(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795041
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】透明な導電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20150928BHJP
C01B 31/02 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
H01B13/00 503B
!C01B31/02 101F
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-214539(P2013-214539)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-112530(P2014-112530A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2013年10月15日
(31)【優先権主張番号】201210493750.8
(32)【優先日】2012年11月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】姜 開利
(72)【発明者】
【氏名】李 群慶
(72)【発明者】
【氏名】魏 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【審査官】
月野 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−116317(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/041170(WO,A1)
【文献】
特開平05−250920(JP,A)
【文献】
特開2007−314417(JP,A)
【文献】
特開2010−116316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
C01B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブフィルムを提供する第一ステップであって、前記カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブワイヤと複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブワイヤは間隔をあけて並列に設置され、前記複数のカーボンナノチューブは隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤを連接している第一ステップと、
熱可塑性重合体基板の表面に、前記カーボンナノチューブフィルムを設置する第二ステップと、
前記カーボンナノチューブフィルムが設置された前記熱可塑性重合体基板を加熱された二つの金属ローラに通過させ、熱可塑性重合体基板を加熱して軟化させ、前記カーボンナノチューブフィルムの一部を、軟化した前記熱可塑性重合体基板の中に浸漬させる第三ステップと、
前記カーボンナノチューブワイヤと垂直する方向に沿って、熱可塑性重合体基板及びカーボンナノチューブフィルムを引っ張る第四ステップと、
軟化された熱可塑性重合体基板を硬化し、前記カーボンナノチューブフィルムが引っ張られた後の状態を保持させる第五ステップと、
を含むことを特徴とする透明な導電素子の製造方法。
【請求項2】
カーボンナノチューブフィルムを提供する第一ステップであって、前記カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブワイヤと複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブワイヤは間隔をあけて並列に設置され、前記複数のカーボンナノチューブは隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤを連接している第一ステップと、
二つの軟化された熱硬化性重合体基板の間に、前記カーボンナノチューブフィルムを設置する第二ステップと、
前記カーボンナノチューブワイヤと垂直する方向に沿って、熱硬化性重合体基板及びカーボンナノチューブフィルムを引っ張る第四ステップと、
軟化された熱硬化性重合体基板を硬化し、前記カーボンナノチューブフィルムが引っ張られた後の状態を保持させる第五ステップと、
を含むことを特徴とする透明な導電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な導電素子の製造方法に関し、特にカーボンナノチューブを利用した透明な導電素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは九十年代に発見された新しい一次元ナノ材料である。カーボンナノチューブは、高引張強さ、高熱安定性、理想的な一次元構造、優れた力学特性、電気特性、熱学特性などの特徴を有するので、カーボンナノチューブの応用についての研究が進められており、カーボンナノチューブは、材料科学、化学、物理などの科学領域に広く応用されている。
【0003】
非特許文献1には、透明なカーボンナノチューブフィルムの製造方法が掲載されている。非特許文献1において、基板に成長させたカーボンナノチューブアレイを引き出して、カーボンナノチューブフィルムを形成する。しかし、カーボンナノチューブフィルムの光透過率は低い。
【0004】
