【実施例】
【0036】
「第1のブロック共重合体の合成」
「合成例1」
一方の末端にブチル基、他の末端に−C
3H
6OC
2H
4OH基を有する、数平均分子量5,000のポリジメチルシロキサン(JNC株式会社製、商品名:サイラプレーンFM0421、以下、PDMSという。)の水酸基1当量に対して、TMCを300当量(モル比)となるようにジクロロメタンに溶解させて、10wt/v%の溶液を得た。PDMSに対して、塩基性触媒である1,8−ジアザビシクロウンデセン(DBU)を2当量(モル比)となるように加え、窒素雰囲気下にて室温で72時間反応させた後、安息香酸を添加して、反応を停止した。反応停止後に、メタノール、2−プロパノール、ヘキサン(10:1:10(体積比))からなる混合溶媒に再沈殿させて回収し、50℃で減圧乾燥させて、第1のブロック共重合体を得た。
【0037】
「第2のブロック共重合体の合成」
「合成例2」
片末端がメトキシ基で保護されている数平均分子量5000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名:Poly(ethylene glycol) methyl ether、以下、mPEGという。)の末端水酸基1当量に対して、TMCを400当量(モル比)となるようにジクロロメタンに溶解させて、10wt/v%の溶液を得た。mPEG1当量に対して、塩基性触媒であるDBUを3当量(モル比)となるように加え、窒素雰囲気下にて室温で72時間反応させた後、安息香酸を添加して、反応を停止した。反応停止後に、ヘキサンと2−プロパノール(7:3(体積比))からなる混合溶媒に再沈殿させて回収し、50℃で減圧乾燥させて、第2のブロック共重合体を得た。
【0038】
「ブロック共重合体の分析」
1.
1H−NMR測定
得られたブロック共重合体の重合度は
1H−NMRにより解析した。第1のブロック共重合体1の
1H−NMRのスペクトルを
図4に示す。
ポリジメチルシロキサンに帰属されるシグナル(0.3ppm付近)とポリトリメチレンカーボネートに帰属されるシグナル(2.1ppm、4.2ppm付近)との積分強度比から第1のブロック共重合体のトリメチレンカーボネートの重合度を算出した。
同様にして、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルに帰属されるシグナル(3.6ppm付近)と、ポリトリメチレンカーボネートに帰属されるシグナルとの積分強度比から第2のブロック共重合体のトリメチレンカーボネートの重合度を算出した。
【0039】
2.GPC測定
ブロック共重合体を、テトラヒドロフランに溶解させて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行った。GPCは、高速液体クロマトグラフ(GPCカラム KF−804(昭和電工株式会社製)、溶離液:テトラヒドロフラン)を用いて行い、そのクロマトグラフィーの結果から、ポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算として求めた。
ブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
[実施例1]
第1のブロック共重合体50mgをアセトン15mlに溶解した。この溶液中に、粉体として未処理の酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:CR−50、平均粒子径0.25μm)1gを混合・撹拌した後、溶媒をエバポレーターで留去した。溶媒を留去して得られた固形物を乳鉢で粉砕して表面処理粉体を得た。酸化チタンに対する第1のブロック共重合体の被覆量は5wt%である。
【0042】
[実施例2]
第1のブロック共重合体25mgと第2のブロック共重合体25mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:1とした以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0043】
[実施例3]
第1のブロック共重合体12.5mgと第2のブロック共重合体37.5mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:3とした以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0044】
[実施例4]
第1のブロック共重合体8.3mgと第2のブロック共重合体41.7mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:5とした以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0045】
[実施例5]
第1のブロック共重合体100mgを用い、酸化チタンに対する第1のブロック共重合体の被覆量を10wt%とした以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0046】
[実施例6]
第1のブロック共重合体50mgと第2のブロック共重合体50mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:1とした以外は実施例5と同様にして表面処理粉体を得た。
【0047】
[実施例7]
第1のブロック共重合体25mgと第2のブロック共重合体75mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:3とした以外は実施例5と同様にして表面処理粉体を得た。
【0048】
[実施例8]
第1のブロック共重合体16.7mgと第2のブロック共重合体83.3mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:5とした以外は実施例5と同様にして表面処理粉体を得た。
【0049】
[比較例1]
第2のブロック共重合体50mgを用いた以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0050】
[比較例2]
第2のブロック共重合体100mgを用いた以外は比較例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0051】
[参考例]
市販の撥水化処理された粉体である、ジメチコン被覆処理酸化チタン(三好化成株式会社製、商品名:SA−チタンCR−50、ジメチコン被覆量2wt%)を表面処理粉体とした。
