特許第5795110号(P5795110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファンケルの特許一覧

<>
  • 特許5795110-表面処理粉体 図000010
  • 特許5795110-表面処理粉体 図000011
  • 特許5795110-表面処理粉体 図000012
  • 特許5795110-表面処理粉体 図000013
  • 特許5795110-表面処理粉体 図000014
  • 特許5795110-表面処理粉体 図000015
  • 特許5795110-表面処理粉体 図000016
  • 特許5795110-表面処理粉体 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5795110
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】表面処理粉体
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/10 20060101AFI20150928BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20150928BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20150928BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/90 20060101ALI20150928BHJP
   C08G 65/331 20060101ALI20150928BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20150928BHJP
   C09C 1/30 20060101ALI20150928BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20150928BHJP
   C09C 1/24 20060101ALI20150928BHJP
   C09C 1/04 20060101ALI20150928BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20150928BHJP
   C08G 64/08 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C09C3/10
   C09C1/00
   A61K8/29
   A61K8/25
   A61K8/19
   A61K8/26
   A61K8/27
   A61K8/81
   A61Q1/00
   A61Q17/04
   A61K8/90
   C08G65/331
   C09C1/36
   C09C1/30
   C09C1/02
   C09C1/24
   C09C1/04
   C09C1/28
   C08G64/08
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-174248(P2014-174248)
(22)【出願日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年6月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】岩本 千紘
(72)【発明者】
【氏名】粂井 貴行
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 順司
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−522098(JP,A)
【文献】 特開2008−162945(JP,A)
【文献】 特開2009−269866(JP,A)
【文献】 特開平6−145490(JP,A)
【文献】 特表2007−509208(JP,A)
【文献】 特表2009−521270(JP,A)
【文献】 特許第5548322(JP,B1)
【文献】 特表2011−518248(JP,A)
【文献】 特開2006−2151(JP,A)
【文献】 特表2010−514474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/10
A61K 8/00−99
A61Q 1/00−90/00
C09C 1/00−68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される第1のブロック共重合体で粉体表面が被覆されていることを特徴とする表面処理粉体。
【化1】

(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立してアルキル基、ポリオキシアルキレン基、アシル基、フェニル基、アラルキル基を表し、Xは隣接しない炭素が酸素に置換されてエーテルを形成してもよい炭素数1〜18のアルキル鎖を表し、Yは単結合、または2価の連結基を表し、Zは水素、またはメチル基を表し、n、mは重合度を表す。)
【請求項2】
前記第1のブロック共重合体の、R、Rが炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理粉体。
【請求項3】
前記第1のブロック共重合体の、R、Rがともにメチル基であることを特徴とする請求項2に記載の表面処理粉体。
【請求項4】
前記第1のブロック共重合体と、下記一般式(2)で表される第2のブロック共重合体との混合物で粉体表面が被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理粉体。
【化2】
(式(2)中、R、Rは、それぞれ独立して水素、アルキル基、フェニル基、アルキルオキシ基を表し、Wは水素、またはメチル基を表し、Zは水素、またはメチル基を表し、p、qは重合度を表す。)
【請求項5】
前記第2のブロック共重合体の、R、Rが水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のエーテル基であることを特徴とする請求項4に記載の表面処理粉体。
