特許第5794992号(P5794992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5794992クリアランス補償手段を備えた薬物送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794992
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】クリアランス補償手段を備えた薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20150928BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   A61M5/315
   A61M5/24
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-532616(P2012-532616)
(86)(22)【出願日】2010年10月8日
(65)【公表番号】特表2013-507157(P2013-507157A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】EP2010065095
(87)【国際公開番号】WO2011042538
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年9月30日
(31)【優先権主張番号】09172506.9
(32)【優先日】2009年10月8日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア・マーティアス
(72)【発明者】
【氏名】レーオ・ツァイメッツ
(72)【発明者】
【氏名】レーツァ・シャーバツファー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】カースティン・モーゼバッハ
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−511364(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00893133(EP,A1)
【文献】 実開昭52−119787(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/095332(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−ハウジング(14)、
−投与すべき医薬品を含むカートリッジ(18)を受けるように適合され、ハウジング(14)に連結可能であるカートリッジホルダ(16)、
−医薬品の事前に定義された用量の設定及び投与のためにカートリッジ(18)と操作可能に係合される駆動機構(12)、
を含んでなる、医薬品の事前に定義された用量を投与するためのペン型注射器であって:
ここで、
−駆動機構(12)は、全体として、駆動機構(12)とカートリッジ(18)間の軸方向のクリアランスを補償するため、ハウジング(14)内に軸方向に摺動可能に支持され、
駆動機構(12)に軸方向に固定されたガイディングエレメント(28)は、ハウジング(14)内に軸方向に摺動可能に受け入れられ、そして、駆動機構(12)は、ガイディングエレメント(28)を通して、ハウジング(14)に対して軸方向に固定可能であり、
そのガイディングエレメントが、駆動機構(12)を受けるためのスリーブ(28)を含み、そのスリーブ(28)は、駆動機構(12)を活性化することなく又は操作することなく、カートリッジ(18)のピストン(20)と駆動機構(12)のピストンロッド(22)の間の軸方向のクリアランスを取り除くために、ハウジング(14)内に軸方向に変位可能に支持される
ことを特徴とする、上記ペン形注射器。
【請求項2】
ガイディングエレメント(28)及びハウジング(14)が、相互に際限なく調整可能である、請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
ガイディングエレメント(28)及びハウジングが、ポジティブなロック手段を用いて相互に係合可能である、請求項1又は2に記載の注射器。
【請求項4】
ガイディングエレメント(28)及びハウジング(14)が、接着連結され、相互に結合され、及び/又は溶接される、請求項1〜のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項5】
ハウジング(14)及びガイディングエレメント(28)が、レーザ溶接によって相互に連結される、請求項1〜のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項6】
ハウジング(14)が、選択されたレーザ放射線に対して少なくとも部分的に透明であり、ここで、ガイディングエレメント(28)が、少なくとも部分的に該レーザ放射線を吸収するように適合される、請求項に記載の注射器。
【請求項7】
ハウジング(14)及びカートリッジホルダ(16)が、軸方向に相互に連結される、請求項に記載の注射器。
【請求項8】
駆動機構(12)及びハウジング(14)の軸方向の機械的連結が、ガイディングエレメント(28)により専ら提供される、請求項1〜のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項9】
