(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外膜タンパク質が、大腸菌の外膜タンパク質OmpA、大腸菌の脂質タンパク質(lipoprotein)のリーダー配列(leader sequence)に連結された大腸菌の外膜タンパク質OmpA、大腸菌の外膜タンパク質OmpS、大腸菌の外膜タンパク質LamB、大腸菌の外膜タンパク質PhoE、大腸菌の外膜タンパク質OmpC、大腸菌の外膜タンパク質FadL、サルモネラ菌株の外膜タンパク質OmpCおよびシュードモナス菌株の外膜タンパク質OprFからなる群より選択されるものである、請求項1に記載の多重合体。
前記大腸菌の脂質タンパク質(lipoprotein)のリーダー配列(leader sequence)に連結された大腸菌の外膜タンパク質OmpAが、配列番号8のアミノ酸配列からなるものである、請求項4に記載の多重合体。
前記抗菌ペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列を有し、前記ペプシン切断アミノ酸リンカーは、ロイシンであり、前記細胞表面発現母体は、配列番号8のアミノ酸配列を有するものである、請求項1に記載の多重合体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
前記の目的を達成するための一態様として、本発明は、下記式1または2で表される単量体を1個以上含む抗菌ペプチド重合体、および前記重合体に連結された細胞表面発現母体を含む抗菌ペプチド多重合体を提供する。
式(1):N末端−[抗菌ペプチド−ペプシン切断アミノ酸リンカー]−C末端
式(2):N末端−[ペプシン切断アミノ酸リンカー−抗菌ペプチド]−C末端
ただし、前記抗菌ペプチドは、ペプシン切断アミノ酸リンカーとは異なるアミノ酸からなる。
【0023】
また、他の態様として、本発明は、前記式1または2で表される単量体を1個以上含む抗菌ペプチド重合体を提供する。
【0024】
本発明において、用語「抗菌ペプチド重合体」は、ペプシンによって切断される1個以上の単量体がペプシン切断アミノ酸リンカーを介して繰り返し連結された重合体を意味し、用語「抗菌ペプチド多重合体(multimeric antimicrobial peptide)」は、前記抗菌ペプチド重合体に細胞表面発現母体が連結され、これを微生物で発現させる場合、微生物の細胞表面で発現可能な多重合体を意味する。
【0025】
したがって、
図1に示されるように、本発明の抗菌ペプチド多重合体は、抗菌ペプチド単量体内のペプシン切断アミノ酸リンカーが生体内消化酵素のペプシンによって切断されることにより、抗菌活性を有する抗菌ペプチド単量体に分離されるため、抗菌ペプチドを微生物から分離および精製することなく、これを発現する微生物を直接生菌状態で生体内に注入すると、抗菌ペプチドの抗菌活性により、病原菌退治および兔疫細胞活性などの効果を生体内で直接発生させることができるという利点がある。
【0026】
本発明において、前記単量体は、抗菌ペプチドのN末端またはC末端にペプシン切断アミノ酸リンカーが連結された形態を有する。
【0027】
前記抗菌ペプチドは、菌細胞内に浸透して作用することにより、バクテリアと真菌を含む広範な微生物に対して強力な抗菌活性を示すペプチドまたはこれらの誘導体であって、ペプシン切断アミノ酸リンカーを構成するアミノ酸は含まない。これは、抗菌ペプチド自体がペプシンによって切断されるのを防止するためのものである。
【0028】
また、前記抗菌ペプチドは、抗菌活性を有するペプチドまたはこれらの誘導体は含まれるが、好ましくは、 特許文献1に開示された抗菌ペプチドのうち、ペプシン切断アミノ酸リンカーを構成するアミノ酸を含まない抗菌ペプチドまたはこれらの誘導体であり得、より好ましくは、配列番号9ないし24のいずれか1つのアミノ酸配列を有する抗菌ペプチドまたはこれらの誘導体であり得、さらに好ましくは、配列番号9のアミノ酸配列を有する抗菌ペプチドまたはその誘導体であり得る。
【0029】
前記ペプシン切断アミノ酸リンカーは、1個以上のアミノ酸からなっていて、ペプチド結合を通じてそれぞれの抗菌ペプチドを相互に連結させるリンカーであると同時に、生体内酵素のペプシンによって切断され、抗菌ペプチド重合体がそれぞれの抗菌ペプチド単量体に分離されるようにする役割を果たす。本発明の抗菌ペプチド多重合体または抗菌ペプチド重合体は、上記式1または2で表される単量体を1個以上含むことができ、形質転換された微生物またはベクターが含むことのできる単量体の個数には制限がないが、好ましくは1個〜4個の単量体を含むことができる。
【0030】
本発明において、前記ペプシン切断アミノ酸リンカーは、リンカーの両末端が抗菌ペプチドの末端にペプチド結合によって連結されているが、消化酵素のペプシンが作用すると、リンカーの末端と抗菌ペプチドのN末端との間に形成されたペプチド結合が切れるようにするアミノ酸配列からなる。
【0031】
好ましくは、前記ペプシン切断アミノ酸リンカーは、ロイシン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)およびチロシン(Tyr)からなる群より選択されたいずれか1つ以上のアミノ酸、例えば、1個以上のロイシン、1個以上のフェニルアラニン、1個以上のチロシンまたは1個以上のアミノ酸を含むこれらの組み合わせからなり得、より好ましくは、1個のロイシン、1個のフェニルアラニンまたは1個のチロシンからなり得る。
