(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無機粒子を含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数のセルがセル壁により区画されたハニカムユニットを有するハニカム構造体を製造する方法であって、
前記無機粒子は、ゼオライトであり、50m2/g以上の比表面積を有し、
(a)無機粒子に飽和量の水分を含水させる工程と、
(b)少なくとも前記含水された無機粒子、成形助剤、および水を含む、ハニカムユニット用の原料ペーストを準備する工程と、
(c)前記原料ペーストを成形して、ハニカム成形体を形成する工程と、
(d)前記ハニカム成形体を焼成して、ハニカムユニットを得る工程と、
を有することを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面により本発明の特徴を説明する。
【0024】
図1には、本発明により作製されたハニカム構造体を模式的に示す。また、
図2には、
図1に示したハニカム構造体の基本単位である、ハニカムユニットの一例を模式的に示す。
【0025】
図1に示すように、ハニカム構造体100は、2つの端面110および115を有する。また、ハニカム構造体100の両端面110、115を除く外周面には、外周コート層120が設置されている。
【0026】
ハニカム構造体100は、例えば、
図2に示す柱状のセラミック製ハニカムユニット130を、接着層150を介して複数個(
図1の例では、縦横4列ずつ16個)接合させた後、外周側を所定の形状(
図1の例では、円柱状)に沿って切削加工することにより構成される。
【0027】
図2に示すように、ハニカムユニット130は、該ハニカムユニットの長手方向に沿って一端から他端まで延伸し、両端面で開口された複数のセル(貫通孔)121と、該セル121を区画するセル壁123とを有する。これに限られるものではないが、
図2の例では、セル121の長手方向(Z方向)に垂直な断面は、実質的に正方形状となっている。
【0028】
ハニカムユニットに含まれる無機粒子として、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、ムライト、またはゼオライト等を使用した場合、そのようなハニカムユニットを有するハニカム構造体は、CO、HC、および/またはNOxを浄化するための触媒担体として、使用することができる。特に、無機粒子としてゼオライトを使用した触媒担体は、尿素タンクを有する尿素SCRシステムに使用することができる。
【0029】
例えば、そのような尿素SCRシステムにおいて、システム内に排ガスが流通されると、尿素タンクに収容されている尿素が排ガス中の水と反応して、アンモニアが生じる(式(1))。
CO(NH
2)
2+H
2O → 2NH
3+CO
2 式(1)
このアンモニアが、NOxを含む排ガスとともに、ハニカム構造体100の端面110、115の一方(例えば端面110)から、各セル121に流入した場合、セル壁123に含まれているゼオライトの触媒の作用により、以下の式(2−1)式および(2−2)の反応が生じる。
4NH
3+4NO+O
2 → 4N
2+6H
2O 式(2−1)
8NH
3+6NO
2 → 7N
2+12H
2O 式(2−2)
その後、浄化された排ガスは、ハニカム構造体100の端面110、115の他方(例えば端面115)から排出される。このように、ハニカム構造体100内に排ガスを流通させることにより、排ガス中のNOxを処理することができる。
【0030】
ハニカムユニット130は、例えば、前述のような無機粒子、成形助剤、および水を含む原料ペーストを押出成形して、ハニカム成形体を作製した後、このハニカム成形体を焼成することにより作製される。なお、原料ペースト中には、この他、無機バインダおよび/または有機バインダが含まれても良い。
【0031】
本発明によるハニカム構造体を製造する方法では、以降に詳細に示すように、原料ペーストを調整する前に、無機粒子の微細細孔内に、予め水を十分に含ませておくことを特徴とする。この場合、原料ペーストの調製前に、無機粒子の微細細孔内に水が侵入しており、原料ペーストの調製段階で、微細細孔内に水分および成形助剤が侵入することができなくなる。そのため、原料ペーストの調製段階で、水分および成形助剤が無機粒子の微細細孔内にランダムに侵入するという問題を回避することができる。これにより、原料ペーストの調製段階で投入された水分および成形助剤が無機粒子の微細細孔外に存在するため、成形処理前の原料ペーストの粘度を制御することが可能となる。
【0032】
従って、本発明によるハニカム構造体を製造する方法では、成形処理毎の寸法安定性が改善されたハニカム成形体を得ることができ、さらには、ハニカム構造体の寸法安定性が向上される。
