特許第5795081号(P5795081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795081
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】フォトクロミック化合物および組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/94 20060101AFI20150928BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20150928BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20150928BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20150928BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20150928BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20150928BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20150928BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C07D311/94 101
   C07D311/94CSP
   C09K9/02 B
   C09D5/29
   C09D133/00
   C09D175/04
   C09D183/04
   C09D201/00
   G02C7/10
【請求項の数】28
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2013-544569(P2013-544569)
(86)(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公表番号】特表2014-507385(P2014-507385A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2011063878
(87)【国際公開番号】WO2012082506
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年7月26日
(31)【優先権主張番号】13/313,178
(32)【優先日】2011年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504175051
【氏名又は名称】トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヒー, メン
(72)【発明者】
【氏名】ダビディーン, ダーリン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ダイ, シャオ−マン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ウェンチン
(72)【発明者】
【氏名】スー, ルイソン
(72)【発明者】
【氏名】モンダル, スイジット
(72)【発明者】
【氏名】クマール, アニル
(72)【発明者】
【氏名】チョプラ, アヌ
【審査官】 深谷 良範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−187420(JP,A)
【文献】 特開2012−250955(JP,A)
【文献】 特表2013−545803(JP,A)
【文献】 特表2014−506247(JP,A)
【文献】 特表2014−502604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,C09K,C09D,G02C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIの化合物
【化27】
[式中、
は、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、カルボキシ、アミノ、任意選択で置換されたアミノ、シアノ、ニトロ、−S(O)60、−S(O)、アルキルカルボニル、およびアルコキシカルボニルから選択され、ここでR60は、水素、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、および置換されたヘテロアリールアルキルから選択され、
は、出現する毎に、ホルミル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ボロン酸シクロアルコキシカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキルオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、ルキル、ルケニル、ルキニル、ハロゲン、クロアルキル、リール、テロアリール、ルコキシ、テロアルキル、テロシクロアルキル、およびミノから選択されるキラルまたはアキラル基から独立に選択され、
mは、0〜3の整数であり、
nは、0〜4の整数であり、
およびRは、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、ハロゲン、任意選択で置換されたアミノ、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、オキソ、および任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成してもよく、
BおよびB’は、水素、ハロゲン、ならびに任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはBおよびB’は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成する]
ただし、該化合物は、3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(N−ピペリジニル)フェニル)−5,7−ジフルオロ−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランでも;
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−5,6,7−トリメトキシ−10,12−ジ(トリフルオロメチル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランでも;
3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−5,6,7−トリメトキシ−10,12−ジ(フルオロ)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピランでもない、
化合物
【請求項2】
が、任意選択で置換されたC〜Cアルカニル、任意選択で置換されたC〜Cアルケニル、任意選択で置換されたC〜Cアルキニル、任意選択で置換されたフェニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cペルハロアルコキシ、C〜Cペルハロアルキル、クロロ、フルオロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルカルボニル、およびC〜Cアルコキシカルボニルから選択され、
が、出現する毎に、ホルミル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ルキルハロゲン、クロアルキル、リール、ルコキシ、テロアルキル、テロシクロアルキルおよびミノから独立に選択され、
mおよびnが、それぞれ独立に、0〜2から選択される整数であり、
およびRが、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、ハロゲン、任意選択で置換されたアミノ、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラルおよびアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、オキソよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成してもよく、
BおよびB’が、水素、ハロゲン;任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはBおよびB’が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、任意選択で置換されたC〜Cアルカニル、任意選択で置換されたC〜Cアルケニル、任意選択で置換されたC〜Cアルキニル、任意選択で置換されたフェニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cペルハロアルコキシ、C〜Cペルハロアルキル、クロロ、フルオロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルカルボニル、およびC〜Cアルコキシカルボニルから選択され、
が、出現する毎に、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、ルキルハロゲン、クロアルキル、リール、ルコキシ、テロシクロアルキルおよびミノから独立に選択され、
mおよびnが、それぞれ独立に、0〜2から選択される整数であり、
およびRが、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、ハロゲン、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、オキソ形成してもよく、
BおよびB’が、水素;任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択されるキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはBおよびB’が、それらが結合する炭素原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルから選択される基を形成する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、−OCF、−OCFCF、CF、CFCF、クロロ、フルオロ、シアノ、ニトロ、アセチル、プロピオニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル;フェニル;アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ペルハロアルコキシ、アルキルカルボニル、カルボキシ、およびアルコキシカルボニルからそれぞれ独立に選択される1つまたは複数の基で置換されているフェニルから選択され、
が、出現する毎に、メチル、エチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、メトキシ、エトキシおよびCFから独立に選択され、
およびRが、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからそれぞれ独立に選択され、
BおよびB’が、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルカルボニル、カルボキシ、およびアルコキシカルボニルから独立に選択される1つまたは複数の基で置換されているフェニルからそれぞれ独立に選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−12−ブロモ−6,13,13−トリメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−10,12−ビス(トリフルオロメチル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−6,7−ジメトキシ−11,13,13−トリメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−(4−ブトキシフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−6−トリフルロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−フルオロフェニル)−10,12−ジブロモ−6−トリフルロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−10,11,12−トリメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−5,7−ジフルオロ−10,11,12−トリメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−12−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;および/または
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−6,7,10,12−テトラメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
フォトクロミック化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物および任意選択で少なくとも1種の他のフォトクロミック化合物を含むフォトクロミック組成物であって、
(a)単一のフォトクロミック化合物;
(b)フォトクロミック化合物の混合物;
(c)少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含む材料;
(d)少なくとも1種のフォトクロミック化合物が化学結合している材料;
(e)前記少なくとも1種のフォトクロミック化合物と外部材料との接触を実質的に防止するための、コーティングをさらに含む材料(c)もしくは(d);
(f)フォトクロミックポリマー;または
(g)これらの混合物
を含む、フォトクロミック組成物。
【請求項8】
有機材料の少なくとも一部に組み込まれている少なくとも1種の請求項6に記載の化合物を含むフォトクロミック組成物であって、前記有機材料が、ポリマー材料、オリゴマー材料、モノマー材料、またはこれらの混合物もしくは組合せである、フォトクロミック組成物。
【請求項9】
前記ポリマー材料が、液晶材料、自己組織化材料、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(アリルカーボネート)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリアルケン、ポリアルキレン−酢酸ビニル、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、これらのコポリマー、および/またはこれらの混合物を含む、請求項8に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項10】
染料、配向促進剤、抗酸化剤、反応速度増強添加物、光開始剤、熱開始剤、重合阻害剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカル捕捉剤、ゲル化剤および接着促進剤から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含む、請求項8に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項11】
液晶材料、自己組織化材料およびフィルム形成材料を含むコーティング組成物を含む、請求項8に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項12】
基材と、基材の少なくとも一部に接続されている請求項6に記載のフォトクロミック化合物とを含む、フォトクロミック物品。
【請求項13】
光学素子を含む請求項12に記載のフォトクロミック物品であって、前記光学素子が、眼部素子、ディスプレイ素子、窓、鏡、包装材料およびアクティブ液晶セル素子またはパッシブ液晶セル素子の少なくとも1つである、フォトクロミック物品。
【請求項14】
前記眼部素子が、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、またはバイザーを含む、請求項13に記載のフォトクロミック物品。
【請求項15】
前記基材が、ポリマー材料を含み、フォトクロミック材料が、前記ポリマー材料の少なくとも一部の中に組み込まれている、請求項12に記載のフォトクロミック物品。
【請求項16】
前記フォトクロミック材料が、前記ポリマー材料の少なくとも一部とブレンドされ、前記ポリマー材料の少なくとも一部に結合されており、かつ/または前記ポリマー材料の少なくとも一部に吸い込まれている、請求項15に記載のフォトクロミック物品。
【請求項17】
前記基材の少なくとも一部に接続されているコーティングまたはフィルムを含み、前記コーティングまたはフィルムが、フォトクロミック材料を含む、請求項12に記載のフォトクロミック物品。
【請求項18】
前記基材が、有機材料、無機材料、またはこれらの組合せから形成される、請求項17に記載のフォトクロミック物品。
【請求項19】
フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、遷移コーティング、プライマーコーティング、接着コーティング、反射コーティング、くもり止めコーティング、酸素バリヤーコーティング、紫外線光吸収コーティング、および保護コーティングから選択される少なくとも1つのさらなる少なくとも部分的なコーティングをさらに含む、請求項12に記載のフォトクロミック物品。
【請求項20】
基材;
1種の配向材料の少なくとも部分的なコーティング;
液晶材料の少なくとも1つのさらなる少なくとも部分的なコーティング;および
少なくとも1種の請求項6に記載の化合物を含む、フォトクロミック物品。
【請求項21】
二色性染料、非二色性染料、配向促進剤、抗酸化剤、反応速度増強添加物、光開始剤、熱開始剤、重合阻害剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカル捕捉剤、ゲル化剤および接着促進剤から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含む、請求項20に記載のフォトクロミック物品。
【請求項22】
前記基材が、ガラス、石英、およびポリマー有機材料から選択される、請求項20に記載のフォトクロミック物品。
【請求項23】
前記少なくとも1種の配向材料が、磁界、電界、直線偏光赤外線、直線偏光紫外線、直線偏光可視光線および剪断力の少なくとも1つへの曝露によって方向付け可能なポリマー網目を含む、請求項20に記載のフォトクロミック物品。
【請求項24】
前記液晶材料が、液晶ポリマーである、請求項20に記載のフォトクロミック物品。
【請求項25】
少なくとも1つのプライマーコーティング、遷移コーティング、保護コーティングまたはこれらの組合せをさらに含む、請求項20に記載のフォトクロミック物品。
【請求項26】
前記遷移コーティングが、アクリレートポリマーを含む、請求項25に記載のフォトクロミック物品。
【請求項27】
前記保護コーティングが、少なくとも1種のシロキサン誘導体を含む、請求項25に記載のフォトクロミック物品。
【請求項28】
前記少なくとも1つのプライマーコーティングが、ポリウレタンを含む、請求項27に記載のフォトクロミック物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2010年12月16日に出願された米国仮特許出願第61/459,689号の利益を主張する。
【0002】
背景
本発明は全般的に、フォトクロミック化合物、ならびに本明細書において開示されているフォトクロミック化合物を使用して作製された装置および素子に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のフォトクロミック化合物は、少なくとも2つの状態(第1の吸収スペクトルを有する第1の状態、および第1の吸収スペクトルとは異なる第2の吸収スペクトルを有する第2の状態)を有し、少なくとも化学線に応答して2つの状態の間を切り換わることができる。さらに、従来のフォトクロミック化合物は、熱可逆性でよい。すなわち、従来のフォトクロミック化合物は、少なくとも化学線に応答して第1の状態と第2の状態との間を切り換わり、熱エネルギーに応答して第1の状態に復帰することができる。本明細書において使用する場合、「化学線」とは、これらに限定されないが、応答をもたらすことができる紫外線および可視光線などの電磁放射線を意味する。さらに具体的には、従来のフォトクロミック化合物は、化学線に応答して、1つの異性体から別の異性体へと転換することができ(それぞれの異性体は、特徴的な吸収スペクトルを有する)、熱エネルギーに応答して第1の異性体にさらに復帰することができる(すなわち、熱可逆性である)。例えば、従来の熱可逆性フォトクロミック化合物は一般に、化学線に応答して第1の状態、例えば、「明澄な状態」から第2の状態、例えば、「有色の状態」へと切り換わり、熱エネルギーに応答して「明澄」な状態に復帰することができる。
【0004】
例えば、少なくとも1つの状態において有用なフォトクロミック特性を示すことができ、かつフォトクロミック特性を与える種々の用途において使用され得る、熱可逆性フォトクロミック化合物などが挙げられるがこれに限定されない、フォトクロミック化合物を提供することは有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の簡単な要旨
本明細書に記載されているのは、下記の構造式IIによって表される化合物であり、
【0006】
【化1】
【0007】
式中、
は、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、カルボキシ、アミノ、任意選択で置換されたアミノ、シアノ、ニトロ、スルホニル、スルホナト、アルキルカルボニル、およびアルコキシカルボニルから選択され、
は、出現する毎に、ホルミル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ボロン酸、ボロン酸エステル、シクロアルコキシカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキルオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、ハロゲン、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、および任意選択で置換されたアミノから選択されるキラルまたはアキラル基から独立に選択され、
mは、0〜3の整数であり、
nは、0〜4の整数であり、
およびRは、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、ハロゲン、任意選択で置換されたアミノ、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRは、任意の介在原子と一緒になって、オキソ、任意選択で置換されたシクロアルキル、および任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成してもよく、
BおよびB’は、水素、ハロゲン、ならびにメタロセニル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはBおよびB’は、任意の介在原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成する。
【0008】
本明細書においてまた提供するのは、少なくとも1種の式IIの化合物を含むフォトクロミック組成物およびフォトクロミック物品である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本明細書において使用するように、下記の語、語句および記号は一般に、これらが使用される文脈がそうではないことを示す場合を除いて、以下に記載するような意味を有することを意図する。下記の略語および用語は、全体に亘って示した意味を有する。
【0010】
2つの文字または記号の間ではないダッシュ(「−」)は、置換基に対して、結合点を示すために使用される。例えば、−CONHは、炭素原子を介して結合している。
【0011】
「アルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、親アルカン、アルケン、またはアルキンの単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、飽和または不飽和の分枝鎖または直鎖の一価炭化水素ラジカルを意味する。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル;エチル、例えば、エタニル、エテニル、およびエチニル;プロピル、例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル(アリル)、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなど;ブチル、例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどが含まれる。
【0012】
「アルキル」という用語は、任意の飽和度または飽和レベルを有する基、すなわち、もっぱら炭素−炭素一重結合を有する基、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を有する基、1つまたは複数の炭素−炭素三重結合を有する基、ならびに炭素−炭素の一重結合、二重結合、および三重結合が混じっている基を含むことを特に意図する。特定の飽和レベルが意図される場合、「アルカニル」、「アルケニル」および「アルキニル」という用語が使用される。特定の実施形態において、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、特定の実施形態において、1〜10個の炭素原子、特定の実施形態において、1〜8個または1〜6個の炭素原子、特定の実施形態において、1〜3個の炭素原子を含む。
【0013】
「アシル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、ラジカル−C(O)R30を意味し、R30は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキルであり、このアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルは本明細書に定義されているように置換され得る。アシル基の例には、これらに限定されないが、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルなどが含まれる。
【0014】
「アルコキシ」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、ラジカル−OR31を意味し、R31は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり、このアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキルは本明細書に定義されているように置換され得る。いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、1〜18個の炭素原子を有する。アルコキシ基の例には、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどが含まれる。
【0015】
「アルコキシカルボニル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、ラジカル−C(O)OR31を意味し、R31は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり、このアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキルは本明細書に定義されているように置換され得る。
【0016】
「アミノ」は、ラジカル−NHを意味する。
【0017】
「アミノカルボニル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、式−NC(O)R60のラジカルを意味し、各R60は、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルから選択される。
【0018】
「アリール」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、親芳香環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、一価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。アリールは、5員および6員の炭素環式芳香環、例えば、ベンゼン;二環式環系(少なくとも1つの環は、炭素環および芳香環、例えば、ナフタレン、インダン、およびテトラリンである);ならびに三環式環系(少なくとも1つの環は、炭素環および芳香環、例えば、フルオレンである)を包含する。アリールは、少なくとも1つの炭素環式芳香環、シクロアルキル環、またはヘテロシクロアルキル環と縮合している少なくとも1つの炭素環式芳香環を有する多環系を包含する。例えば、アリールは、N、O、およびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する5員〜7員のヘテロシクロアルキル環と縮合している5員および6員の炭素環式芳香環を含む。環の1つのみが炭素環式芳香環であるこのような縮合二環式環系について、結合点は、炭素環式芳香環またはヘテロシクロアルキル環においてであり得る。アリール基の例には、これらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン(hexalene)、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどに由来する基が含まれる。特定の実施形態において、アリール基は、5〜20個の炭素原子、特定の実施形態において、5〜12個の炭素原子を含むことができる。しかし、アリールは、本明細書において別々に定義されるヘテロアリールを全く包含もせず、重複もしない。したがって、1つまたは複数の炭素環式芳香環がヘテロシクロアルキル芳香環と縮合している多環系は、本明細書に定義されているように、ヘテロアリールであり、アリールではない。
【0019】
「アリールアルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子に結合している水素原子の1つが、アリール基で置き換えられている、非環式アルキルラジカルを意味する。アリールアルキル基の例には、これらに限定されないが、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが含まれる。特定のアルキル部分が意図される場合、アリールアルカニル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルという命名法が使用される。特定の実施形態において、アリールアルキル基は、C7〜30アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、C1〜10であり、アリール部分は、C6〜20であり、特定の実施形態において、アリールアルキル基は、C7〜20アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、C1〜8であり、アリール部分は、C6〜12である。
【0020】
「カルボキサミジル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、式−C(O)NR6061のラジカルを意味し、各R60およびR61は、独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、または置換ヘテロアリールアルキルであるか、あるいはR60およびR61は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリール環を形成する。
【0021】
「化合物」は、本明細書において構造式IIに包含される化合物を意味し、その構造が本明細書において開示されているこれらの式の範囲内の任意の特定の化合物を含む。化合物は、それらの化学構造および/または化学名によって同定され得る。化学構造および化学名が矛盾するとき、化学構造が化合物の正体に対し決定力がある。本明細書に記載されている化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含有してもよく、したがって立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、エナンチオマー、またはジアステレオマーとして存在し得る。したがって、相対配置と共に全体的または部分的に示されている本明細書の範囲内の任意の化学構造は、立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何的に純粋、鏡像異性的に純粋、またはジアステレオ異性的に純粋)ならびに鏡像異性および立体異性混合物を含めた、例示した化合物の全ての可能性のあるエナンチオマーおよび立体異性体を包含する。鏡像異性および立体異性混合物は、当業者には周知の分離技術またはキラル合成技術を使用して、それらの成分であるエナンチオマーまたは立体異性体に分割され得る。
【0022】
本開示の目的のために、「キラル化合物」は、少なくとも1つのキラリティーの中心(すなわち、少なくとも1個の不斉原子、特に、少なくとも1個の不斉C原子)を有し、キラリティーの軸、キラリティーの面またはスクリュー構造を有する化合物である。「アキラル化合物」は、キラルではない化合物である。
【0023】
式IIの化合物には、これらに限定されないが、式IIの化合物の光学異性体、そのラセミ化合物、および他のこれらの混合物が含まれる。そのような実施形態において、単一のエナンチオマーまたはジアステレオマー、すなわち、光学活性な形態は、不斉合成によって、またはラセミ化合物の分割によって得られ得る。ラセミ化合物の分割は、例えば、従来の方法、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムを使用したクロマトグラフィーによって達成され得る。しかし、特に明記しない限り、式IIは、異性体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、および他のこれらの混合物を含めた、本明細書に記載されている化合物の全ての不斉変形体(asymmetric variant)を包含すると考えるべきである。さらに、式IIの化合物は、二重結合を有する化合物のZ形態およびE形態(例えば、cis形態およびtrans形態)を含む。式IIの化合物が様々な互変異性形態で存在する実施形態において、本開示によって提供される化合物は、化合物の全ての互変異性形態を含む。
【0024】
適用可能な場合、式IIの化合物はまた、エノール形、ケト形、およびこれらの混合物を含めたいくつかの互変異性形態で存在し得る。したがって、本明細書において示される化学構造は、例示した化合物の全ての可能性のある互変異性形態を包含する。化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態(水和形態を含めた)で、およびN−オキシドとして存在し得る。一般に、化合物は、水和していても、溶媒和していても、N−オキシドであってもよい。特定の化合物は、単一または複数の結晶性またはアモルファスの形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本明細書において企図される使用について同等であり、本開示によって提供される範囲内であることが意図される。さらに、化合物の部分的構造が例示されているとき、アスタリスク()は、分子の残りへの部分的構造の結合点を示す。
【0025】
「シクロアルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、飽和または不飽和の環状アルキルラジカルを意味する。特定の飽和レベルが意図される場合、「シクロアルカニル」または「シクロアルケニル」という命名法が使用される。シクロアルキル基の例には、これらに限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどに由来する基が含まれる。特定の実施形態において、シクロアルキル基は、C3〜15シクロアルキル、特定の実施形態において、C3〜12シクロアルキルまたはC5〜12シクロアルキルである。
【0026】
「シクロアルキルアルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子に結合している水素原子の1つが、シクロアルキル基で置き換えられている非環式アルキルラジカルを意味する。特定のアルキル部分が意図される場合、シクロアルキルアルカニル、シクロアルキルアルケニル、またはシクロアルキルアルキニルという命名法が使用される。特定の実施形態において、シクロアルキルアルキル基は、C7〜30シクロアルキルアルキルであり、例えば、シクロアルキルアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、C1〜10であり、シクロアルキル部分は、C6〜20であり、特定の実施形態において、シクロアルキルアルキル基は、C7〜20シクロアルキルアルキルであり、例えば、シクロアルキルアルキル基のアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、C1〜8であり、シクロアルキル部分は、C4〜20またはC6〜12である。
【0027】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード基を意味する。
「ヘテロアルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、炭素原子(および任意の関連する水素原子)の1つまたは複数が、同じまたは異なるヘテロ原子団で独立に置き換えられているアルキル基を意味する。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、1〜8個の炭素原子を有する。ヘテロ原子団の例には、これらに限定されないが、−O−、−S−、−S−S−、−NR38−、=N−N=、−N=N−、−N=N−NR3940、−PR41−、−P(O)−、−POR42−、−O−P(O)−、−SO−、−SO−、−SnR4344−などが含まれ、R38、R39、R40、R41、R42、R43、およびR44は、独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、または置換ヘテロアリールアルキルである。特定の飽和レベルが意図される場合、「ヘテロアルカニル」、「ヘテロアルケニル」または「ヘテロアルキニル」という命名法が使用される。特定の実施形態において、R38、R39、R40、R41、R42、R43、およびR44は、水素およびC1〜3アルキルから独立に選択される。
【0028】
「ヘテロアリール」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、親ヘテロ芳香環系の単一の原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、一価のヘテロ芳香族ラジカルを意味する。ヘテロアリールは、少なくとも1つの他の環(この少なくとも1つの他の環は芳香族であっても非芳香族であってもよい)と縮合している少なくとも1つの芳香環を有する多環系を包含し、この芳香環において少なくとも1個の環原子はヘテロ原子である。ヘテロアリールは、5員〜7員などの5員〜12員の芳香族を包含し、単環式環は、1個または複数の、例えば、1〜4個の、または特定の実施形態において、1〜3個の、N、O、およびSから選択されるヘテロ原子を含有し、残りの環原子は、炭素であり、二環式ヘテロシクロアルキル環は、1個または複数の、例えば、1〜4個の、または特定の実施形態において、1〜3個の、N、O、およびSから選択されるヘテロ原子を含有し、残りの環原子は、炭素であり、少なくとも1個のヘテロ原子は、芳香環中に存在する。例えば、ヘテロアリールには、5員〜7員のヘテロシクロアルキル、5員〜7員のシクロアルキル環と縮合している芳香環が含まれる。複数の環のうちの1つの環のみが1個または複数のヘテロ原子を含有するこのような縮合二環式ヘテロアリール環系について、結合点は、ヘテロ芳香環にあってもシクロアルキル環にあってもよい。特定の実施形態において、ヘテロアリール基におけるN、S、およびO原子の総数が1を超えるとき、ヘテロ原子は、互いに隣接しない。特定の実施形態において、ヘテロアリール基におけるN、S、およびO原子の総数は、2以下である。特定の実施形態において、芳香族複素環におけるN、S、およびO原子の総数は、1以下である。ヘテロアリールは、本明細書に定義されているようなアリールを包含もせず、それと重複もしない。
【0029】
ヘテロアリール基の例には、これらに限定されないが、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどに由来する基が含まれる。特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、5員〜20員のヘテロアリールであり、特定の実施形態において、5員〜12員のヘテロアリールまたは5員〜10員のヘテロアリールである。特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾール、およびピラジンに由来するものである。
【0030】
「ヘテロアリールアルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子に結合している水素原子の1つが、ヘテロアリール基で置き換えられている、非環式アルキルラジカルを意味する。特定のアルキル部分が意図される場合、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル、またはヘテロアリールアルキニルという命名法が使用される。特定の実施形態において、ヘテロアリールアルキル基は、6員〜30員のヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、1員〜10員であり、ヘテロアリール部分は、5員〜20員のヘテロアリールであり、特定の実施形態において、6員〜20員のヘテロアリールアルキル、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、1員〜8員であり、ヘテロアリール部分は、5員〜12員のヘテロアリールである。
【0031】
「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、1個または複数の炭素原子(および任意の関連する水素原子)が同じまたは異なるヘテロ原子で独立に置き換えられている、部分的飽和または不飽和の環状アルキルラジカルを意味する。炭素原子(複数可)と置き換わるヘテロ原子の例には、これらに限定されないが、N、P、O、S、Siなどが含まれる。特定の飽和レベルが意図される場合、「ヘテロシクロアルカニル」または「ヘテロシクロアルケニル」という命名法が使用される。ヘテロシクロアルキル基の例には、これらに限定されないが、エポキシド、アジリン、チイラン、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジンなどに由来する基が含まれる。
【0032】
「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、炭素原子、典型的には末端またはsp炭素原子に結合している水素原子の1つが、ヘテロシクロアルキル基で置き換えられている、非環式アルキルラジカルを意味する。特定のアルキル部分が意図される場合、ヘテロシクロアルキルアルカニル、ヘテロシクロアルキルアルケニル、またはヘテロシクロアルキルアルキニルという命名法が使用される。特定の実施形態において、ヘテロシクロアルキルアルキル基は、6員〜30員のヘテロシクロアルキルアルキルであり、例えば、ヘテロシクロアルキルアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、1員〜10員であり、ヘテロシクロアルキル部分は、5員〜20員のヘテロシクロアルキルであり、特定の実施形態において、6員〜20員のヘテロシクロアルキルアルキル、例えば、ヘテロシクロアルキルアルキルのアルカニル、アルケニル、またはアルキニル部分は、1員〜8員であり、ヘテロシクロアルキル部分は、5員〜12員のヘテロシクロアルキルである。
【0033】
「親芳香環系」は、共役π(パイ)電子系を有する、不飽和の環式または多環式環系を意味する。「親芳香環系」の定義内に含まれるのは、環の1つまたは複数が芳香族であり、環の1つまたは複数が飽和または不飽和である縮合環系(例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレンなど)である。親芳香環系の例には、これらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが含まれる。
【0034】
「親ヘテロ芳香環系」は、1個または複数の炭素原子(および任意の関連する水素原子)が同じまたは異なるヘテロ原子で独立に置き換えられている、親芳香環系を意味する。炭素原子と置き換わるヘテロ原子の例には、これらに限定されないが、N、P、O、S、Siなどが含まれる。「親ヘテロ芳香環系」の定義内に特に含まれるのは、環の1つまたは複数が芳香族であり、環の1つまたは複数が飽和または不飽和である縮合環系(例えば、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなど)である。親ヘテロ芳香環系の例には、これらに限定されないが、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが含まれる。
【0035】
「ペルハロアルキル」は、各水素原子が同じまたは異なるハロゲン原子で置き換えられている、置換アルキルのサブセットである。ペルハロアルキルの例には、これらに限定されないが、−CF、−CFCF、および−C(CFが含まれる。
【0036】
「ペルハロアルコキシ」は、R31の各水素原子が同じまたは異なるハロゲン原子で置き換えられている、置換アルコキシのサブセットである。ペルハロアルコキシの例には、これらに限定されないが、−OCF、−OCFCF、および−OC(CFが含まれる。
【0037】
「保護基」は、分子中の反応性基に結合したときに、その反応性を遮蔽、低下、または防止する、原子の分類を意味する。保護基の例は、WutsおよびGreene、「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons、第4版、2006年;Harrisonら、「Compendium of Organic Synthetic Methods」、第1〜11巻、John Wiley & Sons、1971〜2003年;Larock、「Comprehensive Organic Transformations」、John Wiley & Sons、第2版、2000年;およびPaquette、「Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis」、John Wiley & Sons、第11版、2003年に見出すことができる。アミノ保護基の例には、これらに限定されないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)などが含まれる。ヒドロキシ保護基の例には、これらに限定されないが、ヒドロキシ基がアシル化またはアルキル化されているもの(例えば、ベンジル、およびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、およびアリルエーテル)が含まれる。
【0038】
「シリル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、式−SiR303131のラジカルを意味し、R30、R31、およびR31のそれぞれは、アルキル、アルコキシル、およびフェニルから独立に選択され、このアルキル、アルコキシル、フェニルは本明細書に定義されているようにそれぞれ置換され得る。
【0039】
「シロキシ」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、式−OSiR303131のラジカルを意味し、R30、R31、およびR31のそれぞれは、アルキル、アルコキシル、およびフェニルから独立に選択され、このアルキル、アルコキシル、フェニルは本明細書に定義されているようにそれぞれ置換され得る。
【0040】
「置換(されている)」とは、1個または複数の水素原子が同じまたは異なる置換基(複数可)で独立に置き換えられている基を意味する。置換基の例には、これらに限定されないが、−R64、−R60、−O、(−OH)、=O、−OR60、−SR60、−S、=S、−NR6061、=NR60、−CX、−CN、−CF、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)、−S(O)OH、−S(O)60、−OS(O)O、−OS(O)60、−P(O)(O、−P(O)(OR60)(O)、−OP(O)(OR60)(OR61)、−C(O)R60、−C(S)R60、−C(O)OR60、−C(O)NR6061、−C(O)O、−C(S)OR60、−NR62C(O)NR6061、−NR62C(S)NR6061、−NR62C(NR63)NR6061、−C(NR62)NR6061、−S(O)、NR6061、−NR63S(O)60、−NR63C(O)R60、および−S(O)R60が含まれ、各−R64は、独立に、ハロゲンであり、R60およびR61はそれぞれ独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、または置換ヘテロアリールアルキルであるか、あるいはR60およびR61は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリール環を形成し、R62およびR63は、独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、または置換ヘテロアリールアルキルであるか、あるいはR62およびR63は、それらが結合している原子と一緒になって、1つまたは複数のヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリール環を形成する。特定の実施形態において、第三級アミンまたは芳香族窒素は、1個または複数の酸素原子で置換され、相当する酸化窒素を形成し得る。
【0041】
「スルホネート」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、式−S(O)の硫黄ラジカルを意味する。
【0042】
「スルホニル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、式−S(O)60の硫黄ラジカルを意味し、R60は、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、および置換ヘテロアリールアルキルから選択され得る。
【0043】
特定の実施形態において、置換アリールおよび置換ヘテロアリールは、下記の置換基の1つまたは複数を含む。F、Cl、Br、C1〜3アルキル、置換アルキル、C1〜3アルコキシ、−S(O)NR5051、−NR5051、−CF、−OCF、−CN、−NR50S(O)51、−NR50C(O)R51、C5〜10アリール、置換C5〜10アリール、C5〜10ヘテロアリール、置換C5〜10ヘテロアリール、−C(O)OR50、−NO、−C(O)R50、−C(O)NR5051、−OCHF、C1−3アシル、−SR50、−S(O)OH、−S(O)50、−S(O)R50、−C(S)R50、−C(O)O、−C(S)OR50、−NR50C(O)NR5152、−NR50C(S)NR5152、および−C(NR50)NR5152、C3〜8シクロアルキル、および置換C3〜8シクロアルキル(R50、R51、およびR52は、水素およびC〜Cアルキルからそれぞれ独立に選択される)。
【0044】
この明細書および添付の特許請求の範囲において使用されているように、冠詞「a」、「an」、「the」は、明確および明解に1つの指示対象に限定しない限り、複数の指示対象を含む。
【0045】
他に示さない限り、明細書において使用される成分の量、反応条件、および他の特性またはパラメーターを表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。したがって、他に示さない限り、明細書および下記の添付の特許請求の範囲において記載されている数値パラメーターは、近似値であることを理解すべきである。最低限でも、そして特許請求の範囲に対して均等論を適用することを制限する試みとしてではなく、数値パラメーターは、報告する有効数字の桁数および通常の丸めの技術の適用を考慮して読み取るべきである。
【0046】
本明細書において全ての数値範囲は、数値の記載された範囲内の全ての数値および全ての数値の範囲を含む。さらに、本開示の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメーターは、上で考察するように近似値である一方、実施例のセクションにおいて記載されている数値は、できるだけ正確に報告される。しかし、このような数値は、測定装置および/または測定技術によりもたらされる特定の誤差を本質的に含むことを理解すべきである。
【0047】
本明細書において使用する場合、「液晶セル」という用語は、整列させることができる液晶材料を含有する構造を意味する。アクティブ液晶セルは、外力、例えば、電界または磁界を加えることによって、液晶材料が整列した状態と整列していない状態との間、または2つの整列した状態の間を切り換わることができるセルである。パッシブ液晶セルは、液晶材料が整列した状態を維持しているセルである。アクティブ液晶セル素子または装置の1つの非限定的例は、液晶ディスプレイである。
【0048】
「少なくとも部分的なコーティング」という語句は、基材の表面の一部から表面全てまでを覆う量のコーティングを意味する。「少なくとも部分的に硬化されたコーティング」という語句は、硬化可能または架橋可能な成分が少なくとも部分的に硬化、架橋および/または反応しているコーティングを意味する。代替の非限定的実施形態において、反応性成分の程度は、広範に変わり得、例えば、全ての可能性のある硬化可能で、架橋可能で、そして/または反応可能な成分の5%から100%まで変わり得る。
【0049】
「少なくとも部分的に耐摩耗性のコーティングまたはフィルム」という語句は、振動サンド法を使用した透明なプラスチックおよびコーティングの耐摩耗性についてのASTM F−735標準試験法において少なくとも1.3〜10.0のBayer耐摩耗性指数を示すコーティングまたはフィルムを意味する。「少なくとも部分的に反射防止コーティング」という語句は、コーティングされていない表面と比較して透過パーセントを増加させることによって、それが付着した表面の反射防止の性質を少なくとも部分的に改善するコーティングである。透過パーセントの改善は、未処理表面より1〜9パーセントだけ超える範囲でよい。言い換えれば、処理された表面の透過パーセントは、未処理表面より大きいあるパーセンテージから99.9までの範囲でよい。
【0050】
上で考察したように、従来の熱可逆性フォトクロミック化合物は、化学線に応答して第1の状態から第2の状態へと切り換わり、熱エネルギーに応答して第1の状態に復帰するのに適合する。さらに具体的には、従来の熱可逆性フォトクロミック化合物は、化学線に応答して1つの異性体形態(例えば、これらだけに限定されないが、閉じた形態)から別の異性体形態(例えば、これらだけに限定されないが、開いた形態)へと転換し、熱エネルギーに曝露されたときに閉じた形態に復帰することができる。前述のように、本発明は、式IIの化合物を対象とする。
【0051】
【化2】

