッジ回路29から約280Vp‐pの高周波が出力される場合、バイアス回路26は、140Vの負極性の直流電圧を出力する。これにより、昇圧トランス23には、0Vから280Vの間で周期的に変化する負極性の直流電圧(脈流電圧)が入力するものとなる。この結果、昇圧トランス23したがって高周波電圧発生装置24は最小値が0V、最大値が2.8kVで周期的に変化する負極性の、例えば矩形波による直流電圧を出力する。
【0020】
Hブリッジ回路29は、主となる高周波つまり昇圧トランス23の一次側第一巻線23bに印加する高周波(以下、主高周波と称する)と、その主高周波を1/2波長遅延させる遅延回路にて、昇圧トランス23の一次側第二巻線23cに印加する高周波(以下、副高周波と称する)とを発生させている。したがって、主高周波と副高周波とは電圧及び周波数が同一である高周波である。又、主高周波及び副高周波は、デューティ比が0.25に設定してある。
【0021】
なお、高周波電圧発生装置24が出力する負極性の直流電圧は、上述の例に限定されるものではなく、例えば2kV〜8kVの範囲のものであってよい。
【0022】
ダイオード22は、点火コイル21が発生する火花放電のための高電圧に対して、逆流防止ダイオードとして機能する。すなわち、この実施形態にあっては、燃焼行程において点火を実施する際には、点火コイル21の二次側巻線21aから、点火プラグ1の中心電極14に正極性の高電圧が印加されるものである。したがって、ダイオード22は、そのカソードが二次側巻線21aに接続され、そのカソードが昇圧トランス23の二次側巻線23aの一方端に接続されるので、前記負極性の高電圧が高周波電圧発生装置24に逆流することを防止する。
【0023】
電子制御装置30は、エンジン100に取り付けられる各種のセンサから出力される信号に基づいてエンジン100の運転状態を制御する運転制御プログラムを内蔵するとともに、火花点火に関しては、エンジン100の運転状況に応じて高周波電圧発生装置26で点火プラグ1の中心電極14と接地電極15との間に印加する高周波の波形を間引く制御を実施するための高周波制御プログラムを内蔵する。高周波制御プログラムの制御手順を、図3に示す。この高周波制御プログラムは、エンジン100が始動された後、停止されるまでの間、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0024】
火花点火に際して、電子制御装置30から出力される点火信号が点火コイル21のイグナイタに入力されると、点火コイル21の二次側巻線21aから、点火プラグ1の中心電極14に負極性の高電圧が印加されて、火花放電が始まる。火花放電が始まると、まず、容量放電による容量火花が生じ、その後に誘導放電による誘導火花が生じる。高周波電圧発生装置24が出力する高周波は、誘導電圧の発生直前、ほぼ同時、あるいは直後のタイミングで、点火プラグ1に印加する。
【0025】
まず、ステップS1では、エンジン100の要求出力は所定値以下か否かを判定する。要求出力は、少なくともアクセルの操作量あるいはスロットル弁の開度にもとづいて検出するものである。また所定値は例えば、要求出力の低い低負荷低回転領域を判定し得る値に設定する。
【0026】
ステップS1において、エンジン100の要求出力が所定値を上回っていると判定した場合は、要求出力が所定値以下となるまで、この判定を繰り返し実行する。この間、高周波電圧発生回路25が、昇圧トランス23の一次側第一巻線23bに主高周波を、一次側第二巻線23cに副高周波をそれぞれ印加する。したがって、昇圧トランス23の二次側巻線23aには、デューティ比は0.25であるが1周期の間に波形が2個ある、つまり1/2周期毎に波形がある高周波が発生する。したがって、エンジン100の要求出力が所定値を上回るエンジン100の運転状況にあっては、波形の間引かれていない高周波により火花点火が実行される。
【0027】
これに対してステップS1においてエンジン100の要求出力が所定値以下ある場合は、ステップS2において、高周波の波形の間引きを実施する。具体的には、高周波電圧発生装置24が電子制御装置30から制御信号を受信し、制御信号により高周波電圧発生回路25が出力する副高周波の一次側第二巻線23cへの印加を停止する。これにより、昇圧トランス23には、主高周波のみが入力されるものとなる。したがって、高周波電圧発生装置24から出力される高周波、つまり点火プラグ1に印加する高周波は、要求出力が所定値を上回っているエンジン100の運転状態に比べて、副高周波の波形が間引かれたことになり、要求出力が所定値を上回っている場合の高周波と同一周波数、同一電圧で、デューティ比が0.25である高周波となる。
【0028】
このような構成において、火花点火に際して、電子制御装置30から出力される点火信号が点火コイル21のイグナイタに入力されると、点火コイル21の二次側巻線21aから、点火プラグ1の中心電極14に負極性の高電圧が印加されて、火花放電が始まる。火花放電が始まると、まず、容量放電による容量火花が生じ、その後に誘導放電による誘導火花が生じる。
【0029】
誘導放電の開始とほぼ同時に、高周波電圧発生装置24から高周波を中心電極14に印加する。これによって、中心電極14を包囲するように負極性の電界が生成される。生成された電界と、中心電極14と接地電極15との間に発生する火花放電による生成物とが反応してプラズマが生成され、混合気に着火するものである。
【0030】
