(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動装置、及び、その伝動装置がポリアルキル(メタ)アクリラートを有する潤滑剤を含む風力発電所(Windkraftanlage)、のための潤滑剤に関する。さらに、本発明は、ポリアルキル(メタ)アクリラート並びにその製造方法及び伝動装置における潤滑剤としてのその使用を記載する。
【0002】
減少する世界石油埋蔵及び増加しつつある大気二酸化炭素含有量に関する議論により、代替エネルギーに関する興味は増えている。特に、風力エネルギーの利用のための設備はますます重要になっている。
【0003】
この設備は、更なる要素の他に、特に、極度の負荷に曝露されている伝動装置を含む。そして、極度に高い、強力に変動するトルクだけが伝達されるだけでなく、それどころか、この設備は強力な温度変化にも曝されている。さらに、この設備ひいてはこの中に含まれる伝動装置は、少ないメンテナンス出費を有することが望ましく、というのは、そうでなければ、その経済性は極めて損なわれるか又は与えられないからである。
【0004】
この要求プロファイルに基づいて、風力発電所のための伝動装置は、設備構造及び車両構造中で使用される他の伝動装置とは極めて相違する。この相違は、特に、この伝動装置のために使用される潤滑剤においても現れる。
【0005】
自動車が通常は−走行性能に対して−比較的短いオイル交換間隔を有し、これは標準的には全ての作業場で実施できるのに対し、風力発電所のためのオイル交換はコスト、時間及び材料の高い消費と結びついており、というのも、オイルは床からゴンドラへと運搬されなくてならず、そして、古いオイルは反対方向でゴンドラを去らなくてはならないからである。さらに、このオイル量は多量であり、設備1個ごとに1500リットルまでである。オイル交換が電流獲得の中断を生じるという事態が発生する。この他に、伝動装置が停止しないことが保障されるべきであり、というのも、地面から遙かに上方のその交換は極めてコストがかかり、そして、しばしば長い待機時間又は時間のかかる補修の後に初めて代替品が提供されるからである。これら理由から、風力発電所のために好ましくは、その機能が長期間維持され、かつ、広い温度範囲にわたり使用可能である高性能伝動オイルが使用されることができる。さらに、伝動オイルにより引き起こされる性能損失は可能な限り少ないことが望ましい。
【0006】
他の産業伝動装置は、同様に、オイル交換それ自体あまり手間がかからないか又はこの負荷が通常風力発電所におけるよりもより均一である場合にすら、長期の寿命を有する伝動装置オイルにより利益を得ている。少ない停止時間及び伝動装置のためのより良好な保護、また同様に、多量の伝動装置オイルに起因するオイル交換のためのコストの利点は、風力以外の産業伝動適用においても、該当する。
【0007】
これらの理由から、通常は、風力発電所のための伝動装置の駆動のためには、特殊なポリアルファオレフィン(PAO)を基礎とする潤滑剤が使用される。この種の潤滑剤は、例えばWO 2007/145924 A1に説明されている。この潤滑剤は、普通は、異なる粘度の2つの基油を含む。
【0008】
既知の潤滑剤は、有用な特性プロファイルを有する。但し、改善された特性プロファイルを有する潤滑剤の提供は、永続的な課題である。
【0009】
先行技術を考慮して、本発明の課題は、改善された特性プロファイルを有する伝動装置のための潤滑剤を提供することである。
【0010】
例えば、潤滑剤は、改善されたシール相容性を、特にポリアルファオレフィンに比較して有することが望ましい。さらに、潤滑剤は、低温で改善された流動挙動を示すことが望ましい。さらに、潤滑剤は、潤滑剤の耐久性の減少と結びつくことなく、増加した粘度指数を有することが望ましい。
【0011】
特に、WO 2007/145924 A1に説明される潤滑剤は、比較的多量の高価かつ複雑に製造される、高粘度を有するPAOを含む。この記載の潤滑剤の第2の基本成分は、低粘度を有するPAOタイプであり、遙かに安価である。したがって、比較的高価な成分の量又は種類を、より安値の代替品によって置き換えるという、特別な課題が課せられる。
【0012】
さらに、伝動装置の摩耗及び疲労は、潤滑剤によって可能な限り最小限にされることが望ましい。この場合に、潤滑剤は、性能損失を可能な限り少なく維持することが望ましく、即ち、設備の効率を高めるべく、少ない摩擦係数を生じることが望ましい。
【0013】
さらに、潤滑剤は多くの添加剤と相容性であることが望ましく、その際、相容性改善のために、追加的な添加剤が可能な限り少なく必要であること、理想的には追加的な添加剤が必要ないこと、が望ましく、というのも、これらは更なるコストと結びついているからである。
【0014】
前述された課題並びに明示的には述べられていないが本願の導入部で議論された関連から容易に導くことができるか又は推論することができる更なる課題は、請求項1の全ての特徴を有する伝動装置のための潤滑剤によって解決される。本発明の潤滑剤の適切な変形は、請求項1を引用する従属請求項において保護される。ポリアルキル(メタ)アクリラート、その製造方法及びその使用及び風力発電所に関して、請求項9、20、28及び29は課題解決策を提示する。
【0015】
相応して、本発明の主題は、少なくとも30質量%のポリアルキル(メタ)アクリラートを有することを特徴とする、伝動装置のための潤滑剤である。
【0016】
さらに、本発明は、次のもの
a)式(I)の(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位0〜25質量%、
【化1】
[式中、Rは、水素又はメチルを表し、R
1は、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する]、
b)式(II)の(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位50〜100質量%、
【化2】
[式中、Rは、水素又はメチルを表し、R
2は、6〜15個の炭素原子を有するアルキル基を意味する]、及び
c)式(III)の(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位0〜50質量%、
【化3】
[式中、Rは、水素又はメチルを表し、R
3は、16〜40個の炭素原子を有するアルキル基を意味する]
を含み、3000〜25000g/molの範囲の質量平均分子量、及び、1.1〜2.5の範囲の多分散度を有し、かつ
式(II)の繰り返し単位が、鎖状及び分枝状の基の混合物であり、その際、式(II)の繰り返し単位の質量に対して、基R
2の5〜80%が分枝していることを特徴とする、潤滑剤において使用するためのポリアルキル(メタ)アクリラートを提供する。
【0017】
これによって、予期できないやり方で、改善された特性プロファイルを有する伝動装置のための潤滑剤の提供に成功する。
【0018】
例えば、潤滑剤は、特にポリアルファオレフィンに比較して、改善されたシール相容性を示す。さらに、潤滑剤は、低温で改善された流動挙動を有する。さらに、潤滑剤は、潤滑剤の耐久性の減少と結びつくことなく、増加した粘度指数を有する。特に、剪断安定性が優れており、その際、この潤滑剤の傑出したレオロジー特性を考慮すべきである。
【0019】
さらに、潤滑剤は、比較的安値に提供されることができる。この場合に、比較的安価な成分の量、特に低粘性基油の量を多く維持することができ、この場合に、更なる特性、特に剪断安定性、低温流動性又は粘度指数は、許容できないほど損なわれることはない。
【0020】
さらに、潤滑剤は、安値な基礎材料から工業的規模で製造でき、これによって、高価な設備における投資又は環境破壊と結びつくことはない。
【0021】
さらに、伝動装置の摩耗及び疲労は、潤滑剤によって極めて最小限にされることができる。通常、伝動装置の金属表面の、特にかみ合わせ部及び転がり軸受の欠陥の、2つの群が区別される:
1. 連続的な表面材料除去による摩耗(wear)又は両方の摩擦パートナーの表面溶接後の突然の材料除去によるスカッフィング(scuffing)、
2. 灰色の汚点(grey staining, surface fatigue, micro-pitting)又はピット(sub-surface fatigue, pitting)により可視可能である疲労(fatigue)。これら損傷は、表面の20〜40μm又は100〜500μm下で金属格子中の剪断応力により誘発される裂けに基づく、材料の剥離又は浮き上がりにより発生する。
【0022】
前述の損傷の種類は、かみ合わせ部及び転がり軸受について一般的に知られており、例えば、刊行物"Gears Wear and Damage to Gear Teeth"、ISO DIN 10825及び"Waelzlagerschaeden", Publ.-Nr. WL 82 102/2 DA (FAG社) (Schaeffler KG)、Schweinfurt 2004において詳細に記載されている。
【0023】
さらに、本発明の潤滑剤の少ない摩擦係数によって、伝動装置の性能損失は極めて少なく維持されることができる。
【0024】
さらに、潤滑剤は多くの添加剤と相容性であり、その際、相容性改善のためにはほとんど添加剤が必要とされないか又は全く必要とされない。
【0025】
意外なことに、前述の特性の達成のために特に好ましいポリアルキル(メタ)アクリラートは、極めて安値に製造でき、その際、この製造は好ましくは特殊な溶媒の使用なしに、比較的短時間のうちに行われることができる。
【0026】
本発明は、伝動装置のための潤滑剤を記載する。潤滑剤、特に潤滑油は、摩擦及び摩耗の減少のために、並びに、動力伝達、冷却、振動減衰、シール作用及び腐食保護のために用いられる。この場合に、通常、伝動油は、例えばエンジンの潤滑に用いられることができる他の潤滑油とは区別される。通常、この違いは特に、添加される助剤において現れており、その際、伝動装置油はエンジン油と比較して、数倍高い割合の摩耗保護助剤及び極圧助剤を有する。
【0027】
本発明の潤滑剤は、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも40質量%、特に好ましくは少なくとも45質量%のポリアルキル(メタ)アクリラートを含む。
【0028】
ポリアルキル(メタ)アクリラートは、アルキル(メタ)アクリラートの重合により得ることができるポリマーである。(メタ)アクリラートという表現は、メタクリラート及びアクリラート並びに両者からの混合物を包含する。これらのモノマーは、広く知られている。
