特許第5794976号(P5794976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794976
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】高分子医薬の投与のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20150928BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   A61K47/36
   A61K37/02
   A61K37/26
   A61K9/28
   A61K9/48
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-501370(P2012-501370)
(86)(22)【出願日】2010年3月23日
(65)【公表番号】特表2012-521399(P2012-521399A)
(43)【公表日】2012年9月13日
(86)【国際出願番号】GB2010000538
(87)【国際公開番号】WO2010109180
(87)【国際公開日】20100930
【審査請求日】2013年3月6日
(31)【優先権主張番号】0904942.0
(32)【優先日】2009年3月23日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506145050
【氏名又は名称】エヌティーエヌユー テクノロジー トランスファー エーエス
【氏名又は名称原語表記】NTNU TECHNOLOGY TRANSFER AS
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ドラゲット、クルト、インガー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー、キャサリン
【審査官】 光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/125828(WO,A1)
【文献】 特表2005−531487(JP,A)
【文献】 特表2002−537321(JP,A)
【文献】 特表2003−522096(JP,A)
【文献】 特開平03−005427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00〜47/48
A61K 9/00〜9/72
A61K 38/00〜38/58
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸溶性コーティングされた原薬を含む経口の医薬組成物であって、前記組成物はまた、腸溶性コーティングされたオリゴウロン酸塩を含み、前記原薬はタンパク質又はペプチドである、組成物。
【請求項2】
前記原薬がインスリンである、請求項記載の組成物。
【請求項3】
前記原薬が抗原である、請求項記載の組成物。
【請求項4】
コーティングされた錠剤型またはカプセル型である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、単一ユニットとして腸溶性コーティングされている、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記オリゴウロン酸塩及び前記原薬が、別個にコーティングされている、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ヒトまたは非ヒト被験体へのタンパク質又はペプチド原薬の輸送のための請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、前記組成物が、前記被検体に経口投与するための組成物である組成物。
【請求項8】
請求項で定義された被験体へのタンパク質又はペプチド原薬の輸送のための請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造のためのオリゴウロン酸塩の使用。
【請求項9】
ヒトまたは非ヒト被験体の治療方法における使用のための請求項1〜のいずれか1項で定義された腸溶性コーティングされたタンパク質又はペプチド原薬であって、前記方法は、前記被験体に対して、前記原薬に応答する症状に対処するために有効用量の原薬を経口的に投与することを含み、前記原薬は、原薬及びオリゴウロン酸塩が実質的に同時に腸で放出されるように腸溶性コーティングされたオリゴウロン酸塩と同時に経口共投与するためのものであタンパク質又はペプチド原薬。
【請求項10】
治療における使用のための請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
