【実施例1】
【0022】
図1には、既設管を更生する更生管の組立単位部材となる更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に垂直に立設された側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に垂直に立設された端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。側板102、103並びに端板104、105は同じ高さで内面板101の周縁を四方から包囲する外壁板となっている。端板104、105は、後述するように、セグメントを周方向に縛るワイヤーを通過させるために、Wで示した中間部が欠如している。
【0023】
セグメント1は、本実施例では、円周を複数等分する所定角度、例えば5等分する72度の円弧状に湾曲した形状となっている。ただし、セグメントは円弧形ないし扇形に限定されず、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形などにすることもできる。
【0024】
セグメント1の機械的強度を補強する場合には、側板102,103の内側で内面板101の上面に、側板と同様な複数(4個)の内部板106,107が側板102,103と平行に等間隔に立設される。また、側板102,103の内側面と内部板106,107の両側面には、それぞれの変形を防ぐために側方に張り出した凸板103b,106b,107bが複数箇所に形成され、リブ構造となってセグメント1の強度を高めている。
【0025】
内面板101、側板102,103、端板104,105、内部板106,107、並びに各凸板は、いずれも透明、半透明あるいは不透明な同じプラスチックでできており、公知の成形技術を用いて一体に成形される。
【0026】
内面板101の両端部には、セグメント1を周方向に連結するための開口部101aが2つ形成され、また、セグメント1を管長方向に連結するために、側板102,103及び内部板106には円形の穴102a,103a及び106aが複数形成され、内部板107には切り欠き107aが複数形成される。
【0027】
図2に示したように、セグメント1の開口部101aからボルト6を挿通孔104a、105aに挿通してナット7を螺合させ、両端板104、105を締め付けることにより、セグメント1は周方向に連結される。端板104には、凹部104b、104cが、また端板105には、その凹部に嵌合する凸部105b、105cが管長方向に全長に渡って形成されている。このため、連結時に両セグメント1を位置決めして密着させる作業が容易になる。また嵌合部に不図示のシール材を塗布しておくことにより、連結部の水密性を高めることができる。このような端板結合は、それぞれ
図1で見て手前側と奥側の端板104と105において行われる。
【0028】
連結が終了すると、各開口部101aは、蓋(不図示)などにより密閉される。このとき、蓋の内面が各内面板101の内面と連続し均一な内面が形成されるようにする。なお、ボルト6とナット7による周方向の連結が容易な場合には、特に開口部101aを設ける必要はない。また、
図2では、2組のボルトとナットが用いられているが、小径の既設管に使用されるセグメントの場合には、一組のボルトとナットだけでセグメントを周方向に連結することができる。
【0029】
セグメント1を順次周方向に一周分連結させると、
図3に示すようなリング状の閉じた所定の短い長さの短管体10(以下、管ユニットという)を組み立てることができる。管ユニット10は、円管を管長方向Xに垂直に所定幅Dで輪切りに切断したときに得られる形状となっており、その外径が更生すべき既設管の内径より少し小さな値となっている。セグメント1は、この管ユニット10を、径方向Rに沿った切断面で周方向に複数個に分割(好ましくは等分)したときに得られる部材に相当する。
【0030】
なお、
図3では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107、凸板などの補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。また、この明細書において、管長方向とは
図3で管ユニット10の管の長さ方向に延びる矢印Xで示した方向を、径方向とは、管ユニット10の中心軸に向かう放射状の矢印Rで示した方向を、周方向とは管ユニット10の円の周方向をいう。
【0031】
このような管ユニット10の各セグメントは、
図4に示したように、連結部材(締め付け部材)11とナット12を用いて他の管ユニットのセグメントと連結され管長方向に延ばされる。
【0032】
