特許第5794856号(P5794856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5794856電子部品装着装置、および、電子部品装着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794856
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】電子部品装着装置、および、電子部品装着方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H05K13/04 B
   H05K13/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-174377(P2011-174377)
(22)【出願日】2011年8月9日
(65)【公開番号】特開2013-38281(P2013-38281A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】大西 聖司
(72)【発明者】
【氏名】泉原 弘一
(72)【発明者】
【氏名】亀田 真希夫
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−023616(JP,A)
【文献】 特開2009−152638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの基板を搬送するレーンを有し、各々のレーンから搬送される基板に対して、独立して部品の装着をおこなう電子部品装着装置において、
各部を制御する制御部と、
データを保持する記憶部と、
部品を供給する一対の部品供給ユニットと、
前記部品供給ユニットから部品を吸着し、基板上に装着する一対の装着ヘッドと、
前記装着ヘッドを基板に、独立して位置づける一対のビームと、
前記装着ヘッドが吸着した部品を認識する一対の認識カメラとを備え、
前記記憶部は、各々一対のビームに対して、部品の吸着、認識、装着をおこなうステップの仕様を記述する装着データと、各々一対のビームに対して、部品の吸着、認識、装着からなる一連のサイクルごとに互いの優先順位が定められた3以上の優先度と、各々一対のビームに対して、動作する領域を定める干渉領域情報とを保持し、
前記制御部は、
前記装着データに記述された前記ステップごとに、各々のビームに対する前記優先度を比較し、
優先度の高いビームの装着ヘッドに対する吸着、認識、装着のステップを前記サイクルの終了まで実行させ、
優先度の低いビームの装着ヘッドに対しては、前記干渉領域情報を用いて、相手のビームと干渉するか否かを判定し、干渉しないステップのみを実行させ、干渉するステップの実行は、相手のビームと干渉しなくなるまで待機させ、
各々一対のビームに対して、実行中のサイクルが終了したときに、相手のビームの優先度を参照して、3以上の優先度の中から相手のビームより優先順位の低い優先度を付与することを特徴とする電子部品装着装置。
【請求項2】
二つの基板を搬送するレーンを有し、各々のレーンから搬送される基板に対して、独立して部品の装着をおこなう電子部品装着装置の電子部品装着方法において、
前記電子部品装着装置は、各部を制御する制御部と、
データを保持する記憶部と、
部品を供給する一対の部品供給ユニットと、
前記部品供給ユニットから部品を吸着し、基板上に装着する一対の装着ヘッドと、
前記装着ヘッドを基板に、独立して位置づける一対のビームと、
前記装着ヘッドが吸着した部品を認識する一対の認識カメラとを備え、
前記記憶部は、各々一対のビームに対して、部品の吸着、認識、装着をおこなうステップの仕様を記述する装着データと、各々一対のビームに対して、部品の吸着、認識、装着からなる一連のサイクルごとに互いの優先順位が定められた3以上の優先度と、各々一対のビームに対して、動作する領域を定める干渉領域情報とを保持し、
前記装着データに従い、前記装着ヘッドが、前記部品供給ユニットより部品を吸着する手順と、
前記装着データに従い、前記認識カメラが、前記装着ヘッドに吸着された部品を認識する手順と、
前記装着データに従い、前記ビームを位置づけ、前記装着ヘッドにより前記基板上に部品を装着する手順と、
前記制御部が、前記装着データに記述された前記ステップごとに、各々のビームに対する前記優先度を比較する手順と、
前記優先度を比較する手順の結果に従い、前記制御部が、優先度の高いビームの装着ヘッドに対する吸着、認識、装着のステップを前記サイクルの終了まで実行させる手順と、