【0052】
式IIに関連して、Rは、本明細書の下記に記載のようなハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、カルボキシ、アミノ、任意選択で置換されたアミノ、シアノ、ニトロ、スルホニル、スルホナト、アルキルカルボニル、およびアルコキシカルボニルから選択される。
【0053】
式IIに関連して、Rは、出現する毎に、ホルミル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ボロン酸、ボロン酸エステル、シクロアルコキシカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキルオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、ハロゲン、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、および任意選択で置換されたアミノから選択される、キラルまたはアキラル基から独立に選択される。さらに、mは、0〜3の整数、例えば、0〜2であり、nは、0〜4の整数、例えば、0〜3、または0〜2である。
【0054】
また、上記の式IIに関して、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、ハロゲン、任意選択で置換されたアミノ、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRは、任意の介在原子と一緒になって、オキソ、任意選択で置換されたシクロアルキル、および任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成し得る。
【0055】
置換基BおよびB’は、水素、ハロゲン、ならびにメタロセニル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択される、キラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択されるか、あるいはBおよびB’は、任意の介在原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキル、および任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成する。
【0056】
例えば、式IIに関連して、Rは、任意選択で置換されたC〜Cアルカニル、例えば、任意選択で置換されたC〜Cアルカニル;任意選択で置換されたC〜Cアルケニル、例えば、任意選択で置換されたC〜Cアルケニル;任意選択で置換されたC〜Cアルキニル、例えば、任意選択で置換されたC〜Cアルキニル;任意選択で置換されたフェニル;C〜Cアルコキシ、例えば、C〜Cアルコキシ;C〜Cペルハロアルコキシ、例えば、C〜Cペルハロアルコキシ;C〜Cペルハロアルキル、例えば、C〜Cペルハロアルキル;クロロ;フルオロ;シアノ;ニトロ;C〜Cアルキルカルボニル、例えば、C〜Cアルキルカルボニル;およびC〜Cアルコキシカルボニル、例えば、C〜Cアルコキシカルボニルから選択することができる。
【0057】
同様に、Rは、出現する毎に、ホルミル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、任意選択で置換されたアルキル、ボロン酸エステル、ハロゲン、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルおよび任意選択で置換されたアミノから独立に選択され得る。
【0058】
さらに、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、ハロゲン、任意選択で置換されたアミノ、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラルおよびアキラル基から選択することができ、あるいはRおよびRは、任意の介在原子と一緒になって、オキソ、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成し得る。具体例において、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、ハロゲン、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRは、任意の介在原子と一緒になって、オキソおよび任意選択で置換されたシクロアルキルから選択される基を形成し得る。
【0059】
同様にBおよびB’は、水素、ハロゲン;任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択される、キラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択されるか、あるいはBおよびB’は、任意の介在原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成する。具体例において、BおよびB’はそれぞれ独立に、水素;任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択されるキラル基から選択することができ、あるいはBおよびB’は、任意の介在原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルから選択される基を形成する。
【0060】
本発明の特定の実施形態において、上記の式IIに関して、
は、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、−OCF、−OCFCF、CF、CFCF、クロロ、フルオロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、アセチル、プロピオニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル;フェニル;アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ペルハロアルコキシ、アルキルカルボニル、カルボキシ、およびアルコキシカルボニルからそれぞれ独立に選択される1つまたは複数の基で置換されているフェニルから選択され、
は、出現する毎に、メチル、エチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、メトキシ、エトキシおよびCFから独立に選択され、
およびRは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからそれぞれ独立に選択され、
BおよびB’は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルカルボニル、カルボキシ、およびアルコキシカルボニルから独立に選択される1つまたは複数の基で置換されているフェニルからそれぞれ独立に選択される。
【0061】
本発明の化合物の具体例には、これらに限定されないが、
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−12−ブロモ−6,13,13−トリメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−10,12−ビス(トリフルオロメチル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−6,7−ジメトキシ−11,13,13−トリメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3−(4−ブトキシフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−6−トリフルロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3,3−ビス(4−フルオロフェニル)−10,12−ジブロモ−6−トリフルロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−10,11,12−トリメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−5,7−ジフルオロ−10,11,12−トリメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−12−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;および/または3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−6,7,10,12−テトラメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン
を含むことができる。
【0062】
上記に記載された化合物のいずれも、単独で、混合物として、または他の化合物、組成物、および/もしくは材料と組み合わせて有用であり得る。
【0063】
本明細書に記載されている新規化合物を得るための方法は、当業者には明らかであり、適切な手順は、例えば、下記の反応スキームおよび実施例において、ならびに本明細書において引用した参照文献に記載されている。
【0064】
下記のスキームおよび実施例において、下記の略語は、下記の意味を有する。略語が定義されていない場合、それはその一般に容認されている意味を有する。
Bi(OTf)=ビスマストリフレート
DHP=3,4−ジヒドロ−2H−ピラン
DCM=ジクロロメタン
DBSA=ドデシルベンゼンスルホン酸
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EtMgBr=臭化エチルマグネシウム
EtO=ジエチルエーテル
g=グラム
h=時間
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
(iPr)NH=ジイソプロピルアミン
HOAc=酢酸
LDA=リチウムジイソプロピルアミド
M=モル濃度(molar)(モル濃度(molarity))
MeLi=メチルリチウム
mg=ミリグラム
min=分
mL=ミリリットル
mmol=ミリモル
mM=ミリモル濃度
NatOBu=ナトリウムtert−ブトキシド
N=規定濃度(規定度)
ng=ナノグラム
nm=ナノメートル
nM=ナノモル濃度
NMP=N−メチルピロリドン
NMR=核磁気共鳴
PPTS=ピリジンp−トルエンスルホネート
pTSA=p−トルエンスルホン酸
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィー
t−BuOH=t−ブタノール
(Tf)O=トリフルオロメタンスルホン酸無水物
μL=マイクロリットル
μM=マイクロモル濃度。
【0065】
以下でさらに概要を述べるスキームにおいて考察されるように、化合物105は、本明細書に記載されているフォトクロミック二色性染料を調製するためのベースとしての役割を果たし得る1つの中間体を表す。例えば、これは、スキーム1、2、3、4および5において示すように調製され得る。調製されると、化合物105のヒドロキシ官能基は、スキーム6において観察されるように、ピラン形成のために使用され得る。
【0066】
【化3】

