【実施例】
【0129】
実施例1−T細胞の増殖に関するBT061の免疫調節能の研究
方法
新鮮末梢血を用いて全血培養を実施した。簡潔に述べると19Gの針を用いて3人の健常ボランティアからヘパリン処理したシリンジに血液を採取した。血液提供後60分以内に前記血液を96ウェル培養プレートに播種した。
【0130】
本発明で用いられる抗体(BT061、ロット番号40588、或いはロット番号70A0013B)を培養物に添加し、次いで5種の異なる濃度の白血球(以下の「試験物質」参照)を刺激した。37℃、5% CO
2、加湿雰囲気にて90分間細胞を抗体と相互作用させ、次いで下記a〜dの4種の異なる刺激物質を別々の培養物に添加した。
(a)抗CD3抗体(R&D Systems;50ng/mL);
(b)植物性血球凝集素(PHA、Biochrom KG;3pa/mL)及び抗CD28抗体(Becton−Dickinson;1μg/mL);
(c)リポ多糖類(LPS、Sigma Aldrich製サブタイプ055:B15;1μg/mL);
(d)SE−B(Bernhard−Nocht−Institut;25ng/mL)及び抗CD28抗体(Becton−Dickinson;1μg/mL)
【0131】
37℃、5% CO
2(加湿雰囲気)にて24時間全ての全血培養物をインキュベートした。次いでサイトカインのエンドポイントを決定するためにPHA/抗CD28抗体刺激培養物を除く培養上清を回収した。PHA/抗CD28抗体刺激培養物は、Th2細胞を十分に刺激するために48時間インキュベートした。
【0132】
結果を
図1に記載する。
【0133】
結果
BT061は、健常ボランティア由来の全血培養物において単球/マクロファージの主な活性、Th1活性、及びTh2活性に対して有意な効果を示さなかった。Treg細胞に対する濃度依存性効果が見られた(TGF−β放出の増加として示された)。
【0134】
特に、前記結果から以下のことが確認される:
・患者における最高150mgの高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度において炎症性サイトカインIL−2は調節されない、
・患者における最高150mgの高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度において炎症性サイトカインIFN−γは誘導されない、
・患者における高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度においてTh1/Th2サイトカインは調節されない、
・辺縁増殖(marginal increment)によりIL−6の非常に散発性であるアップレギュレーションのみが生じ、この意味については議論の余地がある、
・TGF−β放出が増加する(Treg細胞)、
・単球/マクロファージの主な調節活性、Th1活性、及びTh2活性に対して有意な効果は見られない。
【0135】
実施例2−抗破傷風類毒素応答及びサイトカインアッセイのために予備刺激された培養ヒトPBMCに対するBT061の影響試験
方法
増殖アッセイ
96ウェル平底マイクロタイタープレート内にて200μL/ウェル(4×10
5細胞/ウェル)の体積の新たに単離したPBMCを培養した。試験品(抗CD4 AK BT061)は、20μg/mL、4μg/mL、及び0.8μg/mL(予備試験では更に40μg/mLも)の濃度で用いた。破傷風類毒素は、25μg/mL、5μg/mL、及び1μg/mLの濃度で用いた。陰性対照として細胞培養培地を用いた。全ての培養物を3連で用意した。
【0136】
Con−A刺激には、2.5μg/mLの濃度及び200μL/ウェルの体積を用いた。PBMCの密度を1×10
6/mLに調整し、1ウェル当たり100μLの体積に分布させた。
【0137】
培養期間の終わりに、0.4μCiの
3H−チミジン/ウェルを添加することにより16時間の細胞増殖を検出した。培養期間の終わりに、EDTA溶液を用いて表面から細胞を剥離させ、scatron細胞回収器を用いてグラスファイバーフィルタで細胞を回収した。各ウェル内のDNAに取り込まれた放射能の量をシンチレーションカウンタで測定したところ、それは増殖細胞の数と比例しており、また該増殖細胞数は刺激を受けて細胞周期のS期に入った白血球の数の関数であった。読み出し(readout)パラメータはカウント毎分(cpm)、及びcpm
化合物/cpm
ブランクと定義される各濃度についての刺激指数(SI)であった。
【0138】
サイトカインアッセイ
市販のELISAキットを用い、各メーカの取扱説明書に従って培養上清中の全サイトカインを定量した。用いた試薬を以下の表1に記載する。
【表4】
【0139】
