特許第5795069号(P5795069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795069
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ハイブリッド点火装置の電気的配置
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/00 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   F02P3/00 A
   F02P3/00 E
   F02P3/00 G
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-527256(P2013-527256)
(86)(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公表番号】特表2013-539519(P2013-539519A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】US2011049924
(87)【国際公開番号】WO2012030934
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年5月28日
(31)【優先権主張番号】61/378,673
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506146389
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・イグニション・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL IGNITION COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バローズ,ジョン・アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】リコウスキー,ジェームス・ディ
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−537730(JP,A)
【文献】 特開2002−327672(JP,A)
【文献】 特開昭61−294167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00− 3/12
F02P 7/00−17/00
F02P 19/00−23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室の燃料および空気の混合気に点火するためのコロナ点火システムであって、
極と
前記電極から放電が可能な量のエネルギを、前記電極へ伝達するコロナ駆動回路と
前記コロナ駆動回路が前記電極へ前記エネルギを伝達する間にエネルギを蓄えるとともに、アーク放電を検出したときに前記アーク放電を意図的に維持するように前記電極へ蓄積エネルギを伝達するための、前記コロナ駆動回路を補助するエネルギ回路とを備える、コロナ点火システム。
【請求項2】
アークフィードバック信号を受けるとともに、前記アーク放電の検出時に前記エネルギ回路へアーク制御信号を伝達するエネルギコントローラをさらに備え、
前記アーク制御信号は、前記電極への前記蓄積エネルギの伝達を開始する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記エネルギ回路は、前記エネルギを蓄えるためのエネルギキャパシタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
キャパシタンスを有するとともに前記電極を含む燃焼エンドアセンブリをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電極への前記エネルギの伝達に先立って前記エネルギを変換するための、共振インダクタと前記燃焼エンドアセンブリの前記キャパシタンスとを含むLC回路をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記蓄積エネルギの電圧を増大させるために、前記エネルギ回路と、前記LC回路の前記共振インダクタとへ電気的に接続されるエネルギトランスをさらに備える、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記共振インダクタを通して前記蓄積エネルギを伝達するために、前記エネルギトランスは、前記エネルギ回路と、前記LC回路の前記共振インダクタとの間に配置される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記エネルギトランスは、前記LC回路の前記共振インダクタと統合される、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記電極へ前記蓄積エネルギを直接伝達するために、前記エネルギトランスは、前記LC回路の前記共振インダクタを補助する、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