【0067】
スキーム1は、化合物105を調製する1つの方法を示す。RおよびRは、任意選択で置換されたキラルまたはアキラル基、例えば、ヘテロアルキル、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルから選択され得る。
【0068】
アリールケトン101は、購入することができ、または当技術分野において公知のフリーデル−クラフツ法またはグリニャールもしくはクペレート法によって調製することができる。例えば、公開資料Friedel−Crafts and Related Reactions、George A. Olah、Interscience Publishers、1964年、第3巻、第XXXI章(Aromatic Ketone Synthesis);「Regioselective Friedel−Crafts Acylation of 1,2,3,4−Tetrahydroquinoline and Related Nitrogen Heterocycles: Effect on NH Protective Groups and Ring Size」、Ishihara, Yugiら、J. Chem. Soc.、Perkin Trans.、1巻、3401〜3406頁、1992年;「Addition of Grignard Reagents to Aryl Acid Chlorides: An efficient synthesis of aryl ketones」、Wang, Xiao−junら、Organic Letters、第7巻、第25号、5593〜5595頁、2005年、およびそこで引用されている参照文献を参照されたい(上記の合成法に関する開示は参考として本明細書においてその全体が援用される)。カリウムt−ブトキシドの存在下でのコハク酸ジメチルとのアリールケトン101のストッブ反応によって、化合物102の縮合した生成物が得られ、これは無水酢酸中での閉環反応を経て、続いてメタノリシスによって、化合物103の生成物が形成される。
【0069】
化合物103はまた、例えば、Synthesis、1995年1月、41〜43頁;The Journal of Chemistry Society Perkin Transaction、1巻、1995年、235〜241頁および米国特許第7,557,208B2号(このような合成法に関するこれらの開示は参考として本明細書においてその全体が援用される)においてさらに記載されているように、当業者には公知の方法によって化合物106から出発してエステルが媒介する求核芳香族置換反応から調製され得る。
【0070】
調製されると、化合物103は、様々な多段階反応を経由する架橋炭素上の様々な置換によって、化合物105のインデノ縮合生成物にさらに変換することができ、これは、米国特許第5,645,767号;同第5,869,658号;同第5,698,141号;同第5,723,072号;同第5,961,892号;同第6,113,814号;同第5,955,520号;同第6,555,028号;同第6,296,785号;同第6,555,028号;同第6,683,709号;同第6,660,727号;同第6,736,998号;同第7,008,568号;同第7,166,357号;同第7,262,295号;同第7,320,826号および同第7,557,208号(架橋炭素上の置換基に関するこれらの開示は参考として本明細書においてその全体が援用される)において見出すことができる。スキーム1において示されるものは、化合物103がグリニャール試薬と反応して、それに続いて閉環反応によって、化合物105が得られることを例示する。
【0071】
【化4】

【0072】
スキーム2は、化合物103を化合物105に変換する第2の方法を例示する。化合物103の加水分解、それに続く閉環反応の後、化合物202を得た。化合物202のカルボニルは、求核試薬、例えば、グリニャール試薬、有機リチウム試薬、またはペルフルオロアルキルトリメチルシランと反応し、化合物203を形成することができる。Rは、任意選択で置換されたキラルまたはアキラル基、例えば、ヘテロアルキル、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルから選択され得る。化合物203のヒドロキシル基は、R(ハロゲン、ならびに任意選択で置換されたキラルまたはアキラル基、例えば、アルコキシ、シラノキシ(silanoxy)、ヘテロアリールオキシおよびアリールオキシから選択され得る)に容易に変換され得る。
【0073】
【化5】

【0074】
スキーム3は、化合物103を化合物105に変換する第3の方法を例示する。スキーム2からの化合物202は、ウォルフキシュナー還元またはその修正したバージョンを使用して301に還元され得る。例は、「Practical procedures for the preparation of N−tert−butyldimethylsilylhydrozones and their use in modified Wolff−Kishner reductions and in the synthesis of vinyl halides and gem−dihalides」、Myers, Andrew. G.ら、126巻, 5436−5445, 2004年、およびその中の参照文献(ウォルフキシュナー還元に関するこれらの開示は参考として本明細書において援用される)において見出すことができる。ヒドロキシ保護の後、化合物302は、塩基、例えば、LDAまたはメチルグリニャール試薬によって脱プロトン化されると、非常に求核的なジェミナル炭素(gem−carbon)を有する。当業者は、脱プロトン化化合物302を、求電子試薬、例えば、ハロゲン化アルキル、二酸化炭素、酸塩化物、ニトリルおよびクロロホルメート誘導体と反応させることによって、RおよびRに変換することができる。その結果、化合物105を調製することができ、RおよびRは、水素;ヘテロアルキル、アルキル、シクロアルキル、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニルから選択される任意選択で置換されたキラルまたはアキラル基から選択されるか、あるいはRおよびRは、任意の介在原子と一緒になって、オキソ、任意選択で置換されたシクロアルキル、および任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成し得る。
【0075】
スキーム4および5は、化合物105を調製する2つの新規方法を要約する(これは従前に記載されていたとは考えられない)。
【0076】
【化6】

【0077】
スキーム4は、アリールケトン401から出発する。Rは、水素、任意選択で置換されたキラルまたはアキラル基、例えば、ヘテロアルキル、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルから選択され得る。
【0078】
コハク酸ジメチルとのストッブ反応の後、化合物402は、無水物403に変換される。この無水物は、塩化アルミニウムを使用してインデノン酸(indenone acid)404に転換され得る。1,4−付加反応は、求核試薬、例えば、有機金属試薬、アミン、アルコール(alchohol)およびチオールを使用して行われ得る。この反応によって、インダノ酸(indano acid)405が提供される。Rは、水素、任意選択で置換されたキラルまたはアキラル基、例えば、ヘテロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、アルコキシ、およびチオールから選択され得る。化合物405はグリニャール試薬406と反応して、酸性後処理の後で化合物407を形成することができる。化合物407は、無水酢酸中で閉環反応を経て、続いてメタノリシスによって、生成物408を形成し、これは加水分解によって化合物105に変換されてもよい。
【0079】
【化7】

【0080】
スキーム5は、ストッブ生成物102から出発し、これはグリニャール試薬と反応し、化合物501が得られる。RおよびRは、任意選択で置換されたキラルまたはアキラル基、例えば、ヘテロアルキル、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルから選択され得る。トルエン中のビスマストリフレート、次いで無水酢酸で処理した後、2つの閉環反応が、同じポット中で逐次的に起こる。効率的な反応によって、化合物408がもたらされ、これは化合物105に変換され得る。
【0081】
【化8】

