(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A成分)ポリイソシアネート、(B成分)2個以上の活性水素基を有する化合物、(C成分)1個以上の活性水素基と親水性基を有する化合物、及び(D成分)鎖伸長剤、からなるポリウレタン水分散体を含有するリチウム二次電池の電極用結着剤であって、前記(A成分)が3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを前記ポリウレタン水分散体中のポリウレタンに対し2重量%以上30重量%以下含有し、前記(B成分)がポリカーボネートポリオール、芳香環を有するポリエステルポリオール、及び/または芳香環を有するポリエーテルポリオールを含有することを特徴とするリチウム二次電池の電極用結着剤。
【発明を実施するための形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0008】
本発明のリチウム二次電池の電極用結着剤は(A成分)ポリイソシアネート、(B成分)2個以上の活性水素基を有する化合物、(C成分)1個以上の活性水素基と親水性基を有する化合物、及び(D成分)鎖伸長剤、からなるポリウレタン水分散体を含有するリチウム二次電池の電極用結着剤であって、前記(A成分)が3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含有し、前記(B成分)がポリカーボネートポリオール、芳香環を有するポリエステルポリオール、及び/または芳香環を有するポリエーテルポリオールを含有するポリウレタン水分散体である。
【0009】
前記(A成分)の2官能のジイソシアネートは特に限定されること無く当該技術分野で一般的に使用されるジイソシアネートを使用することができる。具体的には、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネートを挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。単独で又は2種以上を併用して用いることもできる。
【0010】
(A成分)の3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば前述の2官能イソシアネートを主原料とし、これらの3量体(ビウレットあるいはイソシアヌレート)、トリメチロールプロパン等の3官能アルコールとの付加物、フロログリシン等の3官能フェノールとの付加物あるいは、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)、リジントリイソシアネート等、またアロファネート結合及び/またはイソシアヌレート結合含有変性イソシアネート混合物があげられる。単独で又は2種以上を併用して用いることもできる。前記ポリイソシアネートの内、結着性及び耐電解液性の点から脂環族系及び/または芳香族系イソシアネートが好ましく、具体的には、ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、多官能ポリイソシアネートとしてはイソシアヌレートタイプが好ましい。
前記(A成分)の3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートの含有量が、前記ポリウレタン水分散体中のポリウレタンに対し2重量%以上30重量%以下である事が好ましい。
【0011】
前記(B成分)はポリカーボネートポリオール、芳香環を有するポリエステルポリオール、及び/または芳香環を有するポリエーテルポリオールを含有するものである。
【0012】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されること無く当該技術分野で一般的に使用されるポリカーボネートポリオールを使用することができる。具体的には、1,6−ヘキサンジオールのカーボネートポリオール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネートポリオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネートポリオール、1,9−ノナンジオール及び2−メチル−1,8−オクタンジオールのカーボネート、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのカーボネートが挙げられ、これらは旭化成ケミカルズ(株)製のPCDL T−6001、T−6002、T−5651、T−5652、T−5650J、T−4671、T−4672、やクラレ(株)製のクラレポリオールC−590、C−1050、C−1050R,C−1090,C−2050、C−2050R,C−2070、C−2070R、C−2090、C−2090R、C−3090、C−3090R、C−4090、C−4090R、C−5090、C−5090R、C−1065N、C−2065N、C−1015N、C−2015Nや宇部興産(株)製のETERNACOLL UH−50、UH−100、UH−200、UH−300、UM−90(3/1)、UM−90(1/1)、UM−90(1/3)、UC−100などが挙げられる。
【0013】
前記、芳香環を有するポリエステルポリオールは一般的に二塩基酸と二価アルコールを縮合反応することにより得ることが出来る。前記二塩基酸としては特に限定されないが具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸のような芳香族二塩基酸が挙げられる。前記二価アルコールとしては特に限定されないが具体的には、エチレングルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、などのような脂肪族グリコール及びシクロヘキサンジオール等の脂環式グリコールやビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のような芳香族グリコール等が挙げられる。
【0014】
前記芳香環を有するポリエーテルポリオールとしては、具体的なビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物)などが挙げられる。
【0015】