所定の期間中に、前記電極と、前記コロナ駆動回路および前記エネルギ回路の少なくとも1つとの間のエネルギの伝達を妨げるブロッキング素子をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
燃焼室の燃料および空気の混合気に点火するための方法であって、
極から放電が可能な量のエネルギを、コロナ駆動回路から前記電極へ伝達するステップと、
前記電極へ前記エネルギを提供しながら、前記コロナ駆動回路を補助するエネルギ回路にエネルギを蓄えるステップと、
前記電極から放出されるアーク放電を検出するステップと、
前記アーク放電を検出したときに、前記アーク放電を意図的に維持するステップとを含み、
前記アーク放電を意図的に維持するステップは、前記エネルギ回路から前記電極へ蓄積エネルギを伝達するステップを含む、方法。
【請求項12】
前記アーク放電を検出したときに前記蓄積エネルギを伝達するステップを開始するために、前記エネルギ回路へアーク制御信号を伝達するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アーク放電を検出したときに前記アーク制御信号を伝達するステップを開始するために、アークフィードバック信号を伝達するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アーク放電を維持可能な量のエネルギを、前記エネルギ回路に維持するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記エネルギを蓄えるステップは、前記エネルギ回路のエネルギキャパシタを充電するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記エネルギ回路から前記電極へ前記蓄積エネルギを伝達するときに前記エネルギ回路の前記エネルギキャパシタを再充電するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
所定の期間に亘って前記電極へ前記蓄積エネルギを伝達するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記電極への前記蓄積エネルギの伝達に先立って前記蓄積エネルギの電圧を増大するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記エネルギを蓄えるステップは、前記コロナ駆動回路から前記エネルギ回路へエネルギを伝達するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
所定の期間中に、前記電極と、前記コロナ駆動回路および前記エネルギ回路の少なくとも1つとの間におけるエネルギの伝達を妨げるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本願は、2010年8月31日に出願された出願シリアル番号61/378,673の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、一般に、燃焼室の燃料および空気の混合気に点火するためのコロナ点火システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.先行技術の説明
従来の火花点火システムの高い温度および関連する結果を伴わないロバストな点火を提供するためには、多くの場合、コロナ点火システムが望ましい。コロナ点火システムは、燃焼室内へ伸びる電極を有するイグナイタを含む。接地は、燃焼室の壁部、または燃焼室において往復するピストンによって提供される。イグナイタは、接地電極を含まない。イグナイタの電極は、エネルギ源からエネルギを受け取り、好ましくはコロナ放電の形で、放電を放出する。コロナ放電は、電極から接地への高い電気的インピーダンスを有する複数のイオン化されたストリーマを含む電界である。燃焼室へ燃料が供給されると、電界は、燃焼室内の燃料および空気の混合気に点火する。