(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における充電率演算システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、充電率演算システム1は、温度センサ11と、電圧センサ12と、電流センサ13と、電池インピーダンスモデル部20と、推定開放電圧演算部31と、電圧起因推定充電率取得部(SOCV取得部)32と、誤差設定部41と、電池容量取得部42と、演算周期通知部43と、制限値設定部44と、充電率選択部51と、演算結果送信部52とを具備する。電池インピーダンスモデル部20は、推定インピーダンス管理部21と、推定インピーダンス電圧演算部22とを具備する。
【0013】
温度センサ11は、充電率演算対象の二次電池(以下、単に「二次電池」と称する)の電池容器の温度を測定し、測定結果の温度(を示す信号)を電池インピーダンスモデル部20と電圧起因推定充電率取得部32とに出力する。以下では、二次電池の電池容器の温度を「電池温度」と称する。
【0014】
電圧センサ12は、二次電池の両端電圧値を測定し、測定結果の電圧値(を示す信号)を推定開放電圧演算部31に出力する。
電流センサ13は、二次電池を流れる電流値(出力電流値または充電電流値)を測定し、測定結果の電流値(を示す信号)を電池インピーダンスモデル部20(推定インピーダンス電圧演算部22)と、制限値設定部44とに出力する。以下では、電流センサ13が測定した二次電池を流れる電流の値を「電池電流値」と称する。
【0015】
電池インピーダンスモデル部20は、充電率演算対象の二次電池のインピーダンスモデルにおけるインピーダンス電圧を求める。
推定インピーダンス管理部21は、電池温度および二次電池の充電率と、二次電池内部の推定インピーダンスとを対応付けて記録したデータテーブルであるインピーダンステーブルを、当該推定インピーダンス管理部21の有するメモリ内に複数記憶している。具体的には、推定インピーダンス管理部21は、所定温度ごとに(例えば、20℃、21℃、22℃など1℃毎に)インピーダンステーブルを備え、1つのインピーダンステーブルには、所定充電率ごとの(例えば、40%、45%、50%など5%毎の)推定インピーダンスの値を記憶している。
【0016】
そして、推定インピーダンス管理部21は、温度センサ11が出力した電池温度と、後述するように充電率選択部51が出力した充電率とに基づいて、これら電池温度と充電率とに対応する推定インピーダンス値をインピーダンステーブルから読み出して推定インピーダンス電圧演算部22へ出力する。
その際、推定インピーダンス管理部21は、温度センサ11からの電池温度(電池温度の実測値)が、インピーダンステーブルに対応付けられた温度と相違する(中間値である)場合や、充電率選択部51からの充電率が、インピーダンステーブルに用意された充電率と相違する(中間値である)場合、線形補間等の補間を行って推定インピーダンス値を求める。
【0017】
例えば、備えられたインピーダンステーブルのうち温度センサ11からの電池温度T[℃]に直近のものがT1とT2である場合(T1[℃]<T[℃]<T2[℃])、推定インピーダンス管理部21は、T1[℃]に対応するインピーダンステーブルと、T2[℃]に対応するインピーダンステーブルとを選択する。
そして、例えば、各インピーダンステーブルに用意された充電率のうち、充電率選択部51からの充電率SOC[%]に直近のものがSOC1とSOC2である場合(SOC1[%]<SOC[%]<SOC2[%])、推定インピーダンス管理部21は、選択したインピーダンステーブルの各々について、SOC1[%]に対応する推定インピーダンス値と、SOC2[%]に対応する推定インピーダンス値とを補間(例えば、線形補間)して、SOC[%]に対応する推定インピーダンス値を求める。
そして、推定インピーダンス管理部21は、インピーダンステーブル毎に得られた推定インピーダンス値を補間(例えば、線形補間)して、温度センサ11からの電池温度と充電率選択部51からの充電率とに対応する推定インピーダンス値を求め、得られた推定インピーダンス値をインピーダンス電圧演算部22へ出力する。
【0018】
より具体的には、例えば、電池温度の実測値が20.4℃で、備えられたインピーダンステーブルがその温度直近では20℃と21℃の2つである場合、推定インピーダンス管理部21は、20℃のインピーダンステーブルと、21℃のインピーダンステーブルとを選択する。
【0019】
そして、充電率選択部51からの充電率が43%で、選択したインピーダンステーブルにおいて用意された当該充電率に直近の充電率が40%と45%の2つである場合、推定インピーダンス管理部21は、充電率40%に対応する推定インピーダンス値と、充電率45%に対応する推定インピーダンス値とを線形補間して、選択したインピーダンステーブル毎に推定インピーダンス値を求める。すなわち、推定インピーダンス管理部21は、充電率40%に対応する推定インピーダンス値と、45%に対応する推定インピーダンス値とを2:3((45−43):(43−40))で加重平均して推定インピーダンス値を算出する。
【0020】
さらに、推定インピーダンス管理部21は、インピーダンステーブル毎に得られた推定インピーダンス値を線形補間して、温度センサ11からの電池温度と充電率選択部51からの充電率とに対応する推定インピーダンス値を求める。すなわち、推定インピーダンス管理部21は、電池温度20℃のインピーダンステーブルから得られた推定インピーダンス値と、21℃のインピーダンステーブルから得られた推定インピーダンス値とを6:4((21−20.4):(20.4−20))で加重平均して推定インピーダンス値を算出する。
