特許第5794910号(P5794910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794910
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 17/00 20060101AFI20150928BHJP
   H01Q 21/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H02J17/00 A
   H01Q21/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-290133(P2011-290133)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-141347(P2013-141347A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】安間 健一
(72)【発明者】
【氏名】川口 尚士
(72)【発明者】
【氏名】菊地 宏太
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 秀樹
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−032497(JP,A)
【文献】 特開2009−033954(JP,A)
【文献】 特開2001−309581(JP,A)
【文献】 特表2008−507948(JP,A)
【文献】 特開2006−296123(JP,A)
【文献】 特開2006−287451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 17/00
H01Q 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ体で形成され、傾斜地に配置されるアンテナ装置であって、
複数の前記アンテナ体は、各々が傾斜地に立設して配置されると共に各々のアンテナ面が同一方向を向くことによって、仮想的に一つのアンテナ面とされる仮想アンテナ面を形成するように、
異なる高さ毎に配列された複数の前記アンテナ体を1段とし、前記アンテナ体が複数段配置されることで、前記アンテナ体が2次元状に配列されるアンテナ装置。
【請求項2】
電磁波を送電する送電アンテナ、及び前記送電アンテナから送電された電磁波を受電する受電アンテナの少なくとも一方として、請求項1に記載のアンテナ装置を用いる無線電力伝送システム。
【請求項3】
前記受電アンテナとして用いられる前記アンテナ装置が受電する電磁波の位相は、前記仮想アンテナ面で同位相とされる請求項2記載の無線電力伝送システム。
【請求項4】
前記送電アンテナとして用いられる前記アンテナ装置は、前記アンテナ体のアンテナ面が前方に配置された前記アンテナ体に重ならない請求項2又は請求項3記載の無線電力伝送システム。
【請求項5】
前記受電アンテナとして用いられる前記アンテナ装置は、前記アンテナ体のアンテナ面の周面が前方に配置された前記アンテナ体のアンテナ面の周面に重なる請求項2から請求項4の何れか1項記載の無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び無線電力伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波により電力を送電する無線電力伝送システムの開発が進んでいる。
この無線電力伝送システムの一例としては、宇宙空間上で太陽光発電を行い、生成した電力を位相が揃えられてビーム形成された電磁波(マイクロ波)として、宇宙空間上の送電アンテナから地上の受電アンテナへ送る宇宙太陽発電システム(Space Solar Power System、以下、「SSPS」という。)や、送電アンテナから電磁波を離島に配置された受電アンテナへ送電する離島電力伝送システム等が挙げられる。
【0003】
上記のような無線電力伝送システムは、特許文献1に記載されているように、複数のアンテナパネルを直線状又は平面状に接続した構成を有するフェーズドアレイアンテナが用いられる。
そして、例えば、離島電力伝送システムでは、図8に示されるように、上記フェーズドアレイアンテナである大型アンテナ100(例えば一辺数十m)を傾斜地に立設させて、送電アンテナや受電アンテナとして用いることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−287451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型アンテナ100を傾斜地に立設させて用いるためには、複数のアンテナパネルのアンテナ面(パネル面)が同一方向を向くように精度良く施工しなければならない。また、大型アンテナ100が外力により、変形することを防止しなければならない。さらに、大型アンテナ100は、施工することによるコスト高、保守性の低下等も招く。