コロナ点火システムの一例は、フリーン(Freen)に対する米国特許第6,883,507に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極へエネルギが供給されるにつれて、電界におけるイオンの集中が増大する。ロバストなコロナ放電を提供するためには、高電圧が望ましい。しかしながら、電圧があるしきい値を超えて上昇すると、増大するイオンの集中は、典型的には、アーク放電へコロナ放電を変形させるカスケードプロセスをもたらす。アーク放電は、電極から接地への導電経路を提供する単一のストリーマを含む電界である。典型的なコロナ点火システムにおいては、アーク放電が発生すると、システムの蓄積エネルギのすべては、即座に放電されて枯渇する。アーク放電は、持続時間が短い可能性があるので、信頼性のある点火を提供できない。したがって、電極へ提供されるエネルギレベルは、典型的には、アーク放電へ切り替わることなくコロナ放電を提供できる最大電圧である。
【0005】
多くの場合、電圧がコロナ放電しきい値を通過して、アーク放電が発生する。さらに、他の状況またはエンジンコンディションが、アーク放電を引き起こし得る。また、イグナイタがカーボンデポジットの燃料によって汚されるとき、またはピストンがイグナイタに接近し過ぎるとき、もしくは電極と接地との間における低い電気的抵抗がある他の状況の間にも、アーク放電が発生する可能性がある。アーク放電は、典型的には、意図せずに形成され、望ましくないが、アーク放電が意図的に形成されるある状況が存在する。アーク放電を止めてコロナ放電に戻す試みにおいて、アーク放電が望ましくないときは、電極へ供給される電圧は、即座に低減される。しかしながら、電圧を低減することは、多くの場合、コロナ放電に戻して信頼性のある点火を提供することにおいて実用的ではない、または効果的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の1つの局面は、燃焼室の燃料および空気の混合気に点火するためのコロナ点火システムを提供する。システムは、電気的放電を提供するための電極と、コロナ駆動回路と、エネルギ蓄積回路とを含む。コロナ駆動回路は、コロナ放電を維持可能な量のエネルギを、電極へ伝達する。エネルギ回路は、コロナ駆動回路を補助するとともに、コロナ駆動回路が電極へエネルギを伝達する間にエネルギを蓄える。エネルギ回路は、アーク放電の検出時にアーク放電を意図的に維持するように電極へ蓄積エネルギを伝達する。
【0007】
発明のもう1つの局面は、燃焼室の燃料および空気の混合気に点火するための方法を提供する。方法は、コロナ放電を維持可能な量のエネルギを、コロナ駆動回路から電極へ伝達するステップと、電極へエネルギを提供しながら、コロナ駆動回路を補助するエネルギ回路にエネルギを蓄えるステップとを含む。方法は、電極から放出されるアーク放電を検出するステップと、アーク放電を検出したときにエネルギ回路から電極へ蓄積エネルギを伝達することによってアーク放電を意図的に維持するステップとをさらに含む。
【0008】
先行技術のシステムのようにアーク放電の開始において電極へ提供されるエネルギを低減する代わりに、本発明のシステムおよび方法は、アーク放電を意図的に維持して、確実にロバストで信頼性のある点火が行われるように、補助エネルギ回路に蓄えられたエネルギを電極へ提供するステップを含む。
【0009】
付随する図面に関連して考慮される後続の詳細な説明への参照によってより理解されるので、本発明の他の利点は、容易に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】代替的なエネルギ供給経路A,B,Cを示す発明の1つの実施の形態に従うコロナ点火システムの図である。
図2】エネルギ供給経路Aを示す図1のシステムの図である。
図3】エネルギ供給経路Bを示す図1のシステムの図である。
図4】エネルギ供給経路Cを示す図1のシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
可能な実施の形態の詳細な説明
発明の1つの局面は、燃焼室32の燃料および空気の混合気に点火するためのコロナ点火システム20を提供する。コロナ点火システム20は、燃焼エンドアセンブリ22と、コロナ駆動回路26と、エネルギ回路28と称されるエネルギ蓄積供給回路とを備える。燃焼エンドアセンブリ22は、燃焼室32に突出する電極30を含むイグナイタ24を備える。コロナ駆動回路26は、電極30からアーク放電かもしれないが典型的にはコロナ放電である放電が可能な量のエネルギを、電極30へ伝達する。エネルギ回路28は、コロナ駆動回路26を補助し、コロナ駆動回路26が電極30へエネルギを伝達する間にエネルギを蓄える。アーク放電が検出されると、エネルギ回路28は、電極30へ蓄積エネルギを伝達してアーク放電29を意図的に維持する。電極30へ伝達された蓄積エネルギは、ロバストなアーク放電29を提供し、その結果、信頼性のある点火を提供する。