【0052】
<重量による水へのなじみやすさ評価>
20mLの水を入れた50mL容の遠沈管に、実施例1の表面処理粉体を50mg入れ、3秒、または30秒ボルテックスミキサーで撹拌(500/min)した。撹拌後も水面に浮かんだままの表面処理粉体を除去した後、2000rpm、2分間遠心分離して表面処理粉体を沈殿させた。上澄みをデカンテーションで廃棄し、回収した沈殿を室温下で約3時間真空乾燥した。
投入した表面処理粉体量(50mg)に対する、沈殿として回収した表面処理粉体量の割合から、水へのなじみやすさを評価した。割合が高いほど水になじみやすいことを示す。
また、実施例2〜4、比較例1、参考例の表面処理粉体、未処理の酸化チタン(商品名:CR−50)を用いて同様に水へのなじみやすさを評価した。沈殿として回収された割合を
図5に示す。
【0053】
本発明の表面処理粉体である実施例1〜3は、3秒撹拌した時に80%以上、30秒撹拌した時に85%以上回収できており、水になじみやすいことが確認できた。また、未処理の酸化チタンと同等の親水性を有していることが確認できた。
比較例1は、第1のブロック共重合体よりも親水性である第2のブロック共重合体のみで表面処理されているため、3秒撹拌した時に97%、30秒撹拌した時に99%回収され、非常に水になじみやすかった。
参考例は撥水化処理されているため水になじみにくく、3秒撹拌したときには16%しか回収できなかった。なお、30秒撹拌した時には48%の粉体が回収できているが、これは30秒撹拌した時に水となじまない粉体が壁に付着してしまい除去しきれなかったためであると推測される。
【0054】
<透過率による水へのなじみやすさ評価>
20mLの水を入れた50mL容の遠沈管に、実施例1の表面処理粉体を50mg入れ、3秒、または30秒ボルテックスミキサーで撹拌(500/min)した。撹拌後、2000rpmで1分間遠心分離し、表面に浮いた粉体と、沈降した粉体とを避けて、中間層をスポイトで吸引して、分散液を得た。
分散液の660nmにおける透過率を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、装置名:UV−2450)で測定し、分散状態の評価を行った。透過率が低いほど表面処理粉体が水中に分散していること、すなわち、水になじみやすいことを示す。
また、実施例2〜8、比較例1、2、参考例の表面処理粉体、未処理の酸化チタン(商品名:CR−50)を用いて同様に水へのなじみやすさを評価した。分散液の透過率を
図6、7に示す。
【0055】
第1のブロック共重合体のみを用いた実施例1、5は、水への分散性が低く、表面処理粉体の多くが遠心分離時に沈降したため分散液の透明性が高く、透過率はそれぞれ3秒撹拌した時に87.4%、89.9%、30秒撹拌した時に93.8%、94.3%であった。
実施例2、6、7は、3秒撹拌後は水への分散性が悪く、表面処理粉体の多くが遠心分離により沈降して取り除かれたため透過率はそれぞれ70.7%、77.0%、61.5%と高かった。しかし、30秒撹拌後は水への分散性が向上して表面処理粉体が沈降しにくくなったため、透過率はそれぞれ40.4%、1.9%、0.1%に低下した。このことから、粉体表面を被覆するブロック共重合体が、水との接触により表面偏析して徐々に親水性となったことが確認できた。
実施例3、4、8、及び比較例1、2は水になじみやすく分散性に優れているため、透過率は3秒撹拌した時に5.2%以下、30秒撹拌した時に0.2%以下と低く、未処理酸化チタンの3秒撹拌した時の1.1%、30秒撹拌した時の0%と同等であった。
市販の撥水化処理粉体を用いた参考例は、実施例1、5と同じく分散液の透明性が高く3秒撹拌、30秒撹拌の透過率がそれぞれ98.7%、99.8%であった。しかし、表面処理粉体の挙動は異なり、実施例1、5では遠心分離後の表面処理粉体は沈降していたのに対し、参考例では遠心分離後の表面処理粉体は液面に浮かんだままであった。
【0056】
<表面処理粉体の耐水性評価>
実施例1の表面処理粉体50mgを、黒色の人工皮革に4.2mg/cm
2となるように塗布し、色差を測定した。この人工皮革に、霧吹きで一定量となるように水を1回噴射し一定の力でティッシュを軽く押し付け、水を取り除いた後、色差を測定した。
明度(L値)の変化により、耐水性を評価した。明度変化が小さいほど、表面処理粉体が取り除かれていないため、耐水性が高く、化粧もちに優れていることを示す。色差測定は、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、装置名:分光測色計CM−2600d)を用い、正反射光除去方式で行った。
また、実施例2〜4、比較例1、参考例の表面処理粉体、未処理の酸化チタン(商品名:CR−50)を用いて同様に耐水性を評価した。
【0057】
<表面処理粉体の洗い流し性評価>
実施例1の表面処理粉体50mgを、黒色の人工皮革に4.2mg/cm
2となるように塗布し、色差を測定した。この人工皮革を水で満たしたシャーレに沈め、摩擦感テスター(株式会社トリニティーラボ、装置名:ハンディートライボマスターTL201Ts)を用いて、往復10回(荷重50g、速度20mm/sec)擦った。シャーレから取り出し室温下で30分乾燥させた後、色差を測定した。
明度(L値)の変化により、洗い流し性を評価した。明度変化が大きいほど、表面処理粉体が取り除かれているため、洗い流し性に優れていることを示す。色差測定は、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、装置名:分光測色計CM−2600d)を用い、正反射光除去方式で行った。
また、実施例2〜4、比較例1、参考例の表面処理粉体、未処理の酸化チタン(商品名:CR−50)を用いて同様に洗い流し性を評価した。
耐水性評価時と洗い流し性評価時の明度変化を
図8に示す。
【0058】
上記「透過率による水へのなじみやすさ評価」の結果から、実施例1〜4のうちでは、実施例2のみが耐水性と洗い流し性とを両立することが予想されたが、実施例1〜4のいずれも耐水性と洗い流し性とに優れており、市販のジメチコン被覆処理酸化チタンを用いた参考例と比べて、同等以上の耐水性と優れた洗い流し性とを有していた。特に、実施例4は未処理チタンよりも洗い流し性に優れていた。