前記優先度を比較する手順の結果に従い、前記制御部が、優先度の低いビームの装着ヘッドに対しては、前記干渉領域情報を用いて、相手のビームと干渉するか否かを判定し、干渉しないステップのみを実行させ、干渉するステップの実行は、相手のビームと干渉しなくなるまで待機させる手順と、
前記制御部が、各々一対のビームに対して、実行中のサイクルが終了したときに、相手のビームの優先度を参照して、3以上の優先度の中から相手のビームより優先順位の低い優先度を付与する手順とを有することを特徴とする電子部品装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品装着装置、および、電子部品装着方法に係り、特に、デュアル搬送により独立生産可能な複数のレーンを有する電子部品装着装置で、電子部品を効率よく搭載する用途に用いて好適な電子部品装着装置、および、電子部品装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント基板に電子部品を搭載する電子部品装着装置においては、生産性向上の観点から、二つの基板搬送ラインを設けて、それぞれ独立に動作するヘッドにより部品を搭載するデュアル搬送の形態が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、二つの並列した基板搬送ラインを設けたデュアル搬送ラインを有する電子部品装着装置において、生産性を向上させるために、ラインを構成するシュートに固定シュートと可動シュートを設けた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−10436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二つの装着ヘッドにより電子部品の装着をおこなう場合には、一方の装着ヘッドが他方の装着ヘッドと干渉を起こさないように制御することが重要である。
【0006】
装着ヘッドが互いに干渉を起こさないときには、独立して動作することが可能であるが、部品の配置によっては干渉を起こすときがある。その場合には、各々のヘッドに優先度をつけて、制御するアルゴリズムが考えられる。
【0007】
以下、図9Aないし図10を用いて従来技術に係る二つの装着ヘッドにより電子部品の装着をおこなう電子部品装着装置の動作について説明する。
図9A,9Bは、従来技術に係る二つの装着ヘッドにより電子部品の装着をおこなう電子部品装着装置の上面から見た模式図である。
図10は、従来技術に係る電子部品装着装置の各々のビームによる優先度をつけたときの処理順序を示す図である。
【0008】
一般的な電子部品装着装置においては、後に詳細に説明するが、装着ヘッドは、装置を位置決めするビームと呼ばれるガイドに従って、基板の搬送方向と同じ方向(X方向)を移動し、ビーム自体も基板搬送方向と直交する方向(Y方向)に移動することにより、部品の装着位置を位置決めする。図10の示す動作の記述では、独立して動作可能な各々のビームを、Aビーム、Bビームとしている。
【0009】
電子部品装着装置は、基板を搬入したあと、装着ヘッドにより部品フィーダにより部品を吸着し、部品認識カメラにより部品を認識して、定められた位置に部品を装着するという1サイクルにより動作する。
【0010】
この場合に、従来では、図10に示されるように、AビームとBビームの動作にサイクルごとに優先度をつけて、それぞれ図9A,9Bに示すそれぞれのヘッドの動作範囲内で動作させていた。すなわち、優先度の高いビームを優先して部品を動作させるようにするものである。
【0011】
図9Aは、Aビーム8aに従って移動する装着ヘッド20aが、部品供給ユニット3aのフィーダより部品を吸着して、部品認識カメラ16aにより部品の認識し、基板Pに装着するフェーズを示しており、図9Bは、逆に、Bビーム8bに従って移動する装着ヘッド20bが、部品供給ユニット3bのフィーダより部品を吸着して、部品認識カメラ16bにより部品の認識し、基板Pに装着するフェーズを示している。
【0012】
この従来技術に係る電子部品装着装置は、レーンが一つ(すなわち、同時に搬送される基板は一つ)であり、装着ヘッドが二つのものである。しかしながら、レーンが二つあるデュアル搬送の電子部品装着装置では、各々のレーンに基板が独立に基板が搬送されるため、タイミングが非同期であり、各々のビームに対して効率的に優先度を与えるのが難しいという問題点があった。
【0013】
