【実施例】
【0040】
このように、切断刃10は、刃先12の各々が、外縁が胴体11の板厚方向に平行な平坦面13を有すると共に、板厚方向から見て円弧形状を有する先端部14と、先端部14に接続され、内方に向かってその厚さが増加する移行部15とからなるように構成されていると、安全性と耐久性とが向上する。
【0041】
しかし、このような構成を有する切断刃10であっても、曲率半径が大きすぎると刃先12がラップフィルムを貫通しにくくなり切断性が低下する一方、曲率半径が小さすぎると刃先12が外力に弱くなり耐久性が低下する。
【0042】
又、一方面18と第1仮想平面21とがなす角度と他方面19と第2仮想平面22とがなす角度を加えた刃先角が小さすぎると、刃先12が鋭利になりすぎて安全性が低下する一方、刃先角が大きすぎると刃先12がラップフィルムを貫通しにくくなり切断性が低下する。
【0043】
更に、平坦面13の厚さが小さすぎると刃先12が鋭利になりすぎるとともに移行部15の先端部14側の厚さが薄くなるので安全性及び耐久性が低下する一方、平坦面13の厚さが大きすぎると刃先12がラップフィルムを貫通しにくくなり切断性が低下する。
【0044】
そこで、曲率半径、刃先角及び平坦面13の厚さによる切断刃10の品質への影響の度合いを検討するために実験を行った。
【0045】
まず、実験に際して、
図1及び
図2に示した第1の実施の形態による切断刃において、曲率半径、刃先角及び平坦面の厚さを特定数値に設定した試料を後述する表1に示すように準備し、切断性、安全性及び耐久性の良否の判定を行った。
1.切断性に対する実験
(1)測定条件
以下の製品等において、試料を取り付けたラップケースの蓋部を開いた状態にて、片手でラップフィルムの末端を掴み、約40cm引き出した後、ややラップフィルムを切断刃収納部の間で緊張状態にする。その後、ラップケースの蓋部を閉じることによりラップフィルムの切断を行う。
ラップケース:ラップカッター節約名人(株式会社ライフ・トゥ製)
ラップフィルム:NEWポリラップレギュラー(ポリエチレン製):幅30cm、長さ50m(宇部フィルム株式会社製)
(2)測定基準
ラップフィルムの幅方向の切断が完全に切断刃によりできていた場合を正常とし、上述の切断動作を50回行った結果全てが正常であったものを合格とし、50回の切断において、ラップフィルムの一部でも切断刃により切断されなかった切断不良の領域があったものを不合格とする。
2.安全性に対する実験
(1)測定条件
切断性に対する実験を行う中で、両手の指が試料に接触した時に感じる苦痛と、実験を行ったものと同一人が、以下の曲率半径、刃先角、平坦面の厚さに設定された第1の実施の形態による判断基準用の切断刃に接触したときに感じる苦痛とを比較する。
曲率半径:0.05mm
刃先角:17°
平坦面の厚さ:0.01mm
(2)測定基準
判断基準用の切断刃において感じた苦痛よりも苦痛が小さいものを合格とし、判断基準用の切断刃において感じた苦痛と同等又はそれ以上の苦痛を感じたものを不合格とする。
3.耐久性に対する実験
(1)測定条件
以下の製品等において、ラップフィルムに代えてロール状のアルミニウム箔を用いて、切断性の実験と同様の手順でアルミニウム箔の切断を行う。
アルミニウム箔:幅30cm、厚さ11μm
(2)測定基準
アルミニウム箔の幅方向の切断が完全に切断刃によりできていた場合を正常とし、切断動作を100回行った結果全てが正常であったものを合格とし、100回の切断において、アルミニウム箔の一部でも切断刃により切断されなかった切断不良の領域があったものを不合格とする。
【0046】
各試料毎の上記各実験による判定結果を以下の表に示す。
【0047】
【表1】
4.切断性に対する実験の測定結果
上記の表の「切断性」の列を参照して、切断動作を50回行った結果全てが正常であったものには○印を、50回の切断において、ラップフィルムの一部でも切断刃により切断されなかった切断不良の領域があったものには×印を付けている。
【0048】
測定結果から以下の内容が判明した。
【0049】
第1の実施の形態による切断刃では、曲率半径が0.40mm、刃先角が15°、平坦面の厚さが0.10mmに設定されたもの(比較例1)は切断性が低下している。これは、曲率半径の増加に伴って、刃先からラップフィルムにかかる力が分散されることに起因しているものと思われる。