更に、医薬品で充填されたカートリッジ(18)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のペン形注射器の、カートリッジ(18)と駆動機構(12)間の軸方向のクリアランスを取り除く方法であって:ここで、
−カートリッジ(18)は、カートリッジホルダ(16)内に配列され、
−駆動機構(12)は、全体として、駆動機構(12)に軸方向に固定されたスリーブ形状のガイディングエレメント(28)を用いて、ハウジング(14)に対して軸方向に摺動可能に支持され、そしてハウジング(14)に、摺動しながら受け入れられ;
−ここで、カートリッジホルダ(16)及びハウジング(14)の組立中、駆動機構(12)は、駆動機構(12)を活性化すること又は操作することなく、カートリッジ(18)のピストン(20)及び駆動機構(12)のピストンロッド(22)との間の軸方向のクリアランスを除去するためカートリッジ(18)と操作可能に係合する駆動機構(12)に対応して、ハウジング(14)に対して軸方向に変位し;及び
−ここで、駆動機構(12)は、ハウジング(14)及びカートリッジホルダ(16)の組立後、ハウジング(14)に対して軸方向に固定される;
ことを特徴とする、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者に注射可能な医薬品の単回又は複数回の用量を選択し、そして医薬品の設定用量を投与し、そして前記医薬品を患者に、好ましくは、注射により適用することを可能にする薬物送達デバイス用の駆動機構に関する。特に、本発明は、患者自身により取り扱われるそのようなデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液体薬剤などの液体医薬品の必要用量を複数回投与し、及び、更に、患者に液体の投与を提供することを可能にする薬物送達デバイスは、当該分野では公知である。一般的に、そのようなデバイスは実質的に、通常の注射器と同様の目的を有する。
【0003】
この種の薬物送達デバイスは、多くの使用者に特異的な要求事項を満たす必要がある。例えば、糖尿病患者の場合、多くの使用者は肉体的に虚弱で、そしてまた、視力に障害があるかもしれない。従って、これらのデバイスは構造上強固で、尚、部品の操作及び使用者によるその操作の理解の二つの観点より容易に使用できる必要がある。更に、用量の設定が容易であり、そして明白であり、そして、デバイスが縮小できる(reducible)よりむしろ使い捨てである場合、デバイスは製造するのに安価であり、そして廃棄するのに容易であるべきである。これらの要求事項を満足させるために、デバイスを組立てるのに必要な部品及び工程数及びデバイスが作られる物質タイプの全ての数は最小に保つ必要がある。
【0004】
一般的に、投与すべき医薬品は、可動性のピストン、又は薬物送達デバイスの駆動機構のピストンロッドと機械的に相互作用する栓を有するカートリッジ内に供される。遠位方向にピストンに対してスラストを適用することにより、医薬流体の事前に定義された量がカートリッジから放出される。
【0005】
避けがたい製造上の許容誤差の故に、例えば、カートリッジのピストン及びピストンロッドの間の軸方向のクリアランスが持続するかもしれない。一般的に、デバイスの主要な使用に先立って、最終使用者は、既に初期の用量設定及び最初のその後の用量の投与段階で、医薬品の正確な用量が、事前に定義された方法で投与されることを確実にするために、駆動機構のいわゆるプライミングを実施する必要がある。
【0006】
自己投与する使用者は肉体的に虚弱であるかもしれないので、そのような使用者が実施でき得るプライミング方法に対する必要性を簡略化し、又は取り除くことすら望ましいことである。
【0007】
特許文献1は、例えば、用量投与デバイスを開示し、ここで、ピストン及びピストンロッドは、電磁的に又は磁気的に連結され、そしてここで、ピストン及びピストンロッドは、磁気効果発生部材を含む。
【0008】
電磁場の発生が電気エネルギの供給を必要とするので、そのような解決策は一般的にペン形注射器タイプの薬物送達デバイスに適用可能ではない。
【0009】
知る限り(insofar)、公知の解決策は、ピストンロッドとピストンの間の軸方向のクリアランスの除去のために、ピストンロッドはその関連する駆動機構により軸方向に移動する必要があるという共通の欠点を特徴とする。軸方向のクリアランス及びバックスラッシ(backslash)の除去は、ピストンロッドがカートリッジのピストンと直接の隣接位置になることを意味する。クリアランスアランス除去の目的に対するピストンロッドのそのような軸方向の変位は、不都合であると見なされる。何故ならば、 それは、一般的に、使用者による用量の設定又は用量の投与手段の個々の作動に影響を与えるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP第1911479号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、改良された、及び支援されたクリアランス及び製造許容誤差の除去を特徴とする薬物送達デバイス用の駆動機構を提供することである。