(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795183
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】間接活線用工具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
H02G1/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-87377(P2011-87377)
(22)【出願日】2011年4月11日
(65)【公開番号】特開2012-222985(P2012-222985A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船越 悠太
【審査官】
甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−102125(JP,A)
【文献】
特開2005−224057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00−1/10
H02G 7/00−7/22
B25F 1/00−5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす把持片が連結されて互いの把持片の先端部が接近離反する把持部と、前記把持部を操作する操作部と、前記把持部と前記操作部とを離して支持すると共に操作部を介して入力された操作力を把持部に伝達する支持伝達部と、把持部の設定角度を調整する角度調整部とを備える間接活線用工具において、
前記角度調整部は、
筒状のピン受け部と、
このピン受け部に挿入されるピン部及びこのピン部の一端に形成されたフランジ部を有する角度調整ピンと、
前記ピン受け部に収容されて前記ピン部を前記フランジ部とは反対側へ付勢する弾性部材と、
前記ピン受け部に挿入されたピン部が前記弾性部材により付勢されて選択的に係合される被調整部材に形成された複数の係合凹部と、
を有して構成され、
前記ピン受け部の外側に筒状のローラ部材を回転可能に外装し、
前記角度調整ピンの前記ピン部と前記ピン受け部との間に、前記ピン部がいずれかの前記係合凹部に係合した状態で前記角度調整ピンの軸方向への変位を規制可能とする係止機構を設けたことを特徴とする間接活線用工具。
【請求項2】
前記対をなす把持片は、固定把持片と、この固定把持片に対して相対的に回動する可動把持片とから構成され、前記支持伝達部は、前記把持部と前記操作部とを離して支持させる主操作棒と、前記操作部を介して入力された操作力を前記把持部に伝達する補助操作棒とから構成され、
前記角度調整部は、前記固定把持片の基端部を前記主操作棒の端部に設けられた固定部材に角度調整可能に連結させる第1の角度調整部と、前記可動把持片の基端部に連結された調整棒を前記補助操作棒の端部に軸方向位置を調整可能に連結させる第2の角度調整部とにより構成され、
前記第1の角度調整部は、前記ピン受け部が前記固定部材に形成され、前記係合凹部が前記被調整部材としての前記固定把持片に形成され、
前記第2の角度調整部は、前記ピン受け部が前記補助操作棒に形成され、前記係合凹部が前記被調整部材としての前記調整棒に形成されることを特徴とする請求項1記載の間接活線用工具。
【請求項3】
前記係止機構は、前記ピン部と一体に変位し、前記ピン部の径方向へ突設された突起部と、前記ピン受け部の側面に形成され、前記突起部が摺動可能に係止される係止孔とから構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の間接活線用工具。
【請求項4】
前記係止孔は、前記ピン受け部の軸方向に延設された軸孔と、この軸孔に連通し、前記ピン受け部の周方向に延設された周孔とを備え、
前記角度調整ピンは、前記ピン部が前記係合凹部に係合された状態で前記突起部を前記係止孔の前記周孔に位置させることで、前記ピン受け部の軸方向への変位が規制されることを特徴とする請求項3記載の間接活線用工具。
【請求項5】