ナット12を一方のセグメント1の側板102の穴102aを通過させ、最初の、つまり側板102から最も近い位置にある内部板106に当接させ、ボルト13をナット12にねじ込み、ナット12を内部板106に締め付けて内部板106に固定する。
【0033】
ナット12の管長方向の長さは、セグメント1の側板102を外側にはみ出すような長さであり、そのはみ出し量が他のセグメント1の側板103の厚さと同等あるいはそれ以上となっているので、他方のセグメント1の側板103の穴103aにナット12を通過させ、両セグメント1を突き合わせる。
【0034】
この状態で、連結部材11を、セグメント1の側板102の穴102a、内部板106の穴106a、内部板107の切り欠き107aに通し、ネジ部11bを一方のセグメント1に固定されているナット12にねじ込む。これにより、連結部材11とナット12が連結される。その後、ナット14のつば14aが最左端の内部板106に圧接するまでナット14をねじ込み、両セグメント1、1を締め付けて固定させる。
【0035】
ナット12は一つのセグメントに周方向に複数個固定され、例えば、要求される強度に応じて側板102に設けられた穴102aの一つ置き、あるいは複数個置きに固定される。各セグメントは、セグメントにおけるナット位置を、該セグメントと隣接するセグメントのナット位置と周方向にみてずらして管長方向に連結される。例えば、
図4に示した例では、中央に位置するセグメント1におけるナット12の位置は、このセグメントの右側に隣接するセグメント1におけるナット12の位置と、周方向にみて側板102の一つの穴102a分だけずれている。
【0036】
このようにして、管ユニットのセグメントを、他の管ユニットのセグメントと管長方向に連結することにより、管ユニットを管長方向に任意の長さに連結することができ、管ユニットないしセグメントからなる更生管を構築することができる。
【0037】
上述したようにして組み立てられた管ユニット10の強度を高めるために、本実施例では、
図5、
図6に示したように、高強度で高弾性のワイヤー部材、例えば、アラミド繊維からなる断面がほぼ円形のワイヤー30を管ユニット10に取り付け、管ユニット10をワイヤー30で縛るようにする。アラミド繊維は東レ・デュポン株式会社で開発され、KEVLAR(登録商標)の商品名で販売されているもので、アラミド繊維は、特に高強度で高弾性であり、引張強度が極めて高いことが特徴である。このアラミド繊維を組紐状に編んだもの(ファイベックス株式会社が開発)をワイヤーとして、ワイヤーを管ユニットに取り付けるようにする。なお、この組紐状に編んだアラミド繊維上に珪砂を塗布したもの(ファイベックス株式会社が開発)をワイヤーとするようにしてもよい。
【0038】
ワイヤー30は、
図5に示したように、各セグメントの2つの内部板107間に配置され、管ユニット10の管長方向に見てほぼ中央を周方向に一周し、
図6に示したように、その端部30aと30bが重ね合され、連結具31によって連結される。連結具31は、鋸歯のような歯が形成された細片31aを逆歯が形成されたボックス31bの穴に挿通し、逆歯と細片31aの歯をかみ合わせることによりワイヤー30の端部30a、30bを締め付けて連結する市販の連結具である。このような連結具31でなく、通常の紐で両端30a、30bを結束して連結することもできる。ワイヤー30は、後述するように、セグメント更生管と既設管の間に充填されるグラウト材などの充填材に埋め込まれて充填材内に固定されるので、ワイヤー30の端部30a、30bの連結は一時的なものであってよい。
【0039】
このワイヤー30を管ユニット10に取り付けるとき、
図7、
図8に示したように、ワイヤー30の下方端部がセグメントの内面板101の既設管に向かう面101bから所定高さHだけ浮かせて取り付けられるように、内面板101の面101から垂直に突出したガイド部材34が内部板107間に一体に形成される。このガイド部材34には、ガイド溝34aが形成されており、ワイヤー30は、このガイド溝34a内に収まるようにして取り付けられる。ワイヤー30が、セグメントを管長方向に連結する連結部材11より低い位置に取り付けられるように上記Hを定める。
【0040】
このようなガイド部材34は、セグメント1の周方向に複数設けられ、
図7、
図8に示したように、連結部材11が存在する位置の下方に設けるようにするのが好ましい。このとき、ワイヤー30と連結部材11を紐やロープ(不図示)を用いて結束すると、ワイヤー30の取り付けが容易になる。
【0041】
なお、ワイヤー30を管ユニット10に浮かせて取り付ける場合には、