【0082】
スキーム6は、化合物105を式IIに変換する方法を例示する。式IIのピラン環は、プロパルギルアルコール602とのカップリングによって形成される。BおよびB’は、水素、ハロゲン、ならびに任意選択で置換されたキラルまたはアキラル基、例えば、メタロセニル、アルキルまたはペルフルオロアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、およびシクロアルキルからそれぞれ独立に選択してもよく、あるいはBおよびB’は、任意の介在原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルなどの基を形成する。
【0083】
本明細書に記載されている化合物は、本明細書において開示されている様々な非限定的実施形態によるフォトクロミック材料として、例えば、熱可逆性フォトクロミック化合物および/または組成物として、有用であり得る。このような化合物は、フォトクロミック特性、および、適用可能な場合、フォトクロミック−二色性特性を提供する種々の用途において有用であり得る。
【0084】
本発明のフォトクロミック組成物は、本明細書に記載されている化合物、および任意選択で少なくとも1種の他のフォトクロミック化合物の少なくとも1つを含み得る。フォトクロミック組成物は、種々の材料から選択され得る。このような材料の例は、
(a)単一のフォトクロミック化合物;
(b)フォトクロミック化合物の混合物;
(c)少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含む材料、例えば、ポリマー樹脂もしくは有機モノマー溶液;
(d)少なくとも1種のフォトクロミック化合物が化学結合している材料、例えば、モノマーもしくはポリマー;
(e)少なくとも1種のフォトクロミック化合物と外部材料との接触を実質的に防止するためのコーティングをさらに含む、材料(c)もしくは(d);
(f)フォトクロミックポリマー;または
(g)これらの混合物
から選択され得る。
【0085】
本発明は、有機材料と、有機ホスト材料の少なくとも一部に接続されている本開示のフォトクロミック化合物/組成物とを含むフォトクロミック物品をさらに提供する。本明細書において使用する場合、「に接続されている」という用語は、対象と直接的に接触していること、または1つもしくは複数の他の構造もしくは材料(これらの少なくとも1つは、対象と直接的に接触している)を通して対象と間接的に接触していること意味する。さらに、フォトクロミック化合物は、ホスト材料中に組み込むことによって、または、例えば、コーティングもしくは層の一部分としてホスト材料上に付着させることによって、ホストの少なくとも一部に接続され得る。フォトクロミック化合物に加えて、フォトクロミック組成物は、染料、配向促進剤、抗酸化剤、反応速度増強添加物、光開始剤、熱開始剤、重合阻害剤、溶媒、光安定剤、例えば、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカル捕捉剤、ゲル化剤および接着促進剤から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含み得る。
【0086】
本明細書において開示されている様々な非限定的実施形態と併せて使用され得る有機ホスト材料の非限定的例には、液晶材料およびポリマー材料が含まれる。
【0087】
ポリマー材料の例には、モノマーおよびモノマーの混合物から調製したホモポリマーおよびコポリマー(米国特許第5,962,617号および米国特許第5,658,501号の第15欄第28行から第16欄第17行に開示されており、これらの米国特許におけるこのようなポリマー材料の開示は、参考として特に本明細書において援用される)、オリゴマー材料、モノマー材料、またはこれらの混合物もしくは組合せが含まれる。ポリマー材料は、熱可塑性であっても熱硬化性のポリマー材料であってもよく、透明であっても光学的に明澄であってもよく、必要とされる任意の屈折率を有することができる。このような開示されているモノマーおよびポリマーの非限定的例には、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、例えば、アリルジグリコールカーボネート、例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(このモノマーは、商標CR−39でPPG Industries,Inc.によって販売されている);ポリ尿素−ポリウレタン(ポリ尿素−ウレタン)ポリマー(例えば、ポリウレタンプレポリマーおよびジアミン硬化剤の反応によって調製され、1つのこのようなポリマー用の組成物は、商標TRIVEXでPPG Industries,Inc.によって販売されている);ポリオール(メタ)アクリロイル末端カーボネートモノマー;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;エトキシ化フェノールメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;ウレタンアクリレートモノマー;ポリ(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリチオウレタン;熱可塑性ポリカーボネート、例えば、ビスフェノールAおよびホスゲンに由来するカーボネート連結樹脂(1つのこのような材料は、商標LEXANで販売されている);ポリエステル、例えば、商標MYLARで販売されている材料;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリビニルブチラール;ポリ(メタクリル酸メチル)、例えば、商標PLEXIGLASで販売されている材料、ならびに多官能性イソシアネートとポリチオールまたはポリエピスルフィドモノマーとの反応によって調製されるポリマー(ホモポリマー化されているか、またはポリチオール、ポリイソシアネート、ポリイソチオシアネートおよび任意選択でエチレン系不飽和モノマーもしくはハロゲン化芳香族含有ビニルモノマーと、コポリマー化および/もしくはターポリマー化されている)が含まれる。また企図されるのは、例えば、ブロックコポリマーまたは相互侵入網目生成物を形成するための、このようなモノマーのコポリマー、ならびに記載したポリマーおよびコポリマーと他のポリマーとのブレンドである。ポリマー材料はまた、自己組織化材料でよい。
【0088】
ポリマーは、ブロックであっても非ブロックコポリマーであってもよい。このようなブロックコポリマーは、ハードブロックおよびソフトブロックを含み得る。さらに、ポリマーは、非ブロックコポリマー(すなわち、特定のモノマー残基の大きなブロックを有さないコポリマー)、例えば、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期的コポリマー、および統計コポリマーでよい。本開示はまた、2種を超える異なる種類のコモノマー残基のコポリマーを包含することを意図する。
【0089】
有機ホスト材料は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(C〜C12)アルキルメタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール;ならびにポリオール(アリルカーボネート)モノマー、単官能性アクリレートモノマー、単官能性メタクリレートモノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、アルコキシル化多価アルコールモノマーおよびジアリリデンペンタエリトリトールモノマーからなる群のメンバーのポリマーから選択され得る。
【0090】
また、有機ホスト材料は、アクリレート、メタクリレート、メタクリル酸メチル、エチレングリコールビスメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルブチラール、ウレタン、チオウレタン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、およびエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートから選択される、モノマー(複数可)のホモポリマーまたはコポリマーであり得る。ポリマー材料は、殆どの場合、液晶材料、自己組織化材料、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(アリルカーボネート)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリアルケン、ポリアルキレン−酢酸ビニル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、これらのコポリマー、および/またはこれらの混合物を含む。
【0091】
さらに、有機ホスト材料は、光学素子またはその部分を形成することができる。光学素子の非限定的例には、眼部素子、ディスプレイ素子、窓、および鏡が含まれる。本明細書において使用する場合、「光学」という用語は、光および/または視覚に関するか、または関連することを意味する。例えば、本明細書においてこれらだけに限定されないが、様々な非限定的実施形態によると、光学素子または装置は、眼部素子および装置、ディスプレイ素子および装置、窓、鏡、包装材料、例えば、シュリンクラップ、ならびにアクティブ液晶セル素子、パッシブ液晶セル素子、アクティブ液晶セル装置、およびパッシブ液晶セル装置から選択され得る。
【0092】
本明細書において使用する場合、「眼部」という用語は、目および視覚に関するか、または関連することを意味する。眼部素子の非限定的例には、矯正および非矯正レンズ(単焦点レンズ、または複焦点レンズ(分割式複焦点レンズであっても非分割式複焦点レンズであってもよい)を含めた)(これらに限定されないが、二焦点レンズ、三焦点レンズおよびプログレッシブレンズなど)、ならびに視覚を(外見的またはその他の点で)矯正、保護、または増強するために使用される他の素子(例えば、これらだけに限らないが、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、および保護レンズまたはバイザーを含めた)が含まれる。本明細書において使用する場合、「ディスプレイ」という用語は、語、数字、記号、デザインまたは図での可視または機械読み取り可能な情報の提示を意味する。ディスプレイ素子および装置の非限定的例には、スクリーン、モニター、ならびにセキュリティ素子(これらだけに限定されないが、セキュリティマークおよび認証マークを含めた)が含まれる。本明細書において使用する場合、「窓」という用語は、それを通して光線が透過することを可能にするのに適合した開口部を意味する。窓の非限定的例には、自動車および飛行機の透明部品、フィルター、シャッター、および光スイッチが含まれる。本明細書において使用する場合、「鏡」という用語は、入射光の大部分を正反射性で反射する表面を意味する。
【0093】
例えば、有機ホスト材料は、眼部素子、より特定すると、眼部レンズでよい。
【0094】
さらに、本明細書において開示されているフォトクロミック化合物は、単独で、または300nm〜1000nmの範囲内(300nmおよび1000nmを含む)の少なくとも1つの活性化吸収極大を有する少なくとも1種の他の補完的な有機フォトクロミック化合物(または、これを含有する物質)と併せて使用され得ることが企図されている。例えば、フォトクロミック化合物の組合せが、活性化されたとき所望の色相を示すように、本明細書において開示されているフォトクロミック化合物を、少なくとも1種の他の従来の有機フォトクロミック化合物と合わせることができる。適切な従来の有機フォトクロミック化合物の非限定的例には、本明細書の以下に記載されているピラン、オキサジン、フルギドおよびフルギミドが含まれる。
【0095】
補完的な熱可逆性のフォトクロミックピランの非限定的例には、ベンゾピラン、ナフトピラン、例えば、ナフト[1,2−b]ピラン、ナフト[2,1−b]ピラン、インデノ縮合ナフトピラン(例えば、米国特許第5,645,767号において開示されているもの)、ならびに複素環式縮合ナフトピラン(例えば、米国特許第5,723,072号、同第5,698,141号、同第6,153,126号、および同第6,022,497号(これらは、このようなナフトピラン;スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン;フェナントロピラン;キノピラン;フルオロアンテノピラン(fluoroanthenopyrans);スピロピラン、例えば、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノピランおよびスピロ(インドリン)ピランの開示について、参考として本明細書に援用される)において開示されているもの)が含まれる。ナフトピランおよび補完的な有機フォトクロミック物質のさらなる具体例は、その開示が参考として特に本明細書に援用されている米国特許第5,658,501号に記載されている。スピロ(インドリン)ピランはまた、その開示が参考として本明細書に援用されているテキストTechniques in Chemistry、第III巻、「Photochromism」、第3章、Glenn H. Brown(編)、John Wiley and Sons, Inc.、New York、1971年に記載されている。
【0096】
補完的な熱可逆性フォトクロミックオキサジンの非限定的例には、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジン、およびスピロ−オキサジン、例えば、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノオキサジン(fluoranthenoxazine)、およびスピロ(インドリン)キノオキサジン(quinoxazine)が含まれる。
【0097】
補完的な熱可逆性フォトクロミックフルギドのさらなる非限定的例には、フルギミド、ならびに3−フリルフルギド、3−チエニルフルギド、3−フリルフルギミド、および3−チエニルフルギミド(米国特許第4,931,220号に開示されている)(このようなフルギミドの開示は、参考として特に本明細書に援用される)ならびに上記のフォトクロミック材料/化合物のいずれかの混合物が含まれる。
【0098】
例えば、本明細書において開示されているフォトクロミック化合物は、有機ホスト材料(この有機ホスト材料の中にフォトクロミック化合物が組み込まれるか、またはフォトクロミック化合物の上にこの有機ホスト材料を付着させる)が、活性化状態または「脱色した」状態において所望の色(複数可)を示すことができるような量もしくは比で、単独で、または別の従来の有機フォトクロミック化合物(上記で考察するような)と併せて使用され得ることが企図されている。したがって、使用されるフォトクロミック化合物の量は重大ではないが、ただし、所望のフォトクロミック作用を生じさせるのに十分な量が存在する。本明細書において使用する場合、「フォトクロミック量」という用語は、所望のフォトクロミック作用を生じさせるのに必要なフォトクロミック化合物の量を意味する。
【0099】
本発明はまた、基材と、基材のその少なくとも1つの表面の少なくとも一部に接続されている、フォトクロミック量の本開示のフォトクロミック化合物を有するコーティング組成物の少なくとも部分的なコーティングとを含む、フォトクロミック物品を提供する。さらに、本明細書においてこれらだけに限定されないが、少なくとも部分的なコーティングの少なくとも一部は、少なくとも部分的に固化されていてもよい。本明細書において使用する場合、「固化(される)」という用語は、所望の方向付けに固定することを意味する。
【0100】
例えば、上記の非限定的実施形態によると、コーティング組成物は、これらだけに限定されないが、ポリマーコーティング組成物、ペイント、およびインクから選択され得る。さらに、本明細書において開示されているフォトクロミック化合物に加えて、様々な非限定的実施形態によるコーティング組成物は、300nm〜1000nmの範囲内(300nmおよび1000nmを含む)に少なくとも1つの活性化吸収極大を有する少なくとも1種の他の従来の有機フォトクロミック化合物をさらに含むことができる。
【0101】
フォトクロミック量のフォトクロミック化合物を含むコーティング組成物を付着させることができる適切な基材の非限定的例には、ガラス、石造りのもの、テキスタイル、セラミックス、金属、木、紙およびポリマー有機材料が含まれる。適切なポリマー有機材料の非限定的例は、上に記載する。
【0102】
さらに提供されるのは、基材と、基材の少なくとも一部に接続されている少なくとも1種の本開示のフォトクロミック化合物を含む少なくとも部分的なコーティングとを含む光学素子である。光学素子の非限定的例には、眼部素子、ディスプレイ素子、窓、および鏡が含まれる。例えば、光学素子は、眼部素子でよく、基材は、矯正および非矯正レンズ、部分的に形成されたレンズ、およびレンズブランクから選択される眼部基材でよい。
【0103】
本明細書においてこれらだけに限定されないが、光学素子は、所望の光学特性(例えば、これらに限定されないが、フォトクロミック特性および二色性特性など)を達成するのに必要とされる任意の量のフォトクロミック化合物を含むことができる。
【0104】
上記の非限定的実施形態と併せて使用するのに適した基材の他の非限定的例には、着色されていない基材、着色された基材、フォトクロミック基材、着色されたフォトクロミック基材、直線偏光基材、円偏光基材、楕円偏光基材、反射基材、ならびに波長板または遅延基材、例えば、4分の1波長板および2分の1波長板が含まれる。基材に関連して本明細書において使用する場合、「着色されていない」という用語は、着色剤添加物(これらに限定されないが、従来の染料など)を本質的に含まず、かつ化学線に応答して有意に変化しない可視光線についての吸収スペクトルを有する基材を意味する。さらに、基材に関連して、「着色された」という用語は、着色剤添加物(これらに限定されないが、従来の染料など)を有し、かつ化学線に応答して有意に変化しない可視光線についての吸収スペクトルを有する基材を意味する。
【0105】
本明細書において使用する場合、基材に関連して「直線偏光」という用語は、放射線を直線的に偏光させる(すなわち、光波の電気ベクトルの振動を一方向に制限する)のに適合した基材を意味する。本明細書において使用する場合、基材に関連して「円偏光」という用語は、放射線を円偏光するのに適合した基材を意味する。本明細書において使用する場合、基材に関連して「楕円偏光」という用語は、放射線を楕円偏光するのに適合した基材を意味する。基材に関連して本明細書において使用する場合、「フォトクロミック」という用語は、少なくとも化学線に応答して変化する可視光線についての吸収スペクトルを有し、熱可逆性である基材を意味する。さらに、基材に関連して本明細書において使用する場合、「着色されたフォトクロミック」という用語は、着色剤添加物およびフォトクロミック化合物を含有し、かつ少なくとも化学線に応答して変化する可視光線についての吸収スペクトルを有し、熱可逆性である基材を意味する。従って、例えば、着色されたフォトクロミック基材は、化学線に曝露されたとき、着色剤の第1の色特性、および着色剤およびフォトクロミック化合物の組合せの第2の色特性を有することができる。
【0106】
本発明はまた、基材と、基材の少なくとも一部に接続されている少なくとも1種の本開示のフォトクロミック化合物を含む少なくとも部分的なコーティングとを含む光学素子を対象とする。上で考察したように、本発明による光学素子は、ディスプレイ素子(例えば、これらに限定されないが、スクリーン、モニター、およびセキュリティ素子など)でよい。例えば、光学素子は、第1の表面を有する第1の基材、第2の表面を有する第2の基材を含むディスプレイ素子でよく、第2の基材の第2の表面は、ギャップを画定するように、第1の基材の第1の表面の反対側にあり、そして第1の基材の第1の表面から離間しており、少なくとも1種の本開示のフォトクロミック化合物を含む流体材料は、第1の基材の第1の表面および第2の基材の第2の表面によって画定されたギャップ内に位置している。
【0107】
第1および第2の基材は、着色されていない基材、着色された基材、フォトクロミック基材、着色されたフォトクロミック基材、直線偏光基材、円偏光基材、楕円偏光基材および反射基材および遅延基材から独立に選択され得る。
【0108】
本発明はまた、基材と、基材の少なくとも一部に接続されている本開示の少なくとも1種のフォトクロミック化合物とを含むセキュリティ素子を提供する。セキュリティ素子の非限定的例には、例えば、これらだけに限定されないが、アクセスカードおよびパス、例えば、チケット、バッジ、身分証明書または会員券、デビットカードなど;流通証券および非流通証券、例えば、為替手形、小切手、債務証書、短期証券、定期預金証書、株券など;公文書、例えば、通貨、ライセンス、身分証明書、給付カード、ビザ、パスポート、公的証明書、権利書など;消費者用品、例えば、ソフトウェア、コンパクトディスク(「CD」)、デジタルビデオディスク(「DVD」)、家庭器具、消費者用電化製品、スポーツ用品、車など;クレジットカード;ならびに商品タグ、ラベルおよびパッケージングなどの、基材の少なくとも一部に接続されているセキュリティマークおよび認証マークが含まれる。
【0109】
本明細書においてこれらだけに限定されないが、セキュリティ素子は、透明な基材および反射基材から選択される基材の少なくとも一部に接続され得る。代わりに、反射基材が必要とされる場合で、基材が意図する用途に対して反射性でないかまたは十分に反射性でない場合、セキュリティマークを基材に付着させる前に、反射材料を、基材の少なくとも一部に最初に付着させることができる。例えば、反射アルミニウムコーティングの上にセキュリティ素子を形成させる前に、反射アルミニウムコーティングを基材の少なくとも一部に付着させることができる。まださらに、セキュリティ素子は、着色されていない基材、着色された基材、フォトクロミック基材、着色されたフォトクロミック基材、直線偏光基材、円偏光基材、および楕円偏光基材から選択される基材の少なくとも一部に接続され得る。
【0110】
さらに、上記のセキュリティ素子は、1つまたは複数の他のコーティングまたはシートをさらに含むことができ、米国特許第6,641,874号(多重反射フィルムに関するその開示は参考として本明細書中に特に援用される)に記載されているような視角依存性の特徴を有する多層反射セキュリティ素子を形成する。
【0111】
上記のフォトクロミック物品および光学素子は、当技術分野において公知の方法によって形成され得る。本明細書においてこれらだけに限定されないが、本明細書において開示されているフォトクロミック化合物は、ホスト材料中への組込みか、またはホストもしくは基材上への付着(例えば、コーティングの形態で)によって、基材もしくはホストに接続され得ることが企図されている。
【0112】
例えば、フォトクロミック化合物は、ホスト材料内にフォトクロミック化合物を溶解または分散させることによって、例えば、重合前にモノマーホスト材料にフォトクロミック化合物を加えることによって所定位置へ入れ、フォトクロミック化合物の熱い溶液中へのホスト材料の液浸または熱移動によるホスト材料中へのフォトクロミック化合物の吸い込み(imbibing)によって、有機ホスト材料中に組み込まれ得る。本明細書において使用する場合、「吸い込み」という用語は、ホスト材料中へのフォトクロミック化合物単独の浸透、多孔質ポリマー中へのフォトクロミック化合物の溶媒補助移動、気相移動、および他のこのような移動方法を含む。
【0113】
さらに、本明細書において開示されているフォトクロミック化合物を、コーティング組成物(上で考察したような)の一部として、またはフォトクロミック化合物を含むシートとして、有機ホスト材料または他の基材に付着させることができる。本明細書において使用する場合、「コーティング」という用語は、均一な厚さを有してもよく、または有さなくてもよい、流動性のある組成物から得られる支持されたフィルムを意味する。本明細書において使用する場合、「シート」という用語は、全体的に均一な厚さを有し、自立することができる事前形成されたフィルムを意味する。このような場合には、紫外線吸収剤は、コーティングもしくはシートへのその添加前にフォトクロミック材料と混合され得るか、またはこのような吸収剤は、フォトクロミック物品と入射光との間のコーティングもしくはフィルムとして重ねられ得る(例えば、重ね合わせられ得る)。
【0114】
本明細書において開示されているフォトクロミック化合物を含むコーティング組成物を付着させる非限定的方法には、コーティングを付着させるための当技術分野において公知の方法、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、スプレーおよびスピンコーティング、カーテンコーティング、フローコーティング、浸漬コーティング、射出成形、キャスティング、ロール塗布、ワイヤーコーティング、およびオーバーモールディングが含まれる。フォトクロミック化合物を含むコーティング(これはコーティング組成物の形態であり得る)をモールドに付着させることができ、基材をコーティングの上に形成させることができる(すなわち、オーバーモールディング)。さらにまたは代わりに、フォトクロミック化合物を有さないコーティング組成物を、上記の技術のいずれかを使用して基材または有機ホスト材料に最初に付着させることができ、その後そのコーティング組成物に上記のようなフォトクロミック化合物を吸い込ませることができる。
【0115】
フォトクロミック材料を含むことができるフィルム形成ポリマーのコーティング組成物の非限定的例は、下記の通りである。フォトクロミック/二色性液晶コーティング(例えば、米国特許第7,256,921号の第2欄第60行から第94欄第23行に記載されたもの);フォトクロミックポリウレタンコーティング(例えば、米国特許第6,187,444号の第3欄第4行から第12欄第15行に記載されたもの);フォトクロミックアミノプラスト樹脂コーティング(例えば、米国特許第6,432,544号の第2欄第52行から第14欄第5行、および同第6,506,488号の第2欄第43行から第12欄第23行に記載されたもの);フォトクロミックポリシロキサンコーティング(例えば、米国特許第4,556,605号の第2欄第15行から第7欄第27行に記載されたもの);フォトクロミックポリ(メタ)アクリレートコーティング(例えば、米国特許第6,602,603号の第3欄第15行から第7欄第50行、同第6,150,430号の第8欄第15〜38行、および同第6,025,026号の第8欄第66行から第10欄第32行に記載されたもの);ポリ酸無水物フォトクロミックコーティング(例えば、米国特許第6,436,525号の第2欄第52行から第11欄第60行に記載されたもの);フォトクロミックポリアクリルアミドコーティング(米国特許第6,060,001号の第2欄第6行から第5欄第40行に記載されたもの);フォトクロミックエポキシ樹脂コーティング(例えば、米国特許第6,268,055号の第2欄第63行から第15欄第12行に記載されたもの);およびフォトクロミックポリ(尿素−ウレタン)コーティング(例えば、米国特許第6,531,076号の第2欄第60行から第10欄第49行に記載されたもの)。皮膜形成ポリマーに関する上記米国特許の開示は、これによって参考として本明細書中に援用される。
【0116】
本明細書において開示されているフォトクロミック化合物を含むシートを基材に付着させる非限定的方法には、例えば、ポリマーシートを基材の少なくとも一部に、積層化すること、融合させること、インモールドキャスティングすること、および粘着性結合させることの少なくとも1つが含まれる。本明細書において使用する場合、インモールドキャスティングは、種々のキャスティング技術(例えば、これらに限定されないがオーバーモールディング(ここでは、シートをモールド中に入れ、基材の少なくとも一部の上に基材を(例えば、キャスティングによって)形成させる);および射出成形(ここでは、基材を、シートの周りで形成させる)など)を含む。さらに、フォトクロミック化合物を、コーティングとしてシートに付着させることができるか、またはシートを基材に付着させる前もしくはその後に、吸い込みによって、または他の適切な方法によってシート中に組み込むことができることが企図されている。
【0117】
ポリマーシートは、熱硬化性ポリマーおよび熱可塑性ポリマーの両方を含めた、多種多様のポリマーのいずれかのポリマー組成物を含むことができる。本明細書において使用する場合、「ポリマー」という用語は、ポリマーおよびオリゴマーの両方、ならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を含むことが意図される。このようなポリマーは、例えば、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリ(尿素)ウレタンポリマー、ポリアミンポリマー、ポリエポキシドポリマー、ポリアミドポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリシロキサンポリマー、ポリスルフィドポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの混合物を含むことができる。一般に、これらのポリマーは、当業者に公知の任意の方法によって作製されたこれらのタイプのいずれかのポリマーでよい。
【0118】
ポリマーシートを形成するために使用されるポリマーはまた、これらに限定されないが、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバメート基、アミド基、尿素基、イソシアネート基(ブロックイソシアネート基を含めた)、メルカプタン基、エチレン性不飽和を有する基(例えば、アクリレート基)、ビニル基、およびこれらの組合せを含めた官能基を含み得る。フィルム形成樹脂の適当な混合物はまた、コーティング組成物の調製において使用され得る。ポリマー組成物(このポリマー組成物からポリマーシートが形成される)が、官能基含有ポリマー(例えば、上記の官能基含有ポリマーのいずれか)を含む場合、ポリマー組成物は、前記ポリマーの官能基と反応性である官能基を有する材料をさらに含むことができる。反応は、例えば、熱硬化技術、光によって開始される硬化技術、酸化的硬化技術、および/または放射性硬化技術によって促進され得る。また企図されるのは、上記ポリマーのいずれかの混合物である。
【0119】
本発明のポリマーシートを形成することにおいて使用するのに適したポリマーのさらなる非限定的例は、米国特許出願公開第2004/0068071A1号のパラグラフ[0020]〜[0042](この指定した部分は、参考として本明細書に援用される);および米国特許第6,096,375号の第18欄第8行から第19欄第5行(この指定した部分は、参考として本明細書に援用される)に記載されている、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルおよびポリアミドの熱可塑性ブロックコポリマーである。
【0120】
ポリマーシートは、エラストマー性ポリマー、例えば、熱可塑性エラストマー性ポリマーを含み得る。本明細書において使用する場合、「エラストマー性ポリマー」とは、少なくとも部分的に可逆的に変形または伸長をすることができるように、高度な弾力性および弾性を有するポリマーを意味する。場合によっては、伸展させられたとき、エラストマーの分子は配向され、結晶性配置の態様をとることができ、解放することによって、エラストマーは、ある程度、その天然の整列していない状態に戻ることができる。本発明の目的のために、エラストマー性ポリマーは、熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマー性ポリマー、および熱硬化性ポリマーを含むことができるが、ただし、このようなポリマーは、「エラストマー性ポリマー」について上で提供した記載の範囲内に入る。
【0121】
エラストマー性ポリマーは、これらに限定されないが、上記ポリマーのいずれかのコポリマーを含めた多種多様の当該技術分野で認識されているエラストマーのいずれかを含むことができる。本発明の一実施形態において、エラストマー性ポリマーは、ポリマー骨格においてエーテルおよび/またはエステル結合を有するブロックコポリマーを含むことができる。適切なブロックコポリマーの例には、これらに限定されないが、ポリ(アミド−エーテル)ブロックコポリマー、ポリ(エステル−エーテル)ブロックコポリマー、ポリ(エーテル−ウレタン)ブロックコポリマー、ポリ(エステル−ウレタン)ブロックコポリマー、および/またはポリ(エーテル−尿素)ブロックコポリマーを含むことができる。このようなエラストマー性ポリマーの適切な具体例は、これらに限定されないが、商品名DESMOPAN(登録商標)およびTEXIN(登録商標)(Bayer Material Scienceから);ARNITEL(登録商標)(Royal DSMから);ならびにPEBAX(登録商標)(Atofina ChemicalsまたはCordis Corporationから)で市販されているものを含むことができる。
【0122】
さらに、上で考察したように、本明細書において開示されているフォトクロミック化合物を、単独で、または少なくとも1種の他の従来の有機フォトクロミック化合物と組み合わせて、組み込んでも、付着させてもよく、また、この少なくとも1種の他の従来の有機フォトクロミック化合物を、上記のようなホスト材料および基材に付着させても、またはそれらの中に組み込んでもよい。他のフォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、遷移コーティング、プライマーコーティング、接着コーティング、ミラーコーティングおよび保護コーティング(くもり止めコーティングを含めた)、酸素バリヤーコーティングおよび紫外線光吸収コーティングを含めたさらなるコーティングを、フォトクロミック物品に付着させてもよい。
【0123】
本明細書に記載されている実施形態を、以下の非限定的例によってさらに例示する。
【実施例】
【0124】
本発明を、その特定の実施形態の特定の詳細に関連して記載してきた。このような詳細が添付の特許請求の範囲に含まれている場合を除いて、詳細を本発明の範囲に対する制限であると見なすことは意図しない。
【0125】
パート1は、実施例1〜12および比較例(CE)1〜6の調製について記載する。パート2は、実施例および比較例のフォトクロミック特性の試験について記載する。
【0126】
パート1−実施例1〜12および比較例1〜6の調製
(実施例1)
ステップ1
3−ブロモ−4’−メチルベンゾフェノン(50g)、コハク酸ジメチル(34.5g)およびトルエン(1リットル)を、機械式撹拌機、固体添加漏斗および窒素ブランケットを備えた反応フラスコに加えた。固体が溶解するまで、混合物を室温で撹拌した。固体カリウムt−ブトキシド(22.4g)を固体添加漏斗を通して加え、混合物を室温で4時間撹拌した。得られた反応混合物を、1Lの水に注ぎ、生成物を含有する得られた水層を集めた。トルエン層を200mLの水で抽出した。合わせた水溶液をトルエンで洗浄した。HCl(2N、20mL)を水溶液に加えた。黄色の油状物が沈殿した。得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。黄色のガラス状の油状物(55g)を、生成物として得た。これを、次のステップにおいて直接使用した。
【0127】
ステップ2
上記黄色のガラス状の油状物(ステップ1からのストッブ酸生成物の混合物)(55g)および無水酢酸(300mL)を混合し、冷却器を備えた反応フラスコ中で還流させた。1時間後、無水酢酸を真空蒸発によって除去し、55グラムの油状物を生成物として得た。これを、次のステップにおいて直接使用した。
【0128】
ステップ3
ステップ2から得た55グラムの油状物が入った反応フラスコに、メタノール(300mL)およびHCl(12N、1ml)を加えた。混合物を、4時間還流させた。メタノールを、真空蒸発によって除去した。回収した油状物を塩化メチレンに溶解させ、炭酸水素ナトリウム飽和水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。得られた油状物(51g)を、次のステップにおいて直接使用した。
【0129】
ステップ4
ステップ3からの生成物(51g)を、滴下漏斗および磁気撹拌棒を備えたオーブン乾燥したフラスコ中で500mlの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。混合物を室温で撹拌し、臭化メチルマグネシウムのトルエン/THF(1:1)溶液(1.4M)を滴下で添加した。添加の後、混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を、2Lの氷水に注いだ。混合物のpH値を、HCl(12N)を使用して約2に調節した。酢酸エチル(500mL)を加えた。得られた有機層を分離させ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。回収した生成物(50gの油状物)を、次のステップにおいて直接使用した。
【0130】
ステップ5
ステップ4からの生成物(50g)およびキシレン(300mL)を、磁気撹拌棒を備えた反応フラスコに加えた。p−トルエンスルホン酸(1g)を加え、得られた混合物を8時間還流させた。キシレンを真空蒸発によって除去し、得られた油性生成物を酢酸エチルに溶解させ、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。少量の生成物(50gの油状物)は、HPLCから観察されるように4種のナフトール異性体を含有した。生成物(1.8g)を、Teledyne ISCOからのCombiFlash(登録商標)Rfを使用して精製した。分離の後、3つの成分を得た。NMR分析は、生成物が、8−ブロモ−3,7,7−トリメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オール(0.32g、所望の生成物);4−ブロモ−7,7,9−トリメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オール(0.08g);ならびに10−ブロモ−3,7,7−トリメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オール(混合物の55重量%)および2−ブロモ−7,7,9−トリメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オール(混合物の45重量%)の混合物(0.36g)と一致する構造を有することを示した。
【0131】
ステップ6
ステップ5からの所望のナフトールである8−ブロモ−3,7,7−トリメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オール(0.3g)を、反応フラスコ中に入れた。フラスコに、0.23グラムの1,1−ビス(4−メトキシフェニル)プロパ−2−イン−1−オール、p−トルエンスルホン酸の少量の結晶および塩化メチレン(10ml)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。Teledyne ISCOからのCombiFlash(登録商標)Rfを使用して、生成物を精製した。灰色の固体を生成物として得た(0.45g)。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−12−ブロモ−6,13,13−トリメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0132】
【化9】
【0133】
(実施例2)
ステップ1
削り状マグネシウム(5.38g)およびTHF(50ml)を、1−ブロモ−3,5−ジクロロベンゼン(50g)およびTHF(300ml)の混合物を含有した滴下漏斗を備えた乾燥フラスコ中に入れた。滴下漏斗中の30ミリリットルの溶液を、フラスコに加えた。数滴のジブロモエタンをフラスコに加え、反応の開始を助けた。数分後、反応フラスコ中の溶媒は、沸騰し始めた。滴下漏斗中の溶液の残りを滴下で添加した。氷冷水を時折使用して、反応混合物を冷却した。添加の後、混合物を室温で2時間撹拌した。ベンゾニトリル(22.82g)を、反応混合物に加えた。混合物を2日間還流させた。3NのHCl(300mL)を加えた。混合物を4時間撹拌し、酢酸エチルを使用して抽出した。有機層を分液漏斗に集め、濃縮した。得られた油状物(49g)を、それ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0134】
ステップ2
ステップ1からの生成物(47g)、コハク酸ジメチル(36g)およびトルエン(500mL)を、機械式撹拌機、固体添加漏斗および窒素ブランケットを備えた反応フラスコに加えた。固体が溶解するまで、混合物を室温で撹拌した。固体カリウムt−ブトキシド(23.1g)を固体添加漏斗によって加え、混合物を室温で4時間撹拌した。このように得られた反応混合物を1Lの水に注ぎ、生成物を含有したこのように得られた水層を集めた。トルエン層を、200mLの水で抽出した。合わせた水溶液を、トルエンで洗浄した。HCl(3N)を水溶液に加え、pHを5に調節した。このように得られた混合物を、酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。油状物を、生成物として得た。これを、次のステップにおいて直接使用した。
【0135】
ステップ3
ステップ2からの油状物(ストッブ酸生成物の混合物)および無水酢酸(200mL)を混合し、冷却器を備えた反応フラスコ中で還流させた。1時間後、無水酢酸を真空蒸発によって除去し、得られた油状物を次のステップにおいて直接使用した。
【0136】
ステップ4
ステップ3から得た油状物を含有する反応フラスコに、メタノール(500mL)およびHCl(12N、1ml)を加えた。混合物を、2時間還流させた。メタノールを、真空蒸発によって除去した。回収した油状物を塩化メチレンに溶解し、炭酸水素ナトリウム飽和水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。透明な油状物(48g)を得た。酢酸エチル/ヘキサン(1/9)を使用して、生成物を結晶化した。白色の結晶(12g)を、望ましくない位置異性体として得た。母液を濃縮した。油状物(31g)を得た。NMRは、油状物中の生成物の大部分が、メチル1−(3,5−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−ナフトエートと一致する構造を有したことを示した。
【0137】
ステップ5
ステップ4からのメチル1−(3,5−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−ナフトエート(31g)を出発物質として使用したこと以外は、実施例1のステップ4〜6からの手順に従った。オフホワイト(10g)固体を、生成物として得た。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0138】
【化10】
【0139】
(実施例3)
ステップ1
削り状マグネシウム(13.5g)を、磁気撹拌棒および冷却器を備えた丸底フラスコ中に入れた。4−ブロモ−1,2−ジメトキシベンゼン(100g)を、無水テトラヒドロフラン(200mL)に溶解した。この溶液の一部(30mL)を、撹拌しながら削り状Mgに加えた。ジブロモエタン(1mL)を加えた。数分後、混合物は沸騰し始めた。フラスコを氷浴に入れ、5〜10℃の温度を制御した。4−ブロモ−1,2−ジメトキシベンゼンの溶液の残りを、反応混合物に滴下で添加し、3時間撹拌した。温度を0℃に下げ、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル(82g)を5分の間隔に亘りゆっくりと加えた。混合物を、20分間撹拌した。3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド(141g)をTHF(200mL)で希釈し、5分の間隔に亘りゆっくりと加えた。混合物を、室温で18時間撹拌した。水(1.5L)をゆっくりと加え、反応をクエンチした。3NのHClを使用して、pHを2に調整した。このように得られた水層を、酢酸エチル(EtOAc)(1L)で抽出した。このように得られた有機層を集め、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、油状物を得た。油状物を、次のステップにおいて直接使用した。
【0140】
ステップ2
ステップ1からの油状物(157g)、コハク酸ジメチル(80g)およびTHF(1L)を、機械式撹拌機を備えた3Lの三つ口フラスコに入れた。カリウムt−ブトキシド(52g)を、30分の間隔に亘りバッチ式に加えた。このように得られた混合物を、2時間撹拌した。反応混合物を、10重量%NaClを有する氷水(1.5L)に加え、20分間撹拌した。混合物を、3NのHClを使用してpH4に酸性化した。このように得られた水層を、EtOAc(1L)で抽出した。有機層を集め、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、油状物を得た。油状物を、次のステップにおいて直接使用した。NMRは、主要な所望の生成物が、4−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−(メトキシカルボニル)ブタ−3−エン酸と一致する構造を有したことを示した。
【0141】
ステップ3
ステップ2からの油状物、4−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−(メトキシカルボニル)ブタ−3−エン酸(197g)および無水酢酸(270g)を、CHCl(1L)に溶解した。ビスマストリフレート(18.2g)を加え、反応混合物を、室温で30分間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮し、色の濃い固体を得た。生成物をイソプロパノール(0.5L)から再結晶化させた。結晶を真空濾過によって集め、乾燥させ、白色の固体(135g)を得た。NMRは、生成物が、メチル4−アセトキシ−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−6,7−ジメトキシ−2−ナフトエートと一致する構造を有したことを示した。
【0142】
ステップ4
ステップ3からの生成物(135g)をTHF(1L)に溶解し、メチルマグネシウムクロリド(525mL、THF中22重量%)を0〜5℃にて滴下で添加した。反応混合物を室温に温め、3時間撹拌した。反応混合物を、10重量%NaClを有する氷水(1.5L)に注いだ。混合物を15分間撹拌し、3NのHClを使用してpH4に酸性化した。混合物を、EtOAc(1L)で抽出した。このように得られた有機層を集め、10重量%のNaHCO水溶液(0.5L)で洗浄した。有機層を集め、無水MgSOで乾燥させ、油性残渣に濃縮した。メタノール(0.5L)を残渣に加え、沈殿物を得た。沈殿物を真空濾過によって集め、乾燥させた(101g)。NMRは、生成物が、4−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−6,7−ジメトキシ−3−(プロパ−1−エン−2−イル)ナフタレン−1−オールと一致する構造を有したことを示した。
【0143】
ステップ5
ステップ4からの生成物(180g)(このステップを繰り返してさらなる物質を得た)、ビスマストリフレート(13.12g)およびキシレン(1.8L)の混合物を、冷却器および磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコ(3L)に入れた。反応混合物を18時間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、濾過し、濾液を濃縮し、油性残渣を得た。残渣を、3:1のヘキサン:酢酸エチル混合物を溶離液として使用してシリカプラグによって精製した。所望の物質を含有する画分を集め、濃縮し、固体(105g)を得た。NMRは、生成物が、2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−8,10−ビス(トリフルオロメチル)−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オールと一致する構造を有したことを示した。
【0144】
ステップ6
ステップ5からの2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−8,10−ビス(トリフルオロメチル)−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オールを、8−ブロモ−3,7,7−トリメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オールの代わりに使用したこと以外は、実施例1のステップ6からの手順に従った。オフホワイト(10g)の固体を、生成物として得た。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−10,12−ビス(トリフルオロメチル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0145】
【化11】

