特許第5794841号(P5794841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794841
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】締結構造体
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/24 20060101AFI20150928BHJP
   F16B 39/36 20060101ALI20150928BHJP
   F16B 39/02 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   F16B39/24 Z
   F16B39/36
   F16B39/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-146247(P2011-146247)
(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公開番号】特開2013-15154(P2013-15154A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】510155047
【氏名又は名称】有限会社ウェジコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】森本 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】中上 輝夫
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−098207(JP,U)
【文献】 実開昭50−051068(JP,U)
【文献】 特開2011−052787(JP,A)
【文献】 特開2010−270805(JP,A)
【文献】 特開昭53−099159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ部が形成された一方の被締結部材と、
貫通孔及びそれに連続した所定の内径を有する凹所が形成された他方の被締結部材と、
前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部と頭部との間に、雄ねじ部側から頭部側になるにつれて外径が次第に大きくなる首部が形成された穴付きのボルトと、
該ボルトの首部の一部が挿通する中央孔を有し、この中央孔に通じるスリットが形成された所定の外径を有する環状の逆回り止めリングと、
を備えてなり、
前記凹所及び貫通孔を通して前記ボルトの雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させ締め込むことによって両方の被締結部材が締結され、かつ、締め込みによって、前記逆回り止めリングが押し広げられ、その外壁面が前記凹所の内壁面に接触しており、
前記逆回り止めリングは、前記スリットの対向部分に幅狭部を有していることを特徴とする締結構造体。
【請求項2】
雌ねじ部が形成された一方の被締結部材と、
貫通孔及びそれに連続した所定の内径を有する凹所が形成された他方の被締結部材と、
前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部と頭部との間に、雄ねじ部側から頭部側になるにつれて外径が次第に大きくなる首部が形成された穴付きのボルトと、
該ボルトの首部の一部が挿通する中央孔を有し、この中央孔に通じるスリットが形成された所定の外径を有する環状の逆回り止めリングと、
を備えてなり、
前記凹所及び貫通孔を通して前記ボルトの雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させ締め込むことによって両方の被締結部材が締結され、かつ、締め込みによって、前記逆回り止めリングが押し広げられ、その外壁面が前記凹所の内壁面に接触しており、
前記逆回り止めリングにおける中心とスリットとを通る線により区画される半リング部は、径方向の幅が互いに異なっていることを特徴とする締結構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴(例えば六角穴など)付きのボルトを用いて複数の被締結部材を締結した締結構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、穴付きのボルトを用いた締結構造体は、一方の被締結部材にボルトの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を形成し、他方の被締結部材にボルトの雄ねじ部が挿通する貫通孔とそれに連続したボルトの頭部を収容する凹所(いわゆる座グリ穴)を形成し、それらの凹所及び貫通孔を通してボルトを雌ねじ部に螺合させ締め込むことによって締結したものである。この締結構造体において、穴付きのボルトが時間の経過につれて締め込みと逆方向に自然に回って緩むのを抑止するために、従来より種々の逆回り止め構造が提案されている。その中には、ボルトの頭部とそれを収容する凹所を利用するものが幾つか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ボルトの頭部と凹所の側面にたて溝を形成し、ボルトの頭部側面と凹所の内面との間に回り止めリングを挿着し、両たて溝内にピンを挿入し回り止めリングの側面の一部を押圧してかしめることにより、ボルトの頭部と回り止めリングと凹所とを一体的に固定する締結構造体が記載されている。また、特許文献2には、ボルトの頭部に、外周の一部から外方に突出し弾性変形可能な羽根状突片を形成し、凹所の側面に、ボルトが逆方向に回ろうとする時に羽根状突片の突端が突き当たってボルトの回転を阻止するストッパ突起を形成した締結構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02−040111号公報
