特許第5794996号(P5794996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5794996-端面発光型半導体レーザ 図000002
  • 特許5794996-端面発光型半導体レーザ 図000003
  • 特許5794996-端面発光型半導体レーザ 図000004
  • 特許5794996-端面発光型半導体レーザ 図000005
  • 特許5794996-端面発光型半導体レーザ 図000006
  • 特許5794996-端面発光型半導体レーザ 図000007
  • 特許5794996-端面発光型半導体レーザ 図000008
  • 特許5794996-端面発光型半導体レーザ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794996
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】端面発光型半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/24 20060101AFI20150928BHJP
   H01S 5/10 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H01S5/24
   H01S5/10
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-535694(P2012-535694)
(86)(22)【出願日】2010年8月25日
(65)【公表番号】特表2013-509696(P2013-509696A)
(43)【公表日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】EP2010062416
(87)【国際公開番号】WO2011051013
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年8月15日
(31)【優先権主張番号】102009051348.5
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102009056387.3
(32)【優先日】2009年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ラウアー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス−イグレシアス アルバロ
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−152280(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0041709(US,A1)
【文献】 特開2007−150170(JP,A)
【文献】 特開昭58−034987(JP,A)
【文献】 特開2003−332690(JP,A)
【文献】 特開平01−100985(JP,A)
【文献】 特開2006−128295(JP,A)
【文献】 特開平05−190976(JP,A)
【文献】 特開平01−132189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路領域(4)を有する半導体ボディ(10)を備えた端面発光型半導体レーザであって、
− 前記導波路領域(4)が、第1の導波路層(2A)と、第2の導波路層(2B)と、前記第1の導波路層(2A)と前記第2の導波路層(2B)との間に配置されておりレーザ放射(17)を生成する活性層(3)と、を備えており、
− 前記導波路領域(4)が、第1のクラッド層(1A)と、前記半導体ボディ(10)の成長方向において前記導波路領域(4)の下流に配置されている第2のクラッド層(1B)と、の間に配置されており、
− 前記活性層(3)によって放出される前記レーザ放射(17)の横モードを選択するための位相構造(6)が、前記半導体ボディ(10)に形成されており、前記位相構造(6)が、前記半導体ボディ(10)の上面(5)から前記第2のクラッド層(1B)の中に延在する少なくとも1つの切り欠き部(7)、を備えており、
前記レーザ放射(17)は、前記端面発光型半導体レーザにおいてレーザ共振器を形成する側面(16)間を伝搬するとき、前記半導体ボディ(10)の主領域から前記位相構造(6)に入り、
− 前記第2のクラッド層(1B)の半導体材料とは異なる半導体材料からなる少なくとも1層の第1の中間層(11)が、前記第2のクラッド層(1B)に埋め込まれており、
− 前記切り欠き部(7)の少なくとも一部分が前記半導体ボディ(10)の前記上面(5)から前記第1の中間層(11)の中まで延在しており、
前記第2のクラッド層(1B)に第2の中間層(12)が埋め込まれており、前記切り欠き部(7)の少なくとも一部分が前記第2の中間層(12)の中まで延在しており、
前記切り欠き部(7)が、少なくとも1つの第1の部分において前記第1の中間層(11)の中まで延在しており、少なくとも1つの第2の部分において前記第2の中間層(12)の中まで延在しており、前記切り欠き部(7)が、前記レーザ放射(17)が前記半導体ボディ(10)の主領域から前記位相構造(6)に入るときに生じうる結合損失が減少するように、前記側面(16)間を伝搬する前記レーザ放射(17)の伝搬方向と平行に前記第1の部分と前記第2の部分の間で空間的に変化している深さを有する、
端面発光型半導体レーザ。
【請求項2】
前記中間層(11)の前記半導体材料が、前記第2のクラッド層(1B)に含まれていないIII族またはV族の少なくとも1種類の元素を含んでいる、
請求項1に記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項3】
前記第2のクラッド層(1B)が、AlxGa1−xAs(0≦x≦1)を含んでおり、前記中間層(11)が、InもしくはPまたはその両方を含んでいる、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項4】