そして、推定インピーダンス管理部21は、算出した推定インピーダンス値を推定開放電圧演算部31に出力する。
【0021】
推定インピーダンス電圧演算部22は、電流センサ13からの電池電流値と推定インピーダンス管理部21からの推定インピーダンス値とに基づいて、推定インピーダンス電圧値を算出して、推定開放電圧演算部31に出力する。具体的には、推定インピーダンス電圧演算部22は、電池電流値と推定インピーダンス値とを乗算することにより推定インピーダンス電圧値を算出する。
【0022】
推定開放電圧演算部31は、電圧センサ12からの二次電池の両端電圧値と、推定インピーダンス電圧演算部22からの推定インピーダンス電圧値とに基づいて、両端電圧値から推定インピーダンス電圧値を減算することにより、二次電池の推定開放電圧値を算出する。そして、推定開放電圧演算部31は、算出した推定開放電圧値を電圧起因推定充電率取得部32へ出力する。
【0023】
電圧起因推定充電率取得部32は、二次電池の推定開放電圧値に基づいて求められる充電率である電圧起因推定充電率を取得し、得られた電圧起因推定充電率を充電率選択部51へ出力する。
具体的には、電圧起因推定充電率取得部32は、電池温度および推定開放電圧値と、充電率とを対応付けて記録したデータテーブルである充電率テーブルを、当該電圧起因推定充電率取得部32の有するメモリ内に複数記憶している。さらに具体的には、電圧起因推定充電率取得部32は、所定温度ごとに(例えば、20℃、21℃、22℃など1℃毎に)充電率テーブルを備え、1つの充電率テーブルには、所定の推定開放電圧値VO[V]ごとの(例えば、5.0V、5.1V、5.2Vなど0.1V毎の)SOCV[%]の値をそれぞれについて記憶している。
【0024】
そして、電圧起因推定充電率取得部32は、温度センサ11が出力した電池温度と、推定開放電圧演算部31が出力した推定開放電圧値とに基づいて、これら電池温度と推定開放電圧値とに対応する充電率を充電率テーブルから読み出して充電率選択部51へ出力する。
その際、電圧起因推定充電率取得部32は、電池インピーダンスモデル部20における処理と同様に、温度センサ11からの電池温度が、充電率テーブルに対応付けられた温度と相違する(中間値である)場合や、推定開放電圧演算部31からの推定開放電圧値が、充電率テーブルに用意された電圧率と相違する(中間値である)場合、線形補間等の補間を行って充電率を求める。
【0025】
例えば、備えられた充電率テーブルのうち温度センサ11からの電池温度T[℃]に直近のものがT1とT2である場合(T1[℃]<T[℃]<T2[℃])、電圧起因推定充電率取得部32は、T1[℃]に対応する充電率テーブルと、T2[℃]に対応する充電率テーブルとを選択する。
そして、例えば、各充電率テーブルに用意された推定開放電圧値のうち、推定開放電圧演算部31からの推定開放電圧値VO[V]に直近のものがVO1とVO2である場合(VO1[V]<VO[V]<VO2[V])、電圧起因推定充電率取得部32は、選択した充電率テーブルの各々について、VO1[V]に対応する充電率と、VO2[V]に対応する充電率とを補間(例えば、線形補間)して、VO[V]に対応する充電率を求める。
そして、電圧起因推定充電率取得部32は、充電率テーブル毎に得られた充電率を補間(例えば、線形補間)して、温度センサ11からの電池温度と推定開放電圧演算部31からの推定開放電圧値とに対応する充電率を求め、得られた充電率を充電率選択部51へ出力する。
【0026】
より具体的には、例えば、電池温度の実測値が20.4℃で、備えられたインピーダンステーブルがその温度直近では20℃と21℃の2つである場合、電圧起因推定充電率取得部32は、20℃の充電率テーブルと、21℃の充電率テーブルとを選択する。
【0027】
そして、推定開放電圧演算部31からの推定開放電圧値が5.04Vで、選択した充電率テーブルにおいて用意された当該推定開放電圧値に直近の推定開放電圧値が5.0Vと5.1Vの2つである場合、電圧起因推定充電率取得部32は、5.0Vの推定開放電圧値に対応する充電率と、5.1Vの推定開放電圧値に対応する充電率とを線形補間して、選択した充電率テーブル毎に充電率を求める。すなわち、電圧起因推定充電率取得部32は、推定開放電圧値5.0Vに対応する充電率と、5.1Vに対応する充電率とを6:4((5.1−5.04):(5.04−5.0))で加重平均して推定インピーダンス値を算出する。
【0028】
さらに、電圧起因推定充電率取得部32は、充電率テーブル毎に得られた充電率を線形補間して、温度センサ11からの電池温度と推定開放電圧演算部31からの推定開放電圧値とに対応する充電率を求める。すなわち、電圧起因推定充電率取得部32は、電池温度20℃の充電率テーブルから得られた充電率と、21℃の充電率テーブルから得られた充電率とを6:4((21−20.4):(20.4−20))で加重平均して充電率を算出する。
そして、電圧起因推定充電率取得部32は、算出した充電率を充電率選択部51へ出力する。
【0029】
なお、複数のセルよりなる組電池では、二次電池の両端電圧値VA[V]が複数ある。例えば、セルがN個ある場合、充電率演算システム1は、セル電圧値VA1、VA2、・・・VAN[V]の最大セル電圧値VAMAX[A]、最小セル電圧値VAMIN[V]、平均セル電圧値VAVR=(VA1+VA2+・・・+VAN)/N[V]、中間セル電圧値VAMID=(VAMAX+VAMIN)/2[V]等のいずれかを、二次電池の両端電圧値として用いる。これにより、充電率演算システム1は組電池にも対応可能である。