本発明の更なる目的は、最終使用者により実施されるべきプライミング方法を不要にすることである。発明は、更に、患者への安全性に関する改良に焦点を置き、そして一般的なデバイスの取扱いを簡略化することを意図している。発明の更なる目的は、製造するのに安価で、組立が容易であるクリアランス除去手段を備えた薬物送達デバイス用の駆動機構を提供することである。最終的に、発明の目的は、薬物送達デバイスの駆動機構におけるクリアランスアランス除去の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、医薬品の事前に定義された用量を投与するための薬物送達デバイスを提供する。デバイスは、ハウジング、ハウジングと内部連結されたカートリッジホルダ、及び前記の事前に定義された当量の設定、及び/又は、投与のためカートリッジと操作可能に係合される駆動機構を含む。カートリッジホルダは、更に、投与すべき医薬品を含むカートリッジを受け取るように適合する。前記カートリッジは、バイアル、カープル(carpule)又はアンプルを含み、そしてインスリン又はヘパリンなどの液体薬剤で充填され得る。薬物送達デバイスは、好ましくは、ペン形注射器として設計される。それ故、カートリッジは、流体移動路において、注射針、カニューレなどと連結される。
【0013】
カートリッジが、カートリッジホルダ内に置かれる間、カートリッジと、特に、摺動可能に支持されるピストンと操作可能に係合する駆動機構は、ハウジングの内側に配置される。駆動機構及びハウジングの連結は、駆動機構がある範囲内でハウジング内に軸方向に摺動可能に支持されるようにする。そのような軸方向に調整可能な駆動機構及びハウジングの事前組立を用いて、用量投与機構とカートリッジ間の軸方向のクリアランスアランスは、特に、薬物送達デバイスの最終組立中に補償できる。
【0014】
更に、ハウジング及びカートリッジホルダの相互係合により特徴付けられた最終の組立位置に到達したとき、駆動機構は軸方向に固定され、そしてハウジングに対して静止する。それ故、駆動機構の軸方向への摺動可能な支持は、排他的に、製造及び組立の許容誤差を補償する機能を果たし、及び/又は、個々のクリアランス除去の機能を果たす。
【0015】
実質的には、駆動機構の軸方向の摺動的な支持は、カートリッジホルダ内側のカートリッジの組立、並びに、ハウジング内側の駆動機構の摺動可能な配置の事前組立を可能にする。カートリッジホルダ及びハウジングの組立中のある段階で、駆動機構はカートリッジのピストンと操作可能に係合する。一般的に、ピストンロッドは、カートリッジのピストンに対して連結する。
【0016】
駆動機構及びカートリッジの相互の隣接構成が達成したとき、ハウジング及びカートリッジホルダの相互組立の更なる過程(course)において、駆動機構及びハウジングは、相対的な軸方向の変位に対する課題となるかもしれない。しかし、最終の組立構成が達成するや否や、駆動機構及びカートリッジの操作可能な係合は、実質的にクリアランスフリーとなる。ハウジングに対して、その後、駆動機構を静止する方法により、前記クリアランスフリーの構成を維持することができ、そして薬物送達デバイスは、クリアランス補償のプライミング方法を初めに実施する必要がなく、初期用量の設定及び投与のために準備される。
【0017】
駆動機構及びハウジングの位置における相互ロッキングは、ピストンロッド及びハウジング間の相対距離に関係なく確立できる。ピストンとの隣接位置に到達するや否や、ピストンロッドそれ自身は、カートリッジに対して静止し得るが、ハウジングに対しては、軸方向への変位が課せられるかもしれない。
【0018】
薬物送達デバイスは、更に、駆動機構に軸方向に結合し、又は軸方向に連結もおこなうガイディングエレメント(guiding element)を含む。更に、前記ガイディングエレメントは、ハウジング内に摺動可能に受け入れる。ガイディングエレメントは、一方では、駆動機構に操作可能に係合し、そして固定する一種のアダプタとして機能する。他方、前記ガイディングエレメントは、駆動機構及びハウジングのクリアランスを補償する軸方向の変位を提供する。ガイディングエレメントを経由して、駆動機構は、全体として、ハウジングに対して軸方向に移動できる。この方法で、軸方向のクリアランスは、駆動機構、及び/又は、そのいずれかの部品を活性化し、又は別の方法で、操作する必要なく、補償することができる。従って、駆動機構それ自身及びその部品は、クリアランス補償方法中に、完全に影響を受けずに、又は接触せずに留まることができる。クリアランス除去方法は、従って、薬物送達デバイスのハウジングに対して、ガイディングエレメントの軸方向の変位を制限する。
【0019】
更なる好ましい実施態様において、ガイディングエレメントは、スリーブ、好ましくは、駆動機構を受け入れるように適合した実質的に円筒形のスリーブを含む。スリーブそれ自身は、ハウジング内で、軸方向に変位可能に支持される。この方法において、円筒状のスリーブは、軸方向のクリアランス除去、一般的には、カートリッジのピストン及びピストンロッド、又は駆動機構のプランジャ間のクリアランス除去を提供し、それは遠位方向に向いたスラストをカートリッジのピストンに負荷するよう適合する。
【0020】