すなわち、点火に際しては、点火プラグ1に点火コイル21により火花放電を発生させると、その火花放電に伴って点火プラグ1の間隙18間に負極性の脈流(電流)が流れることによって負極性の電界が発生し、火花放電(主として誘導放電)と負極性の電界とを反応させてプラズマを生成させることにより、燃焼室6内の混合気を急速に燃焼させる構成である。
【0031】
具体的には、点火プラグ1による火花放電時に生成される生成物が負極性の電界と反応することによりプラズマになる。この結果、生成したプラズマにて混合気に着火を行うことで火炎伝播燃焼の始まりとなる火炎核が火花放電のみの点火に比べて大きくなるとともに、所定空間内に大量のラジカルが発生することで燃焼が促進される。
【0032】
これは、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じた生成物であるプラスイオンやラジカルが、負極性の電界の影響を受けて点火プラグ1の中心電極14近傍から遠ざかりながら燃焼室6内全域に向かって振動、蛇行することで行路長が長くなり、周囲の水分子や窒素分子と衝突する回数が飛躍的に増加することによるものである。プラスイオンやラジカルの衝突を受けた水分子や窒素分子は、OHラジカルやNラジカルになると共に、プラスイオンやラジカルの衝突を受けた周囲の気体は電離した状態、言換するとプラズマ状態となることで、飛躍的に混合気への着火領域が大きくなり、火炎伝播燃焼の始まりとなる火炎核も大きくなるものである。
【0033】
このような火花点火にあって、エンジン100の要求出力が所定値を上回っている運転状況から以下である運転状況に変更する場合に、点火プラグ1に印加する高周波の波形を間引くことにより、その時の運転状況に対応した高周波により高周波電界を生成して、プラズマが生成されるものとなる。つまり、プラズマを生成するのに要するエネルギを、電圧、周波数さらには点火プラグ1への入力時間を変更することなく、減らすことができる。したがって、エンジン100の運転状況に対応してプラズマ生成のための高周波の変更の応答性がよくなり、燃焼効率を向上させることができる。しかも高周波をその発生装置本体27側でオンオフするものではないので、その切り替えに伴うエネルギ損失より、エネルギ損失を小さくすることができる。
【0034】
またこの実施形態の構成においては、負極性の電界を生成する際に、ダイオード22を高周波の半波整流用に使用する必要がないので、高周波をバイアスした脈流高電圧をダイオード順方向電圧降下分だけ低くすることができ、負極性の電界生成に要するエネルギを低減することができる。加えて、ダイオード22が発する熱が低くなるので、熱損失を低減することができる。
【0035】
なお、ダイオード22の接続位置は、上述した以外に、昇圧トランス23の二次側巻線23aとグランド40との間であってもよい。すなわち図4に示すように、ダイオード122は、そのカソードを昇圧トランスの二次側巻線23aの他方端に接続し、そのカソードをグランド40に接続する。このようにダイオード122を接続することによって、上記実施形態と同様に、火花放電のための高電圧に対して逆流防止ダイオードとして機能する。しかも、昇圧トランス23の二次側巻線23aに脈流が流れる際にダイオード122にかかる電圧が低く、上記実施形態に比べてダイオード122における電力消費を小さくすることができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0037】
上記実施形態にあっては、運転状況を判定するための単一の所定値を設定したが、複数の判定値を設定して、エンジン100の要求出力が小さくなるほど波形の間引きを大きくするように構成するものであってもよい。この場合、昇圧トランス23の一次側巻線を複数にして、それぞれの一次側巻線に位相の異なる交流を印加するように構成すればよい。
【0038】
又、主高周波と副高周波とは、それぞれ別の高周波電圧発生回路から出力される構成であってもよい。
【0039】
加えて、波形の間引きは例えば、点火後、火炎核を形成する着火期間と、その後の火炎伝播期間とでその間引き量を異なる設定とするものであってもよい。この場合、着火期間における間引き量より、火炎伝播期間における間引き量を多くする設定とする。このような波形の間引き量の設定にすることにより、火炎伝播に対する障害、すなわち火花放電により生成されるプラスイオンなどと、負極性の高周波の電界との引き合いを緩和させることができる。
【0040】
波形の間引きを実施するタイミングとしては、エンジン100の要求出力の変化を判定した場合の、圧縮上死点とするものであってもよい。
【0041】
上記実施形態においては、高周波をバイアスした負極性の直流電圧を出力する高周波電圧発生装置を説明したが、火花点火のための高電圧が正極性である場合は、高周波電圧発生装置が出力する直流電圧は前記高電圧に対応させて正極性とする。この場合、バイアス回路は、正極性の直流電圧を出力する直流電源、又は上述した抵抗による分圧回路である。
【0042】
高周波電圧発生装置が出力する脈流の電圧波形は、特に限定されるものではなく、サイン波形、三角波形、方形波形及び鋸歯状波形の何れであってもよい。
【0043】
また、エンジンの気筒数は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の活用例として、ガソリンや圧縮天然ガス等を燃料として点火プラグによる火花放電を着火に必要とする火花点火式内燃機関に適用するものが挙げられる。
【符号の説明】
【0046】
1…点火プラグ
20…点火装置
21…点火コイル
24…高周波電圧発生装置
25…高周波発生回路
30…電子制御装置
100…エンジン
図1
図2
図3
図4