前記中間層(11)が、10nm〜100nmの範囲内(両端値を含む)の厚さを有する、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項5】
前記第2のクラッド層(1B)が、前記導波路領域(4)に隣接している第1の部分層(1C)と、前記第1の部分層(1C)に隣接している第2の部分層(1D)とを含んでおり、前記第1の部分層(1C)が前記第2の部分層(1D)よりも高い屈折率を有する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項6】
前記少なくとも1層の中間層(11,12)が、前記第2のクラッド層(1B)の前記第1の部分層(1C)に埋め込まれている、
請求項5に記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項7】
前記位相構造(6)の少なくとも一部分にカバー層(15)が設けられている、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項8】
前記カバー層(15)が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、セレン化亜鉛、ゲルマニウム、またはベンゾシクロブテンを含んでいる、
請求項7に記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項9】
前記半導体ボディ(10)に少なくとも1つのコンタクト帯状片(8)が形成されている、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項10】
前記コンタクト帯状片(8)が、10μm〜500μmの範囲内(両端値を含む)の幅bを有する、
請求項9に記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項11】
複数のコンタクト帯状片(8)を備えている、
請求項9または請求項10に記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項12】
前記コンタクト帯状片(8)が距離dおよび幅bを有し、
0.01≦b/d≦0.5が成り立つ、
請求項11に記載の端面発光型半導体レーザ。
【請求項13】
動作時、780nm〜1500nmの範囲内の波長を有する、赤外スペクトル領域のレーザ放射(17)、を放出する、
請求項1から請求項12のいずれかに記載の端面発光型半導体レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面発光型半導体レーザであって、横モードを選択するための位相構造領域を備えた端面発光型半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力用の端面発光型半導体レーザは、通常ではブロードストライプレーザ(broad stripe laser)として具体化され、活性領域は例えば100μm以上の幅を有することができる。このタイプの半導体レーザの場合、活性領域の横方向範囲が比較的大きいため、一般には多数の横モードが発振を開始しうる。端面発光型半導体レーザのマルチモード動作では、特に、放出されたレーザ光を下流の光学素子(例えば光導波路)に結合することが難しくなる。
【0003】
高次横モードを抑制する目的で、特に、横基本モードでの動作を得る目的で、特許文献1には、端面発光型半導体レーザの導波路に位相構造(phase structure)を形成する方法が開示されている。位相構造は、その実効屈折率が、横方向に隣接する半導体ボディの領域の実効屈折率とは異なる半導体ボディの領域であり、半導体レーザの横基本モードよりも高次レーザモードにおいてレーザ共振器中で大きな循環損失(circulation loss)が発生するように具体化されている。端面発光型半導体レーザにおける位相構造は、例えば、半導体ボディの表面から半導体ボディの中の第2のクラッド層(second cladding layer)、あるいは導波路領域に達するようにエッチングされた構造によって、形成することができる。この構造は、高次レーザモードよりも横基本モードの損失が小さくなり、横基本モードのレーザ発振の増幅が促進されるように、例えばシミュレーションによって最適化することができる。
【0004】
可視スペクトル領域で発光する半導体レーザにおける、それ自体公知である位相構造は、赤外スペクトル領域で発光する半導体レーザでは、簡単に使用することができない。なぜなら、赤外スペクトル領域の半導体レーザの場合、可視スペクトル領域の半導体レーザよりもレーザ放射が高い割合で導波路領域に集中し、クラッド層に入射する割合が低いためである。さらには、赤外スペクトル領域の半導体レーザの場合、波長が比較的長いためクラッド層が比較的厚い。この理由により、第2のクラッド層におけるエッチング深さが小さい位相構造は、効果が極めて小さい。その一方で、導波路領域の近傍までエッチングが行われる場合、位相構造の効果はエッチングの深さによって大きく異なる。したがって、赤外スペクトル領域の半導体レーザにおける位相構造を実現するためには、比較的深いエッチング構造を半導体ボディに形成し、かつ深さを極めて正確に設定する必要がある。しかしながら、これらの要件の両方を同時に満たすことは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/97349号
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の目的は、特に、赤外スペクトル領域の半導体レーザの場合にも位相構造を実現できるように、位相構造の形成工程が単純化される半導体積層体を備えた端面発光型半導体レーザを開示することである。
【0007】