その他に、(B成分)として、本発明で得られる効果を損なわない範囲において、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを併用することができる。前記ポリエーテルポリオールとしては、具体的にはグリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類や、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのアルカノールアミン類などを出発物質とするものが挙げられる。また、四官能アルコール成分として、ペンタエリスリトールを出発物質とするものが挙げられる。これら多価アルコールを出発物質として、塩基性触媒の存在下、アルキレンオキサイドを重付加することによりポリエーテルポリオールが合成される。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0016】
前記ポリカーボネートポリオール、芳香族系ポリエステルポリオール及び/または芳香環を有するポリエーテルポリオールの数平均分子量300以上3,000以下であることが好ましい。数平均分子量が300未満であれば結着性に劣り、数平均分子量3000を超える場合は耐電解液性に劣ってしまう。
【0017】
前記(B成分)として、分子内でウレタン結合を局在化させるために、エチレングリコール、1,4ブタンジオールなどの単鎖の低分子量ジオールを添加してもよい。また、前記(B成分)として、分子内に分岐構造を導入するために、多価アルコール及び/又は多価アルコールのオキシアルキレン誘導体を使用することができる。該化合物として具体的にはトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、それらのオキシアルキレン誘導体又はそれらの多価アルコール及びオキシアルキレン誘導体と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、若しくは多価カルボン酸エステルからのエステル化合物を挙げることができる。また前記(B成分)はポリウレタン内でウレタン結合を局在化させるために、エチレングリコール、1,4―ブタンジオールなどの単鎖の低分子量ジオールを添加してもよい。前述のようにポリウレタンに分岐構造を導入しウレタン結合の局在化により該ウレタン水分散体を含有する結着剤を使用した電極の耐電解液性が向上するという効果が得られるので好ましい。
【0018】
また、前記(B成分)の含有量は前記ポリウレタン水分散体中のポリウレタンに対し30重量%以上75重量%以下であることが好ましい。含有量が30重量%未満の場合は結着性に劣り、75重量%を超える場合は耐電解液性に劣ってしまう。
【0019】
本発明の(C成分)1個以上の活性水素基と、親水性基を有する化合物である。
【0020】
親水性基としては、アニオン性親水基、カチオン性親水基、ノニオン性親水基が挙げられ、具体的にはアニオン性親水基としては、カルボキシル基及びその塩、スルホン酸基及びその塩が、カチオン性親水基としては、第三級アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩が、ノニオン性親水基としては、エチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、エチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基等が挙げられる。
【0021】
1個以上の活性水素基とカルボキシル基を含有する化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物及びこれらの誘導体並びにそれらの塩に加え、これらを使用して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。更に、アラニン、アミノ酪酸、アミノカプロン酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン等のアミノ酸類、コハク酸、アジピン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水トリメリット酸等のカルボン酸類も挙げられる。
【0022】
1個以上の活性水素基とスルホン酸基及びその塩を有する化合物としては、例えば、2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸含有化合物及びこれらの誘導体、並びにこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、ポリアミドポリオール、ポリアミドポリエステルポリオール等が挙げられる。これらのカルボキシル基又はスルホン酸基は、中和して塩にすることにより、最終的に得られるポリウレタンを水分散性にすることができる。この場合の中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基等が挙げられる。中和は、ウレタン化反応前、反応中、又は反応後の何れにおいても行うことができる。
【0023】
1個以上の活性水素基と第3級アンモニウム塩を含有する化合物は、メチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。これらをギ酸、酢酸などの有機カルボン酸、塩酸、硫酸などの無機酸で中和して塩にすることによりポリウレタンを水分散性にすることができる。中和は、ウレタン化反応前、反応中、又は反応後の何れにおいても行うことができる。これらの内、乳化の容易性の観点からメチルジエタノールアミンを有機カルボン酸で中和したものが好ましい。
1個以上の活性水素基と第4級アンモニウム塩を有する化合物は、前述のメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミンを塩化メチル、臭化メチルなどのハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸などのジアルキル硫酸により4級化した化合物である。これらの内、乳化の容易性の観点から、メチルジエタノールアミンをジメチル硫酸で4級化した化合物である。
【0024】