また、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体とを併用した実施例2〜4は、実施例1と比較例1との間の性能を示すことが予想されたが、そのような結果とはならなかった。具体的には、実施例2〜4は実施例1よりも耐水性に優れ、実施例2は実施例1よりも洗い流し性に劣り、実施例4は比較例1よりも洗い流し性に優れていた。
【0059】
実施例3、4は、上記「透過率による水へのなじみやすさ評価」の結果からは、耐水性に劣ることが予想されたが、人工皮革に塗布した場合には、耐水性と洗い流し性を両立した。これは、ブロック共重合体が人工皮革への付着性を高めたために、短時間水に接触したときの耐水性が向上したためであると推測される。表面処理による付着性の向上は、実施例1〜4が、撥水化処理されている参考例と同等以上の耐水性を示していることからも裏付けられる。
【0060】
以下に、本発明の表面処理粉体を含有する化粧料の処方例を示す。
【0061】
(処方例1)パウダーファンデーション
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したマイカ 25%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化チタン 15%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化亜鉛 4%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したタルク 25.4%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した硫酸バリウム 13%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したポリメタクリル酸メチル 5%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したシリカ 3%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化鉄 2%
ジメチコン 0.5%
トリメチルシロキシケイ酸 0.5%
トリエチルヘキサノイン 2.5%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 4%
トコフェロール 0.1%
各表面処理粉体において、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は1:3、被覆量は5wt%とした。
【0062】
(処方例2)ルーセントパウダー
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したタルク 50%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したマイカ 10.5%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した合成フルオロフロゴパイト 15%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したナイロン−12 3%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した窒化ホウ素 3%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したシリカ 10%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化チタン 2%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化亜鉛 1%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化鉄 0.5%
ジメチコン 5%
各表面処理粉体において、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は1:3、被覆量は10wt%とした。
【0063】
(処方例3)クリームファンデーション
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したタルク 3%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化鉄 2%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化チタン 10%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化亜鉛 2%
スクワラン 2%
カプリリルメチコン 1%
シクロペンタシロキサン 15%
イソステアリン酸イソプロピル 3%
パルミチン酸デキストリン 1%
トリメチルシロキシケイ酸 1%
PEG−10ジメチコン 1%
PEG/PPG−19/19ジメチコン 0.5%
ジステアルジモニウムヘクトライト 0.5%
トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 1%
BG 6%
塩化Na 1%
精製水 50%
各表面処理粉体において、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は1:5とし、被覆量は5wt%とした。
【0064】
(処方例4)2層式日焼け止め
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化チタン 5%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化亜鉛 15%
シクロペンタシロキサン 30%
ジメチコン 5%
PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 4%
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 2%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 3%
グリセリン 3%
BG 5%
塩化Na 1%
精製水 27%
各表面処理粉体において、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は1:5とし、被覆量は10wt%とした。
【0065】
処方例1〜4の化粧料は、使用時の化粧もちに優れると共に、水で簡単に洗い流すことができた。