(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献5の洗浄法は、PCBを確実に除去することができるものの、洗浄液のイソプロピルアルコールが多量に、しかも高濃度で紙素子が保管されることとなる。
このイソプロピルアルコールは、沸点が82.4℃と通常の有機溶剤(n−ヘキサン、アセトン等)よりは高いので、洗浄素子からなかなか除去できない、という問題がある。
【0006】
このような高濃度のイソプロピルアルコール(IPA)を含む例えば紙素子等は、保管管理する場合に、そのIPA臭対策等の厳重な管理が必要となる。
【0007】
また、紙素子は上質紙であるので再利用が可能であるが、イソプロピルアルコールを多量に含む場合には、再利用に関する作業環境が悪化すると共に、ハンドリング性が困難である、という問題がある。
【0008】
そこで、本発明者等は、先に、紙素子からのイソプロピルアルコールに対して洗浄水を用いて除去する除去装置の提案をした(特許文献6)。
【0009】
しかしながら、特許文献6の提案では、洗浄水を多量に使用する結果、洗浄排水の処理として、水熱分解処理装置で処理する必要があり、水熱分解処理装置での処理負荷がかかるという問題がある。
【0010】
そこで、水熱分解処理装置での負荷が無い、イソプロピルアルコール等の洗浄溶剤を除去することが切望されている。
【0011】
本発明は、前記問題に鑑み、PCB汚染物である紙素子等の非鉄・金属類以外のPCB汚染物質を洗浄した後で、各種洗浄溶剤を除去することができる非鉄・金属類以外のPCB汚染
物の処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、
非鉄・金属類以外のPCB汚染物
質を洗浄溶剤で洗浄する洗浄装置と、前記洗浄装置で洗浄した後、洗浄したPCB汚染処理物中に含浸する洗浄溶剤を分離する洗浄溶剤分離装置と、前記洗浄溶剤分離装置で溶剤を除去した溶剤除去PCB汚染処理物を乾燥する乾燥装置と、乾燥後の乾燥PCB汚染処理物中の含有PCBの有無を判定する溶出判定装置とを具備し、前記洗浄溶剤分離装置が、一対の対向するローラを有し、PCB汚染処理物から洗浄溶剤を搾り取るローラ部と、前記ローラ部で搾られるPCB汚染処理物に洗浄溶剤を噴霧する噴霧手段と、前記ローラ部で搾られた溶剤除去PCB汚染処理物を受け取る受け皿と、搾り取られた洗浄溶剤及び噴霧した洗浄溶剤を回収する溶剤回収部とを具備することを特徴とする
非鉄・金属類以外のPCB汚染物
質の処理装置にある。
【0017】
第
2の発明は、第
1の発明において、前記洗浄溶剤分離装置で分離する際、イソプロピルアルコール又はヘキサンで洗浄することを特徴とする
非鉄・金属類以外のPCB汚染物
質の処理装置にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、PCB汚染物である紙素子等の非鉄・金属類以外のPCB汚染物質を洗浄した後で、各種洗浄溶剤をさらに分離除去することで、従来のように、洗浄水を用いて除去する必要がなくなり、従来における洗浄水の水熱分解処理装置での処理負荷の低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
本発明による実施例に係る非鉄・金属類以外のPCB汚染物質の処理装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る非鉄・金属類以外のPCB汚染物質の処理装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る非鉄・金属類以外のPCB汚染物質の処理装置は、細分化(例えば粉砕、裁断等)された非鉄・金属類以外のPCB汚染物11を洗浄溶剤12で洗浄する洗浄装置13と、前記洗浄装置13で洗浄した後、洗浄したPCB汚染処理物11A中に含浸する洗浄溶剤12を分離する洗浄溶剤分離装置14と、前記洗浄溶剤分離装置14で溶剤を除去した溶剤除去PCB汚染処理物11Bを洗浄溶剤の沸点近傍(例えば80℃)で乾燥する乾燥装置15と、乾燥後の乾燥PCB汚染処理物11C中の含有PCBの有無を判定する溶出判定装置16とを具備するものである。
