(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795149
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】等速自在継手ハウジング
(51)【国際特許分類】
F16D 3/20 20060101AFI20150928BHJP
F16D 3/22 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
F16D3/20 K
F16D3/22
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-67946(P2010-67946)
(22)【出願日】2010年3月24日
(65)【公開番号】特開2010-230167(P2010-230167A)
(43)【公開日】2010年10月14日
【審査請求日】2013年1月17日
(31)【優先権主張番号】09425117.0
(32)【優先日】2009年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508282993
【氏名又は名称】アクティエボラゲット・エスコーエッフ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】コスタ・ステファノ
【審査官】
久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−133855(JP,A)
【文献】
特表2000−509799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/20
F16D 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速自在継手(100)のハウジング(50)であって、前記ハウジング(50)は、回転軸(X)を有し、かつ前記回転軸(X)に沿って直列に互いに一体化したカップ(51A)およびシャンク(51B)を備え、かつ肩部(60)は前記カップ(51A)および前記シャンク(51B)の間に配置され、
前記ハウジング(50)は、前記肩部(60)に形成され、かつ前記カップ(51A)に面する側に配置されたくぼみ(61)を備え、
前記肩部(60)は、前記軸(X)に交差し、かつ前記シャンク(51B)に接続する側面である第1面(60A)と、前記第1面(60A)に接続し、かつ前記シャンク(51B)の円柱外表面(51S)の直径(DGO)より大きい外径(DER)を有する円柱面である第2面(60S)とによって囲まれ、
前記ハウジングは、
i)前記カップ(51A)は、前記シャンク(51B)の反対側において、円柱面(52)によって外部が囲まれ、
ii)前記くぼみ(61)は、前記肩部(60)の前記第2面(60S)および前記カップ(51A)の前記円柱面(52)の間で前記カップ(51A)の外面形状を形成し、
iii)それにより静的および動的応力に対する前記ハウジングの機械的な抵抗を増加させて、前記継手(100)の構造抵抗を増加させる
ことにより特徴付けられ、
前記肩部(60)が、前記くぼみ(61)の底部(F)において内径(DIR)を有し、前記内径(DIR)と、前記シャンク(51B)の前記円柱外表面(51S)の直径(DGO)および前記肩部の前記第2面(60S)の外径(DER)の和との比率が0.4以上かつ0.7以下であることを特徴とするハウジング(50)。
【請求項2】
前記くぼみ(61)は、前記第2面(60S)の全周に亘って形成され、かつ前記軸(x)を含む平面内において二つの湾曲外形(61A、61B)に囲まれており、第1外形(61A)は、所定の軸方向の厚さ(SPE)のフランジまで前記肩部(60)を減らし、かつ第2外形(61B)の一側は、前記くぼみ(61)の底部(F)にて前記第1外形(61A)と一体化するとともに、他側は、前記カップ(51A)の前記円柱面(52)に接続するように円錐台の形に広がっていることを特徴とする、請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
前記第1面(60A)は、前記くぼみ(61)の前記底部(F)から軸方向に所定の第一距離(XDI)に配置され、かつ前記肩部(60)の第2面(60S)を前記くぼみ(61)の前記第1外形(61A)の上に軸方向に投影させたことによって得られる円(P)から軸方向に所定の第二距離(XDE)に配置され、前記第一距離(XDI)および前記第二距離(XDE)の寸法間の比率は、1.6〜2.5の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のハウジング。
