【実施例】
【0029】
以下、本発明の作用効果をより一層明確なものにするために、実施例および比較例を掲げる。
【0030】
比較例1
3.2mm×2.5mm×2.5mmのサイズで角部の曲率半径が160μmである略直方体の積層セラミックコンデンサのセラミック素体を用意した。
【0031】
銅粉末(半加工フレーク粉)100重量部に対して、9.0重量部のアクリル系バインダを含み、溶剤として、ターピネオールを含む導電体ペーストを用意し、ディップ塗布法によって、セラミック素体の両端面を覆うように塗布し、昇温速度3℃/分の赤外線乾燥機を用いてピーク温度250℃で乾燥した。乾燥後、800℃の窒素雰囲気中で焼き付けを行い、外部電極を形成した。得られたサンプルから200個抜き取り、ブリスターの発生の有無を観察した。次にこのサンプルを側面から研磨して、外部電極の端面における厚さ、側面の回り込み部の長さと厚さ、端面および回り込み部の凹状部の幅と深さ、および角部における厚さを測定した。測定値はサンプル200個の平均値とした。なお、角部における厚さは、最も薄いところで2μm以上あるものを合格とした。
【0032】
また、サンプルから別に200個抜き取り、電解ニッケルメッキを施した。メッキしたサンプルのメッキ付を観察し、角部にメッキ膜が形成されていないものの数をカウントした。次いで、このメッキしたサンプルに85℃、湿度85%の恒温槽で20Vの電圧を印加して耐湿負荷試験を行った。
【0033】
上記の観察、測定および試験の結果、外部電極の端面および側面には凹状部は形成されなかった。角部の厚みは1.2μmであり、2μm以上の閾値を満たさなかった。また、ブリスターは200個中10個発生した。耐湿負荷試験においては不合格は0であったが、メッキ付け性については200個中2個が不合格であった。
【0034】
実施例1
銅粉末100重量部に対して、7.5重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例1と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0035】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。端面における外部電極の厚さは、端面の略中央部に向かって薄くなり、端面の略中央部で最小となり、その最大厚さは57μm、最小厚さは51μmで、凹状部の深さは最大厚さ10.5%となり、外部電極の厚さが極大になる部分間の距離(凹状部分の幅)はセラミック素体の端面の幅の30%であった。また、回り込み部における外部電極の厚さは、端面の略中央部に向かって薄くなり、端面の略中央部で最小となり、その最大厚さは26μm、最小厚さは23μmで、凹状部の深さは最大厚さの11.5%となり、外部電極の厚さが極大になる部分間の距離(凹状部分の幅)は回り込み部分の長さの30%であった。
【0036】
また、角部における厚さは2.0μmで十分な厚みを得ることができた。
【0037】
ブリスター、耐湿負荷試験およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかった。
【0038】
実施例2
銅粉末100重量部に対して、6.5重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例1と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0039】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。端面における外部電極の最大厚さは54μm、最小厚さは41μmで、凹状部の深さは最大厚さの24.1%となり、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の40%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは25μm、最小厚さは19μmで、凹状部の深さは最大厚さの24.0%となり、凹状部分の幅は回り込み部分の長さの40%であった。また、角部における厚さは2.4μmで十分な厚みを得ることができた。
【0040】
また、ブリスター、耐湿負荷試験およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかった。
【0041】
実施例3
銅粉末100重量部に対して、5.0重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例1と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0042】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。端面における外部電極の最大厚さは47μm、最小厚さは26μmで、凹状部の深さは最大厚さの44.7%となり、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の50%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは24μm、最小厚さは15μmで、凹状部の深さは最大厚さの37.5%となり、凹状部分の幅は回り込み部分の長さの50%であった。また、角部における厚さは3.0μmで十分な厚みを得ることができた。
【0043】
また、ブリスター、耐湿負荷試験およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかった。
【0044】
比較例2
銅粉末100重量部に対して、4.0重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例1と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0045】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。しかし端面における外部電極の最大厚さは49μm、最小厚さは20μmで、凹状部の深さは最大厚さの59.2%となり、50%を超えてしまった。また、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の60%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは24μm、最小厚さは12μmで、凹状部の深さは最大厚さの50.0%となり、40%を超えてしまった。また凹状部分の幅は回り込み部分の長さの60%であった。なお、角部における厚さは3.2μmで十分な厚みを得ることができた。
【0046】
また、ブリスター、およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかったが、耐湿負荷試験では200個中4個の不合格が発生した。
【0047】
比較例3
銅粉末100重量部に対して、8.0重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点と、導電体ペーストの乾燥に昇温速度20℃/分の熱風循環乾燥を用いた点を除き、上記比較例1と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0048】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。しかし端面における外部電極の最大厚さは58μm、最小厚さは52μmで、凹状部の深さは最大厚さの10.3%となり、10%以上であったが、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の20%で、30%に満たなかった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは27μm、最小厚さは24μmで、凹状部の深さは最大厚さの11.1%となり、10%以上であったが、凹状部分の幅は回り込み部分の長さの10%で、30%に満たなかった。また、角部における厚さは1.4μmで十分な厚みを得ることができなかった。