【0146】
(実施例4)
ステップ1
削り状マグネシウム(3.9g)およびTHF(50ml)を、2,4,6−トリブロモトルエン(53g)のTHF(800ml)溶液を含有する滴下漏斗を備えた乾燥フラスコ中に入れた。滴下漏斗中の溶液の10分の1を、フラスコに加えた。数分後、反応フラスコ中の溶媒は沸騰し始めた。氷浴を適用した。滴下漏斗中の残りの溶液を、0℃にて30分間の間隔に亘り滴下で添加した。このように得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。温度を0℃に冷却し、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル(28.4g)を加え、1時間撹拌した。3,4−ジメトキシベンゾイルクロリド(35.5g)を、一度に加えた。このように得られた混合物を、室温で18時間撹拌した。水(500mL)を、混合物に加えた。12NのHClを使用して、pHを2に調節した。DCMを、混合物(500mL)に加えた。このように得られた有機層を集め、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。黄色の油状物(65g)を得た。油状物を、次のステップにおいて直接使用した。
【0147】
ステップ2
ステップ1からの生成物(65g)、コハク酸ジメチル(30g)およびトルエン(500ml)を、機械式撹拌機、滴下漏斗および窒素ブランケットを備えた反応フラスコに加えた。混合物を、固体が溶解するまで室温で撹拌した。カリウムt−ペントキシド(25重量%、87.4g)のトルエン溶液を滴下漏斗によって加え、混合物を室温で2時間撹拌した。このように得られた反応混合物を1Lの水に注ぎ、生成物を含有した水層を集めた。トルエン層を、200mlの水で抽出した。合わせた水溶液を、トルエンで洗浄した。pHが5に調節されるまで、HCl(12N)を水溶液に加えた。黄色の油状物が沈殿した。このように得られた混合物を、酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。黄色のガラス状の油状物(35g)を、生成物として得た。これを、次のステップにおいて直接使用した。
【0148】
ステップ3
ステップ2からの黄色の油状物(ストッブ酸生成物の混合物)(35g)、ビスマストリフレート(2.1g)、ジクロロメタン(200ml)および無水酢酸(27g)を、反応フラスコに加え、混合し、室温で1時間撹拌した。混合物を、真空蒸発によって濃縮した。回収した油状物に、メタノール(500mL)およびHCl(12N、2mL)を加え、このように得られた混合物を4時間還流させた。次いで、混合物を油状物に濃縮した。油状物をプラグカラム分離、続いて1/4(容量比)の酢酸エチル/ヘキサンからの再結晶化によって精製した。白色の結晶(5g)を、生成物として得た。NMRは、生成物が、メチル1−(3,5−ジブロモ−4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシ−2−ナフトエートと一致する構造を有したことを示した。
【0149】
ステップ4
ステップ3からの生成物(1.5g)を、滴下漏斗および磁気撹拌棒を備えたオーブン乾燥させたフラスコ中で30mlの無水THFに溶解した。混合物を、室温で撹拌した。臭化メチルマグネシウムのTHF溶液(7mL)(3M)を滴下で添加した。添加の後、混合物を室温で18時間撹拌した。次いで、反応混合物を、100mLの水に注いだ。混合物のpHを、HCl(12N)を使用して5に調節した。酢酸エチル(100mL)を加えた。このように得られた有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、固体を得た。回収した白色の固体を、次のステップにおいて直接使用した。
【0150】
ステップ5
ステップ4からの生成物、トルエン(100mL)およびビスマストリフレート(0.04g)を、磁気撹拌棒を備えた反応フラスコに加えた。このように得られた混合物を、4時間還流させた。反応混合物を、次のステップのためにそれ以上精製することなく使用した。混合物の少量の試料を取り出し、プラグカラムを通過させた。濃縮した後、白色の固体を得た。NMRは、白色の固体が、8,10−ジブロモ−2,3−ジメトキシ−7,7,9−トリメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オールと一致する構造を有したことを示した。
【0151】
ステップ6
トルエン中のステップ5からの生成物に、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)プロパ−2−イン−1−オール(0.8g)、p−トルエンスルホン酸のいくつかの結晶を加えた。室温で1時間撹拌した後、全ての溶媒を蒸発させた。回収した生成物を、CombiFlash、続いてジエチルエーテルからの再結晶化によって精製した。白色の結晶(0.95g)を、生成物として得た。NMRは、生成物が、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−6,7−ジメトキシ−11,13,13−トリメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0152】
【化12】
【0153】
(実施例5)
ステップ1
トリブロモベンゼン(100g)および磁気撹拌棒を有する2Lの反応フラスコを、真空オーブン中で80℃にて4時間乾燥させた。乾燥THF(500mL)を加えた。溶解した後、NaCl(1Kg)および氷(2.45Kg)を使用してNaCl飽和氷浴を適用した。反応フラスコに、内部温度を約0℃に制御する速度で3Mのイソプロピルマグネシウムクロリド(160mL)を滴下で添加した。添加を、約30分で終了した。混合物を、同じ温度で30分撹拌した。温度を−20〜0℃に低下させた後、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル(61g)を5分の間隔に亘りゆっくりと加え、このように得られた溶液を20分間撹拌した。同じフラスコに同じ温度にて、4−トリフルオロメチルベンゾイルクロリド(73g)およびTHF(100mL)の混合物を5分で加えた。混合物を、18時間撹拌した。水(100mL)をゆっくりと加え、反応をクエンチした。3NのHClを使用して、pHを2に調節した。THF層を分液漏斗によって集め、5%NaOH/水およびNaCl/水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。得られた油状物に、メタノール(300ml)を加えた。スパチュラでこすり取った後、白色の結晶が析出した。これらを真空濾過によって集めた。NMRは、得られた白色の結晶(87g)が、3,5−ジブロモ−4’−トリフルオロメチルベンゾフェノンと一致する構造を有することを示した。
【0154】
ステップ2
ステップ1からの生成物(75g)、ジメチルコハク酸エステル(32.2g)およびトルエン(800ml)の混合物を、機械式撹拌機を備えた5Lの三つ口フラスコに入れた。固体カリウムt−ブトキシド(22.6g)を30分に亘りバッチ式に加えた。発熱および多量の沈殿が起こった。2時間後、水(500mL)を加えることによって反応を停止させた。3NのHClを使用して、混合物のpHを2に調節した。室温で10分間撹拌した後、分液漏斗を使用して有機層を集め、NaCl/HClで洗浄し、MgSO4で乾燥させた。濃縮した後、ヘキサンを、生成物に加えた。白色の結晶が析出し、これを真空濾過によって集めた。NMRは、得られた生成物(62グラム)が、(E)−4−(3,5−ジブロモフェニル)−3−(メトキシカルボニル)−4−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)ブタ−3−エン酸と一致する構造を有したことを示した。
【0155】
ステップ3
固体無水塩化ランタン(III)(100g)を非常に微粉に粉砕し、次いで、機械式撹拌機、滴下漏斗および冷却器を備えた5リットルの三つ口フラスコ中で、塩化リチウム(52g)および乾燥THF(1リットル)と混合した。混合物を、溶解するまで数時間還流させた。ステップ2からの生成物(106g)(このステップを繰り返してさらなる物質を生成した)を、混合物に溶解した。次いで、混合物を−15℃に冷却した。3Mの塩化メチルマグネシウムのグリニャール溶液(238mL)を、滴下漏斗に入れた。グリニャール試薬の最初の30%を、混合物中にゆっくりと滴下した。気泡の生成が観察された。温度を−15℃に戻した後、残りのグリニャール試薬を、混合物中に2分で滴下した。30分後、水(1L)を混合物にゆっくりと加えることによって反応を停止させた。酢酸を使用して、pHを4に調節した。混合物は、2つの層の形成と共に明澄となった。水層を排出した。回収した有機層を、NaCl/水で4回洗浄し、次いで濃縮乾燥させた。淡黄色がかった固体を得た。固体をトルエンに再溶解した。シリカゲルプラグカラムを通して濾過を行い、ベースラインの不純物を除去した。短いプラグカラムを、トルエンで洗浄した。透明な溶液を濃縮乾燥させた。白色の固体生成物を得て、次のステップにおいてそれ以上精製することなく使用した。試料をメタノールから再結晶化させ、NMRは、精製した結晶が、(E)−4−((3,5−ジブロモフェニル)(4−(トリフルオロメチル)フェニル)メチレン)−5,5−ジメチルジヒドロフラン−2(3H)−オンと一致する構造を有したことを示した。
【0156】
ステップ4
ステップ3からの生成物、トルエン(500mL)、ビスマストリフレート(20g)および酢酸(0.24g)の混合物を、反応フラスコに加え、還流させながら1時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、無水酢酸(100mL)を加えた。混合物を1時間加熱還流させた。混合物を室温に冷却し、シリカプラグカラムを通して濾過した。全ての生成物が洗浄されるまで、プラグカラムをトルエンで洗浄した。得られた透明な溶液を濃縮乾燥させた。アセトン(50mL)を得られた固体に加え、スラリーを得た。メタノール(250mL)をスラリーに加え、冷却し、結晶化を助けた。結晶を、真空濾過によって集めた。乾燥の後、白色の結晶(58g)を得た。NMRは、生成物が、8,10−ジブロモ−7,7−ジメチル−3−(トリフルオロメチル)−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−イルアセテートと一致する構造を有したことを示した。
【0157】
ステップ5
ステップ4からの生成物(2.42g)を含有するフラスコに、メタノール(20mL)およびテトラヒドロフラン(10mL)を加えた。濃塩酸(1mL)を加え、溶液を4時間加熱還流させた。溶媒を真空下で除去し、4:1(容量比)のヘキサン/酢酸エチル混合物を溶離液として使用して、シリカゲルのプラグを通過させることによって残渣を精製した。所望の物質を含有する画分を集め、濃縮し、クリーム色の固体(1.63g)を得た。クリーム色の固体のNMR分析は、8,10−ジブロモ−7,7−ジメチル−3−(トリフルオロメチル)−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オールと一致した構造を示した。
【0158】
ステップ6
ステップ5からの生成物(36.24g)のクロロホルム溶液(100mL)(このステップを繰り返してさらなる物質を生成した)に、1−(4−ブトキシフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)プロパ−2−イン−1−オール(28.00g)および4−ドデシルベンゼンスルホン酸(2.40g)を加えた。溶液を8時間加熱還流させた。反応混合物を減圧下で濃縮し、油性残渣を得た。残渣を、9:1(容量比)のヘキサン/酢酸エチル混合物を溶離液として使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。所望の物質を含有する画分を集め、油性残渣に濃縮した。残渣を、ジクロロメタンおよびメタノールから再結晶化させた。結晶を真空濾過によって集め、乾燥させ、灰色の固体(20.00g)を得た。灰色の固体のNMR分析は、下記の構造式によって表されるような3−(4−ブトキシフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−6−トリフルオロメチル(trifluromethyl)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を示した。
【0159】
【化13】

