特許第5794821号(P5794821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5794821倉庫の収納個所から倉荷を取り出すための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794821
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】倉庫の収納個所から倉荷を取り出すための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   B65G1/04 561
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-97780(P2011-97780)
(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公開番号】特開2011-230928(P2011-230928A)
(43)【公開日】2011年11月17日
【審査請求日】2013年4月22日
(31)【優先権主張番号】10 2010 028 392.4
(32)【優先日】2010年4月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307043577
【氏名又は名称】トルンプフ ザクセン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Sachsen GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ クランテ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヘーア
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−298497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 − 1/133
B65G 1/14 − 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
倉庫(1)の収納個所(4)から倉荷(5)を取り出す方法であって、
当該の倉荷(5)は、水平方向の受け渡し運動によって前記の収納個所(4)から荷物搬送手段(7)に受け渡され、引き続いて当該の荷物搬送手段(7)と共に当該の荷物搬送手段(7)の、往復運動駆動制御部(20)を備えた往復運動駆動器(8)によって垂直方向の搬送運動で搬出される、方法において、
前記垂直方向の搬送運動で搬出しようとしている倉荷(5)を前記の荷物搬送手段(7)受け渡し後、負荷検出駆動器を用い、前記倉荷(5)を当該の荷物搬送手段(7)と共に垂直方向に負荷検出運動で運動させ、
前記垂直方向の負荷検出運動を用いて、前記垂直方向の搬送運動で搬出しようとしている前記倉荷(5)の負荷が、前記倉荷(5)の前記垂直方向の搬送運動を許容するか否かを検査し、ただし当該検査は、前記垂直方向の負荷検出運動によって発生した負荷検出駆動器の負荷を検出して負荷境界と比較することによって行なわれ
・ 前記の垂直方向の負荷検出運動に起因して発生した負荷検出駆動器の負荷が前記の負荷境界を上回らない場合にのみ、前記の倉荷(5)および荷物搬送手段(7)の前記の垂直方向の搬送運動を実行することを特徴とする、
倉庫(1)の収納個所(4)から倉荷(5)を取り出す方法。
【請求項2】
前記の荷物搬送手段(7)の、前記負荷検出駆動器として設けられている前記往復運動駆動器(8)を用いて前記の垂直方向の負荷検出運動を行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の負荷検出駆動器は、駆動原動機(9)を有しており、
前記の垂直方向の負荷検出運動に起因する当該の駆動原動機(9)の力を介し、前記の垂直方向の負荷検出運動によって発生した負荷検出駆動器の負荷を検出する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の負荷検出駆動器は、駆動原動機(9)として周波数変換器を備えた電気式駆動モータを有しており、