上記のカーボンナノチューブフィルムの光透過率が低いという問題を解決するために、特許文献1には、透明なカーボンナノチューブフィルムの製造方法が掲載されている。該透明なカーボンナノチューブフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。第一ステップにおいて、カーボンナノチューブアレイを引き出して、カーボンナノチューブフィルムを形成する。このカーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブフィルムの表面と基本的に平行する複数のカーボンナノチューブを含む。第二ステップにおいて、レーザによってカーボンナノチューブフィルムを照射し、カーボンナノチューブフィルムにおける一部のカーボンナノチューブを酸化させて薄くし、カーボンナノチューブフィルムの光透過率を高める。特許文献1に開示された製造方法によって形成された透明なカーボンナノチューブフィルムは、透明電極、薄膜トランジスタ(TFT)、タッチパネルなどに応用できる。透明なカーボンナノチューブフィルムを使用する際は、ガラス基板或いは樹脂基板の表面に設置する。
【0005】
しかし、特許文献1開示された、レーザでカーボンナノチューブフィルムを照射することによって、カーボンナノチューブフィルムの光透過率を高めた透明なカーボンナノチューブフィルムの製造方法の効率は低く、且つコストも高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中華人民共和国101585533B号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ray H.Baughman、“Carbon Nanotube−the Route to Applications”、Science、2002年、297,787
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、前記課題を解決するために、本発明は製造効率が高く、コストも低い透明な導電素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の透明な導電素子の製造方法は、カーボンナノチューブフィルムを提供する第一ステップであって、前記カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブワイヤと複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブワイヤは間隔をあけて並列に設置され、前記複数のカーボンナノチューブは隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ間を連接している第一ステップと、熱可塑性重合体基板の表面に、前記カーボンナノチューブフィルムを設置する第二ステップと、熱可塑性重合体基板を加熱して軟化させる第三ステップと、前記カーボンナノチューブワイヤと垂直する方向に沿って、熱可塑性重合体基板及びカーボンナノチューブフィルムを引っ張る第四ステップと、軟化された熱可塑性重合体基板を硬化し、前記カーボンナノチューブフィルムが引っ張られた後の状態を保持させる第五ステップと、を含む。
【0010】
本発明の本発明の導電素子の製造方法は、カーボンナノチューブフィルムを提供する第一ステップであって、前記カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブワイヤと複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブワイヤは間隔をあけて並列に設置され、前記複数のカーボンナノチューブは隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ間を連接している第一ステップと、二つの軟化された熱硬化性重合体基板の間に、前記カーボンナノチューブフィルムを設置する第二ステップと、前記カーボンナノチューブワイヤと垂直する方向に沿って、熱硬化性重合体基板及びカーボンナノチューブフィルムを引っ張る第四ステップと、軟化された熱硬化性重合体基板を硬化し、カーボンナノチューブフィルムが引っ張られた後の状態を保持させる第五ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
従来の技術と比べて、本発明の透明な導電素子の製造方法は、以下の優れた点がある。第一に、重合体基板及びカーボンナノチューブフィルムを引っ張ることによって、カーボンナノチューブフィルムの面積を増大させ、且つカーボンナノチューブフィルムの光透過率を向上させる。第二に、重合体基板及びカーボンナノチューブフィルムを引っ張って、透明な導電素子を製造する方法は容易であり、且つコストも低い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1における透明な導電素子の製造方法の工程図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブフィルムの局部の拡大図である。
【
図3】本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4】本発明の実施例2における透明な導電素子の製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。また、以下の各実施例において、同じ部材は同じ符号で標示する。
【0014】
(実施例1)
図1を参照し、本実施例1は透明な導電素子10の製造方法を提供する。透明な導電素子10の製造方法は、カーボンナノチューブフィルム100を提供するステップ(S10)と、熱可塑性重合体基板106の表面に、カーボンナノチューブフィルム100を設置するステップ(S20)と、熱可塑性重合体基板106を加熱して軟化させるステップ(S30)と、熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張るステップ(S40)と、軟化された熱可塑性重合体基板106を硬化して、透明な導電素子10を形成するステップ(S50)と、含む。