この目的は、独立請求項1の特徴を備えた端面発光型半導体レーザによって達成される。従属請求項は、本発明の有利な構造形態および発展形態に関する。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態によると、端面発光型半導体レーザは、導波路領域を備えた半導体ボディを含んでおり、導波路領域は、第1の導波路層と、第2の導波路層と、これら第1の導波路層と第2の導波路層との間に配置されておりレーザ放射を生成する役割を果たす活性層と、を備えている。半導体レーザの動作時、半導体ボディの活性層において電磁放射が生成されて増幅される。活性層は、一例として、1つまたは複数の量子井戸、量子細線、または量子ドットを備えている。
【0009】
導波路領域は、第1のクラッド層と、半導体ボディの成長方向において導波路領域の下流に配置されている第2のクラッド層、との間に配置されている。第1のクラッド層および第2のクラッド層は、導波路層よりも小さい屈折率を有することが有利である。導波路領域の屈折率とクラッド層の屈折率とが異なることによって、モードプロファイルが導波路領域に高い割合で集中する。しかしながら、レーザモードは少なくともわずかにクラッド層に入射する。
【0010】
半導体ボディには、活性層によって放出されるレーザ放射の横モードを選択するための位相構造が形成されていることが有利であり、この位相構造は、半導体ボディの表面から第2のクラッド層の中に延在する少なくとも1つの切り欠き部を備えている。位相構造は、レーザ放射の横基本モードの損失が、高次レーザモードの損失よりも小さいように具体化されていることが好ましい。位相構造によって、導波路領域を伝搬するレーザ放射に循環損失が生じるが、この構造化された領域は、横基本モードよりも高次レーザモードが大きく減衰するように具体化されている。このようにすることで、特に、半導体レーザの動作時、1つまたは数個の好ましいレーザモード、好ましくは横基本モードのみが発振するようにすることができる。
【0011】
レーザ放射の高次のモードが抑制され、好ましくは横基本モードのみが発振を開始することによって、端面発光型半導体レーザの高いビーム品質が得られる。特に、横基本モードのビームプロファイルは、光学素子によってビーム整形を行う場合、特に、光ファイバに高い効率で結合する目的に適している。
【0012】
少なくとも一実施形態によると、第2のクラッド層の半導体材料とは異なる半導体材料からなる少なくとも1層の中間層が、第2のクラッド層に埋め込まれている。位相構造を形成している少なくとも1つの切り欠き部の少なくとも一部分が、半導体ボディの上面から中間層の中まで延在している。
【0013】
半導体ボディに1つまたは複数の切り欠き部を形成することによって位相構造を設けるステップは、特に、第2のクラッド層の一部分を除去するエッチング工程によって行うことができる。エッチング工程は、湿式化学エッチング工程または乾式エッチング工程とすることができる。第2のクラッド層に埋め込まれている中間層は、所望のエッチング深さを得るためのインジケータ層として有利に機能し、このようにすることで、所定の深さを有する切り欠き部を目標の深さで再現可能に形成することが容易になる。半導体ボディ、特に第2のクラッド層の湿式化学エッチング時に、第2のクラッド層に埋め込まれた中間層をエッチング停止層として使用することができる。この場合、使用するエッチング溶液に対して第2のクラッド層よりもエッチング速度が小さい半導体材料を、中間層として使用する。
【0014】
半導体ボディに1つまたは複数の切り欠き部を形成する目的に乾式エッチング工程(例えばプラズマエッチング)を使用する場合には、エッチング工程中にプロセスチャンバ内でプラズマの発光を監視することによって、中間層に達したことを推測し、その位置でエッチング工程を停止させることが可能である。この場合、特に均一かつ設定されたエッチング深さを得る目的で、プラズマエッチング工程における中間層のエッチング速度が第2のクラッド層よりも低いことが有利である。
【0015】
好ましい一実施形態においては、中間層の半導体材料は、第2のクラッド層に含まれていない、周期系のIII族またはV族の少なくとも1種類の元素、を含んだIII−V族半導体材料である。第2のクラッド層は、III−V族半導体材料、例えば特に、AlGa1−xAs(0≦x≦1、好ましくは0<x<1)を含んでいることが好ましい。第2のクラッド層の半導体材料は、Al、Ga、およびAs以外には、1種類または複数種類のドーパントまたは不純物を除いて、さらなる主成分を含んでいないことが好ましい。中間層は、InもしくはPまたはその両方を含んだ半導体材料を含んでいることが好ましい。
【0016】
少なくとも1層の中間層の半導体材料は、周囲の半導体層に格子整合するように選択されることが好ましい。さらには、中間層の導電型に関連するバンド端(すなわち活性領域のp側の価電子帯およびn側の伝導帯)が、周囲の第2のクラッド層に実質的に合致するならば有利である。
【0017】
好ましい一実施形態によると、中間層は、10nm〜100nmの範囲内(両端値を含む)の厚さを有する。特に好ましくは、中間層の厚さは20nm〜50nmの範囲内(両端値を含む)である。このような小さい厚さの場合、中間層は、半導体ボディの中を伝搬するレーザモードに対してわずかに影響するのみである。したがって、中間層には、屈折率が周囲の第2のクラッド層の屈折率と必ずしも同程度ではない半導体材料を使用することも可能であり、これは有利である。
【0018】
さらなる好ましい実施形態によると、第2のクラッド層に少なくとも1層のさらなる中間層が埋め込まれており、切り欠き部の少なくとも一部分がこの第2の中間層の中まで延在している。第2の中間層は、半導体ボディの表面を基準としたとき、第1の中間層とは異なる深さに配置されている。第2の中間層は、第1の中間層がインジケータ層として機能する対象の第1のエッチング深さとは異なる第2のエッチング深さを得るためのインジケータ層として、有利に機能する。したがって、第2のクラッド層は、少なくとも一部分において第1の中間層の中まで除去されており、かつ少なくともさらなる一部分において第2の中間層の中まで除去されていることが好ましい。
【0019】