【0030】
あるいは、電圧起因推定充電率取得部32が、セル毎の充電率を求めるようにしてもよい。例えば、まず、電圧センサ12が、セル電圧値VA1、VA2、・・・VAN[V]を求める。また、推定インピーダンス電圧演算部22が、推定インピーダンス電圧値VZ1、VZ2、・・・VZN[V]を求める。次に、両者の差VA1−VZ1、VA2−VZ2、・・・、VAN−VZNに基づいて、推定開放電圧演算部31が、推定開放電圧値VO1、VO2、・・・VON[N]を求める。そして、その値を元に、電圧起因推定充電率取得部32が、電圧起因推定充電率SOCV1、SOCV2、・・・SOCVNを求め、これを元に、電圧起因推定充電率取得部32が、SOC最大SOCVMAX[%]、SOC最小SOCVMIN[V]、SOC平均SOCVAVR=(SOCV1+SOCV2+・・・+SOCVN)/N[V]、SOC中間SOCMID=(SOCVMAX+SOCVMIN)/2[%]等のいずれかを、組電池における電圧起因推定充電率として取得するようにしてもよい。
【0031】
誤差設定部41は、電流センサ13の電流測定値に含まれ得る誤差の上限値と下限値とを取得して制限値設定部44に出力する。例えば、誤差設定部41は、電流センサ13の特性に基づいて推定される測定誤差の大きさの最大値を定数にて予め記憶しておき、当該最大値を誤差の上限値とし、当該最大値のマイナス値を誤差の下限値とする。
また、誤差設定部41は、電池容量取得部42が取得する電池容量に含まれ得る誤差の上限値と下限値とを取得して制限値設定部44に出力する。例えば、誤差設定部41は、電池容量取得部42における推定誤差の目標値(許容値)を定数(単位[Ah])にて予め記憶しておき、当該目標値を誤差の上限値とし、当該目標値のマイナス値を誤差の下限値とする。
なお、以下では、誤差設定部41が取得する誤差(電流測定値に含まれ得る誤差、および、電池容量に含まれ得る誤差)の上限値および下限値を総称して「誤差上下限値」と表記する。
【0032】
電池容量取得部42は、二次電池の電池容量(二次電池に充電可能な電力量の最大値)を取得して制限値設定部44に出力する。
具体的には、電池容量取得部42は、電池温度および電池電流値と、電池容量とを対応付けて記録したデータテーブルである容量テーブルを、当該電池容量取得部42の有するメモリ内に複数記憶している。さらに具体的には、電池容量取得部42は、所定温度ごとに(例えば、20℃、21℃、22℃など1℃毎に)容量テーブルを備え、1つの容量テーブルには、所定の電池電流値I[A]ごとの(例えば、1.0A、1.1A、1.2Aなど0.1A毎の)電池容量Ah[Ah]の値をそれぞれについて記憶している。
【0033】
そして、電池容量取得部42は、温度センサ11が出力した電池温度と、電流センサ13が出力した電池電流値とに基づいて、これら電池温度と電池電流値とに対応する電池容量を容量テーブルから読み出して制限値設定部44へ出力する。
その際、電池容量取得部42は、推定インピーダンス管理部21における処理と同様に、温度センサ11からの電池温度が、容量テーブルに対応付けられた温度と相違する(中間値である)場合や、電流センサ13からの電池電流値が、容量テーブルに用意された電流値と相違する(中間値である)場合、線形補間等の補間を行って電池容量を求める。
【0034】
例えば、備えられた容量テーブルのうち温度センサ11からの電池温度T[℃]に直近のものがT1とT2である場合(T1[℃]<T[℃]<T2[℃])、電池容量取得部42は、T1[℃]に対応する容量テーブルと、T2[℃]に対応する容量テーブルとを選択する。
そして、例えば、各容量テーブルに用意された電池電流値のうち電流センサ13からの電池電流値I[A]に直近のものがI1とI2である場合(I1[A]<I[A]<I2[I])、電池容量取得部42は、選択した容量テーブルの各々について、I1[A]に対応する電池容量と、I2[A]に対応する電池容量とを補間(例えば、線形補間)して、I[A]に対応する電池容量を求める。
そして、電池容量取得部42は、容量テーブル毎に得られた電池容量を補間(例えば、線形補間)して、温度センサ11からの電池温度と電流センサ13からの電池電流値とに対応する電池容量を求め、得られた電池容量を制限値設定部44へ出力する。
【0035】
より具体的には、例えば、電池温度の実測値が20.4℃で、備えられた容量テーブルがその温度直近では20℃と21℃の2つである場合、電池容量取得部42は、20℃の容量テーブルと、21℃の容量テーブルとを選択する。
【0036】
そして、電流センサ13からの電池電流値が1.05Aで、選択した容量テーブルにおいて用意された当該電池電流値に直近の電池電流値が1.0Aと1.1Aの2つである場合、電池容量取得部42は、1.0Aの電池電流値に対応する電池容量と、1.1Aの電池電流値に対応する電池容量とを線形補間して、選択した容量テーブル毎に電池容量を求める。すなわち、電池容量取得部42は、電池電流値が1.0Aに対応する電池容量と、電池電流値が1.1Aに対応する電池容量とを5:5((1.1−1.05):(1.05−1.0))で加重平均して電池容量を算出する。
【0037】
さらに、電池容量取得部42は、容量テーブル毎に得られた電池容量を線形補間して、温度センサ11からの電池温度と電流センサ13からの電池電流値とに対応する電池容量を求める。すなわち、電池容量取得部42は、電池温度20℃の容量テーブルから得られた電池容量と、21℃の容量テーブルから得られた電池容量とを6:4((21−20.4):(20.4−20))で加重平均して電池容量を算出する。