【請求項6】
前記第2のブロック共重合体の、R、Rがともに水素であることを特徴とする請求項5に記載の表面処理粉体。
【請求項7】
前記第1のブロック共重合体と前記第2のブロック共重合体との重量比が1:0.5〜1:10の範囲であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の表面処理粉体。
【請求項8】
前記粉体が、酸化チタン、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ベンガラ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ホウケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン被覆合成ウンモ、合成フルオロフロゴパイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理粉体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の表面処理粉体を含有することを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理粉体及び該表面処理粉体を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メイク製品やサンケア製品等の化粧料は、1日中肌に塗布されているため、化粧もちの良さが求められる。そのため、汗や涙などの水分で化粧崩れが起きないように、化粧料中に含まれる粉体は、高級脂肪酸、フッ素化合物、シリコーンなど疎水性の表面処理剤により撥水化処理されている。
しかし、撥水化処理を施した粉体は、化粧もちは向上するが、洗浄時に水で洗い落としにくくなるため、専用のクレンジング剤を使用したり、何度も洗浄を繰り返さなければ、洗い落とすことができない。
粉体を親水化処理すれば、洗い流し性は向上するが、親水性の粉体は化粧もちが悪化するため、頻繁に化粧直しをしなければならない。すなわち、疎水性が要求される化粧もちと、親水性が要求される洗い流し性とを両立させることは困難である。
特許文献1には、シリコーンからなる表面処理剤、特許文献2には、アクリル酸類および/またはそのエステルのコポリマーからなる表面処理剤、特許文献3には、アルキルフッ素変性シリコーン油からなる表面処理剤が記載されている。また、特許文献4には、メタクリルアミドウンデカン酸とアクリルアミドメチルスルホン酸ナトリウムからなる耐水性と洗い流し易さを両立させる表面処理剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−163973号公報
【特許文献2】特開平8−337514号公報
【特許文献3】特開平8−143423号公報
【特許文献4】特許第4681406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥時には疎水性であるが、水に接触すると親水性となることで、化粧もちと洗い流し性とを両立した表面処理粉体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
1.下記一般式(1)で表される第1のブロック共重合体で粉体表面が被覆されていることを特徴とする表面処理粉体。
【化1】


(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立してアルキル基、ポリオキシアルキレン基、アシル基、フェニル基、アラルキル基を表し、Xは隣接しない炭素が酸素に置換されてエーテルを形成してもよい炭素数1〜18のアルキル鎖を表し、Yは単結合、または2価の連結基を表し、Zは水素、またはメチル基を表し、n、mは重合度を表す。)
2.前記第1のブロック共重合体の、R、Rが炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基であることを特徴とする1.に記載の表面処理粉体。
3.前記第1のブロック共重合体の、R、Rがともにメチル基であることを特徴とする2.に記載の表面処理粉体。
4.前記第1のブロック共重合体と、下記一般式(2)で表される第2のブロック共重合体との混合物で粉体表面が被覆されていることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の表面処理粉体。
【化2】

(式(2)中、R、Rは、それぞれ独立して水素、アルキル基、フェニル基、アルキルオキシ基を表し、Wは水素、またはメチル基を表し、Zは水素、またはメチル基を表し、p、qは重合度を表す。)
5.前記第2のブロック共重合体の、R、Rが水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のエーテル基であることを特徴とする4.に記載の表面処理粉体。
6.前記第2のブロック共重合体の、R、Rがともに水素であることを特徴とする5.に記載の表面処理粉体。
7.前記第1のブロック共重合体と前記第2のブロック共重合体との重量比が1:0.5〜1:10の範囲であることを特徴とする4.〜6.のいずれかに記載の表面処理粉体。
8.前記粉体が、酸化チタン、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ベンガラ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ホウケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン被覆合成ウンモ、合成フルオロフロゴパイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのいずれかであることを特徴とする1.〜7.のいずれかに記載の表面処理粉体。
