特許第5795029号(P5795029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5795029セラミックヒータ、グロープラグ、セラミックヒータの製造方法、および、グロープラグの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795029
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】セラミックヒータ、グロープラグ、セラミックヒータの製造方法、および、グロープラグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/18 20060101AFI20150928BHJP
   H05B 3/48 20060101ALI20150928BHJP
   F23Q 7/00 20060101ALI20150928BHJP
   F23Q 7/22 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H05B3/18
   H05B3/48
   F23Q7/00 V
   F23Q7/00 605M
   F23Q7/22 620A
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-143421(P2013-143421)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-18625(P2015-18625A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】特許業務法人鳳国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 良仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遼
(72)【発明者】
【氏名】関口 豊
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0284714(US,A1)
【文献】 特開2010−108606(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052624(WO,A1)
【文献】 特開平10−110951(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/057213(WO,A1)
【文献】 特開2003−040678(JP,A)
【文献】 特開2002−334768(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065366(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/123296(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/18
F23Q 7/00
F23Q 7/22
H05B 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって発熱する抵抗体と、
軸線方向に沿って延び、セラミックを用いて形成されるとともに前記抵抗体が埋設され、前記抵抗体よりも電気伝導率が低い基体と、
を備えるセラミックヒータであって、
前記抵抗体は、
前記基体の先端部から後端部に向かって延びる部分である第1部と、
前記第1部から離れて前記基体の前記先端部から前記後端部に向かって延びる部分である第2部と、
前記基体の前記先端部に埋設され、前記第1部と前記第2部とを接続する部分である接続部と、
を含み、
互いに離れた第1抵抗体断面と第2抵抗体断面とを前記抵抗体の断面として含む前記軸線方向と直交するセラミックヒータの断面の少なくとも1つでは、
当該セラミックヒータの断面において、前記第1抵抗体断面の輪郭と前記第2抵抗体断面の輪郭との両方と接触する直線のうちの、前記第1抵抗体断面と前記第2抵抗体断面との間を通る2本の直線を、第1直線および第2直線としたとき、
前記第1抵抗体断面は、
前記第1抵抗体断面の輪郭における、前記第1直線と接触する第1位置から、前記第2直線と接触する第2位置までの、前記第2抵抗体断面側の部分である第1内側部には、突出部を有さずに、
前記第1抵抗体断面の輪郭における、前記第1位置から前記第2位置までの、前記第2抵抗体断面側とは反対側の部分である第1外側部には、2つ以上の突出部を有している、
セラミックヒータ。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックヒータであって、
前記第2抵抗体断面は、
前記第2抵抗体断面の輪郭における、前記第1直線と接触する第3位置から、前記第2直線と接触する第4位置までの、前記第1抵抗体断面側の部分である第2内側部には、突出部を有さずに、
前記第2抵抗体断面の輪郭における、前記第3位置から前記第4位置までの、前記第1抵抗体断面側とは反対側の部分である第2外側部には、2つ以上の突出部を有している、
セラミックヒータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセラミックヒータであって、
前記セラミックヒータの断面において、前記第1外側部を同じ長さの2つの部分である2つの等長部に2等分した場合に、前記第1抵抗体断面は、各等長部のそれぞれに少なくとも1つの前記突出部を有している、セラミックヒータ。
【請求項4】
筒状の主体金具と、
前記主体金具の内側に少なくとも一部が配置された、請求項1ないし3のいずれかに記載のセラミックヒータと、
を備える、グロープラグ。
【請求項5】
通電によって発熱する抵抗体と、軸線方向に沿って延び、セラミックを用いて形成されるとともに前記抵抗体が埋設され、前記抵抗体よりも電気伝導率が低い基体と、を備えるセラミックヒータの製造方法であって、
前記抵抗体は、
前記基体の先端部から後端部に向かって延びる部分である第1部と、
前記第1部から離れて前記基体の前記先端部から前記後端部に向かって延びる部分である第2部と、
前記基体の前記先端部に埋設され、前記第1部と前記第2部とを接続する部分である接続部と、
を含み、
互いに離れた第1抵抗体断面と第2抵抗体断面とを前記抵抗体の断面として含む前記軸線方向と直交する前記セラミックヒータの断面の少なくとも1つでは、当該セラミックヒータの断面において、前記第1抵抗体断面の輪郭と前記第2抵抗体断面の輪郭との両方と接触する直線のうちの、前記第1抵抗体断面と前記第2抵抗体断面との間を通る2本の直線を、第1直線および第2直線としたとき、
前記基体に対応する部分のうちの、前記第1抵抗体断面の輪郭における前記第1直線と接触する第1位置から前記第2直線と接触する第2位置までの前記第2抵抗体断面側の部分である第1内側部に接触すべき部分と、前記第2抵抗体断面の輪郭における前記第1直線と接触する第3位置から前記第2直線と接触する第4位置までの前記第1抵抗体断面側の部分である第2内側部に接触すべき部分と、を含む第1成形体を成形する第1工程と、
前記第1成形体上に、前記第1部と前記第2部と前記接続部とに対応する部分である抵抗体部を成形することによって、前記第1成形体と前記抵抗体部とを含む第2成形体を成形する第2工程と、
前記第2成形体上に、前記基体に対応する部分のうちの前記第1成形体以外の部分である残余部を成形することによって、前記第2成形体と前記残余部とを含む第3成形体を成形する第3工程と、
を含む、製造方法。
【請求項6】
請求項に記載の製造方法であって、
前記第1成形体は、前記基体の外表面の一部を形成する部分を含む、製造方法。
【請求項7】
グロープラグの製造方法であって、
請求項5または6に記載の製造方法で製造されたセラミックヒータの少なくとも一部が、筒状の主体金具の内側に配置されるように、前記セラミックヒータを前記主体金具に固定する、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロープラグ等に用いられるセラミックヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、グロープラグ等の種々の装置に、セラミックヒータが利用されている。セラミックヒータの製造方法としては、成形型を用いて発熱体とセラミック基体とを成形する方法が、利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−334768号公報
【特許文献2】国際公開第2011/052624号