【0032】
本発明の一実施例をみると、コンピュータプログラムを用いて抗菌ペプチドのC末端に任意のアミノ酸リンカーを介して連結した抗菌ペプチド重合体において、ペプシンによって切断される部位を予測し、その結果、アミノ酸リンカーのうち、1個のロイシン、1個のフェニルアラニンまたは1個のチロシンの末端と抗菌ペプチドのN末端との間に形成されたペプチド結合が切れて抗菌ペプチド単量体に分離できることを確認した(実施例1)。
【0033】
本発明において、前記細胞表面発現母体は、抗菌ペプチド重合体に連結され、抗菌ペプチド多重合体が微生物の細胞表面で発現されるようにする役割を果たす。
【0034】
前記細胞表面発現母体は、外膜タンパク質、脂質タンパク質(lipoprotein)、オートトランスポーター(autotranspoters)および表面付属物(surface appendage)のS層(S−layer)からなる群より選択されるものであり得、好ましくは、外膜タンパク質(outer membrane protein)であり得、より好ましくは、大腸菌の外膜タンパク質OmpA、大腸菌の脂質タンパク質(lipoprotein)のリーダー配列(leader sequence)に連結された、大腸菌の外膜タンパク質OmpA、大腸菌の外膜タンパク質OmpS、大腸菌の外膜タンパク質LamB、大腸菌の外膜タンパク質PhoE、大腸菌の外膜タンパク質OmpC、大腸菌の外膜タンパク質FadL、サルモネラ菌株の外膜タンパク質OmpCおよびシュードモナス菌株の外膜タンパク質OprFからなる群より選択される外膜タンパク質であり得、さらに好ましくは、大腸菌の脂質タンパク質(lipoprotein)のリーダー配列(leader sequence)に連結された大腸菌の外膜タンパク質OmpAからなる配列番号8の細胞表面発現母体(Lpp−OmpA)であり得る。
【0035】
本発明の一実施例では、例示的に、抗菌ペプチドのC末端にペプシン切断アミノ酸リンカーで1個のロイシンが付加された抗菌ペプチド単量体(Hinge2L)からなる抗菌ペプチド重合体Hinge2L
1、Hinge2L
2、Hinge2L
3およびHinge2L
4を作製し(実施例2)、抗菌ペプチド重合体のN末端に配列番号8のアミノ酸からなる細胞表面発現母体(Lpp−OmpA)が連結された、抗菌ペプチド多重合体Lpp−OmpA−Hinge2L
1、Lpp−OmpA−Hinge2L
2、Lpp−OmpA−Hinge2L
3およびLpp−OmpA−Hinge2L
4を作製した(実施例3)。
【0036】
他の態様として、本発明は、本発明の抗菌ペプチド多重合体または抗菌ペプチド重合体をコードするポリヌクレオチドおよびこれを含む組換えベクターを提供する。
【0037】
本発明において、前記ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合によって長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)で、一定の長さ以上のDNA(deoxyribonucleic acid)またはRNA(ribonucleic acid)鎖であって、前記抗菌ペプチド多重合体または抗菌ペプチド重合体をコードするポリヌクレオチドである。
【0038】
前記抗菌ペプチド多重合体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号25(Lpp−OmpA−Hinge2L
2)、26(Lpp−OmpA−Hinge2L
3)および27(Lpp−OmpA−Hinge2L
4)の塩基配列のいずれか1つの塩基配列を有するポリヌクレオチドであり得る。
【0039】
また、前記抗菌ペプチド重合体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号28(Hinge2L
2)、29(Hinge2L
3)および30(Hinge2L
4)の塩基配列のいずれか1つの塩基配列を有するポリヌクレオチドであり得る。
【0040】
本発明において、前記組換えベクターは、本発明の抗菌ペプチド多重合体または抗菌ペプチド重合体を発現させる微生物を作るために、宿主細胞にDNAを導入して抗菌ペプチド多重合体または抗菌ペプチド重合体を微生物で発現させるための手段であって、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクターなどの公知の発現ベクターを用いることができる。また、ベクターは、DNA組換え技術を利用した任意の公知の方法によって当業者が容易に製造することができる。
【0041】
前記組換えベクターは、pGEM T−easyベクターまたはpET21cベクターを用いることができ、好ましくは、pET21cベクターを用いることができる。
【0042】