【0022】
ここで、本発明でPCB汚染物とは、PCBが含有されていた絶縁油を用いたトランス、コンデンサ等の分解処理物で、粉砕手段や裁断手段により細分化された処理物の内、非鉄、金属以外のPCB汚染の絶縁紙、木、木くず等や、布、布くず、汚泥等のPCBが付着又は含有している汚染物をいう。ここで、布くずや汚泥は、トランス等の構成物ではないが、PCB処理工程において、処理物をふき取ったものや、作業着、その残渣物や、水熱分解処理装置からの汚泥等のPCB汚染品であり、PCB処理設備内で発生したPCB汚染品を例えばドラム缶等に保管されているものをいう。なお、これらのPCB汚染物もPCB除去した後でないと、一般廃棄物として処理することができないので、最終的には溶剤洗浄する必要がある。
【0023】
PCB汚染物11を洗浄する洗浄装置14は、現在稼動しているPCB処理設備での公知のPCB洗浄装置であり、例えば洗浄溶剤として例えばイソプロピルアルコール(IPA)等が用いられており、洗浄液にPCB汚染物11を所定時間又は所定回数浸漬等させて、PCB汚染物11からPCBを洗浄除去している。
【0024】
この洗浄装置13で洗浄・除去されたPCB汚染処理物11Aは、溶剤であるIPAが多量残留されているので、洗浄溶剤分離装置14で洗浄溶剤を分離し、溶剤除去を行うようにしている。
この溶剤除去分離装置14については、実施例2以降で詳述する。
【0025】
溶剤除去PCB汚染処理物11Bは、その後乾燥装置15で乾燥される。
【0026】
また、この乾燥装置15は、例えば防爆乾燥機やマイクロ波乾燥機等により、乾燥を行うようにしている。この乾燥の際、溶剤の気化と極微量残留するPCBの蒸発を促進させるようにしている。
【0027】
この乾燥機での気相組成を、N
2ガス、CO
2ガスのいずれか一方又は両方を用いて乾燥するのが好ましい。
ここで、窒素ガスは、不活性を維持する効果があり、CO
2ガスは、PCBの溶解効果がある。
よって、両者の混合ガスとすることで、乾燥装置内を不活性雰囲気とすると共に、PCBの更なる洗浄効果が発揮され、好ましい。
【0028】
乾燥装置15で所定の乾燥が終了した乾燥PCB汚染処理物11Cは、PCBが残留しているか否かの判定を行う溶出判定装置16で判定がなされる。
【0029】
この溶出判定装置16では、乾燥PCB汚染処理物11Cを判定槽に浸漬等し、判定液中に残留したPCBを溶解させ、判定液中のPCBの濃度を分析手段により測定することで、間接的に残留量を測定するものである。
【0030】
ここで、判定液としては、例えばヘキサン、イソプロピルアルコール又はイソプロピルアルコールと水との混合物、トリクロロエタン、パラフィン系炭化水素を例示することができる。
【0031】
この溶出判定装置16において、処理の基準以下にPCBが除去されると判定されたものは、合格品17Aとなる。この合格品17Aは、排出まで別途保管庫で保管される場合、洗浄溶剤12であるIPAが除去されているので、イソプロピルアルコールを多量に含むことがなく、再利用に関する作業環境の悪化低減すると共に、ハンドリング性も容易となる。
【0032】
不合格品17Bについては、再度洗浄装置13で洗浄するか、極微量のPCBが残存するような場合には、洗浄溶剤分離装置14で洗浄溶剤の除去と共に、PCBの残存量の低減を図るようにしてもよい。
これは、残存する洗浄溶剤12中に、PCBが残留しており、洗浄溶剤分離装置14での溶剤分離の際に、溶剤洗浄を更に行うことで、PCBの濃度が基準以下となる場合もあるからである。