【0015】
ステップ(S10)において、カーボンナノチューブフィルム100を形成する方法は、カーボンナノチューブアレイを提供するステップ(S11)と、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを引き出すステップ(S12)と、を含む。
【0016】
ステップ(S11)において、化学気相蒸着法(CVD)、アーク放電法或いはレーザ蒸着法によって、カーボンナノチューブアレイを成長させる。本実施例において、前記カーボンナノチューブアレイは、シリコン基板の表面に化学気相蒸着法により成長させた超配列カーボンナノチューブアレイである。
【0017】
ステップ(S12)において、前記カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを引き出す工程において、まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。本実施形態においては、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度でカーボンナノチューブアレイと基本的に垂直する方向に沿って、複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルム100を形成する。
【0018】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、複数のカーボンナノチューブがそれぞれシリコン基板から脱離すると、複数のカーボンナノチューブセグメントは分子間力によって端と端とが接合され、連続のカーボンナノチューブフィルム100が形成される。単一のカーボンナノチューブセグメントは、長さが同じ複数のカーボンナノチューブを含む。該複数のカーボンナノチューブは、相互に平行に並列し、分子間力によって接合されるように配列されている。カーボンナノチューブフィルム100は複数のカーボンナノチューブセグメントを含む。前記カーボンナノチューブフィルム100のカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブフィルム100を引き出す方向に平行に並列されている。カーボンナノチューブフィルム100の幅はシリコン基板の幅に関係する。また、カーボンナノチューブフィルム100の長さはシリコン基板の寸法に限定されず、必要な長さに応じて製造することができる。カーボンナノチューブフィルム100の厚さは選択されたカーボンナノチューブセグメントに関係し、その厚さは0.5nm〜100μmである。本実施例において、カーボンナノチューブフィルム100の厚さは50nmである。
【0019】
図2、
図3を参照すると、上記工程によって形成されたカーボンナノチューブフィルム100は、間隔をあけて並列に設置される複数のカーボンナノチューブワイヤ102と、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102の間におけるこれらに連接する複数のカーボンナノチューブ104と、からなるものであると理解することができる。複数のカーボンナノチューブワイヤ102の延伸方向は、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向と同じである。カーボンナノチューブワイヤ102は複数のカーボンナノチューブが端と端とで接合されて形成される。カーボンナノチューブワイヤ102におけるカーボンナノチューブは、基本的にはカーボンナノチューブワイヤ102の軸方向に沿って延伸し、且つ分子間力によって緊密に接合されるように配列されている。複数のカーボンナノチューブワイヤ102の一部の間も、分子間力によって緊密に接合されている。複数のカーボンナノチューブワイヤ102はD1方向に沿って配列され、且つカーボンナノチューブフィルム100に均一に分布する。
【0020】
複数のカーボンナノチューブワイヤ102の隣接する二つの間における複数のカーボンナノチューブ104は、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102に連接する。即ち、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102の間には、複数のカーボンナノチューブ104が存在し、且つカーボンナノチューブ104は少なくとも隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102と接触する。具体的に、一つのカーボンナノチューブ104が隣接するそれぞれ二つのカーボンナノチューブワイヤ102と接触する場合、該一つのカーボンナノチューブ104の一部(例えば一端)は、一つのカーボンナノチューブワイヤ102に接触し、もう一部(例えば他端)は、他のカーボンナノチューブワイヤ102に接触する。一つのカーボンナノチューブ104が隣接するそれぞれ三つのカーボンナノチューブワイヤ102と接触する場合、該一つのカーボンナノチューブ104の一部(例えば一端)は、一つのカーボンナノチューブワイヤ102に接触し、もう一部(例えば中間部)は、もう一つのカーボンナノチューブワイヤ102に接触し、また一部(例えば他端)は、他のカーボンナノチューブワイヤ102に接触する。また、カーボンナノチューブワイヤ102の間には、端と端とが接合された複数のカーボンナノチューブ104を有することもできる。複数のカーボンナノチューブ104の延伸方向は複数のカーボンナノチューブワイヤ102の延伸方向と角度αを成す。該角度αは0°〜90°である(0°は含まず)。複数のカーボンナノチューブ104と複数のカーボンナノチューブワイヤ102とを相互に連接することによって、カーボンナノチューブフィルム100におけるカーボンナノチューブを導電ネットに形成させる。
【0021】
