特許第5795116号(P5795116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5795116液体脱気システム内の浸透気化を制御する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795116
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】液体脱気システム内の浸透気化を制御する装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20150928BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20150928BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20150928BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B01D61/00
   B01D61/36
   B01D69/04
   B01D19/00 H
【請求項の数】18
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-501298(P2014-501298)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公表番号】特表2014-508644(P2014-508644A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】US2012030507
(87)【国際公開番号】WO2012135088
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年9月24日
(31)【優先権主張番号】13/172,133
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/356,839
(32)【優先日】2012年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/072,422
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513237308
【氏名又は名称】アイデックス ヘルス アンド サイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー、ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、クワン
(72)【発明者】
【氏名】シムズ、カール
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−350903(JP,A)
【文献】 特開平08−332307(JP,A)
【文献】 特開平11−077023(JP,A)
【文献】 特開2005−113874(JP,A)
【文献】 特開平11−333205(JP,A)
【文献】 特開平04−203479(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/045963(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00
B01D 19/00
B01D 61/36
B01D 69/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの液体組成物を脱気する複数の脱気モジュールであって、前記脱気モジュールがそれぞれ、気体透過性で液体不透過性の膜によって透過水側と濃縮水側に分離されたチャンバを含み、前記チャンバの前記濃縮水側で液体が互いに切り離されている、複数の脱気モジュールと、
出口導管を通じて前記チャンバの前記透過水側を流動的に連通させるマニホルドであって、前記出口導管が、前記マニホルドと前記チャンバの前記透過水側に流動的に連通しているそれぞれの真空ポートとの間に個別に延び、前記マニホルドが、接続部で前記出口導管を主脱気ラインにさらに流動的に連通させるマニホルドと、
前記チャンバの前記透過水側を圧力設定点まで排気するように前記主脱気ラインに流動的に結合された真空ポンプと、
前記複数の脱気モジュールの合計の平均逆流量以上であるが、前記圧力設定点を維持するための前記真空ポンプの最大容量を画定する最大容量流量を超過しない流入量で、前記接続部と前記チャンバとの間の位置で空気の流入を可能にする空気通気口
を備える液体脱気装置。
【請求項2】
前記流入量が、
≧P(N−1)
によって決定され、上式で、
=前記空気通気口に対する流入量、
P=前記脱気モジュール間の最大浸透気化流量、及び
N=脱気モジュールの数
である、請求項1に記載の液体脱気装置。
【請求項3】
前記流入量空気の流入をともに可能にする複数の空気通気口を含む、請求項1に記載の液体脱気装置。
【請求項4】
前記空気通気口が、前記出口導管のそれぞれの中への空気流を可能にする、請求項3に記載の液体脱気装置。
【請求項5】
前記複数の空気通気口のそれぞれに対する前記流入量が、
【数1】

によって決定され、上式で、
=前記空気通気口のそれぞれに対する流入量、
P=前記脱気モジュール間の最大浸透気化流量、及び
N=脱気モジュールの数
である、請求項4に記載の液体脱気装置。
【請求項6】
それぞれの出口導管内で前記空気通気口の少なくとも1つと前記脱気モジュールの少なくとも1つとの間に流動的に挿入された第1のバッファ・チャンバであって、前記出口導管に対して開かれた第1の体積を画定し、前記第1の体積が吸気体積を超過する大きさである、第1のバッファ・チャンバを含み、前記吸気体積が、
=(P/Pset)・Vch
として画定され、上式で、
=吸気体積、
=前記圧力ポンプのポンプ圧力振動、
set=前記圧力設定点、及び
ch=前記それぞれの脱気モジュール・チャンバの体積
である、請求項4に記載の液体脱気装置。
【請求項7】
前記空気通気口の少なくとも1つの下流に第2のバッファ・チャンバを含み、前記第2のバッファ・チャンバが、合計の瞬時逆流体積以上の大きさの第2の体積を画定する、請求項6に記載の液体脱気装置。
【請求項8】
前記脱気モジュールのそれぞれの出口導管に関連する複数の前記第2のバッファ・チャンバを含み、前記第2のバッファ・チャンバがそれぞれ、前記それぞれの出口導管に対する前記合計の瞬時逆流体積以上の大きさの個別の第2の体積を画定する、請求項7に記載の液体脱気装置。
【請求項9】
前記個別の第2の体積が、
【数2】

として決定され、上式で、
V=個別の第2の体積、
P=前記脱気モジュール間の最大浸透気化流量、
=前記空気通気口のそれぞれに対する流入量、
off=前記真空ポンプのサイクル時間のうち、前記主脱気ラインで吸引が行われない部分
N=脱気モジュールの数
である、請求項8に記載の液体脱気装置。
【請求項10】
複数の脱気モジュールを有し、前記脱気モジュールがそれぞれ、気体透過性で液体不透過性の膜によって透過水側と濃縮水側に分離されたチャンバを含み、前記チャンバの前記濃縮水側で液体が互いに切り離されており、前記複数の脱気モジュールのそれぞれから出口導管が延び、前記出口導管が、前記チャンバのそれぞれの透過水側を互いに流動的に結合し、接続部で真空ポンプに流動的に結合する液体脱気システム内で、液体の浸透気化を制御する方法であって、
(a)前記チャンバの前記濃縮水側へ液体組成物を送達するステップであって、第1のチャンバへ送達される第1の液体組成物が、第2のチャンバへ送達される第2の液体組成物とは異なる、送達するステップと、
(b)前記第1及び第2のチャンバの少なくとも1つにおいてそれぞれの前記膜を通じて液体蒸気浸透気化流をもたらす圧力設定点まで、前記濃縮水側を排気するように、前記真空ポンプを動作させるステップと、
(c)前記液体蒸気浸透気化流を抑制して、前記チャンバのうちの別のチャンバ内への前記浸透気化流の浸透を防止するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記抑制するステップが、前記複数の脱気モジュールの合計の平均逆流量以上であるが、前記圧力設定点を維持するための前記真空ポンプの最大容量を画定する最大容量流量を超過しない流入量で、前記接続部と前記チャンバとの間で前記システム内への空気流を可能にすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流入量が、