【請求項4】
前記シャンク(51B)の前記外表面(51S)の前記直径(DGO)寸法と、前記カップ(51A)の内側球面(51C)の内半径(RGA)の2倍の寸法との比率が0.30〜0.65の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のハウジング。
【請求項5】
少なくとも請求項1〜4のいずれか一項に記載のハウジング(50)を備えることを特徴とする等速自在継手(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手ハウジングに関連する。
【背景技術】
【0002】
等速自在継手は、軸によって形成される角度に関わらず二つの軸の間の一定の単位速度比を維持しながら、二つの(駆動および被駆動)軸の間の回転を伝達するための関節式リンク機構であって、
−二つの軸の一方に接続され、かついくつかの放射状外向きに開いたトラックを有する芯
−トラック内部に部分的に収容された一組のボール
−芯の周囲のボール保持器、および
−二つの軸の他方に接続され、かつ芯、保持器、およびボールを収容するハウジング
を備える。
【0003】
保持器は、
−ボールを収容するために内側にトラックを有するカップ
−カップに一体化した雄シャンク、および
−ハウジングおよびシャンクの間の肩部
を備える。
【0004】
上記のタイプのハウジングにおいて、カップは肩部に向かって次第に細くなり、より大きい外径部分は、例えば機械加工の心出しに使用される円柱の外表面より外側が囲まれている。肩部は実質的にカップの円柱外表面に調和した円柱面によって外側が囲まれているが、シャンクの円柱の外表面を有するハウジング部分に急な変化を形成する。
【0005】
例えば前輪駆動車において方向車輪ハブをディファレンシャルに接続するために使用される継手の実際の使用においては、故障および損傷の影響を最も受ける部分はハウジングであることが分かっており、正確にはシャンクおよび肩部の間の部分の急な変形により応力を肩部に集中させる結果になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このような故障を減らすよう設計された等速自在継手ハウジングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、請求項1に主張されるような等速自在継手ハウジングが提供される。
【0008】
本発明の限定されない実施形態が、添付図面を参照して一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による等速自在継手ハウジングの好ましい実施形態の斜視図を示す。
【
図2】明確化のために部品が取り除かれた
図1のハウジングの軸方向断面拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1の符号100は、等速自在継手全体を示す。
【0011】
継手100は、回転中心(Z)(
図2)の周りに互いに交差しかつ回転する駆動軸および非駆動軸(入力軸(Y)および出力軸(X)によってそれぞれ図式的に示される)の間の回転を伝達するための関節式リンク機構である。
【0012】
以下の説明において、継手100が軸(X)から軸(Y)へ等しく運動を伝達するため、上記の運動伝達に対して単なる一例として特定の引例が用いられる。
【0013】
継手100は、
−駆動軸に角度を持って接続され、かつ軸(Y)から離れたいくつかの周辺トラック31Cを有する芯30、
−31Cの内部に部分的に収容された一組のボール20、および
−ボール20を保持し、かつ芯30の半径方向外側に配置された保持器40、
を備える。
【0014】
芯30は、駆動軸を収容し、かつ接続するための軸(Y)に平行ないくつかの縦方向の溝31Aを有する中央貫通孔31を有し、ならびに外表面31Bによって半径方向外側が囲まれ、その中に部分的にボール20を収容するトラック31Cが形成されている。
【0015】
保持器40は、トラック31Cに等しい数の開口部41を有し、開口部は軸(X)および軸(Y)によって形成された角度を二分しかつ軸(X)および軸(Y)を含む平面に垂直な平面(図示せず)に沿った位置に、トラック31Cと共にボール20を保持する。
【0016】
また継手100は、非駆動軸と一体の角度のある接続のために軸(X)に沿って延在するハウジング50を備え、ハウジングは中心(Z)を中心とする半径RGAの内側球面51Cを有するカップ51Aと、軸(X)に沿って面51Cの反対側にカップ51Aに位置合わせされ、かつ非駆動軸とのインターフェースを形成するためカップ51Aに一体の雄シャンク51Bとを備える。