ヒトIL−1 ELISAセットA(Bender)試験キットを用いてメーカの取扱説明書に従って培養上清中のインターロイキン(IL)−1濃度を測定した。キットと共に供給される標準物質により予め定められる試験の範囲は、未希釈サンプルでは1.3pg/mL〜130pg/mLと指定された。
【0140】
OptEIA(BD biosciences)試験キットを用いてメーカの取扱説明書に従って培養上清中のIL−4、IL−5、IL−6、及びIL−10濃度、並びにトランスフォーミング増殖因子(TGF)β1、及び腫瘍壊死因子(TNF)αを測定した。キットと共に供給される標準物質により予め定められる試験の範囲は、未希釈サンプルを測定したとき3.8pg/mL〜330pg/mL(IFN−γ)、6.3pg/mL〜616pg/mL(IL−4、IL−5、IL−10、及びTNF)と指定され、2倍希釈したサンプルを用いたとき7.6pg/mL〜660pg/mL(IL−6)と指定された。
【0141】
各独立した微小培養物に由来するELISAにより決定された2種(単球培養物)或いは8種(PBMC培養物)のサイトカインの測定値は平均及び標準偏差の計算に含まれていた。試験の上限(例えばTNFの場合616pg/mL)を超える力価をこの計算用の値に設定した。計算前に各平均値から試験の下限を減じた。
【0142】
結果
BT061(ヒト化B−F5或いは単にhB−F5とも呼ばれる)は、破傷風類毒素特異的T細胞増殖を用量依存的に抑制することができ、T細胞の総数に対する影響は見られなかった。サイトカイン放出の全身性抑制が見られた。
【0143】
以下の表2は、破傷風類毒素特異的T細胞増殖アッセイにおける抗CD4mAb BT061の影響を示し、3連で測定した。
【0144】
3連で測定した
3H−Tdrの取り込みの平均及びSD、各濃度における刺激指数(SI、cpm
化合物/cpm
nilと定義される)、培地対照に対する独立両側t検定における有意性のレベル(n.s.:有意差無し、
*:p<0.05、
**:p<0.01、
***:p<0.001)を示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【0145】
表2〜4のデータは以下のことを示す:
・破傷風類毒素誘導性T細胞増殖の用量依存的抑制(再現反応)が高用量BT061でさえも見られ、これは、BT061が全ての免疫反応を抑制する訳ではないことを示す。用いられた用量は、患者において最高60mgの高用量適用に相当する、
・Th1/Th2バランスに影響を及ぼすことなしに、サイトカイン放出が全身で抑制される(IFN−γ、IL−5、及びTNF−αの用量依存的減少、IL−1、IL−4、IL−6、IL−10には変化無し)、
・TGF−β放出が増加する。
【0146】
実施例3−BT061(抗CD4mAb)誘導性ADCC(抗体依存性細胞傷害性)についてのフローサイトメトリー試験
HuT78標的細胞をBT061(hB−F5)で標識し、エフェクタとしてのPBMC細胞と共にインキュベートした。30分間インキュベーションした後のDNA色素ヨウ化プロピジウムの取り込みにより死細胞を検出することができた。結果を表5に示す。
【表8】
表中のデータは、高濃度においてさえもBT061(hB−F5)によりADCCが誘導されないことを示す。
【0147】
実施例4−アポトーシス
BT061(抗CD4mAb)誘導性アポトーシスについてのフローサイトメトリー試験において、全血由来のPBMCをBT061或いは陽性対照と共にインキュベートした。
【0148】
7日間インキュベートした後、アポトーシス細胞をAnnexin−V−Fluoresceineで染色することによりアポトーシス細胞の検出を実施した。結果を表6に示す。
【表9】
データは、高濃度のBT061でさえもアポトーシスを誘導しないことを示す。
【0149】
実施例5−補体結合
補体因子C1qの結合についてのフローサイトメトリー試験において、PBMCを単離しBT061(抗CD4mAb)と共にインキュベートし、続いて精製組み換えC1qと共にインキュベートした。
【0150】
ATG(Tecelac)を陽性対照として用いた。
【0151】
C1qに対するFITC標識検出抗体を用いて検出を実施した。結果を以下の表7に示す。
【表10】
データは、高濃度でさえも補体結合が見られないことを示す。
【0152】
実施例6−漸増用量のBT061の安全性及び耐容性
18歳以上75歳以下の健常男性及び女性ボランティアにおいて漸増用量の抗体を用いてBT061の安全性及び耐容性をモニタするための研究を行った。
【0153】
各群3人ずつの10投与量群に分けた30人のボランティアにBT061を静脈内投与した。更に各群3人ずつ5投与量群に分けた15人のボランティアにBT061を皮下投与した。BT061の静脈内投与について以下の表8に示す。