≧P(N−1)
によって決定され、上式で、
=前記空気通気口に対する流入量、
P=前記脱気モジュール間の最大浸透気化流量、及び
N=脱気モジュールの数
である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流入量で前記システム内への空気流をともに可能にする複数の空気通気口を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記空気通気口が、前記出口導管のそれぞれの中への空気流を可能にする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の空気通気口のそれぞれに対する前記流入量が、
【数3】

によって決定され、上式で、
=前記空気通気口のそれぞれに対する流入量、
P=前記脱気モジュール間の最大浸透気化流量、及び
N=脱気モジュールの数
である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抑制するステップが、前記第1のチャンバと第2のチャンバとの間第1の体積バッファ・チャンバを流動的に連結することを含み、前記第1の体積バッファ・チャンバが、前記第1及び第2のチャンバの前記出口導管の少なくとも1つに対して開かれた第1の体積を画定し、前記第1の体積が、吸気体積を超過する大きさであり、前記吸気体積が、
=(P/Pset)・Vch
として画定され、上式で、
=吸気体積、
=前記圧力ポンプのポンプ圧力振動、
set=前記圧力設定点、及び
ch=前記それぞれの脱気モジュール・チャンバの体積
である、請求項10に記載の液体脱気装置。
【請求項17】
前記抑制するステップが、前記第1のチャンバと第2のチャンバとの間第2の体積バッファ・チャンバを流動的に連結することを含み、前記第2の体積バッファ・チャンバが、前記第1及び第2のチャンバの前記出口導管の少なくとも1つに対して開かれた第2の体積を画定し、第2の体積が合計の瞬時逆流体積以上の大きさである、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記脱気モジュールのそれぞれの出口導管に関連する複数の前記第2の体積バッファ・チャンバを含み、前記第2の体積バッファ・チャンバがそれぞれ、前記それぞれの出口導管に対する前記合計の瞬時逆流体積以上の大きさの個別の第2の体積を画定する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に液体脱気システムに関し、詳細には、脱気チャンバ内の浸透気化を最小にするように特に構成された液体脱気装置に関する。本発明の装置は、液体クロマトグラフィの適用分野で利用される脱気システムの浸透気化を制御するように特に適合することができる。
【背景技術】
【0002】
膜を通じた溶剤の浸透気化は、膜分離の適用分野で利用されてきたよく知られている現象である。たとえば、従来技術は、膜の濃縮水側で比較的低い蒸気圧の成分を濃縮させる目的で膜を通じた溶剤の浸透気化を使用する例に富んでいる。さらに、膜の透過水側で溶剤成分を選択的に回収するために、膜を通じた浸透気化を利用する蒸留動作が実行されてきた。
【0003】
浸透気化の有益な態様は以前から知られており、意図的な溶剤分離処理で利用されてきたが、それぞれの溶剤の相対濃度が既知及び/又は一定であることが望ましい混合溶剤の適用分野では、そのような浸透気化特性は相当な悪影響を有する可能性がある。そのような混合溶剤の適用分野の特定の例は、液体クロマトグラフィ・システムの例であり、2つ以上の溶剤の移動相が使用される。しかし、時間とともに移動相の相対濃度に変化が生じる可能性があり、それによってクロマトグラフィ分析の精度に悪影響を与えることが、本出願人らによって認識されている。
【0004】
浸透気化の影響は、比較的低い処理量の移動相体積を利用するクロマトグラフィ・システムの分析精度にとって、又はクロマトグラフィ器具類が周期的に動作されるだけであり、各動作間で供給ラインを完全にフラッシングしない場合の分析精度にとって、特に有害である。たとえば、1時間当たり数ナノリットル又は数マイクロリットル程度の移動相流量を利用するシステムには、移動相を構成する溶剤の相対濃度がクロマトグラフィ器具類を通じた検体の輸送中に実質上変更されるというリスクがある。
【0005】
具体的には、液体クロマトグラフィ・システムは通常、気体透過性で液体不透過性の膜を通じて液体の移動相が脱気環境に露出される脱気チャンバを用いる。そのような脱気環境は、たとえば、排気ポンプによって維持される比較的低い絶対圧、又は脱気チャンバの透過水側へ通された掃引流体の比較的低い標的材料の分圧とすることができる。通常、脱気動作は、脱気チャンバを通過する移動相上で脱気性能を最大にするように構成及び制御されてきた。そのため、真空ポンプは通常、膜の透過水側で比較的低い絶対圧を維持するようにプログラムされ、又は掃引流体の場合、標的気体種の濃度をほとんど若しくはまったく含有しない掃引流体が移動相から引き出される。どちらの場合も、標的気体の濃度勾配は、膜を通って標的気体を透過水側へ伝達するように維持される。脱気チャンバ内で常にそのような大きな標的気体の濃度勾配を維持する結果、浸透気化が生じる可能性がある。特に、透過水側が上記の条件で維持された状態で脱気チャンバ内の移動相の滞留時間が比較的長くなることで、比較的高い蒸気圧の溶剤成分が膜を通じて浸透気化し、その結果、相対的な溶剤濃度の変化を引き起こす傾向がある。その結果、特に脱気チャンバ内でのそのような移動相の滞留時間が比較的長い場合、又は脱気チャンバの透過水側が進行中の浸透気化効果を促している場合、脱気チャンバの濃縮水側の移動相は、比較的低い蒸気圧の成分材料中に濃縮される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,248,157号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の一目的は、膜を通じて2つ以上の成分材料を有する移動相の浸透気化を制御する装置を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、膜を通じて2つ以上の成分材料を有する移動相の浸透気化を制限するのに有効な環境を膜の透過水側に確立する装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、真空脱気システム内の圧力振動を減衰させる装置を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、真空脱気システム内の複数の別個の脱気チャンバ間で浸透気化した溶剤の交差汚染を阻止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、真空ポンプ・サイクルの非吸引期間中に生じる浸透気化した溶剤の逆流を抑制することによって、浸透気化した溶剤の交差汚染を実質上解消することができる。抑制は、脱気チャンバの下流に体積を追加するという形、及び/又は起こりうる逆流とは反対の方向に空気/気体の流れを駆動するという形で行うことができる。負圧の脱気環境では、抑制する空気流は、周囲に対するシステム内の圧力差によって生じさせることができる。
【0012】
一実施例では、本発明の液体脱気装置は、それぞれの液体組成物を脱気する複数の脱気モジュールを含み、脱気モジュールはそれぞれ、気体透過性で液体不透過性の膜によって透過水側と濃縮水側に分離されたチャンバを含み、これらのチャンバの濃縮水側では液体が互いに切り離されている。この装置は、出口導管を通じてチャンバの透過水側を流動的に連通させるマニホルドをさらに含み、出口導管は、マニホルドとチャンバの透過水側に流動的に連通しているそれぞれの真空ポートとの間に個別に延び、マニホルドは、接続部で出口導管を主脱気ラインにさらに流動的に連通させる。この装置の真空ポンプは、チャンバの透過水側を圧力設定点まで排気するように主脱気ラインに流動的に結合される。この装置は、複数の脱気モジュールの合計の平均逆流量以上であるが、圧力設定点を維持するための真空ポンプの最大容量を画定する最大容量流量を超過しない流入量で、接続部とチャンバとの間で装置内への空気流を可能にする空気通気口をさらに含む。
【0013】