【特許文献3】国際公開第2008/123296号
【特許文献4】特開平10−110951号公報
【特許文献5】特開2005−340034号公報
【特許文献6】特開2007−265893号公報
【特許文献7】特開2003−40678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、成形型を用いて成形する場合、成形によって突出部(バリとも呼ばれる)が形成される場合があった。このような突出部が形成される場合、突出部の周辺にクラックが生じる場合があった。例えば、略U字形状の発熱抵抗体が、2つの成形型を用いて成形される場合がある。2つの成形型には、それぞれ、発熱抵抗体の略U字形状の半割部分に対応する略U字形状の凹部が設けられており、2つの成形型を合わせることによって、発熱抵抗体の略U字形状の全体に対応する空洞が形成される。このような成形型を用いて発熱抵抗体を成形する場合、略U字形状の内周部分で2つの成形型の合わせ目ができるので、略U字形状の内周部分に突出部が形成される場合があった。通電時には、略U字形状の内周部分の温度が高くなりやすい。従って、通電時と非通電時との間の温度差に起因して、突出部の周辺にクラックが生じる場合があった。
【0005】
本発明の主な利点は、セラミックヒータのクラックを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
通電によって発熱する抵抗体と、
軸線方向に沿って延び、セラミックを用いて形成されるとともに前記抵抗体が埋設され、前記抵抗体よりも電気伝導率が低い基体と、
を備えるセラミックヒータであって、
前記抵抗体は、
前記基体の先端部から後端部に向かって延びる部分である第1部と、
前記第1部から離れて前記基体の前記先端部から前記後端部に向かって延びる部分である第2部と、
前記基体の前記先端部に埋設され、前記第1部と前記第2部とを接続する部分である接続部と、
を含み、
互いに離れた第1抵抗体断面と第2抵抗体断面とを前記抵抗体の断面として含む前記軸線方向と直交するセラミックヒータの断面の少なくとも1つでは、
当該セラミックヒータの断面において、前記第1抵抗体断面の輪郭と前記第2抵抗体断面の輪郭との両方と接触する直線のうちの、前記第1抵抗体断面と前記第2抵抗体断面との間を通る2本の直線を、第1直線および第2直線としたとき、
前記第1抵抗体断面は、
前記第1抵抗体断面の輪郭における、前記第1直線と接触する第1位置から、前記第2直線と接触する第2位置までの、前記第2抵抗体断面側の部分である第1内側部には、突出部を有さずに、
前記第1抵抗体断面の輪郭における、前記第1位置から前記第2位置までの、前記第2抵抗体断面側とは反対側の部分である第1外側部には、2つ以上の突出部を有している、
セラミックヒータ。
【0008】
この構成によれば、第1抵抗体断面は、抵抗体のうちの通電時に高温になりやすい第1内側部には突出部を有していないので、温度変化に起因してセラミックヒータにクラックが生じる可能性を低減できる。また、第1抵抗体断面は、第1外側部には2つ以上の突出部を有しているので、抵抗体と基体との間の密着性を向上できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載のセラミックヒータであって、
前記第2抵抗体断面は、
前記第2抵抗体断面の輪郭における、前記第1直線と接触する第3位置から、前記第2直線と接触する第4位置までの、前記第1抵抗体断面側の部分である第2内側部には、突出部を有さずに、
前記第2抵抗体断面の輪郭における、前記第3位置から前記第4位置までの、前記第1抵抗体断面側とは反対側の部分である第2外側部には、2つ以上の突出部を有している、
セラミックヒータ。
【0010】
この構成によれば、第2抵抗体断面は、抵抗体のうちの通電時に高温になりやすい第2内側部には突出部を有していないので、温度変化に起因してセラミックヒータにクラックが生じる可能性を低減できる。また、第2抵抗体断面は、第2外側部には2つ以上の突出部を有しているので、抵抗体と基体との間の密着性を向上できる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または2に記載のセラミックヒータであって、
前記セラミックヒータの断面において、前記第1外側部を同じ長さの2つの部分である2つの等長部に2等分した場合に、前記第1抵抗体断面は、各等長部のそれぞれに少なくとも1つの前記突出部を有している、セラミックヒータ。
【0012】
この構成によれば、1つの等長部にのみ突出部が設けられ、かつ、他の等長部には突出部が設けられていない場合と比べて、突出部が分散して配置されるので、抵抗体と基体との間の密着性を更に向上できる。
【0013】
[適用例4]
筒状の主体金具と、
前記主体金具の内側に少なくとも一部が配置された、適用例1ないし3のいずれかに記載のセラミックヒータと、
を備える、グロープラグ。
【0014】
[適用例5]
通電によって発熱する抵抗体と、軸線方向に沿って延び、セラミックを用いて形成されるとともに前記抵抗体が埋設され、前記抵抗体よりも電気伝導率が低い基体と、を備えるセラミックヒータの製造方法であって、
前記抵抗体は、
前記基体の先端部から後端部に向かって延びる部分である第1部と、
前記第1部から離れて前記基体の前記先端部から前記後端部に向かって延びる部分である第2部と、
前記基体の前記先端部に埋設され、前記第1部と前記第2部とを接続する部分である接続部と、
を含み、
互いに離れた第1抵抗体断面と第2抵抗体断面とを前記抵抗体の断面として含む前記軸線方向と直交する前記セラミックヒータの断面の少なくとも1つでは、当該セラミックヒータの断面において、前記第1抵抗体断面の輪郭と前記第2抵抗体断面の輪郭との両方と接触する直線のうちの、前記第1抵抗体断面と前記第2抵抗体断面との間を通る2本の直線を、第1直線および第2直線としたとき、
前記基体に対応する部分のうちの、前記第1抵抗体断面の輪郭における前記第1直線と接触する第1位置から前記第2直線と接触する第2位置までの前記第2抵抗体断面側の部分である第1内側部に接触すべき部分と、前記第2抵抗体断面の輪郭における前記第1直線と接触する第3位置から前記第2直線と接触する第4位置までの前記第1抵抗体断面側の部分である第2内側部に接触すべき部分と、を含む第1成形体を成形する第1工程と、
前記第1成形体上に、前記第1部と前記第2部と前記接続部とに対応する部分である抵抗体部を成形することによって、前記第1成形体と前記抵抗体部とを含む第2成形体を成形する第2工程と、
前記第2成形体上に、前記基体に対応する部分のうちの前記第1成形体以外の部分である残余部を成形することによって、前記第2成形体と前記残余部とを含む第3成形体を成形する第3工程と、
を含む、製造方法。
【0015】
この構成によれば、抵抗体のうちの通電時に高温になりやすい第1内側部に突出部が形成されることと、抵抗体のうちの通電時に高温になりやすい第2内側部に突出部が形成されることと、を抑制できるので、温度変化に起因してクラックが生じる可能性を低減できる。
【0016】
[適用例6]
適用例に記載の製造方法であって、
前記第1成形体は、前記基体の外表面の一部を形成する部分を含む、製造方法。
【0017】
この構成によれば、基体の外表面に対する抵抗体の配置の精度を向上できるので、配置のズレに起因してクラックが生じる可能性を低減できる。また、昇温性能ばらつきも抑制できる。
【0018】
[適用例7]
グロープラグの製造方法であって、
適用例5または6に記載の製造方法で製造されたセラミックヒータの少なくとも一部が、筒状の主体金具の内側に配置されるように、前記セラミックヒータを前記主体金具に固定する、
製造方法。
【0019】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、セラミックヒータ、セラミックヒータの製造方法、その製造方法に従って製造されたセラミックヒータ、セラミックヒータを備えるグロープラグ、グロープラグの製造方法、その製造方法に従って製造されたグロープラグ、等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例としてのグロープラグを示す説明図である。
図2】グロープラグ10の製造方法の一例のフローチャートである。
図3】セラミックヒータ40の製造方法の説明図である。
図4】第1成形体110の概略図である。
図5】第1成形体110が形成される様子を示す概略図である。
図6】第2成形体120の概略図である。
図7】第2成形体120が形成される様子を示す概略図である。
図8】第3成形体130(ヒータ成形体130)の概略図である。