【0160】
(実施例6)
1,1−ビス(4−フルオロフェニル)プロパ−2−イン−1−オールを、ステップ6において1−(4−ブトキシフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)プロパ−2−イン−1−オールの代わりに使用したこと以外は、実施例5からの手順に従った。オフホワイトの結晶を、生成物として得た。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス(4−フルオロフェニル)−10,12−ジブロモ−6−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0161】
【化14】
【0162】
(実施例7)
ステップ1
マグネシウム(2g)を、トリブロモベンゼン(27.5g)およびTHF(200ml)の混合物を含有した滴下漏斗を備えた乾燥フラスコ中に入れた。滴下漏斗中の20mlの溶液を、フラスコに加えた。数滴のジブロモエタンをまたフラスコに加え、反応の開始を助けた。数分後、反応フラスコ中の溶媒は沸騰し始めた。滴下漏斗中の溶液の残りを滴下で添加した。氷冷水を時折使用して、反応混合物を冷却した。添加の後、混合物を、室温で2時間撹拌した。0℃で、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル(14g)を加えた。30分間撹拌する。次いで、ベンゾイルクロリド(12.3g)を一度に加えた。混合物を、0℃で4時間撹拌した。水(500ml)を、混合物に加えた。3NのHClを使用して、pHを約5に調節した。酢酸エチルを、混合物(500ml)に加えた。有機層を集め、水で1回洗浄し、炭酸水素ナトリウムで1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮させた。粗生成物を、プラグカラムによって精製した。粘性油状物(8g)を、生成物として得た。NMRは、生成物が、3,5−ジブロモベンゾフェノンと一致する構造を有したことを示した。30グラムの生成物が得られるように、同じ反応をスケールアップした。
【0163】
ステップ2
ステップ1からの生成物(30g)、コハク酸ジメチル(17g)およびトルエン(500ml)を、機械式撹拌機、固体添加漏斗および窒素ブランケットを備えた反応フラスコに加えた。固体が溶解するまで、混合物を室温で撹拌した。固体カリウムt−ブトキシド(11g)を固体添加漏斗によって加え、混合物を室温で2時間撹拌した。このように得られた反応混合物を1Lの水に注ぎ、生成物を含有した水層を集めた。トルエン層を、200mlの水で抽出した。合わせた水溶液を、トルエンで洗浄した。HCl(3N)を水溶液に加え、pHを5に調節した。このように得られた混合物を、酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。淡黄色の固体を、生成物として得た。これを、次のステップにおいて直接使用した。
【0164】
ステップ3
ステップ2からのストッブ酸生成物および無水酢酸(200ml)の混合物を混合し、冷却器を備えた反応フラスコ中で還流させた。2時間後、無水酢酸を、真空蒸発によって除去し、得られた油状物を、次のステップにおいて直接使用した。
【0165】
ステップ4
前のステップから得た油状物を含有する反応フラスコに、メタノール(200mL)およびHCl(12N、2ml)を加えた。混合物を2時間還流させた。メタノールを、真空蒸発によって除去した。回収した油状物を酢酸エチル(ethyl acetae)に溶解し、炭酸水素ナトリウム飽和水で洗浄し、硫酸マグネシウム(magnesium sulfated)で乾燥させ、白色の結晶が熱い溶液から析出し始めるまで濃縮した。混合物を、室温に冷却した。白色の結晶を集め、乾燥させた(8.8g)。NMRは、生成物が、この実施例についての望ましくない位置異性体である2,4−ジブロモ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5−オールと一致する構造を有したことを示した。所望の異性体はまだ母液中に存在し、これを濃縮し、真空中で乾燥させた。茶色がかった油状物(19g)を得て、次のステップにおいて直接使用した。
【0166】
ステップ5
ステップ4からの粗生成物を出発物質として使用したこと以外は、実施例1のステップ4〜6からの手順に従った。オフホワイトの結晶を、生成物として得た。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0167】
【化15】
【0168】
(実施例8)
1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)プロパ−2−イン−1−オールを、最後のステップにおいて1,1−ビス(4−メトキシフェニル)プロパ−2−イン−1−オールの代わりに使用したこと以外は、実施例7のステップ1〜5からの手順に従った。オフホワイトの結晶を、生成物として得た。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0169】
【化16】