別の実施例では、液体脱気システム内の液体の浸透気化を制御する方法は、複数の脱気モジュール内のチャンバの濃縮水側へ液体組成物を送達することを含み、第1のチャンバへ送達される第1の液体組成物は、第2のチャンバへ送達される第2の液体組成物とは異なる。これらのチャンバのそれぞれの透過水側に流動的に結合された真空ポンプは、複数のチャンバのうちの第1及び第2のチャンバの少なくとも1つにおいてそれぞれの膜を通じて液体蒸気浸透気化流をもたらす圧力設定点まで、チャンバの透過水側を排気するように動作される。この方法は、液体蒸気浸透気化流を抑制して、これらのチャンバのうちの別のチャンバ内への浸透気化流の浸透を防止することをさらに含む。
【0014】
一態様では、液体脱気装置は、膜を通じた浸透気化を、膜の透過水側に浸透気化制御空間を確立することによって制限するように構成される。浸透気化制御空間は、真空チャンバ内で膜と遮蔽部材との間に画定される。遮蔽部材は、比較的溶剤蒸気濃度に富んだ膜の透過水側に接触している環境を維持するように、実質上気体及び液体不透過性とすることができ、それによって膜を越えたさらなる液体の浸透気化を制限する。
【0015】
液体脱気装置はまた、真空ポンプによって生成される圧力振動を減衰させることによって、浸透気化を制限するように構成することができる。減衰は、排気ライン内で脱気チャンバと真空ポンプとの間の空気濾過を通じて実現することができる。空気濾過は、流量制限及び体積の追加の1つ又は複数を通じて実施することができ、圧力センサと制御された真空ポンプとの間に流動的に挿入されたときに特に有効であろう。
【0016】
本発明の一実施例では、液体脱気装置は、液体入口及び液体出口並びに真空ポートを有するチャンバを画定する本体を含む。チャンバ内には、チャンバを透過水側と濃縮水側に分離するように、気体透過性で液体不透過性の膜が配置され、チャンバの濃縮水側は、液体入口及び液体出口と液体で連通している。チャンバの透過水側は、真空ポートと流動的に連通している。液体脱気装置は、チャンバの透過水側に配置されて膜と真空ポートとの間に挿入された遮蔽部材をさらに含む。遮蔽部材は、膜と遮蔽部材との間に実質上閉じた浸透気化制御空間を画定する。浸透気化制御空間は、チャンバの濃縮水側の体積の約30倍以下の体積を有する。液体脱気装置はまた、真空ポートを通じてチャンバの透過水側を排気するポンプを含む。
【0017】
いくつかの実施例では、液体脱気装置は、流体経路内でチャンバとポンプとの間に流量制限器をさらに含み、この流量制限器は、真空ポンプの振動速度より大きい時間定数を有する空気圧振動緩衝器を作るのに適している。
【0018】
別の実施例では、液体脱気装置は、チャンバを通じて輸送される液体を脱気する脱気モジュールを含み、脱気モジュールは、チャンバを透過水側と濃縮水側に分離する気体透過性で液体不透過性の膜を含む。チャンバの濃縮水側は、液体のための液体入口及び液体出口と液体で連通しており、チャンバの透過水側は、脱気モジュールの真空ポートと流動的に連通している。この装置は、チャンバの透過水側を排気するように脱気ラインを通じて脱気モジュールの真空ポートに流動的に結合された真空ポンプをさらに含む。チャンバの透過水側の圧力を感知する圧力センサが含まれており、圧力センサ及び真空ポンプに通信可能に結合されたコントローラへ信号を伝送し、コントローラは、圧力センサから受け取ったチャンバの圧力を示す信号に応答して真空ポンプ動作を制御する。この装置は、脱気ライン内で真空ポンプと圧力センサとの間に流動的に挿入された空気濾過装置をさらに含み、空気濾過装置は、第1の流量制限器と、脱気ラインに対して開かれた体積を画定する体積交換チャンバとの1つ又は複数を含む。空気濾過装置は、真空ポンプによって脱気ライン内で生じる圧力振動を減衰させることが可能であり、空気濾過装置によって提供される減衰は少なくとも10%である。
【0019】
さらなる液体脱気装置は、1つ又は複数の液体組成物を脱気する複数の脱気モジュールを含み、脱気モジュールはそれぞれ、気体透過性で液体不透過性の膜によって透過水側と濃縮水側に分離されたチャンバを含む。これらのチャンバの濃縮水側では、互いに液体を切り離すことができ、マニホルドが、それぞれの個別の脱気ラインを通じてチャンバの透過水側を流動的に連通させており、脱気ラインは、マニホルドとチャンバの透過水側に流動的に連通しているそれぞれの真空ポートとの間に個別に延びる。マニホルドは、接続部で個別の脱気ラインを主脱気ラインにさらに流動的に連通させる。この装置はまた、チャンバの透過水側を排気するように主脱気ラインに流動的に結合された真空ポンプを含む。それぞれの個別の脱気ラインに沿って接続部と脱気モジュールの少なくとも1つとの間に、バッファ・チャンバを流動的に挿入することができ、バッファ・チャンバは、個別の脱気ラインに対して開かれた第1の体積を画定する。第1の体積は、吸気体積を超過する大きさであり、吸気体積は、[(P/Pset)×(100%)」×Vchと定義することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の液体脱気装置の概略図である。
図2図1の概略図の一部分の拡大図である。
図3図1及び図2の概略図の一部分の拡大図である。
図4】本発明の液体脱気装置の一部分の概略図である。
図5】本発明の液体脱気装置の一部分の概略図である。
図6】本発明の液体脱気装置の一部分の概略図である。
図7】本発明の液体脱気装置の一部分の概略図である。
図8】本発明の液体脱気装置の概略図である。
図9】本発明の液体脱気装置の概略図である。
図10】本発明の液体脱気装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記に挙げた目的及び利点について、本発明が表す他の目的、特徴、及び進歩とともに、本発明の様々な可能な形状を表すための添付の図面を参照して説明する詳細な実施例の点から次に提示する。本発明の他の実施例及び態様は、当業者には把握されるものと理解される。
【0022】
次に図面を参照し、第1に図1を参照すると、液体脱気装置8内の浸透気化制御システム10は、以下でより詳細に説明するように、最小の体積の浸透気化制御空間12を提供するように構成される。液体脱気装置8は、チャンバ16を画定する本体14を含み、チャンバ16内を浸透気化制御システム10が動作可能に延びる。本体14は、1つ又は複数の構成要素部品を備えることができ、液体入口18及び液体出口20を画定する。本体14は真空ポート22をさらに画定し、真空ポート22は、チャンバ16とポート22に結合された真空ポンプ17との間で流動的連通を確立する。
【0023】
本体14は、ポリフェニレン・スルフィド、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK:polyether ether ketone)、非多孔質金属、又は非多孔質ガラスなどの非多孔質で吸収性のない材料から製作することができる。そのような材料は、その外壁を通じた溶剤の浸透気化を阻止する。図1に示す実施例では、本体14は、透過水側30と濃縮水側32に分離された真空チャンバ16を画定し、チャンバ16の濃縮水側32は、液体入口接続部26及び液体出口接続部28で、それぞれ液体入口18及び液体出口20と液体で連通している。チャンバ16の透過水側30は、真空ポート22と流動的に連通している。図1に示す実施例では、膜24は、チャンバ16を通って液体入口接続部26から液体出口接続部28へ液体材料を輸送する管の形である。したがって、膜24の濃縮水側32は、膜24によって形成された管の内腔であり、透過水側30は、チャンバ16のうち、管状膜24の外部の空間である。
【0024】
膜24は、チャンバ16内に様々な形状で配置することができ、膜24が実質上、膜24の濃縮水側で入口接続部26からチャンバ16に入る移動相の液体部分を含有するという要件のみによって制限される。したがって、膜24は、チャンバ16を透過水側30と濃縮水側32に分離するのに適した任意の形状で構成することができ、チャンバ16の濃縮水側は、液体入口接続部26及び液体出口接続部28と液体で連通しており、チャンバ16の透過水側30は、真空ポート22と流動的に連通している。
【0025】