すなわち、デュアル搬送において、各々のビームに優先度を与えて、それに従って動作させることは可能であるが、優先度の与え方によっては、ヘッドが干渉しない範囲でも、待ち時間が大きくなり、非効率になる恐れがあった。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、デュアル搬送により独立生産可能な複数のレーンを有する電子部品装着装置で、各々の装着ヘッドの干渉を防ぎながら電子部品を効率よく搭載することのできる電子部品装着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電子部品装着装置は、二つの基板を搬送するレーンを有し、各々のレーンから搬送される基板に対して、独立して部品の装着をおこなう、いわゆるデュアル搬送の独立生産可能な電子部品装着装置であり、各部を制御する制御部と、データを保持する記憶部と、部品を供給するフィーダからなる一対の部品供給ユニットと、部品供給ユニットから部品を吸着し、基板上に装着する一対の装着ヘッドと、装着ヘッドを基板に、独立して位置づける一対のビーム(Aビーム、Bビーム)と、装着ヘッドが吸着した部品を認識する一対の認識カメラとを備えている。
【0016】
また、記憶部は、各々一対のビームに対して、部品の吸着、認識、装着をおこなうステップの仕様を記述する装着データと、各々一対のビームに対して、部品の吸着、認識、装着からなる一連のサイクルごとに互いの優先順位が定められた3以上の優先度と、各々一対のビームに対して、動作する領域を定める干渉領域情報とを保持している。
【0017】
そして、制御部は、装着データに記述されたステップごとに、各々のビームに対する優先度を比較し、優先度の高いビームの装着ヘッドに対する吸着、認識、装着のステップを前記サイクルの終了まで実行させ、優先度の低いビームの装着ヘッドに対しては、前記干渉領域情報を用いて、相手のビームと干渉するか否かを判定し、干渉しないステップのみを実行させ、干渉するステップの実行は、相手のビームが干渉しなくなるまで待機させ、干渉しなくなったときに実行する。
【0018】
そして、制御部は、各々一対のビームに対して、実行中のサイクルが終了したときに、相手のビームの優先度を参照して、3以上の優先度の中から相手のビームより優先順位の低い優先度を付与する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、デュアル搬送により独立生産可能な複数のレーンを有する電子部品装着装置で、各々の装着ヘッドの干渉を防ぎながら電子部品を効率よく搭載することのできる電子部品装着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置の上面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置のブロック図である。
図3】ビーム実行制御テーブルの一例を示す図である。
図4】部品装着データの一例を示す図である。
図5】干渉領域テーブルの一例を示す図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る二つの装着ヘッドにより電子部品の装着をおこなう電子部品装着装置の上面から見た模式図である(その一)。
図6B】本発明の一実施形態に係る二つの装着ヘッドにより電子部品の装着をおこなう電子部品装着装置の上面から見た模式図である(その二)。
図7】本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置の基板の部品装着に関する処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置の各々のビームによる優先度をつけたときの処理順序を示す図である。
図9A】従来技術に係る二つの装着ヘッドにより電子部品の装着をおこなう電子部品装着装置の上面から見た模式図である(その一)。
図9B】従来技術に係る二つの装着ヘッドにより電子部品の装着をおこなう電子部品装着装置の上面から見た模式図である(その二)。
図10】従来技術に係る電子部品装着装置の各々のビームによる優先度をつけたときの処理順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1ないし図8を用いて本発明の各実施形態に係る電子部品装着装置について説明する。
【0022】
先ず、図1および図2を用いて本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置の構造について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置の上面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置のブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る電子部品装着装置は、各々の独立して基板上に部品を装着できるようにしたAレーンと、Bレーンを有したいわゆるデュアル搬送レーンを有するものである。