カーボンナノチューブフィルム100は自立構造体である。ここで、自立構造体とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブフィルム100がそれ自身で特定の形状を保持することができることを意味する。従って、カーボンナノチューブフィルム100は、その一部分を支持体に設置させることによって、カーボンナノチューブフィルム100自身のフィルム構造を維持することができるため、カーボンナノチューブフィルム100の形状は変化しない。例えば、カーボンナノチューブフィルム100はフレームに設置されるか、或いは間隔があけられた二つの支持構造体に設置され、フレーム及び支持構造体と接触しないカーボンナノチューブフィルム100の中間部分は懸架して設置することができる。
【0022】
カーボンナノチューブフィルム100の長さ、幅及び厚さは制限されず、必要に応じて選択できる。好ましくは、カーボンナノチューブフィルム100の厚さは0.5nm〜1mmであり、カーボンナノチューブフィルム100の長さは50μm〜5mmであり、カーボンナノチューブフィルム100におけるカーボンナノチューブの直径は0.5nm〜50nmである。
【0023】
カーボンナノチューブフィルム100は、カーボンナノチューブワイヤ102の配列方向と垂直する方向に力を受けると変形する。すなわち、カーボンナノチューブフィルム100は、カーボンナノチューブワイヤ102の配列方向と垂直する方向に、所定の力を受けると変形するが、破壊されないことを意味している。該カーボンナノチューブワイヤ102と垂直する方向はD2方向である。D2方向はD1方向と垂直する。D2方向にカーボンナノチューブフィルム100を引っ張ると、カーボンナノチューブフィルム100は変形し、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102間の距離は変化する。カーボンナノチューブフィルム100を引っ張る前では、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102が分離されているものと、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102が分離されていないものとを含むので、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102間の距離は0μm〜10μmである。D2方向にカーボンナノチューブフィルム100が引っ張ると、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102が分離されているものと、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102が分離されていないものとを含み、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102間の距離は0μm〜50μmとなる。具体的には、カーボンナノチューブフィルム100の変形率の増加に伴い、複数のカーボンナノチューブワイヤ102間の距離は増大する。同時に、複数のカーボンナノチューブ104の延伸方向と複数のカーボンナノチューブワイヤ102の延伸方向とが成す角度αは大きくなる。該角度αの最大値は90°である。カーボンナノチューブフィルム100のD2方向における変形率が非常に大きい場合、カーボンナノチューブフィルム100の一体性は破壊される。即ち、カーボンナノチューブフィルム100におけるカーボンナノチューブは一体の導電ネットを形成できず、複数の分散された導電性パスを形成する。従って、好ましくは、カーボンナノチューブフィルム100のD2方向での変形率は300%以下である。カーボンナノチューブフィルム100のD2方向での変形率が300%以下であるとは、カーボンナノチューブフィルム100にD2方向で所定の力を与えて引っ張り、D2方向でのカーボンナノチューブフィルム100の幅が、引っ張る前のカーボンナノチューブフィルム100のD2方向の幅の3倍以下を保証すると、カーボンナノチューブフィルム100が、一体性を有して、破壊されないことを意味している。
【0024】
カーボンナノチューブフィルム100のD2方向での変形率は、カーボンナノチューブフィルム100の厚さ及び密度に関係する。カーボンナノチューブフィルム100の厚さ及び密度が大きいほど、カーボンナノチューブフィルム100のD2方向における変形率は大きい。更に、カーボンナノチューブフィルム100の変形率は、カーボンナノチューブワイヤ102間に存在するカーボンナノチューブ104の含有量に関係する。特定の範囲内において、カーボンナノチューブワイヤ102間に存在するカーボンナノチューブ104の含有量が多いほど、カーボンナノチューブフィルム100のD2方向における変形率は大きくなる。但し、カーボンナノチューブフィルム100のD2方向における変形率は300%以下である。本実施例において、カーボンナノチューブフィルム100の厚さは50nmであり、カーボンナノチューブフィルム100のD2方向での変形率は150%である。
【0025】