9.1.〜8.のいずれかに記載の表面処理粉体を含有することを特徴とする化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の表面処理粉体は、乾燥環境下では疎水性、湿潤環境下では親水性を示すため、化粧料中の粉体として使用すると、使用時には化粧もちに優れ、かつ洗浄時には洗い流すのが容易な化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1のブロック共重合体からなる薄膜の表面偏析のモデル。
図2】第2のブロック共重合体からなる薄膜の表面偏析のモデル。
図3】第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体とからなる薄膜の表面偏析のモデル。
図4】第1のブロック共重合体のH−NMRスペクトル。
図5】沈殿として回収された表面処理粉体の割合を示す図。
図6】分散液の透過率を示す図。
図7】分散液の透過率を示す図。
図8】耐水性評価時と洗い流し性評価時の明度変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の表面処理粉体は、特定のブロック共重合体で粉体表面が被覆されていることを特徴とする。
本発明において用いる粉体としては特に限定されず、例えば、酸化チタン、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ベンガラ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ホウケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン被覆合成ウンモ、合成フルオロフロゴパイト、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0009】
一般に、異なる種類の高分子は相溶しないため、混合すると分離するが、ブロック共重合体は、異なる種類の高分子鎖が共有結合により繋がれているため、マクロスケールで分離することができない。そのため、ブロック共重合体は、異なる繰り返し単位を有するセグメント同士ができる限り離れようとして、分子鎖の大きさ程度で分離するミクロ相分離を起こす。
高分子鎖が流動性を有するガラス転移温度以上では、外部環境に応じて、ブロック共重合体の一方のセグメントがより表面エネルギーが低くなるように表面へと移行する。すなわち、周囲の環境に応じてセグメントの再配向が生じ、一方のセグメントが表面に偏在する表面偏析を起こす。ブロック共重合体の表面偏析は、X線光電子分光法、エネルギー分散型X線分析法、フーリエ変換赤外分光計−減衰全反射法や、透過型電子顕微鏡等で観察できる。
【0010】
本発明の表面処理粉体は、表面がブロック共重合体で覆われているため、ブロック共重合体を形成する異なる繰り返し単位を有するセグメントのうち、乾燥下ではより疎水的なセグメントが表面に、湿潤下ではより親水的なセグメントが表面に偏析する。そして、この表面偏析により、本発明の表面処理粉体は、乾燥時には疎水性であるが、水に接触等すると徐々に親水性となる。そのため、本発明の表面処理粉体を化粧料に適用すると、化粧もちと洗い流し性とを両立することができる。
ここで、本発明の粉体の表面処理に用いるブロック共重合体を形成するセグメントは、親水性と疎水性である必要はなく、相対的に親水性の程度に差があればよい。すなわち、疎水性セグメントと疎水性セグメントからなるブロック共重合体であってもよい。
【0011】
「第1のブロック共重合体」
本発明において使用する第1のブロック共重合体は、下記一般式(1)で表される。
【化3】

【0012】
式(1)中、R、Rは、それぞれ独立してアルキル基、ポリオキシアルキレン基、アシル基、フェニル基、アラルキル基を表し、Xは隣接しない炭素が酸素に置換されてエーテルを形成してもよい炭素数1〜18のアルキル鎖を表し、Yは単結合、または2価の連結基を表し、Zは水素、又はメチル基を表し、n、mは重合度を表す。
【0013】
、Rは、分子構造が嵩高いと、運動性が低下して、環境変化に対する応答性が低下するため、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基であることが最も好ましい。
Xは、隣接しない炭素が酸素に置換されてエーテルを形成してもよい、炭素数1〜18のアルキル鎖を表す。アルキル鎖が長いと結晶性が高まり、分子鎖の運動性が低下するため、炭素数は1〜12であることがより好ましく、1〜8であることがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0014】
Yで表される2価の連結基としては、炭素数15以下のものが好ましく、炭素数10以下のものがより好ましい。具体的には、たとえば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル基、チオエーテル基、ジスルフィド基、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基、および、これらが複数連結した連結基が挙げられる。これらの中で、分子構造が柔軟であることから、アルキレン基、エーテル基の組み合わせが好ましい。具体的には、−O−、−CO−、−COCO−、−C(OCO−(n=0〜5)等が挙げられる。
は水素、又はメチル基を表す。
【0015】
また、第1のブロック共重合体の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲であれば特に制限することなく使用することができる。数平均分子量が1,000未満であると、粉体表面に付着しにくく、表面処理剤として劣る。数平均分子量が100,000より大きいと、粘度が高くなりすぎて取り扱い性に劣る。数平均分子量は2,000〜50,000であることが好ましく、6,000〜30,000であることがより好ましい。
【0016】
第1のブロック共重合体中のシリコーンセグメント(以下、Qセグメントという。)は、代表的なシリコーンであるポリジメチルシロキサンのガラス転移温度が−120℃程度であるように、Tgが非常に低いため、分子鎖の運動性が非常に高い。第1のブロック共重合体において、Qセグメントの数平均分子量は、500〜50,000であることが好ましく、1,000〜30,000であることがより好ましく、3,000〜20,000であることがさらに好ましい。