図9】第3成形体130が形成される様子を示す概略図である。
図10】セラミックヒータ40の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.実施例:
A1.グロープラグの構成:
本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の一実施例としてのグロープラグを示す説明図である。グロープラグ10は、図示しない内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)の始動補助等のための熱源として機能する。図1(A)は、グロープラグ10の縦断面図であり、図1(B)は、グロープラグ10の一部分(セラミックヒータ40を含む部分)を示す拡大断面図である。図示されたラインCLは、グロープラグ10の中心軸を示している。以下、中心軸CLのことを「軸線CL」とも呼び、中心軸CLと平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。図中の第1方向D1は、軸線CLと平行な方向である。後述するように、通電によって発熱するセラミックヒータ40は、グロープラグ10の第1方向D1側の端部を形成している。以下、このような第1方向D1側を「グロープラグ10の先端側(あるいは、単に「先端側」)」とも呼び、第1方向D1の反対方向側を「グロープラグ10の後端側(あるいは、単に「後端側」)」とも呼ぶ。また、図中の第2方向D2と第3方向D3とは、互いに直交する方向であり、いずれも、第1方向D1と直交する方向である。以下、第1方向D1を、単に「+D1方向」とも呼び、第1方向D1の反対方向を、単に「−D1方向」とも呼ぶ。他の方向についても、同様に、「+」または「−」の符号を用いて、方向を特定する。また、+D1方向側を、単に「+D1側」とも呼び、−D1方向側を、単に「−D1側」とも呼ぶ。他の方向側についても、同様である。
【0022】
グロープラグ10は、主体金具20と、中軸30と、セラミックヒータ40と、Oリング50と、絶縁部材60と、金属外筒70(以下、単に「外筒70」とも呼ぶ)と、端子部材80と、接続部材90と、を含んでいる。主体金具20は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔20xを有する筒状の部材である。また、主体金具20は、−D1側の端部に形成された工具係合部28と、工具係合部28よりも+D1側に設けられた雄ネジ部22と、を含んでいる。工具係合部28は、グロープラグ10の脱着時に、図示しない工具と係合する部分である。雄ネジ部22は、図示しない内燃機関の取付孔の雌ネジに螺合するためのネジ山を含んでいる。主体金具20は、導電性材料(例えば、炭素鋼等の金属)で形成されている。
【0023】
主体金具20の貫通孔20xには、中軸30が収容されている。中軸30は、丸棒状の部材である。中軸30の+D1側の端部である先端部31は、貫通孔20xの内部に位置している。中軸30の−D1側の端部である後端部39は、主体金具20の−D1側の開口OPbから−D1方向に向かって突出している。中軸30は、導電材料(例えば、ステンレス鋼)で形成されている。
【0024】
開口OPbの近傍において、中軸30の外面と、主体金具20の貫通孔20xの内面と、の間には、Oリング50が設けられている。Oリング50は、弾性材料(例えば、ゴム)で形成されている。さらに、主体金具20の開口OPbには、リング状の絶縁部材60が装着されている。絶縁部材60は、筒状部62と、筒状部62の−D1側に設けられたフランジ部68と、を含んでいる。筒状部62は、中軸30の外面と、主体金具20の開口OPbを形成する部分の内面と、の間に挟まれている。絶縁部材60は、例えば、樹脂で形成されている。主体金具20は、これらの部材50、60を介して、中軸30を支持している。
【0025】
主体金具20よりも後端側(具体的には、絶縁部材60の−D1側)には、端子部材80が配置されている。端子部材80は、キャップ状の部材であり、導電材料(例えば、ニッケル等の金属)で形成されている。端子部材80と主体金具20との間には、絶縁部材60のフランジ部68が挟まれている。端子部材80には、中軸30の後端部39が挿入されている。端子部材80が加締められることによって、端子部材80が後端部39に固定されている。これにより、端子部材80は、後端部39に、電気的に接続される。
【0026】
主体金具20の+D1側の端部(具体的には、+D1側の開口OPa)には、外筒70が圧入されている。外筒70は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔70xを有する筒状の部材である。外筒70は、導電性材料(例えば、ステンレス鋼)で形成されている。
【0027】
外筒70の貫通孔70xには、通電によって発熱するセラミックヒータ40が圧入されている。セラミックヒータ40は、中心軸CLに沿って延びるように配置された棒状の部材である。セラミックヒータ40の外周面は、外筒70によって保持されている。セラミックヒータ40の+D1側の端部である先端部41は、外筒70の+D1側の端よりも+D1側に突出し、セラミックヒータ40の−D1側の端部である後端部49は、外筒70の−D1側の端よりも−D1側に突出している。セラミックヒータ40の後端部49は、主体金具20の貫通孔20xに挿入されている。
【0028】
セラミックヒータ40の後端部49には、接続部材90が固定されている。接続部材90は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔を有する円筒状の部材であり、導電性材料(例えば、ステンレス鋼)で形成されている。接続部材90の+D1側には、セラミックヒータ40の後端部49が圧入されている。接続部材90の−D1側には、中軸30の+D1側の端部である先端部31が圧入されている。これにより、先端部31は、接続部材90に電気的に接続される。以下、セラミックヒータ40と接続部材90との全体を、「ヒータモジュール490」とも呼ぶ。
【0029】
次に、ヒータモジュール490の詳細について、説明する。図1(B)には、接続部材90とセラミックヒータ40とのより詳細な断面図が示されている。セラミックヒータ40は、軸線CLに沿って延びる丸棒状の基体210と、基体210の内部に埋設された、略U字状の抵抗体220と、を含んでいる。
【0030】
基体210は、絶縁性セラミック材料(本実施例では、窒化珪素)で形成されている。基体210の先端部(すなわち、セラミックヒータ40の先端部41)は、先端側に向かって徐々に細くなっている。抵抗体220は、導電性セラミック材料で形成されている。本実施例では、抵抗体220は、基体210と同じ窒化珪素に、導電材料としてのタングステンカーバイトを混合して得られるセラミック材料で形成されている。基体210の電気伝導率は、抵抗体220の電気伝導率よりも、低い。
【0031】
抵抗体220は、2本のリード部221、222と、それらのリード部221、222に接続された発熱部223と、電極取出部281、282と、を含んでいる。各リード部221、222は、セラミックヒータ40の後端部49から先端部41の近傍まで軸線CLと平行に延びている。第1リード部221と第2リード部222とは、中心軸CLを挟んでおおよそ対称な位置に、配置されている。第2リード部222から第1リード部221へ向かう方向が、第3方向D3である。
【0032】
発熱部223は、セラミックヒータ40の先端部41に埋設され、第1リード部221の+D1側の端と第2リード部222の+D1側の端とを接続する。発熱部223の形状は、セラミックヒータ40の先端部41の丸い形状に合わせて湾曲する略U字状である。具体的には、発熱部223は、第1リード部221の+D1側の端から+D1方向に延びる第1ライン部223aと、第2リード部222の+D1側の端から+D1方向に延びる第2ライン部223bと、第1ライン部223aの+D1側の端と第2ライン部223bの+D1側の端とを接続する湾曲した接続部223cと、を含んでいる。発熱部223の断面積は、リード部221、222のそれぞれの断面積よりも、小さい。従って、発熱部223の単位長さ当たりの電気抵抗は、リード部221、222の単位長さ当たりの電気抵抗よりも、大きい。この結果、通電時には、発熱部223の温度が、他の部分と比べて、急速に上昇する。
【0033】
第1リード部221の−D1側の部分には、第1電極取出部281が接続されている。第1電極取出部281は、径方向に沿って延びる部材であり、内側の端部は第1リード部221に接続され、外側の端部は、セラミックヒータ40の外面に露出する。第1電極取出部281の露出部分は、外筒70の内周面に接触している。これにより、外筒70と第1リード部221とが、電気的に接続される。