一方、複数のアンテナパネルで大型アンテナを構成するのではなく、一つのアンテナによってのみ大型アンテナを構成することによって、大型アンテナを施工する上での精度の問題は解消させるが、複数のアンテナパネルで構成する場合に比べて低下する性能を補償するための制御装置等が必要となり、コスト高につながり好ましくない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、傾斜地に容易に施工及び保守ができ、かつ外力によるアンテナ面の変形を抑制できる、アンテナ装置及び無線電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のアンテナ装置及び無線電力伝送システムは以下の手段を採用する。
【0008】
すなわち、本発明の第一態様に係るアンテナ装置は、複数のアンテナ体で形成され、傾斜地に配置されるアンテナ装置であって、複数の前記アンテナ体は、各々が傾斜地に立設して配置されると共に各々のアンテナ面が同一方向を向くことによって、仮想的に一つのアンテナ面とされる仮想アンテナ面を形成するように、異なる高さ毎に配列された複数の前記アンテナ体を1段とし、前記アンテナ体が複数段配置されることで、前記アンテナ体が2次元状に配列される
【0009】
本構成によれば、アンテナ装置は、複数のアンテナ体で形成され、傾斜地に立設される。なお、傾斜地とは、水平面に対して傾き(勾配)を有する土地であり、例えば、斜面の他に、階段状に造成されているものの、アンテナ体が立設される地形全体として傾きを有する地形をも含む。
複数のアンテナ体で形成されるアンテナ装置は、複数のアンテナ体が一体化されていると、傾斜地にアンテナ装置を立設させるにあたり、複数のアンテナ体のアンテナ面が同一方向を向くように精度良く施工し、かつ外力によるアンテナ面の変形を抑制することが難しい。
【0010】
そこで、本構成は、アンテナ装置を形成する複数のアンテナ体各々を傾斜地に立設して配置する。そして、複数のアンテナ体は、各々のアンテナ面が同一方向を向くことによって、仮想的に一つのアンテナ面とされる仮想アンテナ面を形成するように、異なる高さ毎に配列された複数のアンテナ体を1段とし、アンテナ体が複数段配置されることで、アンテナ体が2次元状に配列される
【0011】
複数のアンテナ体は小型であるため、アンテナ体各々を傾斜地に立設して配置させることによって、アンテナ面が同一方向を向くように施行することが容易となる。また、保守の対象は、小型のアンテナ体各々となるので保守性も向上する。さらに、アンテナ面を同一方向に向かせることによって、仮想的に一つのアンテナ面とするように、異なる高さ毎に配列された複数のアンテナ体を1段とされ、アンテナ体が複数段配置されることで、アンテナ体が2次元状に配列されるので、実際に外力を受けるアンテナ体そのものは小型化であるため、外力によりアンテナ面が変形することが抑制される。
従って、本構成は、傾斜地に容易に施工及び保守ができ、かつ外力によるアンテナ面の変形を抑制できる。
【0012】
また、本発明の第二態様に係る無線電力伝送システムは、電磁波を送電する送電アンテナ、及び前記送電アンテナから送電された電磁波を受電する受電アンテナの少なくとも一方として、上記記載のアンテナ装置を用いる。
【0013】
本構成によれば、送電アンテナ及び受電アンテナを、傾斜地に容易に施工でき、かつ外力によるアンテナ面の変形を抑制できる。
【0014】
上記第二態様では、前記受電アンテナとして用いられる前記アンテナ装置が受電する電磁波の位相が、前記仮想アンテナ面で同位相とされることが好ましい。
【0015】
本構成によれば、受電する電磁波の位相が仮想アンテナ面で同位相とされると、受電アンテナ体で受電するマイクロ波の位相が揃うので、高効率な無線電力伝送を行うことができる。
【0016】
上記第二態様では、前記送電アンテナとして用いられる前記アンテナ装置が、前記アンテナ体のアンテナ面が前方に配置された前記アンテナ体に重ならないことが好ましい。
【0017】
本構成によれば、アンテナ体から送電された電磁波は、徐々にではあるが放射状に広がりながら進行する。このため、前方に配置されたアンテナ体が、後方に配置されたアンテナ体から送電される電磁波を、その背面で受ける可能性がある。この結果、アンテナ体の背面で反射(散乱)した電磁波が、受電アンテナに向けて進行している電磁波に干渉し、受電アンテナへ向かう合成された電磁波のビーム形状に歪みを生じさせる可能性がある。
【0018】
そこで、本構成は、送電アンテナを形成する複数のアンテナ体が、アンテナ面が前方に配置されたアンテナ体に重ならないように配置されるので、アンテナ体から送電された電磁波が他のアンテナ体によって反射されることを防ぐことができる。