本発明の組換えベクターは、本発明の抗菌ペプチド多重合体または抗菌ペプチド重合体をコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された組換えベクターである。前記「作動可能に連結された」とは、発現調節配列が抗菌ペプチド多重合体または抗菌ペプチド重合体をコードするポリヌクレオチド配列の転写および解読を調節するように連結されたものをいい、発現調節配列(プローモーターを含む)の調節下、ポリヌクレオチド配列が発現され、ポリヌクレオチド配列によってコードされる抗菌ペプチド多重合体または抗菌ペプチド重合体が生成されるように、正確な解読フレームを維持させることを含む。
【0043】
さらに他の態様として、本発明は、前記組換えベクターで形質転換され、抗菌ペプチド多重合体を細胞表面に発現する抗菌微生物を提供する。
【0044】
本発明において、前記「抗菌微生物」とは、抗菌ペプチドを細胞表面に発現させ得る微生物を意味し、本発明の抗菌微生物は、細胞内で消化酵素のペプシンによって単量体抗菌ペプチドに切断可能な抗菌ペプチド多重合体を細胞表面に発現させ、前記抗菌微生物自体が体内病原菌を直接殺す作用を行うため、抗生剤の代替剤として使用することができる。
【0045】
本発明において、「形質転換」という用語は、遺伝子を宿主細胞内に導入して宿主細胞内で発現できるようにすることを意味する。形質転換された遺伝子は、宿主細胞内で発現できるものであれば、宿主細胞の染色体内に挿入されたもの、または染色体外に位置しているものなど制限なく含まれる。
【0046】
また、前記遺伝子は、ポリペプチドをコード可能なポリヌクレオチドとしてDNAおよびRNAを含む。前記遺伝子は、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、いかなる形態で導入されるものであっても構わない。例えば、前記遺伝子は、それ自体で発現されるのに必要なすべての要素を含むポリヌクレオチド構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入できる。前記発現カセットは、通常、前記遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終了信号、リボソーム結合部位および翻訳終了信号を含む。前記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクター形態であり得る。また、前記遺伝子は、それ自体またはポリヌクレオチド構造体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよい。
【0047】
前記抗菌微生物は、抗菌ペプチド多重合体をコーディングするポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換され、抗菌ペプチド多重合体を細胞表面に発現可能な微生物であって、例えば、エシェリキア(Escherichia)属、バチルス(Bacilus)属、アエロバクター(Aerobacter)属、セラチア(Serratia)属、プロビデンシア(Providencia)属、エルウィニア(Erwinia)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、エンテロバクテリア(enterobacteria)属、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、レプトスピラ(Leptospira)属、デイノコッカス(Deinococcus)属、ピチア(Pichia)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、カンジダ(Candida)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、ムコール(Mucor)属、トルロプシス(Torulopsis)属、メチロバクター(Methylobacter)属、サルモネラ(Salmonella)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)属の微生物であり得る。
【0048】
好ましくは、前記抗菌微生物は、エシェリキア属の微生物であり得、より好ましくは、大腸菌であり得、さらに好ましくは、大腸菌BL21(DE3)であり得る。
【0049】
本発明の一実施例では、例示的に、抗菌ペプチド多重合体をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換された大腸菌を作製し(実施例4)、IPTGを用いて形質転換された大腸菌で抗菌ペプチド多重合体の発現を誘導した後、細胞表面で抗菌ペプチド多重合体が発現されたか否かを確認した。その結果、細胞表面発現母体に連結された抗菌ペプチドHinge2Lの単量体(monomer)、二量体(dimer)、三量体(trimer)が大腸菌の細胞表面で発現されたことを確認することができた(実施例5および
図6)。
【0050】
さらに他の態様として、本発明は、本発明の抗菌ペプチド多重合体、抗菌ペプチド重合体または本発明の抗菌微生物を有効成分として含む抗菌用薬学組成物を提供する。
【0051】
また、さらに他の態様として、本発明は、前記抗菌用薬学組成物を病原性細菌、酵母または真菌による感染性疾患が発病した個体に投与するステップを含む病原性細菌、酵母または真菌による感染性疾患の治療方法を提供する。
【0052】