【0034】
第2リード部222の−D1側の部分には、第2電極取出部282が接続されている。第2電極取出部282は、径方向に沿って延びる部材であり、第1電極取出部281よりも、−D1側に配置されている。第2電極取出部282の内側の端部は、第2リード部222に接続され、外側の端部は、セラミックヒータ40の外面に露出する。第2電極取出部282の露出部分は、接続部材90の内周面に接触している。これにより、接続部材90と第2リード部222とが、電気的に接続される。
【0035】
なお、抵抗体220のうちの、第1ライン部223aと第1リード部221との全体は、基体210の先端部(セラミックヒータ40の先端部41と同じ)から後端部(セラミックヒータ40の後端部49と同じ)に向かって延びる部分である第1部220aに対応し、第2ライン部223bと第2リード部222との全体は、第1部220aから離れて基体210の先端部から後端部に向かって延びる部分である第2部220bに対応する。
【0036】
A2.グロープラグの製造:
図2は、グロープラグ10の製造方法の一例のフローチャートである。最初のステップS100では、セラミックヒータ40が製造される。セラミックヒータ40の製造の詳細については、後述する。次のステップS120では、グロープラグ10の部材のうちの、セラミックヒータ40以外の部材が製造される。セラミックヒータ40以外の部材の製造方法としては、公知の種々の方法を採用可能であり、詳細な説明を省略する。なお、製造する代わりに、購入することによって、グロープラグ10の部材を準備してもよい。
【0037】
次のステップS140では、グロープラグ10の組み立てが行われる。組み立て方法としては、公知の種々の方法を採用可能である。例えば、接続部材90の+D1側の開口にセラミックヒータ40を圧入することによって、ヒータモジュール490を生成する。そして、セラミックヒータ40が外筒70に圧入される。また、中軸30が接続部材90の−D1側の開口に圧入される。そして、中軸30の後端部39が主体金具20の開口OPaに挿入され、そして、外筒70が、主体金具20の開口OPaに、圧入される。これにより、セラミックヒータ40の−D1側の部分が主体金具20の内側(具体的には、貫通孔20x内に)配置されるように、セラミックヒータ40が、外筒70を介して、主体金具20に固定される。次に、Oリング50が中軸30の後端部39に嵌め込まれ、さらに、絶縁部材60が中軸30の後端部39に嵌め込まれる。そして、端子部材80が、中軸30の後端部39に加締められる。以上により、グロープラグ10が完成する。
【0038】
図3(A)は、セラミックヒータ40の製造方法の一例のフローチャートである。最初のステップS200では、ヒータ成形体が生成される。ヒータ成形体は、焼成前のセラミックヒータ40に対応する。図3(B)は、ヒータ成形体130の断面図である。この断面図は、図1(B)のセラミックヒータ40のCa−Ca断面に対応する断面を示している。この断面は、第1方向D1と直交する断面であり、発熱部223のライン部223a、223bに対応する部分を通る断面である。
【0039】
図示するように、ヒータ成形体130の断面は、5つの部分110、131、132、121、122に区分されている。ヒータ成形体130の内部に配置された2つの部分121、122は、抵抗体220のライン部223a、223bに、それぞれ対応する。他の3つの部分110、131、132は、基体210に対応する。
【0040】
抵抗体220に対応する2つの部分121、122の間に挟まれた部分である中部分110は、ヒータ成形体130の−D2側の外表面130s1から+D2側の外表面130s2まで延びている。中部分110の+D3側に配置された第1外部分131は、ヒータ成形体130の+D3側の外表面を形成している。抵抗体220の一部に対応する部分である第1抵抗体部121は、中部分110と第1外部分131との間に挟まれている。中部分110の−D3側に配置された第2外部分132は、ヒータ成形体130の−D3側の外表面を形成している。抵抗体220の一部に対応する部分である第2抵抗体部122は、中部分110と第2外部分132との間に挟まれている。
【0041】
このようなヒータ成形体130は、大きく3つのステップS202、S204、S206によって、形成される。ステップS202では、中部分110(「第1成形体110」とも呼ぶ)が形成される。ステップS204では、第1成形体110上に、抵抗体220に対応する部分(抵抗体部121、122を含む)が形成される。ステップS206では、ヒータ成形体130の残りの部分(外部分131、132を含む)が形成される。これらのステップS202、S204、S206の詳細については、後述する。
【0042】
次のステップS210では、生成されたヒータ成形体130が焼成される。以上により、セラミックヒータ40が製造される。
【0043】
図4は、図3(A)のステップS202で生成される第1成形体110の概略図である。図中の方向D1、D2、D3は、第1成形体110を用いて得られる基体210(図1)に基づく方向を示している。図4(A)は、第1成形体110の+D1側の端部を、−D1方向を向いて見た概略図であり、図4(B)は、第1成形体110の+D3側の表面を、−D3方向を向いて見た概略図であり、図4(C)は、図4(B)のCb−Cb断面を示し、図4(D)は、図4(B)のDb−Db断面を示している。図4(C)に示す断面は、図1(B)のCa−Ca断面に対応する断面である。図4(D)の断面は、図4(C)の断面よりも−D1側の断面である。
【0044】
図4(B)に示すように、第1成形体110は、第1方向D1に沿って延びる棒状の部材である。第1成形体110の+D3側の表面の形状は、平らな面に、第1方向D1に沿って延びる第1溝111を形成した形状である。図4(A)、図4(B)に示すように、第1成形体110の+D1側の端部には、第1成形体110の+D3側から−D3側へ至る溝である先端溝113が形成されている。図4(C)、図4(D)に示すように、第1成形体110の−D3側の表面の形状は、+D3側の表面の形状と、同じである。具体的には、−D3側の表面には、+D3側の第1溝111と同じ形状の第2溝112が形成されている。後述するように、これらの溝111、112、113は、抵抗体220(図1)に対応する略U字状の部分のうちの内周側の略半分の部分を、収容する。ここで、略U字状の部分の内周側とは、略U字状の部分によって囲まれる領域側を示している。
【0045】
第1溝111は、+D1側の部分である第1溝前部111a(「前溝部111a」とも呼ぶ)と、第1溝前部111aよりも−D1側の部分である第1溝後部111b(「後溝部111b」とも呼ぶ)と、を含んでいる。前溝部111aは、後溝部111bよりも細い。前溝部111aと後溝部111bとの接続部分では、溝の径が滑らかに変化している。図4(C)は、前溝部111aを通る断面である。図4(D)は、後溝部111bを通る断面である。
【0046】
−D3側の第2溝112についても、同様である。例えば、図4(C)に示すように、第1溝前部111aを含む断面の−D3側には、第1溝前部111aと同じ形状の第2溝前部112aが形成されている。図4(D)に示すように、第1溝後部111bを含む断面の−D3側には、第1溝後部111bと同じ形状の第2溝後部112bが形成されている。
【0047】
後述するように、先端溝113と前溝部111a、112aとは、抵抗体220(図1)のうちの略U字状の発熱部223に対応する部分の内周側の一部を収容する。第1溝後部111b(図4(C))は、第1リード部221に対応する部分の内周側(ここでは、−D3側)の一部を収容する。第2溝後部112b(図4(D))は、第2リード部222に対応する部分の内周側(ここでは、+D3側)の一部を収容する。
【0048】
図5(A)〜図5(D)は、成形型911、912を用いて第1成形体110が形成される様子を示す概略図である。図5(A)〜図5(D)は、図4(B)のCb−Cb断面に対応する断面を示している。図中の方向D1、D2、D3は、第1成形体110を用いて得られる基体210(図1)に基づく方向を示している。第1成形体110の成形は、図5(A)〜図5(D)の順番に進行する。
【0049】
