【実施例】
【0027】
下記の材料を用意した。
(A)熱硬化性樹脂組成物:ビフェニル型エポキシ樹脂100質量部に対して、フェノールノボラック樹脂を57.22質量部、そしてトリフェニルホスフィンを2.50質量部の割合となるように混合して調製したもの。
(B)酸化マグネシウム粉末:表面がオリゴマー状反応性シロキサン(Dynasylan1146、エボニックデグサ ジャパン(株)製)で処理された硬焼酸化マグネシウム粉末(平均粒子径:10μm)。硬焼酸化マグネシウム粉末は、ロータリーキルンで水酸化マグネシウム粉末を1800℃の温度で焼成して製造した。オリゴマー状反応性シロキサンによる表面処理は、硬焼酸化マグネシウム粉末6kgを、ヘンシェルミキサー(FM10B、三井三池化工機(株)製)に投入し、ヘンシェルミキサーの回転速度を1000rpmとして、硬焼酸化マグネシウム粉末を撹拌しながら、硬焼酸化マグネシウム粉末にオリゴマー状反応性シロキサン30gを添加して5分間撹拌を続けた後、ヘンシェルミキサーの回転速度を2000rpmに上げ、さらに40分間撹拌することにより行なった。
(C)二酸化ケイ素粉末:平均粒子径が25.1μmの球状粒子からなる溶融シリカ粉末。
【0028】
[実施例1〜2、比較例1〜2]
下記表1に示す配合量にて採取した、(A)熱硬化性樹脂組成物と(B)酸化マグネシウム粉末と(C)二酸化ケイ素粉末とを混合した。表1に、酸化マグネシウム粉末の容量と二酸化ケイ素粉末の容量との比(B:C)と、熱硬化性樹脂組成物の容量と、酸化マグネシウム粉末と二酸化ケイ素粉末の合計容量との比(A:B+C)を示す。
得られた混合物を、二軸ニーダーを用いて100℃の温度に加熱しながら混練した。得られた混練物を室温まで放冷した後、ミルを用いて粉砕して粉末にした。得られた粉末を加圧し、タブレットを得た。得られたタブレットを用いて、成形性、流動性(スパイラルフロー値)とを下記の方法により評価し、さらに該タブレットを用いてトランスファー成形により製造した成形体を試験片として、単位体積当たりの吸水量、熱伝導率、弾性率及び最大点応力を下記の方法により測定した。表2に、その結果を示す。
【0029】
(1)成形性
試料のタブレットを、マイクロ波加熱機を用いて予備加熱した後、トランスファー成形機の金型の上にセットする。トランスファー成形機にて、175℃の温度に加熱した金型を用いて、タブレットを6.9MPaの圧力で30秒間加圧した後、3MPaの圧力で120秒間加圧する条件にて、成形体を作成する。成形体が作成できたものを合格、成形体が作成できなかったものを不合格とする。
【0030】
(2)流動性(スパイラルフロー値)
試料のタブレットを、電子機能材料工業規格(EIMS)のT901:2006で規定するスパイラルフロー測定用金型にセットする。トランスファー成形機にて、175℃の温度に加熱した金型を用いて、タブレットを6.9MPaの圧力で60秒間加圧した後、40秒間保持する条件にて、成形体を作成し、その長さを測定する。試験は4回行ない、その平均値を求める。長さが長い方が流動性が良好である。
【0031】
(3)単位体積当たりの吸水量
前記(1)の成形性の評価と同様にして作成した成形体を試験片とする。試験片の質量(W
1)を測定した後、試験片を95℃の温度に加熱した純水に投入して、該温度で24時間保持する。次いで、試験片を純水から取り出し、水分を拭き取った後、その質量(W
2)を測定する。吸水量は下記の式より算出する。
吸水量(g/cm
3)={W
2(g)−W
1(g)}/試験片の体積(cm
3)
【0032】
(4)熱伝導率
縦50mm×横100mm×高さ4mmの金型を用いること以外は、前記(1)の成形性の評価と同様にして作成した成形体を試験片とする。この試験片の熱伝導率を京都電子工業(株)製QTM−500を用いて測定する。
【0033】
(5)弾性率と最大点応力
縦10mm×横80mm×高さ4mmの金型を用いること以外は、前記(1)の成形性の評価と同様にして作成した成形体を試験片とする。この試験片の弾性率と最大点応力を、3点曲げ法にて、室温で2.0mm/分の条件にて測定する。
【0034】
表1
────────────────────────────────────────
配合量(g) 容量比
───────────────────── ─────────────
A B C B:C A:B+C
────────────────────────── ─────────────
実施例1 143.93 289.47 534.13 25:75 27:73
実施例2 143.93 381.06 477.59 33:67 27:73
────────────────────────── ─────────────
比較例1 159.92 0 792.03 0:100 27:73
比較例2 127.94 513.21 316.81 50:50 27:73
────────────────────────────────────────
A:熱硬化性樹脂組成物
B:酸化マグネシウム粉末
C:二酸化ケイ素粉末
【0035】
表2
────────────────────────────────────────
成形性 流動性 吸水量 熱伝導率 弾性率 最大点応力
(cm) (g/cm
3) (W/m・K)(GPa) (MPa)
────────────────────────────────────────
実施例1 合格 106.5 0.0032 1.20 21.8 117
実施例2 合格 81.5 0.0032 1.33 22.7 108
────────────────────────────────────────
比較例1 合格 180.5 0.0032 0.91 19.5 155
比較例2 不合格 − − − − −
────────────────────────────────────────
【0036】
表2の結果から明らかなように、熱硬化性樹脂組成物に酸化マグネシウム粉末と二酸化ケイ素粉末とを本発明の範囲で加えて得た樹脂組成物(実施例1、2)は、熱硬化性樹脂組成物に二酸化ケイ素粉末のみを加えた樹脂組成物(比較例1)と比較して、吸水量は変化せずに、熱伝導率が向上している。本発明の範囲を超えて酸化マグネシウム粉末を加えた樹脂組成物(比較例2)は、流動性が悪くトランスファー成形により成形体を製造するのが困難になる。