【特許文献2】WO2009/001421公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の締結構造体は、構造が複雑であり、コストアップになり易い。すなわち、特許文献1や特許文献2の締結構造体は、被締結部材に形成する凹所を特別な形状に形成する必要がある。また、特許文献1の締結構造体は、緩み止めのための部材(回り止めリングとピン部材)を2種類必要とし、しかも、締め込んで締結した後の作業を必要としている。特許文献2の締結構造体は、弾性変形可能な羽根状突片をボルトの頭部に形成する構造が非常に複雑である。
【0006】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造を複雑にすることなく逆回り止め構造を実現する締結構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の締結構造体は、雌ねじ部が形成された一方の被締結部材と、貫通孔及びそれに連続した所定の内径を有する凹所が形成された他方の被締結部材と、前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部と頭部との間に、雄ねじ部側から頭部側になるにつれて外径が次第に大きくなる首部が形成された穴付きのボルトと、該ボルトの首部の一部が挿通する中央孔を有し、この中央孔に通じるスリットが形成された所定の外径を有する環状の逆回り止めリングと、を備えてなり、前記凹所及び貫通孔を通して前記ボルトの雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させ締め込むことによって両方の被締結部材が締結され、かつ、締め込みによって、前記逆回り止めリングが押し広げられ、その外壁面が前記凹所の内壁面に接触しており、前記逆回り止めリングは、前記スリットの対向部分に幅狭部を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の締結構造体は、雌ねじ部が形成された一方の被締結部材と、貫通孔及びそれに連続した所定の内径を有する凹所が形成された他方の被締結部材と、前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部と頭部との間に、雄ねじ部側から頭部側になるにつれて外径が次第に大きくなる首部が形成された穴付きのボルトと、該ボルトの首部の一部が挿通する中央孔を有し、この中央孔に通じるスリットが形成された所定の外径を有する環状の逆回り止めリングと、を備えてなり、前記凹所及び貫通孔を通して前記ボルトの雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させ締め込むことによって両方の被締結部材が締結され、かつ、締め込みによって、前記逆回り止めリングが押し広げられ、その外壁面が前記凹所の内壁面に接触しており、前記逆回り止めリングにおける中心とスリットとを通る線により区画される半リング部は、径方向の幅が互いに異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の締結構造体によれば、首部が形成されたボルトと逆回り止めリングによって構造を複雑にすることなく逆回り止め構造を実現しており、その結果、少ない部材でありながら被締結部材に形成する凹所を特別な形状にする必要がなく、しかも締め込む作業のみで逆回り止めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る締結構造体の断面図であり、(a)は締結作業途中の状態、(b)は締結作業完了時の状態である。
図2】同上の締結構造体に用いるボルトを示すものであって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図3】同上の締結構造体に用いる逆回り止めリングを示すものであって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図4】同上の締結構造体に用いる逆回り止めリングの変形例を示すものであって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る締結構造体1は、図1に示すように、一方の被締結部材4と他方の被締結部材5を、穴付きのボルト2と逆回り止めリング3を用いて締結したものである。
【0012】
穴付きのボルト2は、通常の穴付きのボルトと同様に、図2に示すように、頭部21と雄ねじ部22を有している。頭部21は、その天頂中央付近に工具穴(例えば六角穴など)21aが形成されている。雄ねじ部22は、一方の被締結部材4の雌ねじ部41に螺合するようなねじ山が形成されている。工具穴21aに工具(例えば六角棒スパナ)を挿入して回すことにより、ボルト2を回動させることが可能である。
【0013】