好ましい一構造形態においては、切り欠き部は、その少なくとも1つの第1の部分において第1の中間層の中まで延在しており、少なくとも1つの第2の部分において第2の中間層の中まで延在している。この場合、切り欠き部の深さは、第1の部分と第2の部分の間で空間的に変化している(spatially varying)。少なくとも1つの切り欠き部の深さ、したがって第2のクラッド層の厚さは、第1の部分と第2の部分の間で、例えば、連続的に、好ましくは線形的に、増大または減少していることができる。これに代えて、切り欠き部の深さは、複数の段において階段状に増大または減少していることもできる。切り欠き部の深さが空間的に変化している結果として、位相構造の屈折率と半導体ボディの主領域の屈折率の急激な変化が緩和される。このようにすることで、レーザ放射が半導体ボディの主領域から位相構造領域に入るときに生じうる結合損失が減少し、その結果として半導体レーザの効率が向上し、これは有利である。
【0020】
さらなる有利な構造形態においては、第2のクラッド層は、導波路領域に隣接している第1の部分層と、第1の部分層に隣接している第2の部分層とを含んでおり、第1の部分層は第2の部分層よりも高い屈折率を有する。この場合、第2のクラッド層に埋め込まれている少なくとも1層の中間層は、クラッド層の第1の部分層または第2の部分層とはみなされない。したがって、第2のクラッド層が2つの部分層からなる場合、少なくとも1層の中間層は第1の部分層または第2の部分層に埋め込まれている。
【0021】
少なくとも1層の中間層は、第2のクラッド層の第1の部分層に埋め込まれていることが好ましい。第2のクラッド層の第1の部分層は、第2の導波路層の屈折率と、第2のクラッド層の第2の部分層の屈折率との間の範囲内の屈折率を有する。したがって、第2の導波路層から、その下流の第2のクラッド層の第1の部分層と、第2のクラッド層の第2の部分層まで、少なくとも1層の埋め込まれた中間層を除いて、屈折率が段階的に減少している。このようにすることで、第2の導波路層から第2のクラッド層への屈折率の変化を、第2の部分層の屈折率を有する第2のクラッド層が第2の導波路層に直接隣接している場合よりも小さくすることができる。
【0022】
第2のクラッド層の第1の部分層が、第2の導波路層の屈折率と、第2のクラッド層の第2の部分層の屈折率との間の範囲内の屈折率を有することによって、第2の導波路層の屈折率から第2のクラッド層の第2の部分層の屈折率に急激に変化する場合よりも、レーザ放射のより大きな割合が、少なくとも第2のクラッド層の第1の部分層に入射する。このようにすることで、第2のクラッド層に比較的大きく重なる横モードに対する位相構造の効果が増大し、これは有利である。これにより、特に、比較的厚い第2のクラッド層を備えた半導体レーザ、特に、赤外スペクトル領域で発光する半導体レーザにおいて、位相構造の使用が有効になる。
【0023】
さらに、第2のクラッド層が3層以上の部分層を備えていることも可能である。特に、第2のクラッド層は、第2の導波路層から半導体ボディの成長方向に屈折率が段階的に減少する複数の部分層を備えていることができる。あるいは、第2のクラッド層が屈折率勾配を有することもでき、この場合、屈折率が成長方向に連続的に減少する。
【0024】
さらには、半導体ボディの成長方向において導波路領域の下に配置されている第1のクラッド層が、2層以上の部分層からなることも可能である。一例として、第1のクラッド層は、第1の導波路層に隣接しており第1の導波路層よりも低い屈折率を有する第1の部分層と、この第1の部分層よりも低い屈折率を有する第2の部分層と、を含んでいることができる。したがって、第1の導波路層から第1のクラッド層の第2の部分層の方向に屈折率が段階的に減少している。
【0025】
さらなる有利な構造形態においては、位相構造にカバー層が設けられている。位相構造を形成している切り欠き部が、カバー層の材料によって、例えば完全に、または部分的に、満たされている。特に、位相構造の切り欠き部をカバー層によって完全に平坦にすることも可能である。
【0026】
カバー層は、特に、パッシベーション層とすることができ、パッシベーション層は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、セレン化亜鉛、ゲルマニウム、またはベンゾシクロブテン(BCB)を含んでいることができる。カバー層は、第2のクラッド層の屈折率よりも低い屈折率を有することが好ましい。カバー層の屈折率が、空気の屈折率と、第2のクラッド層の半導体材料の屈折率との間であることによって、空気のみによって満たされている切り欠き部と比較して、切り欠き部の界面における屈折率の変化が小さくなる。このようにすることで、切り欠き部の界面における結合損失が減少する。
【0027】
しかしながら、これに代えて、半導体材料よりも高い屈折率を有するカバー層を、位相構造に設けることも可能である。この場合、カバー層は、例えばゲルマニウムを含んでいることができる。
【0028】
有利な一構造形態においては、半導体レーザの表面に少なくとも1つのコンタクト帯状片(contact strip)が形成されている。コンタクト帯状片は、半導体ボディの上面に配置されていることが好ましい。コンタクト帯状片は、それを介して半導体ボディに電流を印加できる電極とすることができる。この電極は、例えば帯状のメタライゼーションとして、半導体ボディの上面に形成することができる。さらには、半導体ボディの上面のパッシベーション層における帯状の開口部(perforation)によって、コンタクト帯状片を画成することも可能である。このパッシベーション層に、大領域方式で(in large-area fashion)金属層を形成することができる。この場合、開口部の領域のみにおいて金属層が半導体ボディと接触している。
【0029】
印加された電流によって、半導体ボディの活性層において電磁放射が生成される。したがって、この端面発光型半導体レーザは、電気的に励起される半導体レーザである。
【0030】
電磁放射は、コンタクト帯状片の下方の活性領域において生成される。したがって、半導体レーザの発光領域は、この位置にある。半導体レーザが、半導体ボディの上面に複数のコンタクト帯状片を備えている場合、コンタクト帯状片それぞれの下方でレーザ放射が生成される。この場合、半導体レーザは複数の発光領域を備えており、その数は、上面におけるコンタクト帯状片の数に一致する。少なくとも1つのコンタクト帯状片は、活性領域において生成される電磁放射の主ビーム方向に沿って延在していることが好ましい。コンタクト帯状片の主延在方向は、そのコンタクト帯状片に割り当てられているエミッタの主ビーム方向に平行である。一例として、コンタクト帯状片は、半導体ボディにおいて生成される電磁放射の主ビーム方向に沿って、均一な幅の帯状片として延在している。