腸での原薬の吸収を促進するために腸溶性コーティングされたタンパク質又はペプチド原薬と共に使用するための腸溶性コーティングされたオリゴウロン酸塩であって、前記コーティングされたオリゴウロン酸塩及び前記コーティングされた原薬は、同時に経口投与するためのものである、腸溶性コーティングされたオリゴウロン酸塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子バイオ原薬(polymeric biological drug substance)の経口投与のための医薬組成物における改良およびそれらの組成物に関する改良、ならびにこのような組成物を用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者による薬物療法の受け入れ、および薬物投与の容易さは、原薬(drug substance)が、例えば、注射されなければならない場合よりも、経口投与可能な場合に有意に高い。従って、市販の医薬組成物のほとんどが経口投与用に、例えば、錠剤、カプセルとしてまたは液体の形態で処方されている。
【0003】
しかし、経口投与は、例えば、原薬が胃液中で不安定であり、そのためこの物質が内臓(gut)から吸収され得る場合に腸(intestine)に到達できない場合など、常に実現可能というわけでも、容易でもない。胃液に対する不安定性に対する従来のアプローチは、このような原薬を、錠剤、カプセルまたは分散型で、投与することである。錠剤、カプセルまたは粒子は、腸溶性コーティング、すなわち、胃では不溶性であるが内臓では小さく分解されて原薬を放出するコーティング材料を備えているため、カプセル化に用いられている。腸溶性コーティング材料は周知であって、広く市販されている。このような放出遅延コーティングの供給は十分確立された技術であるにもかかわらず、高分子バイオ原薬、例えば、ホルモンおよび他のペプチドは、やはり経口投与のためには首尾よく処方されなければならない。
【発明の概要】
【0004】
従って、高分子バイオ原薬の経口投与のために適切な薬剤の剤形は継続して必要とされている。
【0005】
本発明者らは、この必要性に対して、腸溶性(enteric-coated)経口投与型のオリゴウロン酸塩(主にウロン酸モノマー残基からなる直鎖状オリゴ糖)の中に高分子バイオ原薬(polymeric biological drug substance)を封入することによって対処することを現在見出している。本発明は、部分的には、腸粘液の透過性がオリゴウロン酸塩によって劇的に増大されるという驚くべき知見に基づく。この知見によって、オリゴウロン酸塩類のこの新たに発見された効果を利用する、本明細書において特許請求される高分子薬剤(polymeric drug)、詳細には、巨大分子薬剤(macromolecular drug)の経口投与のための製剤形態(drug formulation)の開発が可能になった。
【0006】
ある治療に関しては、原薬(drug substance)は、粘膜投与されてもよく、すなわち、ヒトまたは動物の粘膜表面、例えば、胃腸表面、気道または膣内の表面と接触されてもよい。魚類の場合には、粘膜表面は、皮膚であってもよく、ワクチンは、サケなどの魚に、皮膚への局所投与または周囲の水への投与によって、粘膜投与されてもよい。本発明の組成物は、粘膜投与に適切であり、本発明はそのように特許請求されている。しかし経口組成物および投与が好ましい。
【0007】
従って、一態様から見ると、本発明は、腸溶性原薬(enteric-coated drug substance)を含む経口および/または粘膜の医薬組成物(pharmaceutical composition)であって、前記組成物はまた、腸溶性のオリゴウロン酸塩を含み、前記原薬は高分子バイオ原薬(polymeric biological drug substance)である、医薬組成物を提供する。
【0008】
さらなる態様から見ると、本発明はまた、ヒトまたは非ヒト(例えば、鳥類、爬虫類、魚類または好ましくは哺乳動物)の被験体の治療方法であって、この方法は、前記被験体に対して、原薬に応答する症状に対処するために有効用量の原薬を経口的に又は粘膜的に投与すること含み、この改良は、前記原薬を本発明による組成物の形態で投与することを含む、治療方法を提供する。
【0009】
別の態様から見ると、本発明は、本発明による医薬組成物の製造のためのオリゴウロン酸塩の使用、または本発明による治療方法における使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A図1Cは、粘液分泌細胞におけるマイクロビーズの細胞取り込みを示す。
図2図2A図2Bは、HEK細胞およびHeLa細胞のトランスフェクションに対するオリゴウロン酸塩の効果を示す。