【0023】
以下では、一つのレーンにおける装置の部位と動作について説明するが、他のレーンについても同様である。
【0024】
本実施形態に係る電子部品装着装置の基台2上に、種々の電子部品をそれぞれその部品取出し部(部品吸着位置)に1個ずつ供給する部品供給ユニット3が複数並設されている。対向する部品供給ユニット3群の間には、供給コンベア4、位置決め部5および排出コンベア6が設けられている。供給コンベア4は、上流側装置より受けたプリント基板Pを位置決め部5に搬送し、位置決め部5で位置決め機構(図示せず)により位置決め固定されたプリント基板P上に電子部品が装着された後、排出コンベア6に搬送される。
【0025】
ビーム8は、X方向に長く伸ばされており、それぞれY軸モータ9の駆動によりネジ軸10を回転させ、左右一対のガイド11に沿ってプリント基板Pや部品供給ユニット3の部品取出し位置(部品吸着位置)上方を個別にY方向に移動する。
【0026】
ビーム8にはその長手方向、すなわちX方向にX軸モータ12によりガイド(図示せず)に沿って移動する装着ヘッド20がそれぞれθ軸モータ14(図示せず)により回動可能に設けられている。各装着ヘッド20には、n(nは、1以上の整数)本の吸着ノズルの任意のものを上下動させるための上下軸モータ13が搭載され、また、θ軸モータ14が搭載されている。したがって、装着ヘッド20の各吸着ノズルは、X方向およびY方向(平面方向)に移動可能であり、垂直線回りに回転可能で、かつ上下動可能となっている。
【0027】
部品認識カメラ16は、吸着ノズルに吸着保持された電子部品を下方向から撮像するカメラである。
【0028】
基板認識カメラ18は、装着ヘッド20に取り付けられており、プリント基板Pに付された位置決めマークを撮像するカメラである
また、本実施形態の電子部品装着装置の機能ブロックを示すと、図2に示さるようになる。
【0029】
なお、図2においては、一つのブロックしか図示していないが、部品認識カメラ16、基板認識カメラ18、X軸モータ12、Y軸モータ9、上下軸モータ13、θ軸モータ14は、各々の系にそれぞれ存在する。
【0030】
電子部品装着装置1の各部は、CPU(Central Processing Unit)30の指示を受け、制御される。そして、この制御に係るプログラムを格納するROM(Read Only Memory)31および各種データを格納するRAM(Random Access Memory)32がバスライン33を介して接続されている。また、CPU30には操作画面等を表示するモニタ34およびそのモニタ34の表示画面に形成された入力手段としてのタッチパネルスイッチ35がインターフェース36を介して接続されている。また、Y軸モータ9、X軸モータ12、上下軸モータ13、θ軸モータ14が駆動回路38、インターフェース36を介してCPU30に接続されている。
【0031】
RAM32には、部品装着に係るプリント基板Pの種類毎に装着データが記憶されており、その装着順序毎(ステップ番号毎)に、プリント基板P内での各電子部品の装着座標のX方向、Y方向および角度情報や、各部品供給ユニット3の配置番号情報等が格納されている。また、RAM32には、各部品供給ユニット3の部品供給ユニット配置番号に対応した各電子部品の種類の情報、部品配置データが格納されており、さらには、形状データ・認識データ・制御データ・部品供給データから成る部品ライブラリデータが格納されている。また、RAM32には、電子部品装着装置の管理データなども格納されている。
【0032】
画像認識処理装置37は、インターフェース36を介して、CPU30に接続されており、部品認識カメラ16により撮像して取込まれた画像の認識処理がこの画像認識処理装置37にておこなわれ、CPU30に処理結果が送出される。すなわち、CPU30は、部品認識カメラ16により撮像された画像を認識処理(位置ずれ量の算出など)するように指示を画像認識処理装置37に出力すると共に、認識処理結果を画像認識処理装置37から受取るものである。
【0033】
次に、本実施形態に係る電子部品装着装置の部品の装着動作の概要について説明する。
【0034】