膜24は、液体材料の通過を実質上阻止するために、気体透過性で液体不透過性とするできることが好ましい。したがって、膜24は、商品名Teflon AF(登録商標)でE.I.du Pont de Nemours and Companyから入手可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)、伸展ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE:expanded Polytetrafluoroethylene)、及び全フッ化コポリマーなどのフロウロポリマー(flouropolymers)を含む様々な材料から製作することができる。真空脱気チャンバ内の管状膜の例示的な構造は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,248,157号に記載されている。
【0026】
膜24は液体材料の透過を実質上防止するが、溶剤蒸気は膜24の壁を通ってチャンバ16の透過水側30へ拡散しうることが理解される。上記のように、膜24を通じた溶剤蒸気の拡散は、膜24の濃縮水側と透過水側との間で溶剤蒸気の分圧が異なることによってもたらされることがある。液体脱気システムの場合、混合溶剤の移動相は、移動相内の各溶剤間で不均衡な浸透気化速度を有することがある。したがって、移動相内で一貫した正確な溶剤の配合を維持するために、膜24を越える溶剤の浸透気化を最小にすることが望ましい。
【0027】
分圧に関するヘンリーの法則は、気体透過性の膜24を通って液体の移動相内の気体種をチャンバ16の透過水側30へ移動させる動作パラメータを制御する。具体的には、膜を越えて移動させるには、透過水側30は、液体の移動相内で見られるものより低い標的気体種の相対濃度又は分圧を呈する。液体クロマトグラフィの適用分野の場合、液体の移動相内の臨界気体種濃度は、移動相でガス抜けなく持続可能な最大の標的気体種の溶質濃度である。たとえば、メタノールと水はそれぞれ、2つの溶剤の任意の混合の組合せで最高38%の空気をガス抜けなく個別に保持することができる。したがって、メタノール/水の検体から空気を抜くための透過水側30の最大圧力は、以下の関係式から計算することができる。
degas=(0.38)(周囲気圧)
【0028】
周囲気圧値は、システムによって導入される圧力の既知の減少を考慮しなければならない。たとえば、ガス抜けを防止するのに十分なほど低い気体濃度で移動相を維持するために許容可能な透過水側30の正確な最大圧力を計算するには、移動相の供給容器と移動相のポンプとの間の流量制限を、周囲気圧から差し引かなければならない。
【0029】
しかし、いくつかの適用分野では、移動相のガス抜けを防止するためだけのレベルで計算されるそのような圧力値は、移動相を十分に脱気するには不十分である。したがって、移動相の所望の脱気を実現するのに必要な透過水側30の気体圧力は、各組の動作条件に対して評価される可能性が高い。通常、脱気速度は、チャンバ16の透過水側30の標的気体の分圧が低減するにつれて増大する。そのような環境を実現するために、チャンバ16の透過水側30は、真空ポート22を真空ポンプ17に結合することによって、比較的低い全体的な絶対圧まで排気することができる。
【0030】
透過水側30の均衡点圧力は、移動相内の各溶剤成分の蒸気圧の和として計算される。ドルトンの法則の作用によって、溶剤蒸気が空隙を充填し、空隙は、対応する溶剤にそのような空隙が露出されたときにその関連する分圧が対応する溶剤蒸気圧を満足させる程度に充填される。そのような構成は浸透気化制御システム10内にあり、浸透気化制御空間12のみを、濃縮水側32に配置された溶剤成分の対応する溶剤蒸気圧まで、溶剤蒸気で充填することができる。これらの溶剤の浸透気化は、対応する蒸気圧に等しい分圧まで各溶剤蒸気が浸透気化制御空間12を充填する範囲内でのみ発生し、その時点でさらなる浸透気化は終わる。したがって、本出願人らは、チャンバ16の透過水側30に遮蔽部材36を配置し、膜24と真空ポート22との間に挿入することで、膜24と遮蔽部材36との間に画定された浸透気化制御空間12を確立することにより、チャンバ16の透過水側30の体積を最小にすることによって、濃縮水側32からの液体の移動相の浸透気化を制限できると判定した。このようにして、溶剤の浸透気化を可能な限り少なくして、上記の均衡点圧力に到達する。浸透気化制御空間12によって画定される空隙を最小にすることで、急速な圧力の安定化、低い体積要件など、様々な他の動作上の利点を提供する。
【0031】
一実施例では、遮蔽部材36は、膜24近傍に溶剤蒸気透過性障壁を確立することによって、浸透気化制御空間12を画定する。その結果、遮蔽部材36は、低い溶剤蒸気透過性を呈することができ、特に膜24の濃縮水側32の移動相から浸透気化する溶剤蒸気に対して低い透過性を呈することができる。したがって、遮蔽部材36は、膜24の溶剤蒸気透過性より小さい溶剤蒸気透過性を呈することができる。
【0032】
いくつかの実施例では、遮蔽部材36は、フッ化エチレンプロピレン(FEP:fluorinated ethylene propylene)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、Tefzel(商標)、又は他の適した材料などの1つ又は複数のポリマー材料から製作することができる。図示の実施例では、遮蔽部材36は、管状膜24を取り囲む管から形成される。遮蔽部材36は、膜24の周りで同心円状であっても同心円状でなくてもよい。遮蔽部材36は、管状膜24を取り囲んで、膜24と遮蔽部材36との間に実質上閉じた浸透気化制御空間12を画定することができる。いくつかの実施例では、遮蔽部材36は、管状膜24が入口接続部26と出口接続部28との間に延びるときに管状膜24を取り囲むことができる。したがって遮蔽部材36は、入口接続部26から出口接続部28まで連続して延びることができ、その結果、浸透気化制御空間12が入口接続部26から出口接続部28まで連続して画定される。
【0033】
しかし、遮蔽部材36は、所望の浸透気化制御空間12を確立するために、様々な形状で提供することができる。図示の実施例では、浸透気化制御空間12は、入口接続部26から出口接続部28へ連続して画定されている。しかし他の実施例では、浸透気化制御空間12は、入口接続部26と出口接続部28との間の位置など、膜24近傍の1つ又は複数の別個の位置のみで画定することができる。遮蔽部材36は、膜24と遮蔽部材36との間に浸透気化制御空間12を適当に画定するように、管状以外の形状で提供することもできる。
【0034】
1つの特定の実施例では、管状膜24は、0.02794cm(0.011インチ)の内径「X」及び0.0127cm(0.005インチ)の壁厚さを有することができる。遮蔽部材36は、管状膜24を同心円状又は他の形状で取り囲むことができ、0.0762cm(0.030インチ)の内径「X」及び0.1575cm(0.062インチ)の外径「X」を有する。したがって、そのような構成では、膜24と遮蔽部材36の内壁37との間の平均距離は、約0.01778cm(0.007インチ)である。典型的な実施例では、遮蔽壁36の内壁37は、浸透気化制御空間を画定する際に、膜24から約0.0762cm(0.03インチ)未満隔置することができる。いくつかの実施例では、浸透気化制御空間12は、膜24と遮蔽部材36との間に、チャンバ16の濃縮水側32によって画定される体積の約30倍以下の体積を有する。本出願人らは、比(浸透気化制御空間の体積:濃縮水側の体積)が約30:1未満である場合、クロマトグラフィ分析の許容可能な誤差範囲内の混合溶剤系の相対濃度範囲を可能にする程度まで、濃縮水側32の液体の浸透気化を制限できることを見出した。したがって、上記の比は、浸透気化を適当に最小化する経験的実証に関する本出願人らによる理解を表す。しかし、そのような比は、好ましくは実質上30:1未満、たとえば約10:1未満、さらに好ましくは約3:1未満とすることができることがさらに分かった。膜24を越える溶剤の浸透気化を制御し、且つ溶剤の脱気を容易にするために、所望の機能的な浸透気化制御空間を提供するには、浸透気化制御空間と膜の濃縮水側に画定される空間との相対的な体積比を、少なくとも約1:1とすることができる。浸透気化制御空間34と濃縮水側32との間の相対的な体積は、動作システム及びそれに関連する材料並びに動作条件の特定のパラメータに適するように確立することができる。
【0035】