前記の周波数変換器における消費電流を介して前記の電気式駆動モータ(9)の力を検出する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記の倉荷(5)が荷物搬送手段(7)に完全に受け渡された後、前記の垂直方向の負荷検出運動を実行する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記の垂直方向の負荷検出運動の開始から、前記負荷検出駆動によって検出される負荷が、変動によって変化させられないようになるまでの時間幅だけ離れた時点に前記の負荷検出駆動器の負荷を検出する、
ただし前記変動は、前記倉荷(5)および前記荷物搬送手段(7)が静止状態から動作状態に移行することだけを起因する変動である、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記の負荷検出駆動器はチェーンリンクを備えた駆動チェーン(12)を有しており、
当該の駆動チェーン(12)は、前記の垂直方向の負荷検出運動を実行するために駆動原動機(9)を用いて、歯の刻みおよびピッチを有する駆動歯車によって駆動され、
前記の垂直方向の負荷検出運動を前記の駆動チェーン(12)の駆動歯車の歯の刻みのピッチよりも小さい絶対値で実行して、前記の垂直方向の負荷運動検出中に前記駆動歯車の歯の刻みと、前記駆動チェーン(12)のチェーンリンクとの相互の対応付けが変化しないようにする、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
倉庫(1)の収納個所(4)から倉荷(5)を取り出す装置において、
当該装置は、
・ 往復運動駆動制御部(20)を備えた往復運動駆動器(8)を有する荷物搬送手段(7)と、
・ 倉荷(5)用の搬送装置(24)とを有しており、
前記の倉荷は、前記の搬送装置(24)を用いた水平方向の受け渡し運動により、前記の収納個所(4)から荷物搬送手段(7)に受け渡し可能であり、
当該の荷物搬送手段(7)に受け渡された倉荷(5)は、当該の荷物搬送手段(7)と共に、荷物搬送手段(7)の往復運動駆動器(8)による垂直方向の搬送運動によって搬出可能である形式の、倉庫の収納個所から倉荷を取り出す装置において、
・ 負荷検出駆動器および当該の負荷検出駆動器に接続されている検出ユニット(18)と、
・ 一方では前記の検出ユニット(18)に接続されており、他方では前記の往復運動駆動制御部(20)に接続されている評価ユニット(19)とを有しており、
前記の荷物搬送手段(7)に受け渡された、前記垂直方向の搬送運動で搬出しようとしている倉荷(5)は、当該の荷物搬送手段(7)と共に、前記の負荷検出駆動器を用いた垂直方向の負荷検出運動によって運動可能であり、
前記垂直方向の負荷検出運動を用いて、前記垂直方向の搬送運動で搬出しようとしている前記倉荷(5)の負荷が、前記倉荷(5)の前記垂直方向の搬送運動を許容するか否かが検査され、ただし当該検査は、前記の垂直方向の負荷検出運動に起因して発生した負荷検出駆動器の負荷、前記の検出ユニット(18)によって検出可能であり、また前記の評価ユニット(19)によって負荷境界と比較可能であることによって行われ、
前記の垂直方向の負荷検出運動に起因して発生した負荷検出駆動器の負荷が前記の負荷境界を上回らない場合にのみ、前記の往復運動駆動制御部(20)により、荷物搬送手段(7)の往復運動(8)を制御して搬送運動を実行することを特徴とする、
倉庫(1)の収納個所(4)から倉荷を取り出す装置。
【請求項9】
前記の負荷検出駆動器として前記の荷物搬送手段(7)の往復運動駆動器(8)が設けられている、
請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫の収納個所から倉荷を取り出す方法に関しており、ここで倉荷は、水平方向の受け渡し運動によって収納個所から荷物搬送手段に受け渡され、引き続いて上記の荷物搬送手段と共に、この荷物搬送手段の往復運動駆動器によって垂直方向の搬送運動で搬出される。
【0002】