前記角度調整ピンの前記フランジ部は、前記ローラ部材の外周面から当該フランジ部の外縁までの寸法が電線の半径よりも大きく形成されること特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の間接活線用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線のクセ直し等の作業を行うことが可能な間接活線用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の湾曲等のクセ直しや湾曲させるクセ付け等の作業には、電線ベンダー装置が用いられている。電線ベンダー装置は、操作棒の先端に複数の突起が形成され、この突起に電線を引っ掛けて荷重をかけることで、電線のクセ直し等を行うもので、電線に係合する一対の係合部を備えた短尺に形成された第1棒状部材と、第1棒状部材を先端側に連結される長尺に形成された第2棒状部材と、これら第1、第2棒状部材による挟角を任意の角度に設定する角度設定部材とを備えるものや(特許文献1参照)、絶縁操作棒の先端に取り付けられる略I字形状に形成された第1支持部材と、この第1支持部材に連結される略逆三角形に形成された第2支持部材を備えて構成し、第1の支持部材を、雄ネジが形成された長尺部、この長尺部の上端に同軸回転自在に連結されて一対のピンが立設された短尺部、および、長尺部の下端に固設されて絶縁操作棒を取り付けるジョイントを有して構成し、第2の支持部材を、長尺部の雄ネジに螺合する雌ネジが形成されるとともに一対のピンを上辺部の左右側に立設させて構成するものが知られている(特許文献2参照)。また、先端部材に形成される突起を十字状に交差するように設けた電線ベンダーも知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4220954号公報
【特許文献2】特許第4456981号公報
【特許文献3】実開平3−3112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、間接活線作業で高圧引下線に触れる作業においては、絶縁ヤットコで代表される間接活線用工具を用いて作業をすることが多く、電線のクセ直し等の作業を行う場合には、間接活線用工具から電線ベンダー装置に持ち替えて行わなければならず、持ち替えるのに手間を要し、また、作業に必要な工具数が増加する不都合がある。
【0005】
このため、電線ベンダー装置を使用せずにクセ直し等の作業を行う方法として、使用頻度の多い絶縁ヤットコのような間接活線用工具を電線ベンダーとして代用することも考えられるが、このような間接活線用工具は、電線ベンダーのように電線を係合させる専用の係合突起は設けられていない。
一般的な絶縁ヤットコは、被把持物を把持する対をなす把持部と、その把持部を操作する操作部と、把持部の設定角度を調整する角度調整部とを備えており、角度調整部が、筒状のピン受け部と、このピン受け部に挿入されるピン部及びこのピン部の一端に形成されたフランジ部を有する角度調整ピンと、ピン受け部に収容されてピン部をフランジ部の側とは反対側へ付勢する弾性体と、ピン受け部に挿入されたピン部が弾性体(バネ)により付勢されて選択的に係合される複数の係合凹部とを有し、角度調整ピンを弾性体の付勢力によって係合凹部に係合させることで把持部の設定角度を固定し、角度調整ピンを弾性体の不勢力に抗して引き上げ、ピン部を係合凹部から外すことで把持部の角度調整を可能とする構成になっている。
【0006】
このような間接活性用工具を電線ベンダー装置として代用する場合には、電線の側面をピン受け部の側面に当接させるようにして用いることになるが、角度調整ピンは弾性体(バネ)の弾性力を利用して凹部に嵌入されているだけであるため、クセ直し時の力が電線を介して角度調整ピンに加わると、角度調整ピンが係合凹部から外れて把持部の角度が急にずれてしまう恐れがあり、クセ直し等の作業がやりにくく、また、把持部の角度がずれる都度、角度調整をし直す必要がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、電線のクセ直し等の作業を行う場合に、電線ベンダー装置に持ち替えることなく作業を確実に行うことができ、電線ベンダー装置として兼用するが可能な間接活線用工具を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る間接活線用工具は、対をなす把持片が連結されて互いの把持片の先端部が接近離反する把持部と、前記把持部を操作する操作部と、前記把持部と前記操作部とを離して支持すると共に操作部を介して入力された操作力を把持部に伝達する支持伝達部と、把持部