図5(A)には、2つの成形型911、912が示されている。+D3側に配置された第1型911の−D3側の表面には、+D3方向に向かって凹む凹部911gが形成されている。凹部911gの内面の形状は、第1成形体110の+D3側の略半分の部分の外面の形状と、同じである。凹部911g内には、−D3方向に突出する突出部911aが形成されている。図示を省略するが、突出部911aは、第1溝111と、先端溝113のうちの+D3側の略半分の部分と、に対応する。
【0050】
−D3側に配置された第2型912の+D3側の表面には、−D3方向に向かって凹む凹部912gが形成されている。凹部912gの内面の形状は、第1成形体110の−D3側の略半分の部分の外面の形状と、同じである。凹部912g内には、+D3方向に突出する突出部912aが形成されている。図示を省略するが、突出部912aは、第2溝112と、先端溝113のうちの−D3側の略半分の部分と、に対応する。
【0051】
図5(B)に示すように、2つの成形型911、912が型締めされる。これにより、2つの凹部911g、912gが、1つの空洞910zを形成する。空洞910zの内面の形状は、第1成形体110の全体の外面の形状と、同じである。
【0052】
次に、図5(C)に示すように、空洞910z内に、基体210の材料(例えば、窒化珪素とバインダとの混合物)が射出される。そして、図5(D)に示すように、成形型911、912が取り外されて、第1成形体110の成形が完了する。なお、第1成形体110の成形方法としては、図5に示すような射出成形に限らず、圧縮成形等の種々の成形方法を採用可能である。
【0053】
図6は、図3(A)のステップS204で生成される第2成形体120の概略図である。第2成形体120は、第1成形体110と、抵抗体220に対応する部分と、で構成されている。図6(A)〜図6(D)は、それぞれ、図5(A)〜図5(D)の第1成形体110上に抵抗体220に対応する部分が形成された状態を示す概略図である。
【0054】
図6(B)に示すように、第1成形体110の+D3側、具体的には、第1溝111(図4(B))上に、第1抵抗体部121が形成されている。図6(C)、図6(D)に示すように、第1溝111は、第1抵抗体部121の−D3側の略半分の部分を収容する。図6(A)、図6(B)に示すように、第1成形体110の+D1側、具体的には、先端溝113(図4(A)、図4(B))上に、先端抵抗体部123が形成されている。先端溝113は、先端抵抗体部123の内周側の略半分の部分を収容する。図6(C)、図6(D)に示すように、第1成形体110の−D3側、具体的には、第2溝112上に、第1抵抗体部121と同じ形状の第2抵抗体部122が形成されている。第1抵抗体部121と先端抵抗体部123と第2抵抗体部122とは、連続している。第1抵抗体部121と先端抵抗体部123と第2抵抗体部122との全体が、抵抗体220に対応する。
【0055】
第1抵抗体部121は、前溝部111a(図4(B)、図6(C))上に形成された部分である第1抵抗体前部121a(「前抵抗体部121a」とも呼ぶ)と、後溝部111b(図4(B)、図6(C))上に形成された部分である第1抵抗体後部121b(「後抵抗体部121b」とも呼ぶ)と、を含んでいる。前抵抗体部121aは、後抵抗体部121bよりも細い。すなわち、前抵抗体部121aの延びる方向と直交する断面の面積は、後抵抗体部121bの延びる方向と直交する断面の面積よりも、小さい。前抵抗体部121aと後抵抗体部121bとの接続部分では、抵抗体部の径が滑らかに変化している。
【0056】
−D3側の第2抵抗体部についても、同様である。図6(C)に示すように、第1抵抗体前部121aを含む断面の−D3側には、第1抵抗体前部121aと同じ形状の第2抵抗体前部122aが形成されている。図6(D)に示すように、第1抵抗体後部121bを含む断面の−D3側には、第1抵抗体後部121bと同じ形状の第2抵抗体後部122bが形成されている。
【0057】
第1抵抗体前部121aは、発熱部223(図1)の第1ライン部223aに対応する。第2抵抗体前部122aは、発熱部223の第2ライン部223bに対応する。先端抵抗体部123は、発熱部223の接続部223cに対応する。第1抵抗体後部121bは、第1リード部221に対応する。第2抵抗体後部122bは、第2リード部222に対応する。
【0058】
図7(A)〜図7(D)は、成形型921、922を用いて第2成形体120が形成される様子を示す概略図である。図7(A)〜図7(D)は、図6(B)のCb−Cb断面に対応する断面を示している。図中の方向D1、D2、D3は、第2成形体120を用いて得られる基体210(図1)に基づく方向を示している。第2成形体120の成形は、図7(A)〜図7(D)の順番に進行する。
【0059】
図7(A)には、2つの成形型921、922が示されている。+D3側に配置された第1型921の−D3側の表面には、+D3方向に向かって凹む凹部921gが形成されている。凹部921gの内面の形状は、第2成形体120の+D3側の略半分の部分の外面の形状と、同じである。凹部921g内には、+D3方向に凹む凹部921gxが形成されている。図示を省略するが、凹部921gxは、第1抵抗体部121と、先端抵抗体部123のうちの+D3側の略半分の部分と、に対応する。
【0060】
−D3側に配置された第2型922の+D3側の表面には、−D3方向に向かって凹む凹部922gが形成されている。凹部922gの内面の形状は、第2成形体120の−D3側の略半分の部分の外面の形状と、同じである。凹部922g内には、−D3方向に凹む凹部922gxが形成されている。図示を省略するが、凹部922gxは、第2抵抗体部122と、先端抵抗体部123のうちの−D3側の略半分の部分と、に対応する。
【0061】
図7(B)に示すように、第1成形体110が凹部921g、922gに嵌め込まれた状態で、2つの成形型921、922が型締めされる。第1成形体110の溝(第1溝111と先端溝113と第2溝112)と、成形型921、922の凹部921gx、922gxとは、1つの連続な空洞920zを形成する。空洞920zの内面の形状は、抵抗体220(図1)に対応する部分の全体の外面の形状と、同じである。図7(B)には、空洞920zのうちの一部である、第1前部921zと第2前部922zとが示されている。第1前部921zは、空洞920zのうちの、第1溝前部111aと凹部921gxとによって囲まれた部分である。第2前部922zは、空洞920zのうちの、第2溝前部112aと凹部922gxとによって囲まれた部分である。
【0062】
次に、図7(C)に示すように、空洞920z内に、抵抗体220の材料(例えば、窒化珪素と、タングステンカーバイトと、バインダと、の混合物)が射出される。この結果、抵抗体220に対応する抵抗体部121、122、123が成形される。
【0063】
ここで、図示するように、第1成形体110の−D2側の外表面130s1と+D2側の外表面130s2とは、いずれも、第1型921の内面と接している。同様に、それらの外表面130s1、130s2は、第2型922の内面と接している。従って、第1成形体110に対する成形型921、922の位置(すなわち、第1成形体110に対する抵抗体部121、122、123の位置)を、それらの外表面130s1、130s2(すなわち、セラミックヒータ40の外表面)を基準として、精度よく定めることができる。従って、配置のズレに起因するセラミックヒータ40のクラックを抑制できる。また、昇温性能のばらつきも抑制できる。
【0064】
また、空洞920z内に、抵抗体220の材料を射出する際、材料が、第1成形体110と、成形型921、922と、の隙間に入り込んで、突出部B11、B12、B21、B22(「バリB11、B12、B21、B22」とも呼ぶ)が形成される。図7(C)の右部分には、バリB11を示す拡大図が示されている。図中には、空洞920zの第1前部921zの+D2側の端部の近傍が示されている。図示するように、第1成形体110の+D3側の表面110sと、第1型921の−D3側の表面921sとが接触している。しかし、空洞920z(第1前部921z)の近傍において、これらの表面110s、921sの間に隙間が生じる。そして、抵抗体220の材料が隙間に入り込むことによって、バリB11が形成される。バリB11は、D1方向と平行に延びるライン状の突出部である。同様に、空洞920zの第1前部921zの−D2側の端部には、バリB12が形成され、空洞920zの第2前部922zの+D2側の端部には、バリB21が形成され、空洞920zの第2前部922zの−D2側の端部には、バリB22が形成される。このようなバリの位置と、セラミックヒータ40に生じ得るクラックとの関係については、後述する。
【0065】