1個以上の活性水素基とノニオン性親水基を有する化合物は、特に制限されないが、エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30重量%以上含有し、数平均分子量300〜20,000の化合物が好ましく、例えば、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール又はそのモノアルキルエーテル等のノニオン性基含有化合物又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0025】
(C成分)は、上記化合物をそれぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0026】
(C成分)の含有量は、アニオン性親水基含有化合物の場合は、そのアニオン性親水基含有量を表す酸価が5〜50mgKOH/gであることが好ましく、5〜45mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が5mgKOH/g未満の場合には、水への分散性が困難になるとうい問題がある。また酸価が50mgKOH/gを超える場合には耐電解液性が低下する問題がある。ノニオン性基含有化合物を使用する場合は、1〜30重量部とし、特に5〜20重量部使用したものであることが好ましい。
【0027】
この中で、(C成分)としては、集電体との密着性の面から分子中に1個以上の活性水素基とカルボキシル基を含有する化合物が好ましい。
【0028】
(D成分)は当該技術分野で一般的に使用される鎖伸長剤を用いることができる。特に制限はされないが具体的にはジアミンやポリアミンが使用できる。ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、アミノ基含有シランカップリング剤などを例示することができ、ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等を例示することができる。(D成分)としては、ポリウレタンの内部架橋構造を導入し耐電解液性を向上させるために、3官能以上のポリアミンを含有することが好ましい。具体的な該ポリアミンとしては、前述のポリアミンを例示することができる。
【0029】
本発明のポリウレタン水分散体のポリウレタンの数平均分子量は、分岐構造や内部架橋構造を導入して可能な限り大きくすることが好ましく、50,000以上であることが好ましい。分子量を大きくして溶剤に不溶とした方が、耐電解液性に優れた塗膜が得られるからである。
【0030】
本発明のポリウレタン水分散体の製造方法は、特に限定されるものではないが、一般的には、(B成分)2個以上の活性水素基を有する化合物、(C成分)1個以上の活性水素基と、親水性基を有する化合物、及び(D成分)鎖伸長剤に含まれるイソシアネート基との反応性を有する活性水素基の合計より、化学量論的に過剰の(A成分)ポリイソシアネート(イソシアネート基と反応性官能基との当量比1:0.85〜1.1)を溶剤なしに、又は活性水素基を有しない有機溶媒中で反応させてイソシアネート末端のウレタンプレポリマーを合成した後、必要に応じて(C成分)のアニオン性親水基、カチオン性親水基の中和、又は4級化を行ってから、水中に分散乳化を行う。その後、残存するイソアネート基より少ない当量の(D成分)鎖伸長剤(イソシアネート基と鎖伸長剤との当量比1:0.5〜0.9)を加えて乳化ミセル中のイソシアシネート基と(D成分)鎖伸長剤を界面重合反応させてウレア結合を生成させる。これにより乳化ミセル内の架橋密度が向上し、三次元架橋構造が形成される。このように三次元架橋構造の形成により、優れた耐電解液性を示す塗膜が得られる。その後、必要に応じて使用した溶剤を除去することにより、ポリウレタン水分散体を得ることができる。尚、前記(D成分)としてポリアミン等を使用しなくても水中に分散乳化時に系中に存在する水分子により鎖伸長を行うこともできる。なお、ウレタンプレポリマーの合成においては、イソシアネート基と不活性で、かつ、生成するウレタンプレポリマーを溶解し得る溶剤を用いてもよい。これらの溶剤として、ジオキサン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。反応で使用したこれら親水性有機溶剤は最終的に除去するのが好ましい。
【0031】
本発明のポリウレタン水分散体の平均粒子径は、添加量、塗工性及び結着性の面から0.005〜0.5μmの範囲であることが好ましい。
【0032】
本発明のポリウレタン水分散体のポリウレタン樹脂の架橋密度が、該ポリウレタン樹脂の1000分子量あたり0.01〜0.50であることが好ましい。ここでいう架橋密度とは次の数1に示す式によって計算することにより求めることができる。すなわち、分子量MW
A1及び官能基数F
A1のポリイソシアネート(A)をW
A1gと、分子量MW
A2及び官能基数F
A2 のポリイソシアネート(A)をW
A2gと、分子量MW
AJ及び官能基数F
AJのポリイソシアネート(A)をW
Ajgと(jは1以上の整数)と、分子量MW
B1、官能基数F
B1の活性水素基含有化合物(B)をW
B1gと、分子量MW
B2及び官能基数F
B2 の活性水素基含有化合物(B)をW
B2gと、分子量MW
Bk及び官能基数F
Bkの活性水素基含有化合物(B)をW
Bkg(kは1以上の整数)と、分子量MW
C1、官能基数F
C1の1以上の活性水素基と親水性基を有する化合物(C)をW
C1gと、分子量MW
Cm、官能基数F
Cmの1以上の活性水素基と親水性基を有する化合物(C)をW
Cmg(mは1以上の整数)と、分子量MW
1、官能基数F
1の鎖伸長剤(D)をW
D1gと分子量MW
Dn、官能基数F
Dnの鎖長剤(D)をW
Dng(nは1以上の整数)とを反応せしめて得られたポリウレタン水分散体に含まれる樹脂固形分の1000分子量あたりの架橋密度は、下記の式により計算で求めることができる。
【0033】
【数1】
架橋密度が、0.01以下では架橋密度が低いため耐電解液性や耐熱性に劣り、0.50を超えるとポリウレタン樹脂の柔軟性が低下し、結着性に劣ってしまう。
【0034】