そして、電池容量取得部42は、算出した電池容量を制限値設定部44へ出力する。
【0038】
演算周期通知部43は、一定周期毎にトリガー信号を生成して制限値設定部44に出力する。当該トリガー信号は、制限値設定部44が演算を行うタイミングを通知する信号として用いられる。
【0039】
制限値設定部44は、電流センサ13からの電池電流値と、誤差設定部41からの誤差上下限値と、電圧起因推定充電率取得部32が求める電圧起因推定充電率に含まれ得る誤差とに基づいて、充電率上限値または充電率下限値の少なくとも一方を設定する。その際、制限値設定部44は、予め取得した、推定開放電圧値と電圧起因推定充電率との関係と、充電率選択部51が選択した充電率演算結果とに基づいて、電圧起因推定充電率に含まれ得る誤差を求める。
制限値設定部44が求める充電率上限値および充電率下限値については後述する。
【0040】
充電率選択部51は、電圧起因推定充電率取得部32が取得した電圧起因推定充電率と、制限値設定部44が設定した充電率上限値または充電率下限値の何れかを、充電率演算システム1の充電率演算結果として選択し、演算結果送信部52に出力する。
具体的には、充電率選択部51は、電圧起因推定充電率取得部32が取得した電圧起因推定充電率が、制限値設定部44が設定した範囲内にある場合、当該電圧起因推定充電率を充電率演算結果として選択する。
【0041】
一方、充電率選択部51は、電圧起因推定充電率取得部32が取得した電圧起因推定充電率が、制限値設定部44が設定した範囲内にない場合、制限値設定部44が設定した制限値(充電率上限値または充電率下限値)を充電率演算結果として選択する。具体的には、制限値設定部44が充電率上限値を設定しており、かつ、電圧起因推定充電率が当該充電率上限値より大きいときは、当該充電率上限値を充電率演算結果として選択する。一方、制限値設定部44が充電率下限値を設定しており、かつ、電圧起因推定充電率が当該充電率下限値より小さいときは、当該充電率下限値を充電率演算結果として選択する。
【0042】
演算結果送信部52は、充電率選択部51から出力される充電率演算結果としての充電率を、充電率演算システム1の外部に送信する。例えば、演算結果送信部52は、当該充電率を、上位機器(例えば、充電率演算システム1を備える電気自動車)に送信し、当該上位機器が、自らの具備する表示画面に充電率を表示する。
【0043】
次に、制限値設定部44が求める充電率上限値および充電率下限値と、充電率選択部51が行う充電率の選択について説明する。
推定開放電圧演算部31が求める推定開放電圧値に含まれる誤差等に起因して、電圧起因推定充電率取得部32が求める電圧起因推定充電率には誤差が含まれ得る。そこで、制限値設定部44は、演算周期通知部43からの信号に基づく所定の演算周期で、電圧起因推定充電率取得部32が求める充電率とは別に、電池電流値の積分に基づいて充電率を求め、誤差上下限値(電流センサ13が測定した電流値に含まれ得る誤差)等を考慮した充電率上限値および充電率下限値を算出する。
制限値設定部44がn回目の演算時(以下、「時刻n」と称する)に求める充電率上限値SOCH(n)は、式(1)のように示される。
【0045】
ここで、右辺の第1項「SOC(n−1)」は、時刻n−1(n−1番目の演算時)における充電率演算システム1の演算結果としての充電率(充電率選択部51が選択した充電率)を示す。また、右辺の第2項の係数Aは、式(2)のように示される。
【0047】
このように、係数Aは、演算周期T
sに、百分率換算のための100を乗算し、秒から時間への換算のために3600で除算した値を有する。
そして、式(1)の右辺の第2項は、時刻n−1から時刻nまでの時間を示す係数Aに電流値I(n)[A]を乗算した電流の積算値を、電池容量Ah[Ah]で除算して充電率の変化量を求めている。この充電率の変化量と、第1項(前回の充電率「SOC(n−1)」)との合計が、電池電流値から求めた現在の充電率に該当する。なお、電流値I(n)は、時刻nにおける充放電電流の測定値を、充電側を+、放電側を−として示している。
【0048】
また、式(1)の右辺の第3項「ΔSOC
(max)(n)」は、式(1)の右辺の第1項および第2項の示す電池電流値から求めた現在の充電率に対する、充電率演算システム1の求める充電率の差分の許容値の上限を示す。この第3項の詳細については後述する。
【0049】
また、時刻nにおける充電率下限値SOCL(n)は、式(3)のように示される。
【0051】
式(3)の右辺の第1項および第2項は、式(1)と同様である。また、第3項「ΔSOC
(min)(n)」は、第1項および第2項の示す電池電流値から求めた現在の充電率に対する、充電率演算システム1の求める充電率の差分の許容値の下限を示す。この第3項の詳細については後述する。
【0052】
制限値設定部44が求めた充電率上限値SOCH(n)および充電率下限値SOCL(n)と、電圧起因推定充電率取得部32が求めた電圧起因推定充電率f(Vocv)とを比較して、充電率選択部51は、式(4)に示される充電率の選択を行う。
【0054】
ここで、Vocvは、推定開放電圧演算部31が求めた推定開放電圧値を示し、f(Vocv)は、推定開放電圧値に基づいて電圧起因推定充電率取得部32が求めた電圧起因推定充電率を示している。