本発明において、前記病原性細菌は、動植物の生体に侵入して寄生しながら病気を引き起こしたり害を及ぼしたりするすべての微生物であって、グラム陽性菌およびグラム陰性菌を含み、好ましくは、グラム陽性菌のスタフィロコッカスアウレウス(Staphylococus aureus)、グラム陰性菌の大腸菌(Escherichia coli)であり得る。
【0053】
また、前記病原性酵母および真菌は、病原性を有する酵母および真菌であって、これに制限されないが、例として、カンジダアルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルスフミガタス(Aspergillus humigatus)、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびクリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)を含む。
【0054】
本発明において、前記病原性細菌による感染性疾患は、コレラ菌によるコレラ、赤痢菌による細菌性赤痢、百日咳菌による百日咳、腸チフス菌による腸チフス、ジフテリア菌による喉頭ジフテリアおよび鼻ジフテリア、ペスト菌による腺ペストおよび肺ペスト、溶血性連鎖球菌による猩紅熱、丹毒、敗血症および皮膚化膿症、結核菌による肺結核、関節結核、腎臓結核および結核性髄膜炎;サルモネラ菌および腸炎ビブリオなどによる細菌性食中毒であり得る。また、前記病原性酵母および真菌による感染性疾患は、クリプトコックス症(cryptococcosis)、カンジダ症(candidasis)、皮膚糸状菌症(Dermatophytosis)、表在性皮膚真菌症(superficial mycoses)、脳髄膜炎、脳膿瘍、脳腫瘍、ヒストプラズマ症(Histoplasmosis)、ニューモシスティス肺炎またはアスペルギルス症(aspergillosis)であり得る。
【0055】
本発明において、用語「治療」とは、抗菌用薬学組成物の投与により、病原性細菌、酵母または真菌による感染性疾患による症状が好転したり有意に変更するすべての行為を意味し、本発明において、用語「個体」とは、病原性細菌、酵母または真菌による感染性疾患が発病した場合、または発病し得るヒトを含むすべての動物を意味する。
【0056】
本発明の抗菌用薬学組成物で病原性細菌、酵母または真菌による感染性疾患で闘病中のヒトに投与することにより、病原性細菌、酵母または真菌による感染性疾患を治療することができる。
【0057】
前記抗菌用薬学組成物の投与経路については、目的組織に到達できる限り、何らかの一般的な経路を通して投与が可能である。本発明の薬学組成物は、目的に応じて、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与が可能であるが、これに制限されない。また、前記薬学組成物は、活性物質が標的細胞に移動可能な任意の装置によって投与できる。
【0058】
これらの方法により、本発明の抗菌微生物を含む抗菌用薬学組成物を生体内投与する場合、抗菌微生物の細胞表面に発現された抗菌ペプチド多重合体が生体内消化酵素のペプシンによって切断され、抗菌活性を有する抗菌ペプチド単量体に分離されるため、抗菌ペプチドの精製および分離過程を必要としないだけでなく、ペプシンによって単量体に切断された抗菌ペプチドの抗菌活性が優れており、効果的に病原菌を退治する効果を奏することができる。
【0059】
本発明の一実施例では、例示的に、抗菌ペプチド多重合体を細胞表面で発現する大腸菌にペプシンを処理した後、ペプシンによって分離された抗菌ペプチド単量体の抗菌活性を測定した。測定の結果、グラム陽性菌のスタフィロコッカスアウレウス、グラム陰性菌の大腸菌、および酵母のサッカロマイセスセレビシエに対する優れた抗菌力を保有していることを確認することができた(実施例6および
図7)。
【0060】
本発明において、本発明の抗菌用薬学組成物は、許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容可能な担体を含む前記抗菌用薬学組成物は、経口または非経口の様々な剤形であり得る。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、1つ以上の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調剤される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンのほか、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどが使用可能である。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用可能である。さらに、抗菌用薬学組成物に含まれている抗菌微生物が、抗菌ペプチド多重合体を細胞表面に発現するのに必要な営養分を含むことができる。
【0061】
前記抗菌用薬学組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤および坐剤からなる群より選択されるいずれか1つの剤形を有することができる。
【0062】