の設定角度を調整する角度調整部とを備え、前記角度調整部は、筒状のピン受け部と、このピン受け部に挿入されるピン部及びこのピン部の一端に形成されたフランジ部を有する角度調整ピンと、前記ピン受け部に収容されて前記ピン部を前記フランジ部とは反対側へ付勢する弾性部材と、前記ピン受け部に挿入されたピン部が前記弾性部材により付勢されて選択的に係合される被調整部材に形成された複数の係合凹部と、を有して構成され、前記ピン受け部の外側に筒状のローラ部材を回転可能に外装し、前記角度調整ピンの前記ピン部と前記ピン受け部との間に、前記ピン部がいずれかの前記係合凹部に係合した状態で前記角度調整ピンの軸方向への変位を規制可能とする係止機構を設けたことを特徴としている。
【0009】
したがって、角度調整部には、角度調整ピンの外側にローラ部材が外装されているので、ここにあてがわれた電線を動かし易くなり、また、角度調整ピンのピン部とピン受け部との間に係止機構が設けられているので、電線を角度調整部に引っ掛けた場合でも、角度調整ピンのピン部が電線から受ける力により係合凹部から外れてしまうことがなくなり、電線のクセ直し等の作業中に把持部の角度が急に変更されてしまうことがなくなる。このため、電線のクセ直し等の作業を行う場合に、間接活線用工具から電線ベンダー装置に持ち替えることが不要となり、持参する工具数を減らすことができると共に作業効率を高めることが可能となる。
【0010】
ここで、対をなす把持片は、固定把持片と、この固定把持片に対して相対的に回動する可動把持片とから構成され、前記支持伝達部は、前記把持部と前記操作部とを離して支持させる主操作棒と、前記操作部を介して入力された操作力を前記把持部に伝達する補助操作棒とから構成され、前記角度調整部は、前記固定把持片の基端部を前記主操作棒の端部に設けられた固定部材に角度調整可能に連結させる第1の角度調整部と、前記可動把持片の基端部に連結された調整棒を前記補助操作棒の端部に軸方向位置を調整可能に連結させる第2の角度調整部とにより構成され、前記第1の角度調整部は、前記ピン受け部が前記固定部材に形成され、前記係合凹部が前記被調整部材としての前記固定把持片に形成され、前記第2の角度調整部は、前記ピン受け部が前記補助操作棒に形成され、前記係合凹部が前記被調整部材としての前記調整棒に形成される構成としてもよい。
【0011】
ここで、係止機構は、ピン部と一体に変位し、ピン部の径方向へ突設された突起部と、ピン受け部の側面に形成され、突起部が摺動可能に係止される係止孔とから構成されるようにしてもよい。
また、係止孔は、前記ピン受け部の軸方向に延設された軸孔と、この軸孔に連通し、前記ピン受け部の周方向に延設された周孔とを備え、前記角度調整ピンは、前記ピン部が前記係合凹部に係合された状態で前記突起部を前記係止孔の前記周孔に位置させることで、
前記ピン受け部の軸方向への変位を規制するようにしてもよい。
【0012】
さらに、ローラ部材に引っ掛けた電線の脱落を抑えるために、角度調整ピンの前記フランジ部は、前記ローラ部材の外周面からフランジ部の外縁までの寸法を電線の半径よりも大きく形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明に係る間接活線用工具によれば、対をなす把持部の角度を調整する角度調整部において、ピン受け部の外側に筒状のローラ部材を回転可能に設け、角度調整ピンのピン部とピン受け部との間に角度調整ピンの軸方向への変位を規制可能とする係止機構を設けるようにしたので、電線をローラ部材に引っ掛けてクセ直し等の作業を行う場合でも、電線をスムーズに移動させることができると共に電線に力をかけても角度調整ピンのピン部が係合凹部から外れて把持部の角度が急変する不都合を避けることが可能となる。
このため、間接活性用工具を電線ベンダー装置として用いる場合でも、電線のクセ直し等の作業を確実に行うことが可能となり、間接活線用工具を専用のベンダー装置に持ち替えてクセ直し等の作業を行うことが不要となるので、現地に持参する工具数を減らすことが可能となり、また、効率よく作業を行え、作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0014】