【0029】
ポリアルキル(メタ)アクリラートは、アルキル(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位を、好ましくは少なくとも40質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%、とりわけ好ましくは少なくとも80質量%、特にとりわけ好ましくは少なくとも90質量%含む。
【0030】
特に、好ましくは3000〜25000g/mol、より好ましくは5000〜20000g/mol、特に好ましくは10000〜18000g/mol、特にとりわけ好ましくは13000〜15000g/molの範囲の質量平均分子量M
wを有するポリアルキル(メタ)アクリラートは、とりわけ重要である。
【0031】
数平均分子量M
nは、好ましくは2500〜20000g/mol、特に好ましくは5000〜17500g/mol、特にとりわけ好ましくは7000〜13000g/molの範囲にあることができる。
【0032】
さらに、適切には、その多分散度指数M
w/M
nが1.1〜2.5の範囲、特に好ましくは1.4〜1.9の範囲、特にとりわけ好ましくは1.5〜1.8の範囲にあるポリアルキル(メタ)アクリラートである。この数平均分子量及び質量平均分子量は、既知の方法、例えばゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、好ましくはPMMA標準の使用下で測定されることができる。
【0033】
好ましいポリアルキル(メタ)アクリラートは、次のものを含む:
a)式(I)の(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位0〜25質量%、特に20質量%まで、特に好ましくは15質量%まで、
【化4】
[式中、Rは、水素又はメチルを表し、R
1は、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する]、
b)式(II)の(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位50〜100質量%、特に少なくとも70質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、
【化5】
[式中、Rは、水素又はメチルを表し、R
2は、6〜15個の炭素原子を有するアルキル基を意味する]、及び
c)式(III)の(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位0〜50質量%、好ましくは30質量%まで、特に好ましくは20質量%まで、
【化6】
[式中、Rは、水素又はメチルを表し、R
3は、16〜40個の炭素原子を有するアルキル基を表わす]。
【0034】
特別な一実施態様によれば、本発明のポリアルキル(メタ)アクリラートは、式(I)の(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位を、好ましくは少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも0.5質量%含むことができる。
【0035】
特別な一実施態様によれば、本発明のポリアルキル(メタ)アクリラートは、式(III)の(メタ)アクリラートから誘導されている繰り返し単位を、好ましくは少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも1質量%含むことができる。
【0036】
このポリアルキル(メタ)アクリラートは好ましくはラジカル重合により得ることができる。相応して、前記ポリマーが有するそれぞれの繰返し単位の質量割合は、ポリマーの製造に使用される、相応するモノマーの質量割合から判明する。
【0037】
式(I)の(メタ)アクリラートの例は、特に、飽和アルコールから誘導される鎖状及び分枝状(メタ)アクリラート、例えばメチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、n−プロピル(メタ)アクリラート、イソプロピル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチル(メタ)アクリラート及びペンチル(メタ)アクリラート;及びシクロアルキル(メタ)アクリラート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリラートである。
【0038】
式(II)の(メタ)アクリラートには、特に、飽和アルコールから誘導される鎖状及び分枝状の(メタ)アクリラート、例えばヘキシル(メタ)アクリラート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリラート、ヘプチル(メタ)アクリラート、2−tert−ブチルヘプチル(メタ)アクリラート、オクチル(メタ)アクリラート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリラート、ノニル(メタ)アクリラート、デシル(メタ)アクリラート、ウンデシル(メタ)アクリラート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリラート、ドデシル(メタ)アクリラート、2−メチルドデシル(メタ)アクリラート、トリデシル(メタ)アクリラート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリラート、テトラデシル(メタ)アクリラート、ペンタデシル(メタ)アクリラート;不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリラート、例えばオレイル(メタ)アクリラート;シクロアルキル(メタ)アクリラート、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリラート、3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリラート、ボルニル(メタ)アクリラートが属する。
【0039】
式(III)のモノマーの例は、特に、飽和アルコールから誘導される鎖状及び分枝状の(メタ)アクリラート、例えばヘキサデシル(メタ)アクリラート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリラート、2−メチルペンタデシル(メタ)アクリラート、2−エチルテトラデシル(メタ)アクリラート、2−プロピルトリデシル(メタ)アクリラート、2−ブチルドデシル(メタ)アクリラート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリラート、2−ペンチルドデシル(メタ)アクリラート、2−ヘキシルデシル(メタ)アクリラート、2−ヘキシルウンデシル(メタ)アクリラート、n−ヘプタデシル(メタ)アクリラート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリラート、4−tert−ブチルオクタデシル(メタ)アクリラート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリラート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリラート、オクタデシル(メタ)アクリラート、ノナデシル(メタ)アクリラート、エイコシル(メタ)アクリラート、セチルエイコシル(メタ)アクリラート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリラート、ドコシル(メタ)アクリラート及び/又はエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリラート;シクロアルキル(メタ)アクリラート、例えば2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリラート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリラートである。
【0040】
長鎖アルコール基を有するアルキル(メタ)アクリラート、特に成分(II)及び(III)は、例えば、(メタ)アクリラート及び/又は相応する酸と、長鎖の脂肪アルコールとの反応により得られ、その際、一般にエステルの混合物、例えば種々の長鎖アルコール基を有する(メタ)アクリラートが生じる。これらの脂肪アルコールには、特に、Oxo Alcohol
(R) 7911、Oxo Alcohol
(R) 7900、Oxo Alcohol
(R) 1100
;Alfol
(R) 610、Alfol
(R) 810;Lial
(R) 125及びNafol
(R)型(Sasol);C13−C15−アルコール(BASF);Epal
(R) 610及びEpal
(R) 810 (Afton); Linevol
(R) 79、Linevol
(R) 911及びNeodol
(R) 25 (Shell);Dehydad
(R)、Hydrenol
(R)−及びLorol
(R)型(Cognis);Acropol
(R) 35及びExxal
(R) 10(Exxon Chemicals);Kalcol
(R) 2465(Kao Chemicals)が属する。
【0041】
式(III)に応じたアルキル(メタ)アクリラート対式(II)に応じた(メタ)アクリラートの質量比は、広範囲にあることができる。好ましくは、16〜40個の炭素原子をアルコール基中に有する式(III)のモノマー対、6〜15個の炭素原子をアルコール基中に有する式(II)のモノマーの質量比は、5:1未満、特に1:1未満、特に好ましくは1:5未満、特に好ましくは1:10未満である。本発明の特別な一観点に応じて、16〜40個の炭素原子をアルコール基中に有する式(III)のモノマー対、6〜15個の炭素原子をアルコール基中に有する式(II)のモノマーの質量比は1:100未満であってよく、その際、好ましい実施態様において、このポリマーは、16〜40個の炭素原子をアルコール基中に有する式(III)のモノマーを含まない。
【0042】
意外な利点は、特に、潤滑剤における使用のための、質量平均分子量を3000〜25000g/molの範囲に、そして、多分散度を1.1〜2.5の範囲に有するポリアルキル(メタ)アクリラートで達成される。さらに、このポリアルキル(メタ)アクリラートは、式(II)の繰り返し単位が、鎖状及び分枝状の基の混合物であり、その際、式(II)の繰り返し単位の質量に対して、基R