本発明のポリウレタン水分散体は、該ウレタン樹脂中のウレタン結合量が150〜2000g/eqであることが好ましく、200〜1000g/eqであることがより好ましい。ウレタン結合量が150g/eq以下ではウレタン結合量が多すぎるためポリウレタン樹脂の柔軟性が低下し、結着性に劣り、2000g/eqを超えると耐電解液性や耐熱性に劣ってしまう。本発明のポリウレタン水分散体は、該ウレタン樹脂中のウレア結合量が300〜20000g/eqであることが好ましく、400〜10000g/eqであることがより好ましい。ウレア結合量が300g/eq以下ではウレア結合量が多すぎるためポリウレタン樹脂の柔軟性が低下し、結着性に劣り、20000g/eqを超えると合成時の作業性の悪化を招く場合があること、および耐電解液性や耐熱性に劣ってしまうため好ましくない。
【0035】
また、本発明においてポリウレタン樹脂水分散体に架橋剤を併用しても良い。前記架橋剤として、具体的にはアジリジン、オキサゾリン、変性ポリイソシアネート、ポリエポキシド化合物などが挙げられ、上記架橋剤をそれぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明のリチウム二次電池に用いられる正極及び負極は、電極活物質、導電剤、電極活物質の集電体、及び電極活物質並びに導電剤を集電体に結着させる結着剤等から構成される。
【0037】
本発明のリチウム二次電池は、前記ポリウレタン水分散体を含有する結着剤を使用して製造された電極から構成されるものである。前記結着剤は正極と負極のどちらでも利用可能である。
【0038】
本発明のリチウム二次電池において、前記ポリウレタン樹脂水分散体を使用しない方の電極用結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンやパーフルオロメチルビニルエーテル及びテトラフルオロエチレンとの共重合体などのポリフッ化ビニリデン共重合体樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴムなどのフッ素系樹脂や、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのポリマーが使用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0039】
本発明のリチウム二次電池の正極に使用する正極活物質としては、リチウムイオンの挿入、脱離が可能であるものであれば、特に制限されることはない。例としては、CuO、Cu
2O、MnO
2、MoO
3、V
2O
5、CrO
3、MoO
3、Fe
2O
3、Ni
2O
3、CoO
3等の金属酸化物、LixCoO
2、LixNiO
2、LixMn
2O
4、LiFePO
4等のリチウムと遷移金属との複合酸化物や、TiS
2、MoS
2、NbSe
3等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子化合物等が挙げられる。上記の中でも、一般に高電圧系と呼ばれる、コバルト、ニッケル、マンガン等の遷移金属から選ばれる1種以上とリチウムとの複合酸化物がリチウムイオンの放出性や、高電圧が得られやすい点で好ましい。コバルト、ニッケル、マンガンとリチウムとの複合酸化物の具体例としては、LiCoO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiNiO
2、LiNixCo(1−x)O
2、LiMnaNibCoc(a+b+c=1)などが挙げられる。また、これらのリチウム複合酸化物に、少量のフッ素、ホウ素、アルミニウム、クロム、ジルコニウム、モリブデン、鉄などの元素をドーブしたものや、リチウム複合酸化物の粒子表面を、炭素、MgO、Al
2O
3、SiO
2等で表面処理したものも使用できる。上記正極活物質は2種類以上を併用することも可能である。
【0040】
本発明の負極に使用する負極活物質としては、金属リチウム又はリチウムイオンを挿入/脱離することができるものであれば公知の活物質を特に限定なく用いることができる。たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素などの炭素材料を用いることができる。また、金属リチウムや合金、スズ化合物などの金属材料、リチウム遷移金属窒化物、結晶性金属酸化物、非晶質金属酸化物、ケイ素化合物、導電性ポリマー等を用いることもでき、具体例としては、Li
4Ti
5O
12、NiSi
5C
6等が挙げられる。
【0041】
本発明のリチウム二次電池の正極及び負極には導電剤が用いられる。該導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば使用することができる。通常、アセチレンブラックやケッチンブラック等のカーボンブラックが使用されるが、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンウイスカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)粉末、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料でもよい。これらは2種類以上の混合物として含ませることができる。その添加量は活物質量に対して0.1〜30重量%が好ましく、特に0.2〜20重量%が好ましい。
【0042】
本発明のリチウム二次電池の電極活物質の集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でも使用可能である。例えば、正極用集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面を、カーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。また、負極用集電体としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。これらの集電体材料は表面を酸化処理することも可能である。また、その形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体等の成形体も用いられる。厚みは特に限定はないが、1〜100μmのものが通常用いられる。
【0043】
本発明のリチウム二次電池の電極は、電極活物質、導電剤、電極活物質の集電体、及び電極活物質並びに導電剤を集電体に結着させる結着剤等を混合してペースト状の電極材料を調製し、集電体となるアルミ箔或いは銅箔等に塗布して分散媒を揮発させることにより製造することができる。
【0044】