【0170】
(実施例9)
ステップ1
臭化フェニルマグネシウム/ジエチルエーテル(3M、100mL)溶液を、添加漏斗(additional funnel)および磁気撹拌機を備えた2Lの二口反応フラスコに加えた。フラスコを氷浴中に置いた。テトラメチルエチレンジアミン(58ml)/THF(100ml)を、フラスコにゆっくり加えた。混合物を、1時間撹拌した。3,4,5−トリメトキシベンゾイルクロリド(69g)/THF(200ml)を、フラスコに30分に亘り滴下した。添加の1時間後に、冷却槽を除去した。このように得られた混合物を、室温で一晩撹拌した。このように得られた黄色の濁った混合物を、氷冷水(1L)に注いだ。濃HCl(37%、200mL)を、混合物にゆっくりと加えた。次いで、このように得られた混合物を、酢酸エチルで2回抽出した(400mL+200mL)。上部層を、水およびブラインで洗浄した。回収した有機溶液を合わせ、NaSOで乾燥させた。酢酸エチルの一部を取り除き、ヘキサンを濃縮した溶液に加えた。3,4,5−トリメトキシベンゾフェノンを含有する固体生成物が沈殿し、濾過した(74g)。
【0171】
ステップ2
ステップ1からの生成物(74g)、固体カリウムt−ブトキシド(69g)およびトルエン(900mL)を、窒素ブランケット下で機械式撹拌機を備えた2Lの三つ口反応フラスコに加えた。トルエン(100mL)中のコハク酸ジメチル(70g)を、添加漏斗によってフラスコに加え、このように得られた混合物を、室温で20時間撹拌した。反応混合物を、600mLの水に注いだ。生成物を含有した底部水層を集めた。HCl(12N、50mL)を、水溶液に加えた。黄色の油状物が沈殿した。このように得られた混合物を、酢酸エチル(800mL)で抽出した。上部有機層を、水およびブラインで洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。黄色のガラス状の油状物(112g)を、生成物として得た。質量分析は、368の所望の分子量を示した。生成物を、それ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0172】
ステップ3
黄色いガラス状の油状物(112g)、ステップ2からのストッブ酸生成物の混合物を、冷却器を備えた1Lの一口反応フラスコ中で無水酢酸(150mL)に溶解した。混合物を、15時間加熱還流させた。無水酢酸を真空蒸発によって除去し、152グラムの油状物を、生成物として得た。これをそれ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0173】
ステップ4
ステップ3から得た150グラムの油状物を含有する1Lの反応フラスコに、メタノール(500mL)およびHCl(12N、5mL)を加えた。混合物を、5時間加熱還流させた。メタノールを、真空蒸発によって除去した。残渣油状物をクロマトグラフィーによって精製し、107グラムの油性生成物を得た。70グラムの固体生成物が、油性混合物から沈殿した。質量分析は、368の所望の分子量を示した。固体生成物を、真空オーブン中で乾燥させた。
【0174】
ステップ5
ステップ4からの固体生成物(35g)を、添加漏斗および磁気撹拌棒を備えたオーブン乾燥させたフラスコ中で500mLの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。フラスコを氷浴中に置き、塩化メチルマグネシウムのTHF溶液(180mL)(3M)を滴下で添加した。添加の後、混合物を2時間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、400mLの氷冷水に注いだ。混合物をHCl(12N、70mL)によって酸性化した。このように得られた混合物を、酢酸エチルで2回抽出した(400+200mL)。上部有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。粗生成物(35gの油状物)を、それ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0175】
ステップ6
ステップ5からの生成物(35g)およびキシレン(80mL)を、ディーンスタークトラップ、水冷却器および磁気撹拌棒を備えた500mLの反応フラスコに加えた。ビスマス(III)トリフルオロメタンスルホネート(0.1g)を加え、このように得られた混合物を、4時間加熱還流させた。反応混合物を濃縮し、シリカゲルプラグを通して残渣を濾過した。生成物(30g)を、オフイエローの油状物として得た。生成物を、それ以上精製することなく次のステップにおいて使用した。
【0176】
ステップ7
ステップ6からの油性ナフトール(5g)およびドデシルベンゼンスルホン酸(1滴)を、250mLの反応フラスコ中でCHCl(50mL)に溶解した。フラスコに、1−フェニル−1’−(4−モルホリノフェニル)プロパ−2−イン−1−オール(4.5g)を加えた。混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を、クロマトグラフィーによって精製した。2種の固体生成物が単離した。NMR分析は、生成物の1つが、下記の構造式によって表されるような3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−10,11,12−トリメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0177】
【化17】
【0178】
(実施例10)
3,5−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミドを、ステップ1において臭化フェニルマグネシウムの代わりに使用し、1−(4−メトキシフェニル)−1’−(4−モルホリノフェニル)プロパ−2−イン−1−オールを、ステップ7において1−フェニル−1’−(4−モルホリノフェニル)プロパ−2−イン−1−オールの代わりに使用したこと以外は、実施例9からの手順に従った。オフホワイトの結晶を、生成物として得た。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−5,7−ジフルオロ−10,11,12−トリメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0179】
【化18】

【0180】
(実施例11)
ステップ1
3−フルオロメチルベンゾイルクロリド(51g)およびベラトロール(38g)を、磁気撹拌機を備えた2Lの三つ口反応フラスコ中でCHCl(500mL)に溶解した。フラスコを氷浴中に置いた。無水AlCl(41g)を、固体添加漏斗によってフラスコにゆっくりと加えた。反応から生じた塩化水素ガスは、NaOH水溶液によって吸収された。添加が完了すると、氷浴を除去した。このように得られた混合物を、室温で一晩撹拌した。黄色の濁った混合物を、氷冷水(500mL)に注いだ。濃HCl(37%、100mL)を、混合物にゆっくりと加えた。次いで、このように得られた混合物を、CHCl(600mL)で抽出した。底部層を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させた。溶媒を真空下で取り除いた。3−トリフルオロメチル−3’,4’−ジメトキシベンゾフェノンを含有する油性生成物(90g)を、次のステップにおいてそれ以上精製することなく使用した。
【0181】
ステップ2
ステップ1からの生成物(90g)およびコハク酸ジメチル(34mL)を、窒素ブランケット下で機械式撹拌機を備えた1Lの三つ口反応フラスコ中で無水THF(270mL)に溶解した。固体カリウムt−ブトキシド(30g)を、添加漏斗によってフラスコにゆっくりと加えた。このように得られた混合物を、室温で20時間撹拌した。反応混合物を、600mLの水に注いだ。生成物を含有した底部水層を集めた。HCl(12N、50mL)を、水溶液に加えた。黄色の油状物が沈殿した。このように得られた混合物を、酢酸エチルで2回抽出した(250mL+200mL)。上部有機層を合わせ、水およびブラインで洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。黄色のガラス状の油状物(78g)を、生成物として得た。生成物を、それ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0182】
ステップ3
黄色いガラス状の油状物(78g)、ステップ2からのストッブ酸生成物の混合物を、冷却器を備えた1Lの一口反応フラスコ中で無水酢酸(200mL)に溶解した。混合物を4時間加熱還流させた。無水酢酸を真空蒸発によって除去し、油性生成物を生成物として得た。これをそれ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0183】
ステップ4
ステップ3から得た生成物を含有する500mLの反応フラスコに、メタノール(200mL)およびHCl(12N、6mL)を加えた。混合物を、4時間加熱還流させた。メタノールを、真空蒸発によって除去した。残渣油状物をクロマトグラフィーによって精製し、64グラムの油性生成物を得た。これをそれ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0184】
ステップ5
添加漏斗および磁気撹拌棒を備えた1Lのオーブン乾燥させたフラスコに、塩化メチルマグネシウムのTHF溶液(135mL)(3M)を加えた。フラスコを氷浴中に置いた。ステップ4からの油性生成物(30g)を、乾燥フラスコ中で200mLの無水THFに溶解した。溶液を、第1のフラスコに滴下で添加した。混合物を、室温で一晩撹拌した。反応混合物を、400mLの氷冷水に注いだ。混合物をHCl(12N、80mL)によって酸性化した。このように得られた混合物を、酢酸エチルで2回抽出した(300mL+100mL)。上部有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、真空中で乾燥させた。生成物(35gの油状物)を、それ以上精製することなく次のステップで使用した。
【0185】
ステップ6
ステップ5からの生成物(35g)およびキシレン(120mL)を、ディーンスタークトラップ、水冷却器および磁気撹拌棒を備えた500mLの反応フラスコに加えた。ビスマストリフルオロメチルスルホナメート(bismuth trifluoromethyl sulfonamate)(0.1g)を加え、このように得られた混合物を、3時間加熱還流させた。反応混合物を濃縮し、シリカゲルプラグを通して残渣を濾過した。生成物(28g)を、オフイエローの油状物として得た。生成物を、次のステップにおいてそれ以上精製することなく使用した。
【0186】
ステップ7
ステップ6からの油性ナフトール(4g)およびピリジニウムp−トルエンスルホネート(0.5g)を、250mLの反応フラスコ中でCHCl(30mL)に溶解した。フラスコに、1−フェニル−1’−(4−モルホリノフェニル)プロパ−2−イン−1−オール(3g)を加えた。混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を、クロマトグラフィーによって精製した。固体生成物(2g)を、主要な画分から再結晶化させた。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−12−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0187】
【化19】
【0188】
(実施例12)
3,5−ジメトキシベンゾイルクロリドを、ステップ1において3−フルオロメチルベンゾイルクロリドの代わりに使用し、1,1’−ビス(4−メトキシフェニル)プロパ−2−イン−1−オールを、ステップ7において1−フェニル−1’−(4−モルホリノフェニル)プロパ−2−イン−1−オールの代わりに使用したこと以外は、実施例11からの手順に従った。オフホワイトの結晶を、生成物として得た。NMR分析は、生成物が、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−6,7,10,12−テトラメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有したことを示した。
【0189】
【化20】

【0190】
比較例1(CE−1)
CE−1を、米国特許第5,645,767号の開示に従って調製したが、この開示は参照により本明細書中に組み込まれており、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス−(4−メトキシフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであると報告する。
【0191】
【化21】
【0192】
比較例2(CE−2)
CE−2を、米国特許第6,296,785号の開示に従って調製したが、この開示は参照により本明細書中に組み込まれており、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであると報告する。
【0193】
【化22】