更なる好ましい実施態様によると、ガイディングエレメント及びハウジングは、相互に際限なく調整可能である。この方法において、ガイディングエレメント及びハウジングの相対的な軸方向の変位は、特に円滑である。ガイディングエレメント及びハウジングの円滑に継続する相対的な軸方向の変位は、ハウジング及びカートリッジホルダの最終組立に対して更に有益である。この方法において、最終の組立方法の過程においてカートリッジのピストンの意図しない軸方向の変位は効率的に排除することができる。さもなければ、最終の組立中ピストンに作動するかもしれない軸方向のスラストは、主として、ガイディングエレメント及びハウジングの相対運動において放出する。
【0021】
更なる別の実施態様において、ガイディングエレメント及びハウジングは、確動的な(positive)ロッキング手段を用いて相互に係合可能である。ガイディングエレメント及びハウジングのポジティブロック手段は、例えば、ガイディングエレメント、及び歯付きの又はギアつきの内部及び外部円筒壁などの相互に対応する戻り止めエレメントを備えたハウジングを提供することにより実施できる。この文脈において、ガイディングエレメント及びハウジングが、一方向に、軸方向に変位可能であるような方法で構成することも想定可能である。
【0022】
一般的に、ガイディングエレメント及びハウジングのポジティブロック手段は、ハウジングをガイディングエレメントに対して遠位方向に変位させることを可能にするよう設計する。換言すれば、ハウジングに対してガイディングエレメントの遠位方向にむいた変位は、前記ロッキング手段により遮断される。
【0023】
更なる実施態様において、ガイディングエレメント及びハウジングは、例えば、ガイディングエレメント及びハウジングが半径方向に重なる領域に適切な接着剤を用いて、又はエネルギ付与を用いて相互に結合し、又は溶接する。ガイディングエレメント及びハウジングを相互に溶接する目的のためのエネルギ付与は、例えば、電磁放射により、例えば、個々の部分のレーザ照射により提供できる。
【0024】
更なる実施態様によると、変形可能な接着剤は、ガイディングエレメントの外面に塗布し、又はハウジングの内面に塗布できる。この目的のために、ガイディングエレメントの内面及び外面部分は、少なくとも一つのレセプタクルを含んでもよい。ガイディングエレメント及びハウジングのインターロッキングは、その後、前記接着剤の硬化により第二段階で実施できる。前記接着剤の硬化及びその結果、ガイディングエレメント及びハウジングの固定化と相互インターロッキングは支持でき、又は、エネルギ付与により、例えば、電磁放射による照射を用いて、又は熱エネルギを応用して起動できる。
【0025】
一般的に、そして別の好ましい実施態様によると、ガイディングエレメント及びハウジングは、接着で連結し、相互に結合し、及び/又は、相互に溶接する。そのようなハウジング及びガイディングエレメントの非確動的な、又は圧力ばめ連結は、ハウジング及びガイディングエレメントの相互の際限のない調整と関連して好ましい。
【0026】
好ましくは、ハウジング及びガイディングエレメントは、レーザ溶接による連結として設計される。この目的のために、ハウジングは、特にレーザ放射波長に対して少なくとも部分的に透明である。十分な溶接効果を達成するために、ガイディングエレメントは、前記レーザ放射線を少なくとも部分的に吸収するよう適合された物質を含む。この方法において、レーザ放射線及び熱エネルギの十分な量は、ガイディングエレメント及びハウジングの中間表面において付与することが可能である。結果として、ガイディングエレメントは、ハウジング及びガイディングエレメントは、鋳造により結合するように、少なくとも部分的に溶融する。
【0027】
更なる一般的な及び独立の実施態様において、カートリッジホルダ及びハウジングは、軸方向に相互に連結される。好ましくは、カートリッジホルダ及びハウジングは、ポジティブロック手段により連結でき、それは、例えば、使用済みのカートリッジの代替のために、ハウジング及びカートリッジホルダの取り外しを可能にし得る。しかし、そのような取り外しのみは、ガイディングエレメント及びハウジングが取り外し可能に内部連結される実施態様に関連して好ましい。
【0028】
発明の更なる好ましい実施態様によると、ガイディングエレメントは、駆動機構及びハウジングの排他的な軸方向の機械的連結を提供する。この方法において、ハウジングと駆動機構の間の使用者が誘導するいかなる相対的なスラスト又は力が、ほとんど、完全にガイディングエレメントにより移動する。
【0029】
尚、別の態様において、薬物送達デバイスは、医薬品で充填されたカートリッジを含む。この方法が商業的に普及しているとき、薬物送達デバイスで投与すべき医薬品又は薬剤で充填されたカートリッジを、薬物送達デバイスは、既に備えている。それ故、デバイスは、使用のために準備されている構成で供給される。
【0030】
更なる独立の態様によると、発明は、また、カートリッジと薬物送達デバイスの駆動機構の間の軸方向のクリアランスを取り除く方法を提供する。前記クリアランス除去の方法は、好ましくは、薬物送達デバイスの最終組立のコースで実施される。第一の段階において、カートリッジは、カートリッジホルダ内に配置され、そして駆動機構はハウジング部品の内側に配置され、ここで、駆動機構は、ある軸方向の範囲内でハウジングに対して、軸方向に摺動可能に支持されたまま留まる。
【0031】