【0033】
(ハニカム構造体100の構成)
ここで、
図1に示したハニカム構造体100の構成部材について、簡単に説明する。
【0034】
(ハニカムユニット130)
ここでは、特に、ハニカムユニット130がゼオライトを主成分とする材料で構成される場合について説明する。ただし、ハニカムユニット130がγアルミナ等、他の材料で構成される場合も、以下の説明の少なくとも一部が適用され得ることは、当業者には明らかである。
【0035】
ハニカムユニット130は、無機粒子(ゼオライト)、および無機バインダを含む。また、ハニカムユニット130は、ゼオライト以外の無機粒子を含んでも良い。さらに、ハニカムユニット130は、無機繊維等の強度補強材料を含んでも良い。
【0036】
ハニカムユニット130に含まれるゼオライトは、例えば、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージサイト、ゼオライトA、ゼオライトL、またはゼオライト類縁化合物等が挙げられる。またゼオライト類縁化合物は、ALPO(アルミノリン酸塩)、またはSAPO(シリコアルミノリン酸塩)等が好ましい。また、ゼオライトは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されたものであっても良い。これらの元素の中では、特に、FeまたはCuが好ましい。
【0037】
ハニカムユニット130に含まれる無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、およびベーマイトからなる群から選択された少なくとも1種の固形分が望ましい。
【0038】
ゼオライト以外の無機粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、またはムライト等が望ましい。これらのゼオライト以外の無機粒子は、単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
【0039】
ハニカムユニット130に含まれるゼオライトを含む無機粒子の量について、望ましい下限は30重量%であり、より望ましい下限は40重量%であり、さらに望ましい下限は50重量%である。一方、望ましい上限は90重量%であり、より望ましい上限は80重量%であり、さらに望ましい上限は75重量%である。ハニカムユニット130に含まれるゼオライトを含む無機粒子の含有量が30重量%未満では、浄化に寄与するゼオライトの量が相対的に少なくなる。一方、ハニカムユニット130に含まれるゼオライトを含む無機粒子の含有量が90重量%を超えると、強度に寄与する無機バインダの量が相対的に低下するため、ハニカムユニット130の強度が低下する。
【0040】
また、ハニカムユニット130に無機繊維を加える場合、無機繊維としては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムまたはホウ酸アルミニウム等が望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機繊維の中では、アルミナがより望ましい。
【0041】
ハニカムユニット130のセル密度は、15.5〜186個/cm
2(100〜1200cpsi)の範囲であることが好ましく、46.5〜170個/cm
2(300〜1100cpsi)の範囲であることがより好ましく、62〜155個/cm
2(400〜1000cpsi)の範囲であることがさらに好ましい。
【0042】
ハニカムユニット130のセル壁123の厚さは、特に限定されないが、強度の点から望ましい下限は、0.1mmであり、浄化性能の観点から望ましい上限は、0.4mmである。
【0043】
ハニカムユニット130の平均気孔径は、0.01〜1.0μmの範囲が好ましい。ハニカムユニット130の平均気孔径が0.01μm未満では、排ガスがセル壁123に十分に浸透されず、浄化性能が低下する。一方、ハニカムユニット130の平均気孔径が1.0μmを超えると、無機バインダと無機粒子の接触点が減少することにより、ハニカムユニット130の強度が低下する。ハニカムユニット130の気孔率は、20〜60%が好ましい。
【0044】
(接着層150)
ハニカム構造体100の接着層150は、接着層用ペーストを原料として形成される。
【0045】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダおよび無機粒子の混合物、無機バインダおよび無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子、および無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0046】