【0049】
また、メッキ付け性および耐湿負荷試験についての不合格は発生しなかったが、ブリスターについては200個中6個の不合格が発生した。
【0050】
実施例4
銅粉末100重量部に対して、7.5重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例3と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0051】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。端面における外部電極の最大厚さは58μm、最小厚さは44μmで、凹状部の深さは最大厚さの24.1%となり、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の30%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは26μm、最小厚さは19μmで、凹状部の深さは最大厚さの26.9%となり、凹状部分の幅は回り込み部分の長さの30%であった。また、角部における厚さは2.0μmで十分な厚みを得ることができた。
【0052】
また、ブリスター、耐湿負荷試験およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかった。
【0053】
実施例5
銅粉末100重量部に対して、6.5重量部のアクリル系バインダを含み、溶剤として、ターピネオールを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例3と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0054】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。端面における外部電極の最大厚さは52μm、最小厚さは34μmで、凹状部の深さは最大厚さの34.6%となり、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の40%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは25μm、最小厚さは16μmで、凹状部の深さは最大厚さの36.0%となり、凹状部分の幅は回り込み部分の長さの40%であった。また、角部における厚さは2.6μmで十分な厚みを得ることができた。
【0055】
また、ブリスター、耐湿負荷試験およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかった。
【0056】
比較例4
銅粉末100重量部に対して、5.0重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例3と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0057】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。しかし、端面における外部電極の最大厚さは48μm、最小厚さは19μmで、凹状部の深さは最大厚さの60.4%となり、50%を超えてしまった。また、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の50%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは25μm、最小厚さは15μmで、凹状部の深さは最大厚さの40.0%であった。また凹状部分の幅は回り込み部分の長さの50%であった。なお、角部における厚さは3.2μmで十分な厚みを得ることができた。
【0058】
また、ブリスター、およびメッキ付け性については不合格は発生しなかったが、耐湿負荷試験では200個中8個の不合格が発生した。
【0059】
比較例5
銅粉末100重量部に対して、8.0重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点と、導電体ペーストの乾燥に昇温速度10℃/分の熱風循環乾燥を用いた点を除き、上記比較例1と同様にして、サンプルを作製し、各種観察、測定および試験を行った。
【0060】
その結果、外部電極の端面には凹状部が形成されたが、回り込み部には凹状部が形成されなかった。また、角部における厚さは1.7μmで十分な厚みを得ることができなかった。
【0061】
実施例6
銅粉末100重量部に対して、6.5重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例5と同様にして、サンプルを作製した。
【0062】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。端面における外部電極の最大厚さは54μm、最小厚さは41μmで、凹状部の深さは最大厚さの24.1%となり、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の40%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは26μm、最小厚さは23μmで、凹状部の深さは最大厚さの11.5%となり、凹状部分の幅は回り込み部分の長さの30%であった。また、角部における厚さは2.2μmで十分な厚みを得ることができた。
【0063】
また、ブリスター、耐湿負荷試験およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかった。
【0064】
実施例7
銅粉末100重量部に対して、5.0重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例5と同様にして、サンプルを作製した。
【0065】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。端面における外部電極の最大厚さは50μm、最小厚さは33μmで、凹状部の深さは最大厚さの34.0%となり、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の50%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは25μm、最小厚さは18μmで、凹状部の深さは最大厚さの28.0%となり、凹状部分の幅は回り込み部分の長さの40%であった。また、角部における厚さは2.8μmで十分な厚みを得ることができた。
【0066】
また、ブリスター、耐湿負荷試験およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかった。
【0067】
実施例8
銅粉末100重量部に対して、4.0重量部のアクリル系バインダを含む導電体ペーストを用いた点を除き、上記比較例5と同様にして、サンプルを作製した。
【0068】
その結果、外部電極の端面および回り込み部分に凹状部が形成された。端面における外部電極の最大厚さは50μm、最小厚さは25μmで、凹状部の深さは最大厚さの50.0%となり、凹状部分の幅はセラミック素体の端面の幅の60%であった。また、回り込み部における外部電極の最大厚さは24μm、最小厚さは15μmで、凹状部の深さは最大厚さの37.5%となり、凹状部分の幅は回り込み部分の長さの50%であった。また、角部における厚さは3.0μmで十分な厚みを得ることができた。
【0069】
また、ブリスター、耐湿負荷試験およびメッキ付け性についての不合格は発生しなかった。
【0070】
本発明は、以上の実施態様および実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0071】
たとえば、前記実施態様および実施例においては、ディップ塗布法によって、外部電極が形成されているが、外部電極をディップ塗布法によって形成することは必ずしも必要でない。