第二段階並びにカートリッジホルダ及びハウジングの組立の間において、駆動機構がカートリッジに操作可能に係合するようになることに対応して、駆動機構は、ハウジングに関する軸方向の変位に対する対象になる。駆動機構のピストンロッド及びカートリッジのピストンの相互の隣接の効果としての駆動機構及びハウジングの相対的な軸方向の変位に基づき、前記ピストンロッドとピストン間の軸方向のクリアランスは効果的に取り除くことができる。
【0032】
最終的に、第三段階において、そしてカートリッジホルダ及びハウジングの組立の後、駆動機構は軸方向に固定され、そしてハウジングに対して静止する。ハウジング及びカートリッジホルダが、直接、内部連結されるので、駆動機構は、また、静止状態になり、そしてカートリッジホルダに対して軸方向に固定される。
【0033】
本明細書で使用する用語「薬剤」又は「医薬品」は、好ましくは、少なくとも一つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで一実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大で1500Daまでの分子量を有し、及び/又は、ペプチド、蛋白質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体、ホルモン又はオリゴヌクレオチド、若しくは上記の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、及び/又は、関節リウマチの処置、及び/又は、予防に有用であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置、及び/又は、予防のための、少なくとも一つのペプチドを含み、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも一つのヒトインスリン又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、又はその類似体若しくは誘導体、又はエキセンジン−3又はエキセンジン−4、若しくはエキセンジン−3又はエキセンジン−4の類似体若しくは誘導体を含む。
【0034】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B29位において、Lysは、Proで代替されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0035】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0036】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドを意味する。
【0037】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下の化合物リスト:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
ここで、基−Lys6−NH2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と結合してもよく;
【0038】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desMet(O)14,Asp28,Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25, Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
又は前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0039】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロパイン(ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどのRote Liste、2008年版、50章に表示されている脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらの拮抗剤である。
【0040】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン、若しくはその誘導体、又はスルホン化された、例えば、上記多糖類のポリスルホン化形体、及び/又は、薬学的に許容可能なその塩がある。ポリスルホン化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0041】
薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩、及び塩基塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na+、又は、K+、又は、Ca2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)を有する塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されるC1〜C6アルキル基;場合により置換されるC2〜C6アルケニル基;場合により置換されるC6〜C10アリール基、又は場合により置換されるC6〜C10ヘテロアリール基を意味する。薬学的に許容される塩の別の例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences” 17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Mark Publishing社,Easton, Pa., U.S.A.,1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0042】