【0033】
よって、従来では、溶出判定装置16での不合格品17Bは、全て洗浄装置13での再洗浄を行う必要があったが、極微量の判定基準近傍の不合格品17Bの処理は、大掛かりな洗浄装置13を用いずとも、洗浄溶剤分離装置14での処理により、PCBの含有濃度を基準値以下とすることが可能となる。
【0034】
本実施例では、洗浄溶剤12として、IPAを用いているが、IPA以外に、アルコール、アセトン、トルエン等を挙げることができる。
【実施例2】
【0035】
本発明による実施例に係る洗浄溶剤分離装置について、図面を参照して説明する。
図2は、実施例2に係る洗浄溶剤分離装置の概略図である。
図2に示すように、本実施例に係る洗浄溶剤分離装置14Aは、一対の対向するローラ21、21を有し、PCB汚染処理物11Aから洗浄溶剤を搾り取るローラ部22と、前記ローラ部22で搾られるPCB汚染処理物11Aに洗浄溶剤(例えばIPA等)12を噴霧する噴霧手段23と、ローラ部22で搾られた溶剤除去PCB汚染処理物11Bを受け取る受け皿24と、搾り取られた洗浄溶剤及び噴霧した洗浄溶剤等の廃液25を回収する溶剤回収部26とを具備するものである。
なお、符号28はPCB汚染処理物11Aを搬送する搬送手段である。
【0036】
PCB汚染処理物11Aは、洗浄溶剤であるIPAを含んでいるので、一対のローラ21、21からなるローラ部22を通過させて、IPAを搾り取るようにしている。
この際、洗浄溶剤供給部27から洗浄溶剤12であるIPAを噴霧してから、含浸する洗浄溶剤12を搾り出して、脱溶剤処理を行うようにしている。
ローラ部22を通過した溶剤除去PCB汚染処理物11Bは、受け皿24で受け取られる。この際、受け皿24の底面にメッシュ状の網24aを設置することで、廃液25は溶剤回収部26で回収できる。
【0037】
また、ローラ21、21は、その表面に溝21aを有することが、溶剤除去機能を発揮する点で好ましい。
また、ローラ部22は、傾斜を持った形で図示しない固定枠で固定し、搾られた洗浄溶剤がローラの一端部へ流れ落ちるようにするようにしている。
これにより、搾り取った溶剤である廃液25の溶剤回収部26への捕集が容易となる。
溶剤が搾り出された溶剤除去PCB汚染処理物11Bは、乾燥後に卒業判定の工程へと運ばれる。
【0038】
一方、搾り出された溶剤は、PCBを含有しているので、水熱分解装置に搬送されて、ここで水熱分解処理される。
【0039】
前記洗浄溶剤分離装置14Aで分離する際、洗浄溶剤12としては、イソプロピルアルコール又はヘキサンを用いることが好ましい。また、IPAを用いる場合には、IPAに水を添加した水希釈溶剤とするのが好ましい。
IPAの水での希釈濃度は、特に限定されるものではないが、例えばIPA60(IPA:60容量%(以下、「%」という)、H
2O:40%)、IPA50(IPA:50%、H
2O:50%)とするのが好ましい。
【0040】
これは、60%IPA水溶液とする場合、IPAの引火点(11.7℃)が上昇し、エタノール(引火点:12.8℃)よりも安全となり、消防法の区分において、非危険物薬品としての取り扱いとなる。また、水で希釈することで、IPAの臭気が無くなり、100%IPAの使用に較べて、作業性も大幅に向上する。
また、IPA60%は、IPA100%に比較して、油やPCBの溶解力は、低下するが、後の乾燥工程での作業性が容易となる。
【実施例3】
【0041】
本発明による実施例に係る洗浄溶剤分離装置について、図面を参照して説明する。
図3は、実施例3に係る洗浄溶剤分離装置の概略図である。
図3に示すように、本実施例に係る洗浄溶剤分離装置14Bは、押圧部31によりPCB汚染処理物11Aから洗浄溶剤を圧縮しつつ搾り取る底部がメッシュ部33aの圧搾機33と、メッシュ部33aより搾り取られた溶剤廃液25を回収する溶剤回収部34とを具備する。