【0031】
端面発光型半導体レーザの少なくとも1つのコンタクト帯状片は、10μm〜500μmの範囲内(両端値を含む)の幅を有することが有利である。したがって、この端面発光型半導体レーザは、特に、いわゆるブロードストライプレーザである。
【0032】
好ましい一実施形態においては、端面発光型半導体レーザは、その表面に複数のコンタクト帯状片を備えている。複数のコンタクト帯状片は、半導体ボディの表面上に互いに平行に配置されていることが好ましく、互いに同じ距離間隔で配置されていることが有利である。この場合、端面発光型半導体レーザは、いわゆるレーザバーである。
【0033】
半導体レーザのコンタクト帯状片は、距離dおよび幅bを有し、0.01≦b/d≦0.5が成り立つことが好ましい。したがってこの場合、コンタクト帯状片の間の距離は、コンタクト帯状片の幅の少なくとも2倍である。このタイプの半導体レーザの場合、互いに間隔をおいて放出されるレーザビームを1本または複数の光ファイバに結合できるようにする目的で、位相構造によって、横基本モードでの動作と小さいビームダイバージェンス(広がり)(beam divergence)を得ることが特に有利である。一例として、レーザシステムは、本明細書に記載されている端面発光型半導体レーザと、少なくとも1本の光ファイバとを備えていることができ、半導体レーザが1本または複数のレーザビームを放出し、このレーザビームが、半導体レーザと光ファイバとの間に配置されている1つまたは複数の光学素子によって光ファイバに結合される。
【0034】
本半導体レーザは、特に、赤外スペクトル領域で発光する半導体レーザとすることができる。本半導体レーザは、780nm〜1500nmの範囲内の発光波長を有することが好ましい。
【0035】
以下では、本発明について、例示的な実施形態に基づいて図1図5を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】端面発光型半導体レーザの例示的な実施形態の概略的な断面図を示している。
図1B図1Aに示した例示的な実施形態の概略的な平面図を示している。
図2A】端面発光型半導体レーザのさらなる例示的な実施形態の概略的な断面図を示している。
図2B図2Aに示した例示的な実施形態の概略的な平面図を示している。
図3A】端面発光型半導体レーザのさらなる例示的な実施形態の概略的な断面図を示している。
図3B図3Aに示した例示的な実施形態の概略的な平面図を示している。
図4】端面発光型半導体レーザのさらなる例示的な実施形態の概略的な平面図を示している。
図5】端面発光型半導体レーザのさらなる例示的な実施形態の場合の、半導体ボディにおける垂直方向zの屈折率nのプロファイルをグラフとして示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面において、同じ構成要素、または機能が同じである構成要素には、同じ参照記号を付してある。図示した構成要素と、構成要素の互いの大きさの関係は、必ずしも正しい縮尺ではないことを理解されたい。
【0038】
図1Aおよび図1Bは、端面発光型半導体レーザの第1の例示的な実施形態を示している。図1Aは、図1Bに示した平面図における線A−Bに沿った断面図を示している。
【0039】
端面発光型半導体レーザは、導波路領域4を含んだ半導体ボディ10を備えている。導波路領域4は、第1の導波路層2Aおよび第2の導波路層2Bを備えており、これらの層の間には、レーザ放射を生成する活性層3が配置されている。
【0040】
端面発光型半導体レーザの活性層3は、特に、単一量子井戸構造または多重量子井戸構造とすることができる。
【0041】
間に活性層3が埋め込まれている導波路層2A,2Bは、導波路領域4を形成している。この導波路領域4は、半導体ボディ10の成長方向において導波路領域4の下流に配置された第2のクラッド層1Bと、第1のクラッド層1Aとの間に配置されている。第1のクラッド層1Aは、活性層3を基準としたとき、半導体ボディ10のうち基板13の側に配置されており、第2のクラッド層1Bは、半導体ボディ10のうち基板13とは反対側に配置されている。
【0042】
半導体ボディ10の基板13と第1のクラッド層1Aとの間に、1層または複数のさらなる層(例えばバッファ層14)を配置することができる。端面発光型半導体レーザとの電気的接続は、例えば、半導体ボディ10の上面5における第1の電気コンタクト層8と、基板13の裏面における第2の電気コンタクト層9とによって、形成される。第2のクラッド層1Bと第1の電気コンタクト層8との間に、1層または複数のさらなる半導体層(図示していない)を配置することができる。
【0043】
クラッド層1A,1Bは、導波路層2A,2Bよりも低い屈折率を有することが有利であり、この結果として、横方向に伝搬するレーザ放射が実質的に導波路領域4の中を伝わる。しかしながら、導波路層2A,2Bとクラッド層1A,1Bとの屈折率の差が有限であるため、レーザモードの少なくとも一部分はクラッド層1A,1Bの中にも伝搬する。したがって、クラッド層1A,1Bの特性を変えることによって、導波路領域4を伝搬するレーザモードを調整することが可能である。
【0044】
半導体ボディ10は、第2のクラッド層1Bに形成された位相構造6を備えている。位相構造6は、半導体ボディ10の上面5から第2のクラッド層1Bの中に延在する2つの切り欠き部7を備えている。位相構造6は、第2のクラッド層1Bのうち第1のコンタクト層8によって覆われていない領域に位置している。しかしながらこれに代えて、位相構造6の少なくとも一部分を第1のコンタクト層8の下に配置することも可能である。
【0045】
