(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794959
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】パルブモールド緩衝材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/113 20060101AFI20150928BHJP
B65D 85/68 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
B65D81/06 102Z
B65D85/68 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-189226(P2012-189226)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-46931(P2014-46931A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏之
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3112529(JP,U)
【文献】
実開平05−090501(JP,U)
【文献】
特開2005−145545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/113
B65D 85/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面から突起が突出する製品を抱持するパルプモールド緩衝材であって、
本体部の周囲に緩衝部を一体に形成し、前記本体部のリブによる補強が不要な部位にダミーのリブを一体に形成し、該リブの周囲の一部又は全部を切断して該リブを折り曲げ又は切り取って前記製品の突起近傍に移動させて、前記突起部周囲の緩衝部を補強することを特徴とするパルプモールド緩衝材。
【請求項2】
折り曲げ又は切り取ったダミーの前記リブを緩衝部の凹部に嵌合保持することを特徴とする請求項1記載のパルプモールド緩衝材。
【請求項3】
前記リブの形状は先端に向かって細くなるテーパーブロック状で、前記緩衝部のリブと嵌合する側面は、前記リブの側面に合わせた傾斜が形成されていることを特徴とする請求項2記載のパルプモールド緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外表面から突起が突出する製品を抱持するパルブモールド緩衝材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンタ等の画像形成装置にオプションとして増設されるペーパーフィーダーにおいては、その天面に位置決めピンが垂直に突設されており、この位置決めピンによって当該パーパーフィーダーとその上に設置される画像形成装置本体との位置決めがなされ、これによって該ペーパーフィーダーから画像形成装置本体への用紙の搬送位置が決められている。
【0003】
斯かるペーパーフィーダーを輸送又は保管する場合、例えば
図9の部分側断面図に示すように、ペーパーフィーダー50の両端部(
図9には一端部のみ図示)が2ピースのパルプモールド緩衝材11(
図9には一方のみ図示)によって抱持され、これらのパルプモールド緩衝材11によって
抱持されたパーパーフィーダー50は、段ボール等によって構成された外箱12内に収納されて輸送又は保管される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、上記パルプモールド緩衝材11は、パルプ材の金型成形によって断面略横W字状に一体成形されており、その本体部11Aの上下には、ペーパーフィーダー50の端部の上下面を覆う横台形状の緩衝部11B,11Cが一体に形成されている。尚、これらの緩衝部11B,11Cが一方に向かって広がる開口部を有する断面台形状に成形されるのは、成形時の金型の抜き勾配を確保するためである。
【0005】
図9に示すようなパルプモールド緩衝材11を用いる場合、ペーパーフィーダー50の天面に垂直に突出する位置決めピン52は、パルプモールド緩衝材11の上側の緩衝部11Bによって保護されるが、この場合の緩衝部11Bによる位置決めピン52の緩衝距離は図示のAとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−240143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図9に示すようなパルプモールド緩衝材11を用いた場合、該パルプモールド緩衝材11の上側の緩衝部11Bと位置決めピン52が上下方向においてオーバーラップしているため、図示の緩衝距離Aが比較的小さく、高い緩衝性能が得られないために位置決めピン52を十分保護することができない。又、上側の緩衝部11Bは端部に向かって傾斜しており、該緩衝部11Bと本体部11Aとの隙間が緩衝部11Bの端部に向かって大きくなっているため、上からの衝撃に対して緩衝部11Bが変形してしまい、位置決めピン52に対する衝撃を抑えることができない。このため、位置決めピン52に外部から強い衝撃が加わった場合には該位置決めピン52が破損したり、変形する等の問題が発生する。
【0008】
そこで、
図10に示すように、パルプモールド緩衝材11の上側の緩衝部11Bを位置決めピン52の頂部に当てるよう構成すれば、