【0019】
上記第二態様では、前記受電アンテナとして用いられる前記アンテナ装置が、前記アンテナ体のアンテナ面の周面が前方に配置された前記アンテナ体のアンテナ面の周面に重なることが好ましい。
【0020】
アンテナ体から送電される電磁波は、徐々にではあるが放射状に広がりながら進行するので、後方に配置されたアンテナ体で受電される電磁波の方が、前方に配置されたアンテナ体で受電される電磁波よりも広がっている。このため、前方に配置されたアンテナ体で受電されなかったマイクロ波は、後方に配置されたアンテナ体で受電される際にはより広がった状態となり、後方に配置されたアンテナ体のアンテナ面の領域から外れる可能性がある。
【0021】
そこで、本構成は、後方に配置されたアンテナ体のアンテナ面の周面を、前方に配置されたアンテナ体のアンテナ面の周面に重ならせることで、後方に配置されたアンテナ体は、より広がった状態となった電磁波を確実に受電できるようになる。
従って、本構成によれば、送電された電磁波を受電アンテナがより効率良く受電できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、傾斜地に容易に施工及び保守ができ、かつ外力によるアンテナ面の変形を抑制できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るアンテナ装置の概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る送電アンテナを形成するアンテナパネルの構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る受電アンテナを形成するアンテナパネルの構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る送電アンテナの配置の一例を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る受電アンテナの配置の一例を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る送電アンテナと受電アンテナとの距離関係を示す模式図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るアンテナ装置の配置を示す模式図である。
図8】大型アンテナを立設させた場合の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係るアンテナ装置及び無線電力伝送システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係るアンテナ装置10の概略図である。本実施形態に係るアンテナ装置10は、一例として、発電した電力をマイクロ波(電磁波)に変換し、マイクロ波を送電アンテナから離島に配置された受電アンテナへ向けて送電し、受電したマイクロ波を再び電力へ変換し、送電網11へ送電する離島電力伝送システム12に用いられる。
そして、本実施形態に係るアンテナ装置10は、平面形状とされた複数のアンテナパネル14で形成され、傾斜地に配置される。なお、アンテナ装置10が配置される傾斜地は、例えば山や丘陵地等、自然の傾斜地が造成されて得られた斜面の他、平地に人工的に作られた傾斜地であってもよい。図1の例では、傾斜地として斜面にアンテナ装置10が配置される場合を示している。
【0026】
複数のアンテナパネルで形成されるアンテナ装置は、複数のアンテナパネルが一体化されていると、傾斜地にアンテナ装置を立設させるにあたり、複数のアンテナパネルのアンテナ面(パネル面ともいう。)が同一方向を向くように精度良く施工し、かつ外力によるアンテナ面の変形を抑制することが難しい。
そこで、本実施形態に係るアンテナ装置10を形成する複数のアンテナパネル14は、図1に示されるように、各々が傾斜地に立設して配置されると共に各々のアンテナ面が同一方向を向くことによって、仮想的に一つのアンテナ面とされる仮想アンテナ面16を形成し、フェーズドアレイアンテナとして機能する。
【0027】
詳細には、アンテナパネル14は、アンテナ装置10の正面から見て2次元状に配列されており、例えば、異なる高さ(標高)毎に配列されているアンテナパネル14を1段とすると、アンテナパネル14が複数段配置されている。
そして、複数段配置されているアンテナパネル14の最上段左端が仮想アンテナ面16の上方左端に該当し、アンテナパネル14の最上段右端が仮想アンテナ面16の上方右端に該当し、アンテナパネル14の最下段左端が仮想アンテナ面16の下方左端に該当し、アンテナパネル14の最下段右端が仮想アンテナ面16の下方右端に該当する。
これにより、例えば一辺が数mの複数のアンテナパネル14でアンテナ装置10が形成することによって、仮想アンテナ面16は、例えば一辺が数10mとなる。
【0028】