先ず、プリント基板Pの生産運転が開始され、プリント基板Pが上流側装置(図示せず)より受継がれて供給コンベア4上に存在すると、供給コンベア4上のプリント基板Pを位置決め部5へ移動させ、位置決め固定する。そして、RAM32に格納された装着データ、すなわちプリント基板P上の装着すべきXY座標位置、鉛直軸線回りへの回転角度位置およびフィーダ番号(各部品供給ユニット3の配置番号)等が指定された装着データに従い、Y方向は、Y軸モータ9を駆動させて一対のガイド11に沿って、ビーム8を移動させ、X方向は、X軸モータ12を駆動させて対応する装着ヘッド20の吸着ノズルのいずれかを装着すべき電子部品を供給する所定の部品供給ユニット3上方に移動させ、上下軸モータ13を駆動させて吸着ノズルを下降させて電子部品を吸着して取出すことになる。
【0035】
さらに、部品認識カメラ16上方に吸着ノズルを移動させながら吸着保持された電子部品を撮像(フライ撮像)して画像認識処理装置37で認識処理し、また、ビーム8をプリント基板P上方へ移動させてプリント基板Pに付された位置決めマークを基板認識カメラ18で撮像して画像認識処理装置37で位置ずれ量を認識処理し、それらの結果に基づき、再び基板Pの装着位置上方へ移動させて吸着ノズルが装着データの装着座標に両認識結果を加味して位置ずれを補正しつつ、それぞれ当該装着ヘッド20の吸着ノズルに吸着保持された全電子部品をプリント基板P上に装着する。
【0036】
このようにして、1枚のプリント基板P上へ装着すべき電子部品を全て終了するまで、電子部品の吸着、認識、装着が繰り返され、全て終了すると、位置決め部5から排出コンベア6にプリント基板Pが搬送され、1枚目のプリント基板Pの電子部品装着に係る生産が終了し、2枚目のプリント基板Pに対する生産がおこなわれることになる。
【0037】
次に、図3ないし図5を用いて本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置の処理に用いられるデータ構造について説明する。
図3は、ビーム実行制御テーブルの一例を示す図である。
図4は、部品装着データの一例を示す図である。
図5は、干渉領域テーブルの一例を示す図である。
【0038】
これらのテーブルは、RAM32に格納され、CPU30が実行する制御プログラムの中で参照される。
【0039】
ビーム実行制御テーブルは、CPU30が実行する制御プログラムが、各々のビームを実行するための制御に用いられるデータを格納するテーブルである。
【0040】
ビーム実行制御テーブルは、図3に示されるように、各々のビームに対して優先度、実行ステップのデータを格納している。
【0041】
「優先度」は、現在の各々のビームに対して、どちらのビームを優先して制御するかを示すための用いられる指標であるデータを示す優先度の値である。この優先度を用いたビームの制御については、後に詳説する。
【0042】
「実行ステップ」は、現在実行中の部品装着データの実行ステップを示すIDである。
【0043】
部品装着データは、Aビーム、Bビームの各ビームにおいて、各々の部品を部品供給ユニット3のフィーダから装着ヘッド20の吸着ノズルより、吸着するステップ、部品認識カメラ16による吸着ノズルに吸着した認識するステップ、基板Pに対して部品を装着するステップの各々の動作を記述するためのデータである。
【0044】
部品装着データは、図4に示されるように、X、Y、θ、サイクル、動作種別、フィーダ番号のデータを格納している。
【0045】
「X」、「Y」、「θ」は、部品を装着する座標を表すデータである。
【0046】
「サイクル」は、一連の吸着、認識、装着からなる動作単位を表すサイクルを示す番号を示すデータである。すなわち、同じサイクルに属するステップの動作は、連続しておこなわれる。
【0047】
「動作種別」は、そのステップ内でおこなう動作の種別を表す。すなわち、「吸着」のときには、部品供給ユニット3から装着ヘッド20が吸着ノズルにより、部品を吸着し、「認識」のときには、吸着ノズルにより吸着された部品を、認識カメラ16の近傍にもっていき、撮像して内部に画像データとして取り込み、認識処理をおこなう。「装着」のときには、その部品を基板の該当位置に装着する。
【0048】
「フィーダ番号」は、部品供給ユニット3のフィーダの番号を表すデータである。図示しないがフィーダ番号と部品の種別表す部品IDは、部品配置データにより一意的に対応付けられている。また、部品ライブラリには、部品IDの部品の形状や仕様を表すデータが格納されている。
【0049】
図の例では、サイクル番号=1のサイクル(以下、単に「サイクル1」ともいう)の中において、ステップ001で、フィーダ番号101のフィーダから部品の吸着がおこなわれ、ステップ004で、部品認識カメラ16により、認識がおこなわれ、ステップ009で、(X,Y,θ)=(50,30,0)の位置に部品が装着されることになる。
【0050】
干渉領域テーブルは、各々のビームでの干渉領域のY座標データをサイクルごとに保持するテーブルであり、図5に示されるように、各々の「サイクル」ごとに「「干渉領域座標」を有している。