また、接着層用ペーストは、有機バインダをさらに含んでいても良い。
【0047】
有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上を併用しても良い。接着層用ペーストには、必要に応じて、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーン、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加しても良い。
【0048】
次に、ハニカムユニット130の外周面に接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット130を順次接着させ、120℃で60分、乾燥固化させることにより、ハニカムユニット130の集合体を作製する。このとき、ハニカムユニット130の集合体を作製した後に、円柱状に切削加工し、研磨しても良い。ハニカムユニットの長手方向に垂直な断面が扇形状および正方形状等に成形されているハニカムユニット130を接着させて、円柱状のハニカムユニット130の集合体を作製しても良い。
【0049】
接着層150の厚さは、0.3〜2.0mmの範囲であることが好ましい。接着層150の厚さが0.3mm未満では、ハニカムユニット130に十分な接合強度が得られないためである。また接着層150の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなる。なお、接合させるハニカムユニット130の数は、ハニカム構造体100の大きさに合わせて適宜選定される。
【0050】
(外周コート層120)
ハニカム構造体100の外周コート層120は、外周コート層用ペーストを原料として形成される。外周コート層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダおよび無機粒子の混合物、無機バインダおよび無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子、および無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0051】
また、外周コート層用ペーストは、有機バインダをさらに含んでいても良い。
【0052】
有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上を併用しても良い。
【0053】
次に、ハニカムユニット130の集合体を所定の形状(
図1の例では、円柱状)に沿って切削加工することによって得られた外周面に、外周コート層用ペーストを塗布して、120℃で60分、乾燥固化した後、1000℃で120分、接着層用ペーストおよび外周コート層用ペーストを脱脂、固化して、ハニカム構造体100を作製する。
【0054】
外周コート層120は、接着層150と同じ材料であっても、異なる材料であっても良い。
【0055】
外周コート層120の最終的な厚さは、0.1mm〜2.0mmが好ましい。外周コート層120の厚さが0.1mm未満では、外周コート層120に十分な強度が得られない。また、外周コート層120の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなる。
【0056】
(本発明によるハニカム構造体を製造する方法について)
以下、本発明によるハニカム構造体を製造する方法について、詳しく説明する。
【0057】
図3には、本発明によるハニカム構造体を製造する方法の一例のフロー図を示す。
図3に示すように、本発明によるハニカム構造体を製造する方法は、
(a)無機粒子に含水させる工程(ステップS110)と、
(b)少なくとも前記含水された無機粒子、成形助剤、および水を含む、ハニカムユニット用の原料ペーストを準備する工程(ステップS120)と、
(c)前記原料ペーストを成形して、ハニカム成形体を形成する工程(ステップS130)と、
(d)前記ハニカム成形体を焼成して、ハニカムユニットを得る工程(ステップS140)と、
を有する。
【0059】
(ステップS110)
まず、使用される無機粒子に予め水分を含ませる処理(以下、「含水処理」という)が行われる。
【0060】
無機粒子は、これに限られるものではないが、前述のように、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、ムライト、またはゼオライト等であっても良い。
【0061】
無機粒子の比表面積は、50m
2/g以上が望ましく、100m
2/g以上がより望ましい。無機粒子の比表面積の上限としては、例えば、600m