このように、アンテナ装置10を形成する複数のアンテナパネル14は小型であるため、アンテナパネル14各々を傾斜地に立設して配置させることによって、アンテナ面が同一方向を向くように施行することが容易となる。また、保守の対象は、小型のアンテナパネル14各々となるので保守性も向上する。さらに、アンテナ面を同一方向に向かせることによって、仮想的に一つのアンテナ面とするので、外力を受けるアンテナパネル14そのものは小型であるため、外力によりアンテナ面が変形することが抑制される。
【0029】
なお、本実施形態に係るアンテナ装置10は、マイクロ波を送電する送電アンテナのみ又は受電アンテナのみに用いられてもよく、送電アンテナと共に受電アンテナにも用いられてもよい。以下の説明では、送電アンテナ及び受電アンテナにアンテナ装置10が用いられる離島電力伝送システム12について説明する。
【0030】
図2は、本実施形態に係る送電アンテナ10Aを形成するアンテナパネル14Aの構成図の一例である。送電アンテナ10Aは、複数(例えば196枚)のアンテナパネル14Aで形成されている。
【0031】
各アンテナパネル14Aは、他のアンテナパネル14Aとの間でマイクロ波を送電するタイミングを同期させるためのクロック発生部15を備え、複数(例えば49枚)の送電ユニット16で形成されている。
【0032】
送電ユニット16は、例えば導波管スロットアンテナであり、マイクロ波(例えば2.45GHz)を発生させるマグネトロン18、マグネトロン18へ電力を供給するマグネトロン電源20を備える。また、送電ユニット16は、マグネトロン18の固有発振周波数と同じ周波数を持つ基準信号をマグネトロン18に注入してマグネトロン18のマイクロ波の位相を基準信号のマイクロ波の位相に同期させる注入同期部22、マグネトロン18から発生させるマイクロ波の位相を、他の送電ユニット16から発生されるマイクロ波の位相と同期させる位相同期部24を備える。
【0033】
図3は、本実施形態に係る受電アンテナ10Bを形成するアンテナパネル14Bの構成図の一例である。受電アンテナ10Bは、複数(例えば196枚)のアンテナパネル14Bで形成されている。
【0034】
各アンテナパネル14Bは、送電アンテナ10Aと同様に、複数(例えば49枚)の受電ユニット26で形成されている。
受電ユニット26は、例えば導波管スロットアンテナであり、各受電ユニット26は、送電アンテナ10Aから送電されたマイクロ波(交流電力)を直流電力に変換する整流素子28を備えている。
【0035】
また、受電アンテナ10Bが受電するマイクロ波の位相は、仮想アンテナ面16で同位相とされている。これにより、受電アンテナ10Bで受電するマイクロ波の位相が揃うので、高効率な無線電力伝送が行われることとなる。
【0036】
すなわち、送電アンテナ10Aを形成する複数のアンテナパネル14Aは、マイクロ波の位相が仮想アンテナ面16で同位相となるように、マイクロ波を送電する。
送電アンテナ10Aを形成する複数のアンテナパネル14Aは、上述した段毎に仮想アンテナ面16までの距離が異なる。このため、各アンテナパネル14Aは、送電するマイクロ波の位相が仮想アンテナ面16で同位相となるように、仮想アンテナ面16までの距離に応じて異なる位相のマイクロ波を送電する。
【0037】
次に、本実施形態に係る送電アンテナ10Aを形成するアンテナパネル14Aの配置について説明する。
【0038】
アンテナパネル14Aから送電されたマイクロ波は、徐々にではあるが放射状に広がりながら進行する。このため、前方に配置されたアンテナパネル14Aは、後方に配置されたアンテナパネル14Aから送電されるマイクロ波を、その背面で受ける可能性がある。この結果、アンテナパネル14Aの背面で反射(散乱)したマイクロ波が、受電アンテナ10Bに向けて進行しているマイクロ波に干渉し、受電アンテナ10Bへ向かう合成されたマイクロ波のビーム形状に歪みを生じさせる可能性がある。
なお、前方とは、送電されるマイクロ波の進行方向と同じ方向であり、該進行方向と逆方向が後方である。
【0039】
反射したマイクロ波が合成されたマイクロ波のビーム形状に歪みを生じさせることを防ぐためには、例えば、反射したマイクロ波がビーム形状に与える影響を解析的に求め、この影響が許容できるアンテナパネル14の配置、例えば斜面の傾斜角度等を導き出し、この結果に基づいてアンテナパネル14を配置する。
【0040】
また、反射したマイクロ波が合成されたマイクロ波のビーム形状に歪みを生じさせることを防ぐための構成として、図4に示されるように、送電アンテナ10Aを形成する複数のアンテナパネル14Aを、アンテナ面が前方に配置されたアンテナパネル14Aに重ならないように配置する。
すなわち、後方のアンテナパネル14Aから送電され、放射状に広がったマイクロ波をアンテナパネル14Aの背面が受けないように、前方に配置されたアンテナパネル14Aと後方に配置されたアンテナパネル14Aとの間隔(例えば上下方向の間隔)を開ける。