薬学的に許容可能な溶媒和物としては、例えば、水和物がある。
【0043】
様々な改造体及び変形体は、本発明の精神及び範囲から離れることなく、本発明に対して実施できることは当業者には明白であろう。更に、添付の請求項において使用されるいかなる参照記号も、本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではないことは、留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】最終の組立構成における薬物送達デバイスの断面図を示す。
図2】カートリッジホルダ及びハウジングの部分的に交差した透視図を示す。
図3】ガイディングエレメント及び駆動機構の透視図を示す。
図4】最終の組立構成における図2及び3に基づく部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1〜4の概略図において、薬物送達デバイス10は、その遠位端部分においてカートリッジホルダ16と内部連結される円筒形のハウジング部品14を含む。投与すべき医薬品で充填されたカートリッジ18は、カートリッジホルダ16内に配置される。カートリッジ18は、その近位端部分で、駆動機構12のピストンロッド又はプランジャ22と操作可能に係合するピストン20を含む。駆動機構12及びハウジング14の機械的連結は、スリーブ状のガイディングエレメント28により提供される。特に図示されないけれど、ガイディングエレメント28は、軸方向に固定され、そして駆動機構12に連結する。ガイディングエレメント28は、ハウジング14において、軸方向に、摺動可能に支持される。ガイディングエレメント28及び駆動機構12は、薬物送達デバイスの少なくとも軸方向に対して、確実に係合され得る。ガイディングエレメントを通して、駆動機構12は、その全体をハウジング14に対して摺動可能に配置される。
【0046】
ピストン20とピストンロッド22の間の軸方向のクリアランスは、カートリッジホルダ16及びハウジング14の最終の組立中、及びその過程において、好ましくは、取り除かれる。一般的には、薬物送達デバイス10の最終組立は、第一及び第二の部分組立の相互組立及び相互の内部ロッキングを含む。この文脈において、第一の部分組立は、カートリッジホルダ16及びその事前組立カートリッジ18を含む。第二の部分組立は、ハウジング14及びその中に摺動可能に支持される駆動機構12を含む。
【0047】
最終組立中、第一及び第二の部分組立において、カートリッジホルダ16及びハウジング14は、相互に内部連結され、その遠位端面を備えたピストンロッド22又はスラストピースは、カートリッジ18のピストン20の近位端面に対して隣接する。組立方法の更なるコースにおいて、ガイディングエレメント18はその駆動機構12と一緒に、前記のピストンロッド22及びピストン20の隣接により、カートリッジホルダ16及びそのカートリッジ18に対して軸方向に固定されたまま留まる。半径方向に突起したペグ(peg)及び環状の溝26の形状で図示されたポジティブロックは、単に例示的なものである。ハウジング14及びカートリッジ16の内部連結は、他のいかなる好適な方法においても、例えば、また、ねじ係合の手段、又は接着剤を用いても提供することができる。
【0048】
結果的には、ハウジング14は、カートリッジホルダ16に対する最終組立構成が達成するまで、ガイディングエレメント28に対する軸方向の変位を経験する。図1及び4で示す通り最終の組立構成が達成した後、ガイディングエレメント28及びハウジング14は、レーザ溶接方法を用いて、相互に静止する。この目的のため、ハウジング14、及び/又は、ガイディングエレメント28は、溶接スポット30の面積における熱エネルギ付与の対象である。
【0049】
ガイディングエレメント28及びハウジング14の溶接は、多数の溶接スポット30を含む。ハウジング14及びガイディングエレメント28のリム状又は環状の相互溶接を実施することも想定可能である。
【0050】
更に、ガイディングエレメント28、及び/又は、ハウジング14の環状の溝においてレーザ溶接物質を提供し、配置することは想定可能である。レーザ溶接物質は、例えば、その放射吸収性質に基づいて選択することができ、一方、ガイディングエレメント28及びハウジング14の両物質は、レーザ溶接過程のために使用されるレーザ放射線に対して実質的に透明であり得る。
【0051】
参照番号リスト:
10:薬物送達デバイス;
12:駆動機構;
14:ハウジング;
16:カートリッジホルダ;
18:カートリッジ;
20:ピストン;
22:ピストンロッド;
24:ペグ;
26:レセプタクル;
28:ガイディングエレメント;
30:溶接スポット;
図1
図2
図3
図4