2の5〜80%、好ましくは10〜65%が分枝していることを特徴とする。
【0043】
特殊な利点でもって、式(II)の繰り返し単位から誘導された単位が鎖状及び分枝状の基の混合物であり、その際、9〜11個の炭素原子を有する分枝状の基R
2の質量割合が、9〜11個の炭素原子を有する鎖状の基R
2の質量割合よりも高いポリアルキル(メタ)アクリラートが特に使用できる。
【0044】
式(II)の繰り返し単位が鎖状及び分枝状の基の混合物であり、その際、12〜15個の炭素原子を有する鎖状の基R
2の質量割合が、好ましくは、12〜15個の炭素原子を有する分枝状の基R
2の質量割合よりも高いポリアルキル(メタ)アクリラートが、特に更に重要である。
【0045】
さらに、意外な利点は、式(II)の繰り返し単位が、鎖状及び分枝状の基の混合物であり、その際、分枝状の基対鎖状の基R
2の質量比が60:40〜20:80の範囲にあることを特徴とするポリアルキル(メタ)アクリラートによって達成できる。
【0046】
更なる一実施態様に応じて、式(II)の繰り返し単位が、10〜15個の炭素原子を有する分枝状の基R
2の高い割合を有するポリアルキル(メタ)アクリラートを有する潤滑剤が好ましい。特に好ましくは、分枝状の基対鎖状の基R
2の比は70:30〜50:50、好ましくは60:40〜65:35の範囲にあることができ、その際、式(II)の繰り返し単位は、式(II)の繰り返し単位の割合に対して、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%の、13〜15個の炭素原子を有する基R
2を有する。
【0047】
さらに、式(II)の繰り返し単位が、異なる数の炭素原子を有する基R
2の混合物であり、その際、12〜15個の炭素原子を有する基R
2の質量割合が、7〜11個の炭素原子を有する基R
2の質量割合よりも高いポリアルキル(メタ)アクリラートが特に好ましい。
【0048】
そのつどの炭素数を有する式(II)の繰り返し単位及びその異性体の割合は、ポリマーの製造に使用されるモノマーに基づいて、通常の方法により測定されることができる。このために、特にガスクロマトグラフィ(GC)が挙げられる。
【0049】
さらに、好ましくは、式(II)の繰り返し単位を有するポリアルキル(メタ)アクリラートが使用されることができ、その際、分枝状の基R
2を有する式(II)の繰り返し単位の質量に対して、少なくとも50質量%、特に70質量%、特に好ましくは90質量%の、分枝状の基R
2を有する式(II)の繰り返し単位が2〜5位に、少なくとも2位に少なくとも1の分枝を有する。
【0050】
本発明のポリアルキル(メタ)アクリラートのアルキル(メタ)アクリラートは、この場合に、短鎖の又は長鎖の分枝を有することができる。本発明の特殊な一観点に応じて、式(II)の繰り返し単位が、分枝した基の混合物であるポリアルキル(メタ)アクリラートが好ましくは使用され、その際、この混合物はメチル分枝及びエチル分枝を有する繰り返し単位を含む。さらに、式(II)の繰り返し単位が分枝状の基の混合物であるポリアルキル(メタ)アクリラートも使用でき、その際、この混合物は、プロピル分枝及びより長鎖の分枝、特にブチル分枝又はペンチル分枝を有する繰り返し単位を含む。この場合に、特に好ましくは、とりわけ、メチル分枝、エチル分枝、プロピル分枝も、また同様により長鎖の分枝も式(II)の繰り返し単位中に含むポリアルキル(メタ)アクリラートである。
【0051】
分枝の種類及び分枝の位置は、ポリマーの製造に使用されるモノマーに基づいてNMR法により測定されることができる。この場合に、特に
13C−NMR及び
1H−NMR測定が実施及び評価できる。有用な示唆が、特に"Determination of the Oligomer Distribution in Ethoxylated Linear and Branched Alkanols using 13C-NMR", Li Yang et al . Eur . Polym, . J . Vol . 33 (2), 143 (1997)及び"Quantitative assessment of Alkyl Chain Branching in Alcohol-Based Surfactants by Nuclear Magnetic Resonance", J.Duynhoven, A.Leika and P.C. van der Hoeven, J. of Surfactants and Detergents Vol 8 (1) , 73 (2005)に見出される。明確化のために、ブチル分枝はペンチル分枝又はヘキシル分枝とは上述のNMR法により区別されることができず、このために、より長鎖の分枝との概念は、ブチル分枝の他にペンチル分枝又はヘキシル分枝も含むことが指摘される。
【0052】
さらに、本発明により使用すべきポリアルキル(メタ)アクリラートの製造のためのモノマー混合物は、式(I)、(II)及び/又は(III)の(メタ)アクリラートと共重合されるモノマーを含むことができる。このために、特に、アリール(メタ)アクリラート、例えばベンジルメタクリラート又はフェニルメタクリラートが挙げられ、その際、このアリール基はそのつど非置換であるか又は4回まで置換されていることができる。
【0053】
スチレン、側鎖にアルキル置換基を1つ有する置換されたスチレン、例えば −メチルスチレン及び −エチルスチレン、環にアルキル置換基を1つ有する置換されたスチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレン;
マレイン酸及びマレイン酸誘導体、例えばマレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、マレインイミド、メチルマレインイミド;
イタコン酸及びイタコン酸誘導体、例えばイタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル及びイタコン酸無水物;
フマル酸及びフマル酸誘導体、例えばフマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル及びフマル酸無水物;
1−アルケン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン及び1−ペンタデセン。
【0054】
特殊な一実施態様によれば、特に分散性モノマーが使用できる。
【0055】
分散性モノマーは、長い間ポリマー助剤の官能化のために潤滑油において使用され、そしてしたがって、当業者に知られている(R.M.Mortier, S.T. Orszulik (eds.): "Chemistry and Technology of Lubricants", Blackie Academic & Professional, London, 2nd ed. 1997参照のこと)。適切には、特に、複素環式ビニル化合物及び/又は式(IV)の、エチレン性不飽和の極性エステル化合物又はアミド化合物
【化7】
[式中、Rは、水素又はメチルを表し、Xは、酸素、硫黄又は式−NH−又は−NR
a−(式中、R
aは1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表わす)のアミノ基を表し、R
4は、2〜50個、特に2〜30個、好ましくは2〜20個の炭素原子を含む、少なくとも1、特に少なくとも2のヘテロ原子を有する基を表す]は、分散性モノマーとして使用されることができる。
【0056】
式(IV)の分散性モノマーの例は、特に、アミノアルキル(メタ)アクリラート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、複素環式(メタ)アクリラート及び/又はカルボニル含有(メタ)アクリラートである。
【0057】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートには、特に、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリラート及び1,10−デカンジオール(メタ)アクリラートが属する。
【0058】
カルボニル含有(メタ)アクリラートは、例えば、2−カルボキシエチル(メタ)アクリラート、カルボキシメチル(メタ)アクリラート、N−(メタクリロイルオキシ)ホルムアミド、アセトニル(メタ)アクリラート、コハク酸−モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノン、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシペンタデシル)−2−ピロリジノン、N−(3−(メタ)アクリロイルオキシヘプタデシル)−2−ピロリジノン及びN−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリラートを含む。
【0059】
複素環式(メタ)アクリラートには、特に、2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリラート、オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリラート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリラート、1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、N−メタクリルロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノンが属する。
【0060】
アミノアルキル(メタ)アクリラートには、特に、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、N,N−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリラート、N,N−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリラートが属する。
【0061】
さらに、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが、分散性モノマーとして使用されてよい。
【0062】