さらに本発明は、倉庫の収納個所から倉荷を取り出すための装置に関しており、この装置は、
・ 往復運動制御部を備えた往復運動駆動器を有する荷物搬送手段と、
・ 倉荷用の搬送装置とを有する。
【背景技術】
【0003】
上記の倉荷は、搬送装置を用いて収納個所から荷物搬送手段への水平方向の受け渡し運動によって受け渡すことができ、この荷物搬送手段に受け渡された倉荷は、荷物搬送手段の往復運動駆動器を用いて荷物搬送手段と共に垂直方向の搬送運動によって搬出することが可能である。
【0004】
上記のタイプの方法および上記の形式の装置は、EP 2 062 836 Alから公知である。この従来技術の場合、倉庫棚からパレットを取り出すため、入出庫装置が使用される。ここではこのためにステージ状の支持構造体を有する入出庫装置が、取り出そうとするパレットが占有している倉庫棚の収納個所の高さまで垂直方向に走行する。引き続いて上記のパレットは、入出庫装置の搬送装置によって捉えられ、水平方向の受け渡し運動によって入出庫装置のステージ状の支持構造体まで牽引される。上記のパレットを受け渡した後、ステージ状支持構造体は、パレットと共に垂直方向の搬送運動を行うことができる。
【0005】
従来公知のタイプの入出庫装置の許容される荷重には限りがある。過荷重状態で行われる搬送運動は、人間および資材に危険に曝すことがあるため、防止しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP 2 062 836 Al
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、倉庫の収納個所から倉荷を取り出すための方法および装置を提供して、過重荷下でのこの装置の搬送運動およびこれに伴う危険性を排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の方法についての課題は、本発明の請求項1により、倉庫の収納個所から倉荷てを取り出す方法であって、この倉荷は、水平方向の受け渡し運動によって上記の収納個所から荷物搬送手段に受け渡され、引き続いてこの荷物搬送手段と共にこの荷物搬送手段の往復運動駆動器によって垂直方向の搬送運動で搬出される形式の方法において、
・ 上記の荷物搬送手段への受け渡しの後、負荷検出駆動器を用いて倉荷をこの荷物搬送手段と共に垂直方向に負荷検出運動で運動させ、
・ この負荷検出運動によって発生した負荷検出駆動器の負荷を検出して負荷境界と比較し、
・ この負荷検出運動に起因して発生した負荷検出駆動器の負荷が上記の負荷境界を上回らない場合にのみ、倉荷および荷物搬送手段の上記の搬送運動を実行することを特徴とする方法によって解決される。
【0009】
また上記の装置についての課題は、本発明の請求項8により、倉庫の収納個所から倉荷を取り出す装置において、この装置は、
・ 往復運動駆動制御部を備えた往復運動駆動器を有する荷物搬送手段と、
・ 倉荷の搬送装置とを有しており、
この倉荷は、上記の搬送装置を用いた水平方向の受け渡し運動により、上記の収納個所から荷物搬送手段に受け渡し可能であり、
この荷物搬送手段に受け渡された倉荷は、この荷物搬送手段と共に、荷物搬送手段の往復運動駆動器による垂直方向の搬送運動によって搬出可能である形式の、倉庫の収納個所から倉荷を取り出す装置において、
・ 負荷検出駆動器およびこの負荷検出駆動器に接続されている検出ユニットと、
・ 一方ではこの検出ユニットに接続されており、他方では上記の往復運動駆動制御部に接続されている評価ユニットとを有しており、
上記の荷物搬送手段に受け渡された倉荷をこの荷物搬送手段と共に、前記の負荷検出駆動器を用いた垂直方向の負荷検出運動によって運動可能であり、
この負荷検出運動に起因して発生した負荷検出駆動器の負荷は、上記の検出ユニットによって検出可能であり、また上記の評価ユニットによって負荷境界と比較可能であり、
上記の負荷検出運動に起因して発生した負荷検出駆動器の負荷が上記の負荷境界を上回らない場合にのみ、上記の往復運動制御部により、荷物搬送手段の往復運動を制御して搬送運動を実行することを特徴とする装置を構成することによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】棚と、入出庫装置と、棚に入れられたパレットを有する倉庫を示す図である。