図3図3A図3Cは、MDCK細胞への標識されたトランスフェリンの取り込みを示す。
図4図4A図4Cは、オリゴウロン酸塩で処理されたMDCK細胞への標識されたトランスフェリンの取り込みを示す。
図5図5A図5Cは、オリゴウロン酸塩で処理されたMDCK細胞への標識されたトランスフェリンの取り込みを示す。
図6図6は、オリゴウロン酸塩処理の有無によるHeLa細胞への標識されたトランスフェリンの取り込みを示す。
図7図7は、光退色後の粘液への0.5μmのマイクロビーズの拡散を示す。
図8図8は、光退色後の粘液への0.1μmのマイクロビーズの拡散を示す。
図9図9は、光退色後の粘液への0.2μmのマイクロビーズの拡散を示す。
図10図10は、オリゴウロン酸塩処理を行わなかった場合における、20mg/ml濃度のブタ胃粘素(ムチン)での走査電子顕微鏡写真である。
図11図11は、オリゴウロン酸塩処理を行った場合における、20mg/ml濃度のブタ胃粘素(ムチン)での走査電子顕微鏡写真である。
図12図12は、オリゴウロン酸塩処理を行わなかった場合における、25mg/ml濃度のブタ胃粘素(ムチン)での走査電子顕微鏡写真である。
図13図13は、オリゴウロン酸塩処理を行った場合における、25mg/ml濃度のブタ胃粘素(ムチン)での走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、任意の経口投与または粘膜投与が可能な形態であって、高分子バイオ原薬およびオリゴウロン酸塩が胃に移行し、その後に続く胃腸管部分の同じ部位(section)で同時に放出されることを可能にする形態であってもよい。このように剤形は、分散系、錠剤、カプセル、チュアブル・ゲルなどであってもよい。しかし、好ましくは、この組成物は、腸溶性、すなわち、胃液耐性のコーティングで単一ユニット(single unit)としてコーティングされるか、および/またはこのようなコーティングを備えたより小型の粒子を含む、錠剤またはカプセルの形態をとる。好ましくは、オリゴウロン酸塩および高分子バイオ原薬は、同じコーティング(単数または複数)とともに提供される。なぜなら、理論によって拘束されることは望まないが、オリゴウロン酸塩は、高分子医薬が内臓の管腔(gut lumen)で細胞の表面を通過し、かつそこに到達することがさらに可能なように、内臓(gut)の管腔上の粘液層の透過性を改変することによって、高分子バイオ原薬の生体での取り込みを促進するように機能すると考えられるからである。高分子医薬のバイオアベイラビリティおよび取り込みは、腸溶性製剤(formulation)中のオリゴウロン酸塩との同時投与によって相乗的に影響されるということも想定される。詳細には、オリゴウロン酸塩および薬物が実質的に同時に放出される場合、オリゴウロン酸塩のレベルが医薬のバイオアベイラビリティおよび取り込みを有利に増大させると期待される。
【0012】
腸溶性コーティングに用いられる材料は、例えば、組成物が胃を通過した後まで原薬の放出を遅らせるために慣習的に用いられる任意の材料であり得る。例としては、合成および半合成のポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロースおよびEudragitの商品名で入手可能なものが挙げられる。コーティングは、胃の中で不溶性でなければならず、かつ高分子バイオ原薬を分解し得る酸などの胃液成分通過を妨げなければならない。このようなコーティングは、従来の方式で、および従来の厚み/量で適用され得る。所望の場合、胃の通過が終わる前に酸のなんらかの可能性のある漏れからさらにこの原薬を保護するために、バイオ原薬とともに、またはコーティング層の中に緩衝液を含んでもよい。
【0013】
本発明の組成物中の高分子バイオ原薬は、胃液による分解を受け易く、生物由来のポリマーであるか、または生物由来のポリマーのアナログもしくは誘導体であり、原薬として所望の生理学的活性(例えば、単に栄養物としてではなく)を有し、オリゴ糖ではない、任意の物質であり得る。この原薬の分子量は好ましくは、500Da〜500kDa、詳細には1〜50kDa、特に3〜25kDaである。典型的には、バイオ原薬は、ペプチド、例えば、オリゴペプチドまたはポリペプチド、例えば、タンパク質またはタンパク質フラグメント、および詳細にはホルモンである。ポリマーは、誘導体、例えば、塩、エステル、アミド、複合体またはコンジュゲートであってもよい。このような誘導体は、それらのファルマコフォア、すなわち、所望の生理学的活性を担う成分が、高分子バイオ成分(polymeric biological component)のままであるので、やはり高分子バイオ原薬であるとみなされる。特に好ましいホルモン類/タンパク質類/ペプチド類としては以下が挙げられる:
インスリン;
抗腫瘍壊死因子(抗TNF);
インターフェロン類;
凝固因子類(例えば、第VII因子、第VIII因子および第IX因子);
卵胞刺激ホルモン類(FSH);
エリスロポエチン;
ヒトβグルコセロビダーゼ;および抗癌剤類、例えば:
顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);
ハーセプチン;ならびに
抗CD20。
【0014】
さらに好ましい原薬としては、経口または粘膜のワクチン接種のための抗原、例えば、寄生種または感染性種由来のタンパク質フラグメント、必要に応じて免疫原性の担体にコンジュゲートされた寄生種または感染性種由来のタンパク質フラグメントが挙げられる。このような種は、例えば、細菌、ウイルス、酵母または真菌であってもよい。ワクチンは、ヒトのワクチン接種のために用いられ得る;しかし、それらは、飼育されている動物、詳細には魚および貝、例えば、サケ、トラウト(trout)、タラおよびクルマエビ(prawn)に対する投与に特に好ましい。
【0015】
これらの高分子バイオ原薬のほとんどが、一般名称または商品名のいずれかで市販されている、例えば:Enbrel、Remicade、Humira、Avonex、Rebif、Betaseron、Pegasys、Procrit、Epogen、Reconorm、Epogin、Epomax、Eprex、Trazumab、Rituxan、Neupogen、Neulastra、およびCerezyme。それらが処置に用いられる状態としては、広い範囲、例えば、糖尿病、癌、心血管系の疾患、不妊症およびゴーシェ病が含まれる。
【0016】
本発明の組成物中の高分子バイオ原薬の投薬量は典型的には、1投薬単位あたり(または単位剤形中ではないある組成物、例えば液体分散については所定の投薬容積あたり)所望の1日の投与量の5〜100%の範囲、特に10〜60%、さらに詳細には20〜50%である。所望の1日の投与量は一般には、注射によって摂取される1日の投与量、すなわち、現行の製品データシートから容易に決定可能な投与量の1〜10倍、例えば、2〜6倍である。本発明による公知の注射投薬量と経口投薬量との間の比は、従来の実験によって、例えば、動物モデルにおいて経口的におよび注射によって摂取される標識されたアナログの取り込み割合の決定に従って、決定され得る。一般には、経口用量は、注射によって正常に与えられる用量の500〜2,000%、例えば、約1,000%であると見込まれる場合がある(すなわち、用量は正常な注射用量の5〜20倍、特に約10倍)。特定の投薬経過はまた、注射による公知の投与と同様に、レシピエントの種およびサイズに、処置されている状態の性質および重篤度に、ならびに特異的なバイオ原薬自体に依存する。
【0017】
上述のオリゴウロン酸塩は好ましくは、高分子バイオ原薬と同じ方式で、またはより好ましくは、それと一緒に放出遅延性コーティングでコーティングされる。これは、オリゴウロン酸塩および高分子バイオ原薬の両方が実質的に同じ場所でかつ同じ時間で放出されるということを保証するためである。オリゴウロン酸塩の機能は、胃腸管の粘膜表面を改変するのに大きいと考えられるので、用量は好ましくは、モルとして、高分子バイオ原薬の用量よりは高いが、原薬の用量の関数である必要はない。オリゴウロン酸塩用量は、好ましくは単位用量あたり10〜1,200mg、特に50〜1,000mg、とりわけ100〜750mgである。オリゴウロン酸塩での胃腸管の前処置(pretreatment)、すなわち、オリゴウロン酸塩に続いて高分子バイオ原薬の連続投与は、同時の投与と等価であると考えられ得るが、同時投与の方が、取り込みの強化が結果として所望の高分子バイオ原薬に対してもっと厳密に限定されるので好ましいと考えられる。
【0018】
オリゴウロン酸塩の対イオンは、荷電された原薬について通常用いられる任意の生理学的に耐容性のイオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、塩素イオン、メシラート、メグルミンなどであってもよい。しかし、アルギン酸ゲル化を促進するイオン、例えば、2族の金属は好ましくは用いられない。このような2族のイオンは望ましくはまた、本発明の組成物の他の成分を本質的に含まない。
【0019】
直鎖状であるオリゴウロン酸塩は、合成材料であってもよいが、好ましくは、天然に存在する多糖類の、100,000Da未満という平均分子量を有する誘導体である。これは好ましくは、3mer〜28mer、詳細には4mer〜25mer、特に6mer〜22mer、詳細には8mer〜15mer、特に10merであり、例えば、350〜6,000Da、特に750〜4,500Daの範囲の分子量を有する。これは、単一の化合物であってもよいし、またはある範囲の重合化程度のオリゴウロン酸塩類の混合物であってもよい。さらに、オリゴウロン酸塩中の単量体残基、すなわち、単糖類基は同じであっても異なってもよい。