【表11】
0.9%の塩化ナトリウム注入液で最高総体積20mLまで各用量を希釈する。用量を単回持続静脈内注入として2時間に亘って投与する。
【0154】
BT061の皮下用量
BT061の皮下投与について以下の表9に示す。
【表12】
各用量は単回ボーラス注入として注入する。
【0155】
注入後3ヶ月間に亘ってボランティアを評価した。
【0156】
皮下適用では、投与前、投与3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、56時間後、72時間後、88時間後、96時間後、120時間後、144時間後、168時間後、及び75日目に血漿サンプルを採取した。
【0157】
静脈内適用では、投与前、投与30分後、1時間後、2時間後、3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、72時間後、96時間後、120時間後、144時間後、及び168時間後に血漿サンプルを採取した。
【0158】
標準的なELISA法を用いて血漿サンプルを分析し、サイトカインレベルを決定した。分析した関連サイトカインにはIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2が含まれていた。
【0159】
標準的なフローサイトメトリー法を用いて血漿サンプルも分析し、CD4
+リンパ球数を測定した。
【0160】
結果
最高60mgの静脈内用量及び皮下用量は一般に耐容性に優れていることが見出された。
【0161】
サイトカインレベル
サイトカイン放出誘導は、ATG、OKT3、CAMPATH−1H、及びヒト化抗CD3mAb(TRX4、Visilizumab、及びTeplizumab)などのT細胞相互作用治療抗体の使用に伴って生じる一般的な即時併発症である。主な症状としては、中等度の発熱、頭痛、及び自己限定性胃腸炎が挙げられる。抗体投与後のサイトカイン誘導と相関する副作用には、抗ヒスタミン剤塩酸ジフェンヒドラミン及び抗炎症剤イブプロフェンの少なくともいずれかなどの更なる薬剤の適用を必要とする。
【0162】
OKT3(ムロモナブ−CD3)、マウスCD3特異的治療モノクローナル抗体を使用した場合、死者が出たという報告さえあり、重篤な副作用により主に免疫低下患者に対するこの抗体の臨床的使用は制限されている。
【0163】
自己免疫疾患の治療のために医療機関で現在用いられているヒト化FcR非結合CD3特異的モノクローナル抗体(Teplizumab及びTRX4)は、OKT3などのFcR結合CD3特異的抗体と比較して、最初の投与後のT細胞の活性化及びFc受容体発現細胞の活性化の少なくともいずれかにより誘導される副作用は減少しているが、T細胞の活性化及びFc受容体発現細胞の活性化が依然としてある程度見られ、これによりサイトカイン依存性副作用に一般に関連しているサイトカイン放出が導かれる。
【0164】
現在の研究ではBT061の静脈内適用或いは皮下適用後に健常ボランティアで見られるサイトカイン誘導は、抗CD3抗体に比べて少なく且つ一過性であることが驚くべきことに見出された。サイトカイン誘導は、投与量増加につれて一般に増加する。しかし40mg〜60mgの最高用量でさえも、他のT細胞相互作用モノクローナル抗体で見られるよりもサイトカイン誘導は著しく少ない(
図7A及び
図7B)。
【0165】
最高用量(40mg〜60mgのBT061)を用いて投与した後96時間以内のいずれかの時点で観察されたサイトカインの中央ピーク濃度を
図7及び
図8に示す。
【0166】
各サイトカインの中央ピーク濃度は以下のように算出される。最高サイトカイン濃度の中央値は抗体の投与後に観察された。
【0167】
図7A及び
図7Bは、抗CD3モノクローナル抗体、Teplizumab及びTRX4の投与後の放出と比較した、BT061の静脈内投与或いは皮下投与後に健常ボランティアで観察されたTNF−α及びIL−6放出を示す。これらのサイトカインの正常値はStraub et al.,(2007,Arthr.&Rheumat.)から得た。
図8は、BT061の静脈内投与或いは皮下投与後のIL−2及びIFN−γ血漿濃度を示す。抗体注入4日以内に測定した40mg及び60mg用量群から中央ピーク濃度を算出した。正常上限(ULN)は、39人の健常対象で測定されたサイトカイン濃度に基づいて算出され、ULN=平均値+2×標準偏差である。
【0168】
Teplizumab及びTRX4(それぞれHerold et al.,2002,New Engl.J.Med及びKeymeulen et al.,2005 New Engl.J.Medから得られた結果)に比べて、BT061はサイトカイン放出を僅かに且つ一過的にしか誘導しなかった。TNF−α及びIL−6濃度は僅かに増加した。