【0012】
燃焼エンドアセンブリ22のイグナイタ24は、エンジン(図示せず)、典型的にはハイブリッド車両のような自動車の内燃機関、またはガスタービンエンジンのシリンダヘッドの中に取り付けられる。イグナイタ24の電極30は、典型的には、電界を放出するための燃焼ティップを含む。図1に示されるように、システム20は、コロナ駆動回路26へ、最終的には電極30へエネルギを提供する駆動力源34を含む。自動車においては、駆動力源34は、典型的には12ボルトバッテリであるが、他の電源であってもよい。
【0013】
コロナ点火システム20は、所定のタイミング、持続期間、および電圧レベルでエネルギを電極30へ提供するように設計され、それによって、典型的には、コロナ放電の形で電極30が電界を放出し、電界の全長に沿って点火が発生する。所定のタイミング、持続期間、および電圧レベルは、車両のエンジンコントロールユニット(ECU)によって算出または決定されてもよい。電圧レベルは、典型的には、アーク放電を形成することなくコロナ放電を提供可能な最大電圧である。システム20は、駆動回路コントローラ36を含む。駆動回路コントローラ36は、コロナ放電を得るために必要とされる所定のタイミング、持続期間、および電圧レベルを示す、コロナ駆動回路26への駆動制御信号38を提供する。駆動回路コントローラ36は、ECUに統合されてもよいし、または分離したユニットとされてもよい。
【0014】
駆動力源34からエネルギを受け取り、そして、駆動回路コントローラ36から駆動制御信号38を受け取ると、コロナ駆動回路26は、AC電流を出力するとともに、およびコロナ放電を得るために必要とされる所定のタイミング、持続時間、および電圧レベルに合うようにエネルギを操作する。また、コロナ駆動回路26は、以下にさらに説明されるが、特定の共振周波数に一致するようにエネルギを操作する。コロナ駆動回路26は、駆動トランス44と称されるトランスを含み得る高周波発振回路である。回路26は、駆動力源34によって提供されるエネルギを操作するために用いられる。
【0015】
図1に示されるように、その後、コロナ駆動回路26は、調整された回路またはLC回路48へ操作されたエネルギのAC電流を伝達する。LC回路は、LC共振回路またはLC共振器とも称される。図1に示されるように、LC回路は、共振インダクタ46、および燃焼エンドアセンブリ22のキャパシタンス(C1)によって提供される。共振インダクタ46は、所定の電圧(L1)で動作し、銅のような金属のコイルによって提供される。コイルは、第1のコイル50と称され、イグナイタ24の電極30へ結合される。また、共振インダクタ46は、共振周波数で動作する。上記に示唆されたように、LC回路48からコロナ駆動回路26へのフィードバックループ信号52は、コロナ駆動回路26へ共振周波数を伝達し、コロナ駆動回路26は、共振周波数に一致するように供給されたエネルギを操作する。また、システム20は、共振インダクタ46と電極30との間の電気的な接続要素および絶縁要素を含み得る。
【0016】
コロナ駆動回路26からエネルギを受け取ると、LC回路48は、電極30への伝達に先立ってエネルギを変換する。LC回路48は、典型的には電圧を増幅して電流を低減する。1つの実施の形態においては、LC回路48は、最大15000ボルトの電圧に、典型的には5000ボルトから10000ボルトまでの電圧にエネルギを増大する。エネルギは、その後、LC回路48から電極30へ伝達されて、コロナ放電を提供する。
【0017】
上述のように、イグナイタ24の電極30がLC回路48からエネルギを受け取ると、共振は、電極30で高電圧を発生し、電極30は、好ましくはコロナ放電の形で、場合によってはアーク放電の形で燃焼室32の周辺空気において電界を放出する。電極30へ提供される所定の電圧レベルは、典型的には、アーク放電へ切り替わることなくコロナ放電を提供し得る最大電圧である。燃料が燃焼室32へ供給されると、電界は、電界の全長に沿って燃焼室32の燃料および空気の混合気に点火する。電極がコロナ放電を放出し、信頼性のある点火を提供していると、コロナ点火システム20は、エネルギ回路28からの蓄積エネルギを採用することなく動作し得る。
【0018】