上記の相対的な体積比は、遮蔽部材36及び/又は管状膜24が実質上管状でない構成には該当しないことがあることも理解されたい。したがって、浸透気化制御空間12は、膜24と遮蔽部材36との間の制限された空間として定義できることを理解されたい。典型的な実施例では、膜24と遮蔽部材36の内壁37との間の平均距離は、少なくとも約0.00254cm(0.001インチ)とすることができ、約0.00254cm(0.001インチ)〜約0.0762cm(0.03インチ)とすることができる。そのような範囲は、膜24を通る溶剤の浸透気化の意味のある制限と、膜24の濃縮水側32の溶剤の十分な脱気とを同時に容易にするように、本出願人らによって決定されたものである。
【0036】
膜24の濃縮水側32で液体の移動相の脱気を可能にするために、液体の移動相から気体を除去するのに十分なほど低い標的種の分圧を確立及び維持するように、チャンバ16の透過水側30を動的に制御することができる。したがって、これらの図に示す真空脱気構成では、チャンバ16の透過水側30は、真空ポート22に流動的に結合することができ、その結果、液体の移動相の脱気を実現する標的気体の分圧を確立及び維持するのに十分な程度まで、真空ポンプにより透過水側30を排気することができる。そのような流動的連通は、膜24まで延び、したがって、気体透過性の膜24を通って液体の移動相から除去された気体は、真空ポート22を通ってチャンバ16から外へ排気することができる。
【0037】
米国特許第6,248,157号に記載されているシステムなどの従来の脱気システムは、妨害されない形で真空ポート出口に接続された流体環境に対する膜の透過水側表面の直接露出を確立する(米国特許第6,248,157号の図2参照)。本明細書に記載の遮蔽部材36は、少なくとも脱気分子をチャンバ16から除去する程度に、障壁を提示する。したがって、遮蔽部材36は、実質上閉じた浸透気化制御空間12を維持しながら気体種の制限された迂回を可能にするような形状とすることができる。複数の手法を利用して、チャンバ16からの脱気分子の除去を容易にすることができる。たとえば、遮蔽部材36は、制限された気体流を可能にする1つ又は複数の開口40を備えることができる。図4の拡大図では、開口40は、遮蔽部材36の壁内に形成されたスリットとすることができる。スリット40は、遮蔽部材36を少なくとも部分的に貫通することができ、好ましくは、遮蔽部材36を通って制限された気体を逃すための経路を確立することができる。スリット40は、ドルトンの法則による溶剤蒸気の浸透気化を制限するために、浸透気化制御空間12からの脱気蒸気の流出と、実質上閉じた浸透気化制御空間12の維持との所望の均衡を提供するように、任意の所望の数、寸法、又は構成で遮蔽部材36に提供することができる。たとえば、開口40は、管状の遮蔽部材36の内腔軸に対して長手方向に実質上平行に形成されたスリットの形とすることができる。遮蔽部材36内の1つ又は複数の開口40に対するそのような構成は、遮蔽部材36の構造的強度を損なうことなく十分な脱気効率を実現することが、本出願人によって明らかになった。しかし、本出願人らは、異なる形状の組合せを含む複数の形状のいずれかで、1つ又は複数の開口を提供できることを企図する。スリットの例では、開口40は、浸透気化制御空間12から出る所望の程度の気体流を確立するように、長手方向、横方向、螺旋状、又はこれらの任意の組合せで形成することができる。したがって、開口40は、孔、バルブ、経路などの形とすることができる。図5〜7は、遮蔽部材36内の1つ又は複数の開口40に対する例示的な代替実施例を示す。
【0038】
図示の実施例のそれぞれでは、遮蔽部材36は、少なくとも浸透気化制御空間12から、遮蔽部材36によって浸透気化制御空間12から分離された透過水側30のチャンバ空間31への制限された気体流を可能にするように適合される。いくつかの実施例では、遮蔽部材36は、浸透気化制御空間12とチャンバ空間31との間で気体流を可能にするように適合することができる。遮蔽部材35は、浸透気化制御空間12からチャンバ空間31へ制限された気体の通過を実現するように、様々な形状とすることができることが企図される。いくつかの実施例では、遮蔽部材36内の1つ又は複数の開口40は、浸透気化制御空間12とチャンバ空間31との間の絶対圧力差が少なくとも1ミリメートルHgであるときのみ、浸透気化制御空間34からチャンバ空間31への気体の通過を可能にする。したがって、そのような典型的な実施例では、透過水側30の標的気体の分圧を低減させることによって気体透過性の膜24を通じた濃縮水側32の液体の脱気を実現することで、膜24に対する遮蔽部材36の「密閉効果」により浸透気化制御空間12の絶対圧を増大させる。遮蔽部材36は、絶対圧力差の閾値に到達したときのみ、浸透気化制御空間12からチャンバ空間31への気体の通過を可能にするように構成することができ、浸透気化制御空間12の絶対圧は、チャンバ空間31の絶対圧より差分値の閾値だけ大きい。上記のように、そのような絶対圧力差の閾値は、少なくとも1mmHgである。
【0039】
本発明の1つの特定の実施例では、開口40は、管状の遮蔽部材36の中心内腔軸と実質上長手方向に位置合わせされた1つ又は複数のスリットを備えることができ、1つ又は複数のスリットは、約100mmHgのチャンバ空間31の絶対圧で約10〜50SCCMの空気流の制限をもたらすような幅、長さ、及び浸入深さとすることができる。そのような空気流量制限を実現するために、1つ又は複数の開口40は、遮蔽部材36の壁を部分的又は完全に貫通することができる。一実施例では、たとえば、気体通過スリット開口40は、軸方向に沿って標準的なカミソリ刃で遮蔽部材36内へ切り込むことによって、遮蔽部材36に作ることができる。
【0040】
図示の実施例では、入口接続部26と出口接続部28のそれぞれにおいて、適したフェルール27、29で管状の遮蔽部材36/膜24のアセンブリを固定することができ、フェルール27、29は、入口接続部26及び出口接続部28で遮蔽部材36をクリンプ係合するような形状である。それぞれのナット27a、29aは、フェルール27、29を押さえて本体14と遮蔽部材36との間にクリンプ係合させるように従来どおり動作する。
【0041】
真空ポート22に結合された真空ポンプの動作によって引き起こされるチャンバ16内の圧力変動による空気蒸気交換を制限するために、真空ポート22などでチャンバ16と真空ポンプとの間に流量制限器52を含むことによって、空気濾過デバイスを確立することができる。図示の実施例では、流量制限器52は、真空ポート22に配置された毛細管の形であり、毛細管は、真空ポンプの振動速度より大きい時間定数を有する空気圧振動緩衝器を作るのに適している。流量制限器52の空気圧振動の減衰は、以下の関係式によって計算することができる。
【0042】
【数1】

上式で、F=T−変動の頻度
T=(V×128×μ×L)÷(π×d×P)
V=チャンバ体積
μ=空気の動粘度
L=制限器の長さ
d=制限器の内径
P=圧力
である。
【0043】
流量制限器52は、真空ポンプの往復変位動作によって引き起こされるチャンバ16内の圧力変動を低減させるのに有効な形状とすることが好ましい。したがって、流量制限器52及びチャンバ16の時間定数は、真空ポンプ17の往復ピストンによって生じる正の変位の振動速度より大きくするべきである。特定の実施例では、流量制限器52は、流量制限器52の両端間で最高約1mmHgの絶対圧力差を可能にするような形状である。一実施例では、流量制限器52は、0.0254cm(0.01インチ)の内径及び1.27cm(0.5インチ)の長さを有する毛細管であり、チャンバ16の体積は約28cmである。しかし、流量制限器52及びチャンバ16は、本発明の空気圧振動減衰性能を満足させるように、様々な形状で提供することができる。
【0044】
流量制限器52は、チャンバ16内の圧力変動を低減させるのに有効であるが、それにもかかわらず、流量制限器52と真空ポンプ17との間の圧力センサ70上でそのような圧力変動が生じることがある。センサ70によって検出されるそのような圧力振動により、コントローラ72に対する補正プログラムがなければ、コントローラ72は、チャンバ16内の圧力設定点を維持しようとして、変動する速度で真空ポンプ17を駆動することがある。真空ポンプ17の速度変化は、圧力センサ70によって検出される圧力振動と脱気チャンバ16内の圧力振動との両方を悪化させることがある。実際には、脱気チャンバ16内の圧力設定点を維持する閉ループ制御方式では、圧力センサ70によって検出される圧力振動により、システムは、脱気チャンバ16内の圧力振動を実際に生じさせることがあり、流量制限器52の減衰特性に打ち勝ち、それによって場合によっては望ましくない浸透気化を招く。