本発明の前記薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与する。用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な有益性/有害性の割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量水準は、個体の種類および重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路および排出率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、およびその他医学分野でよく知られた要素に応じて決定できる。本発明の薬学組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与可能であり、従来の治療剤とは順次または同時に投与可能であり、単一または多重投与可能である。前記要素をすべて考慮して、副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要である。
【0063】
本発明の組成物は、病原性細菌、酵母または真菌による感染性疾患の治療のために、単独で使用することができ、手術、ホルモン治療、薬物治療および生物学的反応調節剤を用いる方法との併用も可能である。
【0064】
さらに他の態様として、本発明は、本発明の抗菌微生物を有効成分として含む抗菌用医薬部外品組成物を提供する。すなわち、本発明は、病原性細菌、酵母または真菌による感染性疾患の予防または改善を目的として医薬部外品組成物を提供するものである。
【0065】
本発明において、前記医薬部外品組成物は、他の医薬部外品または医薬部外品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用可能である。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて適宜決定できる。
【0066】
前記医薬部外品組成物は、消毒清潔剤、シャワーフォーム、口腔清潔剤、ウェットシート、洗剤せっけん、ハンドウォッシュ、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤またはフィルター充填剤であり得る。
【0067】
もう一つの態様として、本発明は、本発明の抗菌ペプチド多重合体を細胞表面に発現する抗菌微生物の製造方法を提供する。
【0068】
本発明において、前記製造方法は、(a)本発明の抗菌ペプチド多重合体をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを製造するステップと、(b)前記組換えベクターを宿主細胞に導入して形質転換体に形質転換するステップと、(c)前記形質転換体を培養して抗菌ペプチド多重合体の発現を誘導するステップとを含む。
【0069】
前記組換えベクターを宿主細胞に導入して形質転換する方法は、本発明のDNAを含む組換えベクターを当業界で公知の方法、例えば、これに限定されないが、一時的な形質感染(transient transfection)、微細注射、形質導入(transduction)、細胞融合、カルシウムホスフェート沈殿法、リポソーム媒介の形質感染(liposem−mediated transfection)、DEAEデキストラン媒介の形質感染(DEAE Dextran−mediated transfection)、ポリブレン媒介の形質感染(polybrene−mediated transfection)、電気穿孔法(electroporation)などの公知の方法で宿主細胞に導入して形質転換させることができるが、これに限定されるものではない。
【0070】
前記形質転換体を培養して抗菌ペプチド多重合体の発現を誘導する方法は、当業界で公知の任意の方法を利用することができるが、例えば、大腸菌を培養する一般的な条件である、37℃、好気条件、LB培地、IPTGの添加による発現の誘導が挙げられる。
【0071】
本発明の一実施例では、例示的に、CaCl
2を用いた形質転換方法で大腸菌BL21(DE3)に組換えベクターpLH0、pLH1、pLH2およびpLH3で形質転換し、本発明の抗菌ペプチド多重合体を発現させた(実施例4)。また、
図6をみると、前記組換えベクターによって形質転換された大腸菌で抗菌ペプチド多重合体が細胞表面に発現されたことが分かった(
図6)。
【0072】
この方法によって生産された抗菌微生物は、細胞表面にペプシンによって切断される抗菌ペプチド多重合体を発現するため、生菌状態で生体内に投与すると、ペプシンによって抗菌活性を有する抗菌ペプチド単量体に分離されるため、細胞破砕、抗菌ペプチドの分離および精製過程を必要としないだけでなく、分離された抗菌ペプチドが優れた抗菌力を示すため、病原菌を効果的に退治する効果を奏することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を、実施例および実験例によってより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0074】
ペプシン切断アミノ酸リンカーの配列の決定およびこれを含む抗菌ペプチド単量体の抗菌力の測定
1−1:ペプシン切断アミノ酸リンカーの配列の決定