2/gが挙げられるが、無機粒子の比表面積は、大きいほど好ましい。無機粒子の比表面積が600m
2/g以上であると、無機粒子の微細細孔内に侵入する水分および成形助剤の量が多くなり、原料ペーストの粘度の制御が不可能となる。
【0062】
含水処理は、無機粒子の微細細孔内に水を吸着させることができれば、いかなる方法で行われても良い。例えば、含水処理は、湿度および温度が管理された恒湿器中に無機粒子を保持することにより、行われても良い。
【0063】
この場合、湿度(相対湿度)は、50%〜90%が好ましく、60%〜85%がより好ましく、70%〜80%がさらに好ましい。湿度(相対湿度)が50%よりも低いと、無機粒子の微細細孔内に水が吸着される速度が遅くなり、無機粒子の微細細孔内に十分な量の水が吸着されるまでの時間が長くなる一方、湿度(相対湿度)が90%を超えると、恒湿器内に結露が生じ、無機粒子の表面に水分が吸着し、原料ペーストの粘度を制御することが不可能となる。また、温度は、5℃〜60℃が好ましく、10℃〜40℃がより好ましく、15℃〜30℃がさらに好ましい。温度が5℃よりも低いと、恒湿器内の水分の一部が固化し、無機粒子の微細細孔内に水を吸着させることが不可能となる。一方、温度が60℃を超えると、例えば、無機粒子がゼオライトの場合、ゼオライトの微細細孔内に十分な量の水分が吸着するのに必要な時間である40時間の間に、ゼオライトを構成するSi原子とAl原子の結合が一部破壊され、十分な浄化性能が得られなくなる。
【0064】
また、例えば、無機粒子としてゼオライトを採用した場合、ゼオライトは、吸湿性を有するため、攪拌機等でゼオライト粒子を撹拌するだけでも、ゼオライト粒子に十分な水分を含ませることができる。攪拌機の種類は、特に限られないが、例えば、ボールミル器、インペラー式攪拌機、ブレード式攪拌機、ロータ式攪拌機等であっても良い。
【0065】
無機粒子に吸着(含浸)させる水の量は、例えば、無機粒子の重量に対して10wt%以上であることが好ましく、飽和量であることがより好ましい。
【0066】
ここで、「飽和量」とは、無機粒子の微細細孔内にほぼ完全に水が埋まった状態のときの含有水分量を意味し、無機粒子の重量に対する飽和量の割合を飽和水分率と定義する。
【0067】
飽和水分率は、以下の方法により決定される。無機粒子2kgを120℃の乾燥機内に2時間配置した後、温度25℃、湿度80%の恒湿器に配置し、無機粒子に恒湿器内の水分を含水させる。含水した無機粒子の重量を1時間おきに測定し、含水下無機粒子の重量変化率が0.3%/時間以下となったときの無機粒子に対する含水水分の割合を、飽和水分率とする。
【0068】
(ステップS120)
次に、ステップS110において含水処理された無機粒子と、成形助剤と、水とを混合して、ハニカムユニット成形用の原料ペーストが調製される。原料ペーストは、この他、無機バインダおよび/または有機バインダ等を含んでも良い。
【0069】
成形助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸またはポリアルコール等を挙げることができる。これらは、2種以上を混合しても良い。これらの中では、脂肪酸が望ましい。さらに、脂肪酸の中では、不飽和脂肪酸が好ましく、さらに高級脂肪酸であることがより望ましい。高級脂肪酸の中では、炭素数が15以上65未満であることが望ましい。
【0070】
無機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト、またはベーマイト等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0071】
これらの中では、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、およびベーマイトからなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。
【0072】
有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂またはエポキシ樹脂等から選ばれる1種以上の有機バインダが挙げられる。有機バインダの配合量は、無機粒子および無機バインダの合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0073】
原料ペーストは、これに限定されるものではないが、混合および混練することが好ましく、例えば、ミキサーまたはアトライタなどを用いて混合してもよく、ニーダーなどで十分に混練しても良い。
【0074】
(ステップS130)
次に、原料ペーストを成形することにより、ハニカム成形体が形成される。
【0075】