【0051】
「サイクル」は、既に説明したように、一連の吸着、認識、装着からなる動作単位を表すサイクルを示す番号を示すデータである。
【0052】
「干渉領域座標」は、各々Aビーム、Bビームが現在実行中のサイクルで占有する領域を示す座標値であり、そのビームがあるサイクルの中のステップで最大動く可能性のある座標を示すデータである。相手のビームとしては、この干渉領域座標の示す干渉領域に干渉しなければ、並行して動作可能であり、干渉領域座標の示す干渉領域に干渉するときで、かつ、そのビームの優先度が低いときには、待機することになる。
【0053】
「干渉領域座標」は、そのビームのステップが実行される毎に、最新の値に更新される。
【0054】
図の例では、Aビームのサイクル1は、ビームの基準位置の原点からY座標データが350mmになる位置まで動く可能性のあるステップを含むことを示している。
【0055】
次に、図6Aないし図8を用いて本発明の実施形態に係る電子部品装着装置の処理について説明する。
図6A,6Bは、本発明の一実施形態に係る二つの装着ヘッドにより電子部品の装着をおこなう電子部品装着装置の上面から見た模式図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置の基板の部品装着に関する処理を示すフローチャートである。
【0056】
図8は、本発明の一実施形態に係る電子部品装着装置の各々のビームによる優先度をつけたときの処理順序を示す図である。
【0057】
電子部品装着装置の制御は、CPU30がRAM32に格納された制御プログラムを実行することによりおこなわれる。
【0058】
先ず、CPU30が実行する制御プログラムは、図3ないし図5に示される制御テーブルの初期化をおこなう(S01)。
【0059】
先ず、基板に対応する部品装着データを、HDDなどの補助記憶装置から読み込み、各々のサイクルに対応するステップから、Aビーム、Bビームのそれぞれに対応するサイクルの干渉領域を求めて、図5に干渉領域テーブルの干渉領域座標をセットする
次に、図3に示されるビーム実行制御テーブルに、Aビーム、Bビームの各々の現在のサイクルにおける干渉領域座標と、実行ステップを設定する。
【0060】
また、ビーム実行制御テーブルに、Aビーム、Bビームの優先度の初期値を設定する。ここでは、Aビーム優先度の初期値を、1、Bビーム優先度の初期値を、2とする。
【0061】
本実施形態におけるビームの優先度は、1、2、3、4のいずれかの整数をとるものとし、優先度の順は、1>2>3>4とし、4に対しては、ループして、4>1になるものとする。
【0062】
次に、上流工程から、各々のレーンに対して基板Pの搬入をおこなう(S02)。
【0063】
次に、ビーム制御テーブルを参照し、Aビーム、Bビームのいずれかの優先度が高いかを判断し(S03)、優先度の高いビームの部品装着データのステップを実行する(S04)。そして、ビーム制御テーブルのそのビームの実行ステップの値を更新する。このときに、そのビームの干渉領域テーブルの干渉領域座標も更新される。
【0064】
部品装着データのステップを実行し、その基板の装着データが終了したときには(S05)、S02に戻り、そのビームに次の基板を搬入する。
【0065】
その基板の装着データが終了していないときには、部品装着データにおいて、そのビームのサイクルの開始にあたるか否かを判定し(S06)。そのビームのサイクルの開始にあたるときには、ビーム制御テーブルにおけるそのビームの優先度を設定する(S07)。
【0066】
優先度の設定は、相手のビームの優先度が1、2、3のときには、そのビームの優先度を相手のビームの優先度に1を足した優先度にし、相手のビームの優先度が4のときは、そのビームの優先度を1にする。すなわち、自ビームの優先度を相手のビームの優先度より低いものにする。
【0067】
サイクルの途中のときには、そのサイクルの次のステップを実行する。
【0068】
次に、Aビーム、Bビームのいずれかの優先度が高いかを判断して、優先度の低いビームのときには、部品装着データのステップを実行する前に、相手のビームと干渉するか否かを判断する(S08)。これには、ビーム制御テーブルの相手の実行ステップから、部品装着データから相手のビームにおける現在のサイクルを求め、相手のビームの干渉領域テーブルから、干渉領域座標を求め、そのステップにおける実行が干渉するか否かを判断することによりなされる。
【0069】
そして、干渉するときには、そのビームは待機する(S09)。
【0070】