【0050】
又、曲率半径が0.15mm、刃先角が30°、平坦面の厚さが0.10mmに設定されたもの(比較例4)は切断性が低下している。これは、刃先角が大きくなるのに伴って、刃先がラップフィルムを貫通しにくくなることに起因しているものと思われる。
【0051】
更に、曲率半径が0.15mm、刃先角が10°、平坦面の厚さが0.30mmに設定されたもの(比較例6)は切断性が低下している。これは、平坦面の厚さの増加に伴って、刃先からラップフィルムにかかる力が分散されることに起因しているものと思われる。
【0052】
全試料における切断性が低下しなかった場合の切断刃の曲率半径の最高値は0.35mmであり、刃先角の最高値は25°であり、平坦面の厚さの最高値は0.20mmである。
5.安全性に対する実験の測定結果
上記の表の「安全性」の列を参照して、判断基準用の切断刃において感じた苦痛よりも苦痛が小さいものには○印を、判断基準用の切断刃において感じた苦痛と同等又はそれ以上の苦痛を感じたものには×印を付けている。
【0053】
測定結果から以下の内容が判明した。
【0054】
第1の実施の形態による切断刃では、曲率半径が0.15mm、刃先角が8°、平坦面の厚さが0.10mmに設定されたもの(比較例3)は安全性が低下している。これは、刃先角の減少に伴って、刃先が板厚方向に鋭利になることに起因しているものと思われる。
【0055】
又、曲率半径が0.15mm、刃先角が25°、平坦面の厚さが0.03mmに設定されたもの(比較例5)は安全性が低下している。これも、平坦面の厚さの減少に伴って、刃先に力が集中することに起因しているものと思われる。
【0056】
全試料における安全性が低下しなかった場合の切断刃の刃先角の最低値は10°であり、平坦面の厚さの最低値は0.05mmである。
6.耐久性に対する実験の測定結果
上記の表の「耐久性」の列を参照して、切断動作を100回行った結果全てが正常であったものには○印を、100回の切断において、アルミニウム箔の一部でも切断刃により切断されなかった切断不良の領域があったものには×印を付けている。
【0057】
測定結果から以下の内容が判明した。
【0058】
第1の実施の形態による切断刃では、曲率半径が0.05mm、刃先角が15°、平坦面の厚さが0.10mmに設定されたもの(比較例2)は耐久性が低下している。これは、曲率半径の減少に伴って、刃先が外力に弱くなることに起因しているものと思われる。
【0059】
又、曲率半径が0.15mm、刃先角が25°平坦面の厚さが0.03mmに設定されたもの(比較例5)は耐久性が低下している。これは、平坦面の厚さの減少に伴って、移行部の先端部側の厚さが薄くなることに起因しているものと思われる。
【0060】
全試料における耐久性が低下しなかった場合の切断刃の曲率半径の最低値は0.10mmであり、平坦面の厚さの最低値は0.05mmである。
7.総括
表1を参照して、上述の3つの実験を全てクリアした試料はいずれも、曲率半径が0.10mm〜0.35mmであり、刃先角が10°〜25°であり、平坦面の厚さが0.05mm〜0.20mmの範囲に収まる。
【0061】
よって、品質上問題の無い切断刃は、曲率半径が0.10mm以上0.35mm以下であり、刃先角が10°以上25°以下であり、平坦面の厚さが0.05mm以上0.20mm以下の範囲に収まる切断刃と言える。
【0062】
以上のことから、切断刃の曲率半径、刃先角及び平坦面の厚さは、ラップフィルムの切断時における切断性、安全性及び耐久性に大きな影響を与える要素と言え、その適切な選択があってその存在が意味あるものとなる。
【0063】
尚、上記の実験では、第1の実施の形態による切断刃を用いたが、第2の実施の形態による切断刃を用いても同様の結果が得られた。
【0064】
又、上記の実験では、切断刃はステンレス鋼よりなるものを用いたが、鉄材料よりなるものを用いても同様の結果が得られた。
【0065】
更に、上記の実験では、切断刃はステンレス鋼よりなるものを用いたが、アルミニウム合金よりなるものを用いた場合は、耐久性を除いて同様の結果が得られた。