しかしながら、アーク放電が発生する事象において、またはコロナ放電がアーク放電に切り替わると、信頼性のある点火を確実にするために、起動時において、およびシステム20が動作する間と同時にコロナ駆動回路26を補助するエネルギ回路28に補助的なエネルギが蓄えられる。アーク放電の事象において、またはコロナ放電がアーク放電に切り替わると、コロナ駆動回路26のエネルギは、即座に枯渇する。アーク放電は、LC共振器48に蓄えられた少ない量のエネルギを即座に放電させる。典型的には、アーク放電は短時間にとどまり、信頼性のある点火を確実にするには十分な長さではない。
【0019】
したがって、確実にアーク放電の発生時の信頼性のある点火を行うために、エネルギ回路28に蓄えられたエネルギは、システム20へ即座に放電され、最終的には電極30へ伝達されて、アーク放電29を意図的に維持する。蓄積エネルギは、ロバストなレベル、および持続期間でアーク放電29を維持するために十分な量で電極30へ伝達され、意図的に維持されたアーク放電29は、燃焼室32内の燃料および空気の混合物に点火する。
【0020】
上述のように、様々な条件は、アーク放電の開始をトリガリングし得るが、典型的には、電極30へ供給される電圧があるしきい値を上回ったときに、アーク放電が発生する。本技術分野において知られる任意の方法が、アーク放電の開始または存在を検出するために用いられ得る。アーク放電の検出時に、アークフィードバック信号56は、エネルギコントローラ58と称される、エネルギ回路28のコントローラへ伝達される。エネルギコントローラ58は、アークフィードバック信号56を受け取り、その後、エネルギ回路28へアーク制御信号60を伝達して、エネルギ回路28に電極30へ伝達するための蓄積エネルギの放電を伝達および指示する。エネルギコントローラ58は、ECUまたは駆動回路コントローラ36に統合されてもよいし、もしくは分離されたユニットとされてもよい。
【0021】
エネルギ回路28は、典型的には、付加的なエネルギを蓄えるための、エネルギキャパシタ62と称されるキャパシタを含む。エネルギキャパシタ62は、LC共振回路48またはコロナ点火システム20で典型的に使用される他のキャパシタによって蓄えられる量よりも、典型的には、100から200倍多い量のエネルギを蓄える。上述にように、コロナ点火システム20に典型的に蓄えられるエネルギの量は、一旦アーク放電が発生するとアーク放電を開始および維持するために十分ではない。
【0022】
1つの実施の形態においては、図1〜4に示されるように、コロナ点火システム20は、エネルギキャパシタ62へ追加のエネルギを提供する、エネルギ電源68と称される補助電源を含む。代替的には、エネルギ回路28へ供給されるエネルギは、コロナ駆動回路26と同じ電源から供給されてもよい。もう1つの実施の形態においては、追加のエネルギは、コロナ駆動回路26からエネルギ回路28へ伝達される。
【0023】
エネルギコントローラ58からアーク制御信号60を受け取ると、エネルギ回路28は、最終的には電極30へ伝達される蓄積エネルギのいくらかまたはすべてを伝達または放電する。したがって、アーク放電の検出時に、蓄積エネルギ供給は、即座に枯渇する。一旦蓄積エネルギが放電されると、エネルギ回路28は即座にリセットされ、補助エネルギは、エネルギ回路28へ再び供給される。したがって、システム20は、次のアーク放電の発生およびアーク制御信号60の受信時に電極30へ蓄積エネルギを放電するための準備が再びできる。
【0024】
図1〜4に示されるように、コロナ点火システム20は、いくつかの異なる経路、たとえば経路A、B、およびCに従って、電極30へ蓄積エネルギを伝達し得る。エネルギ回路28から初めに放電されるエネルギは、典型的には数百ボルトであり、アーク放電を開始または維持するために十分ではないかもしれない。したがって、システム20は、電極30への伝達に先立ってエネルギの電圧を増大するための、エネルギトランス70と称される、もう1つのトランスを含んでもよい。エネルギトランス70は、エネルギ回路28へ電気的に接続され、システム20の少なくとも1つの他の要素、LC回路48または電極30へ電気的に接続され、第2のコイル72と称される、少なくとも1つの金属のコイルを含む。
【0025】
図2〜4の実施の形態においては、エネルギトランス70は、エネルギ回路28から蓄積エネルギを受け取り、最終的に電極30へ伝達する前にエネルギの電圧を増大する。また、エネルギトランス70は、電極30とエネルギ回路28との間における伝達からエネルギをブロックするために、および回路26,28,48へのダメージを防ぐために使用され得る。もう1つの実施の形態においては、エネルギトランス70は、LC回路48の共振インダクタ46に統合される。さらにもう1つの実施の形態においては、非常に高い電圧は、エネルギ回路28のエネルギキャパシタ62において蓄えられ、したがって、エネルギトランス70は必要ない。
【0026】
