(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794870
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】バイブレータ引抜きシステム
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
E21D11/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-200119(P2011-200119)
(22)【出願日】2011年9月14日
(65)【公開番号】特開2013-60747(P2013-60747A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】本田 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信二
(72)【発明者】
【氏名】賀川 昌純
(72)【発明者】
【氏名】和智 真太郎
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−213867(JP,A)
【文献】
特開2007−332666(JP,A)
【文献】
特開2002−030893(JP,A)
【文献】
実開平03−099099(JP,U)
【文献】
特開昭57−197370(JP,A)
【文献】
特開2010−285769(JP,A)
【文献】
特開2001−262986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 10/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内周と型枠外周の間に形成され、強化用鉄筋構造が内周位置に配置された二次覆工コンクリートの注入空間の内に挿入されるコンクリート締固め用の棒状バイブレータと、トンネル長手方向の前記注入空間の外で前記強化用鉄筋構造と前記トンネル内周との間に形成された作業空間に配設されて前記注入空間に向けて直線往復動し、前記注入空間から離間する方向への移動時に前記棒状バイブレータの外周を把持するとともに、前記注入空間へ向けて接近する方向への移動時には把持を解消して、その往復作動に伴って間欠的に前記棒状バイブレータを前記注入空間の内から前記作業空間へ引き抜くバイブレータ引抜き装置と、前記バイブレータ引抜き装置をトンネル内周方向の前記作業空間の外へ退入させ、ないし前記強化用鉄筋構造を越えて外周方向の前記作業空間の内へ進出させる進退移動装置とを備え、かつ前記バイブレータ引抜き装置に取り付けられる第1ワイヤ係止具と、前記棒状バイブレータの外周に取り付けられる第2ワイヤ係止具と、前記バイブレータ引抜き装置を退入させた状態で前記第1ワイヤ係止具に一端が係止され、他端が前記第2ワイヤ係止具に係止されるワイヤ部材と、前記ワイヤ部材を前記作業空間の外から前記作業空間の内へ経由させるワイヤ経由部材とを備えるバイブレータ引抜きシステム。
【請求項2】
トンネル内周と型枠外周の間に形成され、強化用鉄筋構造が内周位置に配置された二次覆工コンクリートの注入空間の内に挿入されるコンクリート締固め用の棒状バイブレータと、トンネル長手方向の前記注入空間の外で前記強化用鉄筋構造と前記トンネル内周との間に形成された作業空間の外下方に配設されてトンネル長手方向で直線往復動可能な移動体と、前記移動体に取り付けられる第1ワイヤ係止具と、前記棒状バイブレータの外周に取り付けられる第2ワイヤ係止具と、前記第1ワイヤ係止具に一端が係止され、他端が前記第2ワイヤ係止具に係止されるワイヤ部材とを備えるバイブレータ引抜きシステム。
【請求項3】