特に、絶縁ヤットコを電線ベンダー装置として用いる場合には、前記対をなす把持片を、固定把持片と、この固定把持片に対して相対的に回動する可動把持片とで構成し、前記支持伝達部を、把持部と操作部とを離して支持させる主操作棒と、操作部を介して入力された操作力を把持部に伝達する補助操作棒とから構成し、角度調整部を、固定把持片の基端部を主操作棒の端部に設けられた固定部材に角度調整可能に連結させる第1の角度調整部と、可動把持片の基端部に連結された調整棒を補助操作棒の端部に軸方向位置を調整可能に連結させる第2の角度調整部とにより構成し、第1の角度調整部において、ピン受け部を固定部材に形成し、係合凹部を固定把持片に形成する構成とし、第2の角度調整部において、ピン受け部を補助操作棒に形成し、係合凹部を調整棒に形成する構成とすることで、使用頻度の高い絶縁ヤットコを電線ベンダー装置として用いることが可能となり、既存の絶縁ヤットコの改良で対応することが可能となる。
【0015】
尚、係止機構の係止孔を、ピン受け部の軸方向に延設された軸孔と、この軸孔に連通し、ピン受け部の周方向に延設された周孔とを備えて構成し、ピン部が係合凹部に係合された状態でピン部と一体に変位する突起部を係止孔の周孔に位置させることで、角度調整ピンの軸方向への変位を規制する構成すれば、ピン部が係合凹部に係合した状態でフランジ部を回せば角度調整ピンの軸方向への変位が規制されることとなり、簡易な構成で角度調整ピンにロックを掛けることが可能となる。
【0016】
また、角度調整ピンのフランジ部において、ローラ部材の外周面から当該フランジ部の外縁までの距離を電線の半径よりも大きく形成することで、ローラ部材に電線を引っ掛けてくせ直し等の作業を行う場合でも、電線がローラ部材から外れることを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、間接活線用工具(絶縁ヤットコ)の側面図である。
【
図2】
図2は、間接活線用工具の先端部(把持部と角度調整部)を示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその斜視図である。
【
図3】
図3は、角度調整部(第1の角度調整部、第2の角度調整部)を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、角度調整部の機構を説明した拡大図であり、(a)は、角度調整ピンのピン部が弾性部材(バネ)の付勢力で係合凹部に係合されている状態を示し、(b)は、角度調整ピンのピン部を弾性部材(バネ)の付勢力に抗して係合凹部から外した状態を示す図である。
【
図5】
図5は、2つの角度調整部を利用した電線のクセ直しの作業を示す説明図である。
【
図6】
図6は、1つの角度調整部を利用した電線のクセ直しの作業を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の間接活線用工具ついて添付図面を参照して説明する。
【0019】
本発明の間接活線用工具1は、
図1及び
図2に示すように、各種部品等の被把持物を掴む把持部2と、この把持部2を操作する操作部3と、把持部2と操作部3とを主操作棒4aを介して所定の間隔に離して配置させると共に、操作部3を介して作業者により入力された操作力を補助操作棒4bを介して把持部2に伝達する支持伝達部4と、把持部2の設定角度を調整する角度調整部5とを有して構成されている。
【0020】
把持部2は、半楕円形状に湾曲形成された対をなす把持片(固定把持片2a、可動把持片2b)により構成され、それぞれの把持片2a,2bは、基端側が回動軸6を介して回動可能に連結されており、一方の把持片は、その基端部が主操作棒4aの先端に固定された固定部材7を介して角度調整可能に固定された固定把持片2aを構成し、他方の把持片は、その基端部が補助操作棒4bの先端部に長さ調整可能に固定された調整棒8を介して連結されると共に、固定部材7に配された前記回動軸6を中心に回動自在に軸支された可動把持片2bを構成している。したがって、これら把持片(固定把持片2a、可動把持片2b)は、回動軸6を中心に相対的に回動して互いの先端部を接近離反させ(可動把持片2bの先端部を固定把持片2aの先端部に対し接近離反させ)、把持片間に画成される空間や各把持片の先端部間に被把持物を把持して掴むことができるようになっている。
【0021】