位相構造6によって、レーザモードの伝搬を所望の状態に調整することができ、この場合、特に、半導体ボディの側面の間に配置されているレーザ共振器における循環損失が、半導体レーザの横基本モードよりも高次横モードにおいて大きくなるようにすることができる。したがって、位相構造6を適切に具体化することによって、特に、1つまたは複数の好ましいモード、特に横基本モードのみにおいて、半導体レーザを動作させることが可能である。さらには、位相構造6によって、横基本モードのビームプロファイルを整形することも可能になる。特に、横基本モードの放射のビームダイバージェンスを小さくすることができる。このことは、半導体レーザによって放出される放射が光ファイバに結合される用途の場合に、特に有利である。
【0046】
横モードスペクトルの所望の調整が達成されるように位相構造6の3次元構造を計算する方法自体については、特許文献1から公知であり、この点に関するこの文書の開示内容は参照によって本文書に組み込まれている。位相構造6は、低次横モード、特に、半導体レーザの横基本モードよりも、高次横モードにおいて、側面16によって形成されるレーザ共振器中で大きな循環損失が発生するように、パラメータとして半導体積層体の材料、幾何学的寸法、および放出される放射の波長を考慮して、事前に計算することができる。第2のクラッド層1Bの平面における、半導体レーザの側面16と第2のクラッド層1Bの切り欠き部7(位相構造6を形成している)との間の距離は、一例として、図1Bの平面図に示したように波状を想定することができる。
【0047】
半導体ボディの上面5から第2のクラッド層1Bの中に延在する切り欠き部7は、半導体ボディ10におけるエッチング工程によって形成されることが有利である。この場合、横モードプロファイルに対する所望の効果を得る目的で、比較的深い切り欠き部7を半導体ボディ10にエッチングする必要がある。特に、赤外スペクトル領域で発光する半導体レーザであって、レーザモードが高い割合で導波路領域4に集中する、もしくは第2のクラッド層1Bが比較的厚い、またはその両方を特徴とする半導体レーザの場合、導波路領域4の近傍に達する深さの切り欠き部7を半導体ボディ10にエッチングする必要がある。この場合、所望のエッチング深さは、できる限り正確に達成しなければならず、かつ容易に再現可能でなければならない。
【0048】
第2のクラッド層1Bにおける切り欠き部7を正確かつ再現可能に形成する目的で、第2のクラッド層1Bの半導体材料とは異なる半導体材料からなる中間層11が、第2のクラッド層1Bに埋め込まれていることが有利である。中間層11は、化学組成に関して第2のクラッド層1Bとは異なり、特に、第2のクラッド層1Bに含まれていない、周期系のIII族またはV族の材料を含んでいる。第2のクラッド層1Bは、特に、AlGa1−xAs(0<x<1)からなる層とすることができる。この場合、中間層11は、Al、Ga、As以外のIII族またはV族の材料を含んでいるIII−V族半導体材料から形成されていることが有利である。好ましくは、中間層11は、InまたはPを含んでいる。一例として、中間層11の材料は、InGaP、InGaAs、またはInGaAlPを含んでいることができる。この場合、第2のクラッド層1Bは、InおよびPのいずれも含んでいないことが好ましい。
【0049】
エッチング工程時、中間層11は、所望のエッチング深さを得るためのインジケータ層として機能することが有利である。したがって、第2のクラッド層1Bを成長させるとき、位相構造6の切り欠き部7の望ましい深さにおいて、第2のクラッド層1Bに中間層11を組み込む。エッチングは、湿式化学エッチング工程または乾式エッチング工程によって行うことができ、あるいは湿式化学エッチング工程および乾式エッチング工程の組合せを使用することもできる。特に、湿式化学エッチング工程の場合、中間層11はエッチング停止層として機能することができ、この場合、中間層11の材料よりも第2のクラッド層1Bの材料に対してエッチング速度が大きいエッチング溶液を使用する。乾式エッチング工程時には、所望のエッチング深さを得るためのインジケータとして、第2のクラッド層に含まれていない中間層11の元素を検出することが有利である。したがって、エッチング工程時、中間層11のみに含まれている化学元素の存在を検出することのできる測定装置を使用する。一例として、プラズマエッチング工程時には、エッチング中にプロセスチャンバ内のプラズマの発光を監視することによって元素を検出することができ、したがって、中間層11に達したことを確認することができる。したがって、その位置を目標深さとしてエッチング工程を停止させることができる。
【0050】
切り欠き部7は、少なくとも中間層11の中まで延在している。好ましくは、切り欠き部7の端部が中間層11の中に存在する。しかしながら、切り欠き部7が、半導体ボディ10の中で中間層11をわずかに超えることも可能である。特に、中間層11が比較的薄く、中間層に含まれている特徴的な元素が検出されてから少なくともわずかな時間遅延の後にエッチング工程が停止される場合、このような形態になりうる。
【0051】
中間層11は、第2のクラッド層1Bと比較して極めて薄い層を使用することが好ましい。中間層11の厚さは、好ましくは10nm〜100nmの範囲内、特に好ましくは20nm〜50nmの範囲内である。対照的に、第2のクラッド層1Bは、例えば1μm以上の厚さを有することができる。中間層11の厚さが小さいことにより、レーザモードの伝搬に対する中間層11の影響はわずかである。したがって、屈折率に関して第2のクラッド層1Bの材料とは異なる材料を中間層11に使用することが可能である。
【0052】
位相構造6には、少なくとも一部分にカバー層15を設けることができる。一例として、図1Aに示したように、切り欠き部7の側面および底領域をカバー層15によって覆うことができる。これに代えて、切り欠き部7を部分的または完全にカバー層15によって満たすことも可能である。カバー層15は、電気絶縁性材料、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、またはベンゾシクロブテン(BCB)を含んでいることが好ましい。
【0053】