カーボンナノチューブフィルム100の光透過率はカーボンナノチューブフィルム100の厚さ及び密度に関係する。カーボンナノチューブフィルム100の厚さ及び密度が大きいほど、カーボンナノチューブフィルム100の光透過率は低くなる。更に、カーボンナノチューブフィルム100の光透過率は、カーボンナノチューブワイヤ102間の距離及びカーボンナノチューブワイヤ102間に存在するカーボンナノチューブ104の含有量に関係する。カーボンナノチューブワイヤ102間の距離が大きく、カーボンナノチューブワイヤ102間に存在するカーボンナノチューブ104の含有量が小さいほど、カーボンナノチューブフィルム100の光透過率は高くなる。光透過率に影響を与える要因(カーボンナノチューブフィルム100の厚さ及び密度、カーボンナノチューブワイヤ102間の距離、及びカーボンナノチューブワイヤ102間に存在するカーボンナノチューブ104の含有量など、又は他の要素)によって、カーボンナノチューブフィルム100の光透過率は60%〜92%となる。ここでのカーボンナノチューブフィルム100の光透過率の範囲は、カーボンナノチューブフィルム100を引っ張る前の光透過率、及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張った後の光透過率を含む。本実施例において、厚さが50nmである引っ張る前のカーボンナノチューブフィルム100の光透過率は67%〜82%である。引っ張って変形率を120%としたカーボンナノチューブフィルム100の光透過率は84%〜92%である。例えば、波長が550nmの緑光をカーボンナノチューブフィルム100に照射すると、引っ張る前のカーボンナノチューブフィルム100の光透過率は78%である。引っ張って変形率を120%としたカーボンナノチューブフィルム100の光透過率は89%である。
【0026】
ステップ(S20)において、カーボンナノチューブフィルム100を熱可塑性重合体基板106の表面に直接に貼付して設置する。また、複数のカーボンナノチューブフィルム100を熱可塑性重合体基板106の同一表面に積層して設置することができる。この時、複数のカーボンナノチューブフィルム100におけるカーボンナノチューブワイヤ102は同じ方向に沿って延伸する。もう一つの例として、複数のカーボンナノチューブフィルム100を熱可塑性重合体基板106の相対する二つの表面に積層して設置することができる。この時、複数のカーボンナノチューブフィルム100におけるカーボンナノチューブワイヤ102は同じ方向に沿って延伸する。更に、カーボンナノチューブフィルム100は積層する二つの熱可塑性重合体基板106の間に設置することもできる。
【0027】
熱可塑性重合体基板106は熱可塑性重合体薄膜である。熱可塑性重合体基板106の形状及び寸法は制限されない。熱可塑性重合体基板106の厚さは1μm〜2mmであるが好ましくは、100μm〜1mmである。熱可塑性重合体基板106の材料は、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、繊維素エステル、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)などのいずれか一種或いは多種である。本実施例において、熱可塑性重合体基板106は矩形のPET薄膜であり、その厚さは100μmである。
【0028】
ステップ(S30)において、熱可塑性重合体基板106を加熱して軟化させる装置は金属ダブルローラ、平板熱圧モールド成形機(a tablet compression molding machine)、熱圧機、平板加硫装置(a flat vulcanizing machine)、オーブンなどのいずれか一種である。ステップ(S30)を実施する目的は、熱可塑性重合体基板106に高弾力性をもたせるためである。
【0029】
本実施例において、金属ダブルローラによって、熱可塑性重合体基板106を加熱して軟化させる。該金属ダブルローラは二つの金属ローラ及び加熱装置を含む。前記二つの金属ローラは相反する方向に回転できる。前記加熱装置は二つの金属ローラの加熱に用いる。加熱された二つの金属ローラは、カーボンナノチューブフィルム100が設置された熱可塑性重合体基板106を徐々に通過する。その速度は1mm/分〜10m/分である。二つの金属ローラが加熱される温度は、熱可塑性重合体基板106が軟化される温度より高い。これにより、可塑性ポリマー基板106を軟化でき、カーボンナノチューブフィルム100と熱可塑性重合体基板106とを緊密に接触させ、且つカーボンナノチューブフィルム100と可塑性ポリマー基板106との間の空気を排除できる。金属ローラが加熱される温度は、可塑性ポリマー基板106の材料に関係する。つまり、熱可塑性重合体基板106の材料によって、金属ローラが加熱される温度は異なる。更に、前記金属ダブルローラは、カーボンナノチューブフィルム100及び熱可塑性重合体基板106に圧力を与える。従って、カーボンナノチューブフィルム100の一部は、軟化した熱可塑性重合体基板106の中に浸漬する。これにより、カーボンナノチューブフィルム100と熱可塑性重合体基板106とを更に緊密に接触させることができる。本実施例において、熱可塑性重合体基板106はPET薄膜であり、熱可塑性重合体基板106を軟化させる温度は150℃〜200℃である。
【0030】
前記ステップ(S30)は、真空の環境で行うことができる。これにより、カーボンナノチューブフィルム100と可塑性ポリマー基板106との間の空気を更に排除できる。
【0031】
ステップ(S40)において、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張る力が、D2方向に分力を有していれば、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張る方向は制限されない。好ましくは、D2方向に沿って、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張る。
【0032】
本実施例において、まず、二つの固定装置110を、カーボンナノチューブフィルム100のカーボンナノチューブワイヤ102の延伸方向に垂直する軟化された熱可塑性重合体基板106の両端に固定する。次に、D2方向に沿って、二つの固定装置110にそれぞれ相反する引張力を与える。二つの固定装置110を使用して、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張る際に、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100に対して均一の引張力を与える。これにより、カーボンナノチューブフィルム100を保護し、一体の導電ネットを形成することを保証する。