本発明の電極材料にはペースト化の粘性調整剤として、水溶性高分子などの増粘剤を使用できる。具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース類; ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダなどのポリカルボン酸系化合物; ポリビニルピロリドンなどのビニルピロリドン構造を有する化合物; ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、カンテン、デンプンなどから選択された1 種又は2 種以上が使用可能であり、中でもカルボキシメチルセルロース塩が好ましい。
【0045】
上記電極材料の混合の方法・順序等は特に限定されず、例えば、活物質と導電剤は予め混合して用いることが可能であり、その場合の混合には、乳鉢、ミルミキサー、遊星型ボールミル又はシェイカー型ボールミルなどのボールミル、メカノフュージョン等を用いることができる。
【0046】
本発明のリチウム二次電池に使用するセパレータは、通常のリチウム二次電池に用いられるセパレータを特に限定なしに使用でき、その例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン等よりなる多孔質樹脂、セラミック、不織布などが挙げられる。
【0047】
本発明のリチウム二次電池に使用する電解液は通常のリチウム二次電池に用いられる電解液であればよく、有機電解液およびイオン液体等の一般的なものを使用することができる。
【0048】
本発明のリチウム二次電池に使用する電解質塩としては、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiCl、LiBr、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiI、LiAlCl
4、NaClO
4、NaBF
4、NaI等を挙げることができ、特に、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6などの無機リチウム塩、LiN(SO
2CxF2x+1)(SO
2CyF2y+1)で表される有機リチウム塩を挙げることができる。ここで、xおよびyは0又は1〜4の整数を表し、また、x+yは2〜8である。有機リチウム塩としては、具体的には、LiN(SO
2F)
2、LiN(SO
2CF
3)(SO
2C
2F
5)、LiN(SO
2CF
3)(SO
2C
3F
7)、LiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2C
2F
5)(SO
2C
3F
7)、LiN(SO
2C
2F
5)(SO
2C
4F
9)等が挙げられる。中でも、LiPF
6、LiBF
4、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(SO
2F)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2などを電解質に使用すると、電気特性に優れるので好ましい。上記電解質塩は1種類用いても2種類以上用いても良い。このようなリチウム塩は、通常、0.1〜2.0モル/リットル、好ましくは0.3〜1.5モル/リットルの濃度で、電解液に含まれていることが望ましい。
【0049】
本発明のリチウム二次電池の電解質塩を溶解させる有機溶媒としては、通常のリチウム二次電池の非水電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されず、例えば、カーボネート化合物、ラクトン化合物、エーテル化合物、スルホラン化合物、ジオキソラン化合物、ケトン化合物、ニトリル化合物、ハロゲン化炭化水素化合物等を挙げることができる。詳しくは、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジメチルカーボネート、プロピレングリコールジメチルカーボネート、エチレングリコールジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチルラクトン等のラクトン類、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、スルホラン、3−メチルスルホラン等のスルホラン類、1,3−ジオキソラン等のジオキソラン類、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、アセトニトリル、ピロピオニトリル、バレロニトリル、ベンソニトリル等のニトリル類、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、その他のメチルフォルメート、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、イミダゾリウム塩、4級アンモニウム塩などのイオン性液体等を挙げることができる。さらに、これらの混合物であってもよい。これらの有機溶媒のうち、特に、カーボネート類からなる群より選ばれた非水溶媒を一種類以上含有することが、電解質の溶解性、誘電率および粘度において優れているので好ましい。
【0050】
本発明のリチウム二次電池において、ポリマー電解質または高分子ゲル電解質に用いる場合は、高分子化合物であるエーテル、エステル、シロキサン、アクリロニトリル、ビニリデンフロライド、ヘキサフルオロプロピレン、アクリレート、メタクリレート、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、オキセタンなどの重合体またはその共重合体構造を有する高分子またはその架橋体などが挙げられ、高分子は一種類でも二種類以上でもよい。高分子構造は特に限定されるものではないが、ポリエチレンオキサイドなどのエーテル構造を有する高分子が特に好ましい。
【0051】
本発明のリチウム二次電池において、液系の電池は電解液、ゲル系の電池はポリマーを電解液に溶解したプレカーサー溶液、固体電解質電池は電解質塩を溶解した架橋前のポリマーを電池容器内に収容する。
【0052】