さらに、リン、ホウ素及び/又はケイ素を含有する(メタ)アクリラート、例えば2−(ジメチルホスファト)プロピル(メタ)アクリラート、2−(エチレンホスフィト)プロピル(メタ)アクリラート、ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリラート、ジメチルホスホノエチル(メタ)アクリラート、ジエチル(メタ)アクリロイルホスホナート、ジプロピル(メタ)アクリロイルホスファート、2−(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリラート、2,3−ブチレン(メタ)アクリロイルエチルボラート、メチルジエトキシ(メタ)アクリロイルエトキシシラン、ジエチルホスファトエチル(メタ)アクリラートが、分散性モノマーとして使用できる。
【0063】
好ましい複素環式ビニル化合物には、特に、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾールが属する。
【0064】
特に好ましい分散性モノマーには、特に、少なくとも1個の窒素原子を含有するエチレン性不飽和化合物が属し、その際、この化合物は、特に好ましくは前述の複素環式ビニル化合物及び/又はアミノアルキル(メタ)アクリラート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド及び/又は複素環式(メタ)アクリラートから選択されている。
【0065】
コモノマーの割合は、ポリマーの使用目的及び特性プロファイルに応じて変動させることができる。一般に、この割合は0〜30質量%、好ましくは0.01〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%の範囲にあることができる。特に、1−アルケンの割合は好ましくは、30質量%まで、好ましくは20質量%まで、特に好ましくは10質量%までの割合に限定されることができ、その際、本発明により使用すべきポリアルキル(メタ)アクリラートの特に好ましい実施態様は、1−アルケンから誘導されている繰り返し単位を含まない。
【0066】
上述のエチレン性不飽和モノマーは、単独で又は混合して使用することができる。さらに、定義された構造、例えばブロックコポリマー又はグラフトポリマーを得るために、主鎖の重合の間にモノマー組成を変化させることが可能である。
【0067】
前記組成物からのポリアルキルエステルの製造は、それ自体知られている。これらのポリマーは特にラジカル重合により、並びに類似の方法、例えばATRP(=Atom Transfer Radical Polymerization)又はRAFT(=Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer)により得ることができる。
【0068】
ATRP法はそれ自体知られている。この反応実施は、例えば、J−S.Wang等によりJ.Am.Chem.Soc.,第117巻、第5614〜5615頁(1995)に、及び、MatyjaszewskiによりMacromolecules、第28巻、第7901〜7910頁(1995)に記載されている。さらに、特許出願WO 96/30421、WO 97/47661、WO 97/18247、WO 98/40415及びWO 99/10387は前記のATRPの変法を開示している。
【0069】
さらに、本発明のポリマーは例えば、RAFT法によっても得ることができる。この方法は、例えばWO 98/01478及びWO 2004/083169に詳細に記載されており、これを開示の目的のために明示的に引用する。
【0070】
さらに、本発明のポリマーは、NMP法(nitroxide mediated polymerization)により得られ、これは特にUS 4581429に記載されている。
【0071】
包括的に、特に更なる参照文献でもって、この方法は特にK. Matyjaszewski, T. P. Davis, Handbook of Radical Polymerization, Wiley Interscience, Hoboken 2002に説明されており、これは開示の目的で明示的に引用される。
【0072】
エチレン性不飽和化合物のラジカル重合は、それ自体知られている方式で行うことができる。通常のフリーラジカル重合は、特に、Ullmanns’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版に記載されている。
【0073】
本発明の範囲において、重合は、ラジカル重合のための少なくとも1の重合開始剤の使用下で開始される。これには、特に、当業界で広く知られているアゾ開始剤、例えば2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、有機ペルオキシド、例えばジクミルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、例えばジラウロイルペルオキシド、ペルオキシジカーボナート、例えばジイソプロピルペルオキシジカーボナート、ペルエステル、例えばtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート及び類似物が属する。本発明の目的には、特にとりわけ適した重合開始剤は特に以下の化合物を含む:
メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート、ケトンペルオキシド、tert−ブチルペルオクトアート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボナート、2,5−ビス−(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)−ペルオキシジカーボナート、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ジイソプロピルペルオキシジカーボナート、tert−アミルペルオキシピバラート、ジ−(2,4−ジクロロベンゾイル)−ペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバラート、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド、ジ−(3,5,5−トリメチル−ヘキサノイル)−ペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,2′−アゾビス−(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、ジ−(2−メチルベンゾイル)−ペルオキシド、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチラート、2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−ヘキサン、4,4′−アゾビス−(シアノペンタン酸)、ジ−(4−メチルベンゾイル)−ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシイソブチラート並びに前述の重合開始剤の混合物。
【0074】
本発明により、25〜200℃の範囲、好ましくは50〜150℃の範囲、特に好ましくは50〜100℃の範囲の温度で1時間の半減期を有する重合開始剤が特にとりわけ好ましい。さらに、ペルオキシド性重合開始剤、特にtert−ブチルペルオクトアートが、当該目的のために特に好ましく適する。
【0075】
実施態様に応じて、種々の重合開始剤も使用できる。種々の開始剤種が使用される場合には、これは好ましくは別個に相次いで続く工程において添加され、その際、この後に添加される重合開始剤は適切には、前に添加された重合開始剤に対してより長い半減期を有することが望ましい。
【0076】
好ましい方法では、ラジカル重合のための少なくとも1の重合開始剤の添加は、少なくとも2の工程において行われる。この場合に、各工程における重合開始剤の添加は、希釈しない形で又は希釈した形で、好ましくは溶媒に溶解させて、特に少なくとも1の鉱油及び/又はポリアルファオレフィン中の10質量%〜50質量%の溶液の形で行われることができる。
【0077】
この好ましい方法の第1の実施態様によれば、重合開始剤は、第1の工程で好ましくは一度に添加されることができる。しかし、重合開始剤を第1の工程において、好ましくは連続的に、特に一定の計量供給速度でもって計量供給することが特にとりわけ適切であることも判明した。
【0078】
第2の工程において、この好ましい方法の第1の実施態様によれば、重合開始剤は、好ましくは一度に添加される。しかし、代わりに、重合開始剤を第2の工程において、好ましくは連続的に、特に一定の計量供給速度で計量供給することも好ましい。この方法の特にとりわけ好ましい一実施態様によれば、重合開始剤は第1の工程及び第2の工程において連続的に、好ましくはそのつど一定の計量供給速度で計量供給されることができ、その際、この第2の工程の平均計量供給速度は好ましくは第1の工程の平均計量供給速度よりも速い。好ましくは、第2の工程の平均計量供給速度対第1の工程の平均計量供給速度の比は、1.2:1より大きく、好ましくは1.2:1〜10:1、特に好ましくは1.5:1より大きく、特にとりわけ好ましくは2:1より大きく、とりわけ3:1より大きい。好ましくは、重合開始剤の第2の工程での添加量は、第1の工程での添加量よりも多く、その際、第2の工程において、第1の工程で添加した重合開始剤の全質量に対して、第1の工程での重合開始剤の添加量の好ましくは少なくとも120%、適切には120%〜1000%、特に好ましくは少なくとも150%、特に150%〜500%が添加される。
【0079】
第2の工程を好ましくは、第1の工程の間に添加した重合開始剤の全量の0.01〜50.0%、適切には10.0〜40.0%、特に15.0〜35.0%がなお消費されていない時間点で開始する。
【0080】
本発明の目的にとっては、重合開始剤を少なくとも3つの工程で添加し、その際、第3の工程で第1の工程におけるよりも、そして、第2の工程におけるよりも、より多い開始剤を添加することが、特にとりわけ好ましいことが判明した。第3の工程において、重合開始剤の添加を適切には一度に行う。代わりに、重合開始剤を第3の工程において、好ましくは連続的に、特に一定の計量供給速度で計量供給することも好ましい。本発明の特にとりわけ好ましい一実施態様によれば、重合開始剤は、第1の工程、第2の工程及び第3の工程で連続的に、好ましくはそのつど一定の計量供給速度で計量供給され、その際、第3の工程の平均計量供給速度は好ましくは第2の工程の平均計量供給速度よりも、そして、第2の工程の平均計量供給速度は好ましくは第1の工程の平均計量供給速度よりも速い。好ましくは、第3の工程の平均計量供給速度対第2の工程の平均計量供給速度の比は、1.2:1より大きく、好ましくは1.2:1〜10:1の範囲にあり、特に好ましくは1.5:1より大きく、特にとりわけ好ましくは2:1より大きく、特に3:1よりも大きい。