次に、相手のビームの干渉領域座標が更新されるまで待機し、相手のビームのサイクルが終了するか、干渉領域座標が更新されたときには(S10)、S03に戻る。
【0071】
部品装着データのステップの実行の判断で、相手のビームと干渉しないときには、そのビームのステップを実行する(S11)。そして、ビーム制御テーブルのそのビームの実行ステップの値を更新する。このときに、そのビームの干渉領域テーブルの干渉領域座標も更新される。
【0072】
そして、その基板の装着データが終了したときには(S12)、S02に戻り、そのビームに次の基板を搬入する。
【0073】
一方、その基板の装着データが終了していないときには(S12)、S02に戻り、優先度の判定をおこなう。
【0074】
以下、図6A,6Bおよび図8を用いて具体例に基づき説明する。
【0075】
先ず、初期化のために、Aビームの優先度=1、Bビームの優先度=2とする(図7、S01)。
【0076】
このとき、Aビームの優先度とBビームの優先度を比較して(S02)、Aビームの優先度が、高いのでAビームのサイクル1が終了まで優先的に実行される。
【0077】
この様子は、図6Aに示されている。
【0078】
Bビームは、優先度がAビームより低いので、Aビームの干渉領域に干渉しないときに限り動作することができる。Bビームのサイクル1の吸着、認識のステップは、Aビームと干渉領域に干渉せず、Bビームのサイクル1の装着ステップの途中のステップで干渉をおこしたとする。このときには、図6Aに示されるように、Bビームのサイクル1の吸着、認識のステップは、Aビームに関わらず動作可能であり、Bビームは、サイクル1の装着ステップで、待機してAビームのサイクル1と干渉しなくなるのを待つ(S08、S09)。
【0079】
Aビームのサイクル1が終了すると、Aビームの優先度を設定する(S07)。Aビームの優先度は、Bビームの優先度の2に1を足して、3とする。
【0080】
Bビームでは、Aビームのサイクルが終了したので(S10)、ビームの優先度を比較する(S03)。このとき、Aビームの優先度=3、Bビームの優先度=2で、待機していたBビームのサイクル1の装着ステップを実行する。これにより、図6Aから図6Bに示す状態に移行する。
【0081】
Aビームの優先度とBビームの優先度を比較すると、Aビームの優先度は、Bビームに比べて低いので、Bビームの干渉領域に干渉しないときに限り動作することができる。Aビームのサイクル1の吸着、認識のステップは、Bビームのサイクル1の干渉領域に干渉しないものとする。
【0082】
Bビームのサイクル1が終了すると、Bビームの次の優先度を設定する(S07)。Bビームの次の優先度は、Aビームの優先度=3に1を足して、4とする。
【0083】
そして、Bビームのサイクル1が終了すると、Aビームの優先度=3、Bビームの優先度=4で、Aビームの優先度が高くなり、それ以降のAビームのサイクル2のステップは、全て優先的に動作する。
【0084】
Bビームのサイクル2では、Aビームの優先度より低いが、全て吸着、認識、装着のステップで全てAビームのサイクル2と干渉しなかったものとする。
【0085】
そして、Bビームのサイクル2が終了した段階で、Aビームのサイクル2が終了していないものとすると、相手のAビームの優先度=3に1を足して、再び4とする。
【0086】
次のBビームのサイクル3も、Aビームの優先度より低いが、吸着、認識のステップで、Aビームのサイクル2と干渉しなかったものとする。
【0087】
そして、Aビームのサイクル2が終了すると、Aビームの次の優先度を設定する。Bビームの優先度=4だから、Aビームの次の優先度は、1とする。
【0088】
上述した優先度のルールより、Bビームの優先度=4は、Aビームの優先度=1に優先するので、それ以降のサイクル3は、Bビームが優先的に動作する。
【0089】
Aビームのサイクル3では、吸着、認識では、Bビームの干渉領域と干渉しなかったが、装着の途中で干渉するステップが生じたとすると、待機し、Bビームの3サイクルと干渉しなくなるのを待つ。
【0090】
Aビームのサイクル3の待機していたステップが、Bビームの3サイクルと干渉しなくなったとき、Aビームのサイクル3の装着ステップの実行を再開する。
【0091】
Bビームの3サイクルの終了が終了すると、相手のAビームの優先度=1に1を足して、2とする。
【0092】
以下、同じように、AビームとBビームの動作を制御する。
【符号の説明】
【0093】
1…電子部品装着装置、3…部品供給ユニット、8…ビーム、16…部品認識カメラ、20…装着ヘッド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10