原料ペーストを成形する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形などにより行われることが好ましい。
【0076】
前述のように、原料ペーストに含まれる無機粒子には、原料ペースト調製前に、予め含水処理がなされている。このため、原料ペーストを調製する前の各無機粒子の含水状態は、ほぼ一定の状態に維持されている。またこれにより、このような無機粒子を含む原料ペーストにおいて、粘度などの特性は、常にほぼ一定の状態に維持される。従って、このような原料ペーストを用いて形成されたハニカム成形体は、常に同等の寸法精度を有し、これにより、最終的に得られるハニカム構造体の寸法安定性が向上する。
【0077】
(ステップS140)
次に、前述の工程で得られたハニカム成形体が焼成され、ハニカムユニットが作製される。
【0078】
焼成条件は、成形体に含まれる無機粒子等の種類によっても異なるが、焼成温度は、例えば600℃〜1200℃の範囲が好ましい。
【0079】
焼成温度が600℃未満であると、無機バインダを介した縮合重合が進行せず、ハニカムユニットの強度が低くなる。一方、焼成温度が1200℃を超えると、ゼオライトの焼結が進行しすぎて、ゼオライトの反応サイトが減少する。
【0080】
なお、
図1に示すようなハニカム構造体を製造する場合、前述の工程で作製された複数のハニカムユニットが接着層用ペーストを介して接合される。
【0081】
接着層用ペーストは、特に限定されるものではないが、例えば、無機粒子と無機バインダを混ぜたものや、無機バインダと無機繊維を混ぜたものや、無機粒子と無機バインダと無機繊維を混ぜたものなどを用いることができる。また、これらにさらに有機バインダを加えても良い。
【0082】
有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどから選ばれる1種以上が挙げられる。有機バインダの中では、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0083】
複数のハニカムユニット同士が接着層用ペーストを介して必要数だけ接合されると、組立体が構成される。その後、必要に応じて、組立体の外周面がダイヤモンドカッター等を用いて、例えば円柱状に切削加工される。これにより、所望の形状のハニカム構造体が作製される。
【0084】
必要な場合、ハニカム構造体の外周面には、外周コート層が設置されても良い。
【0085】
以上の工程により、
図1に示したような構成のハニカム構造体を作製することができる。
なお、以上の記載では、複数のハニカムユニット130を、接着層150を介して接合することにより構成されるハニカム構造体100を例に、本発明の特徴について説明した。
【0086】
しかしながら、本発明は、一つのハニカムユニットで構成された、いわゆる「一体構造」のハニカム構造体にも適用することができる。
【0087】
図4には、本発明により作製された別のハニカム構造体の一例を模式的に示す。
【0088】
図4には、そのような「一体構造」のハニカム構造体200を示す。なお、
図4において、
図1と同様の部材には、
図1と同様の参照符号が付されている。
【0089】
ハニカム構造体200は、2つの端面110および115を有する。また、通常の場合、ハニカム構造体200の両端面110、115を除く外周面には、コート層120が設置される。
【0090】
ここで、ハニカム構造体200は、前述のハニカム構造体100とは異なり、単一のハニカムユニット230で構成される。
【0091】
ハニカムユニット230は、長手方向に沿って一端から他端まで延伸し、両端面で開口された複数のセル121と、該セル121を区画するセル壁123とを有する。これに限られるものではないが、
図4の例では、セル121の長手方向(Z方向)に垂直な断面は、実質的に正方形状となっている。
【0092】
このように構成されたハニカム構造体200においても、前述のような本発明によるハニカム構造体を製造する方法を適用することにより、本発明の効果が得られることは、当業者には明らかである。
【0093】
なお、本願において、無機粒子の比表面積は、BET多点法により測定することができる。また、ハニカムユニットの平均気孔径は、水銀圧入法により測定することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
【0095】
(実施例)
以下の手順で、多数のハニカム成形体を作製し、ハニカム成形体の寸法のバラツキを評価した。
【0096】
まず、390mm×550mmの底面を有する多数のプラスチックトレイに、βゼオライト粉末(2次粒子の平均粒子径5μm)を平坦となるように敷き詰めた。これらのプラスチックトレイを、恒湿器中に100時間以上保管した。恒湿器内の温度および湿度(相対湿度)は、それぞれ、25℃および80%とした。