前記第2ワイヤ係止具は係止操作片を備えており、当該係止操作片に前記ワイヤ部材の他端が係止されていて、前記ワイヤ部材が引かれたときの前記係止操作片の一方向への操作によって前記第2ワイヤ係止具が前記棒状バイブレータと一体化させられ、前記係止操作片の他方への操作によって前記第2ワイヤ係止具の前記棒状バイブレータとの一体化が解消されるようになっている請求項1又は2に記載のバイブレータ引抜きシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル二次覆工の打設コンクリート中から棒状バイブレータを引き抜くためのバイブレータ引抜きシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内周と型枠外周の間に形成された二次覆工コンクリートの注入空間内に棒状バイブレータを挿置しておき、コンクリートを打設した後に上記バイブレータを引き抜きつつその先端に設けた振動体の振動でコンクリートを締め固めることが行われており、特許文献1にはこれに使用されるバイブレータ引抜き装置の一例が示されている。このバイブレータ引抜き装置は、トンネル長手方向の注入空間に隣接する作業空間に配設されて注入空間に向けて直線往復動し、注入空間から離間する方向への移動時に棒状バイブレータの外周を把持するとともに、注入空間へ向けて接近する方向への移動時には把持を解消して、その往復作動に伴って間欠的に棒状バイブレータを注入空間内から作業空間へ引き抜いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−213867
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トンネル内周から一定間隔離れた内方に強化用鉄筋構造を配設し、移動した型枠とトンネル内周との間に形成された注入空間内に上記鉄筋構造が位置するようにして二次覆工の打設コンクリートのさらなる構造強化を図ることがある。このような鉄筋構造は通常、鉄筋を格子状に組んだものである。
【0005】
この場合、棒状バイブレータ7を引き抜くための作業空間WSは
図5に示すように、強化用鉄筋構造RSとトンネルT内周との間に形成される。
図5中Fはトンネル長手方向へ移動可能な型枠、ISは型枠とトンネルT内周の間に形成された注入空間であり、注入空間ISはトンネル長手方向の端部が仕切板Pによって閉鎖されている。
【0006】
棒状バイブレータ7は仕切板Pを貫通して注入空間IS内から作業空間WSへ引き抜く必要があり、この引抜きを行うために、詳細を後述するようにバイブレータ引抜き装置3を昇降装置4によって強化用鉄筋構造RSを越えて外周方向の作業空間WS内へ上昇進出させるようにしたものが知られている。
【0007】
しかし、バイブレータ引抜き装置3を、強化用鉄筋構造RSを越えて作業空間WS内へ上昇させるためには、
図6に示すように、この領域RS1で鉄筋Bの格子構造を解体しておく必要があり、鉄筋Bの解体とバイブレータ引抜き後の再組付けに多大の手間を要するという問題があった。なお、
図5中の各符号を付した部分は後述する実施形態のものに対応している。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、強化用鉄筋構造の解体や再組付けの必要がなく棒状バイブレータの引抜き作業を簡易かつ迅速に行うことができるバイブレータ引抜きシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本第1発明では、強化用鉄筋構造(RS)が内周位置に配置されトンネル(T)内周と型枠(F)外周の間に形成された二次覆工コンクリートの注入空間(IS)内に挿入されるコンクリート締固め用の棒状バイブレータ(7)と、トンネル長手方向の注入空間(IS)外で強化用鉄筋構造(RS)とトンネル(T)内周との間に形成された作業空間(WS)に配設されて注入空間(IS)に向けて直線往復動し、注入空間(IS)から離間する方向への移動時に棒状バイブレータ(7)の外周を把持するとともに、注入空間(IS)へ向けて接近する方向への移動時には把持を解消して、その往復作動に伴って間欠的に棒状バイブレータ(7)を注入空間(IS)内から作業空間(WS)へ引き抜くバイブレータ引抜き装置(3)と、バイブレータ引抜き装置(3)をトンネル内周方向の作業空間(WS)外へ退入させないし強化用鉄筋構造(RS)を越えて外周方向の作業空間(WS)内へ進出させる進退移動装置(4)とを備え、かつバイブレータ引抜き装置(3)に取り付けられる第1ワイヤ係止具(81,82)と、棒状バイブレータ(7)の外周に離脱可能に取り付けられる第2ワイヤ係止具(83,84)と、バイブレータ引抜き装置(3)を退入させた状態で第1ワイヤ係止具(81,82)に一端が係止され、他端が第2ワイヤ係止具(83,84)に係止されるワイヤ部材(85)と、ワイヤ部材(85)を作業空間(WS)外から作業空間(WS)内へ経由させるワイヤ経由部材(23)とを備える。