式(4)に示されるように、電圧起因推定充電率が充電率上限値と充電率下限値との範囲内にある場合、充電率選択部51は、電圧起因推定充電率を選択する。一方、電圧起因推定充電率が充電率上限値より大きい場合、充電率選択部51は、充電率上限値を選択する。また、電圧起因推定充電率が充電率下限値より小さい場合、充電率選択部51は、充電率下限値を選択する。
【0055】
図2は、充電率選択部51が行う充電率の選択と、制限値設定部44が算出する充電率上限値および充電率下限値の関係の例を示す説明図である。同図のグラフの横軸は、時刻を充電率選択部51の演算回数にて示している。また、縦軸は充電率を示している。
n−1回目の演算にて、充電率選択部51が選択した充電率(充電率演算システム1の充電率演算結果)が点P111に示される充電率であった場合、n回目の演算において、充電率選択部51は、点P111に示される充電率に、電池電流の積分値から求めた変化量を加算して、点P122に示される充電率を算出する。そして、充電率選択部51は、点P122に示される充電率を基準として、求めた変化量に含まれ得る誤差等を加味して、点P123に示される充電率上限値、および、点P121に示される充電率下限値を算出する。
一方、電圧起因推定充電率取得部32は、点P124に示される電圧起因推定充電率を取得している。
【0056】
n回目の演算の例では、電圧起因推定充電率が充電率上限値より大きい。そこで、充電率選択部51は、充電率演算システム1の充電率演算結果として充電率上限値(点P123)を選択している。
この充電率上限値に基づいて、n+1回目の演算において充電率選択部51は、点P133に示される充電率を求め、この充電率を基準として、点P134に示される充電率上限値、および、点P132に示される充電率下限値を算出している。
一方、電圧起因推定充電率取得部32は、点P131に示される電圧起因推定充電率を取得している。
【0057】
n+1回目の演算の例では、電圧起因推定充電率が充電率下限値より小さい。そこで、充電率選択部51は、充電率演算システム1の充電率演算結果として充電率下限値(点P132)を選択している。
この充電率下限値に基づいて、n+2回目の演算において充電率選択部51は、点P142に示される充電率を求め、この充電率を基準として、点P144に示される充電率上限値、および、点P141に示される充電率下限値を算出している。
一方、電圧起因推定充電率取得部32は、点P143に示される電圧起因推定充電率を取得している。
【0058】
n+2回目の演算の例では、電圧起因推定充電率が充電率上限値と充電率下限値との範囲内にある。そこで、充電率選択部51は、充電率演算システム1の充電率演算結果として電圧起因推定充電(点P143)を選択している。
この充電率下限値に基づいて、n+3回目の演算において充電率選択部51は、点P151に示される充電率を求めている。
【0059】
このように、制限値設定部44が充電率に制限値(充電率上限値および充電率下限値)を設けることで、電圧起因推定充電率取得部32が求めた電圧起因推定充電率に含まれる誤差が大きい場合でも、充電率演算システム1は、演算結果としての充電率に含まれる誤差を低減させ得る。
一方、制限値設定部44が、前回値に基づいて充電率上限値および充電率下限値を算出することから、充電率に誤差が蓄積される可能性がある。この点について、
図3および
図4を参照して説明する。
【0060】
図3は、充電率テーブルにおける、充電率(電圧起因推定充電率)と推定開放電圧値との関係(以下、「電池充電率−開放電圧特性」と称する)の例を示す説明図である。同図のグラフの横軸は充電率を示し、縦軸は推定開放電圧値を示す。また、線L21は、充電率テーブルにおける電池充電率−開放電圧特性を示す。なお、線L22は、参考のため、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合が一定となる場合の、電池充電率−開放電圧特性を示している。
【0061】
同図において、線L21が示す、充電率テーブルにおける電池充電率−開放電圧特性は非線形な特性となっており、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合が大きい部分と小さい部分とがある。すなわち、線L21の傾きが比較的急(グラフの縦軸側から見た場合の傾きが比較的緩やか)な部分では、変化の割合は比較的小さい。一方、線L21の傾きが比較的緩やか(グラフの縦軸側から見た場合の傾きが比較的急)な部分では、変化の割合が大きい。
【0062】
ここで、電圧起因推定充電率取得部32が推定開放電圧値に基づいて電圧起因推定充電率を求める際、当該推定開放電圧値は誤差を含み得る。そして、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合が大きいほど、推定開放電圧値に含まれる誤差に起因して電圧起因推定充電率に含まれる誤差の大きさ(誤差の絶対値)が大きくなる。
【0063】
このように、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合が大きい部分では、電圧起因推定充電率取得部32が求める電圧起因推定充電率が、充電率上限値および充電率下限値の範囲外に位置し続け、充電率上限値および充電率下限値が真の充電率から乖離する(すなわち、充電率上限値および充電率下限値に誤差が蓄積する)可能性がある。
【0064】