ペプシンによって単量体に分離される抗菌ペプチド重合体を製造するために、韓国登録特許第0441402号に開示された配列番号1の抗菌ペプチド(配列番号9:RVVRQWPIGRVVRRVVRRVVR)を任意のアミノ酸をリンカーとして用いて連結した抗菌ペプチド重合体において、ペプシンによってアミノ酸リンカーが切断されてそれぞれの単量体に分離されるようにするアミノ酸配列を、コンピュータプログラムツールのExPAsy(Expert protein analysis system、スイス)を用いて決定した。その結果、ロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンのC末端と抗菌ペプチドのN末端との間に形成されたペプチド結合がペプシンによって切断されたことを確認し、前記アミノ酸のそれぞれをペプシン切断アミノ酸リンカーとして決定した。
【0075】
1−2:ペプシン切断アミノ酸リンカーが付加された抗菌ペプチド単量体の抗菌力の測定
抗菌ペプチドにペプシンによって切断されるアミノ酸を添加した抗菌ペプチド重合体のアミノ酸配列を、プログラムによって予測した結果、ロイシン(luecine)、フェニルアラニン(phenylalanine)、チロシン(tyrosine)の後でペプシンが作用したことを確認し、これら3つのペプチドに対して化学合成を通じて純度95%の抗菌ペプチドを得た。
【0076】
製造された抗菌ペプチドの微生物に対する抗菌活性を、96−ウェル微量希釈最小阻害濃度測定法(minimal inhibitory concentration assay)で測定した。バクテリアとカビをトリプチケースソイ寒天培地(trypticase soy broth;TSB)でそれぞれ37℃と30℃で一晩中培養した後、これらを新たな培地に接種して2時間培養し、菌株が対数期となるようにした後、1ml当たり10
5の菌株となるように希釈して96−ウェルプレートに10μlずつ接種し、順次に希釈された抗菌ペプチドを各ウェルに10μlずつ処理した。96−ウェルプレートを12時間培養して各ウェルの吸光度を測定し、菌株を全く育たないようにする最小濃度を最小阻害濃度として定め、その結果を表1に示した。表1のHinge2L、Hinge2FおよびHinge2Yは、配列番号9の抗菌ペプチドに、それぞれロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンが付加された抗菌ペプチドである。
【0077】
【表1】
【0078】
抗菌力実験の結果、抗菌ペプチドにロイシンのついたペプチドが、グラム陽性菌のスタフィロコッカスアウレウス(Staphylococus.aureus)、グラム陰性菌の大腸菌(Escherichia.coli)、酵母のサッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces.cerevisiae)に対して2μl/mlと、最も優れた抗菌力を保有していることが分かった(表1)。
【実施例2】
【0079】
ペプシンによって切断される抗菌ペプチド重合体の製造
前記実施例1で決定されたペプシン切断アミノ酸リンカー(ロイシン)を抗菌ペプチドのC末端に添加した抗菌ペプチド単量体(Hinge2L)をコードするDNA切片を作製し、ベクターにクローニングした。このために、配列番号1(5’−GAAGACCCCGTGTTGTTCGTCAGTGGCCGATTGGTCGTGTCGTTCGCCGTGTTGTTCG−3’)および配列番号2(5’−GGATGGATCCTAAGCACGCAGACGAACGACGCGACGAACAACACGGCGAACGACACG−3’)のプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号9の抗菌ペプチドのC末端にペプシン切断アミノ酸リンカーのロイシンが付加された22個のアミノ酸からなる抗菌ペプチド単量体をコードする二重鎖のDNA切片を完成した。PCR条件は、94℃で30秒間DNA変性、56℃で30秒間アニーリング、72℃で30秒間DNAを合成し、これを30回繰り返した。クローニングのために、抗菌ペプチド単量体のN末端に制限酵素BbsIの認識部位(5’−GAAGAC(N)2▼−3’,3’−CTTCTG(N)
6▲−5’)、およびC末端にFokIの認識部位(5’−GGATG(N)
9▼−3’,3’−CCTAC(N)
13▲−5’)を導入した。
以後、完成したDNA切片をpGEM T−easyベクターに挿入し、pMBT−Hと名付けた。
【0080】
また、抗菌ペプチド重合体を作製するために、PCRによって作製された抗菌ペプチド単量体Hinge2LをコードするDNA切片を制限酵素BbsIおよびFokIで切断した後、制限酵素BbsIで切断されたpMBT−Hベクターに挿入し、Hinge2Lが2個連結されたpMBT−H
2ベクターを作製した。このような過程を繰り返してpMBT−H
3、pMBT−H
4・・・pMBT−H
nを作製した(
図2)。
【実施例3】
【0081】
細胞表面発現母体に連結された抗菌ペプチド重合体のDNA切片の製造およびクローニング
3−1:Lpp−OmpAに連結された抗菌ペプチド重合体DNAの作製およびクローニング