【0020】
多くの天然の多糖類はグルロン酸残基およびガラクツロン酸残基などのウロン酸残基を含むので、オリゴウロン酸塩には、天然の供給源から容易に到達できる。
【0021】
本発明によって使用可能なオリゴウロン酸塩類を作製するための多糖からオリゴ糖への切断は、酵素消化および酸加水分解などの従来の多糖類溶解技術を用いて行ってもよい。次いで、オリゴウロン酸塩類を、イオン交換樹脂を用いるクロマトグラフィーによって、または分画沈殿もしくは可溶化によって多糖類分解生成物から分離してもよい。
【0022】
ウロン酸塩を含む多糖類の例としては、天然に存在する多糖類(例えば、キサンタン、ペクチン、アルギン酸塩、ヒアルロナン、ヘパリンおよび硫酸コンドロイチン)、および化学的に修飾された多糖類が挙げられ、これには限定するものではないが、荷電基を付加するために修飾された多糖類(例えば、カルボキシル化またはカルボキシメチル化グリカン)、および可塑性を変えるために修飾された多糖類(例えば、過ヨウ素酸酸化による)が挙げられる。適切な多糖類は、例えば、「Handbook of Hydrocolloids」,編集.PhillipsおよびWilliams,CRC,Boca Raton,Florida,USA,2000に考察される。しかし、アルギン酸塩類の使用は特に、これらがマンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)とのブロックコポリマーとして天然に存在し、かつG−ブロックオリゴマー類がアルギン酸供給源の材料から容易に産生できるという理由で好ましい。実際、オリゴウロン酸塩は、好ましくはオリゴグルロン酸であり、または好ましさは劣るがオリゴガラクツロン酸である。
【0023】
アルギン酸塩類がオリゴウロン酸塩の調製のための出発材料として用いられる場合、ガラクツロン酸含量は、A.vinelandii由来のマンヌロナン(mannouronan)C−5エピメラーゼでのエピマー化によって必要に応じて増大され得る。
【0024】
本発明による使用に適切なオリゴグルロン酸類は、Laminaria hyperborea由来のアルギン酸の酸加水分解、中性のpHでの分解、オリゴグルロン酸を沈殿させるためにpHを3.4まで低下する鉱酸の添加、弱酸での洗浄、中性のpHでの再懸濁、および凍結乾燥によって都合よく生成され得る。
【0025】
WO2008/125828(その内容は参照によって本明細書に援用される)で記載される種類のオリゴウロン酸塩類の使用が特に好ましい。
【0026】
本発明の組成物は、従来の方式で産生および投与されてもよい。腸溶性コーティング材料、オリゴウロン酸塩および高分子バイオ原薬以外に、この組成物は、他の従来の薬学的担体および賦形剤、例えば、溶媒、希釈剤、緩衝液、粘度調整剤、着色剤、抗酸化剤などを含んでもよい。
【0027】
特に、この組成物が飼育されている動物に対する投与用である場合、それらは、腸溶性の物質を含む飼料組成物、例えば、飼料ペレットの形態であってもよい。このような組成物は、この飼料の他の成分とともに腸溶性物質を含むことによって調製されてもよいし、または腸溶性物質が、事前に準備された飼料中に吸収されてもよい。これは、飼料ペレットを浸漬するために用いた水中で腸溶性粒子の分散を用いるWO02/28199に開示された方式で例えば、行われてもよい。
【0028】
抗原が粘膜に投与されるべき場合、腸溶性コーティングの封入が必要に応じて調剤されてもよく;それにもかかわらず、その使用に適切なこのような処理および組成物は、本発明の態様を形成する。従って、一態様を見れば、本発明は、抗原、特にペプチド抗原、および生理学的に耐容性のオリゴウロン酸塩を、必要に応じて耐容性の担体または賦形剤と一緒に含んでいる粘膜ワクチン組成物を提供する。さらなる態様を見れば、本発明は、抗原と、別々に備えられているオリゴウロン酸塩とを備えている粘膜ワクチンキットを提供する。なおさらなる態様を見れば、本発明は、動物、特に魚の粘膜ワクチン接種の方法を提供し、この方法は、このような動物の粘膜表面を同時にまたは連続して、有効量の抗原、特に水溶性の抗原、および有効量のオリゴウロン酸塩に曝露することを含む。
【0029】
本発明をここで、以下の非限定的な図面および実施例を参照してさらに記載する。
図1A図1Cは、粘液分泌細胞におけるマイクロビーズの細胞取り込みを示す。
図2A図2Bは、HEK細胞およびHeLa細胞のトランスフェクションに対するオリゴウロン酸塩の効果を示す。
図3A図3Cは、MDCK細胞への標識されたトランスフェリンの取り込みを示す。
図4A図4Cは、オリゴウロン酸塩で処理されたMDCK細胞への標識されたトランスフェリンの取り込みを示す。