図7は、BT061(40mg及び60mg)の適用後血漿中で検出されたIL−6及びTNF−αサイトカイン濃度の中央ピーク値が、CD3特異的治療抗体Teplizumab及びTRX4で処理した後に見られる値より低いことを示す。
【0169】
更に抗CD3mAbとは対照的に、BT061はTRX4の適用について報告されているように(Keymeulen et al.2005)IFN−γ及びIL−2レベルを実質的に増加させなかった(
図8)。
【0170】
CD4
+リンパ球
更に該試験は、採取した血漿サンプル中のCD4陽性リンパ球数の研究も含んでいた。
【0171】
静脈内投与の結果を以下の表9、表10、及び表11に示す。表12は、皮下投与による試験の結果を示す。この結果を
図9及び
図10にグラフで示す。
【表13】
【表14】
【0172】
具体的には
図9は、BT061の単回静脈内投与で処理されたボランティアのCD4細胞数(細胞/mL血漿)を示す。データ点は、各用量群における3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。健常ボランティアの細胞数に基づいてULN及びLLN(平均値+(或いは−)標準偏差)を算出したところ、正常下限(LLN)は443CD4細胞/μLであり、正常上限(ULN)は1324CD4細胞/μLであった。
【0173】
図10は、BT061の単回皮下投与で処理されたボランティアのCD4細胞数(細胞/mL血漿)を示す。
図9と同様に、データ点は各用量群における3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。
【表15】
【表16】
【0174】
当該技術分野において既知である多くのCD4特異的モノクローナル抗体(Strand et al.,2007で概説されている抗体など)でCD4陽性リンパ球枯渇を介した免疫抑制が達成される。これらの抗体の問題点は、処理された個体が免疫低下(immuno−compromised)状態になり、他の感染症に罹患しやすくなることである。
【0175】
対照的に、この研究はBT061がCD4陽性細胞の広範囲に亘る持続性枯渇を誘導しないことを示した。CD4陽性リンパ球の一過性減少が観察されたが、抗体の投与後72時間以内に末梢血における正常値に回復した。
【0176】
BT061の適用後72時間の時点では、静脈内投与群の4人のボランティアにおけるCD4細胞数は、以下のように正常値を下回るCD4数を示した:100μg静脈内投与群のボランティア1名:400CD4細胞/μL;5mg投与群のボランティア1名:419CD4細胞/μL;10mg投与群のボランティア1名:440CD4細胞/μL;及び20mg投与群のボランティア1名:392CD4細胞/μL。
【0177】
しかしこれらの値は正常値をほんの僅か下回っていた。静脈内投与群の残りの26人のボランティアにおけるCD4細胞数は、BT061投与72時間後正常値の範囲内であった。
【0178】
皮下投与群では、72時間後、15人のボランティアのうち1人のみが正常値を下回るCD4細胞数を示した。
【0179】
結論として、CD4特異的mAbの枯渇とは対照的に、高用量BT061でさえもCD4陽性細胞の一過性減少を誘導するのみであり、後にその低下は全身で回復する。一過性減少及び急速な正常値への全身性回復から、CD4陽性細胞の枯渇ではなくCD4陽性細胞の一過的再分布が生じていると結論付けられる。
【0180】
実施例7−中等度〜重篤な慢性乾癬に罹患している患者におけるBT061の臨床試験
中等度〜重篤な慢性乾癬に罹患している患者56人についてhB−F5 BT061の自己免疫疾患を治療する能力を試験した。試験は、hB−F5の安全性及び有効性を評価するための単一用量漸増試験を含む。
【0181】
試験条件は以下の通りである:
56人の患者を各群8人ずつの7種の用量群に分けた。5種の用量群(用量群I〜V)に抗体或いはプラセボを静脈内投与し、2種の用量群(用量群VI〜VII)に抗体或いはプラセボを皮下投与した。各用量群の2人の患者にプラセボを投与し、各用量群の残り6人にはある用量のBT061を投与した。用量群Iでは6人の患者に0.5mgBT061を静脈内投与した。用量群II〜Vでは6人の患者にそれぞれ2.5mg、5mg、10mg、或いは20mgのBT061を投与した。皮下投与の用量群VI及びVIIでは6人の患者にそれぞれ12.5mg或いは25mgのBT061を投与した。
【0182】