図9に示したように、セグメント1の端板104には、セグメントの内面板の既設管に向かう面101bからの高さがHとなったガイド溝を有するガイド部104dが形成される。このガイド部104dにより、ワイヤー30を内部板101の面101bからHだけ浮かせて取り付けることができる。なお、他方の端板105も、端板104のガイド部104dと同様なガイド部を設けるようにする。
【0042】
このように構成されたセグメント1を用いて既設管を更生する方法を説明する。
【0043】
まず、
図10に示すように、マンホール20を介して既設管21にセグメント1を搬入し、
図2、
図3に示すように、セグメント1を周方向に順次連結して管ユニット10を組み立てる。続いて、
図5、
図6に示したように、管ユニット10にその外周を一周するアラミド繊維からなるワイヤー30を取り付ける。このとき、
図7、
図8に示したように、ワイヤー30を内面板の既設管に向かう面からHの高さ浮かせて取り付けるようにする。
【0044】
続いて、ワイヤー30が取り付けられた管ユニット10を、
図4に示す方法で、連結部材11を用いて順次管長方向に連結し、
図10、
図11に示したように、既設管21内に更生管40を敷設する。
【0045】
続いて、更生管40と既設管21間の隙間Sにグラウト材などの充填材を充填し、ワイヤー30を充填材内に埋め込んで充填材を固化させる。なお、
図10、
図11においては、連結部材11などは省略されており、セグメントが簡略化して図示されている。
【0046】
これにより、既設管21と更生管40が充填材により堅固に結合された複合管を構築することができる。既設管21と更生管40間に充填材を充填するとき、充填材は、
図8で矢印で示すように、ワイヤー30の上側と下側に充填されるので、ワイヤー30の四方に充填材が存在し、充填材の固化によりワイヤー30は充填材内に堅固に固定され、充填材と一体に結合される。ワイヤー30は、引張強度が極めて高いアラミド繊維でできているので、複合管に大きな外圧あるいは内圧がかかっても、変形を起こしにくい高強度の更生が可能となる。
【0047】
なお、上述した実施例では、管ユニット10にワイヤー30を取り付けてから、ワイヤーが取り付けられた管ユニットを管長方向に順次連結したが、ワイヤー30を取り付ける前に、管ユニット10を連結部材11を用いて管長方向に連結し、管ユニットを管長方向に連結するごとに、ワイヤー30を管ユニット10の全周に取り付け、この管ユニットの管長方向への連結とワイヤーの取付けを順次行って既設管21内に更生管40を構築するようにしてもよい。この場合も、既設管21と更生管40の間に充填材が充填されたとき、ワイヤー30の四方に充填材が存在し、充填材の固化によりワイヤー30は充填材内に堅固に固定され、複合管に大きな外圧あるいは内圧がかかっても、変形を起こしにくい高強度の更生が可能となる。
【実施例2】
【0048】
実施例1では、ワイヤー30は管ユニット10の全周を一巡してその両端部が結束され、ほぼ円形の形をした一本のワイヤーとなっているが、ワイヤーをスパイラル状にして連続して管ユニットに取り付けるようにすることもできる。その実施例が
図12から
図14に図示されている。
【0049】
ワイヤー50は、ワイヤー30と同様に、アラミド繊維でできており、
図12に示したように、管ユニットのセグメント1の側板102、103、端板104、105上に乗るように、所定の螺旋ピッチでスパイラル状に巻回されて管ユニットに取り付けられる。従って、端板104、105は
図1に示したように、Wの部分が欠損したものではなく、連続した同じ高さの一枚の板形状にする。
【0050】
ワイヤー50をセグメントにスパイラル状に巻くために、
図13に示したように、管ユニットを構成するセグメント1の側板102、103と端板104、105の上部にワイヤー50をスパイラル状に導くためのガイド溝102e、103e、104e、105eを形成するようにする。このようなガイド溝を、
図13で仮想線で示すように、複数個所に形成しておくと、ワイヤー50を異なる螺旋ピッチで取り付けることが可能になる。なお、内部板106、107が存在する場合には、同様にその上部にワイヤー50をスパイラル状に案内するガイド溝を形成するようにする。
【0051】
このようなスパイラル状のワイヤー50を用いて既設管を更生するには、実施例1と同様に、セグメント1を周方向に連結して管ユニット10を組み立てる。そして、
図14に示したように、管ユニットにワイヤー50をスパイラル状に取り付けながら管ユニット10を順次管長方向に連結部材を用いて連結して、ワイヤー50をスパイラル状に外周に連続して取り付けた更生管40を既設管21内に敷設する。なお、ワイヤー50は、既にワイヤー50が巻かれている管ユニットに他の管ユニットを連結部材11で連結してからその管ユニットに取り付けてもよいし、あるいは前もってワイヤーをスパイラル状に設置した管ユニットを、既にワイヤー50が巻かれている管ユニットに連結部材で連結してスパイラル状に巻くようにしてもよい。