【0042】
本実施例では、細かく裁断されたPCB汚染処理物11Aが圧搾機33の押圧部32の押圧により、洗浄溶剤12がPCB汚染処理物11Aから搾り取られる。
この際、押圧部のピストン32a内に洗浄溶剤12を供給しつつ、押圧することで、さらに洗浄効果を発揮するようにしてもよい。
圧搾機33の底面は、メッシュ部33a以外に、溶剤廃液25を排出するためにパンチングメタルとしてもよい。
【0043】
押圧する際に、PCB汚染処理物11Aを圧搾機33内部に投入し、洗浄溶剤を多く含んだ状態としておき、さらにピストン32aから洗浄溶剤12を供給して、上部から押圧部32で押圧する。この圧縮している際においても、洗浄溶剤12を供給することで搾られた洗浄溶剤が再吸収されることを防止し、洗い流すことができる。
【0044】
溶剤が搾り出された溶剤除去PCB汚染処理物11Bは、乾燥後に卒業判定の工程へと運ばれる。
一方、搾り出された溶剤は、PCBを含有しているので、水熱分解装置に搬送されて、ここで水熱分解処理される。
【実施例4】
【0045】
本発明による実施例に係る洗浄溶剤分離装置について、図面を参照して説明する。
図4は、実施例4に係る洗浄溶剤分離装置の概略図である。
図4に示すように、本実施例に係る洗浄溶剤分離装置14Cは、PCB汚染処理物11Aを一端から他端に搬送する無端ベルト41と、前記無端ベルト41の裏面側より、洗浄溶剤を吸引手段により吸引し、洗浄溶剤を回収する溶剤回収部34と、無端ベルト上で搬送途中のPCB汚染処理物11Aに、洗浄溶剤12を噴霧する噴霧手段23と、溶剤除去PCB汚染処理物11Bを受け取る受け皿24と、を具備する。
【0046】
PCB汚染処理物11Aが、紙や汚泥等の固体スラリー物である場合、搬送ベルトの裏面側より、吸引ポンプP等の吸引手段で吸引することで、スラリーの溶剤分を吸引するようにしている。
この際、洗浄溶剤供給部27からの洗浄溶剤12を噴霧手段23で搬送ベルトの上面側から供給することで、固体スラリー物中の溶剤が吸引ろ過され、紙の内部の毛細孔に含浸している残留溶剤やPCBを引き出すことが可能となる。
【0047】
溶剤が搾り出された溶剤除去PCB汚染処理物11Bは、乾燥後に卒業判定の工程へと運ばれる。
一方、搾り出された溶剤は、PCBを含有しているので、水熱分解装置に搬送されて、ここで水熱分解処理される。
【実施例5】
【0048】
本発明による実施例に係る洗浄溶剤分離装置について、図面を参照して説明する。
図5は、実施例5に係る洗浄溶剤分離装置の概略図である。
図5に示すように、本実施例に係る洗浄溶剤分離装置14Dは、PCB汚染処理物11Aを内部の遠心分離槽51に投入して、遠心分離する遠心分離装置52と、遠心分離槽51内に、洗浄溶剤12を供給する溶剤供給と、遠心分離された洗浄廃液25を回収する溶剤回収部34とを具備する。
【0049】
PCB汚染処理物(図示せず)を遠心分離槽51内に入れ洗浄溶剤12を噴霧する。その後に、遠心脱水操作を行い、溶剤廃液25を分離除去する。遠心脱水時のG値は、2〜5G程度として、回転させるのが好ましい。
洗浄溶剤12の噴霧と遠心脱水の操作とを交互に2〜5回程度繰り返すことで、溶剤分離を完了させる。
【0050】
また、遠心分離槽内部を、加温手段で加温させ、事前に加温した洗浄溶剤12を噴霧し、40〜60℃での脱溶剤操作を行うことで、洗浄溶剤での溶解力を向上させ、溶剤の粘性を低下することで、浸透性と離脱性を向上させるようにしてもよい。
【0051】
溶剤が搾り出された溶剤除去PCB汚染処理物11Bは、乾燥後に卒業判定の工程へと運ばれる。
一方、搾り出された溶剤は、PCBを含有しているので、水熱分解装置に搬送されて、ここで水熱分解処理される。