【0081】
特に好ましくは、第3の工程での重合開始剤の添加量は、好ましくは、第2の工程での添加量よりも多く、その際、第3の工程において、第2の工程で添加した重合開始剤の全質量に対して、第2の工程での重合開始剤の添加量の好ましくは少なくとも120%、適切には120〜1000%、特に好ましくは少なくとも150%、特に150%〜500%が添加される。
【0082】
第3の工程を好ましくは、第2の工程の間に添加した重合開始剤の全量の0.01〜50.0%、適切には10.0〜40.0%、特に15.0〜35.0%がなお消費されていない時間点で開始する。
【0083】
なお消費されていない重合開始剤のこの割合は、それ自体知られている方式で測定されるか又はそれ自体知られている値、例えば重合開始剤の分解定数、重合の間の温度プロファイル、添加プロファイル、を基礎として算出されることができる。一定の温度での一定の速度での計量供給のためには、例えば次のことが近似的に該当する
【数1】
その際、I
ss/I
Σの商は、第2の工程の間に添加された重合開始剤の全量に対する、なお消費されていない重合開始剤の割合を指し、その際、k
dは重合開始剤の分解定数であり、その際、t
Σは計量供給の期間である。
【0084】
特に好ましい一実施態様によれば、重合開始剤添加は、3よりも多い工程で行うことができ、その際、第4の工程からは各後続工程でこの直前の工程におけるよりも多い重合開始剤が添加され、そして、この重合開始剤は一度に添加されるか又は連続的に、好ましくは一定の計量供給速度で計量供給される。
【0085】
本発明により使用すべきポリマーの製造では、重合開始剤を連続的に増加する計量供給速度で計量供給することが特にとりわけ好ましいことが判明した。このことは、無限に多い工程における、連続的に増加する重合開始剤量の添加に相応する。
【0086】
前述した方法は、エチレン性不飽和化合物の迅速かつ極めて効率的な重合を可能にし、そして、比較的少ない残留モノマー含有量を有する重合体を生じる。それにもかかわらず、反応混合物の残留モノマー含有量をさらになお低下させるために、反応の終了近くに後開始することが時折極めて好ましいことが判明した。後開始は好ましくは、最後の工程の間に添加した重合開始剤の全量の少なくとも75質量%、より適切には少なくとも90.0質量%、特に少なくとも95.0質量%が消費されている時間点で行われる。前に添加した重合開始剤の全量に対して、好ましくは0.1質量%〜100.0質量%、特に5.0質量%〜50.0質量%の重合開始剤で後計量供給する。
【0087】
開始剤の全量は、モノマーの質量に対して、好ましくは0.5〜1質量%の範囲、特に好ましくは0.6〜0.8質量%の範囲にある。
【0088】
本方法は、連鎖移動剤の存在下又は非存在下のいずれかで実施できる。連鎖移動剤として、当業者が知っているような、典型的な、ラジカル重合で記載した種を使用することができる。
【0089】
硫黄フリーの分子量調節剤には、例えば、限定することなく、ダイマーのα−メチルスチレン(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン)、エノールエーテル脂肪族及び/又は脂環式アルデヒド、テルペン、β−テルピネン、テルピノール、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、2,5−ジヒドロフラン、2,5−ジメチルフラン及び/又は3,6−ジヒドロ−2H−ピランが属し、好ましくはダイマーのα−メチルスチレンである。
【0090】
硫黄含有分子量調節剤として、好ましくはメルカプト化合物、ジアルキルスルフィド、ジアルキルジスルフィド及び/又はジアリールスルフィドを使用できる。以下の重合調節剤が例示的に挙げられる:ジ−n−ブチルスルフィド、ジ−n−オクチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、チオジグリコール、エチルチオエタノール、ジイソプロピルジスルフィド、ジ−n−ブチル−ジスルフィド、ジ−n−ヘキシルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジエタノールスルフィド、ジ−t−ブチルトリスルフィド及びジメチルスルホキシド。好ましくは、分子量調節剤として使用される化合物は、メルカプト化合物、ジアルキルスルフィド、ジアルキルジスルフィド及び/又はジアリールスルフィドである。この化合物の例として、エチルチオグリコラート、2−エチルヘキシルチオグリコラート、ペンタエリトリトールテトラチオグリコラート、システイン、2−メルカプトエタノール、1,3−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール、1,4−メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、チオ酢酸、チオ尿素及びアルキルメルカプタン、例えばn−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン又はn−ドデシルメルカプタンである。特に好ましく使用される重合調節剤は、メルカプトアルコール及びメルカプトカルボン酸である。本発明の範囲において、n−ドデシルメルカプタン並びにtert−ドデシルメルカプタンの連鎖移動剤としての使用は特にとりわけ好ましい。
【0091】
本発明の特殊な一観点によれば、分子量調節剤の混合物が使用され、その際、好ましい混合物は特に硫黄含有調節剤、例えば前述のメルカプタン誘導体及び硫黄フリー調節剤、例えばテルピノール、テルピネン及びその誘導体、並びに適した遷移金属錯体を含む。特に好ましくは、上述のn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン並びにテルピノールの混合物が連鎖移動剤として使用できる。
【0092】
分子量調節剤は好ましくは、重合の際に使用されるモノマーに対して0.05〜10質量%、特に1〜6質量%、特に好ましくは2〜4.5質量%の量で使用される。
【0093】
更なる情報を当業者は専門文献、特に刊行物H. Rausch-Puntigam, T. Voelker "Acryl- und Methacrylverbindungen" Springer, Heidelberg, 1967; Houben-Weyl "Methoden der organischen Chemie" 第XIV/1巻, 66p〜., Georg Thieme, Heidelberg, 1961及びKirk-Othmer "Encyclopedia of Chemical Technology" Vol. 1, 296p〜., J. Wiley, New York, 1978から取り出すことができる。
【0094】
特に、モノマーの大部分が装入され、そして、重合開始剤、例えば前述したようなものが、複数の工程において重合期間にわたり添加される方法が特に重要である。好ましくは、少なくとも50質量%、特に少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、特にとりわけ好ましくは少なくとも90質量%のモノマーが反応器に装入されることができる。その後、前述の開始剤は重合温度で添加できる。この調節剤は、装入されてもよいし、開始剤と一緒に添加されてもよく、その際、好ましい方法において調節剤が装入される。この場合に特に好ましくは、少なくとも50質量%、特に少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、特にとりわけ好ましくは少なくとも90質量%の分子量調節剤が反応器に装入される方法である。
【0095】
重合は常圧、負圧又は加圧で実施できる。また、重合温度も、重要ではない。しかし一般に、−20℃〜200℃、好ましくは20℃〜180℃、特に好ましくは60℃〜150℃の範囲にある。フリーラジカル重合の実施では、重合の温度が段階的な開始剤添加の際に好ましくは20〜180℃、特に好ましくは60〜150℃にあることができるよう、より高い重合温度が好ましくあることができる。この場合に、重合を、開始剤の温度を0〜30℃超える範囲の温度で実施し、その際、開始剤の半減期が30分間である特別な方法が特に好ましい。
【0096】
重合は溶媒を用いても用いなくても実施することができる。この場合、溶剤の概念は、広く理解すべきである。使用する溶媒には、炭化水素溶媒、例えば芳香族化合物溶媒、例えばトルエン、ベンゼン及びキシレン、飽和炭化水素、例えばシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンが属し、これらは分枝状で存在していてもよい。これらの溶媒を単独で並びに混合して使用することができる。特に好ましい溶媒は鉱油、天然油及び合成油並びにこれらの混合物である。
【0097】
好ましい一実施態様によれば、溶媒の割合は少なく維持されることができ、その際、本発明の方法の好ましい実施態様は、使用可能なポリマー混合物を得るために、重合終了後に例えば蒸留によって溶媒がこの組成物から分離される必要がないことにより特徴付けられる。これに応じて、全体として使用される溶媒の割合は、好ましくは0〜30質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%、特にとりわけ好ましくは1〜8質量%の範囲にある。この場合に、溶媒は特に、反応経過にわたり添加される開始剤の溶解のために用いられることができる。
【0098】
前述の措置によって、特に多量のモノマーを含む反応器への開始剤の段階的な添加によって、意外な利点が獲得されることができる。これには特に、反応が多量の溶媒なしに実施できることが挙げられる。ポリアルキル(メタ)アクリラートの製造に少量のみの1−アルケンが使用される場合には、溶媒及び/又は残留モノマーの除去のための蒸留は断念されることができる。これによって、この反応は極めて安価に実施できる。意外なことに、特に極めて狭い分子量分布が少ない多分散度指数で得られることができ、この場合に、高価な方法、例えばATRPは使用される必要はない。さらに、反応期間並びに開始剤消費は最小限にされることができる。