【0033】
軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張る力及び速度は、必要に応じて選択できる。軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張る速度がより速い場合、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100は破壊され易い。これにより、カーボンナノチューブフィルム100の一体性を破壊し、導電ネットを形成することができない。従って、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張る速度は20cm/秒より遅いことが好ましい。本実施例において、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張る速度は5cm/秒である。前記の速度によって、軟化された熱可塑性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張った後、カーボンナノチューブフィルム100におけるカーボンナノチューブワイヤ102及び複数のカーボンナノチューブ104は相互に連接されている。これにより、カーボンナノチューブフィルム100におけるカーボンナノチューブは導電ネットを形成する。
【0034】
カーボンナノチューブフィルム100は、軟化された熱可塑性重合体基板106上に固定されているため、軟化された熱可塑性重合体基板106が引っ張られることに伴い、カーボンナノチューブフィルム100も引っ張られる。D2方向に、カーボンナノチューブフィルム100が引っ張られると、カーボンナノチューブワイヤ102間の距離は増大し、これと同時に、カーボンナノチューブ104の延伸方向とカーボンナノチューブワイヤ102の延伸方向とが成す角度αも増大する。カーボンナノチューブフィルム100を引っ張る前の、並列して設置されたカーボンナノチューブワイヤ102間の距離は0〜10μmである。D2方向にカーボンナノチューブフィルム100が引っ張られると、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102が分離されているものと、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102が分離されていないものとを含むので、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤ102間の距離は0μm〜50μmとなる。即ち、カーボンナノチューブフィルム100を引っ張った後に、並列して設置されたカーボンナノチューブワイヤ102間の最大距離は50μmである。カーボンナノチューブフィルム100のD2方向における変形率は300%以下であり、カーボンナノチューブフィルム100が引っ張られた後でも、カーボンナノチューブフィルム100のフィルム状構造を保持することができる。本実施例において、カーボンナノチューブフィルム100は単層カーボンナノチューブフィルムであり、D2方向に沿って、カーボンナノチューブフィルム100を引っ張る。カーボンナノチューブフィルム100のD2方向における変形率は150%である。
【0035】
ステップ(S50)において、温度を下げることによって、軟化された熱可塑性重合体基板106を硬化する。本実施例においては、自然冷却法によって、軟化された熱可塑性重合体基板106を室温まで下げて硬化させる。これにより、カーボンナノチューブフィルム100が引っ張られた後の状態を保持する。
【0036】
(実施例2)
図4を参照すると、本実施例2は透明な導電素子10の製造方法を提供する。該透明な導電素子10の製造方法は、カーボンナノチューブフィルム100を提供するステップ(S10)と、二つの軟化された熱硬化性重合体基板106の間に、カーボンナノチューブフィルム100を設置するステップ(S20)と、熱硬化性重合体基板106及びカーボンナノチューブフィルム100を引っ張るステップ(S30)と、軟化された熱硬化性重合体基板106を硬化するステップ(S40)と、を含む。
【0037】
本実施例2の透明な導電素子10の製造方法は、本実施例1の透明な導電素子10の製造方法と基本的に同じであるが、異なる点は、重合体基板106は熱硬化性重合体基板であり、且つカーボンナノチューブフィルム100が二つの軟化された熱硬化性重合体基板106の間に設置されることである。
【0038】
熱硬化性重合体基板106の材料は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド(BMI) 樹脂、ポリスチレン樹脂、シアン酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和のポリ酸性樹脂(poly acid resin)などのいずれか一種或いは多種である。
【0039】
熱硬化性重合体基板106を加熱して硬化させる。熱硬化性重合体基板106を加熱して硬化させる温度は、熱硬化性重合体基板106の材料によって選択できる。
【0040】
本発明が提供する透明な導電素子の製造方法は以下の優れた点がある。第一に、重合体基板及びカーボンナノチューブフィルムを引っ張ることによって、カーボンナノチューブフィルムの面積を増大させ、且つカーボンナノチューブフィルムの光透過率を向上させる。第二に、重合体基板及びカーボンナノチューブフィルムを引っ張って、透明な導電素子を製造する方法は容易であり、且つコストも低い。
【符号の説明】
【0041】
10 透明な導電素子
100 カーボンナノチューブフィルム
102 カーボンナノチューブワイヤ
104 カーボンナノチューブ
106 重合体基板
110 固定装置