図5A図5Cは、オリゴウロン酸塩(これはその後洗い流される)で処理されたMDCK細胞への標識されたトランスフェリンの取り込みを示す。
図6は、オリゴウロン酸塩処理の有無によるHeLa細胞への標識されたトランスフェリンの取り込みを示す。
図7は、光退色後の粘液への0.5μmのマイクロビーズの拡散を示す。
図8は、光退色後の粘液への0.1μmのマイクロビーズの拡散を示す。
図9は、光退色後の粘液への0.2μmのマイクロビーズの拡散を示す。
図10図13は、オリゴウロン酸塩処理の有無における、20mg/mlおよび25mg/ml濃度のブタ胃粘素(ムチン)での走査電子顕微鏡写真である。
【実施例】
【0030】
実施例1
インスリン錠剤
以下を、錠剤コアを形成するために完全に混合して、圧縮する。
タルク 350mg/錠剤
ステアリン酸マグネシウム 350mg/錠剤
インスリン* 100単位
グルロン酸ナトリウム** 300mg/錠剤
*Alfa Chem,Kings Point,NY,US.から入手可能。
**WO2008/125828に記載のとおり調製したG−ブロックポリマーであるDP10。
【0031】
この錠剤コアを、腸溶性コーティング剤、例えば、Evonik Industries AG,Essen,Germanyから入手可能なEudragit(商標)FS30Dを用いて従来の方式でコーティングする。
【0032】
実施例2
粘液層での細胞中のマイクロビーズ取り込み
粘液分泌性HT20−MTX細胞がマイクロビーズを取り込む能力を評価した。不連続な粘液層を有する細胞、および連続した粘液層を有する細胞を、以下のとおり検討した。
【0033】
HT29−MTX細胞(Clin.Otolaryngol.Allied Sci.(2003)28(1):39〜42頁)を、24穴プレート中でコンフルエンスになるまで増殖した。ダルベッコの改変イーグル培地、DMEM(GIBCO)を用いた。コンフルエントを示したウェルについては、粘液層細胞を3μmの細孔サイズのTranswell(商標)フィルター(Corning)のもとで増殖させ、かつ全ての培地交換は、下層にある粘液層を保護するためにこのフィルター膜を通じて成し遂げられた。
【0034】
増殖培地を取り除き、750μlの新鮮培地、および250μlのオリゴウロン酸塩(重合度DP=20を有するG−ブロック)または生理食塩水(コントロール)のいずれかで置き換えた。
【0035】
40μlのマイクロビーズ(FluoSpheres(商標)カルボン酸修飾マイクロスフェア、0.02μm、黄緑色の蛍光;Invitrogen)を0.02%の懸濁液として試験ウェルに添加した。
【0036】
インキュベーションは、37℃で2時間行い、冷PBS(2ml)中で細胞を洗浄すること(×2回)によって停止させた。冷トリプシン/EDTAを用いて細胞を剥がし(2ml)、培地を添加し(2ml)、その細胞を遠心沈殿した。細胞を、冷PBS(2ml)中で洗浄し(×2回)、PBS(0.5ml)に懸濁した。
【0037】
フローサイトメトリーは、フルオロフォアに最適化された検出器を備える488nmのアルゴンレーザー光線を用いてフルオロフォア励起で行った。
【0038】
この実験の結果を図1A図1Bおよび図1Cに示す。図1Aおよび図1Bは、連続粘液層がマイクロビーズの細胞取り込みに対する障壁であることを示す。図1Cは、オリゴウロン酸塩の添加が、連続した粘液層を有する細胞においてマイクロビーズの取り込みを有意に増大させることを示す。
【0039】
実施例3
siRNAリポプレックス(lipoplex)の細胞取り込みに対するオリゴウロン酸塩の効果
HeLa細胞またはHEK細胞(市販されている)を、optiMEM(商標)増殖培地(Invitrogen)を用いて6穴プレート中でコンフルエンスになるまで増殖させた。
【0040】
増殖培地を取り除き、750μlの新鮮培地、および250μlのオリゴウロン酸塩(重合度DP=20を有するG−ブロック)または生理食塩水(コントロール)のいずれかで置き換えた。
【0041】
次いで、蛍光siRNA/リポフェクタミン(商標)RNAimaxリポプレックス(lipoplexes)(Invitrogen)を、製造業者の推奨するプロトコールに従って試験ウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。コントロールのウェルにはトランスフェクション試薬は添加しなかった。
【0042】
インキュベーションを、冷PBS(2ml)中で細胞を洗浄すること(×2回)によって停止させた。冷トリプシン/EDTAを用いて細胞(2ml)を剥がし、培地を添加し(2ml)、その細胞を遠心沈殿させ、冷PBS(2ml)中で洗浄した(×2回)。次いで細胞を、PBS(0.5ml)に懸濁した。