【0017】
カップ51Aは、面51Cの内側に芯30および保持器40の両方を収容し、かつ面51Cの内側には、半径RGAのいくつかの球面52と、ボール20を収容するためにトラック31Cに対応し、かつ面52と交互にあるいくつかのトラック53とを備える。
【0018】
図2に示すように、またハウジング50は、カップ51Aおよびシャンク51Bの間に配置され、かつ二つの面60Aおよび60Sによって囲まれた肩部60を備える。面60Aは、軸(X)に交差し、かつシャンク51Bに面する側面であり、面60Sは、面60Aに接続され、かつシャンク51Bの円柱外表面51Sの直径DGOより大きい外径DERを有する円柱面である。
【0019】
図2のダッシュラインによって示されるように、既知の技術において、肩部60の面60Sは、シャンク51Bの反対側にてカップ51Aの外部を囲む円柱面52に実質的に調和している。しかし述べたようにシャンク51Bおよび肩部60の間のハウジング50の大きさの急な変化は、接線応力および曲げ応力が肩部60に集中する結果となる。
【0020】
したがって、肩部60の応力を分散させ、かつ同時にシャンク51Bおよび肩部60の間、およびまた肩部60および面52の間のハウジング50の大きさの急な変化の効果を減らすために、ハウジング50にはカップ51Aに面する面の肩部60に形成されたくぼみ61が設けられる。
【0021】
くぼみ61は、静的および動的応力に対するハウジング50の機械的な抵抗、つまり継手100の構造抵抗を増加させるために、肩部60の面60Sおよびカップ51Aの面52の間のカップ51Aの外面形状を形成する。
【0022】
より具体的には、くぼみ61は面60Sを通じて形成され、かつ軸(x)を含む平面内の二つの湾曲した側面61A、61Bに囲まれている。側面61Aは、所定の軸方向の厚さSPEのフランジまで肩部60を減らし、かつ側面61Bは、くぼみ61の下部Fにて側面61Aの一側に調和し、かつ反対側にて面52に接続するような円錐台の形に実質的に広がっている。
【0023】
くぼみ61の側面61Bの上への肩部60の外面60Sの軸(X)に沿った突起は、軸(X)を中心とする円Pを形成し、面60Aからの軸の距離XDEは、肩部60の厚さSPEより大きい。
【0024】
ハウジング50の構造抵抗の向上に対して有効なくぼみ61を形成するために、ハウジング50と独立した様々な幾何学的なパラメータおよびハウジング50に従属する様々な幾何学的なパラメータの相対的な大きさを考慮する必要がある。独立パラメータは、
−面51Sの直径DGO;
−面60Sの直径DER;
−肩部60、すなわちくぼみ61によってフランジまで減少した肩部の軸方向の厚さSPE;
−いわゆるオフセットOFS、すなわち中心(Z)および肩部60の面60Sの間の軸(X)に沿った軸方向の距離;
−面51Cの半径RGA;および
−くぼみ61の下部Fの内半径RXI;
であり、従属パラメータは、
−くぼみ61の下部Fの内直径DIR;
−くぼみ61の下部Fおよび面60Aの間の軸方向の距離XDI;および
−上記のように得られた円Pの軸方向の距離XDE
【0025】
ハウジング50の抵抗を増加させるために、上記の独立および従属パラメータの間に所定の寸法比が要求される。すなわち:
−直径に関しては:
(1)0.4≦(DIR)/((DER)+(DGO))≦0.7
−くぼみ61の側面を特徴付ける主要な点の軸方向の位置に関しては、:
(2)1.6≦(XDE)/(XDI)≦2.5
−カップ51Aの内側凹面51Cの形成を許容するハウジング50の大きさに関しては
(3)17≦(OFS)−0.707(RGA)≦25
【0026】
上記寸法比の全ては、等速自在継手においてシャンク51Bの直径(DGO)および(2*(RGA))の間の0.30〜0.65の比を保証する。
【0027】
また二つの独立パラメータの間の重みつきの差の上述の比率に関し、また上記寸法関係は、大きさおよび重量を減らし、同様に前記ピーク応力を最小化する目的で、継手100内の均衡の取れた構造抵抗の達成を提供し、したがって”疲労”状態および一定応力条件の等速自在継手100の使用寿命を延ばす。
【符号の説明】
【0028】
20 ボール
30 芯
31 中央貫通孔
31A 溝
31C トラック
40 保持器
50 ハウジング
51A カップ
51B 雄シャンク
51C 内球面
51S 円柱外表面
52 球面
53 トラック
60 肩部
60A 面
60S 面
61 くぼみ
61A 側面
61B 側面
100 継手