【0097】
次に、成形体用の原料ペーストを作製した。原料ペーストは、前述の恒湿器中に保管され、含水処理されたβゼオライト粉末3450g、アルミナファイバ(平均繊維径6μm、平均繊維長100μm)650g、無機バインダとしてのベーマイト840g、有機バインダとしてのメチルセルロース330g、成形助剤としての脂肪酸330g、およびイオン交換水1580gを混合して調製した。
【0098】
次に、得られた原料ペーストをスクリュー成形機を用いて押出成形し、寸法35mm×35mm×150mmの生のハニカム成形体を40本作製した。生のハニカム成形体のセル壁の厚さは、0.275mmであり、セル密度は、400cpsiである。
【0099】
(寸法測定)
得られた生のハニカム成形体のそれぞれについて、寸法測定を行った。寸法測定には、キーエンス社製の変位センサーを使用し、以下のように行った。
【0100】
図5には、ハニカム成形体の寸法測定位置の一例を概略的に示す。
【0101】
まず、
図5に示すように、ハニカム成形体300を一つの側面322Cが下向きとなるように、台上に置載する。次に、ハニカム成形体300の上側の側面322Aの端面310近傍において、矢印340で示すコーナー部と、矢印345で示す中央部分の絶対高さを測定する。なお、矢印340および矢印345の位置は、ハニカム成形体300の端面310から10mm(
図5の点線で示す)の位置である。また、寸法測定は、ハニカム成形体300を押出成形した直後(10分以内)に行った。
【0102】
以下の式(3)で「変位量」を規定する:
変位量(mm)=コーナー部の絶対高さ(mm)
−中央部の絶対高さ(mm) 式(3)
なお、変位量は、±両方の値を取り、コーナー部の絶対高さが中央部の絶対高さよりも大きい場合は、正の値となり、逆の場合、負の値となる。
【0103】
ハニカム状の成形体300の配置向きを変えて、同様の測定を側面322B〜322Dにおいても実施する。
【0104】
このような測定を、40本の全てのハニカム成形体について実施した。測定数は、160である。
【0105】
測定の結果、変位量の最小値は、−0.10mmであり、変位量の最大値は、+0.20mmであった。また、変位量のバラツキ幅は、0.30mmとなり、得られたハニカム成形体において、寸法のバラツキは、小さいことがわかる。
【0106】
ハニカム成形体の各側面322A〜322D(測定数は、各40である)において、変位量の標準偏差(σ)を求めた。その結果、側面322A〜322Dのいずれにおいても、変位量の標準偏差は、0.048mm〜0.063mmの範囲であり、標準偏差が小さいことが分かる。
【0107】
表1には、実施例において得られた結果をまとめて示した。
【0108】
【表1】
(比較例)
実施例と同様の方法により、多数のハニカム成形体を作製し、ハニカム成形体の寸法のバラツキを評価した。
【0109】
ただし、この比較例では、βゼオライト粉末の含水処理は、実施していない。また、成形体用のペーストは、βゼオライト粉末3000g、アルミナファイバ(平均繊維径6μm、平均繊維長100μm)650g、無機バインダとしてのベーマイト840g、有機バインダとしてのメチルセルロース330g、成形助剤としての脂肪酸330g、およびイオン交換水2200gを混合して調製した。その他の作製条件は、実施例と同じである。
【0110】
得られた40本の生のハニカム成形体について、前述の手順で寸法測定を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0111】
この結果から、比較例では、変位量の最小値は、−0.30mmであり、変位量の最大値は、+0.15mmであった。また、変位量のバラツキ幅は、0.45mmであり、比較例では、得られた成形体の寸法のバラツキが、大きいことがわかる。また、変位量の標準偏差(σ)は、最小でも0.057mm以上であり、標準偏差が大きいことがわかる。
【0112】
図6に実施例および比較例における各側面322A〜322Dの変位量の標準偏差を比較したグラフを示す。
【0113】
表1および
図6より、生のハニカム成形体300の何れの側面322A〜322Dにおいても、実施例におけるハニカム成形体は、比較例におけるハニカム成形体に比べて、変位量の標準偏差が有意に抑制されていることがわかる。
【0114】
このように、実施例による方法で作製したハニカム成形体では、比較例による方法で作製したハニカム成形体に比べて、変位量のバラツキが有意に抑制されていることがわかる。以上の結果から、本発明のハニカム構造体を製造する方法により作製されたハニカムユニットおよびハニカム構造体は、従来技術に比べて、寸法安定性が向上されていることがわかる。