図9に示した緩衝距離Aよりも大きな緩衝距離A’(>A)が確保されるが、その分だけパルプモールド緩衝材11と外箱12が大きくなり、コストアップと保管スペースの増大を招いてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、コストアップや大型化を招くことなく、製品の突起を十分保護してその破損等を確実に防ぐことができるパルプモールド緩衝材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、外表面から突起が突出する製品を抱持するパルプモールド緩衝材であって、本体部の周囲に緩衝部を一体に形成し、前記本体部のリブによる補強が不要な部位にダミーのリブを一体に形成し、該リブの周囲の一部を切断して該リブを折り曲げ又は切り取って前記製品の突起近傍に移動させて、前記突起部周囲の緩衝部を補強することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、折り曲げ又は切り取ったダミーの前記リブを緩衝部の凹部に嵌合保持することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記リブの形状は略四角錐で、前記緩衝部のリブと嵌合する側面は、前記リブの側面に合わせた傾斜が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、パルプモールド緩衝材の小型化とコストダウンを図るために該パルプモールド材の緩衝距離を犠牲にしてこれを比較的小さく設定しても、該パルプモールド緩衝材のリブによる補強が不要な本体部に一体に形成されたダミーのリブの周囲の一部を切断して該リブを折り曲げ又は該リブを本体部から切り取って製品の突起近傍に移動させるようにしたため、パルプモールド緩衝材の製品の突起近傍の強度がダミーのリブによって補強される。このため、パルプモールド緩衝材の緩衝性能が部分的に高められ、該パルプモールド緩衝材によって製品の突起が衝撃から十分保護される。従って、パルプモールド緩衝材のコストアップや大型化を招くことなく、製品の突起を十分保護してその破損や変形等を確実に防ぐことができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、パルプモールド緩衝材の本体部から切り離し又は切り取ったダミーのリブを本体部の凹部に嵌合保持するようにしたため、該リブを補強が必要な箇所(製品の突起近傍)に確実に固定してその機能を発揮させることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、パルプモールド緩衝材の緩衝部が上方からの圧縮力を受けても、該緩衝部のリブとの嵌合面が傾斜しているため、リブによって緩衝部を支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】画像形成装置本体とペーパーフィーダーの斜視図である。
【
図2】本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用前の状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用前の状態を示す内面図である。
【
図4】本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用前の状態を示す外面図である。
【
図5】本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用時の状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用時の状態を示す内面図である。
【
図7】本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用時の状態を示す平面図である。
【
図8】本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用時の状態を示す部分側断面図である。
【
図9】従来のパルプモールド緩衝材の使用時の状態を示す部分側断面図である。
【
図10】従来のパルプモールド緩衝材の使用時の状態を示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は画像形成装置本体とペーパーフィーダーの斜視図であり、本実施の形態では、輸送や保管に際して本発明に係るパルプモールド緩衝材が使用される製品としてペーパーフィーダーを例として説明する。
【0019】
図1に示すペーパーフィーダー50は、複写機等の画像形成装置本体100に増設されるオプションの機器であって、画像形成装置本体100の下方に積み重ねられる。尚、図示例では1台のペーパーフィーダー50のみを示すが、実際には用途に応じて複数台のペーパーフィーダー50が画像形成装置本体100の下方に積み重ねられる。
【0020】
上記ペーパーフィーダー50の矩形ボックス状の筐体51の内部には複数枚の不図示の用紙が積層収容可能であって、筐体51の天面の一端部には位置決めピン52が垂直に突設されている。この位置決めピン52は、ペーパーフィーダー50とその上に設置される画像形成装置本体100とを位置決めするためのものであって、画像形成装置本体100の底面に形成された不図示の係合孔に位置決めピン52が挿入されることによってペーパーフィーダー50と画像形成装置本体100とが正確に位置決めされ、ペーパーフィーダー50から画像形成装置本体100へと供給される用紙の搬送位置が決定される。
【0021】
次に、上記ペーパーフィーダー50の輸送や保管に使用されるパルプモールド緩衝材の詳細を
図2〜
図8に基づいて以下に説明する。
【0022】
図2は本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用前の状態を示す斜視図、
図3は同内面図、
図4は同外面図、
図5は本発明に係るパルプモールド緩衝材の使用時の状態を示す斜視図、
図6は同内面図、
図7は同平面図、
図8は同部分側断面図である。
【0023】
本発明に係るパルプモールド緩衝材1は、パルプ材の金型成形によって一体成形される部材であって、その使用前の状態は
図2〜
図4に示される。尚、パルプモールド緩衝材1は、
図1に示す1台のペーパーフィーダー50に対して2ピース使用されるが、2つのパルプモールド緩衝材1の基本構成は同じであるため、以下、1つのパルプモールド緩衝材1についてのみ図示及び説明する。