射出が完了した後、図7(D)に示すように、成形型921、922が取り外されて、第2成形体120の成形が完了する。第2成形体120(特に、抵抗体220に対応する部分)の成形方法としては、図7に示すような射出成形に限らず、圧縮成形等の種々の成形方法を採用可能である。
【0066】
図8は、図3(A)のステップS206で生成される第3成形体130(ヒータ成形体130)の概略図である。第3成形体130は、第2成形体120と、基体210(図1)に対応する部分のうちの第1成形体110を除いた残りの部分と、で構成されている。図8(A)〜図8(D)は、それぞれ、図6(A)〜図6(D)の第2成形体120上に、基体210に対応する部分のうちの残りの部分が形成された状態を示す概略図である。
【0067】
図8(B)〜図8(D)に示すように、第2成形体120の+D3側には、第1外部分131が形成されている。第1外部分131は、第2成形体120の+D3側の外面の全体を覆っている。第2成形体120の−D3側には、第2外部分132が形成されている。第2外部分132は、第2成形体120の−D3側の外面の全体を覆っている。図8(A)、図8(B)に示すように、第2成形体120の+D1側には、先端部133が形成されている。先端部133は、第2成形体120の+D1側の端部を覆っている。これらの部分131、132、133の全体が、基体210に対応する部分のうちの第1成形体110以外の部分である残余部に対応する。
【0068】
図9(A)〜図9(D)は、成形型931、932を用いて第3成形体130が形成される様子を示す概略図である。図9(A)〜図9(D)は、図8(B)のCb−Cb断面に対応する断面を示している。図中の方向D1、D2、D3は、第3成形体130を用いて得られるセラミックヒータ40(図1)に基づく方向を示している。第3成形体130の成形は、図9(A)〜図9(D)の順番に進行する。
【0069】
図9(A)には、2つの成形型931、932が示されている。+D3側に配置された第1型931の−D3側の表面には、+D3方向に向かって凹む凹部931gが形成されている。凹部931gの内面の形状は、第3成形体130の+D3側の略半分の部分の外面の形状と、同じである。−D3側に配置された第2型932の+D3側の表面には、−D3方向に向かって凹む凹部932gが形成されている。凹部932gの内面の形状は、第3成形体130の−D3側の略半分の部分の外面の形状と、同じである。
【0070】
図9(B)に示すように、第2成形体120が凹部931g、932gに嵌め込まれた状態で、2つの成形型931、932が型締めされる。第2成形体120の外面と、成形型931、932の凹部931g、932gの内面とは、1つの連続な空洞930zを形成する。空洞930zの内面の形状は、基体210に対応する部分のうちの第1成形体110を除いた残りの部分の全体の外面の形状と、同じである。
【0071】
図9(B)には、空洞930zのうちの一部である、第1前部931zと第2前部932zとが示されている。第1前部931zは、空洞930zのうちの、第2成形体120の+D3側の外面と、凹部931gと、によって囲まれた部分である。第2前部932zは、空洞930zのうちの、第2成形体120の−D3側の外面と、凹部932gと、によって囲まれた部分である。
【0072】
次に、図9(C)に示すように、空洞930z内に、基体210の材料が射出される。そして、図9(D)に示すように、成形型931、932が取り外されて、第3成形体130の成形が完了する。図示するように、第1抵抗体前部121aのバリB11、B12は、第1成形体110と第1外部分131との間に挟まれ、第2抵抗体前部122aのバリB21、B22は、第1成形体110と第2外部分132との間に挟まれる。なお、第3成形体130(特に、基体210に対応する部分のうちの残余部)の成形方法としては、図9に示す射出成形に限らず、圧縮成形等の種々の成形方法を採用可能である。
【0073】
次に、バリの位置とセラミックヒータ40に生じ得るクラックとの関係について説明する。図10は、図1に示すセラミックヒータ40のCa−Ca断面である。この断面は、基体210内に埋設された発熱部223の第1ライン部223aの断面と第2ライン部223bの断面と、を含んでいる。以下、第1ライン部223aの断面を「第1抵抗体断面C1」とも呼び、第2ライン部223bの断面を「第2抵抗体断面C2」とも呼ぶ。また、第1抵抗体断面C1の輪郭を「第1輪郭C1L」と呼び、第2抵抗体断面C2の輪郭を「第2輪郭C2L」と呼ぶ。図10の下部には、これらの抵抗体断面C1、C2の拡大図が示されている。本実施例では、抵抗体断面C1、C2の形状は、いずれも、略楕円形状である。
【0074】
図中には、2本の直線L1、L2が示されている。これらの直線は、いずれも、第1輪郭C1Lと第2輪郭C2Lとの両方と接触する接線である。第1直線L1は、第1輪郭C1Lの+D2側の部分の−D3側の第1位置P1で、第1輪郭C1Lと接触し、第2輪郭C2Lの−D2側の部分の+D3側の第3位置P3で、第2輪郭C2Lと接触している。第2直線L2は、第1輪郭C1Lの−D2側の部分の−D3側の第2位置P2で、第1輪郭C1Lと接触し、第2輪郭C2Lの+D2側の部分の+D3側の第4位置P4で、第2輪郭C2Lと接触している。これらの直線L1、L2は、いずれも、第1抵抗体断面C1と第2抵抗体断面C2との間を通る直線であり、第1抵抗体断面C1と第2抵抗体断面C2との間で交差している。抵抗体断面C1、C2の形状が、いずれも、円形状である場合、2本の直線L1、L2は、共通内接線とも呼ばれる。
【0075】
図10の下部の拡大図に示すように、第1輪郭C1Lは、2つの位置P1、P2によって、2つの部分IP1、OP1に分割される。これら2つの部分IP1、OP1のうち、第2抵抗体断面C2側の部分IP1を「第1内側部IP1」と呼び、第2抵抗体断面C2側とは反対側の部分OP1を「第1外側部OP1」と呼ぶ。同様に、第2輪郭C2Lは、2つの位置P3、P4によって、2つの部分IP2、OP2に分割される。これら2つの部分IP2、OP2のうち、第1抵抗体断面C1側の部分IP2を「第2内側部IP2」と呼び、第1抵抗体断面C1側とは反対側の部分OP2を「第2外側部OP2」とも呼ぶ。
【0076】
通電時には、発熱部223(図1)の第1ライン部223aと第2ライン部223bと接続部223cとのそれぞれが、熱源として昇温する。従って、通電時には、セラミックヒータ40のうちの発熱部223で囲まれた領域、すなわち、2つのライン部223a、223bで挟まれた領域の温度が、最も高くなる。第1輪郭C1L上では、第1内側部IP1の温度が、第1外側部OP1の温度よりも高くなる。第2輪郭C2L上では、第2内側部IP2の温度が、第2外側部OP2の温度よりも高くなる。
【0077】
図10の下部の拡大図には、第1ライン部223aのバリB11v、B12vと、第2ライン部223bのバリB21v、B22vとが示されている。これらのバリB11v、B12v、B21v、B22vは、図7(C)で説明したバリB11、B12、B21、B22に、それぞれ対応している。図示するように、これらのバリB11v、B12v、B21v、B22vは、内側部IP1、IP2ではなく、外側部OP1、OP2に形成されている。
【0078】
基体210と抵抗体220との間では、材料が異なるので、熱膨張率に差が生じ得る。熱膨張率に差がある場合、通電時と非通電時との間の温度差に起因して、基体210と抵抗体220との境界部分に、応力が生じ得る。このような応力がバリの近傍で生じる場合には、クラックが、生じ易い。内側部IP1、IP2では、外側部OP1、OP2と比べて、通電時の温度が高い、すなわち、通電時と非通電時との間の温度差が大きい。従って、内側部IP1、IP2では、外側部OP1、OP2と比べて、基体210と抵抗体220との間の熱膨張率の差に起因する応力が、高い。
【0079】
仮に、バリが、内側部IP1、IP2に形成されたと仮定する。この場合、バリの近傍で生じる応力が強いので、バリの近傍において、クラックが生じる可能性が高い。一方、本実施例では、内側部IP1、IP2には、バリが形成されずに、外側部OP1、OP2に、バリB11v、B12v、B21v、B22vが形成されている。従って、バリの近傍で生じる応力が弱いので、バリの近傍において、クラックが生じる可能性を低減できる。
【0080】