【0099】
本発明により使用すべきポリアルキル(メタ)アクリラートの潤滑剤中の割合は、潤滑剤の全質量に対し、少なくとも30質量%、特に35質量%、特に好ましくは少なくとも40質量%、特にとりわけ好ましくは少なくとも45質量%である。
【0100】
強制的に使用すべきポリアルキル(メタ)アクリラートの他に、伝動装置のための好ましい潤滑剤は、少なくとも1の更なる基油を含むことができる。
【0101】
好ましい基油には、特に鉱油、合成油及び天然油が属する。
【0102】
鉱油はそれ自体知られており、かつ市販されている。鉱油は一般に石油又は原油から蒸留及び/又は抽出及び場合により更なる精製方法及び加工方法により得られ、その際、鉱油との概念には特に原油又は石油の高沸性含分が該当する。一般に、鉱油の沸点は、5000Paで200℃より高く、好ましくは300℃より高い。シェール油の乾留、石炭乾留、褐炭の空気の遮断下での蒸留並びに石炭もしくは褐炭の水素化により製造が同様に可能である。これに応じて、鉱油は、起源に応じて、芳香族、環式、分枝状及び鎖状の炭化水素の種々の割合を有する。
【0103】
改善されたクラスの鉱油(減少した硫黄含有量、減少した窒素含有量、より高い粘度指数、より低い流動点)は、鉱油の水素処理により与えられている(hydro isomerization、hydro cracking、hydro treatment、hydro finishing)。この場合に、水素存在下では実質的に芳香族割合が減少し、ナフタレン割合を構成する。
【0104】
合成油は特に有機エステル、例えばジエステル及びポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、特にポリオレフィン(このうちポリアルファオレフィン(PAO)が好ましい)、シリコーン油及びペルフルオロアルキルエーテルを含む。さらに、gas to liquid (GTL)、coal to liquid (CTL)又はbiomass to liquid (BTL)プロセスからの由来を有する合成基油が使用できる。これらは大抵、鉱油よりも若干高価であるが、しかしその性能に関して利点を有する。
【0105】
天然油は動物性又は植物性の油、例えば牛脚油又はホホバ油である。
【0106】
潤滑剤処方物のための基油は、API(American Petroleum Institute)に応じたグループに分けられる。鉱油は、グループI(水素処理されていない)と、飽和度、硫黄含有量及び粘度指数に応じて、グループII及びIII(両方水素処理されている)に、区分分けされる。PAOは、グループIVに相応する。他の全ての基油は、グループVにまとめられる。
【0107】
これらの基油は混合物としても使用することができ、かつ、多様なものが市販されている。
【0108】
本発明の特に好ましい潤滑剤は、少なくとも1のポリアルファオレフィン(PAO)又はグループIII油であって100℃で測定して3.0〜10.0mm
2/sの範囲の、好ましくは5.5〜9.0mm
2/sの範囲の、特に好ましくは7.5〜8.5mm
2/s(ASTM D 445)の範囲の動粘度を有するもの、を含む。更なる一実施態様によれば、ポリアルファオレフィン(PAO)又はグループIII油であって100℃で3.0〜5.5mm
2/sの範囲の、特に好ましくは3.5〜5mm
2/sの範囲の動粘度を有するものを含む潤滑剤が好ましい。
【0109】
特に重要であるのは、さらに、グループIIIの鉱油少なくとも1を含む潤滑剤である。意外な利点は、特に、少なくとも1の流動点改善剤及び少なくとも1のグループIIIの鉱油であってASTM D 445に応じて100℃で測定して3〜10mm
2/sの範囲の、特に好ましくは5.5〜9mm
2/sの範囲の動粘度KV
100を有するものを含む潤滑剤によって達成できる。好ましくは、ポリ(アルキル)メタクリラートは、流動点改善剤としてのグループIIIの鉱油と一緒に使用される。
【0110】
更なる基油、特にポリアルファオレフィン及び/又はグループIIIの鉱油の割合は、潤滑剤の全質量に対して、少なくとも10質量%、特に好ましくは少なくとも35質量%、特にとりわけ好ましくは少なくとも45質量%であることができる。
【0111】
前記成分の他に、潤滑油組成物は、更なる助剤及び添加剤を含有していてよい。この助剤には、特に、DI助剤(分散剤、洗浄剤、消泡剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、摩耗保護剤及び極圧助剤、摩擦値変更剤)、流動点改善剤(特に好ましくはアルコール基中に1〜30個の炭素原子を有するポリアルキル(メタ)アクリラートを基礎とするもの)及び/又は着色剤が属する。
【0112】
さらに、ここで述べられた潤滑剤組成物は、本発明のポリマーの他に、慣用のVI改善剤と混合して存在することもできる。これには、特に水素化したスチレン−ジエン−コポリマー(HSD,US 4116917、US 3772196及びUS 4788316(Shell Oil Company))、特にブタジエン及びイソプレンを基礎とするもの、特にブタジエン及びイソプレンを基礎とするもの、また同様にオレフィンコポリマー(OCP, K. Marsden: "Literature Review of OCP Viscosity Modifiers", Lubrication Science 1 (1988), 265)、特にポリ(エチレン−コ−プロピレン)タイプのオレフィンコポリマー(これはしばしばN/O官能性でもって分散作用を有して存在することができる)、又はPAMA(大抵はN官能性でもって好ましい添加特性(booster)を有して分散剤、摩耗保護助剤及び/又は摩擦値変更剤として存在する)が属する(DE 1520696(Roehm und Haas)、WO 2006/007934(RohMax Additives))。
【0113】
潤滑油、特にエンジン油のためのVI改善剤及び流動点改善剤の構成は、例えば、T. Mang, W. Dresel (eds.): "Lubricants and Lubrication", Wiley-VCH, Weinheim 2001; R.M. Mortier, S.T. Orszulik (eds.): "Chemistry and Technology of Lubricants", Blackie Academic & Professional, London 1992;又はJ. Bartz: "Additive fuer Schmierstoffe", Expert-Verlag, Renningen-Malmsheim 1994に説明されている。
【0114】
適切な分散剤(dispersant)は、特にポリ(イソブチレン)誘導体、例えばポリ(イソブチレン)−スクシンイミド(PIBSI);エチレン−プロピレン−オリゴマーであってN/O官能性を有するものを含む。
【0115】
好ましい洗浄剤(detergent)には、特に金属含有化合物、例えばフェノラート;サリチラート;チオホスホナート、特にチオピロホスホナート、チオホスホナート及びホスホナート;スルホナート及びカーボナートが属する。この化合物は、金属として、特にカルシウム、マグネシウム及びバリウムを含有できる。この化合物は、好ましくは中性又は過塩基性で使用されることができる。
【0116】
特に重要であるのは、更に、消泡剤(defomaer)であり、その際、これはしばしばシリコーン含有消泡剤とシリコーンフリー消泡剤に区分分けされる。シリコーン含有脱泡剤には、特に鎖状のポリ(ジメチルシロキサン)及び環状のポリ(ジメチルシロキサン)が属する。シリコーンフリー消泡剤として、しばしばポリエーテル、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリアクリラート又はトリブチルホスファートが使用できる。
【0117】
特別な一態様によれば、本発明の潤滑油組成物は、腐食阻害剤(corrosion inhibitor)を含むことができる。これは、しばしば防錆助剤(antirust additive)及び金属不動態化剤/金属脱不動態化剤(metal passivator/desactivator)に区分けされる。防錆助剤として、特にスルホナート、例えば石油スルホナート又は(しばしば過塩基性の)合成アルキルベンゼンスルホナート、例えばジノニルナフテンスルホナート;カルボン酸誘導体、例えばラノリン(グリース)、酸化したパラフィン、亜鉛ナフテナート、アルキル化コハク酸、4−ノニルフェノキシ酢酸、アミド及びイミド(N−アシルサルコシン、イミダゾリン誘導体);アミン中和したモノ−及びジアルキルリン酸エステル;モルホリン;ジシクロヘキシルアミン又はジエタノールアミンが使用できる。金属不動態化剤/金属脱不動態化剤には、特にベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジアルキル−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール;N,N′−ジサリチリデンエチレンジアミン、N,N′−ジサリチリデンプロピレンジアミン;亜鉛−ジアルキルジジオホスファート及びジアルキルジチオカルバマートが属する。
【0118】
助剤の更なる好ましい一群は、酸化防止剤(antioxidant)である。酸化防止剤には、例えばフェノール、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−フェノール(2,6−DTB)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4′−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);芳香族アミン、特にアルキル化ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン(PNA)、ポリマーの2,2,4−トリメチルジヒドロキノン(TMQ);硫黄及びリンを含有する化合物、例えば金属ジチオホスファート、例えば亜鉛ジチオホスファート(ZnDTP)、「OOS−トリエステル」=ジチオリン酸とオレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、 −ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル(化合物では無灰)からの活性化二重結合との反応生成物;有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性したチオール、チオフェノン誘導体、ザンタート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸、複素環式硫黄/窒素化合物、特にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール;亜鉛及びメチレン−ビス(ジアルキルジチオカルバマート)、有機リン化合物、例えばトリアリール−及びトリアルキルホスフィット、有機銅化合物並びに過塩基性カルシウム−及びマグネシウム−を基礎とするフェノラート及びサリチラートが属する。