本発明に係るリチウム二次電池は、円筒型、コイン型、角型、その他任意の形状に形成することができ、電池の基本構成は形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更して実施することができる。例えば、円筒型では、負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極と、正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極とを、セパレータを介して捲回した捲回体を電池缶に収納し、非水電解液を注入し上下に絶縁板を載置した状態で密封して得られる。また、コイン型リチウム二次電池に適用する場合では、円盤状負極、セパレータ、円盤状正極、およびステンレスの板が積層された状態でコイン型電池缶に収納され、非水電解液が注入され、密封される。
【実施例】
【0053】
つぎに、実施例について比較例とあわせて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ポリウレタン水分散体の合成]
(合成例1)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにニューポールBPE―20NK(商品名、三洋化成工業株式会社製、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、平均水酸基価360mgKOH/g、活性水素基数2) 121.4重量部、ジメチロールプロピオン酸(活性水素基数2)16.3重量部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート138.2重量部、デュラネート24A―100(商品名、旭化成ケミカルズ社製,ビウレット型イソシアネート)24.0重量部、メチルエチルケトン200重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量3.5%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を45℃まで冷却し、トリエチルアミンを12.3重量部加え中和後、水900重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用し乳化分散させた。続いて、エチレンジアミン(活性水素基数2) 6.6重量部を水100重量部で希釈したアミン水溶液を加え、1時間鎖伸長反応を行った。これを減圧、50℃下、脱溶剤を行い、不揮発分約30%のポリウレタン水分散体Aを得た。
(合成例2)
ニューポールBPE―20NK 121.4重量部をクラレポリオールP―1020(商品名、クラレ社製、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとテレフタル酸からなるポリエステルポリオール、平均水酸基価110mgKOH/g、活性水素基数2)177.2重量部に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを87.0重量部、デュラネート24A―100を19.5重量部に、エチレンジアミンを4.5重量部に変更した以外は合成例1と同様に製造を行いポリウレタン水分散体Bを得た。
(合成例3)
ニューポールBPE―20NK 121.4重量部をデュラノールT―4671(商品名、旭化成ケミカルズ社製、ポリカーボネートポリオール、平均水酸基価112mgKOH/g、活性水素基数2) 190.7重量部に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート 138.2重量部をイソホロンジイソシアネート 78.0重量部に、デュラネート24A―100 24.0重量部をデュラネートTPA―100(商品名、旭化成ケミカルズ社製、イソシアヌレート型イソシアネート) 15.0重量部に、エチレンジアミン 6.6重量部をメタキシレンジアミン(活性水素基数2) 9.2重量部に変更した以外は合成例1と同様に製造を行いポリウレタン水分散体Cを得た。
(合成例4)
メタキシレンジアミン 9.2重量部をジエチレントリアミン(活性水素基数3) 4.6重量部に変更した以外は合成例3と同様に製造を行いポリウレタン水分散体Dを得た。
(合成例5)
ニューポールBPE―20NK 121.4重量部をデュラノールT―4671 202.7重量部に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート 138.2重量部をトリレンジイソシアネート 63.0重量部に、デュラネート24A―100 24.0重量部をコロネートL(商品名、日本ポリウレタン工業製、TDI―TMPアダクト、固形分 75%)24重量部(固形分18重量部)に、エチレンジアミンによる鎖伸張反応を水による鎖伸張反応に変更した以外は合成例1と同様に製造を行いポリウレタン水分散体Eを得た。
(合成例6)
ニューポールBPE―20NK 121.4重量部をETERNACOLL UM―90(1/3)(製品名、宇部興産社製、ポリカーボネートポリオール、平均水酸基価125mgKOH/g、活性水素基数2) 160.4重量部とトリメチロールプロパン(活性水素基数3) 3.0重量部に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを96.3重量部に、エチレンジアミン 6.6重量部をイソホロンジアミン(活性水素基数2) 14.8重量部に変更した以外は合成例1と同様に製造を行いポリウレタン水分散体Fを得た。
(合成例7)
ニューポールBPE―20NK 121.4重量部をPolyTHF 1000(商品名、BASF社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、平均水酸基価110mgKOH/g、活性水素基数2) 177.2重量部に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを106.5重量部に、エチレンジアミンを5.5重量部に変更した以外は合成例1と同様に製造を行いポリウレタン水分散体Gを得た。
(合成例8)
ニューポールBPE―20NK 121.4重量部をクラレポリオールP―1010(商品名、クラレ社製、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルポリオール、平均水酸基価110mgKOH/g、活性水素基数2)190.7重量部に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート 138.2重量部をイソホロンジイソシアネート 93.0重量部に、エチレンジアミンを5.4重量部に変更した以外は合成例1と同様に製造を行いポリウレタン水分散体Hを得た。