【0024】
パルプモールド緩衝材1は、内面が開口する矩形ボックス状に一体成形されており、その縦断面は
図8に示すように横W字状とされ、その内面形状は
図1に示すペーパーフィーダー50の端部の外形に対応している。そして、パルプモールド緩衝材1の本体部1Aの周囲には、
図8に示すように外方(
図8の右方)に向かってテーパー状に広がりながら開口する横台形状の緩衝部1B,1C,1D,1Eがそれぞれ一体に形成されている。即ち、本体部1Aの上側と下側には緩衝部1B,1Cがそれぞれ一体に形成され、両側部には緩衝部1D,1Eがそれぞれ一体に形成されており、各緩衝部1B〜1Eには内方に向かってテーパー状に台形状に広がる複数の凹部1a,1b,1c,1dがそれぞれ形成されている。
【0025】
ところで、本実施の形態においては、パルプモールド緩衝材1の垂直な本体部1Aのリブによる補強が不要な部位には、先端に向かって細くなるテーパーブロック状のダミーのリブ1eが
図2及び
図3に示すように内方に向かって一体に突設されている。そして、本体部1Aのリブ1eの周囲には
図3及び
図4に示すように切り取り線aが形成されている。
【0026】
而して、
図1に示すペーパーフィーダー50を輸送又は保管する際には、
図8に示すようにペーパーフィーダー50の両端図(
図8には一端部のみ図示)に各パルプモールド緩衝材1(
図8には一方のみ図示)が嵌め込まれ、これらのパルプモールド緩衝材1によってペーパーフィーダー50の両端部が抱持される。そして、このように両端部がパルプモールド緩衝材1によって抱持されたペーパーフィーダー50は、パルプモールド緩衝材1と共にダンボール製の外箱2内に収納され、この状態で輸送又は保管される。
【0027】
ここで、本実施の形態においては、パルプモールド緩衝材1及び外箱2の小型化とコストダウンを図るために、
図8に示すようにペーパーフィーダー50の天面に突出する位置決めピン52とパルプモールド緩衝材1とを上下方向にオーバーラップさせている。このようにすると緩衝距離Aが
図10に示す緩衝距離A’よりも小さきなって(A<A’)、パルプモールド緩衝材1の緩衝性能が低下して位置決めピン52を十分保護するができなくなることは前述の通りである。
【0028】
そこで、本実施の形態では、パルプモールド緩衝材1を使用する前の状態で、
図1及び
図3に示すように本体部1Aに突設されたダミーのリブ1eの周囲の一部を切り取り線aに沿って切断し、本体部1Aに残ったリブ1eを
図8に鎖線にて示すように略90°上方に折り曲げ、この折り曲げられたリブ1eを
図5〜
図7に示すように上側の緩衝部1Bの凹部1aの1つ(パルプモールド緩衝材50を
図8に示すようにペーパーフィーダー50に嵌め込んだ状態で位置決めピン52の近傍に位置する凹部1a)に嵌合保持させるようにした。そして、このようにダミーのリブ1eが折り曲げられて保持されたパルプモールド緩衝材1が
図8に示すようにペーパーフィーダー50の端部に嵌め込まれて使用されるが、このとき、パルプモールド緩衝材1の上側の緩衝部1Bの位置決めピン52の近傍の部位がダミーのリブ1eによって部分的に補強される。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、パルプモールド緩衝材1の小型化とコストダウンを図るために該パルプモールド緩衝材1の緩衝距離を犠牲にしてこれを
図8にAにて示すように比較的小さく設定しても、該パルプモールド緩衝材1の本体部1Aのリブによる補強が不要な部位に一体に形成されたダミーのリブ1eの周囲の一部を切断して該リブ1eを折り曲げ、この折り曲げたリブ1eをペーパーフィーダー50の位置決めピン52の近傍に移動させるようにしたため、パルプモールド緩衝材1の緩衝部1Bの位置決めピン52近傍の部位の強度、特に上からの圧縮に対する緩衝力がダミーのリブ1eによって部分的に補強される。具体的には、リブ1eと緩衝部1Bが嵌合状態にある場合、リブ1eの形状が先端に向かって細くなるテーパーブロック形状であるため、緩衝部1Bが上からの圧縮力を受けた場合、リブ1eが支えとなって緩衝部1Bの下方への変形が防がれ、これによって位置決めピン52の保護が可能となる。このため、パルプモールド緩衝材1の緩衝性能が部分的に高められ、該パルプモールド緩衝材1によってペーパーフィーダー50の位置決めピン52が衝撃から十分保護される。この結果、パルプモールド緩衝材1のコストアップや大型化を招くことなく、ペーパーフィーダー50の位置決めピン52を十分保護してその破損や変形等を確実に防ぐことができる。
【0030】
又、本実施の形態では、パルプモールド緩衝材1の折り曲げたダミーのリブ1eを上側の緩衝部1Bの凹部1aの1つに嵌合保持するようにしたため、該リブ1eを補強が必要な箇所(ペーパーフィーダー50の位置決めピン52の近傍)に確実に固定してその機能を発揮させることができる。
【0031】
尚、以上の実施の形態では、パルプモールド緩衝材1に形成されたダミーのリブ1eの周囲の一部を切断してリブ1eを折り曲げるようにしたが、リブ1eを本体部1Aから切り取ってペーパーフィーダー50の位置決めピン52の近傍へと移動させるようにしても良い。
【0032】
又、以上は本発明に係るパルプモールド緩衝材が使用される製品として画像形成装置本体に増設されるペーパーフィーダーを例として説明したが、本発明に係るパルプモールド緩衝材は、外表面から突出する突起を備える他の任意の製品に対しても同様に使用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 パルプモールド緩衝材
1A パルプモールド緩衝材の本体部
1B〜1E パルプモールド緩衝材の緩衝部
1a〜1d 緩衝部の凹部
1e パルプモールド緩衝材のダミーのリブ
2 外箱
50 ペーパーフィーダー(製品)
51 ペーパーフィーダーの筐体
52 位置決めピン(突起)
100 画像形成装置本体
a 切り取り線
A 緩衝距離