操作部3は、支持伝達部4の主操作棒4aの基端側に取り付けられる取付具3aと、この取付具3aに設けられた回動軸9に一端が回動自在に軸支された把持レバー3bと、この把持レバー3bの回動中心と同軸になるように取付具3aに一端側が回動自在に軸支されると共に他端側が回動軸10を介して相対回転可能に補助操作棒4bの基端部に連結された連結レバー3cと、取付具3aの回動軸9に配されて把持レバー3bの回動を連結レバー3cに伝達すると共に把持レバー3bを回動軸9を中心として主操作棒4aから離反させる方向へ付勢し、また、補助操作棒4bを把持部2側へ付勢する図示しないバネ部材とにより構成されている。
【0022】
したがって、作業者が支持伝達部4の主操作棒4aを掴んで支持しつつ、操作部3の把持レバー3bを回動軸9を中心に主操作棒4aに近接させるように回動させると、補助操作棒4bが図中の下方へ引かれて可動把持片2bが固定把持片2aに近接するように回動され、可動把持片2bと固定把持片2aとで被把持物を把持することが可能となる。また、作業者が把持レバー3bの把持力を緩めると、把持レバー3bが主操作棒4aから離反するように回動すると共に、補助操作棒4bが図中上方へ押されるように付勢されて、可動把持片2bの先端部が固定把持片2aの先端部から離反する方向に回動することとなる。
【0023】
前記固定把持片2aの回動軸6よりも基端縁部には、回動軸6を中心とする円周上に間隔を空けて複数の係合凹部11が形成されている。これに対して、固定部材7には、回動軸6と係合凹部11との距離に合わせて回動軸6からずらした位置にスナップフィット式の角度調整ピン12が設けられている。
【0024】
また、可動把持片2bの基端部に連結されて、補助操作棒4bの先端部に設けられた調整棒8にも軸方向で間隔を空けて複数の係合凹部13が形成されている。これに対して、補助操作棒4bの先端近傍には、係合凹部13の位置に合わせてスナップフィット式の角度調整ピン14が設けられている。
【0025】
固定部材7および補助操作棒4bに設けられた角度調整ピン12,14は、
図3及び
図4に示されるように、固定部材7又は補助操作棒4bに設けられる筒状のピン受け部20に取り付けられている。
【0026】
固定部材7および補助操作棒4bに設けられるピン受け部20は、把持片2a,2bの回動面に対して垂直方向に突設されているもので、一端にピン挿通孔21が形成された壁部20aを有し、他端が開放されて内部に収容空間が形成された円筒状をなし、固定部材7又は補助操作棒4bに設けられた通孔22と整合する位置に開放端側が溶接、螺合等の手段で固定されている。角度調整ピン12,14は、前記ピン挿通孔21を介してピン受け部20の内側の収容空間に挿入されるピン部12a(14a)と、このピン部12a(14a)の一端に形成されたフランジ部12b(14b)とを有して構成され、ピン受け部20に挿入されたピン部12aには、このピン部を圧入すること等により所定位置に外装固定されてピン部12aと共に一体に変位する環状部材23が取り付けられ、この環状部材23とピン受け部20の壁部20aとの間に圧縮バネからなる弾性部材24が弾装されている。
【0027】
したがって、角度調整ピン12,14は、弾性部材24の復元力(バネ力)によりピン部12a,14aが常時フランジ部側と反対側へ付勢されており、ピン部12a,14aは、固定部材7又は補助操作棒4bに設けられた通孔22を挿通し、固定把持片2a又は調整棒8に設けられたいずれかの係合凹部13に係合されるようになっている。
【0028】
これにより、角度調整ピン12を固定把持片2aに形成された係合凹部11のいずれかに選択的に係合し、また、角度調整ピン14を調整棒8に形成された係合凹部13のいずれかに選択的に係合すること把持部2の設定角度を所望の角度に調整することが可能となる。
【0029】
上述した固定部材7に形成されたピン受け部20、角度調整ピン12、弾性部材24、固定把持片2aに形成された複数の係合凹部11によって、固定把持片2aの主操作棒4aに対する設定角度を調整する第1の角度調整部51が構成され、補助操作棒4bの先端部に形成されたピン受け部20、角度調整ピン14、弾性部材24、調整棒8に形成された複数の係合凹部13によって、調整棒8の補助操作棒4bからの突出量を調整することによって可動把持片2bの主操作棒4aに対する設定角度を調整する第2の角度調整部52が構成されている。
【0030】