【0010】
本第1発明においては、既設のバイブレータ引抜き装置を使用し、これを作業空間外へ退入させた状態で、その往復作動を利用して棒状バイブレータを間欠的に注入空間内から作業空間へ引き抜くことができる。したがって、強化用鉄筋構造の解体や再組付けを行うことなく簡易かつ迅速に棒状バイブレータの引抜き作業を行うことができる。
【0011】
本第2発明では、強化用鉄筋構造が内周位置に配置されトンネル内周と型枠外周の間に形成された二次覆工コンクリートの注入空間内に挿入されるコンクリート締固め用の棒状バイブレータと、トンネル長手方向の注入空間外で強化用鉄筋構造とトンネル内周との間に形成された作業空間の下方に配設されてトンネル長手方向で直線往復動可能な移動体と、移動体に取り付けられる第1ワイヤ係止具と、棒状バイブレータの外周に離脱可能に取り付けられる第2ワイヤ係止具と、第1ワイヤ係止具に一端が係止され、他端が第2ワイヤ係止具に係止されるワイヤ部材とを備える。
【0012】
本第3発明では、第2ワイヤ係止具(83,84)は係止操作片(834)を備えており、当該係止操作片(834)にワイヤ部材(85)の他端が係止されていて、ワイヤ部材(85)が引かれたときの係止操作片(834)の一方向への操作によって第2ワイヤ係止具(83,84)が棒状バイブレータ(7)と一体化させられ、係止操作片(834)の他方への操作によって第2ワイヤ係止具(83,84)の棒状バイブレータ(7)との一体化が解消されるようになっている。
【0013】
本第3発明においては、係止操作片を設けたことによって第2ワイヤ係止具の棒状バイブレータへの一体化ないしその解消を迅速に行って、バイブレータ引抜き装置ないし移動体の往復作動による棒状バイブレータの引抜きを効率的に行うことができる。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のバイブレータ引抜きシステムによれば、強化用鉄筋構造の解体や再組付けの必要がないから、棒状バイブレータの引抜き作業を簡易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態を示す、バイブレータ引抜きシステムの全体側面図である。
【
図2】バイブレータ引抜き装置の垂直断面図で、
図1のII−II線に沿った断面図である。
【
図5】従来のバイブレータ引抜きシステムを示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
図1にはバイブレータ引抜きシステムの全体側面図を示す。
図1において、移動式型枠Fの外周とトンネルT内周との間に形成された注入区間IS内には二次覆工コンクリートCが打設されている。注入空間ISとトンネル長手方向へ仕切板Pによって区画されて作業空間WSが形成されており、これら注入空間ISと作業空間WSにはトンネル内周から一定間隔をおいた内方位置に強化用鉄筋構造RSが配設されている。強化用鉄筋構造RSは従来技術で説明したような鉄筋Bを格子状に組んだものであり(
図5参照)、本実施形態では従来のものと異なって格子構造は全ての領域で保たれていて解体されていない。
【0019】
移動式型枠Fに一体的に設けられて、作業空間WSの強化用鉄筋構造RSの下方をトンネル長手方向へ枠状基台1が延びており、当該枠状基台1には長手方向の二箇所に上端が強化用鉄筋構造RSの直下に至るガイド柱11が立設されている。そして、前後のガイド柱11に前後端部が嵌装されてこれらに沿って上下動可能に支持架台2が配設されている。支持架台2は起立姿勢の左右一対のコ字鋼よりなる支持枠21(
図2)を備えており、支持枠21上にバイブレータ引抜き装置3が固定されている。
【0020】