図2】パレットが入出庫装置に受け渡された場合の図1の装置を示す図である。
図3図1に示した入出庫装置の、往復駆動制御部を含む往復運動駆動器を示す図である。
図4】入出庫装置の荷物検出運動を含めて、図1および2の倉庫においてパレットを取り出すための流れ図である。
図5図1および2に示した入出庫装置の往復運動動器のモータ電流および位置目標値の時間に依存する展開経過をパレット取り出し時に示した線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の場合、取り出すべき倉荷は、まず水平方向の運動によって荷物搬送手段に受け渡される。この荷物搬送手段は、この受け渡された倉荷を垂直方向の搬送運動によって搬出するのに使用することが可能である。倉荷の負荷により、このような搬送運動が可能になるか否かは、(容易にわかるように)水平方向の受け渡し運動中に検査されるものではなく、倉荷を受け渡した後はじめて上記の荷物搬送手段によって検査されるものである。上記の荷物搬送手段に受け渡された、倉荷はこの荷物搬送手段と共に垂直方向の負荷検出運動によって、すなわち専用の往復運動によって動かされる。上記の負荷検出運動に起因して、この目的に使用される負荷検出駆動部に生じる負荷が、検出されて負荷境界と比較される。上記の負荷検出駆動部の負荷は、場合によっては垂直方向に搬送すべき荷物の大きさを表す。上記の負荷境界は、荷物搬送手段ないしは往復運動駆動器の許容される荷重に依存して決定される。上記の負荷検出駆動器によって決定された負荷が、上記のあらかじめ定めた負荷境界を上回った場合には、上記の荷物搬送手段の往復運動駆動器を相応して制御することにより、予定されていた搬送運動を行わない。その代わりに有利には負荷検出運動の後、荷物搬送手段は、前に倉荷を受け渡された垂直位置に移動し、またこの倉荷は、前の受け渡し運動とは反対の装入運動により、その元々の収納個所に戻される。本発明による負荷チェックにより、荷物搬送手段の往復運動駆動器を著しく大きく設計する必要がなくなる。このような設計は、これまで予備的な確実さを得るためにふつうであった。
【0012】
請求項1に記載した方法ならびに請求項8に記載した装置の特有の実施形態は、従属請求項2〜7および9にそれぞれ記載されている。
【0013】
請求項2および9によれば、本発明の有利な実施形態において、負荷検出駆動器として荷物搬送手段の往復運動駆動器を利用する。倉荷の負荷を検出するため、往復運動を実行することができ、ここでこの往復運動は、ある種の意図的な搬送運動である。ここでは往復運動駆動器のコンポーネントを利用することが可能である。
【0014】
上記の負荷検出駆動器の負荷、場合によって荷物搬送手段の往復運動駆動器の負荷を検出するため、本発明では異なる複数の方法が提供される。技術的に簡単な手段によってまた同時に信頼性が高い負荷検出が可能であるのは、負荷検出駆動器の駆動原動機の力を介して、上記の負荷検出駆動器の負荷を検出することである(請求項3)。複数の駆動原動機を使用する場合、すべての駆動原動機の力を求める。全体として発生した力と、あらかじめ定めた負荷境界とが比較される。
【0015】
上記の負荷検出駆動器に対し、場合によっては荷物搬送手段の往復運動駆動器に対し、種々異なる駆動器構造が対象となる。本発明では有利には、電気式駆動モータおよび周波数変換器を有する実践的に有効性が実証された電気式駆動器を使用する(請求項4)。負荷検出運動によって持ち上げるべき負荷に比例するモータ電流は、付加的な電流センサなくても上記の周波数変換器において検出することができる。
【0016】
負荷状況について意味のある情報は、(請求項5に記載されているように)倉荷が荷物搬送手段に完全に受け渡された後、負荷検出運動を実行する場合に得られる。
【0017】