静脈内投与では、医学的に認められている手順に従って前腕静脈に抗体/プラセボを注入する。この場合perfusor(Fresenius Pilot C,Fresenius AG,Germany)を通して2時間に亘って単回持続静脈内注入として全体積を投与する。各容量の抗体を0.9%の塩化ナトリウム注入液(B.Braun Melsungen AG,Germany)で最高総体積20mLまで各抗体用量を希釈する。
【0183】
皮下投与では、単回皮下注入として抗体を投与する。同手順をプラセボにも適用する。
【0184】
乾癬面積及び重症度指数(PASI)スコアを用いて各患者が示す乾癬レベルを記録する。上述のようにPASIスコアが高くなるにつれて乾癬レベルも高くなる。試験の登録患者は、中等度〜重篤な慢性乾癬、即ち10以上のPASIスコアを有する。
【0185】
試験前に患者のPASIスコアを評価して0日目の「基準」値を得、試験中5日目、7日目、14日目、21日目、28日目、42日目、56日目、及び75日目にPASIスコア評価を繰り返した。
【0186】
用量群I
用量群Iの6人の患者に0.5mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群Iの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表13に示す。体表面積は本明細書に記載されたMosteller式に従って算出した。
【0187】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群Iの患者のPASIスコアを表13に示す。
【0188】
用量群II
用量群IIの6人の患者に2.5mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IIの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Aに示す。
【0189】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IIの患者のPASIスコアを表14Aに示す。
【0190】
用量群III
用量群IIIの6人の患者に5.0mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IIIの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Bに示す。
【0191】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IIIの患者のPASIスコアを表14Bに示す。
【0192】
用量群IV
用量群IVの6人の患者に10.0mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IVの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Cに示す。
【0193】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IVの患者のPASIスコアを表14Cに示す。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0194】
更に個々の患者について時間に対するPASIスコアをグラフ形式で
図11A〜
図11H、及び
図12A〜
図12Hに示す。
図11A〜
図11Hに示すグラフは用量群Iの患者のPASIスコアを表し、
図12A〜
図12Hに示すグラフは用量群IIの患者のPASIスコアを表す。
【0195】
表13及び表14A〜表14Cに示した結果から分かるように、用量群I及び用量群IIの全患者の75%のPASIスコアが明らかに改善されている、即ち単回投与後基準値に対して少なくとも40%改善されている。用量群I及び用量群IIの患者の25%にはプラセボが投与されたことに留意すべきである。
【0196】
実際に両用量群で50%の患者のPASIスコアが少なくとも50%改善され、用量群IIの患者の1人(即ち表14Aの患者3)は56日目でPASIスコアが88%改善された。更に低用量でさえも治療効果が持続し、多くの患者で試験の終わりである投与後75日目でも依然として改善が見られた。
【0197】
用量群IIIの患者もまたPASIスコアの改善が見られ、処理後8人中6人の患者でPASIスコアが20%超改善し、これら6人中2人は30%超改善した。しかしより低用量の抗体を投与した用量群I及び用量群IIの患者で見られた程著しい改善ではなかった。用量群IVの患者でも多少の効果が見られた。具体的には用量群IVの患者1、患者4、患者5、及び患者8(表14Cに示された)のPASIスコアは明らかに改善されたが、この効果は用量群I〜用量群IIIの患者に比べて限定されていた。