支持架台2には長手方向の中間位置に進退移動装置としての公知の構造の昇降装置4が設けられている。昇降装置4は、対称形にトンネル長手方向の前後へそれぞれ延びる各一対のリンクアーム41,42を備えており、各リンクアーム41,42は互いに回動可能に連結されている。前後のリンクアーム41の基端はそれぞれ駆動機構43の回転軸431に結合されており、基端の外周に形成された歯形部411同士が互いに噛合している。
【0021】
各リンクアーム42の先端は昇降脚44の中間位置に回動可能に連結されている。各昇降脚44は基端が支持架台2の下面に回動可能に連結されるとともに、その中間位置に水平方向へ突設したピン体441が枠状基台1の上面に摺動可能に接している。昇降装置4を上昇作動させる場合には、リンクアーム41を互いに接近する方向へ回動させると、リンクアーム42を介して、ピン体441を互いに接近する方向へ摺動させつつ昇降脚44が起立姿勢へ回動し(
図5参照)、これに伴って支持架台2が上昇させられる。
【0022】
バイブレータ引抜き装置3は公知の構造で、支持架台2に沿って設けられた油圧シリンダ22、油圧シリンダ22のロッド221に連結されて軸体321を中心に回動する第1レバー32、第1レバー32に連結されて軸体331を中心に回動し下側挟持体51(
図2)を備える第2レバー33、および第2レバー33に連結されて軸体341を中心に回動し上側挟持体52(
図2)を備える第3レバー34を有しており、各レバー32〜34は、支持架台2上にこれに沿って移動可能に設置された装置本体35(
図2)上に取り付けられている。
【0023】
従来、強化用鉄筋構造RSが設けられている部分でバイブレータ引抜き装置3を使用する場合には、既に従来技術の項で説明したように上記鉄筋構造RSを部分的に解体しておき、
図4に示すように昇降装置4で支持架台2を上昇させて、支持架台2上に設けたバイブレータ引抜き装置3および洗浄リング6を、鉄筋構造RSを解体した領域RS1(
図6)を経て作業空間WS内へ進出させる。そして、洗浄リング6を通過させた棒状バイブレータ7の棒体部71を、バイブレータ引抜き装置3の下側挟持体51と上側挟持体52の間に挿通させる。なお、棒状バイブレータ7の先端には紡錘状のロケット金具72が装着されている。
【0024】
この状態で油圧シリンダ22のロッド221を伸長させてバイブレータ引抜き装置3を注入空間ISへ向けて接近する方向へ移動させると、この間は上下の挟持体51,52は棒状バイブレータ7の棒体部71の外径よりも対向間隔を大きく維持されて把持が解消されている。この後、油圧シリンダ22のロッド221を収縮させて、バイブレータ引抜き装置3を注入空間ISから離間する方向へ移動させると、各レバー32〜34が作動して上下の挟持体51,52の対向間隔が小さくなって棒状バイブレータ7の棒体部71が把持され、バイブレータ引抜き装置3の移動に伴って棒状バイブレータ7が注入空間IS内から作業空間WSへ引き抜かれる。このようなバイブレータ引抜き装置3の往復作動を繰り返すことによって、間欠的に棒状バイブレータ7が注入空間IS内から引き抜かれる。
【0025】
これに対して本実施形態では、強化用鉄筋構造RSが設けられた領域では、
図1に示すようにバイブレータ引抜き装置3は上記鉄筋構造RSと干渉しない下方へ下降退入させられる。そして、バイブレータ引抜き装置3の頂部になる第3レバー34の中間位置に、ブラケット81がピンボルト811で取り付けられ、これにシャックル82が係止されている。ここで、ブラケット81とシャックル82は第1ワイヤ係止具を構成している。ブラケット81は
図3に示すように略コ字形をなし、両脚部811の通孔813に挿入した上記ピンボルト811をバイブレータ引抜き装置3の取付穴に結合する。そして、ブラケット81の頭部812背面の突出部に設けた取付穴814に上記シャックル82を取り付ける。
【0026】
一方、支持架台2の、注入空間ISから遠い側の端部上にはワイヤ経由部材としてのシーブ受け体23を立設する。シーブ受け体23の頂部は強化用鉄筋構造RSに近接する位置にあり、ここにシーブ231が水平軸体によって起立姿勢で回転可能に支持されている。また、棒状バイブレータ7の棒体部71にはクランプ具83が装着されている。クランプ具83の詳細を