【0017】
第1のブロック共重合体中のポリトリメチレンカーボネートセグメント(以下、PTMCセグメントという。)は、ポリトリメチレンカーボネートのガラス転移温度が−14℃と低いため、分子鎖の運動性が高い。PTMCセグメントの数平均分子量は、500〜50,000であることが好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0018】
第1のブロック共重合体の合成方法は、制限されるものでなく、目的とするブロック共重合体が得られる任意の方法を用いることができる。一例として、末端に水酸基を有するシリコーンに、塩基系触媒存在下でトリメチレンカーボネート(以下、TMCという。)を開環重合させることで合成することができる。
【0019】
乾燥環境下、湿潤環境下における第1のブロック共重合体からなる薄膜の表面偏析のモデルを図1に示す。
PTMCセグメント2は、ポリトリメチレンカーボネート薄膜の純水接触角が約68度であるように、疎水性である。しかし、ポリジメチルシロキサン薄膜の純水接触角は100〜110度であるから、Qセグメント1と比較すると、PTMCセグメント2はより親水的である。第1のブロック共重合体からなる薄膜は、乾燥環境下では、より疎水的であるQセグメント1が表面に偏在している。この薄膜が水と接触等して湿潤環境下になると、水との界面での表面エネルギーを下げるために、Qセグメント1が薄膜内部に潜り込み、薄膜表面でのPTMCセグメント2の比率が高まることにより親水性が高まる。すなわち、第1のブロック共重合体からなる薄膜は、環境応答性を示し、乾燥環境下では疎水性であるが、湿潤環境下では疎水性が弱まり親水的になる。なお、この応答は可逆性であり、繰り返し応答させることができる。
【0020】
ブロック共重合体の表面偏析に由来する環境応答性は、水接触角の経時変化を測定することにより確認することができる。具体的には、第1のブロック共重合体からなる薄膜を真空乾燥させ、25℃、55%RHにおける、純水7μLを滴下した時のθ/2法による接触角は、Qセグメントが表面偏析している滴下直後は90〜100度であるが、徐々にPTMCセグメントが表面偏析するため、滴下20秒後には65〜85度まで低下する。なお、本明細書中において、接触角は全て、25℃、55%RHにおける、純水7μLを滴下した時のθ/2法による測定値である。
【0021】
乾燥環境下、および湿潤環境下での接触角、および接触角変化の早さは、第1のブロック共重合体のQセグメントとPTMCセグメントの分子量、分子構造の嵩高さなどで調整することができる。なお、ポリトリメチレンカーボネート薄膜の接触角が約68度であるため、理論上の第1のブロック共重合体からなる薄膜の湿潤環境下における接触角は68度以下にはならない。
【0022】
第1のブロック共重合体を有機溶媒に溶解し、その溶液中に粉体を浸漬し、乾燥することにより、粉体表面をブロック共重合体で被覆することができる。また、ブロック共重合体と粉体とを混合、撹拌することで、有機溶媒を用いずとも被覆することができる。
粉体に対する第1のブロック共重合体の量は、粉体の表面積に応じて調整することができるが、通常、粉体100重量部に対して、第1のブロック共重合体0.5〜20重量部である。
粉体を第1のブロック共重合体で被覆することにより、使用中は粉体表面にQセグメントが表面偏析するため、疎水性となり化粧もちが向上する。洗い流し時には、長時間水に接触するため、親水的であるPTMCセグメントが表面偏析して、粉体表面が徐々に親水性となり、洗い流し性が発揮される。
【0023】
本発明の表面処理粉体において、第1のブロック共重合体とともに、第2のブロック共重合体で粉体表面を被覆することで、化粧もちと洗い流し性とをともに向上させることができる。
「第2のブロック共重合体」
本発明において使用する第2のブロック共重合体は、下記一般式(2)で表される。
【化4】
【0024】
式(2)中、R、Rは、それぞれ独立して水素、アルキル基、フェニル基、アルキルオキシ基を表し、Wは水素、又はメチル基を表し、Zは水素、又はメチル基を表し、p、qは重合度を表す。
【0025】
、Rは、分子構造が嵩高いと、運動性が低下して、環境変化に対する応答性が低下するため、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基が好ましく、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基がより好ましく、水素、メチル基がさらに好ましく、水素が最も好ましい。
【0026】
第2のブロック共重合体の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲であれば特に制限することなく使用することができる。数平均分子量が1,000未満であると、粉体表面に付着しにくく、表面処理剤として劣る。数平均分子量が100,000より大きいと、粘度が高くなりすぎて取り扱い性に劣る。数平均分子量は2,000〜50,000であることが好ましく、6,000〜30,000であることがより好ましい。
【0027】
第2のブロック共重合体中のポリエチレングリコールセグメント(以下、PEGセグメントという。)は、エーテル基を多数有するため親水性である。また、非晶状態にあるポリエチレンオキシドのガラス転移温度は約−65度と低いため、運動性に優れている。PEGセグメントの数平均分子量は、200〜20,000であることが好ましく、500〜10,000であることがより好ましく、2,000〜5,000であることがさらに好ましい。数平均分子量が200より小さいと表面偏析が起こりにくく、20,000より大きいと表面偏析が早く起こりすぎる。
【0028】
第2のブロック共重合体中のポリトリメチレンカーボネート誘導体セグメント(以下、D−PTMCセグメントという。)は、疎水性である。D−PTMCセグメントは、上記した第1のブロック共重合体のPTMCセグメントと同等のTg(約−14℃)を有しているため、分子鎖の運動性が高い。D−PTMCセグメントの数平均分子量は、500〜50,000であることが好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0029】