半導体ボディ10の第1のコンタクト層8は、コンタクト帯状片として具体化されていることが好ましい。コンタクト帯状片8は、その長手方向が半導体レーザの側面16に垂直であるように延在しており、レーザ放射を生成するための電流が半導体ボディ10に印加される領域を画成している。図1Bに示したように、位相構造6は、例えば半導体ボディ10の側面16の近傍の縁部領域に形成することができ、この場合、コンタクト帯状片8は位相構造6の間に位置している。しかしながら、コンタクト帯状片8を位相構造6の上に延在させることも可能である。これは特に、切り欠き部7がカバー層15によって満たされている場合である。図1Aおよび図1Bとは異なる形態として、位相構造が半導体レーザの側面16まで延在していることもできる。
【0054】
コンタクト帯状片8は、半導体ボディ10の上面5における帯状のメタライゼーションとすることができる。しかしながらこれに代えて、コンタクト帯状片8を画成するための開口部を有するパッシベーション層を、半導体ボディの上面5に設けることも可能である(図示していない)。この場合、例えば大領域方式でメタライゼーション(例えば金層)によってパッシベーション層を覆うことができ、半導体ボディ10との接触は、コンタクト帯状片8を画成している開口部の領域のみに形成される。
【0055】
コンタクト帯状片8は、10μm〜500μmの範囲内の幅を有することが好ましい。したがって、この端面発光型半導体レーザは、特に、ブロードストライプレーザとすることができる。
【0056】
図2Bは、端面発光型半導体レーザの第2の例示的な実施形態を平面図として示しており、図2Aは、この平面図における線C−Dに沿った断面図として示している。第1の例示的な実施形態と異なる点として、第2のクラッド層1Bが第1の部分層1Cと第2の部分層1Dとからなる。第1の部分層1Cは導波路領域4に隣接しており、第2の部分層1Dは第1の部分層1Cの上に配置されている。この実施形態においては、第2のクラッド層1Bの第1の部分層1Cは、第2の部分層1Dよりも高い屈折率を有する。したがって、第2の部分層1Cの屈折率は、第2の導波路層2Bの屈折率と第2の部分層1Dの屈折率との間の範囲内である。
【0057】
第2のクラッド層1Bの第1の部分層1Cが、第2の導波路層2Aの屈折率と第2のクラッド層1Bの第2の部分層1Dの屈折率との間の範囲内の屈折率を有することによって、第2の導波路層2Aの屈折率から第2のクラッド層1Bの第2の部分層1Dの屈折率に急激に変化する場合よりも、レーザ放射のより大きな割合が、少なくとも第2のクラッド層1Bの第1の部分層1Cに入射する。このようにすることで、第2のクラッド層1Bに比較的大きく重なる横モードに対する位相構造の効果が増大し、これは有利である。これにより、特に、比較的厚い第2のクラッド層1Bを備えた半導体レーザ、特に、赤外スペクトル領域で発光する半導体レーザにおける、位相構造の使用が有効になる。
【0058】
中間層11は、第1の例示的な実施形態の場合と同様に、位相構造6の切り欠き部7を、設定された深さに形成するための役割を果たし、第2のクラッド層1Bの第1の部分層1Cに配置されていることが好ましい。このようにすることで、導波路領域4に隣接する第1の部分層1Cに達する切り欠き部7を形成することが可能である。しかしながら、これに代えて、中間層11を第2の部分層1Dに埋め込む、または第1の部分層1Cと第2の部分層1Dとの間に配置することも考えられる。
【0059】
それ以外の機能および有利な構造に関して、第2の例示的な実施形態は、第1の例示的な実施形態と同じである。
【0060】
図3Bは、端面発光型半導体レーザの第3の例示的な実施形態を平面図として示しており、図3Aは、この平面図における線E−Fに沿った断面図として示している。この実施形態の場合、第1の中間層11に加えて、第2の中間層12が第2のクラッド層1Bに埋め込まれている。この第2の中間層12は、その機能および有利な構造に関して、第1の例示的な実施形態に関連して説明した第1の中間層11と同じである。第2の中間層12は、第1の中間層11と同様に、10nm〜100nmの範囲内の厚さ、好ましくは20nm〜50nmの範囲内の厚さを有し、第1のクラッド層の半導体材料とは異なる半導体材料からなり、第2のクラッド層1Bに含まれていないIII族またはV族の少なくとも1種類の元素を含んでいることが有利である。
【0061】
第2のクラッド層1Bにさらなる第2の中間層12を埋め込むことによって、第2のクラッド層1Bの中の深さが空間的に変化する位相構造6を容易に形成することができる。図3Aの断面図に示した例示的な実施形態においては、切り欠き部7は、その側面71が第2の中間層12を貫いており、その底領域73が第1の中間層11に達している。切り欠き部7は、その側面71と底領域73との間に傾斜側面72を有する。傾斜側面72の領域では、切り欠き部7の深さが連続的に、特に線形に変化している。
【0062】
このタイプの切り欠き部7は、例えば次のように形成することができる。最初に、第2のクラッド層1Bの中の第1の中間層11より上に配置されている第2の中間層12に達するまで、第1のエッチング工程を適用し、この第1のエッチング工程によって、傾斜角度の大きい、好ましくは垂直な側面71を形成する。その後、第2のエッチング工程を第2の中間層12まで続けることによって、傾斜側面72を形成する。特に、第1のエッチング工程として湿式化学エッチング工程を使用することができ、第2のエッチング工程として乾式エッチング工程を使用することができる。あるいは、別のバリエーションとして、例えば異なるエッチング溶液を使用しての2回の連続する湿式化学エッチング工程、または2回の連続する乾式エッチング工程も考えられる。
【0063】
このようにすることで、位相構造6と半導体ボディ10の残りの領域との屈折率の差が、切り欠き部の深さが一定である場合よりも小さくなるように、位相構造6を形成することが可能であり、これは有利である。これにより、レーザ放射が半導体ボディ10の主領域から位相構造6に入るときに生じうる結合損失が減少し、その結果として半導体レーザの効率が向上し、これは有利である。
【0064】
それ以外の機能および有利な構造に関して、第3の例示的な実施形態は、第1の例示的な実施形態と同じである。
【0065】