【0045】
脱気チャンバ16内の圧力振動と圧力センサ70の感知点68の圧力振動との両方を低減させるために、真空ポンプ17と感知位置68との間に空気濾過装置74を動作可能に位置決めすることができる。空気濾過装置74は、体積交換チャンバ76及び流量制限器78の1つ又は複数を含む。図8に示す実施例では、体積交換チャンバ76は、流量制限器78の下流に配置される。しかし、交換チャンバ76及び流量制限器78の相対的な位置を逆にすることができ、流量制限器78が交換チャンバ76の下流に位置することも企図される。この適用分野の目的で、「下流」及び「上流」という用語は、脱気チャンバ16から真空ポンプ17の排出管80への優勢な気体の流れ方向を指すものとする。したがって、ある構成要素が浸透気化制御システム内の別の構成要素又は位置から「下流」に配置されている場合、その構成要素は他方の構成要素又は位置に対して排出管80の近位に配置されている。
【0046】
体積交換チャンバ76及び流量制限器78は、空気濾過装置74の上流で圧力振動を減衰させるように、個別に又は協働して機能することができる。したがって、交換チャンバ76と流量制限器78のそれぞれの減衰の寄与は、それぞれの浸透気化制御/脱気システム内で最適に実行するように、空気濾過装置74の構造内で割り当てることができる。一態様では、たとえば、流量制限器78は、流量制限器78の両端間の圧力降下による減衰の寄与に関して制限することができる。具体的には、流量制限器78の両端間の圧力降下の大きさは、真空ポンプ17に対する所望の動作範囲内の大きさであることが好ましく、したがって真空ポンプ17は、流量制限器78によって圧力の変化が引き起こされても脱気チャンバ16内で圧力設定点を維持する能力を保持する。場合によっては、流量制限器78は、真空ポンプ17の電力消費(速度)をそれほど増大させることなく、圧力振動の減衰に寄与するように設計される。一実施例では、流量制限器78は、脱気チャンバ16を真空ポンプ17に結合する脱気ライン71の公称内径より実質上小さい内径を有する毛細管とすることができる。たとえば、流量制限器78の毛細管は、0.0254cm(0.01インチ)の内径及び5.08cm(2インチ)の長さを有することができる。しかし、様々な寸法の毛細管、並びに様々な他の形状又はデバイスを利用して、所望の流量制限を実現することができることを理解されたい。
【0047】
空気濾過装置74の体積交換チャンバ76は、センサ位置68と真空ポンプ17との間に追加の「デッド・スペース」体積を提供することができる。交換チャンバ76のそのような体積、並びに流量制限器78の流量制限は、上記の関係式にしたがって空気圧振動の減衰を提供するように、個別に又は協働して動作する。すなわち、空気濾過デバイス74によって提供される減衰を計算することができ、「V」は交換チャンバ76の体積であり、「L」及び「d」はそれぞれ流量制限器78の直径及び長さの寸法である。空気濾過装置74によって提供される圧力振動の減衰は、少なくとも10%とすることができ、いくつかの実施例では少なくとも50%とすることができる。
【0048】
交換チャンバ76は、脱気ライン71に流動的に結合された別個のチャンバ本体、又は拡大及び/若しくは延長された脱気ライン71を含めて、様々な形状のいずれかで提供することができることが企図される。上記の関係式で説明したように、真空ポンプ17によって汲み上げられる体積、及びいくつかの実施例ではセンサ位置68の下流で汲み上げられる体積が増大することで、脱気ライン71及び脱気チャンバ16内の圧力振動の減衰に寄与する。一実施例では、交換チャンバ76は、全体的な追加の体積が5〜10ミリリットルになるように、脱気ライン71の長さを延ばした形とすることができる。しかし、交換チャンバ76の他の体積及び形状が本発明によって企図される。
【0049】
いくつかの液体脱気システムは、別個の液体の移動相流を脱気するように割り当てられた複数の別個の脱気チャンバを伴う。場合によっては、そのような別個の移動相流は、同一の移動相組成物を含有することができる。しかし、他の場合、そのような移動相流は別個の移動相組成物を運ぶことができる。通常、そのような複数の脱気チャンバの真空脱気は、マニホルドを通じて脱気チャンバのそれぞれに流動的に結合された単一の真空ポンプを通じて行われる。真空ポンプの往復特性によって引き起こされる圧力振動により、1つのチャンバからの浸透気化した溶剤が、マニホルドを通って異なる真空チャンバ内へ逆行して伝達される可能性があることが分かった。具体的には、真空ポンプ・サイクルの吸気以外の部分でマニホルド内の圧力が増大することで、空気及び浸透気化した溶剤がマニホルドから脱気チャンバ内へ「逆」の進路をとる可能性がある。
【0050】
脱気チャンバ内への浸透気化した溶剤のそのような「交差汚染」を制限又は防止するために、マニホルドとそれぞれの脱気チャンバとの間に第1の体積バッファ・チャンバを配置することができる。本発明の例示的な実施例を図9に示し、図9では、浸透気化制御システム110は複数の液体脱気装置108a〜108dを含み、液体脱気装置108a〜108dはそれぞれ、浸透気化制御システム8を参照して上述したものに類似の脱気チャンバ116a〜116d及び流量制限器152a〜152dを含む。しかし、脱気装置108a〜108dは、互いに又は脱気装置8に同一又はさらに類似である必要はないことを理解されたい。浸透気化制御システム110は、個別の脱気ライン171a〜171dを主脱気ライン171に流動的に結合するマニホルド186をさらに含む。マニホルド186は、真空ポンプ117に結合する単一の脱気ライン171内へそれぞれの脱気ライン171a〜171dを結合するのに適した任意の形状を含むことができる。一実施例では、マニホルド186は、マニホルド186へのそれぞれの脱気装置接続部104a〜104dと、マニホルド186を脱気ライン171に流動的に結合する接続部105とを確立する配管及び接続接合部の組合せを含むことができる。いくつかの実施例では、浸透気化制御システム110は、センサ位置168で圧力を検出する圧力センサ170と、圧力センサ170によって生成される信号に基づいて真空ポンプ117を制御するコントローラ172と、体積交換チャンバ176及び流量制限器178を含む空気濾過デバイス174とを含む。
【0051】
上記のように、浸透気化制御システム110は、それぞれ脱気チャンバ116a〜116dと真空ポンプ117との間に流動的に結合された第1の体積バッファ・チャンバ190a〜190dを含むことができる。図示の実施例では、第1の体積バッファ・チャンバ190a〜190dは、それぞれの流量制限器152a〜152dとマニホルド接続部104a〜104dとの間で、それぞれの個別の脱気ライン171a〜171dに流動的に結合することができる。しかし、浸透気化制御システム110は、脱気チャンバ116a〜116dの1つ又は複数への浸透気化した溶剤の交差汚染を適当に阻止するために、様々な形状及び構成のいずれかで1つ又は複数の体積バッファ・チャンバを組み込むことができることを理解されたい。したがって、第1の体積バッファ・チャンバ190a〜190dの図示の実施例は単なる例示であり、具体的には別法として、流量制限器152〜152dの上流又はマニホルド接続部104a〜104dの下流にそれぞれ配置された1つ又は複数のバッファ・チャンバを含むことができる。
【0052】
上記の浸透気化した溶剤の交差汚染を実質上阻止するために、第1の体積バッファ・チャンバ190a〜190dは、真空ポンプ117の吸気/排気の行程サイクルによって引き起こされる圧力振動をそれぞれの脱気ライン171a〜171dで減らすのに適した寸法及び形状とすることができる。特定の実施例では、第1のバッファ・チャンバ190a〜190dの体積は、圧力振動によって生じるそれぞれの脱気チャンバ116a〜116dへの理論上の吸気体積を超過するように選択することができる。以下の関係式を使用して、各脱気チャンバ116a〜116dへの理論上の吸気体積を計算する。
=(P/Pset)・Vch
上式で、
=吸気体積
=ポンプ圧力振動
set=それぞれのチャンバ内の圧力設定点
ch=それぞれの脱気チャンバ体積
である。
【0053】