経験的には上記の負荷検出運動を均一に行わないようにするとよい。殊に上記の負荷検出運動の開始時には特殊な運動、例えば荷物搬送手段の振動が発生する。上記の負荷検出駆動器ないしは往復運動駆動器は、このような現象に反応する。このような背景により、本発明の別の有利な実施形態においては、上記の負荷検出運動の開始に時間的に続く時点に上記の負荷検出駆動器の負荷、場合によっては荷物搬送手段の往復運動駆動器の負荷を検出する(請求項6)。これによって上記の負荷検出運動の開始時における上記の現象により、負荷検出の結果が変わってしまわないようにする。
【0018】
上記の負荷検出運動を実行するために駆動歯車を介して駆動制御される駆動チェーンを有する負荷検出駆動器ないしは荷物搬送手段の往復運動駆動器において、請求項7によれば、負荷検出運動の絶対値は、駆動チェーンに対する駆動歯車の歯の刻みのピッチよりも小さい。この手段によって保証されるのは、負荷検出中に駆動歯車の歯と、駆動チェーンのチェーンリンクとの相互の対応付けが変わらないことである。負荷検出中にはずっと、駆動歯車の関連する歯は、駆動チェーンの同じチェーンリンクに噛み合っている。チェーンリンクが、駆動歯車の1つの歯から別の歯に移行することは回避される。このような移行には上記のシステムの震動および振動がつきものであり、これらの震動および振動そのものは、負荷検出駆動器の検出した負荷に影響を及ぼすことになり、また検出した負荷が、倉荷の負荷から生じる負荷状況を制限的にしか表さないという結果に結び付き得るのである。
【実施例】
【0019】
以下では、例示的な略図に基づいて本発明を詳しく説明する。
【0020】
図1によれば倉庫1には棚2および入出庫装置3が含まれている。慣用のように棚2は、プレート5の形態した倉荷用の上下に配置された複数の収容個所4を有する。わかり易くするため、図1では棚2に入れられたプレート5は、ただ1つだけ示されている。
【0021】
入出庫装置3は、棚2の倉荷ないしはプレート5を入れるまたは取り出すための装置を構成している。支持および案内フレーム6により、荷搬送手段として設けられた入出庫装置3の往復運動ステージ7が垂直方向に案内される。原動機駆動の往復運動駆動器8により、往復運動ステージ7を上昇または下降させることができる。
【0022】
入出庫装置3の往復運動駆動器8には、同期サーボモータとして実施された2つの電気式駆動モータ、すなわち往復運動モータ9が含まれている。これらのモータは、上記の支持および案内フレーム6において互いに向き合って取り付けられている。
【0023】
各往復運動モータ9は、駆動シャフト10を有する駆動装置を介し、チェーンホイールとして構成された2つの駆動歯車を駆動する。各駆動歯車は、関連する駆動シャフト10のそれぞれの端部に取り付けられている。図1および2において上記のチェーンホイールは、往復運動駆動器8の駆動部ケーシング11によって覆われている。
【0024】
これらのチェーンホイールはそれぞれ、駆動チェーンないしは往復運動チェーン12に噛み合っている。往復運動チェーン12は、支持および案内フレーム6の垂直方向を向いたそれぞれの柱の横を走行する。図1および2では全部で4つある往復運動チェーン12のうちの1つが見ることができる。往復運動チェーン12は、慣用のローラチェーンである。
【0025】
往復運動チェーン12は、上記の駆動装置およびチェーンホイールと共に、往復運動駆動器8の各往復運動モータ9と、入出庫装置3の往復運動ステージ7との間の駆動接続を形成している。この駆動接続は、例えば図3に示されている。
【0026】
また図3からわかるように、各往復運動モータ9にはモータセンサ13が設けられている。モータセンサ13により、関連する往復運動モータ9の実際回転数についての情報も、往復運動ステージ7の垂直方向の往復運動位置についての情報も、すなわち、往復運動モータ9の動作によって往復運動位置がどのように調整されるはずであるかについての情報も共に得られる。しかしながら往復運動ステージ7の理論的な往復運動位置は、例えば、往復運動チェーン12の負荷によってきまる伸びに起因して、往復運動ステージ7の実際の往復運動位置とは偏差し得るため、往復運動ステージ7に位置センサ14が設けられているのである。
【0027】