図4は、充電率上限値および充電率下限値が真の充電率から乖離する例を示す説明図である。同図のグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は充電率を示す。また、線L31は二次電池の真の充電率を示し、線L32は、電圧起因推定充電率取得部32が取得する電圧起因推定充電率を示し、線L33は、充電率選択部51が選択した充電率、すなわち、充電率演算システム1の演算結果としての充電率を示している。
なお、ここでは、式(1)の第3項「SOC
(max)(n)」および式(3)の第3項「SOC
(min)(n)」が固定値を有していると仮定して、これらの値を変化させる必要性について説明する。
【0065】
時刻t31からt32までは、
図3で説明した、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合が大きい部分にあり、電圧起因推定充電率に含まれる誤差が大きくなっている。ここで、時刻t31からt32までは、電圧起因推定充電率(線L32)が真の充電率(線L31)から乖離しているが、充電率下限値に制限されて、充電率選択部51が選択した充電率(線L33)に含まれる誤差の大きさは、電圧起因推定充電率に含まれる誤差の大きさよりも小さくなっている。
ただし、制限値設定部44が、前回値に基づいて充電率下限値を算出することから、充電率下限値に誤差が蓄積され、その結果、充電率選択部51が選択した充電率は、徐々に真の充電率から乖離している。
【0066】
また、時刻t33に近づくにつれて、電圧起因推定充電率に含まれる誤差の大きさが小さくなっており、時刻t32以降は、電圧起因推定充電率の値のほうが、充電率選択部51が選択した充電率の値よりも大きくなっている。
すると、充電率選択部51が選択した充電率は、充電率上限値によって制限されている。この充電率上限値による制限のため、時刻t32以降は、充電率選択部51が選択した充電率に含まれる誤差の大きさのほうが、電圧起因推定充電率に含まれる誤差の大きさよりも大きくなっている。
特に、時刻t32以降、電圧起因推定充電率が回復しても(すなわち、電圧起因推定充電率の含む誤差の大きさが小さくなっても)、充電率上限値のために、充電率選択部51が選択した誤差の回復が遅くなっている。そして、時刻t33において電圧起因推定充電率に含まれる誤差の大きさが充分小さくなった後も、充電率選択部51が選択した充電率には誤差が残存している。
【0067】
このように、充電率選択部51が選択した充電率や充電率上限率や充電率下限値に誤差が蓄積した場合、充電率選択部51が選択した充電率の回復が、電圧起因推定充電率の回復よりも遅れてしまうおそれがある。
【0068】
そこで、式(1)の第3項「SOC
(max)(n)」の値や、式(3)の第3項「SOC
(min)(n)」の値を、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合に応じて変化させ、変化の割合が小さい部分(従って、推定開放電圧値に含まれる誤差の電圧起因推定充電率に対する影響が小さく、電圧起因推定充電率を精度よく求められると期待される部分)において、充電率選択部51が選択した充電率をより速やかに回復可能とする。
【0069】
この点について説明するにあたり、まず、電池電流値から求めた充電率(以下、「電流積算充電率」と称する)に含まれ得る誤差について説明する。
まず、時刻nにおける電流積算充電率S(n)は、式(5)のように示される。
【0071】
ここで、電流積算充電率の初期値をS(0)[%]として、S(n−1)[%]は、時刻n−1における電流積算充電率を示す。また、Q
t[Ah]は、真の電池容量を示し、I
t(n)[A]は、時刻nにおける真の充放電電流を、充電側を+、放電側を−として示す。また、係数Aについては、式(2)のとおりである。
そして、式(5)の右辺の第2項は、時刻n−1から時刻nまでの時間を示す係数Aに真の電流値I
t(n)[A]を乗算した電流の積算値を、真の電池容量Q
t[Ah]で除算して充電率の変化量を求めている。
【0072】
このように、真の電流値と真の充電率とが得られ、かつ、充放電率の初期値が真値にて得られれば、電流積算充電率を真値にて算出することができる。
しかし、実際には、電流センサ13の測定値には誤差(ゲインや、オフセットや、ヒステリシス等)が含まれている。時刻nにおいて電流測定値に含まれる誤差(電流測定誤差)をΔI(n)とすると、真の電流値I
t(n)は式(6)のように示される。
【0074】
また、電池劣化等に伴う電池容量の変化を想定し、電池容量推定値Ahに含まれる推定誤差(電池容量推定誤差)をΔQとすると、真の電池容量Q
tは式(7)のように示される。
【0076】
これら式(6)および式(7)を式(5)に代入すると、式(8)のようになる。
【0078】
ここで、例えば電池容量の推定誤差の目標値を5%以下とすると、Ah
2−ΔQ
2≧0.9975Ahとなる。このように、ある程度の精度で電池容量を推定している場合、Ah
2≫ΔQ
2とみなせるので、式(8)は式(9)のように変換できる。
【0080】
ここで、ΔS
err(n)は、電流測定誤差ΔI(n)および電池容量推定誤差ΔQに起因する、時刻nにおける充電率演算誤差であり、式(10)のように示される。
【0082】
ただし、電流測定誤差ΔI(n)および電池容量推定誤差ΔQの符号や大きさを正確に把握することはできない。そこで、制限値設定部44は、誤差設定部41が出力する誤差上下限値に基づいて、充電率演算誤差の最大値および最小値を求める。具体的には、制限値設定部44は、式(11)に示す充電率演算誤差ΔS
err1(n)からΔS
err4(n)までの各々を求め、最も大きな値を充電率演算誤差の最大値とし、最も小さな値を充電率演算誤差の最小値とする。