第2のブロック共重合体の合成方法は、制限されるものでなく、目的とするブロック共重合体が得られる任意の方法を用いることができる。一例として、第1のブロック共重合体と同様に、末端に水酸基を有するポリエチレンオキシドに、塩基系触媒存在下でトリメチレンカーボネート誘導体を開環重合させることで製造することができる。モノマーとしてトリメチレンカーボネート誘導体を用いることにより、D−PTMCセグメントのR、Rとして置換基を導入することができる。例えば、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オンを開環重合させることにより、R、Rとしてメチル基を導入することができる。
【0030】
乾燥環境下、湿潤環境下における第2のブロック共重合体からなる薄膜の表面偏析のモデルを図2に示す。
第2のブロック共重合体からなる薄膜は、乾燥環境下では疎水性であるD−PTMCセグメント4が表面偏析しており、滴下直後の接触角は65〜68度であるが、この薄膜が水と接触等して湿潤環境下になると、親水性であるPEGセグメント3が表面偏析するため、滴下20秒後の接触角は30〜40度まで低下する。なお、第1のブロック共重合体と同じくこの応答は可逆性であり、繰り返し応答させることができる。
【0031】
第2のブロック共重合体からなる薄膜の接触角は、PEGセグメント3の数平均分子量が大きいほど、水と接触後に素早く低下する。乾燥環境下、および湿潤環境下での接触角、および接触角変化の早さは、第2のブロック共重合体のPEGセグメントとD−PTMCセグメント分子量、分子構造の嵩高さなどで調整することができる。すなわち、非相溶である異なる高分子からなるセグメントが相分離しようとする駆動力を変化させることにより、応答速度を変化させることができる。なお、第2のブロック共重合体からなる薄膜の乾燥環境下での接触角は、理論上は、ポリトリメチレンカーボネート薄膜の接触角である68度より大きくならない。
【0032】
上記したように、ポリトリメチレンカーボネートの接触角は68度であるため、理論上は、第1のブロック共重合体からなる薄膜の湿潤環境下での接触角は68度より小さくならず、第2のブロック共重合体からなる薄膜の乾燥環境下での接触角は68度より大きくならない。
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を混合することにより、乾燥環境下ではより疎水性、湿潤環境下ではより親水性とすることができ、最適な表面処理が可能となる。
【0033】
第1のブロック共重合体のPTMCセグメントと、第2のブロック共重合体のD−PTMCセグメントは、類似または、同一の繰り返し単位を有するため、相溶性に優れており、任意の比率で混合することができる。PEGセグメントを有する第2のブロック共重合体が多いほど、水に接触した際の親水性を高めることができる。第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は特に制限されないが、1:0.5〜1:10であることが好ましく、1:1〜1:5であることがより好ましい。
【0034】
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体からなる薄膜の表面偏析のモデルを図3に示す。乾燥状態では、最も疎水性であるQセグメント1が表面偏析している。膜表面に水滴を滴下等した湿潤環境下では、Qセグメント1が徐々に膜内部に潜り込む第1の親水化が起こり、続いて最も親水性であるPEGセグメント3が表面偏析を起こす第2の親水化が起こる。すなわち、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体からなる薄膜は、乾燥環境下では、Qセグメント1が表面偏析しているため、接触角が90〜100度と疎水性であるが、湿潤環境下では、PEGセグメントが表面偏析するため、接触角が30〜40度まで低下して親水性となる。
【0035】
本発明の表面処理粉体を化粧料中の粉体として使用することにより、使用時の化粧もちと、洗浄時の洗い流し性とを両立することができる。化粧料の剤形としては、粉体を配合するものであれば特に限定されないが、例えば、ファンデーション、ルーセントパウダー、クリームファンデーション、リキッドファンデーション、ローション、日焼け止め、コンシーラー、フェースカラー、チークカラー、アイカラー、口紅、化粧下地、ボディーパウダー等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
「第1のブロック共重合体の合成」
「合成例1」
一方の末端にブチル基、他の末端に−COCOH基を有する、数平均分子量5,000のポリジメチルシロキサン(JNC株式会社製、商品名:サイラプレーンFM0421、以下、PDMSという。)の水酸基1当量に対して、TMCを300当量(モル比)となるようにジクロロメタンに溶解させて、10wt/v%の溶液を得た。PDMSに対して、塩基性触媒である1,8−ジアザビシクロウンデセン(DBU)を2当量(モル比)となるように加え、窒素雰囲気下にて室温で72時間反応させた後、安息香酸を添加して、反応を停止した。反応停止後に、メタノール、2−プロパノール、ヘキサン(10:1:10(体積比))からなる混合溶媒に再沈殿させて回収し、50℃で減圧乾燥させて、第1のブロック共重合体を得た。
【0037】
「第2のブロック共重合体の合成」
「合成例2」
片末端がメトキシ基で保護されている数平均分子量5000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名:Poly(ethylene glycol) methyl ether、以下、mPEGという。)の末端水酸基1当量に対して、TMCを400当量(モル比)となるようにジクロロメタンに溶解させて、10wt/v%の溶液を得た。mPEG1当量に対して、塩基性触媒であるDBUを3当量(モル比)となるように加え、窒素雰囲気下にて室温で72時間反応させた後、安息香酸を添加して、反応を停止した。反応停止後に、ヘキサンと2−プロパノール(7:3(体積比))からなる混合溶媒に再沈殿させて回収し、50℃で減圧乾燥させて、第2のブロック共重合体を得た。