モータセンサ13の往復運動位置情報と、位置センサ14の往復運動位置情報とから平均値が形成され、この値が、往復運動実際位置として往復運動駆動器8の数値制御部によってあらかじめ設定される位置目標値と比較される。実際値/目標値比較によって位置に差分が生じた場合、この差分は、位置制御器15において所定の増幅係数で増幅される。増幅したこの位置差分に基づき、速度制御器16および電流制御器17により、この位置差分を取り除くという点から往復運動モータ9のモータ電流が制御される。モータセンサ13、位置センサ14、位置制御器15、速度制御器16および電流制御器17は、往復運動駆動制御部20の一部である。往復運動モータ9ならびにそれぞれ対応する駆動装置、チェーンホイールおよび往復運動チェーン12は、入出庫装置3の往復駆動部器8を構成する。
【0028】
入出庫装置3の往復運動駆動器8は、垂直方向の搬送運動だけ行うためではなく、往復運動ステージ7の垂直方向の位置検出運動を実現するためにも使用される。この点で往復運動駆動器8は、位置検出駆動器も構成するのである。
【0029】
このために往復運動ないしは位置検出駆動器8には、詳しくいうと往復運動制御部20には検出ユニット18および評価ユニット19が接続される。検出ユニット18により、各往復運動モータ9の詳しく示していない変換器においてモータ電流が検出ないしは測定される。検出した複数のモータ電流は加算されて、評価ユニット19において、あらかじめ定めた境界値と比較される。この比較結果に依存して往復運動制御部20が応動する。
【0030】
垂直方向の負荷検出運動は、倉庫1の棚2から倉荷を取り出す図2に示した動作フェーズにおいて、往復運動駆動器8によって実行される。取り出すプロセス中の詳しい流れは、図4の流れ図に示されている。
【0031】
図4によればパレット、すなわち図示の実施例の場合のパレット5は、棚2の関連する収納個所4から入出庫装置3に、詳しくいえばその往復運動ステージ7に受け渡される。ここで関連するパレット5は、図1に示しかつ搬送チェーンを備えた慣用の搬送装置24により、棚2の関連する収納個所4から、往復運動ステージ7に搬送される。往復運動ステージ7にパレット5が完全に受け渡されて(図2)これに相応して水平方向のパレット運動が終了した後(図4)、垂直方向の負荷検出運動が開始される。
【0032】
この垂直方向の負荷検出運動に対し、往復運動制御部20には位置目標値が格納されている。図示した例の場合、この位置目標値0.05mmは、パレット5を受け渡された際の往復運動ステージ7に対する位置目標値を上回っている。この垂直方向の負荷検出運動の絶対値は、これに相応して0.05mmに達する。この絶対値は、往復運動駆動器8のチェーンホイールのピッチよりも小さい。これによって保証されるのは、全負荷検出運動中に上記のチェーンホイールの関連する歯と、往復運動チェーン12の同じ一環とが噛み合うことである。往復運動ステージ7の駆動系における振動、すなわち往復運動チェーン12のチェーンの一環が関連するチェーンホイールの1つの歯から別の1つの歯に移行する際に生じ得る振動(「多角形作用」)は、回避される。
【0033】
パレット5を積載した往復運動ステージ7を上記の垂直方向の負荷検出運動の位置目標値に相応する往復運動位置に移動させるため、往復運動駆動器8の往復運動モータ9を作動させ、相応するモータ電流を供給する。このモータ電流と、往復運動モータ9の出力ないしは力とは、比例するため、このモータ電流は、垂直方向の負荷検出運動に起因する往復運動駆動器8の負荷を反映する。
【0034】
往復運動モータ9のモータ電流は、検出ユニット18によって測定される。上記のモータ電流の測定は、上記の垂直方向の負荷検出運動の開始に時間的に続く後の時点に行われる。
【0035】
この測定時点は、遅延タイマによって定められ、この遅延タイマは、上記の負荷検出運動の開始と共にスタートされる(図4)。この実施例では0.3秒である上記のあらかじめ定めた遅延時間が経過した後、上記のモータ電流の測定が行われる。上記の負荷検出運動の開始よりも上記の測定を時間的に遅延させることによって保証されるのは、この測定結果が、モータ電流の変動によって変化してしまうことである。この変化のただ一つの原因は、往復運動ステージ7およびパレット5が、静止状態から運動状態に移行することである。