【0084】
ここで、ΔIは、誤差設定部41が出力する電流測定誤差の最大値を示し、−ΔIは、電流測定誤差の最小値を示す。また、ΔAhは、誤差設定部41が出力する電池容量推定誤差の最大値を示し、−ΔAhは、電流容量推定誤差の最小値を示す。
そして、制限値設定部44は、式(11)を用いて得られる充電率演算誤差の最大値および最小値に、それぞれ、電圧起因推定充電率の信頼係数を乗算して、式(1)の右辺第3項に示される差分の許容値の上限「ΔSOC
(max)(n)」、および、式(3)の右辺第3項に示される差分の許容値の下限「ΔSOC
(min)(n)」を求める。この電圧起因推定充電率の信頼係数について、次に説明する。
【0085】
図3を参照して説明したように、充電率テーブルにおける電池充電率−開放電圧特性には、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合が大きい部分と小さい部分とがあり、電圧起因推定充電率に含まれる誤差の大きさに影響する。
そこで、制限値設定部44は、電圧起因推定充電率の信頼係数を設定するに際して、まず、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合を取得する。
【0086】
なお、以下では、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合を「充電率分解能」と称する。この充電率分解能の大きさが小さいほど、推定開放電圧値に含まれる誤差の、電圧起因推定充電率に含まれる誤差への影響が小さくなる。このため、以下では、充電率分解能の大きさが小さいことを「分解能がよい」と称し、充電率分解能の大きさが大きいことを「分解能が悪い」と称する。
【0087】
この充電率分解能は、例えば、電圧起因推定充電率取得部32が求めて制限値設定部44に出力する。電圧起因推定充電率取得部32は、例えば、二次電池の開放電圧値を入力として充電率分解能を出力する関数を予め記憶しておき、推定開放電圧演算部31からの推定開放電圧値を当該関数に代入して充電率分解能を算出する。なお、当該関数は、例えば充電率演算システム1の管理者が、予め実験等に基づいて求め、電圧起因推定充電率取得部32に記憶させておく。
【0088】
あるいは、電圧起因推定充電率取得部32が、開放電圧値と充電率分解能との関係を示す表(テーブル)を記憶しておくようにしてもよい。例えば、電圧起因推定充電率取得部32は、式(12)に示されるように、開放電圧値を幾つかの区分に分割した区分毎に、充電率分解能を記憶しておく。
【0090】
ここで、∂SOC/∂Vは、電圧起因推定充電率取得部32が求める充電率分解能を示す。また、∂SOC
1/∂V、∂SOC
2/∂V、・・・、∂SOC
N/∂Vの各々は、開放電圧値の区分における充電率分解能を示す。
そして、電圧起因推定充電率取得部32は、推定開放電圧演算部31からの推定開放電圧値に該当する区分に対応付けられた充電率分解能を読み出す。
【0091】
電圧起因推定充電率取得部32から充電率分解能を取得した制限値設定部44は、式(13)に基づいて、電圧起因推定充電率の信頼係数∂SOC
ref/∂SOCを算出する。
【0093】
ここで、∂SOC
ref/∂Vは、充電率分解能の基準値を示す。この充電率分解能の基準値としては、例えば、式(14)に示されるように、電圧起因推定充電率取得部32が取得し得る充電率分解能の最小値(例えば、電圧起因推定充電率取得部32が記憶しているテーブルにおける最小値)を予め設定しておく。
【0095】
あるいは、充電率演算システム1の管理者が実運用において∂SOC
ref/∂Vの値を調整するなど、他の方法で当該∂SOC
ref/∂Vの値を設定するようにしてもよい。
【0096】
制限値設定部44は、式(11)を用いて得られる、充電率演算誤差の最大値と、式(13)を用いて得られる、電圧起因推定充電率の信頼係数とに基づいて、式(15)に示されるように、式(1)の右辺の第3項ΔSOC
(max)(n)、すなわち、電池電流値から求めた現在の充電率に対する、充電率演算システム1の求める充電率の差分の許容値の上限を算出する。
【0098】
ここで、max(ΔS
err1(n),ΔS
err2(n),ΔS
err3(n),ΔS
err4(n))は、式(11)に示す充電率演算誤差ΔS
err1(n)からΔS
err4(n)までのうち最も大きな値を示しており、これは、式(11)において得られる充電率演算誤差の最大値に該当する。
式(15)の右辺では、この充電率演算誤差の最大値に、電圧起因推定充電率の信頼係数が乗算されている。この電圧起因推定充電率の信頼係数の値は、充電率分解能の基準値と、電圧起因推定充電率取得部32が取得した充電率分解能の逆数とを乗算した値となっている。
従って、ΔSOC
(max)(n)の値は、充電率演算誤差の最大値が大きいほど大きい値となり、また、電圧起因推定充電率取得部32が取得した充電率分解能の値が小さいほど(すなわち、充電率分解能がよいほど)大きい値となる。
【0099】
同様に、制限値設定部44は、充電率演算誤差の最大値と電圧起因推定充電率の信頼係数とに基づいて、式(16)に示されるように、式(3)の右辺の第3項ΔSOC
(min)(n)、すなわち、電池電流値から求めた現在の充電率に対する、充電率演算システム1の求める充電率の差分の許容値の下限を算出する。
【0101】
ここで、min(ΔS
err1(n),ΔS
err2(n),ΔS
err3(n),ΔS
err4(n))は、式(11)に示す充電率演算誤差ΔS