【0038】
「ブロック共重合体の分析」
1.H−NMR測定
得られたブロック共重合体の重合度はH−NMRにより解析した。第1のブロック共重合体1のH−NMRのスペクトルを図4に示す。
ポリジメチルシロキサンに帰属されるシグナル(0.3ppm付近)とポリトリメチレンカーボネートに帰属されるシグナル(2.1ppm、4.2ppm付近)との積分強度比から第1のブロック共重合体のトリメチレンカーボネートの重合度を算出した。
同様にして、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルに帰属されるシグナル(3.6ppm付近)と、ポリトリメチレンカーボネートに帰属されるシグナルとの積分強度比から第2のブロック共重合体のトリメチレンカーボネートの重合度を算出した。
【0039】
2.GPC測定
ブロック共重合体を、テトラヒドロフランに溶解させて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行った。GPCは、高速液体クロマトグラフ(GPCカラム KF−804(昭和電工株式会社製)、溶離液:テトラヒドロフラン)を用いて行い、そのクロマトグラフィーの結果から、ポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算として求めた。
ブロック共重合体の分析結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
[実施例1]
第1のブロック共重合体50mgをアセトン15mlに溶解した。この溶液中に、粉体として未処理の酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:CR−50、平均粒子径0.25μm)1gを混合・撹拌した後、溶媒をエバポレーターで留去した。溶媒を留去して得られた固形物を乳鉢で粉砕して表面処理粉体を得た。酸化チタンに対する第1のブロック共重合体の被覆量は5wt%である。
【0042】
[実施例2]
第1のブロック共重合体25mgと第2のブロック共重合体25mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:1とした以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0043】
[実施例3]
第1のブロック共重合体12.5mgと第2のブロック共重合体37.5mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:3とした以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0044】
[実施例4]
第1のブロック共重合体8.3mgと第2のブロック共重合体41.7mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:5とした以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0045】
[実施例5]
第1のブロック共重合体100mgを用い、酸化チタンに対する第1のブロック共重合体の被覆量を10wt%とした以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0046】
[実施例6]
第1のブロック共重合体50mgと第2のブロック共重合体50mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:1とした以外は実施例5と同様にして表面処理粉体を得た。
【0047】
[実施例7]
第1のブロック共重合体25mgと第2のブロック共重合体75mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:3とした以外は実施例5と同様にして表面処理粉体を得た。
【0048】
[実施例8]
第1のブロック共重合体16.7mgと第2のブロック共重合体83.3mgを用い、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比を1:5とした以外は実施例5と同様にして表面処理粉体を得た。
【0049】
[比較例1]
第2のブロック共重合体50mgを用いた以外は実施例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0050】
[比較例2]
第2のブロック共重合体100mgを用いた以外は比較例1と同様にして表面処理粉体を得た。
【0051】
[参考例]
市販の撥水化処理された粉体である、ジメチコン被覆処理酸化チタン(三好化成株式会社製、商品名:SA−チタンCR−50、ジメチコン被覆量2wt%)を表面処理粉体とした。
【0052】
<重量による水へのなじみやすさ評価>
20mLの水を入れた50mL容の遠沈管に、実施例1の表面処理粉体を50mg入れ、3秒、または30秒ボルテックスミキサーで撹拌(500/min)した。撹拌後も水面に浮かんだままの表面処理粉体を除去した後、2000rpm、2分間遠心分離して表面処理粉体を沈殿させた。上澄みをデカンテーションで廃棄し、回収した沈殿を室温下で約3時間真空乾燥した。
投入した表面処理粉体量(50mg)に対する、沈殿として回収した表面処理粉体量の割合から、水へのなじみやすさを評価した。割合が高いほど水になじみやすいことを示す。
また、実施例2〜4、比較例1、参考例の表面処理粉体、未処理の酸化チタン(商品名:CR−50)を用いて同様に水へのなじみやすさを評価した。沈殿として回収された割合を図5に示す。
【0053】
本発明の表面処理粉体である実施例1〜3は、3秒撹拌した時に80%以上、30秒撹拌した時に85%以上回収できており、水になじみやすいことが確認できた。また、未処理の酸化チタンと同等の親水性を有していることが確認できた。
比較例1は、第1のブロック共重合体よりも親水性である第2のブロック共重合体のみで表面処理されているため、3秒撹拌した時に97%、30秒撹拌した時に99%回収され、非常に水になじみやすかった。