図4に示す。クランプ具83は平面視で略U字形をなし、両脚部831の対応位置に棒状バイブレータ7の棒体部71の外径よりやや大きい内径の開口833が設けてある。そしてこれら開口833に上記棒体部71を挿通させてクランプ具83を
図1に示すように作業空間WS内の棒状バイブレータ7の棒体部71に装着する。
【0027】
クランプ具83の頭部832には係止操作片834が設けてあり、係止操作片834は内端部が頭部832に軸体835によって回動可能に取り付けられている。係止操作片834の内端面836は軸体835の中心に対し漸次遠ざかるカム面に形成してあり、係止操作片834を注入空間ISから遠ざかる方向である
図4の矢印方向へ回動させると内端面836が内方へ進出して棒状バイブレータ7の棒体部71外周に圧接する。係止操作片834の外端部には取付穴837が設けられて、ここにシャックル84(
図1)が取り付けられる。ここで、クランプ具83とシャックル84は第2ワイヤ係止具を構成している。そして、作業空間WS外へ退入したバイブレータ引抜き装置3に設けたシャックル82にワイヤ部材85の一端を係止し、これをシーブ231に懸架して作業空間WS内へ反転させて、ワイヤ部材85の他端をクランプ具83のシャックル84に係止させる。
【0028】
このような構造において、油圧シリンダ22のロッド221を伸長させてバイブレータ引抜き装置3を注入空間ISへ向けて接近する方向へ移動させると、ワイヤ部材85が引かれてクランプ具83の係止操作片834が注入空間ISから離間する方向へ回動させられ、係止操作片834の内端面836が棒状バイブレータ7の棒体部71外周に圧接させられるから、棒状バイブレータ7はワイヤ部材85の張力を受けて注入空間IS内から作業空間WSへ引き抜かれる。
【0029】
油圧シリンダ22のロッド221を収縮させてバイブレータ引抜き装置3を注入空間ISから離間する方向へ移動させると、ワイヤ部材85は弛む。そこで、クランプ具83の係止操作片834を注入空間ISへ接近する方向へ戻し回動させると、棒状バイブレータ7の棒体部71外周に対する係止操作片内端面836の圧接が解消されて、クランプ具83を棒状バイブレータ7の棒体部71に沿って注入空間IS方向へ移動させることができる。
【0030】
この後、再び油圧シリンダ22のロッド221を伸長させてバイブレータ引抜き装置3を注入空間ISへ向けて接近する方向へ移動させ、ワイヤ部材85によって棒状バイブレータ7を注入空間IS内から作業空間WSへ引き抜く。以上の作業を繰り返すことによって、間欠的に棒状バイブレータ7を注入空間IS内から作業空間WSへ引き抜くことができる。
【0031】
なお、本実施形態の構造によれば、強化用鉄筋構造RSが設けられていない範囲(通常は設けられていない範囲の方が多い)では、前述したようにバイブレータ引抜き装置3を作業空間WS内へ上昇進出させて当該引抜き装置3で棒状バイブレータ7の引き抜きを行うことができる。この場合はブラケット81やシーブ受け体23は取り去っておく。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、昇降式のバイブレータ引抜き装置を作業空間外へ退入させた状態で、その往復作動を利用して棒状バイブレータを注入空間内から作業空間へ引き抜くことができる。したがって、強化用鉄筋構造の解体や再組付けを行うことなく簡易かつ迅速に棒状バイブレータの引抜き作業を行うことができる。なお、バイブレータ引抜き装置を使用せず、ワイヤ部材を引くための移動体をバイブレータ引抜き装置に代えてあるいはこれと別体に設けるようにしても良い。また、ワイヤ経由部材は必ずしも上記実施形態に示したシー部受け体の構造に限定されるものではなく、またワイヤ経由部材は省略することもできる。
【符号の説明】
【0033】
F…型枠、IS…注入空間、RS…強化用鉄筋構造、T…トンネル、WS…作業空間、23…シーブ受け体(ワイヤ経由部材)、3…バイブレータ引抜き装置、4…進退移動装置、7…棒状バイブレータ、81…ブラケット、(第1ワイヤ係止具)、82…シャックル(第1ワイヤ係止具)、83…クランプ具(第2ワイヤ係止具)、834…係止操作片、84…シャックル(第2ワイヤ係止具)、85…ワイヤ部材。