[ポリウレタン水分散体の評価]
得られたポリウレタン水分散体に関する各測定に際しては、下記方法を用いた。また、その結果を下記表1に示す。
(ポリウレタン水分散体の不揮発分の重量)
JIS K 6828に準じて測定した。
(ポリウレタン水分散体の樹脂固形分中の架橋密度)
数1の式より算出した。
(ポリウレタン水分散体の平均粒子径測定)
平均粒子径は、Microtrac UPA−UZ152(日機装社製)にて測定し、50%平均値を粒子径として算出した。
(ポリウレタン樹脂の酸価、ウレタン結合量、ウレア結合量)
ウレタン樹脂の合成時の仕込量および反応後の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量から算出した。
【0054】
【表1】
[電極の製作]
電極の製作に使用した結着剤について下記表2に示す。
【0055】
【表2】
[負極の作製]
(負極1)
負極活物質として、天然黒鉛100g、導電剤としてカーボンブラック0.5g(Timcal社製、Super−P)と増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬製、品名:セロゲンWS―C)2重量%水溶液100g、結着剤として前記ポリウレタン水分散体Aの30重量%溶液6.7gを遊星型ミキサーで混合し、固形分50%になるように負極スラリーを調製した。この負極スラリーを塗工機で厚み10μmの電解銅箔上にコーティングを行い、120℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、負極活物質7mg/cm
2の負極1を得た。
(負極2〜9)
前記ポリウレタン水分散体Aを表2に記載のポリウレタン水分散体、SBRに変更した以外は負極1と同様の方法で作成した。
(負極10)
負極活物質として、SiO(平均粒径4.5μm、比表面積5.5m
2/g)100g、導電剤としてカーボンブラック5g(Timcal社製、Super−P)と増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬製、品名:セロゲンWS―C)2重量%水溶液100g、結着剤として前記ポリウレタン水分散体Dの30重量%溶液6.7gを遊星型ミキサーで混合し、固形分50%になるように負極スラリーを調製した。この負極スラリーを塗工機で厚み10μmの電解銅箔上にコーティングを行い、120℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、負極活物質2.5mg/cm
2の負極を得た。
(負極11)
前記ポリウレタン水分散体をSBRに変更した以外は負極10と同様の方法で作成した。
(負極12)
負極活物質として、Li
4Ti
5O
12100g、導電剤としてカーボンブラック5g(Timcal社製、Super−P)と増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬製、品名:セロゲンWS―C)2重量%水溶液100g、結着剤として前記ポリウレタン水分散体Fの30重量%溶液6.7gを遊星型ミキサーで混合し、固形分50%になりように負極スラリーを調製した。この負極スラリーを塗工機で厚み10μmの電解銅箔上にコーティングを行い、120℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、負極活物質9.7mg/cm
2の負極を得た。
(負極13)
前記ポリウレタン水分散体をSBRに変更した以外は負極12と同様の方法で作成した。
[正極の作製]
(正極1)
正極活物質であるLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2100g、導電剤としてカーボンブラック(Timcal社製、Super−P)を7.8g、結着剤としてポリフッ化ビニリデン6g、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)61.3gを遊星型ミキサーで混合し、固形分65%になるように正極スラリーを調製した。この正極スラリーを塗工機で厚み20μmのアルミニウム箔上にコーティングを行い、130℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、正極活物質13.8mg/cm
2の正極を得た。
(正極2〜3)
正極活物質であるLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2100g、導電剤としてカーボンブラック(Timcal社製、Super−P)を7.8g、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬製、品名:セロゲンWS―C)2重量%水溶液100g、結着剤として表2の前記ポリウレタン水分散体30重量%溶液6.7gを遊星型ミキサーで混合し、固形分50%になるように正極スラリーを調製した。この正極スラリーを塗工機で厚み20μmのアルミニウム箔上にコーティングを行い、130℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、正極活物質13.8mg/cm
2の正極を得た。
(正極4)
正極活物質であるLiMn
2O
4100g、導電剤としてカーボンブラック(Timcal社製、Super−P)を5g、結着剤としてポリフッ化ビニリデン6g、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)59.8gを遊星型ミキサーで混合し、固形分65%になるように正極スラリーを調製した。この正極スラリーを塗工機で厚み20μmのアルミニウム箔上にコーティングを行い、130℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、正極活物質22mg/cm
2の正極を得た。
(正極5)
正極活物質であるLiMn
2O