1つの実施の形態によると、点火を確実にすることができるロバストなアーク放電29を維持するために、蓄積エネルギは、エネルギ回路28から放電され、瞬間的に放電されるというよりも、所定の期間に亘って電極30へ伝達される。1つの実施の形態においては、時定数と称される所定の期間は、およそ1ミリ秒である。時定数は、共振インダクタ46の電圧(L1)および燃焼エンドアセンブリ22のキャパシタンス(C1)と比較することによって定量化され得る。時定数は、L1/C1よりも、典型的には、100から2000倍長くなければならない。エネルギ回路28、エネルギトランス70、およびLC回路48は、所定の時定数を満足するように調整される。
【0027】
所定の時定数を達成して、ロバストなアーク放電29を得るために、少なくとも1つのブロッキング素子74が、所定の期間中に、電極30、コロナ駆動回路26、エネルギ回路28、およびシステム20の他の要素への、およびこれらからの、またはこれらの間における伝達から、エネルギをブロックするように用いられ得る。また、ブロッキング素子74は、システム20の要素間のエネルギ伝達を促進するように設計され得る。1つの実施の形態においては、ブロッキング素子74は、受動的であり、たとえば抵抗要素およびリアクタンス要素からなるフィルタである。もう1つの実施の形態においては、ブロッキング素子74は、線形能動素子、たとえばダイオード、TVS、またはスパークギャップユニットを含む。さらにもう1つの実施の形態においては、ブロッキング素子74は、フルアクティブ、たとえばトランジスタである。さらにもう1つの実施の形態においては、エネルギは、コロナ駆動回路26によってエネルギ回路28へ供給され、ブロッキング素子74は、コロナ駆動回路26からエネルギキャパシタ62へエネルギを伝達するために用いられる。ブロッキング素子74の設計およびそれらの実現は、コロナ点火システム20およびシステム20の用途の特定の要件による。
【0028】
図2は、電極30へ経路Aに沿ってエネルギ回路28が蓄積エネルギを伝達する、1つの代表的な実施の形態を説明する。この実施の形態によると、エネルギトランス70は、エネルギ回路28とLC回路48の共振インダクタ46との間に配置される。蓄積エネルギは、エネルギ回路28からエネルギトランス70を通って、その後、LC回路48の共振インダクタ46を通って、最終的に電極30へ伝達される。エネルギトランス70は、LC回路48への蓄積エネルギの伝達に先立って、蓄積エネルギの電圧を増大する。また、図2の実施の形態は、エネルギトランス70およびLC回路48間の1つのブロッキング素子74と、LC回路48およびコロナ駆動回路26との間のもう1つのブロッキング素子74とを含み、電極30およびコロナ駆動回路26またはエネルギ回路28間でエネルギが伝達されることを防ぐ。エネルギ回路28、エネルギトランス70、およびブロッキング素子74は、ロバストなアーク放電29を達成するための時定数に応じて蓄積エネルギを供給するように調整される。
【0029】
図3は、電極30へ経路Bに沿ってエネルギ回路28が蓄積エネルギを伝達するとともに、LC回路48にエネルギトランス70が統合される、もう1つの代表的な実施の形態を説明する。この例示的な実施の形態は、単純な構成およびこれによる低コストのために、図2および4の実施の形態においてたびたび好適である。統合されたエネルギトランス70は、共振インダクタ46の第1のコイル50を第2のコイル72へ磁気的に結合することによって形成される。第2のコイル72の少数のターンは、共振インダクタ46の第1のコイル50と同一の磁気コアに巻かれるが、第2のコイル72は、第1のコイル50から電気的に絶縁される。蓄積エネルギは、エネルギ回路28から統合されたエネルギトランス70およびLC回路48を通して最終的に電極30へ伝達される。統合されたエネルギトランス70は、電極30への蓄積エネルギの伝達に先立って、蓄積エネルギの電圧を増大する。また、図3の実施の形態は、統合されたエネルギトランス70とLC回路48との間の1つのブロッキング素子74を含む。ブロッキング素子74は、エネルギ回路28が電極30からのエネルギを、たとえばアーク放電がまだ発生していないときのコロナ放電からエネルギを「流す」ことを妨げてもよい。代替的には、ブロッキング素子74は、任意の流されたエネルギをエネルギ回路28のエネルギキャパシタ62へ戻してもよい。エネルギ回路28、トランス、およびブロッキング素子74は、ロバストなアーク放電を達成するための時定数に応じて、および所定の期間に亘って蓄積エネルギを供給するように調整される。
【0030】