したがって、一実施例では、第1の体積バッファ・チャンバ190a〜190dはそれぞれ、それぞれの吸気体積(V)を超過する体積を有する形状とすることができる。しかし、第1の体積バッファ・チャンバ190a〜190dに対する体積は等しくても等しくなくてもよく、そのような第1の体積バッファ・チャンバ190a〜190dの1つ又は複数は、関連する脱気チャンバ116a〜116dの吸気体積を超過しないこともあることを理解されたい。特定の実施例では、バッファ・チャンバ190a〜190dは、それぞれの脱気ライン171a〜171d内の追加の「デッド・スペース」体積として提供することができ、それぞれの脱気ライン171a〜171dに流動的に結合された別個のチャンバ本体、又は拡大及び/若しくは延長された脱気ライン171a〜171dを含めて、様々な形状のいずれかで提供することができる。一実施例では、第1のバッファ・チャンバの体積は、全体的な追加の体積が0.2〜1mlになるように、それぞれの脱気ラインの長さを延ばした形とすることができる。
【0054】
脱気チャンバ内への浸透気化した溶剤の「交差汚染」を制限又は防止する別の実施例を図10に示し、図10では、浸透気化制御システム210は複数の液体脱気装置208a〜208dを含み、液体脱気装置208a〜208dはそれぞれ、浸透気化制御システム8、110を参照して上述したものに類似の脱気チャンバ216a〜216d及び流量制限器252a〜252dを含む。脱気装置208a〜208dは、互いに又は脱気装置8、110に同一又はさらに類似である必要はないことを理解されたい。たとえば、脱気装置210は、図10に示す構成要素の1つ又は複数を含んでも含まなくてもよい。しかし、図示の実施例では、浸透気化制御システム210は、個別の脱気ライン又は出口導管271a〜271dを主脱気ライン271に流動的に結合するマニホルド286を含む。マニホルド286は、真空ポンプ217に結合する単一の脱気ライン271内へそれぞれの脱気ライン271a〜271dを結合するのに適した任意の形状を含むことができる。一実施例では、マニホルド286は、マニホルド286へのそれぞれの脱気装置接続部204a〜204dと、マニホルド286を脱気ライン271に流動的に結合する接続部205とを確立する配管及び接続接合部の組合せを含むことができる。いくつかの実施例では、浸透気化制御システム210は、センサ位置268で圧力を検出する圧力センサ270と、圧力センサ270によって生成される信号に基づいて真空ポンプ217を制御するコントローラ272と、体積交換チャンバ276及び流量制限器278を含む空気濾過デバイス274とを含む。
【0055】
浸透気化制御システム210は、それぞれの脱気チャンバ216A〜216Dと真空ポンプ217との間に流動的に結合された第1の体積バッファ・チャンバ290a〜290dを含むことができる。第1の体積バッファ・チャンバ290a〜290dは実質上、浸透気化制御システム110に関して上述したとおりとすることができる。
【0056】
浸透気化制御システム210は、それぞれのチャンバ216a〜216dと真空ポンプ217との間に流動的に結合された第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dをさらに含むことができる。図示の実施例では、第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dは、それぞれの第1の体積バッファ・チャンバ290a〜290dとマニホルド接続部204a〜204dとの間で個別の脱気ライン271a〜271dに流動的に結合することができる。しかし、浸透気化制御システム210は、脱気チャンバ216a〜216dの1つ又は複数への浸透気化した溶剤の交差汚染を適当に阻止するために、様々な構成及び形状のいずれかで1つ又は複数の第2の体積バッファ・チャンバを組み込むことができることを理解されたい。したがって、第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dの図示の実施例は単なる例示であり、具体的には別法として、マニホルド接続部204a〜204dの下流に配置された体積バッファ・チャンバを含むことができ、且つ/若しくは第1の体積バッファ・チャンバ290a〜290dを含まなくてもよく、並びに/又は浸透気化制御システム210の他の構成要素に対する第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dの他の構成及び相対的な位置を含むことができる。
【0057】
上記の実施例では浸透気化溶剤の交差汚染の相当な低減が実現されるが、それにもかかわらず、真空ポンプ217のポンピング・サイクルのうち、脱気ライン271、271a〜271d及びマニホルド286の気体が真空ポンプ217内へ能動的に引き込まれない期間中、浸透気化した溶剤の「逆流」の拡散が生じる可能性がある。そのような「非吸引」期間は、ポンピング・サイクルの排出区間、並びにポンピング・サイクルの吸気区間のうち、脱気ライン271内の圧力より低い真空ポンプ217内の圧力を生じさせる(その時点で真空ポンプ217内への吸引を行うことができる)前の部分によって定義することができる。真空ポンプ217の「非吸引」期間中、脱気チャンバ216a〜216d内では脱気及び溶剤の浸透気化が継続される。それぞれの脱気チャンバ216a〜216dにおいて脱気及び/又は浸透気化が異なる速度で生じた場合、局所的に高い相対的な圧力が生成され、マニホルド286を通じて、比較的低い脱気及び/又は浸透気化速度を有する他の脱気ライン271a〜271dへ「瞬時逆流」を引き起こし、その結果、比較的低い圧力をもたらす。場合によっては、そのような瞬時逆流は、浸透気化した溶剤を含む可能性があり、浸透気化した溶剤は、最終的に他の脱気チャンバ216a〜216d内へ拡散して交差汚染する可能性がある。
【0058】
その目的で、「合計の瞬時逆流体積」という用語は、以下を意味するものとする。
=Poff
上式で、
=合計の瞬時逆流体積
P=最大浸透気化流量(cm/分)
off=各ポンプ・サイクルのうち、吸引が適用されない時間部分
である。
【0059】
この適用分野の目的で、「最大浸透気化流量」という用語は、複数の脱気チャンバ216a〜216dのいずれか1つからの単一の最も大きい浸透気化流量を意味する。
【0060】
浸透気化した溶剤の交差汚染を解消するための1つの提案は、個別の各脱気ライン271a〜271d内にチェック・バルブを位置決めすることである。しかし、この解決策は、脱気チャンバ216a〜216d内で浸透気化する溶剤蒸気に適合している材料からなるチェック・バルブの利用可能性に制限される。多くの浸透気化した溶剤は、一般的なチェック・バルブ材料にとって有害であり、したがって、チェック・バルブを用いることで適用可能性が制限される。さらに、圧力及び逆流によりチェック・バルブに亀裂が入ることで、交差汚染の低減効率に影響を与えることがある。
【0061】
瞬時逆流による溶剤の交差汚染を減少又は解消する別の手法は、マニホルド286内の空気通気口296を通じて入口空気流を導入することである。入口空気流は、マニホルド286内の全圧と大気圧などの外部環境との間の差圧によって動かされる。空気通気口296は、たとえば毛細管、焼結フリット、オリフィス、又は制限された流量でマニホルド286内への空気流を可能にする他の構造の形をとることができる。通気口296を通る排出空気流は、上記の瞬時逆流による浸透気化の交差汚染の駆動力である脱気ライン271a〜271d間の圧力差を軽減する。個別の脱気ライン271a〜271d間の圧力差を実質上軽減するために、空気通気口296を通る空気流量(R)は、次のように、脱気チャンバ216a〜216dの合計の平均逆流量を超過することができる。
=P(N−1)
上式で、
=合計の平均逆流量(cm/分)
P=最大浸透気化流量(cm/分)
N=脱気チャンバの数
である。
【0062】
浸透気化制御システム内で複数のチャンバが用いられるとき、比較的大きい空気通気口流量が必要とされ、これはシステムの脱気効率を制限する可能性もある。さらに、浸透気化制御システム内へ通されたあらゆる空気流は、通過する液体組成物を脱気するのに有効な脱気チャンバ216a〜216d内の選択された圧力設定点を維持するため、真空ポンプ217の最大容量として定義される最大容量流量を超過してはならない。言い換えれば、「最大容量流量」は、真空ポンプ217がそれにもかかわらず脱気チャンバ216a〜216dの透過水側で選択された圧力設定点を維持できる最大空気入口流量である。
【0063】