【0052】
そのあと、敷設された更生管40と既設管21間の隙間にグラウト材などの充填材を充填し、スパイラル状になったワイヤー50を充填材内に埋め込んで充填材を固化させる。この場合、ワイヤー50はその全体が充填材内に埋め込まれるので、大きな外圧あるいは内圧がかかっても変形がすくない高強度の複合管を構築することができる。
【0053】
なお、スパイラル状になったワイヤーの充填材内への埋め込みは、
図15に図示したように、予めワイヤー50をスパイラル状に管長方向に延びるように既設管内に配置し、それを既設管に固定されたアンカー(不図示)に結合して、安定した形状になるようにし、続いて、セグメントを周方向に連結した管ユニットを、スパイラル状に巻かれたワイヤー内に順次管長方向に連結して更生管を敷設するようにしてもよい。この場合、ワイヤー50は、更生管40に密着して取り付けられないが、充填材内に埋め込まれて充填材が固化されたときには、充填材と一体的に結合されるので、同様に、大きな外圧あるいは内圧がかかっても変形がすくない高強度の複合管を構築することができる。
【0054】
実施例2の場合、ワイヤー50は連続したスパイラル状になっているので、実施例1のように、ワイヤーを管ユニットに取り付けるごとに、ワイヤーの両端部を結束する必要がなく、更生作業を効率的に行なうことができる。
【実施例3】
【0055】
図16には、線状のワイヤーに代わり、アラミド繊維からなるメッシュ状のバンド60をセグメントないし管ユニットに取り付ける実施例が図示されている。
【0056】
バンド60は、管長方向の幅がLであり、管ユニット10の全周を一周する長さを有し、その両端はワイヤー30と同様な連結具31を介して結合され、管ユニットを縛るような形で管ユニットに取り付けられる。バンド60は、セグメント1の端板104、105の上端部の上に載るように取り付けられるので、端板104、105は
図1に示したように、Wの部分が欠損したものではなく、連続した同じ高さの一枚の板形状にする。幅Lのバンド60は、d1×d2の矩形の空白領域が多数形成されたメッシュ構造になっている。
【0057】
このようなメッシュ構造のバンド60を用いて管更生を行う場合、ワイヤー30を用いる場合と同様に、セグメント1を周方向に連結して管ユニット10を構成し、バンド60を管ユニットの外周に一周させ管ユニットに取り付ける。続いて、バンド60が取り付けられた管ユニット10を管長方向に順次連結して既設管21内に組み立て更生管40を敷設する。敷設が完了したら、更生管40と既設管21間の隙間にグラウト材などの充填材を充填し、バンド60を充填材内に埋め込んで充填材を固化させる。
【0058】
バンド60の取付けは、管ユニットを連結部材を用いて管長方向に連結してから、行うようにすることができ、この場合には、管ユニットを管長方向に連結するごとに、バンド60を管ユニット10の全周に取り付け、管ユニットの管長方向への連結とバンドの取付けを順次行って更生管を既設管内に敷設し、そのあと、更生管と既設管間の隙間に充填材を充填し、バンドを充填材内に埋め込んで充填材を固化させる。
【0059】
メッシュ状のバンド60を用いる場合には、アラミド繊維がバンド60の周方向60aだけでなく管長方向60bにも存在するので、バンド60が充填材内部に埋め込まれた場合、既設管と更生管が充填材で結合された複合管は、周方向だけでなく、管長方向にも、引張強度が大きくなり、大きな外圧あるいは内圧がかかっても変形がすくない高強度の複合管を構築することができる。
【0060】
バンド60のメッシュ構造は、
図16に図示したように矩形だけでなく、菱形、円形などの形状が多数できるようなメッシュ構造であってもよい。また、バンド幅Lもセグメント1の管長方向の全幅(端板の幅)に広がる幅であってもよい。
【0061】
なお、スパイラル状のワイヤーが管長方向に渡って連続して充填材内に埋め込まれて固定される場合(実施例2)、あるいはメッシュ状のバンドが充填材内に埋め込まれて固定される場合(実施例3)、既設管と充填材を介して一体的に結合された更生管からなる複合管の強度は、極めて高くなるので、ワイヤーあるいはバンドの材質は、必ずしも、アラミド繊維でなく、鉄筋などの鉄材あるいはその他の金属製でもよい。従って、スパイラル状に管長方向に連続して延びる金属製のワイヤーを更生管に取り付けたり、あるいは金属製のメッシュ構造のバンドを管ユニットの全周に取り付け、更生管を構築するようにしてもよい。スパイラル状のワイヤーあるいはメッシュ構造のバンドは、既設管と更生管の間に充填される充填材に埋め込まれて固定されるので、同様に、高強度の複合管を構築することができる。