また、第1外側部OP1には、2つのバリB11v、B12vが形成されている。このように、1つの抵抗体断面C1には、基体210に向かって突出する2つのバリB11v、B12vが形成されている。従って、バリ(すなわち、突出部)の総数が1以下である場合と比べて、第1抵抗体断面C1と基体210との間の接触面積を増大できる。また、バリの総数が1以下である場合と比べて、基体210に対して第1抵抗体断面C1が移動することを抑制できる。以上により、第1抵抗体断面C1(すなわち、抵抗体220)と基体210との間の密着性を向上できる。従って、抵抗体220と基体210との境界にクラックが生じる可能性を低減できる。このような密着性の向上は、焼成前の状態においても、実現される。同様に、1つの第2抵抗体断面C2には、基体210に向かって突出する2つのバリB21v、B22vが形成されている。従って、第2抵抗体断面C2(すなわち、抵抗体220)と基体210との間の密着性を向上できる。
【0081】
また、図10の下部の拡大図には、第1外側部OP1を、同じ長さの2つの部分である2つの等長部OP1a、OP1bに2等分する第5位置P5が示されている。本実施例では、第5位置P5は、+D3側の端の位置である。+D2側の等長部OP1aには、1つのバリB11vが形成されており、−D2側の等長部OP1bには、1つのバリB12vが形成されている。このように、各等長部OP1a、OP1bのそれぞれに少なくとも1つのバリが設けられている。従って、1つの等長部にバリが設けられ、かつ、他の等長部にはバリが設けられていない場合と比べて、複数のバリが分散して配置されるので、抵抗体220と基体210との間の密着性を向上できる。
【0082】
同様に、図中には、第2外側部OP2を、同じ長さの2つの部分である2つの等長部OP2a、OP2bに2等分する第6位置P6が示されている。本実施例では、第6位置P6は、−D3側の端の位置である。+D2側の等長部OP2aには、1つのバリB21vが形成されており、−D2側の等長部OP2bには、1つのバリB22vが形成されている。このように、各等長部OP2a、OP2bのそれぞれに少なくとも1つのバリが設けられている。従って、抵抗体220と基体210との間の密着性を向上できる。
【0083】
また、内側部IP1、IP2にバリの無いセラミックヒータ40は、図3の製造方法を用いることによって、容易に製造できる。図3の製造方法では、まず、第1成形体110が成形される(S202)。第1成形体110は、基体210のうちの、第1内側部IP1(図10)に接触すべき部分(すなわち、第1溝111(図4))と、第2内側部IP2に接触すべき部分(すなわち、第2溝112)と、を含む部分である。第1溝111は、1つの成形型911(具体的には、突出部911a)によって成形される。従って、成形型911(突出部911a)の表面を滑らかにすることによって、第1溝111の表面に凹凸(例えば、バリ)が形成されることを抑制できる。同様に、第2溝112は、1つの第2型912(具体的には、突出部912a)によって成形される。従って、成形型912(突出部912a)の表面を滑らかにすることによって、第2溝112の表面に凹凸が形成されることを抑制できる。
【0084】
次に、第1成形体110上に、抵抗体220に対応する部分が成形される(S204)。上述のように、第1成形体110の表面のうちの内側部IP1、IP2と接触すべき部分(ここでは、溝111、112)には、凹凸が形成されていないので、内側部IP1、IP2に突出部が形成されることを抑制できる。
【0085】
なお、第1成形体110は、基体210の外表面の一部を形成する(具体的には、図3(B)、図8(D)の外表面130s1、130s2に対応する外表面)。そして、図7(C)で説明したように、第1成形体110に対する抵抗体220に対応する部分121、122、123の配置は、この外表面130s1、130s2を基準として、精度よく定められる。すなわち、基体210の外表面(すなわち、セラミックヒータ40の外表面)に対する抵抗体220の配置の精度を向上できる。この結果、配置のズレに起因するクラックを抑制できる。
【0086】
B.変形例:
(1)基体210(図10)と抵抗体220との間の密着性を向上するという観点からは、第1外側部OP1に設けられる突出部の総数が多いことが好ましい。例えば、突出部の総数が「3」以上であってもよい。ここで、第1等長部OP1aの突出部の総数が1以上であり、かつ、第2等長部OP1bの突出部の総数が1以上であることが好ましい。ただし、第1等長部OP1aの突出部の総数と、第2等長部OP1bの突出部の総数と、の少なくとも一方がゼロであってもよい。以上の説明は、第2外側部OP2の突出部についても、同様に適用可能である。
【0087】
外側部OP1、OP2に3個以上の突出部を形成する方法としては、例えば、以下の方法を採用可能である。すなわち、図7に示す第2成形体120を成形する2つの成形型を、一方の成形型が第2成形体120の+D2側の半分を成形し、他方の成形型が第2成形体120の−D2側の半分を成形するように、構成する。第1成形体110を収容した状態で2つの成形型を型締めすることによって形成される空洞の形状は、図7(B)で説明した空洞920zの形状と、同じである。ただし、2つの成形型の合わせ目は、第1前部921z(図7(B))の+D3側と、第2前部922zの−D3側とに、配置される。従って、第1抵抗体前部121a(図7(D))には、2つのバリB11、B12に加えて、+D3側の表面上に3つ目のバリが形成される。同様に、第2抵抗体前部122aには、2つのバリB21、B22に加えて、−D3側の表面上に3つ目のバリが形成される。
【0088】
なお、第1外側部OP1と第2外側部OP2とのいずれかにおける突出部の総数が、「1」または「ゼロ」であってもよい。いずれの場合も、第1外側部OP1と第2外側部OP2との少なくとも一方の突出部の総数が「2」以上であれば、第1外側部OP1の突出部の総数と、第2外側部OP2の突出部の総数と、の両方が1以下である場合と比べて、基体210と抵抗体220との間の密着性を向上できる。
【0089】
(2)抵抗体断面C1、C2(図10)に形成される突出部としては、バリ(すなわち、複数の成形型が合う位置(「パーティングライン」とも呼ばれる)、または、成形体と成形型とが合う位置、に形成される突出部)に限らず、成形型に設けられた凹部によって意図的に形成される突出部を採用してもよい。
【0090】
(3)第1抵抗体断面C1(図10)の形状としては、楕円形状に限らず、任意の形状を採用可能である。例えば、円形状、矩形状、U字形状を採用してもよい。第2抵抗体断面C2の形状としても、同様に、種々の形状を採用可能である。
【0091】
いずれの場合も、セラミックヒータの断面(軸線方向と直交する断面)においては、第1抵抗体断面C1と第2抵抗体断面C2とに挟まれた領域の温度が、他の領域と比べて、高くなりやすい。従って、第1輪郭C1Lのうちの温度が比較的高くなる部分は、第1抵抗体断面C1の形状と第2抵抗体断面C2の形状とに関わらず、第1輪郭C1Lと第2輪郭C2Lとに接する接線のうち、抵抗体断面C1と第2抵抗体断面C2との間を通る2本の接線によって、特定可能である(このような2本の接線は、第1抵抗体断面C1と第2抵抗体断面C2との間で交差する)。図10の例では、第1内側部IP1が、2本の接線L1、L2によって特定されている。第2輪郭C2Lのうちの温度が比較的高くなる部分についても、同様である。ここで、輪郭に接する接線としては、その輪郭と交差せずにその輪郭と接する直線を採用可能である。
【0092】
ここで、第1抵抗体断面の形状と第2抵抗体断面の形状とに拘わらず、そして、2本の接線によって特定される第1外側部(図10の例では、第1外側部OP1)における突出部の数と、第2外側部(図10の例では、第2外側部OP2)における突出部の数と、に拘わらずに、以下の構成を採用することが好ましい。すなわち、第1抵抗体断面が、第1輪郭における第1内側部(図10の例では、第1内側部IP1)には、突出部を有さずに、かつ、第2抵抗体断面が、第2輪郭における第2内側部(図10の例では、第2内側部IP2)には、突出部を有さないことが、好ましい。この構成によれば、第1輪郭と第2輪郭とのうちの温度が比較的高くなる部分(図10の例では、内側部IP1、IP2)に突出部が設けられないので、セラミックヒータのクラックの可能性を低減できる。
【0093】
(4)第1成形体110の断面形状(具体的には、軸線方向と直交する断面の形状)としては、図4で説明した形状に限らず、種々の形状を採用可能である。例えば、第1溝111の断面形状が、複数の直線分によって規定されていてもよい。例えば、第1溝111の断面形状が、V字形状であってもよい。また、第1成形体110の+D3側の表面の全体が、曲線によって規定されていてもよい。−D3側の表面についても、同様である。
【0094】