代替手法は、図10に示すように、個別の出口導管271a〜271dのそれぞれにおいて空気通気口296a〜296dを含むことができる。個別の空気通気口296a〜296dは、外部環境からそれぞれの接続部297a〜297dなどで、個別の出口導管271a〜271d内への空気流を可能にすることができる。空気通気口296の場合と同様に、個別の空気通気口296a〜296dは、毛細管、多孔質フリットなどを含む様々なオリフィスを通じて、個別の出口導管271a〜271dへの空気の流入を可能にすることができる。個別の空気通気口296a〜296dを通る空気の流量はそれぞれ、次のように、任意の脱気チャンバ216a〜216dからの最大浸透気化流量を超過することができる。
【0064】
【数2】

上式で、
=個別の空気通気口流量(cm/分)
である。
【0065】
この構成の全体的な空気通気口の流れは、主空気通気口296を通る空気通気口流に同等となるように設計されるが、個別の空気通気口296a〜296d間で分割される。したがって、この場合も、脱気チャンバ216a〜216d間で浸透気化した溶剤の交差汚染を減少又は解消するために、この解決策では比較的大きい抽気流量が必要とされる。
【0066】
又はRが、真空ポンプの最大容量流量を超過する場合、又は単に大きいことが望ましい場合、脱気チャンバ216a〜216d内への浸透気化した溶剤の交差汚染を相当減少又は解消するために必要な空気通気口流量を低減させるために、図10に示す個別の出口導管271a〜271d内に、第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dを位置決めすることができる。図示の実施例では、第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dは、空気通気口296a〜296dの下流に配置されているが、浸透気化制御システム210内では第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dに対する様々な形状及び相対的な位置を用いることができることが企図される。第2のバッファ・チャンバ292a〜292dの体積は、浸透気化流量が異なる結果、それぞれの脱気チャンバ216a〜216dへの個別の瞬時逆流体積を超過するように構成することができる。以下の関係式を使用して、各脱気チャンバ216a〜216dへの個別の瞬時逆流体積を計算する。選択された個別の空気通気口流量(R)は、任意の脱気チャンバからの最大浸透気化流量より小さい。
【0067】
【数3】

上式で、
=個別の瞬時逆流体積
off=各ポンプ・サイクルのうち、吸引が適用されない時間部分
【数4】

である。
【0068】
選択された個別の流量(R)が上記で計算した個別の空気流量(R−1)に接近し、又はこれを超過するとき、第2のバッファ・チャンバ292a〜292dの必要な体積はゼロに到達し、理論的には負になる。そのようなゼロの体積の第2のバッファ・チャンバ292a〜292dは、空気通気口流量R、Rが最大浸透気化流量を超過した場合に達成され、真空脱気システムの有効性を劣化させることなく達成することができる。
【0069】
システム210などの浸透気化制御システムに対する典型的な構成では、真空ポンプ217の上部空間内の圧力が脱気ライン271内の圧力より小さくなるまで、ポンプ・サイクルの吸気区間では脱気ライン271上で吸引を実行しないため、真空ポンプ217のToffはポンプ・サイクル時間の2分の1より大きい。場合によっては、Toffは、真空ポンプ217に対する全サイクル時間の80〜90%とすることができる。
【0070】
したがって、第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dはそれぞれ、それぞれの個別の瞬時逆流体積(V)を超過する体積を有する形状とすることができる。しかし、第2の体積バッファ・チャンバ(292a〜292b)に対する体積は等しくても等しくなくてもよく、そのような第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dの1つ又は複数は、関連する出口導管271a〜271dの瞬時逆流体積を超過しないこともあることを理解されたい。第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292bは、それぞれの出口導管271a〜271d内の追加の「デッド・スペース」体積として提供することができ、それぞれの出口導管271a〜271dに流動的に結合された別個のチャンバ本体、又は拡大及び/若しくは延長された出口導管271a〜271dを含めて、様々な形状のいずれかで提供することができる。
【0071】
第2の体積バッファ・チャンバ292a〜292dを組み込むことで、必要な空気通気口流量Rは、空気通気口流量Rより実質上小さくなるように低減させることができ、その結果、真空ポンプは、脱気性能を損なうことなく抽気流を収容することが可能になる。以下の関係式は、選択された第2の体積バッファ・チャンバの体積(V)が個別の瞬時逆流体積(V)を超過する場合に必要な空気通気口流量を明らかにする。
【0072】
【数5】

上式で、
≧V
R=浸透気化した溶剤の交差汚染を実質上低減又は解消するために必要な空気通気口流量
である。
【0073】
上記の関係式に記述した体積及び流量は、浸透気化した溶剤の「スラグ」流方式を想定しており、逆流の拡散及び流れの混合現象を考慮しない。したがって、逆流の拡散及び流れの混合による浸透気化の交差汚染がすべて最小化又は防止されるという信頼レベルを高めるために、計算された体積/流れを2〜5倍増大させることが適当であろう。
【実施例】
【0074】
浸透気化制御システムは、第1及び第2の脱気チャンバを含み、第1及び第2の脱気チャンバはそれぞれ、11cmの体積を有し、配管の形の膜の全長は約65cmである。システム内の圧力は50mmHgに設定される。第1のチャンバは、水性溶剤の移動相で動作し、第2のチャンバは、低流量条件でアセトニトリル(ACN:acetonitrile)溶剤の移動相で動作する。そのような条件下では、アセトニトリル(ACN)は、約30マイクロリットル/時の透過性を有し、第1のチャンバ内の水性溶剤はほぼゼロの透過性を有する。第2のチャンバ内のアセトニトリル(ACN)の透過性は、約0.2SCCM(又は50mmHgで約3CCM)をもたらす。
【0075】
真空ポンプは15RPMで動作し、Toffがサイクル時間の90%であり、その結果、Toffは1サイクル当たり約3.6秒である。したがって、真空ポンプ・サイクルの非吸引部分(約3.6秒)中、約0.18ccのアセトニトリル(ACN)蒸気が第2の脱気チャンバからシステム内へ浸透気化され、その結果、システムのチャンバ当たりのアセトニトリル(ACN)蒸気は約0.09ccになる。第1の脱気チャンバ内への交差汚染を防止するために、第1の脱気チャンバを交差汚染するのに利用可能な個別の瞬時逆流体積(0.09cc)以上の第2の体積バッファ・チャンバが提供される。したがって、第2の体積バッファ・チャンバは、0.2〜0.5ccの体積を呈する。
【0076】
第1の脱気チャンバ内への浸透気化したアセトニトリル(ACN)蒸気のあらゆる交差汚染をさらに低減又は解消するために、各脱気ラインに空気通気口が追加され、それによって第2の体積バッファ・チャンバを連続して空気でパージすることができる。空気通気口を通じて流れる空気流は、システムの圧力設定点を維持するために真空ポンプの最大能力より小さく、チャンバごとのアセトニトリル(ACN)蒸気流量(0.1SCCM又は50mmHgで1.5CCM)に等しく、又はこれよりわずかに大きくすることができる。この実例で用いられる空気通気口は、それぞれの脱気ライン内のオリフィスに結合された毛細管を構成し、これらの毛細管は、0.0254cm(0.01インチ)の内径及び1.27cm(0.5インチ)の長さを有する。そのような空気通気口の結果、その中を通る空気流は約0.1〜0.3SCCMになる。
【0077】
本発明について、特許法令に準拠するため、また新規な原理を適用し、必要に応じて本発明の実施例を構築及び使用するのに必要な情報を当業者に提供するため、本明細書ではかなり詳細に説明した。しかし、本発明は特に異なるデバイスによって得られること、及び本発明自体の範囲から逸脱することなく様々な修正形態を実現できることを理解されたい。
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図1
図8
図9
図10