【0043】
フローサイトメトリーは、フルオロフォアに最適化された検出器を備える488nmのアルゴンレーザー光線を用いてフルオロフォア励起で行った。
【0044】
この実験の結果を図2A、および図2Bに示す。図2Aは、HEK細胞のトランスフェクションに対するオリゴウロン酸塩の効果を示す(オリゴウロン酸塩なしで、ある程度の核酸の取り込みが見られるが、オリゴウロン酸塩が存在する場合はそれより大きい取り込みが観察される)。図2Bは、HeLa細胞のトランスフェクションに対するオリゴウロン酸塩の効果を示す(オリゴウロン酸塩の非存在下では核酸の取り込みは観察されないが、オリゴウロン酸塩が存在する場合は有意な取り込みが観察される)。
【0045】
実施例4
トランスフェリンの細胞取り込みに対するオリゴウロン酸塩の効果
MDCK細胞またはHeLa細胞(市販されている)を、optiMEM(商標)増殖培地(Invitrogen)を用いて6穴プレート中でコンフルエンスになるまで増殖させた。
【0046】
増殖培地を取り除き、750μlの新鮮培地、および250μlのオリゴウロン酸塩(重合度DP=20を有するG−ブロック)または生理食塩水(コントロール)のいずれかで置き換えた。
【0047】
細胞を37℃で2時間インキュベートし、次いで、ウェルをPBSを用いて2回洗浄した(洗浄サンプルはMDCK細胞のみ)。
【0048】
5μgまたは10μgのAlexa Fluor(商標)488−標識トランスフェリン(Invitrogen)を、試験ウェルに添加した。トランスフェリンなしのウェルを自家蛍光コントロールとして用いた。次いで細胞を、37℃で2時間インキュベートした。
【0049】
インキュベーションを、冷PBS(2ml)中で細胞を洗浄すること(×2回)によって停止させた。冷トリプシン/EDTAを用いて細胞を剥がし(2ml)、培地を添加し(2ml)、その細胞を遠心沈殿させた。次いで、細胞を冷PBS(2ml)中で洗浄し(×2回)、PBS(0.5ml)中に懸濁した。
【0050】
フローサイトメトリーは、フルオロフォアに最適化された検出器を備える488nmのアルゴンレーザー光線を用いてフルオロフォア励起で行った。結果を図3図6に示す。
【0051】
図3A図3Cは、生理食塩水コントロール(すなわち、オリゴウロン酸塩なし)で処理したMDCK細胞のフローサイトメトリーの結果を示す。図4A図4Cは、オリゴウロン酸塩で処理されたMDCK細胞のフローサトメトリーの結果を示す。図5A図5Cは、上記したように含まれる洗浄工程を伴い、オリゴウロン酸塩で処理されたMDCK細胞のフローサイトメトリーの結果を示す。各々の場合に、A図は、非トランスフェリンのコントロール曲線であり;B図は、コントロール曲線および5μgのトランスフェリンサンプル曲線の重ね合わせであり;C図は、コントロール曲線および10μgのトランスフェリンサンプル曲線の重ね合わせである。
【0052】
図6は、処理したHeLa細胞のフローサイトメトリーの結果を示す。この図は、非トランスフェリンコントロール曲線(左側のピーク)、オリゴウロン酸塩処理なしの5μgのトランスフェリンサンプルの曲線(薄い灰色の中央のピーク)、およびオリゴウロン酸塩処理ありでの5μgのトランスフェリンサンプル曲線(濃い灰色の右側のピーク)の重ね合わせである。
【0053】
これらのデータから、オリゴウロン酸塩での処理は、トランスフェリンの取り込みを改善することが明らかに示され得る(図4A図4Bおよび図6)。同時投与は取り込みを改善した(図4)。しかしオリゴウロン酸塩での前処理とその後の細胞の洗浄では、引き続いて投与されたトランスフェリンの取り込みは増大しなかった(図5)。
【0054】
実施例5
小腸粘液におけるマイクロビーズの移動度
ブタ小腸粘液を、直近に屠殺したブタの粘膜からかきとり、使用するまで凍結した。使用前に、この凍結した粘液を4℃で24時間にわたって解凍した。
【0055】
用いたマイクロビーズは、0.1μm、0.2μmおよび0.5μmの直径のFluoSpheres(商標)カルボン酸修飾、黄緑色蛍光マイクロスフェア(Invitrogen)であった。
【0056】
5.1 0.1μmおよび0.5μmの直径のマイクロビーズを用いる実験
コントロールのサンプルは、32μlの0.05M NaCl溶液を、260μgの小腸粘液(上記のように調製)に添加することによって調製し、1時間よく攪拌して、1時間平衡にさせた。8μlのマイクロビーズ(2%懸濁液)をボルテックスし、次いで粘液調製物に添加した。その混合物を1時間よく攪拌して、4℃で一晩平衡にさせた。
【0057】
オリゴウロン酸塩を含むサンプルは、0.05MのNaCl中の40mg/mlのオリゴウロン酸塩(重合度DP=20を有するG−ブロック)32μlを0.05MのNaCl溶液の代わりに用いたこと以外は、コントロールのサンプルについてと同様に調製した。