参考例は撥水化処理されているため水になじみにくく、3秒撹拌したときには16%しか回収できなかった。なお、30秒撹拌した時には48%の粉体が回収できているが、これは30秒撹拌した時に水となじまない粉体が壁に付着してしまい除去しきれなかったためであると推測される。
【0054】
<透過率による水へのなじみやすさ評価>
20mLの水を入れた50mL容の遠沈管に、実施例1の表面処理粉体を50mg入れ、3秒、または30秒ボルテックスミキサーで撹拌(500/min)した。撹拌後、2000rpmで1分間遠心分離し、表面に浮いた粉体と、沈降した粉体とを避けて、中間層をスポイトで吸引して、分散液を得た。
分散液の660nmにおける透過率を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、装置名:UV−2450)で測定し、分散状態の評価を行った。透過率が低いほど表面処理粉体が水中に分散していること、すなわち、水になじみやすいことを示す。
また、実施例2〜8、比較例1、2、参考例の表面処理粉体、未処理の酸化チタン(商品名:CR−50)を用いて同様に水へのなじみやすさを評価した。分散液の透過率を図6、7に示す。
【0055】
第1のブロック共重合体のみを用いた実施例1、5は、水への分散性が低く、表面処理粉体の多くが遠心分離時に沈降したため分散液の透明性が高く、透過率はそれぞれ3秒撹拌した時に87.4%、89.9%、30秒撹拌した時に93.8%、94.3%であった。
実施例2、6、7は、3秒撹拌後は水への分散性が悪く、表面処理粉体の多くが遠心分離により沈降して取り除かれたため透過率はそれぞれ70.7%、77.0%、61.5%と高かった。しかし、30秒撹拌後は水への分散性が向上して表面処理粉体が沈降しにくくなったため、透過率はそれぞれ40.4%、1.9%、0.1%に低下した。このことから、粉体表面を被覆するブロック共重合体が、水との接触により表面偏析して徐々に親水性となったことが確認できた。
実施例3、4、8、及び比較例1、2は水になじみやすく分散性に優れているため、透過率は3秒撹拌した時に5.2%以下、30秒撹拌した時に0.2%以下と低く、未処理酸化チタンの3秒撹拌した時の1.1%、30秒撹拌した時の0%と同等であった。
市販の撥水化処理粉体を用いた参考例は、実施例1、5と同じく分散液の透明性が高く3秒撹拌、30秒撹拌の透過率がそれぞれ98.7%、99.8%であった。しかし、表面処理粉体の挙動は異なり、実施例1、5では遠心分離後の表面処理粉体は沈降していたのに対し、参考例では遠心分離後の表面処理粉体は液面に浮かんだままであった。
【0056】
<表面処理粉体の耐水性評価>
実施例1の表面処理粉体50mgを、黒色の人工皮革に4.2mg/cmとなるように塗布し、色差を測定した。この人工皮革に、霧吹きで一定量となるように水を1回噴射し一定の力でティッシュを軽く押し付け、水を取り除いた後、色差を測定した。
明度(L値)の変化により、耐水性を評価した。明度変化が小さいほど、表面処理粉体が取り除かれていないため、耐水性が高く、化粧もちに優れていることを示す。色差測定は、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、装置名:分光測色計CM−2600d)を用い、正反射光除去方式で行った。
また、実施例2〜4、比較例1、参考例の表面処理粉体、未処理の酸化チタン(商品名:CR−50)を用いて同様に耐水性を評価した。
【0057】
<表面処理粉体の洗い流し性評価>
実施例1の表面処理粉体50mgを、黒色の人工皮革に4.2mg/cmとなるように塗布し、色差を測定した。この人工皮革を水で満たしたシャーレに沈め、摩擦感テスター(株式会社トリニティーラボ、装置名:ハンディートライボマスターTL201Ts)を用いて、往復10回(荷重50g、速度20mm/sec)擦った。シャーレから取り出し室温下で30分乾燥させた後、色差を測定した。
明度(L値)の変化により、洗い流し性を評価した。明度変化が大きいほど、表面処理粉体が取り除かれているため、洗い流し性に優れていることを示す。色差測定は、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、装置名:分光測色計CM−2600d)を用い、正反射光除去方式で行った。
また、実施例2〜4、比較例1、参考例の表面処理粉体、未処理の酸化チタン(商品名:CR−50)を用いて同様に洗い流し性を評価した。
耐水性評価時と洗い流し性評価時の明度変化を図8に示す。
【0058】
上記「透過率による水へのなじみやすさ評価」の結果から、実施例1〜4のうちでは、実施例2のみが耐水性と洗い流し性とを両立することが予想されたが、実施例1〜4のいずれも耐水性と洗い流し性とに優れており、市販のジメチコン被覆処理酸化チタンを用いた参考例と比べて、同等以上の耐水性と優れた洗い流し性とを有していた。特に、実施例4は未処理チタンよりも洗い流し性に優れていた。
また、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体とを併用した実施例2〜4は、実施例1と比較例1との間の性能を示すことが予想されたが、そのような結果とはならなかった。具体的には、実施例2〜4は実施例1よりも耐水性に優れ、実施例2は実施例1よりも洗い流し性に劣り、実施例4は比較例1よりも洗い流し性に優れていた。
【0059】
実施例3、4は、上記「透過率による水へのなじみやすさ評価」の結果からは、耐水性に劣ることが予想されたが、人工皮革に塗布した場合には、耐水性と洗い流し性を両立した。これは、ブロック共重合体が人工皮革への付着性を高めたために、短時間水に接触したときの耐水性が向上したためであると推測される。表面処理による付着性の向上は、実施例1〜4が、撥水化処理されている参考例と同等以上の耐水性を示していることからも裏付けられる。
【0060】
以下に、本発明の表面処理粉体を含有する化粧料の処方例を示す。
【0061】
(処方例1)パウダーファンデーション