【0194】
比較例3(CE−3)
CE−3を、米国特許出願公開第2008/0103301号の実施例1の手順に従って調製したが、この開示は参照により本明細書中に組み込まれており、下記の構造式によって表されるような3,3−ビス−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであると報告する。
【0195】
【化23】
【0196】
比較例4(CE−4)
CE−4を、米国特許第5,645,767号の開示に従って調製したが、この開示は参照により本明細書中に組み込まれており、下記の構造式によって表されるような3−(4−ブトキシフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであると報告する。
【0197】
【化24】

【0198】
比較例5(CE−5)
CE−5を、米国特許第5,645,767号の開示に従って調製したが、この開示は参照により本明細書中に組み込まれており、下記の構造式によって表されるような3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−10,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであると報告する。
【0199】
【化25】
【0200】
比較例6(CE−6)
CE−6を、米国特許第5,645,767号の開示に従って調製したが、この開示は参照により本明細書中に組み込まれており、下記の構造式によって表されるような3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランであると報告する。
【0201】
【化26】

【0202】
パート2−フォトクロミック特性試験
パート2A−試験用四角片の調製
試験を、下記の様式で、実施例1〜12および比較例1〜6に記載した化合物で行った。1.5×10−3重量モル濃度の溶液をもたらすように計算した量の化合物を、4部のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPA 2EO DMA)、1部のポリ(エチレングリコール)600ジメタクリレート、および0.033重量パーセントの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)の50グラムのモノマーブレンドが入っているフラスコに加えた。各化合物を、必要に応じて撹拌し、穏やかに加熱することによって、モノマーブレンドに溶解させた。明澄な溶液が得られた後、試料を、真空オーブン中で25torrにて5〜10分間脱気した。シリンジを使用して、試料を、2.2mm+/−0.3mm×6インチ(15.24cm)×6インチ(15.24cm)の内寸法を有するフラットシートモールド中に注いだ。モールドを密封し、水平空気流のプログラム可能なオーブン中に入れ、5時間の間隔に亘り40℃から95℃へと上昇させ、温度を95℃で3時間保ち、2時間の間隔に亘り60℃に低下させ、次いで60℃で16時間保った。硬化の後、モールドを開け、ポリマーシートを、ダイアモンド刃のこぎりを使用して2インチ(5.1cm)の試験用四角片に切断した。
【0203】
パート2B−応答試験
光学台上での応答試験の前に、パート2Aからのフォトクロミック試験用四角片を、365nmの紫外線光にその光源から約14cm離れた距離で約30分間曝露し、フォトクロミック材料を基底状態の形態から活性化状態の形態へと変換させ、次いで75℃のオーブン中に約20分間置いて、フォトクロミック材料が基底状態形態に復帰することを可能とした。次いで、試験用四角片を室温に冷却し、室内蛍光灯に少なくとも2時間曝露し、次いで少なくとも2時間カバーしたままに(すなわち、暗い環境に)して、その後73°F(23℃)に維持しながら光学台上で試験した。Schott 3mm KG−2バンドパスフィルター、ニュートラルデンシティフィルター(複数可)およびNewportモデル#67005 300ワットキセノンアークランプ(モデル#69911電源を有し、Newportモデル689456 Digital Exposure/Timerと併せる)を装着した光学台を使用して、試料の活性化のために利用した照射ビームの強度を制御した。モデル#VMM−D3コントローラーを有するUniblitzモデル#CS25S3ZM0高速コンピュータ制御シャッター、この活性化ランプビームのビーム視準のための溶融石英コンデンサレンズ、および石英ガラス水浴試料チャンバ。
【0204】
応答測定値をモニターするための注文製の広帯域光源を、活性化源とモニタービームとの間の角度が30度となるように試料に向け、試料はこのモニタービームに対して垂直に配置した。このブロードビーム光源は、末端が分かれた二股光ファイバケーブルを有する100ワットのタングステンハロゲンランプ(Lambda UP60−14定電圧電源により制御)からの別々にフィルタリングした光を集め、合わせることによって得て、短波長光強度を増強させる。試料を通過させた後、このモニター光を2インチ積分球中で再び集中させ、光ファイバケーブルによってOcean Optics S2000分光光度計に供給した。Ocean Optics SpectraSuiteおよびPPG専売権付ソフトウエアを使用して、応答を測定し、光学台の操作を制御した。
【0205】
λmax−visは、試験用四角片中のフォトクロミック化合物の活性化状態形態の最大吸収が起こる可視スペクトルにおける波長である。λmax−vis波長は、Varian Cary4000UV−可視分光光度計でフォトクロミック試験用四角片を試験することによって決定した。
【0206】
各試験試料についての飽和での光学密度における変化は、キセノンランプからシャッターを開け、試験チップを3W/m2UVA光線に30分間曝露させた後の透過度を測定することによって決定した。飽和での光学密度における変化は、式:ΔOD=log(%Tb/%Ta)(%Tbは、脱色した状態における透過度パーセントであり、%Taは、活性化状態における透過度パーセントである(両方とも、λmax−visにおいてであり、対数は10を底とする))を使用して計算した。退色半減期(「T1/2」)または脱色速度は、活性化光の源を取り除いた後、試験用四角片中のフォトクロミック材料の活性化状態の形態の吸光度が、室温(23℃)にて飽和値でΔODの2分の1に達する時間間隔(秒)である。感応性(ΔOD/分)は、試料がどれだけ速く色が濃くなるかの尺度であり、等式ΔODsen=ΔOD5min×12から計算する。
【0207】
実施例3、4、11および12、ならびに比較例2、3および6の化合物は、明確な色領域における可視スペクトル(λ最大可視部分)において二重のピーク吸収を示した。それぞれのλ最大可視部分について、相当する光学密度(ΔOD/分、および飽和でのΔOD)ならびに退色半減期を、ピーク吸収の2つの帯(AおよびB)について表1において作表する。
【0208】
結果を、表Iにおいて一覧表示する。比較例1は、実施例1、2および7と構造が同様であり、実施例1、2および7と比較すべきである。比較例2および3は、実施例3および4と構造が同様であり、実施例3および4と比較すべきである。比較例4は、実施例5と構造が同様であり、実施例5と比較すべきである。比較例5は、実施例9と構造が同様であり、実施例9と比較すべきである。比較例6は、実施例11と構造が同様であり、実施例11と比較すべきである。実施例6および8は、BおよびB’のような特有の置換基を有する。実施例10および12は、Rのような特有の置換基を有する。
【0209】
【表1】
【0210】
本記載は、本発明の明確な理解に関連する本発明の態様を例示していることを理解すべきである。当業者には明らかであり、したがって、本発明のよりよい理解を促進しないであろう、本発明の特定の態様は、本記載を単純化するために提示してこなかった。本発明を特定の実施形態に関して記載してきたが、本発明は開示した特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨および範囲内である変形形態を包含することを意図する。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される:
(項1)
式IIの化合物
【化27】

[式中、
は、ハロゲン、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、カルボキシ、アミノ、任意選択で置換されたアミノ、シアノ、ニトロ、スルホニル、スルホナト、アルキルカルボニル、およびアルコキシカルボニルから選択され、
は、出現する毎に、ホルミル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ボロン酸、ボロン酸エステル、シクロアルコキシカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキルオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、ハロゲン、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、および任意選択で置換されたアミノから選択されるキラルまたはアキラル基から独立に選択され、
mは、0〜3の整数であり、
nは、0〜4の整数であり、
およびRは、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、ハロゲン、任意選択で置換されたアミノ、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRは、任意の介在原子と一緒になって、オキソ、任意選択で置換されたシクロアルキル、および任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成してもよく、
BおよびB’は、水素、ハロゲン、ならびにメタロセニル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはBおよびB’は、任意の介在原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成する]。
(項2)
が、任意選択で置換されたC〜Cアルカニル、任意選択で置換されたC〜Cアルケニル、任意選択で置換されたC〜Cアルキニル、任意選択で置換されたフェニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cペルハロアルコキシ、C〜Cペルハロアルキル、クロロ、フルオロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルカルボニル、およびC〜Cアルコキシカルボニルから選択され、
が、出現する毎に、ホルミル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、任意選択で置換されたアルキル、ボロン酸エステル、ハロゲン、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルおよび任意選択で置換されたアミノから独立に選択され、
mおよびnが、それぞれ独立に、0〜2から選択される整数であり、
およびRが、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、ハロゲン、任意選択で置換されたアミノ、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラルおよびアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRが、任意の介在原子と一緒になって、オキソ、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成してもよく、
BおよびB’が、水素、ハロゲン;任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択されるキラルまたはアキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはBおよびB’が、任意の介在原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルおよび任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルから選択される基を形成する、上記項1に記載の化合物。
(項3)
が、任意選択で置換されたC〜Cアルカニル、任意選択で置換されたC〜Cアルケニル、任意選択で置換されたC〜Cアルキニル、任意選択で置換されたフェニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cペルハロアルコキシ、C〜Cペルハロアルキル、クロロ、フルオロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルカルボニル、およびC〜Cアルコキシカルボニルから選択され、
が、出現する毎に、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、任意選択で置換されたアルキル、ボロン酸エステル、ハロゲン、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアルコキシ、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルおよび任意選択で置換されたアミノから独立に選択され、
mおよびnが、それぞれ独立に、0〜2から選択される整数であり、
およびRが、水素、ヒドロキシ、ならびに任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたシクロアルキル、ハロゲン、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、任意選択で置換されたアルコキシ、およびアミノカルボニルから選択されるキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはRおよびRが、任意の介在原子と一緒になって、オキソおよび任意選択で置換されたシクロアルキルから選択される基を形成してもよく、BおよびB’が、水素;任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、および任意選択で置換されたシクロアルキルから選択されるキラル基からそれぞれ独立に選択され、あるいはBおよびB’が、任意の介在原子と一緒になって、任意選択で置換されたシクロアルキルから選択される基を形成する、上記項2に記載の化合物。
(項4)
が、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、−OCF、−OCFCF、CF、CFCF、クロロ、フルオロ、シアノ、ニトロ、アセチル、プロピオニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル;フェニル;アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ペルハロアルコキシ、アルキルカルボニル、カルボキシ、およびアルコキシカルボニルからそれぞれ独立に選択される1つまたは複数の基で置換されているフェニルから選択され、
が、出現する毎に、メチル、エチル、ブロモ、クロロ、フルオロ、メトキシ、エトキシおよびCFから独立に選択され、
およびRが、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからそれぞれ独立に選択され、
BおよびB’が、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アルキルカルボニル、カルボキシ、およびアルコキシカルボニルから独立に選択される1つまたは複数の基で置換されているフェニルからそれぞれ独立に選択される、上記項3に記載の化合物。
(項5)
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−12−ブロモ−6,13,13−トリメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジクロロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−10,12−ビス(トリフルオロメチル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−6,7−ジメトキシ−11,13,13−トリメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−(4−ブトキシフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−6−トリフルロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−フルオロフェニル)−10,12−ジブロモ−6−トリフルロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)−10,12−ジブロモ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−10,11,12−トリメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−5,7−ジフルオロ−10,11,12−トリメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−12−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;および/または
3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−6,7,10,12−テトラメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン
から選択される、上記項1に記載の化合物。
(項6)
フォトクロミック化合物である、上記項1に記載の化合物。
(項7)
上記項6に記載の化合物および任意選択で少なくとも1種の他のフォトクロミック化合物を含むフォトクロミック組成物であって、
(a)単一のフォトクロミック化合物;
(b)フォトクロミック化合物の混合物;
(c)少なくとも1種のフォトクロミック化合物を含む材料;
(d)少なくとも1種のフォトクロミック化合物が化学結合している材料;
(e)前記少なくとも1種のフォトクロミック化合物と外部材料との接触を実質的に防止するための、コーティングをさらに含む材料(c)もしくは(d);
(f)フォトクロミックポリマー;または
(g)これらの混合物
を含む、フォトクロミック組成物。
(項8)
有機材料の少なくとも一部に組み込まれている少なくとも1種の上記項6に記載の化合物を含むフォトクロミック組成物であって、前記有機材料が、ポリマー材料、オリゴマー材料、モノマー材料、またはこれらの混合物もしくは組合せである、フォトクロミック組成物。
(項9)
前記ポリマー材料が、液晶材料、自己組織化材料、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(アリルカーボネート)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリアルケン、ポリアルキレン−酢酸ビニル、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、これらのコポリマー、および/またはこれらの混合物を含む、上記項8に記載のフォトクロミック組成物。
(項10)
染料、配向促進剤、抗酸化剤、反応速度増強添加物、光開始剤、熱開始剤、重合阻害剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカル捕捉剤、ゲル化剤および接着促進剤から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含む、上記項8に記載のフォトクロミック組成物。
(項11)
液晶材料、自己組織化材料およびフィルム形成材料を含むコーティング組成物を含む、上記項8に記載のフォトクロミック組成物。
(項12)
基材と、基材の少なくとも一部に接続されている上記項6に記載のフォトクロミック化合物とを含む、フォトクロミック物品。
(項13)
光学素子を含む上記項12に記載のフォトクロミック物品であって、前記光学素子が、眼部素子、ディスプレイ素子、窓、鏡、包装材料およびアクティブ液晶セル素子またはパッシブ液晶セル素子の少なくとも1つである、フォトクロミック物品。
(項14)
前記眼部素子が、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、またはバイザーを含む、上記項13に記載のフォトクロミック物品。
(項15)
前記基材が、ポリマー材料を含み、フォトクロミック材料が、前記ポリマー材料の少なくとも一部の中に組み込まれている、上記項12に記載のフォトクロミック物品。
(項16)
前記フォトクロミック材料が、前記ポリマー材料の少なくとも一部とブレンドされ、前記ポリマー材料の少なくとも一部に結合されており、かつ/または前記ポリマー材料の少なくとも一部に吸い込まれている、上記項15に記載のフォトクロミック物品。
(項17)
前記基材の少なくとも一部に接続されているコーティングまたはフィルムを含み、前記コーティングまたはフィルムが、フォトクロミック材料を含む、上記項12に記載のフォトクロミック物品。
(項18)
前記基材が、有機材料、無機材料、またはこれらの組合せから形成される、上記項17に記載のフォトクロミック物品。
(項19)
フォトクロミックコーティング、反射防止コーティング、直線偏光コーティング、遷移コーティング、プライマーコーティング、接着コーティング、反射コーティング、くもり止めコーティング、酸素バリヤーコーティング、紫外線光吸収コーティング、および保護コーティングから選択される少なくとも1つのさらなる少なくとも部分的なコーティングをさらに含む、上記項12に記載のフォトクロミック物品。
(項20)
基材;
1種の配向材料の少なくとも部分的なコーティング;
液晶材料の少なくとも1つのさらなる少なくとも部分的なコーティング;および
少なくとも1種の上記項6に記載の化合物を含む、フォトクロミック物品。
(項21)
二色性染料、非二色性染料、配向促進剤、抗酸化剤、反応速度増強添加物、光開始剤、熱開始剤、重合阻害剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカル捕捉剤、ゲル化剤および接着促進剤から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含む、上記項20に記載のフォトクロミック物品。
(項22)
前記基材が、ガラス、石英、およびポリマー有機材料から選択される、上記項20に記載のフォトクロミック物品。
(項23)
前記少なくとも1種の配向材料が、磁界、電界、直線偏光赤外線、直線偏光紫外線、直線偏光可視光線および剪断力の少なくとも1つへの曝露によって方向付け可能なポリマー網目を含む、上記項20に記載のフォトクロミック物品。
(項24)
前記液晶材料が、液晶ポリマーである、上記項20に記載のフォトクロミック物品。
(項25)
少なくとも1つのプライマーコーティング、遷移コーティング、保護コーティングまたはこれらの組合せをさらに含む、上記項20に記載のフォトクロミック物品。
(項26)
前記遷移コーティングが、アクリレートポリマーを含む、上記項25に記載のフォトクロミック物品。
(項27)
前記保護コーティングが、少なくとも1種のシロキサン誘導体を含む、上記項25に記載のフォトクロミック物品。
(項28)
前記少なくとも1つのプライマーコーティングが、ポリウレタンを含む、上記項27に記載のフォトクロミック物品。