【0119】
好ましい摩耗保護剤(antiwear AW)及び極圧助剤(extreme pressure EP)には、特に、リン化合物、例えばトリアルキルホスファート、トリアリールホスファート、例えばトリクレシルホスファート、アミン中和したモノ−及びジアルキルリン酸エステル、エトキシル化モノ−及びジアルキルリン酸エステル、ホスフィット、ホスホナート、ホスフィン;硫黄及びリンを有する化合物、例えば金属ジチオホスファート、例えば亜鉛−C
3〜12−ジアルキル−ジチオホスファート(ZnDTP)、アンモニウム−、アンチモン−、モリブデン−、鉛ジアルキルジチオホスファート、「OOS−トリエステル」=ジチオリン酸とオレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、 −ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル、トリフェニルホスホロチオナート(TPPT)からの活性化二重結合との反応生成物;硫黄及び窒素を有する化合物、例えば亜鉛−ビス(アミルジチオカルバマート)又はメチレン−ビス(ジ−n−ブチルジチオカルバマート);元素状硫黄を有する硫黄化合物並びにH
2S硫化炭化水素(ジイソブチレン、テルペン);硫化したグリセリド及び脂肪酸エステル;過塩基性スルホナート;塩素化合物又は固形物質、例えばグラファイト又はモリブデンジスルフィドが属する。
【0120】
添加剤の更なる好ましい一群は、摩擦値変更剤(friction modifier)である。摩擦値変更剤として、特に機械的に作用する化合物、例えばモリブデンジスルフィド、グラファイト(フッ素化のも)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸収層を形成する化合物、例えば長鎖のカルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド;トライボケミカル反応により層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸及びチオリン酸エステル、キサントゲナート、硫化脂肪酸;ポリマー状層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタル酸エステル、メタクリラート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィン又は有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスファート及びモリブデンジチオカルバマートMoDTC)及びZnDTPとのその組み合わせ、銅含有有機化合物が使用されることができる。
【0121】
前述の化合物のいくつかは、複数の機能を満たすことができる。ZnDTPは、例えば、第一に摩耗保護助剤及び極圧助剤であるが、しかし、酸化防止剤及び腐食阻害剤の特性をも有する(ここでは:金属不動態化剤/金属脱不動態化剤)。
【0122】
前述の助剤は、特にT. Mang, W. Dresel (eds.) : "Lubricants and Lubrication", Wiley-VCH, Weinheim 2001; R.M. Mortier, S.T. Orszulik (eds.): "Chemistry and Technology of Lubricants" で詳細に説明されている。
【0123】
更なる助剤との高い相容性の他に、本発明のポリマー及び潤滑剤は、複数の好ましい特性により特徴付けられる。したがって、意外なことに、好ましくは少ない割合のエステル油により特徴付けられる潤滑剤が提供されることができる。特に好ましい潤滑剤は、エステル油を最高で10質量%、特に最高で5質量%有する。特にとりわけ好ましくは、本発明の潤滑剤は、検出可能な量のエステル油を有しないことができる。エステル油は、専門業界において知られており、かつ、最高で800g/molの分子量により特徴付けられる。
【0124】
好ましい潤滑剤は、ASTM D445によれば40℃で測定して200〜2000mm
2/sの範囲、特に250〜1000mm
2/sの範囲、特に好ましくは300〜800mm
2/gの範囲の粘度を有する。100℃でASTM D 445に応じて測定した動粘度KV
100は、好ましくは少なくとも30mm
2/s、特に好ましくは少なくとも35mm
2/s、特にとりわけ好ましくは少なくとも37mm
2/gである。相応して、好ましい潤滑剤はISO粘度グレード(ISO VISCOSITY GRADE; ISO VG)ISO 220、ISO 320、ISO 460、ISO 680及びISO 1000に相応する。
【0125】
しかし、本発明のポリマーの使用は、前述の好ましい潤滑剤に限定されておらず、他の適用、特に他の潤滑剤でも使用できる。
【0126】
本発明の特別な一観点によれば、好ましい潤滑油組成物は、ASTM D 2270により測定した粘度指数を100〜400の範囲、特に好ましくは130〜350の範囲、特に好ましくは160〜275の範囲に有する。
【0127】
本発明の潤滑油は、極めて高い剪断安定性を有し、その際、これは特にCEC L45−T−93に応じたいわゆる円錐ロール試験(KRL)により測定されることができる。そして、好ましい潤滑剤は20時間後に5000Nの負荷、60℃の油温度及び1475/分
-1の速度で、最高8%の粘度減少を示す。
【0128】
適切な一変形によれば、 ASTM D2603 Ref. B(12.5分の超音波処理)に応じた永久剪断安定性指数(PSSI)は、35以下、特に好ましくは20以下であることができる。好ましくは、さらに、最高で5、好ましくは最高で2、特にとりわけ好ましくは最高で1の、DIN 51381(30サイクルのボッシュポンプ)に応じた永久剪断安定性指数(PSSI)を有する潤滑剤油組成物が得られることができる。
【0129】
意外なことに、さらに、本発明の潤滑剤のシール相容性は高い。そして、この体積変化は好ましくは、DIN ISO 1817に応じてSRE NBR 28/SXエラストマーを用いて100℃の温度で168h及び1000h後に測定して最高で0〜+10%である。72 NBR 902又は75 FKM 585エラストマーの使用では、DIN ISO 1817に応じて100℃の温度で168h及び1000h後に測定して、好ましくは最高で−2〜+5%の試験体体積変化が示される。75 FKM 170055エラストマーの使用では、DIN ISO 1817に応じて130℃の温度で168h及び1000h後に測定して、好ましくは同様に、最高で−2〜+5%の試験体体積変化が示される。
【0130】
本発明の潤滑剤の使用の場合のショアー硬度の変化は、好ましくは同様に極めて少ない。ショアー硬度Aの変化は好ましくは、DIN ISO 1817に応じてSRE NBR 28/SXエラストマーを用いて100℃の温度で168h及び1000h後に測定して−10〜+5ポイントのショアーAである。72 NBR 902又は75 FKM 585エラストマーの使用では、DIN ISO 1817に応じて100℃の温度で168h及び1000h後に測定して、好ましくは±5ポイント以下のショアーAのショアー硬度Aの変化が示される。75 FKM 170055エラストマーの使用では、DIN ISO 1817に応じて130℃の温度で168h及び1000h後に測定して、好ましくは同様に、±5ポイント以下のショアーAのショアー硬度Aの変化が示される。
【0131】
さらに、このエラストマーは、本発明の潤滑剤の作用後に、好ましくは比較的一定の引張−伸び挙動を示す。そして、この引張強度は100℃で潤滑剤の作用168h及び1000h後DIN 53504に応じて測定して(DIN ISO 1817)、好ましくは最高30%減少し、その際、この値は特にエラストマーSRE NBR 28/SXに当てはまる。72 NBR 902又は75 FKM 585エラストマーの使用では、この引張強度は100℃で潤滑剤の作用168h及び1000h後DIN 53504に応じて測定して(DIN ISO 1817)、好ましくは最高50%減少する。75 FKM 170055エラストマーの使用では、好ましくは同様に、この引張強度は130℃で潤滑剤の作用168h及び1000h後DIN 53504に応じて測定して(DIN ISO 1817)、最高50%減少する。
【0132】
さらに、100℃で潤滑剤の作用168h及び1000h後DIN 53504に応じて測定した(DIN ISO 1817)破断点伸びは、好ましくは最高40%減少し、その際、この値は特にエラストマーSRE NBR 28/SXに当てはまる。72 NBR 902又は75 FKM 585エラストマーの使用では、この破断点伸びは100℃で潤滑剤の作用168h及び1000h後DIN 53504に応じて測定して(DIN ISO 1817)、好ましくは最高60%減少する。75 FKM 170055エラストマーの使用では、好ましくは同様に、この引張強度は130℃で潤滑剤の作用168h及び1000h後DIN 53504に応じて測定して(DIN ISO 1817)、最高60%減少する。
【0133】
さらに、本発明の潤滑剤は、傑出した流動能を低温で示す。そして、例えばASTM D2983に応じて−26℃で測定した粘度は好ましくは最高150000mPas、好ましくは最高100000mPas、そして特に好ましくは最高70000mPasであることができる。
【0134】
さらに、好ましい潤滑剤のASTM D97に応じたPourpoint(PP)は、−30℃以下、好ましくは−35℃以下、特に好ましくは−45℃以下の値をとることができる。
【0135】
本発明の潤滑剤は、金属疲労及び摩耗に意外なまでに強力に対抗作用し、そのため、伝動装置の寿命は高められることができる。この知見は、種々の手法で確認できる。
【0136】