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したマイカ 25%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化チタン 15%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化亜鉛 4%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したタルク 25.4%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した硫酸バリウム 13%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したポリメタクリル酸メチル 5%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したシリカ 3%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化鉄 2%
ジメチコン 0.5%
トリメチルシロキシケイ酸 0.5%
トリエチルヘキサノイン 2.5%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 4%
トコフェロール 0.1%
各表面処理粉体において、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は1:3、被覆量は5wt%とした。
【0062】
(処方例2)ルーセントパウダー
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したタルク 50%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したマイカ 10.5%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した合成フルオロフロゴパイト 15%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したナイロン−12 3%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した窒化ホウ素 3%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したシリカ 10%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化チタン 2%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化亜鉛 1%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化鉄 0.5%
ジメチコン 5%
各表面処理粉体において、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は1:3、被覆量は10wt%とした。
【0063】
(処方例3)クリームファンデーション
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理したタルク 3%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化鉄 2%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化チタン 10%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化亜鉛 2%
スクワラン 2%
カプリリルメチコン 1%
シクロペンタシロキサン 15%
イソステアリン酸イソプロピル 3%
パルミチン酸デキストリン 1%
トリメチルシロキシケイ酸 1%
PEG−10ジメチコン 1%
PEG/PPG−19/19ジメチコン 0.5%
ジステアルジモニウムヘクトライト 0.5%
トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 1%
BG 6%
塩化Na 1%
精製水 50%
各表面処理粉体において、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は1:5とし、被覆量は5wt%とした。
【0064】
(処方例4)2層式日焼け止め
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化チタン 5%
第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体を処理した酸化亜鉛 15%
シクロペンタシロキサン 30%
ジメチコン 5%
PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 4%
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 2%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 3%
グリセリン 3%
BG 5%
塩化Na 1%
精製水 27%
各表面処理粉体において、第1のブロック共重合体と第2のブロック共重合体との重量比は1:5とし、被覆量は10wt%とした。
【0065】
処方例1〜4の化粧料は、使用時の化粧もちに優れると共に、水で簡単に洗い流すことができた。
【符号の説明】
【0066】
1.Qセグメント
2.PTMCセグメント
3.PEGセグメント
4.D−PTMCセグメント
【要約】      (修正有)
【課題】化粧料であって、乾燥時には疎水性であるが、水に接触すると親水性となることで、化粧もちと洗い流し性とを両立した表面処理粉体の提供。
【解決手段】式(1)で表される第1のブロック共重合体ブロック共重合体で粉体表面が被覆されている表面処理粉体。
(R、Rは各々独立にアルキル基、ポリオキシアルキレン基、アシル基、フェニル基、アラルキル基;Xは隣接しない炭素が酸素に置換されてエーテルを形成してもよいC1〜18のアルキル鎖;Yは単結合又は2価の連結基;ZはH、又はメチル基;n及びmは重合度)
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8