ところで、それぞれの角度調整部5(第1の角度調整部51、第2の角度調整部52)のピン受け部20の外側には、樹脂等で形成された筒状のローラ部材25が回転可能に外装されている。前記角度調整ピン12,14のフランジ部12b、14bは、このローラ部材25よりも大きな径に形成されており、この例では、ローラ部材25の外周面からフランジ部12b、14bの外縁までの寸法Aが電線40の半径Bよりも大きく形成されている。
【0031】
また、角度調整ピン12,14のピン部12a,14aに外装された環状部材23の側面には、径方向外側に向けて突出した突起部26が設けられ、ピン受け部20の側面には、突起部26が摺動可能に係止する係止孔27が形成されている。
この係止孔27は、ピン受け部20の軸方向に延設された軸孔27aと、この軸孔27aに連通し、ピン受け部20の周方向に延設された周孔27bとにより構成されて全体がL字状に形成されているもので、角度調整ピン12,14のピン部12a,14aが通孔22から突出していずれかの係合凹部11,13に係合された場合に、環状部材に形成された突起部26が係止孔27の軸孔27aと周孔27bとの交点に位置するように設定されている。
この環状部材23に形成されたピン部12a,14aと一体に変位する突起部26と、ピン受け部20に形成された係止孔27とにより、角度調整ピン12,14の軸方向への変位を規制可能とする係止機構が構成されている。
【0032】
したがって、角度調整ピン12,14は、
図4(a)に示されるように、ピン部12a,14aが係合凹部11,13に係合された状態で回動させて前記突起部26を係止孔27の周孔27bに位置させることで、ピン受け部20の軸方向への変位が規制されることとなる。また、この状態から係止機構による係止を解除して把持部2の角度を再調整する場合には、角度調整ピン12,14を回動させて突起部26を係止孔27の周孔27bと軸孔27aの交点まで移動させた後に、
図4(b)に示されるように、角度調整ピン12,14のフランジ部12b,14bを弾性部材24の弾性力に抗して引き上げればよく、これにより、突起部26は軸孔27aの先端側へ移動するので、ピン部12a,14aが係合凹部11,13から外され、角度調整が可能となる(固定把持片2a、調整棒8の変位が可能となる)。
【0033】
以上の構成の間接活線用工具1を用いて電線のクセ直しを行う場合には、次のような作業を行う。
即ち、第1の角度調整部51と第2の角度調整部52とを用いて電線のクセ直しを行う場合には、
図5に示すように、電線40を固定部材7に設けられた第1の角度調整部51のローラ部材25に引っ掛けた後に、補助操作棒4bの先端部に設けられた第2の角度調整部52のローラ部材25に引っ掛け、間接活線用工具1を自身の重さを電線40に乗せながら上下に滑らすように移動させてクセ直しを行う。
また、1箇所の角度調整部5(第1の角度調整部51)で電線40のクセ直しを行ってもよく、例えば、
図6に示すように、第1の角度調整部51のローラ部材25に電線40を引っ掛けて間接活線用工具1を左右に滑らすように動かしてクセ直しを行う。
【0034】
以上の作業において、各角度調整部51,52は、係止機構により軸方向の移動が規制されているので、電線40を引っ掛けた場合でも電線40から受ける力によって角度調整ピン12,14のピン部12a,14aが係合凹部11,13から外れることが防止される。このため、クセ直し等の作業を行う場合に間接活線用工具1をそのまま利用して行うことができるので、専用のベンダー装置を用いる必要がなく、作業効率を高めて作業時間の短縮を図ることが可能となる。
【0035】
また、ローラ部材25は、ピン受け部20に回転自在に取り付けられているので、ローラ部材25が電線40との摩擦抵抗を減らすように作用するのでスムーズにクセ直しをすることが可能となる。
さらに、角度調整ピン12,14のフランジ部12b、14bは、ローラ部材25の外周面から周縁までの寸法が電線40の半径よりも大きく形成されているので、ローラ部材25に引っ掛けた電線40が作業中に角度調整部51,52から外れることがなくなる。
【符号の説明】
【0036】
1 間接活線用工具
2 把持部
2a 固定把持片
2b 可動把持片
3 操作部
4 支持伝達部
4a 主操作棒
4b 補助操作棒
5 角度調整部
8 調整棒
11,13 係合凹部
12,14 角度調整ピン
12a,14b ピン部
12b,14b フランジ部
20 ピン受け部
24 弾性部材
25 ローラ部材
26 突起部
27 係止孔
27a 軸孔
27b 周孔
40 電線
51 第1の角度調整部
52 第2の角度調整部