また、ボルト2は、雄ねじ部22と頭部21との間に首部23が形成されている。この首部23がボルト2の特徴的なところである。首部23は、雄ねじ部22側から頭部21側になるにつれて外径が次第に大きくなるように、側面が傾斜している。首部23は、より具体的には、側面が円錐台形状に軸対称に傾斜するようにすればよい。
【0014】
逆回り止めリング3は、図3に示すように、所定の外径を有する環状をなすものであり、ボルト2の首部23の一部が挿通する中央孔3aを有し、この中央孔3aに通じるスリット3bが形成されている。中央孔3aは、通常の状態で、その内径がボルト2の首部23の最小径の部分より大きく、首部23の最大径の部分より小さいものである。
【0015】
また、逆回り止めリング3は、それをボルト2の首部23の周りに配置したときに、中央孔3aの内径が厚み方向の頭部21側になるにつれて次第に大きくなっているのが好ましい。より具体的には、中央孔3aの内壁面3aaが、ボルト2の首部23の側面と略同一の傾斜角度で軸対称に傾斜しているのが好ましい。これにより、逆回り止めリング3がボルト2に対して適切な位置で(すなわち相対的に傾かずに)接触し易くなり、その結果、後述のように逆回り止めリング3がボルト2の首部23によって押し広げられるときに、安定して押し広げられ易くなる。
【0016】
また、逆回り止めリング3においてスリット3bに対向する部分には、その両側が押し広げられ易いように、切欠き3caを設けるなどして、幅狭部3cbを有するようにするのが好ましい。
【0017】
また、ボルト2の雄ねじ部22の形成過程において、逆回り止めリング3を首部23の周りに配置しておいてから、ボルト2の雄ねじ部22のねじ切り加工を行えば、そのときねじ山が盛り上がるため、逆回り止めリング3がボルト2から外れることのないようにすることもできる。こうすると、ボルト2と逆回り止めリング3が流通する過程で取り扱い易いのは勿論、締結作業において、迅速、かつ、ミス(逆回り止めリング3の向きの間違いなど)を少なくできる。
【0018】
このようなボルト2と逆回り止めリング3が用いて締結される一方及び他方の被締結部材4、5は、通常の穴付きのボルトを用いて締結される被締結部材と同様な加工がなされている。すなわち、一方の被締結部材4には、ボルト2の雄ねじ部22と螺合する雌ねじ部41が形成されている。また他方の被締結部材5には、貫通孔51とそれに連続して凹所(いわゆる座グリ穴)52が形成されている。ここで、凹所52の内径は、以下に述べる締結作業における締め込み作業の前と後の状態で、ボルト2の首部23と逆回り止めリング3と凹所52が所定の関係になるように決められる。
【0019】
締結作業は以下のように行う。まず、一方の被締結部材4と他方の被締結部材5の位置を合わせ、逆回り止めリング3を首部23の周りに付けたボルト2の雄ねじ部22を、凹所52及び貫通孔51を通して雌ねじ部41に螺合させ(図1(a)参照)、上記の工具を用いてボルト2を締め込んでいく。ここで、ある程度締め込むと、凹所52の底部52aに逆回り止めリング3が接触し、逆回り止めリング3は、ボルト2の首部23の周囲を雄ねじ部22側から頭部21側に移動させられる。更に締め込んでいくと、首部23の頭部21側の外径は雄ねじ部22側よりも次第に大きくなっているので、逆回り止めリング3の中央孔3aの内壁面3aaは首部23に接触しながら押し広げられる。そして、締結作業完了の時点では、逆回り止めリング3の外壁面3dが凹所52の内壁面52bに押し付けられるように接触した状態になるのである。
【0020】
こうして、締め込み作業完了後の締結構造体1は、逆回り止めリング3がボルト2と凹所52の内壁面52bの間に挟まった形になるので、逆回り止めリング3とボルト2の摩擦力及び逆回り止めリング3と凹所52の摩擦力によって、ボルト2が締め込みの逆方向に回って緩むのを抑止することができる。このように、この締結構造体1は、首部23が形成されたボルト2と逆回り止めリング3によって構造を複雑にすることなく逆回り止め構造を実現しており、その結果、少ない部材でありながら他方の被締結部材5に形成する凹所52を特別な形状にする必要がなく、しかも締め込む作業のみで逆回り止めを行うことができるものとなるのである。
【0021】
また、逆回り止めリング3は、スリット3bの両側の半リング部3ea、3eb、すなわち図4に示すように、中央孔3aの中心とスリット3bとを通る線により区画される半リング部3ea、3ebは、対称形状ではなく、径方向の幅が互いに異なっているようにしてもよい。このようにすると、締め込みの過程で、幅が広い方からボルト2を押し、ボルト2の軸方向が一方の被締結部材4の雌ねじ部41の軸方向から少しだけ傾く。それにより、ボルト2の雄ねじ部22と雌ねじ部41の一部に強い力で接触する部分が出来るため、更に、緩み止めを起こり難くすることが可能になる。
【0022】
以上、本発明の実施形態に係る締結用部材について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、上記の図では工具穴として六角穴を示しているが、十字穴等の他の形状のものであっても構わない。
【符号の説明】
【0023】
1 締結構造体
2 ボルト
21 ボルトの頭部
22 ボルトの雄ねじ部
23 ボルトの首部
3 逆回り止めリング
3a 逆回り止めリングの中央孔
3b 逆回り止めリングのスリット
3cb 逆回り止めリングの幅狭部
3d 逆回り止めリングの外壁面
3ea、3eb 逆回り止めリングの半リング部
4 一方の被締結部材
41 雌ねじ部
5 他方の被締結部材
51 貫通孔
52 凹所
52b 凹所の内壁面
図1
図2
図3
図4