【0058】
サンプルを用いて、共焦点画像化チャンバを満たした。
【0059】
次いで、目的の領域を、488nmのアルゴンレーザー光線をフルパワーで用いて退色させ、拡散による光退色後蛍光回復(fluorescence recovery after photobleaching)(FRAP)を2%のレーザーパワーでモニターした。
【0060】
5.2 0.2μm直径のマイクロビーズを用いる実験:
ムチン(上記のように調製した)を、50mMのNaClに25mg/mlの濃度で可溶化した。オリゴウロン酸塩(重合度DP=20を有するG−ブロック)を、50mMのNaClに30mg/mlの濃度で可溶化した。
−マイクロビーズサンプル(ムチンなし)
16μlのマイクロビーズ懸濁液をボルテックスして、384μlの50mMのNaClに添加した。
最終濃度1.8×1011ビーズ/ml
−ムチンサンプル(オリゴウロン酸塩なし)
16μlのマイクロビーズ懸濁液をボルテックスして、64μlの50mMのNaClおよび320μlのムチン溶液に添加した。
最終濃度1.8×1011ビーズ/ml、20mg/mlムチン
−ムチンおよびオリゴウロン酸塩サンプル
16μlマイクロビーズ懸濁液をボルテックスして、64μlのオリゴウロン酸塩溶液に添加した。次いで、320μlのムチン溶液を添加した。
最終濃度1.8×1011ビーズ/ml、20mg/mlのムチン、4.8mg/mlのオリゴウロン酸塩。
【0061】
サンプルを用いて、共焦点画像化チャンバを満たした。
【0062】
次いで、目的の領域を、488nmのアルゴンレーザー光線をフルパワーで用いて退色させ、拡散によるFRAPを5%のレーザーパワーでモニターした。
【0063】
5.3 結果:
結果を図7図8および図9に示す。
【0064】
図7は、小腸粘液における0.5μmのマイクロビーズのFRAPを示す。黒い下側の線は、コントロールのサンプル(オリゴウロン酸塩なし)であり、灰色の上側の線はオリゴウロン酸塩で処理したサンプル中の蛍光の回復を示す。
【0065】
図8は、小腸粘液中の0.1μmのマイクロビーズのFRAPを示す。黒い下側の線は、コントロールのサンプル(オリゴウロン酸塩なし)であり、灰色の上側の線はオリゴウロン酸塩で処理したサンプル中の蛍光の回復を示す。
【0066】
図9は、小腸粘液中の0.2μmのマイクロビーズのFRAPを示す。黒い下側の線は、コントロールのサンプル(オリゴウロン酸塩なし)であり、濃い灰色の上側の線は、ムチンなしのサンプルのFRAPを示し、2つの内側の線(濃い線および薄い線)は、オリゴウロン酸塩で処理したムチンサンプル中の蛍光の回復を示す。
【0067】
これらのデータによって、小腸の粘液は、サブミクロンの直径を有する粒子の拡散に対する有意な障壁であることが示される。オリゴウロン酸塩の添加は、粘液によってもたらされる拡散の障壁を有意に低減する。
【0068】
実施例6
胃のムチンの走査電子顕微鏡(SEM)
ムチン(上記のように調製したブタ胃ムチン)を50mMのNaClに25mg/mlおよび30mg/mlの濃度で可溶化させた。
【0069】
オリゴウロン酸塩(実施例5に記載のとおり)を、50mMのNaClに30mg/mlの濃度で可溶化させた。
【0070】
SEMサンプルは以下のように調製した:
−ムチン(25mg/ml)
336μlの30mg/mlのムチンを64μlの0.05MのNaClに添加して、混合した。
−ムチン(20mg/ml)
320μlの25mg/mlのムチンを80μlの0.05MのNaClに添加して混合した。
−ムチン(25mg/ml)+オリゴウロン酸塩
336μlの30mg/mlのムチンを64μlのオリゴウロン酸塩を含む0.05MのNaClに添加して、混合した。
−ムチン(25mg/ml)+オリゴウロン酸塩
320μlの30mg/mlのムチンを64μlのG−ブロックが含有される0.05MのNaClおよび16μlの0.05MのNaClに添加して、混合した。
【0071】
サンプルは、段階的なアセトン/水の中で脱水し、臨界点乾燥を用いて乾燥させ、走査電子顕微鏡によって可視化した。
【0072】
結果を図10図13に示す。
【0073】
図10および図11は、それぞれオリゴウロン酸塩なしおよび4.8mg/mlのオリゴウロン酸塩を含む20mg/mlのムチンサンプルの構造を示す。図12および図13は、それぞれオリゴウロン酸塩なしおよび4.8mg/mlのオリゴウロン酸塩を含む25mg/mlのムチンサンプルの構造を示す。
【0074】
これらのデータによって、胃粘液へのオリゴウロン酸塩の添加は、ムチン基質のネットワーク構造の開放および細孔サイズの増大を生じることが示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13