抗菌ペプチド重合体を宿主細胞の細胞表面で発現されるようにするために、細胞表面発現母体として、大腸菌(E.coli)の脂質タンパク質(lipoprotein)のリーダー配列(leader sequence)、および細胞外膜に安定的に付着している大腸菌の外膜タンパク質A(OmpA)の配列の一部を用いた配列番号7の塩基配列を有するLpp−OmpA DNA切片を作製し、これをベクターにクローニングすることを試みた。
【0082】
まず、Lpp−OmpA DNA切片を作製するために、配列番号3(5’−CGCCATATGAAAGCTACTAAACTGGTACTGGGCAACAACAATGGCCCGACC−3’)、配列番号4(5’−GCAAACACCGGAGAAACGCCGGTG−3’)、配列番号5(5’−TTCTCCGGTGTTTGCTGGCGGTGTTG−3’)および配列番号6(5’−CGGGATCCTAGTGATGGTGATGGTGATGAACACGCAGTCTTCCACGGGTAG−3’)のプライマーを合成し、大腸菌MG1655のゲノムDNAを鋳型として、94℃で30秒間DNA変性、54℃で30秒間アニーリング、72℃で1分30秒間DNA合成の過程を30回繰り返す組換えPCR方法により、123個のアミノ酸からなるLpp−OmpAポリペプチドをコードするDNA切片(369個のヌクレオチド)を完成した。
【0083】
以後、発現時、アミノ酸の変化が起こらないようにすると同時に効果的なクローニングのために、組換えPCR方法によって完成したLpp−OmpA DNA配列の間にある制限酵素BbsIの認識部位のうち、321番目の配列のCをGに、324番目の配列のCをTに置換し、Lpp−OmpA DNA切片(配列番号7)を作製した。以後、作製されたLpp−OmpA DNA切片をベクターにクローニングするために、Lpp−OmpAのN末端に制限酵素NdeIの認識部位(CATATG)を導入し、C末端には、実施例2で作製された抗菌ペプチド重合体DNA切片が連結可能に制限酵素BbsIの認識部位(5’−GAAGAC(N)2▼−3’,3’−CTTCTG(N)
6▲−5’)を挿入し、制限酵素BamHIの認識部位(GGATCC)も導入した。さらに、HIS tagを挿入して発現が確認できるようにした。
【0084】
完成したDNA切片をpGEM T−easy vectorに挿入し、これをpLOベクターと名付けた。pLOベクターは、BbsI切断し、前記実施例2で作製されたpMBT−Hnを制限酵素BbsIとFokIで切断し、抗菌ペプチド重合体Hinge2LnのDNA切片を、制限酵素によって切断されたpLOベクターとライゲーション(ligation)し、Lpp−OmpAに抗菌ペプチド重合体DNAが連結されたDNA切片(Lpp−OmpA−Hinge2Ln)が挿入されたpLO−Hinge2Lnベクターを作製した(nは、抗菌ペプチド単量体Hinge2Lの個数を示す。
図2)。
【0085】
3−2:Lpp−OmpA−Hinge2Ln DNA切片のサイズの測定
クローニングされたか否かを確認するために、前記実施例3−1で作製されたそれぞれのpLO−Hinge2Lnベクターに挿入されたLpp−OmpA−Hinge2Ln DNA切片のサイズを測定した。
【0086】
このために、それぞれのpLO−Hinge2Lnベクターを制限酵素NotIで処理し、ベクターに挿入されたLpp−OmpA−Hinge2Ln DNA切片のサイズを確認し、その結果を
図3に示した。電気泳動は、1X TBE(Tris、Boric acid、EDTA)バッファー30mlに1%アガロースゲル0.3gを入れて電子レンジで沸騰させた後、型枠に注入して30分間放置して固くした。以後、Lpp−OmpA−Hinge2Ln DNA溶液10μlに6X loading dye2μlを混合してゲルにローディングし、100Vで40分間電気泳動した後、EtBr溶液にゲルを20分間浸漬して染色し、再びゲルを水道水に15分間浸漬して脱色した。
【0087】
図3は、Lpp−OmpA−Hinge2Ln DNA切片のサイズを示す電気泳動写真であって、
図3のMは、DNAサイズマーカーであり、レーン(lane)LH0、LH1、LH2、LH3およびLH4は、Lpp−OmpA−Hinge2Ln DNA切片のサイズを示す。具体的には、LH0は、Lpp−OmpAを示し、LH1、LH2、LH3およびLH4はそれぞれ、細胞表面発現母体のLpp−OmpAに連結された抗菌ペプチド単量体の個数を示す。
【0088】
したがって、
図3に示されるように、細胞表面発現母体のLpp−OmpAに抗菌ペプチド重合体が連結された抗菌ペプチド多重合体、Lpp−OmpA−Hinge2Ln DNAが効果的にベクターにクローニングされたことを確認することができた(
図3)。
【実施例4】
【0089】
細胞表面に抗菌ペプチド多重合体(Lpp−OmpA−Hinge2Ln)を発現する微生物の作製
図4に示されるように、Lpp−OmpA DNAに抗菌ペプチド多重合体およびHis tagを連結し、この形態で発現できるように組換えベクターを製造した。このために、前記実施例3で作製されたpLO−Hinge2Lnベクターに制限酵素NdeIとBamHIを処理し、Lpp−OmpA−Hinge2Ln DNA切片を得て、ゲル抽出キット(Gel extraction kit、Qiagen、ドイツ)を用いて所望の大きさのDNA片を分離した。
【0090】