【0198】
PASIスコアが少なくとも40%、50%、60%、及び75%改善した患者数を表15に示す。
【表21】
【0199】
図13A及び
図13Bは、処理前及び処理後の写真によって乾癬レベルが改善されたことを証明する。
図13Aは、投与前の用量群IIの患者の皮膚の乾癬領域を示す。
図13Bは、投与28日後の同乾癬領域を示す。
図13Bの黒線で囲んだ領域における改善が著しい。
【0200】
これらの結果からBT061が中等度〜重篤な慢性乾癬を有効に治療することが明らかに分かる。
【0201】
この研究の結果は、高用量の本発明の抗体のヒトにおける耐容性が一般に優れていることを示す上記実施例6に記載された結果と併せて、本明細書に記載される用量で自己免疫疾患を有効に治療する本発明の医薬組成物の能力を示す。
【0202】
実施例8−関節リウマチ患者におけるBT061の臨床試験
BT061の関節リウマチを治療する能力について、関節リウマチ患者で試験した。試験は12群に分けられた96人の患者についての複数回投与試験を含む。各群2人の患者にプラセボを投与し、6人の患者にBT061を投与した。患者は6週間に亘って週1回投与を受けた。
【0203】
患者を抗体皮下投与群と抗体静脈内投与群に分けた。皮下投与群には1.25mg、6.25mg、12.5mg、25mg、50mg、75mg、及び100mgを投与する。静脈内投与群には0.5mg、2mg、6.25mg、12.5mg、及び25mgを投与する。
【0204】
1.25mg皮下投与群では、患者に101、102、103、104、105、106、107、及び108という番号を付けた。6.25mg皮下投与群では患者に201〜208の番号を付けた。12.5mg皮下投与群では患者に301〜308の番号を付けた。25mg皮下投与群では患者に401〜408の番号を付けた。50mg皮下投与群では患者に501〜508の番号を付けた。6.25mg皮下投与群では患者に601〜608の番号を付けた。
【0205】
静脈内投与手順及び皮下投与手順は、乾癬試験について実施例7で記載した手順と同様であった。
【0206】
ACRパラメータ、具体的には圧痛関節数、腫脹関節数、後のC反応性タンパク質(CRP)及び赤血球沈降速度(ESR)のレベルを調べることにより関節リウマチのレベルを毎週記録した。試験前にこれらパラメータについて評価して0日目の「基準」値を得、試験期間中及び投与期間終了後8日目、22日目、及び43日目(即ち追跡(FU)8日目、FU22日目、及びFU43日目)にも繰り返し評価した。
【0207】
以下の表に試験から得られたデータを示す。具体的には表16〜表21は、試験期間中の圧痛関節数及び腫脹関節数を示す。
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【0208】
図14は1.25mg、6.25mg、12.5mg、及び25mgのBT061皮下投与群患者のうち試験期間中関連ACRパラメータが少なくとも20%改善された患者の割合、及び7週間目で少なくともACR20の応答があった患者の割合を示す。
【0209】
具体的には25mg皮下投与群患者の50%(即ちプラセボ投与を受けた患者2人を含む8人のうち4人)で、6週間目に関連ACRパラメータが少なくとも20%改善された。この割合は7週間目で8人中5人の患者に増加した、即ち8人中5人の患者でACR20が達成された。この用量群の患者の1人は、5週間目及び6週間目で関連ACRパラメータが50%超改善された(完全なデータは示さない)。
【0210】
他の用量群の患者でも正の結果が得られた。6.25mg皮下投与患者の1人は4週間目で関連ACRパラメータが少なくとも50%改善され、一方別の患者は3週間目で関連ACRパラメータが少なくとも70%改善された(完全なデータは示さない)。
【0211】
図15A及び
図15Bは、6週間に亘る25mgBT061皮下投与群患者が呈した圧痛関節数及び腫脹関節数を示す。数人の患者において処理期間中圧痛関節数及び腫脹関節数が減少する。この用量群の1人のレスポンダ患者及び1人の非レスポンダ患者の結果をそれぞれ
図16A及び
図16Bに示す。レスポンダは、圧痛関節数、腫脹関節数、及び疼痛レベルの有意な改善を示す。
【0212】
圧痛関節数及び腫脹関節数の減少はまた他の用量群患者でも見られる。
図17A、
図17B、
図18A、及び
図18Bは、試験期間中及びその後数週間に亘る1.25mg皮下投与群、6.25mg皮下投与群、50mg皮下投与群、及び6.25mg静脈内投与群における圧痛関節数を示す。
【0213】
これらの結果は、関節リウマチ治療における本明細書に記載される用量範囲内の本発明の剤の有効性を示す。