図4に平面図として概略的に示した例示的な実施形態の場合には、端面発光型半導体レーザは、半導体ボディ10の上面5に複数のコンタクト帯状片8を備えたレーザバーである。コンタクト帯状片8は、その長手方向が半導体レーザの側面16に垂直であるように互いに平行に延在している。コンタクト帯状片8は、例えば、半導体ボディ10の位相構造6および側面16の間に配置されている。半導体ボディ10およびそこに含まれている位相構造6は、上述した例示的な実施形態の場合と同様に具体化することができ、したがってここではこれ以上詳しく説明しない。
【0066】
複数のコンタクト帯状片8によって、半導体レーザの活性層を電気的に励起する電流が半導体ボディ10に印加される。したがって、このレーザバーの活性層は、それぞれがコンタクト帯状片8の下方に配置されている複数の発光領域を備えている。図示した例示的な実施形態においては、コンタクト帯状片8および発光領域の数は5である。
【0067】
コンタクト帯状片8それぞれは、同じ幅bと、同じ相互距離dを有することが好ましい。コンタクト帯状片8の幅bは、例えば10μm〜500μmの範囲内とすることができる。コンタクト帯状片の中心間の距離dについては、0.01≦b/d≦0.5が成り立つことが好ましい。例えば、コンタクト帯状片の幅が100μmである場合、距離dは少なくとも200μmである。コンタクト帯状片8の幅bと距離dのこのような比を有するレーザバーは、放出された複数のレーザビーム17を光ファイバ18に結合するうえで特に適している。1つまたは複数の光学素子19,20によって、レーザビーム17を光ファイバ18に結合することができる。一例として、第1の光学素子19をマイクロレンズのアレイとすることができ、各発光領域に、それぞれのレーザビーム17のビーム整形を行うマイクロレンズが割り当てられる。複数のビームを、例えばさらなる光学素子(例:レンズ20)によって集めて、光ファイバ18に結合することができる。
【0068】
半導体レーザからの放射が光ファイバ18に結合されるこのような用途の場合、位相構造6が設けられた半導体ボディ10が特に適しており、なぜなら位相構造6によって、垂直ビーム方向および水平ビーム方向の両方において小さいビームダイバージェンスを得ることができるためである。したがって、比較的単純な光学素子19,20、例えば、複雑な非球面光学素子の代わりに球面レンズを使用することが可能であり、場合によっては、光学素子19,20の一方または両方を省くことも可能である。
【0069】
図5は、端面発光型半導体レーザのさらなる例示的な実施形態における、半導体ボディの上面から基板の方向の空間座標zに沿った屈折率nのプロファイルを概略的に示している。
【0070】
この端面発光型半導体レーザは、第1のクラッド層1Aと、第2のクラッド層1Bと、これらの層の間に配置されている導波路領域4とを備えている。導波路領域4は、活性層3(量子井戸層である)と、第1の導波路層2Aおよび第2の導波路層2Bとを備えている。
【0071】
屈折率の階段状のプロファイルから認識できるように、導波路層2A,2Bおよびクラッド層1A,1Bは、それぞれ複数の部分層からなる。一例として、第1のクラッド層1Aは2層の部分層を備えており、第1の導波路層2Aは3層の部分層を備えており、第2の導波路層2Bは2層の部分層を備えている。第2のクラッド層1Bは3層の部分層1C,1D,1Eを備えている。導波路層およびクラッド層の部分層において、屈折率nは、半導体ボディの上面から活性層に向かって段階的に増加しており、活性層3から基板の方向に段階的に減少している。
【0072】
第2のクラッド層1Bには2層の中間層11,12が埋め込まれており、これらの中間層は、第2のクラッド層1Bの部分層1C,1D,1Eに含まれていないIII族またはV族の少なくと1種類の元素を含んだ半導体材料からなる。一例として、第2のクラッド層1Bの部分層1C,1D,1Eは、AlGa1−xAs(0<x<1)を含んでいることができ、中間層11,12は、InもしくはPまたはその両方を含む半導体材料(例えばInGaAs、InGaP、またはInGaAsP)を含んでいる。
【0073】
中間層11,12は、含まれている化学元素が異なるため、第2のクラッド層1Bの部分層とはみなされない。それに対して、第2のクラッド層1Bの部分層1C,1D,1Eは、構成成分が同じである(ただし異なる濃度で存在することができる)。したがって、第2のクラッド層1Bの部分層1C,1D,1Eは、例えば、AlGa1−xAs(0<x<1)を含んでいることができ、これらの部分層はアルミニウム含有量xが異なる。特に、アルミニウム含有量は、第2のクラッド層1Bの上面から活性層3の方向に減少していくことができ、したがって屈折率はこの方向に部分層ごとに増大していく。
【0074】
第1の中間層11は、第2のクラッド層1Bの第1の部分層1Cに埋め込まれている。第2の中間層12は、第1の部分層1Cと第2の部分層1Dとの間に配置されている。図3Aおよび図3Bに関連して上述したように、第2のクラッド層1Bに埋め込まれている2層の中間層11,12によって、深さの変化している切り欠き部を備えた位相構造の形成工程が単純化される。
【0075】
端面発光型半導体レーザ、特に赤外半導体レーザにおいて位相構造を使用する場合、第2の導波路層2Bを第1の導波路層2Aよりも薄くすることが有利であることがさらに判明した。第2の導波路層2Bは、第1の導波路層2Aの厚さの好ましくは1/2のみ、特に好ましくは1/5のみ、場合によっては1/10のみの厚さを有する。
【0076】
ここまで、本発明について例示的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明は、任意の新規の特徴および特徴の任意の組合せを包含しており、特に、請求項における特徴の任意の組合せを含んでいる。これらの特徴または特徴の組合せは、それ自体が請求項あるいは例示的な実施形態に明示的に記載されていない場合であっても、本発明に含まれる。
【0077】
本特許出願は、独国特許出願第102009051348.5号および独国特許出願第102009056387.3号の優先権を主張し、これらの文書の開示内容は参照によって本出願に組み込まれている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5