【0036】
上記のモータ電流に対して検出した測定値は、評価ユニット19の比較器により、そこに格納された境界値と比較される。この境界値を上回った場合、往復運動ステージ7およびパレット5の垂直方向の搬送運動は行われないままになる。その代わりに往復運動ステージ7は、これが前にパレット5に受け渡された際の往復運動位置に下げられるだけである。引き続いてパレット5は、入出庫装置3の受け渡し装置24によって棚2の関連する収納個所4に戻される(図4)。
【0037】
上記の測定値がモータ電流の境界値を上回らない場合、パレット5は、垂直方向の搬送運動によって搬出される(図4)。すなわち、パレット5を取り出すための作業が継続されるのである(図3)。
【0038】
図5には、パレット5を取り出す間のモータ電流の時間的な発展経過が線21で例示的に示されている。線22は、取り出しプロセス中の往復運動ステージ7の位置目標値を示している。
【0039】
時間t1中、往復運動ステージ7は垂直方向にパレット5が受け渡される位置にある。この時間の間、モータ電流に対する線21は、多数の著しい振れを有する。この振れの原因は、パレット5が一様な運動で往復運動ステージ7に搬送されるのではなく、むしろ時々負荷の振動が生じることにあり、往復運動駆動器8は、モータ電流を急峻に上昇させることによってこの振動に応動しているのである。時間t1の終わりに往復運動ステージ7にはパレット5が完全に受け渡されており、また垂直方向の負荷検出運動が開始されている。これに相応して、往復運動ステージ7に対する位置目標値が展開経過する。パレット5を水平方向に受け渡す時間t1に持続時間0.3秒の負荷検出運動の時間t2が続く。
【0040】
時間t2の終わり近くになってはじめて、あらかじめ定めた境界値と比較されるモータ電流の測定値が求められる。図5によれば、パレット5を伴う往復運動ステージ7の運動状態の変化に起因した先行の振れの後、この測定時点に上記のモータ電流は再び落ち着きを取り戻す。結果的に上記のめた測定値により、往復運動駆動器8の負荷状況が精確に表される。この測定時点は、図5においてモータ電流の線21の点23によって印が付けられている。
【0041】
上記のモータ電流の測定値と比較される境界値とは、往復運動モータ9の公称電流に関連する値のことである。図示の実施例においてモータ電流は、上記の測定の時点にモータ公称電流の約60%に到達する。この値は、あらかじめ定めた境界値(ここではモータ公称電流の75%)を下回っている。そのため、往復運動駆動器8が、搬送すべき負荷によって過負荷状態にはされてはおらず、したがって往復運動ステージ7の垂直方向の搬送運動によってパレット5を搬出できると推定することができる。このために、パレット5によって負荷が加えられた往復運動ステージ7はまず、負荷検出運動によって持ち上げられた位置から、往復運動ステージ7がパレット5を受け渡された際の往復運動位置に戻される。つぎにこの開始位置から出発して垂直方向の搬送運動が行われるのである。
【0042】
図5において往復運動モータ9の電流境界に参照符号「25」が付されている。ここでこの電流境界は、モータ公称電流の200%である。この電流境界は、動的な負荷とは無関係に搬送装置の機械的なコンポーネントを保護するのに使用される。往復運動モータ9の動作中に電流境界25に達すると、これらの往復運動モータは直接停止される。この点において電流境界25は、上で説明した負荷制限に対して付加的に設けられた安全予防対策を表す。上記の負荷成分の境界値は、電流境界値25を大きく下回る。
【符号の説明】
【0043】
1 倉庫、 2 棚、 3 入出庫装置、 4 収納個所、 5 倉荷、 6 支持および案内フレーム、 7 搬送手段、 8 往復運動駆動器、 9 駆動原動機、 10 駆動シャフト、 11 駆動部ケーシング、 12 駆動チェーン、 13 モータセンサ、 14 位置センサ、 15 位置制御器、 16 速度制御器、 17 電流制御器、 18 検出ユニット、 19 評価ユニット、 20 往復運動駆動制御部、 21 線、 22 線、 23 点、 24 搬送装置、 25 電流境界
図1
図2
図3
図4
図5