err1(n)からΔS
err4(n)までのうち最も小さな値を示しており、これは、式(11)において得られる充電率演算誤差の最小値に該当する。
そして、ΔSOC
(min)(n)の値は、充電率演算誤差の最小値が小さいほど小さい値となり、また、電圧起因推定充電率取得部32が取得した充電率分解能の値が小さいほど(すなわち、充電率分解能がよいほど)小さい値となる。
【0102】
このように、式(1)の第3項は、充電率分解能がよいほど大きな値を取る。充電率分解能がよいほど、式(1)の第3項が大きな値を取ることで、式(1)に示される充電率上限値SOCH(n)は、充電率分解能がよいほど、大きな値を取る(すなわち、制限を緩やかにする)。
【0103】
同様に、式(3)の第3項は、充電率分解能がよいほど小さい値を取る。従って、式(3)に示される充電率下限値SOCL(n)は、充電率分解能がよいほど、小さい値を取る(すなわち、制限を緩やかにする)。
【0104】
このように、制限値設定部44は、充電率分解能が悪い場合に、充電率上限値や充電率下限値による制限を厳しくする(いわば、電流起因充電率の信頼度評価を高める)。これにより、電圧起因推定充電率の変化の割合が大きい領域における充電率の誤差を低減させることができる。
一方、電圧起因推定充電率の分解能がよい場合、制限値設定部44は、充電率上限値や充電率下限値による制限を緩やかにする。これにより、充電率分解能が悪い領域(すなわち、推定開放電圧値の変化に対する電圧起因推定充電率の変化の割合が大きい領域)を通過して、電圧起因推定充電率の値が回復した(誤差の大きさが小さくなった)際に、充電率選択部51が選択する充電率の値を、より速やかに回復させることができる。
【0105】
図5は、充電率選択部51が選択した充電率が回復する例を示す説明図である。
図5のグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は充電率を示す。また、線L41は二次電池の真の充電率を示し、線L42は、電圧起因推定充電率取得部32が取得する電圧起因推定充電率を示し、線L43は、充電率選択部51が選択した充電率、すなわち、充電率演算システム1の演算結果としての充電率を示している。
【0106】
時刻t41からt42までは、
図4における時刻t31からt32までと同様、充電率分解能が悪い領域にある。この場合、式(3)の右辺第3項の値の大きさは比較的小さく、充電率下限値の値は、
図4の例の場合とほぼ同様である。従って、
図4の例の場合と同様に、充電率選択部51が選択した充電率(線L43)に含まれる誤差の大きさを、電圧起因推定充電率(線L42)に含まれる誤差の大きさよりも小さくすることができる。
【0107】
一方、時刻t42以降では、充電率分解能がよくなっている。このため、式(1)の右辺第3項の値の大きさは比較的大きく、充電率上限の値は、
図4の例の場合よりも大きい値となっている(すなわち、制限が緩やかになっている)。従って、充電率選択部51が選択した充電率(線L43)を、より大きく変化させることができ、当該充電率選択部51が選択した充電率を、より急速に回復させる(誤差の大きさを小さくする)ことができる。
【0108】
なお、以上では、制限値設定部44が、充電率上限値と充電率下限値との両方を設定する場合について説明したが、制限値設定部44が、充電率上限値と充電率下限値とのいずれか一方のみを設定するようにしてもよい。
例えば、制限値設定部44が、充電率下限値のみを設定する場合、充電率選択部51が選択する充電率の、真の充電率からの、小さい値側への乖離の程度(すなわち誤差の大きさ)を低減させることができる。
【0109】
特に、電圧起因推定充電率取得部32が取得する電圧起因推定充電率が真の充電率よりも小さい値になる傾向があることが予め分かっている場合、制限値設定部44が充電率下限値を設定するようにして、充電率選択部51が選択する充電率の、真の充電率からの、小さい値側への乖離の程度を低減させる。かつ、制限値設定部44が充電率上限値を設定しないようにすることで、充電率選択部51が選択する充電率が真の充電率より小さい場合に、速やかに回復可能となる。
【0110】
以上のように、制限値設定部44は、充電率選択部51の選択する充電率を制限する(充電率上限値または充電率下限値を設定する)際に、電池電流と、誤差上下限値と、電圧起因推定充電率に含まれ得る誤差とに基づいて、充電率上限値または充電率下限値の少なくとも一方を設定する。従って、電圧起因推定充電率が回復した(誤差が減少した)際に、充電率選択部51の選択する充電率を、より速やかに回復させ得る。
【0111】
その際、制限値設定部44は、例えば、予め取得した、推定開放電圧と前記電圧起因推定充電率との関係と、充電率選択部51が選択した充電率演算結果とに基づいて、電圧起因推定充電率に含まれ得る誤差を求めることができる。
【0112】
また、制限値設定部44は、さらに電池容量に含まれる誤差に基づいて、充電率上限値または充電率下限値の少なくとも一方を設定する。これにより、充電率の演算結果の精度をさらに向上させ得る。
【0113】
なお、電池インピーダンスモデル部20、推定開放電圧演算部31、電圧起因推定充電率取得部32、誤差設定部41、電池容量取得部42、演算周期通知部43、制限値設定部44、充電率選択部51および演算結果送信部52の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0114】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。