4100g、導電剤としてカーボンブラック(Timcal社製、Super−P)を5g、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬製、品名:セロゲンWS―C)2重量%水溶液100g、結着剤として表2の前記ポリウレタン水分散体30重量%溶液6.7gを遊星型ミキサーで混合し、固形分50%になるように正極スラリーを調製した。この正極スラリーを塗工機で厚み20μmのアルミニウム箔上にコーティングを行い、130℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、正極活物質22mg/cm
2の正極を得た。
(正極6)
正極活物質であるLiFePO
4100g、導電剤としてカーボンブラック(Timcal社製、Super−P)を5g、結着剤としてポリフッ化ビニリデン6g、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)135.7gを遊星型ミキサーで混合し、固形分45%になるように正極スラリーを調製した。この正極スラリーを塗工機で厚み20μmのアルミニウム箔上にコーティングを行い、130℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、正極活物質14.5mg/cm
2の正極を得た。
(正極7)
正極活物質であるLiFePO
4100g、導電剤としてカーボンブラック(Timcal社製、Super−P)を5g、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬製、品名:セロゲンWS―C)2重量%水溶液100g、結着剤として表2の前記ポリウレタン水分散体30重量%溶液6.7gを遊星型ミキサーで混合し、固形分50%になるように正極スラリーを調製した。この正極スラリーを塗工機で厚み20μmのアルミニウム箔上にコーティングを行い、130℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、正極活物質14.5mg/cm
2の正極を得た。
[電極の評価]
下記の評価項目及び評価基準に基づいて評価を行った。
(結着性評価)
上記で得られた電極の塗工面を外側に180℃折り曲げて戻した後に、塗工面の活物質の脱落程度を目視で判断した。結果を表2に示す。
評価基準:
5点:0%脱落
4点:25%脱落
3点:50%脱落
2点:75%脱落
1点:100%脱落
(耐電解液性評価)
上記で得られた電極をEC(エチレンカーボネート)/PC(プロピレンカーボネート)/DMC(ジメチルカーボネート)/EMC(エチルメチルカーボネート)/DEC(ジエチルカーボネート)=1/1/1/1/1(vol)の混合溶剤に60℃、7日後浸漬後の塗膜外観を目視で判断した。結果を下記表3に示す。
評価基準
○ :塗膜に変化無し
△ :塗膜に膨れ数点発生
× :塗膜が剥がれる。
【0056】
【表3】
[リチウム二次電池の作成]
上記で得られた正極、負極を下記表4のように組み合わせて、電極間にセパレータとしてポリオレフィン系(PE/PP)セパレータを挟んで積層し、各正負極に正極端子と負極端子を超音波溶接した。この積層体をアルミラミネート包材に入れ、注液用の開口部を残しヒートシールした。正極面積18cm
2、負極面積19.8cm
2とした注液前電池を作製した。次にエチレンカーボネートとジエチルカーボネート(30/70vol比)とを混合した溶媒にLiPF
6(1.0mol/L)を溶解させた電解液を注液し、開口部をヒートシールし、評価用電池を得た。
【0057】
【表4】
[電池性能評価]
作製したリチウム二次電池について、20℃における以下の評価項目、評価基準に従って電池性能の評価を行った。結果を表5に示す。
(セルインピーダンス)
セルインピーダンスは、インピーダンスアナライザー(ZAHNER社製)を用いて、周波数1kHzでの抵抗値を測定した。
(充放電サイクル特性)
充放電サイクル特性は、以下の条件で測定した。
正極活物質としてLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2或いはLiMn
2O
4、負極活物質として天然黒鉛を使用した場合は、1C相当の電流密度で4.2VまでCC(定電流)充電を行い、続いて4.2VでCV(定電圧)充電に切り替え、1.5時間充電したのち、1C相当の電流密度で2.7VまでCC放電するサイクルを20℃で300サイクル行い、このときの初回1C放電容量に対する300サイクル後1C放電容量比を1C充放電サイクル保持率とした。
正極活物質としてLiFePO
4、負極活物質として天然黒鉛を使用した場合は、1C相当の電流密度で4.0VまでCC(定電流)充電を行い、続いて4.0VでCV(定電圧)充電に切り替え、1.5時間充電したのち、1C相当の電流密度で2.0VまでCC放電するサイクルを20℃で300サイクル行い、このときの初回1C放電容量に対する300サイクル後1C放電容量比を1C充放電サイクル保持率とした。
正極活物質としてLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、負極活物質としてLi
4Ti
5O
12を使用した場合は、1C相当の電流密度で2.9VまでCC(定電流)充電を行い、続いて2.9VでCV(定電圧)充電に切り替え、1.5時間充電したのち、1C相当の電流密度で1.0VまでCC放電するサイクルを20℃で300サイクル行い、このときの初回1C放電容量に対する300サイクル後1C放電容量比を1C充放電サイクル保持率とした。
正極活物質としてLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、負極活物質としてSiOを使用した場合は、1C相当の電流密度で4.2VまでCC(定電流)充電を行い、続いて4.2VでCV(定電圧)充電に切り替え、1.5時間充電したのち、1C相当の電流密度で2.7VまでCC放電するサイクルを20℃で50サイクル行い、このときの初回1C放電容量に対する50サイクル後1C放電容量比を1C充放電サイクル保持率とした。
【0058】
【表5】
表5より、従来から使用されてきたSBR或いはポリフッ化ビニリデンを使用した場合より、本発明の水性樹脂組成物を使用した場合の方が、結着性に優れ、セルインピーダンスが低く、サイクル特性後の容量保持率が高く保持されることがわかる。