以後、分離されたDNA片をNdeIとBamHIで切断したpET21cベクターに連結させ、pLHn(pLH0、pLH1、pLH2・・・、n=Hinge2L単量体の個数)ベクターを製造した(
図4)。以後、CaCl
2を用いた形質転換方法でpLH0、pLH1、pLH2およびpLH3ベクターそれぞれをE.coli BL21(DE3)にそれぞれ導入した。
【実施例5】
【0091】
抗菌ペプチド多重合体(Lpp−OmpA−Hinge2Ln)の細胞表面発現の確認
前記実施例4の形質転換された大腸菌の細胞表面に抗菌ペプチド多重合体が発現されるか否かの確認を試みた。このために、LB培地(Luria Botani、トリプトン1%、酵母抽出物0.5%、NaCl0.5%)を用いて形質転換された大腸菌を培養し、培養液がOD600=0.5〜0.6の間の時、0.2mMのIPTG(isopropyl−β−Dthiogalactopyranoside)を添加し、抗菌ペプチド多重合体の細胞表面発現を誘導した。発現を誘導した後、4時間後培養液を除去し、PBS(phosphate buffered saline)で2回洗浄し、0.2%のBSA(bovine serum albumin)が含まれているPBSおよびHis−tag一次抗体(His−tag primary antibody)を共に入れた後、氷で30分間培養した。培養後、PBSで2回洗浄し、FITC(fluorescein isothiocyanate)の標識されたHis−tag二次抗体(FITC conjugated his tag secondary antibody)を入れた後、光が入らないようにしながら、氷で30分間培養した。以後、PBSで再び洗浄をし、大腸菌細胞をPBSで再浮遊(resuspension)させ、これを共焦点顕微鏡(confocal microscope)を用いて観察した。
【0092】
その結果、抗菌ペプチド単量体のない細胞表面発現母体がIPTGで発現誘導されたことを確認し(LH0)、細胞表面発現母体と抗菌ペプチド単量体、細胞表面発現母体と二量体、細胞表面発現母体と三量体がIPTGで発現誘導されたことを確認した(
図5)。
【0093】
また、形質転換された大腸菌において、IPTGで発現誘導されたそれぞれの細胞表面発現母体に連結された抗菌ペプチド多重合体LH1、LH2、およびLH3が大腸菌の細胞表面で発現されたことを確認することができた(
図6)。
【実施例6】
【0094】
細胞表面に発現された抗菌ペプチド多重合体の抗菌力の確認
前記実施例4で作製された細胞表面に抗菌ペプチド多重合体を発現させる大腸菌の抗菌効果を測定した。形質転換されたE.coli BL21(DE3)を100mlのLB培地で培養し、培養液の懸濁液がOD600=0.5〜0.6の間の時、0.2mM IPTGを添加し、細胞表面発現母体に連結された抗菌ペプチド多重合体の発現を誘導した。発現を誘導してから、4時間後培養液を除去し、NAPB(sodium phosphate buffer)で2回洗浄した後、同じバッファーで再浮遊(resuspension)させ、すべてのサンプル大腸菌は、1X10
10cfu/mlで数を同一に合わせた。次に、生体の胃と類似の濃度のHCl水溶液(SGF、sitimulated gastirc fluid;0.084N HCl、35mM NaCl、pH1.2or2.0)にペプシンを溶かして大腸菌に処理した後、30分間培養した。培養後、ペプシンの活性を防ぎ、pHを中和させるために、HCl水溶液と同濃度のNaOH水溶液と混合し、遠心分離して、ペプシンによって切断された抗菌ペプチド単量体以外の細胞残渣を除去した。
【0095】
ペプシンによって切断された抗菌ペプチド単量体として、グラム陽性菌のスタフィロコッカスアウレウス(Staphylococus aureus)、グラム陰性菌の大腸菌(Escherichia coli)および酵母のサッカロミケスケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いて抗菌力を測定した。
【0096】
それぞれの菌は、培養中、対数期時に採取し、NAPBで2回洗浄した後、再浮遊(resuspension)させ、すべての菌の数を1X10
5cfu/mlに合わせた。96−wellプレートにそれぞれの菌およびペプシンによって切断された抗菌ペプチド単量体水溶液を10μlずつ分注してよく混合し、37℃の温度で3時間培養した。3時間後、2X TSB(Trypticase Soy Broth)培地を入れ、再び37℃の温度で12時間培養した後、OD595値を測定した。
【0097】
その結果、抗菌ペプチド多重合体中、LH3の抗菌力が、グラム陽性菌のスタフィロコッカスアウレウスに対して17.95%、グラム陰性菌の大腸菌に対して30%、酵母のサッカロマイセスセレビシエに対して33.17%と、最も優れた抗菌力を示した(
図7)。この結果は、抗菌ペプチド多重合体に抗菌ペプチド単量体が多量含まれるほどより優れた抗菌活性を示すことを表し、このような抗菌ペプチド多重合体を細胞表面に発現する抗菌微生物を体内に投与した時、病原菌退治および兔疫細胞活性などの抗菌活性を示すことを表す。これにより、抗菌ペプチドの分離および精製過程を経ることなく抗菌ペプチドを用いることができるので、抗菌ペプチドの普及を誘導できるという利点がある。