そして、特にSRV試験はDIN 51834−4に応じて測定して意外までに低い摩損因子(wear factor)を示す(負荷:300N、ストローク長さ:1200μm、頻度:50Hz、期間:3h)。そして、好ましい潤滑剤は60℃の温度で好ましくは最高1200mm
3/10
6、特に最高1100mm
3/10
6、特に好ましくは1000mm
3/10
6の摩損因子を達成する。110℃では好ましい潤滑剤は好ましくは最高650mm
3/10
6、特に最高550mm
3/10
6、特に好ましくは500mm
3/10
6の摩損因子を達成する。
【0137】
さらに、本発明の潤滑剤は、米国特許庁(USPTO)で出願番号11/866,696で2007年10月3日に提出されたUS 2009−0093384 A1に記載のマイクロピッティング試験に応じた意外な利点を有する。好ましい潤滑剤は、少なくとも8、特に少なくとも9、特に好ましくは少なくとも10の負荷工程でマイクロピッティングに関する障害を示さない(Forschungsvereinigung Antriebstechnik e.V., Lyoner Strasse 18, D-60528 Frankfurt/Mainにより公開された、FVA Information Sheet "Micropitting," No . 54/ I-IVに説明される方法に応じて測定)。
【0138】
本発明の潤滑剤は、特に伝動装置油として使用できる。この場合に、潤滑剤は特に、風力発電所、軸駆動及び車両駆動、特に船舶駆動において使用される伝動装置のために適する。風力発電所のための伝動装置は、好ましくは、スパーギア伝動装置及び/又は遊星伝動装置を含むことができ、その際、伝動装置にかかる大きな力を伝達するために、特に、2〜3のスパーギア段階を有するスパーギア伝動装置、1の遊星段階及び2のスパーギア伝動装置を有する遊星伝動装置、及び、2の遊星段階及び1のスパーギア伝動装置を有する遊星伝動装置が好ましい。この風力発電所は、好ましくは、少なくとも50kW、特に少なくとも300kW、特にとりわけ好ましくは少なくとも2300kWの出力を有することができ、その際、このロータートルクは好ましくは少なくとも8000Nm、特に少なくとも100000Nm、特に好ましくは少なくとも1300000Nmであることができる。
【0139】
次に、本発明を、実施例及び比較例につき説明するが、これによって本発明は限定されるものではない。
【0140】
実施例及び比較例
ポリマーの製造のための一般的規定
KPG撹拌機(サーベル形)及びガラス製のKPGR撹拌ケース(1分あたり150回転で運動)、温度計及び還流冷却器を備える1リットルの四ツ口丸底フラスコ中に、モノマー混合物(その組成は表1に説明されている、例えば実施例2のためにはC
12〜C
15−アルキルメタクリラートからなる)760.0gを、ドデシルメルカプタン14.06g及びtert−ドデシルメルカプタン14.06g及び溶媒として鉱油Nexbase 3020 32.4gと一緒に装入した。温度を110℃に調整した。その後、Nexbase 3020 7.60gに溶解させたtert−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート1.9g(20%溶液)を3時間のうちに計量供給し、その際、初めの1時間のうちに記載した量の5%を、第2の1時間のうちに25%、そして、第3の1時間のうち70%を添加した。120分及び180分後に、再度そのつどtert−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート1.52gを添加した。全反応時間は6時間である。
【0141】
このポリマーの質量平均分子量M
w並びに多分散指数PDIをGPCで測定した。この測定をテトラヒドロフラン中で35℃で、≧25個の標準1セットからのポリメチルメタクリラート検量線に対して行い(Polymer Standards Service又はPolymer Laboratories)、そのM
peakは対数的に均一に5・10
6から2・10
2g/molの範囲にわたり分布していた。6つのカラムからの組み合わせ(Polymer Standards Service SDV 100Å/ 2x SDV LXL / 2x SDV 100Å/ Shodex KF-800D)を使用した。シグナル記録のために、RI検出器(Agilent 1100 Series)を使用した。
【0142】
表1:使用されたポリマーの特性
【表1】
【0143】
LMA:12〜14個のC原子をアルキル基中に有するアルキルメタクリラート、その際、このアルキル基は主として鎖状の基を有する混合物である(鎖状の基の割合は約98質量%;C
12の割合は約73質量%、C
14の割合は約25質量%)
IDMA:約10個のC原子をアルキル基中に有するアルキルメタクリラート、その際、このアルキル基は主として分枝状の基を有する混合物である(分枝状の基の割合は約98質量%;C
10の割合は約89.9質量%、C
11の割合は約4.6質量%)
LIMA:12〜15個のC原子をアルキル基中に有するアルキルメタクリラート、その際、このアルキル基は分枝状の基及び鎖状の基を有する混合物である(C
12分枝の割合:約12質量%及びC
12鎖状;約11.3質量%;
C
13分枝の割合:約17.3質量%及びC
13鎖状:約13.5質量%;
C
14分枝の割合:約15.7質量%及びC
14鎖状:約11.9質量%;
C
15分枝の割合:約9.8質量%及びC
15鎖状:約6.2質量%;
メチル分枝の割合 約14%、エチル分枝の割合 約10%、プロピル分枝の割合 約10%、より長鎖の分枝、特にブチル以上の割合、約17%(鎖状及び分枝状の基の合計に対する)
iC
13MA 約13個のC原子をアルキル基中に有するアルキルメタクリラート、その際、このアルキル基は主として分枝している(C
13分枝の割合:約99質量%)、
C
13〜C
15MA 13〜15個のC原子をアルキル基中に有するアルキルメタクリラート、その際、このアルキル基は分枝状の基及び鎖状の基を有する混合物である(C
13分枝の割合:約35.6質量%及びC
13鎖状;約30.7質量%;
C
15分枝の割合:約16.9質量%及びC
15鎖状:約13.9質量%)。
【0144】
鎖状及び分枝状の基の割合は、GC及び
13C−NMR及び
1H−NMRにより測定した。
13Cスペクトルを30℃で
13Cシグナルの定量決定のための標準パルスシーケンスの使用下で実施し、その際、特に10sの緩和時間を選択し、そして、広バンドカップリングを核−オーヴァーハウザー効果の抑制のために使用した。シグナル−ノイズ−比(S/N比)の改善のために、少なくとも1000回の記録(Scans)を行った。
【0145】
得られた
13C−NMRデータを、S/N比を最適化するために、数学的方法を用いて加工した(3Hzの線拡大化)。
13C−NMRシグナルを2D−NMR実験を用いて
13C−シグナルの増分化学シフトの影響を考慮して割り当てた。以下の
13Cシグナル面積の積分を、異性体分布を算出するために使用した。
【0146】
【表2】
【0147】
アルコールの異性体分布をパーセントで得るために、シグナル面積を100%に統一した。
【0148】
この結果を
1H−NMRを用いて検証した:
【表3】
【0149】
さらに、分枝度を −メチル基(0.88ppm)及び −CH
2−基(3.3−3.7ppm)のシグナル面積の評価を介して検証した。
【0150】
適用検査
得られたポリマーの特性を、2.65質量%の助剤添加(Hitec
(R) 307)及びポリアルファオレフィン(PAO8)を含む潤滑剤組成物に基づき検証した。PAO及びポリマーの量は、97.35質量%まで補われた。表1には、ポリマーの割合だけが記載されており、その際、潤滑剤を40℃で動粘度320mm
2/s(KV
40)に調節した。40℃及び100℃で測定した動粘度KV
40又はKV
100をASTM D 445に応じて測定した。粘度指数VIは、ASTM D 2270に応じて明らかになった。Pour Pointを、ASTM D97に応じて測定した。−26℃での低温流動能をASTM D2983に応じて測定した(ブルックフィールド;BF)。得られた結果は表2に説明されている。ブルックフィールド粘度を2つの測定値をもとに算出し、その際、算術平均値が挙げられている。
【0151】
表2
【表4】
さらに、第2の基油の影響を示す試験を実施した。このために、種々の潤滑剤を製造し、その際、その組成及びその特性は表3に記載されている。この測定方法は前もって説明されており、その際、全ての割合は質量%に対する。
【0152】
表3
【表5】
【0153】
シール相容性の検査のために、適用8に説明した、実施例1に応じたポリマー約51質量%及びPAO8 46.35質量%を有する潤滑剤組成物を使用した。この測定データをDIN 53521又はDIN 53505に応じて得た。得られたデータは表4に説明されている。
【0154】
表4:適用8に説明した潤滑剤のシール相容性
【表6】
【0155】
さらに、本発明の組成物による摩損の改善を検査した。このため、実施例1に応じたポリマー約51.2質量%、Hitec 307 2.65質量%及びPAO8 46.15質量%を用いて潤滑剤を製造し、かつ、DIN 51834−4に応じたSVR試験に供した。潤滑剤は、60℃での測定の際に摩損因子(wear factor)987を摩損直径(wear diameter)608μmで示した(60℃、300N、1200μ、50Hz、3h)。110℃での測定の際に摩損因子(wear factor)472を摩損直径(wear diameter)655μmで示した(110℃、300N、1200μ、50Hz、3h)。この摩耗係数は0.072であった。
【0156】
さらに、灰色汚点形成のための試験を、PCS Instruments (PCS Micropitting rig)の機器を用いて実施した。この場合に、異なる負荷でもって3つのロールを相互に潤滑剤の使用下で駆動させた。この走行表面の速度は約3.5m/sであり、その際、通常は3つの負荷段階が選択される。そして、このロールをまず1時間1.1GPaで、引き続き1時間1.4GPaで、最後に2時間1.7Gpaで運転させた。この負荷により発生するロール摩損を、各段階後に測定した。この試験を60℃及び90℃で適用4で前述した潤滑剤(実施例4に応じたポリマー46.0質量%、PAO8 51.35)で実施した。比較例として、風力発電所において使用される、種々のPAOからの通常の処方物を選択した。
【0157】
表5:Micropitting試験の結果
【表7】