【0041】
アンテナパネル14Aのアンテナ面を、前方に配置されたアンテナパネル14Aに重ならないように配置するためには、例えば、アンテナ面の大きさが同じアンテナパネル14Aを、上下方向にずらして配置したり、上下方向でアンテナ面の大きさが異なるアンテナパネル14Aを配置する。
【0042】
図5は、本実施形態に係る受電アンテナ10Bを形成するアンテナパネル14Bの配置の一例を示す模式図である。
【0043】
送電アンテナ10Aから送電されるマイクロ波は、徐々にではあるが放射状に広がりながら進行する。そのため、受電アンテナ10Bにおいて、後方に配置されたアンテナパネル14Bで受電されるマイクロ波の方が、前方に配置されたアンテナパネル14Bで受電されるマイクロ波よりも広がっている。このため、前方に配置されたアンテナパネル14Bで受電されなかったマイクロ波は、後方に配置されたアンテナパネル14Bで受電される際にはより広がった状態となり、後方に配置されたアンテナパネル14Bのアンテナ面の領域から外れる可能性がある。
なお、この傾向は、送電アンテナ10Aと受電アンテナ10Bとが共に、本実施形態に係るアンテナ装置10で構成されている場合に顕著となる。図6に示されるように、送電アンテナ10Aの上段と受電アンテナ10Bの上段との間の距離の方が、送電アンテナ10Aの下段と受電アンテナ10Bの下段との間の距離に比べてより長くなるためである。
【0044】
そこで、図5に示されるように受電アンテナ10Bを形成する複数のアンテナパネル14Bは、後方に配置されたアンテナパネル14Bのアンテナ面の周面が、前方に配置されたアンテナパネル14Bのアンテナ面の周面に重なるように配置される。これにより、後方に配置されたアンテナパネル14Bは、より広がった状態となったマイクロ波を確実に受電できるようになる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ装置10は、複数のアンテナパネル14で形成されて傾斜地に配置され、複数のアンテナパネル14が、各々傾斜地に立設して配置されると共に各々のアンテナ面が同一方向を向くことによって、仮想的に一つのアンテナ面とされる仮想アンテナ面16を形成する。
従って、本実施形態に係るアンテナ装置10は、傾斜地に容易に施工及び保守ができ、かつ外力によるアンテナ面の変形を抑制できる。
【0046】
また、本実施形態に係る離島電力伝送システム12は、マイクロ波を送電する送電アンテナ10A、及び送電アンテナ10Aから送電されたマイクロ波を受電する受電アンテナ10Bの少なくとも一方として、アンテナ装置10が用いられる。
【0047】
また、本実施形態に係る受電アンテナ10Bが受電するマイクロ波の位相は、仮想アンテナ面16で同位相とされるので、高効率な無線電力伝送を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態に係る離島電力伝送システム12は、送電アンテナ10Aを形成するアンテナパネル14Aのアンテナ面が前方に配置されたアンテナパネル14Aに重ならないように配置されるので、送電されたマイクロ波が他のアンテナパネル14Aによって反射されることを防ぐことができる。
【0049】
また、本実施形態に係る離島電力伝送システム12は、受電アンテナ10Bを形成するアンテナパネル14Bのアンテナ面の周面が前方に配置されたアンテナパネル14Bのアンテナ面の周面に重なるように配置されるので、送電されたマイクロ波を受電アンテナ10Bがより効率良く受電する。
【0050】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
例えば、上記実施形態では、本発明を離島電力伝送システム12に適用する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、電磁波により電力を送電する他の無線電力伝送システムに適用する形態としてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、アンテナ装置10を斜面に配置する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、図7に示されるように、傾斜地として、例えば、階段状に造成されているものの、アンテナパネル14が立設される地形全体として傾きを有する地形にアンテナ装置10を配置する形態等としてもよい。この場合、階段状の水平面にアンテナパネル14を立設させる。
【符号の説明】
【0053】
10 アンテナ装置
10A 送電アンテナ
10B 受電アンテナ
12 離島電力伝送システム
14A アンテナパネル
14B アンテナパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8