図4は、電極30へ経路Cに沿ってエネルギ回路28が蓄積エネルギを伝達する、他の代表的な実施の形態を説明する。この実施の形態によると、エネルギトランス70は、LC回路48の共振インダクタ46を補助し、エネルギ回路28と電極30との間に配置される。この実施の形態においては、エネルギは、エネルギ回路28から電極30へ直接伝達され、LC回路48を通らない。
【0031】
また、図4の実施の形態は、アーク放電が発生する前に、電極30から回路26,28,48へコロナ放電などからのエネルギが伝達されることを妨げるための、エネルギトランス70とLC回路48との間の1つのブロッキング素子74を含む。もう1つのブロッキング素子74は、コロナ駆動回路26とLC回路48との間に位置し、電極30からコロナ駆動回路26へエネルギが伝達されることを妨げるとともに、LC回路48を通したエネルギ伝達を可能とする。エネルギ回路28、エネルギトランス70、およびブロッキング素子74は、ロバストなアーク放電を達成するために所定の期間に亘って蓄積エネルギを供給するように調整される。
【0032】
発明のもう1つの局面は、燃焼室の燃料および空気の混合気に点火するための方法を提供する。上記に示唆されたように、方法は、エネルギ回路28へエネルギを供給しながら、コロナ駆動回路26へエネルギおよび駆動制御信号38を供給するステップを含む。そして、方法は、電極30から電気的放電を可能な量のエネルギを、コロナ駆動回路26から電極30へ伝達するステップを含む。1つの実施の形態においては、コロナ駆動回路26から電極30へエネルギを伝達するステップは、所定の量のエネルギを決定および伝達するステップを含み、所定の量のエネルギは、コロナ放電を放出するとともにアーク放電を回避することが可能である。
【0033】
コロナ駆動回路26から電極30へエネルギが伝達される間に、方法は、コロナ駆動回路26を補助するエネルギ回路28にエネルギを供給するステップおよび蓄えるステップを含む。エネルギ回路28にエネルギを蓄えるステップは、典型的には、エネルギ回路28のエネルギキャパシタ62を充電するステップを含む。1つの実施の形態においては、エネルギを蓄えるステップは、コロナ駆動回路26からエネルギ回路28へエネルギを伝達するステップを含む。
【0034】
また、方法は、電極30から放出されるアーク放電を検出するステップを含む。アーク放電の開始が一旦検出されると、方法は、エネルギコントローラ58へアークフィードバック信号56を伝達するステップと、それから、エネルギコントローラ58からエネルギ回路28へアーク制御信号60を伝達するステップとを含む。アーク制御信号60は、エネルギ回路28から電極30へ蓄積エネルギを伝達または放電して、それによって、アーク放電29を意図的に維持するステップを開始する。
【0035】
十分な蓄積エネルギが放電されるとともに電極30へ伝達されるとすぐに、方法は、エネルギ回路28のエネルギキャパシタ62を再充電するステップを含む。方法は、アーク放電29を意図的に維持可能とする十分な量のエネルギを、エネルギ回路28に維持するステップを含む。したがって、システム20は、次のアーク放電の発生のための準備をすぐにできる。
【0036】
上述のように、ロバストなアーク放電29を維持するように、方法は、所定の期間に亘って時定数に応じて、電極30へ蓄積エネルギを伝達するステップを含む。1つの実施の形態においては、方法は、所定の期間または時定数を算出するステップと、アーク制御信号60においてエネルギ回路28へ時定数を伝達するステップとを含む。方法は、典型的には、電極30へ蓄積エネルギを伝達するステップに先立って、エネルギトランスによって蓄積エネルギの電圧を増大するステップを含む。1つの実施の形態においては、方法は、エネルギ回路28から電極30へ蓄積エネルギを伝達する間のような所定の期間中に、電極30、コロナ駆動回路26、エネルギ回路28、またはシステム20の他の要素への、およびこれらからの、またはこれらの間における伝達を防ぐために、または可能とするためにブロッキング素子74を使用するステップを含む。
【0037】
明らかなように、本発明の多くの修正および変更が上記教示に照らして可能であり、添付された特許請求の範囲の範囲内であるが具体的に記載されているもの以外で実行されてもよい。これらの先行する記述は、発明の新規性がその有用性を発揮する任意の組み合わせをカバーするように解釈されるべきである。装置クレームにおける「前記(said)」という単語の使用は、クレームの範囲に含まれることが意図される積極的な記述である先行詞を指すのに対して、「前記(the)」という単語は、クレームの範囲に含まれることが意図されない単語に先行する。さらに、特許請求の範囲における参照番号は、単に便宜的なものであって、いかなる限定もされずに読まれるべきである。
図1
図2
図3
図4