また、基体210の外表面(すなわち、セラミックヒータ40の外表面)のうちの第1成形体110によって形成される部分としては、中心軸CLを挟んで互いに反対側に配置された2つの部分130s1、130s2に限らず、任意の部分を採用可能である。例えば、第1成形体110は、第1外表面130s1を形成する部分を含み、第2外表面130s2を形成する部分が省略されてもよい。また、第1成形体110から、外表面を形成する部分の全てが省略されてもよい。ただし、基体210に対する抵抗体220の配置の精度を向上するためには、第1成形体110が、外表面の少なくとも一部を形成し、第1成形体110によって形成される外表面に接触する成形型を用いて、第1成形体110上に、抵抗体220に対応する部分121、122、123を成形することが好ましい。
【0095】
(5)上述の実施例、変形例では、図10で説明したように、セラミックヒータ40のうちの通電時の最高温度部分の断面における構成について説明したが、上述の種々の断面構成は、通電時の最高温度部分とは異なる部分で実現されていてもよい。セラミックヒータの抵抗体が、基体の先端部から後端部に向かって延びる第1部(図1の例では、第1部220a)と、第1部から離れて基体の先端部から後端部に向かって延びる第2部(図1の例では、第2部220b)と、を含む場合、通電時の最高温度部分とは異なる部分の断面においても、第1部と第2部とに挟まれた領域の温度が、他の領域よりも、高くなりやすい。従って、通電時の最高温度部分の断面に限らず、セラミックヒータの軸線方向と直交する断面の少なくとも1つで、上述の種々の断面構成の少なくとも一部が実現されていることが好ましい。この構成によれば、セラミックヒータのクラックの可能性を低減できる。
【0096】
(6)上述の実施例、変形例において、セラミックヒータの軸線方向と直交する断面における、突出部(例えば、図10のバリB11v)の高さは、10μm以上、かつ、100μm以下であることが好ましい。突出部の高さが10μm未満である場合、基体210と抵抗体220との間の密着性の向上の効果が、小さくなり得る。また、突出部の高さが100μmを超える場合、セラミックヒータが大型化し得る。
【0097】
同様に、セラミックヒータの軸線方向と直交する断面における、突出部(例えば、図10のバリB11v)の最大幅は、10μm以上、かつ、100μm以下であることが好ましい。突出部の最大幅が10μm未満である場合、突出部が破損し易くなり得る。また、突出部の最大幅が100μmを超える場合、セラミックヒータが大型化し得る。
【0098】
(7)セラミックヒータの製造方法としては、図4図9で説明した方法に限らず、種々の方法を採用可能である。例えば、第1成形体110を、複数回の成形によって一部分ずつ、成形してもよい。この場合、複数回の成形の全体が、第1成形体110を成形する工程に対応する。
【0099】
第2成形体120、具体的には、抵抗体220に対応する部分(具体的には、図6の抵抗体部121、122、123)を、複数回の成形によって一部分ずつ、成形してもよい。この場合、複数回の成形の全体が、抵抗体220に対応する部分を成形する工程に対応する。
【0100】
第3成形体130、具体的には、基体210に対応する部分のうちの第1成形体110を除いた残りの部分を、複数回の成形によって一部分ずつ、成形してもよい。この場合、複数回の成形の全体が、基体210に対応する部分のうちの第1成形体110以外の部分(すなわち、残余部)を成形する工程に対応する。
【0101】
(8)セラミックヒータの構成としては、図1で説明した構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、第2部220bの形状が、第1部220aの形状と、異なっていてもよい。この場合、第2抵抗体断面C2の形状が、第1抵抗体断面C1の形状と、異なっていてもよい。また、セラミックヒータ40には、抵抗体220に電気的に接続された種々の電極が固定されてもよい。電極の構成としては、円筒状の接続部材90に限らず、棒状の導電部材や、板状の導電部材等の種々の構成を採用可能である。いずれの場合も、セラミックヒータ40に電極を固定(例えば、ロウ付けや溶接や圧入)することによって、セラミックヒータ40と電極とを備えるヒータモジュールを製造可能である。
【0102】
(9)グロープラグ10の構成としては、図1に示す構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、中軸30に端子部材80を固定する方法としては、加締めとは異なる種々の方法を採用可能である。例えば、後端部39に雄ねじを形成し、端子部材80に雌ねじを形成して、端子部材80を後端部39にねじ込む構成を採用してもよい。また、セラミックヒータ40を主体金具20に固定する方法としては、外筒70を介在させる方法に限らず、セラミックヒータ40を貫通孔20xに圧入する方法等の種々の方法を採用可能である。また、セラミックヒータ40の全体が、主体金具20の貫通孔20x内に配置されてもよい。
【0103】
(10)上記実施例、変形例に係るグロープラグは、内燃機関の始動補助のために利用されるグロープラグに限らず、種々のグロープラグに適用可能である。例えば、排気ガスを昇温するための排気ガスヒータ装置や、触媒やディーゼル粒子フィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)を再活性化するためのバーナーシステムや、冷却水を昇温するためのウォータヒータ装置等の種々の装置に利用されるグロープラグに、上記実施例のグロープラグを適用可能である。
【0104】
また、セラミックヒータは、グロープラグに限らず、種々の装置に適用可能である。例えば、半田ごてにセラミックヒータを適用可能である。
【0105】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0106】
10...グロープラグ、20...主体金具、20x...貫通孔、22...雄ネジ部、28...工具係合部、30...中軸、31...先端部、39...後端部、40...セラミックヒータ、41...先端部、49...後端部、50...Oリング、60...絶縁部材、62...筒状部、68...フランジ部、70...金属外筒、70x...貫通孔、80...端子部材、90...接続部材、110...第1成形体(中部分)、111...第1溝、111a...第1溝前部(前溝部)、111b...第1溝後部(後溝部)、112...第2溝、112a...第2溝前部、112b...第2溝後部、113...先端溝、120...第2成形体、121...第1抵抗体部、121a...第1抵抗体前部(前抵抗体部)、121b...第1抵抗体後部(後抵抗体部)、122...第2抵抗体部、122a...第2抵抗体前部、122b...第2抵抗体後部、123...先端抵抗体部、130...第3成形体(ヒータ成形体)、130s1...第1外表面、130s2...第2外表面、131...第1外部分、132...第2外部分、133...先端部、210...基体、220...抵抗体、220a...第1部、220b...第2部、221...第1リード部、222...第2リード部、223...発熱部、223a...第1ライン部、223b...第2ライン部、223c...接続部、281...第1電極取出部、282...第2電極取出部、490...ヒータモジュール、910z...空洞、911...成形型(第1型)、911a...突出部、911g...凹部、912...成形型(第2型)、912a...突出部、912g...凹部、920z...空洞、921...成形型(第1型)、921g...凹部、921s...表面、921z...第1前部、921gx...凹部、922...第2型、922g...凹部、922z...第2前部、922gx...凹部、930z...空洞、931...成形型(第1型)、931g...凹部、931z...第1前部、932...第2型、932g...凹部、932z...第2前部、B11、B12、B21、B22...バリ(突出部)、B11v、B12v、B21v、B22v...バリ(突出部)、OP1a...第1等長部、OP1b...第2等長部、OP2a、OP2b...等長部、D1...第1方向、C1...第1抵抗体断面、L1...第1直線、P1...第1位置、C2...第2抵抗体断面、L2...第2直線、P2...第2位置、P3...第3位置、P4...第4位置、P5...第5位置、P6...第6位置、CL...中心軸(軸線)、C1L...第1輪郭、C2L...第2輪郭、OPa...開口、IP1...第1内側部、OP1...第1外側部、OPb...開口、IP2...第2内側部、OP2...第2外側部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10