【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、改質水素中に含まれる数%のCOを酸化剤ガスである空気で酸化するための上記CO選択酸化触媒は、改質水素中の還元雰囲気において使用される。何故なら、酸化雰囲気ガス中ではCO選択酸化触媒での担持貴金属が酸化し、失活してしまうからである。そのため、CO
2ガス中のCOを除去するために、CO選択酸化触媒を使用する場合、導入した空気によって当該CO選択酸化触媒が酸化して、性能低下してしまうと言う問題があり、解決すべき課題となっていた。
【0010】
そこで本発明は、水素製造システムにおけるCO
2ガス中のCO低減方法及びCO低減システムであって、数%オーダーのCOを含有するCO
2ガスから、数ppmオーダーまでCOを選択酸化して除去する方法及びシステムに関して、不純物の混入を避け、かつ、CO選択酸化触媒の性能劣化を抑制する制御方法及び制御システムを提供することを目的とするものである。
【0011】
〈本発明の活用〉
将来の水素ステーションの普及に向けて、都市ガスから製造した改質水素の付加価値を向上させるため、CO
2を回収することが求められている。また、回収したCO
2の有効利用先の拡大のため、回収CO
2を精製する技術が必要とされている。本発明を活用することにより、水素ステーションにおける都市ガスから製造した改質水素の付加価値を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、“炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、CO
2PSA装置、CO除去器、CO
2ガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCO
2ガス中のCO低減システムであって、
前記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、
前記CO
2PSA装置を経たオフガスである分離回収CO
2ガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去するようにしてなるCO低減システムであって、前記CO除去器における反応条件をCOを酸化するための酸素の量論比を1.2
〜1.4、かつ、CO及びH
2の両方を酸化するための酸素の量論比を
0.6〜0.7、かつ、一酸化炭素及び水素の含有比を
容量比で水素/一酸化炭素=
0.71〜1.33とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガス中のCO低減システム。”である。
ここで、本願出願当初の明細書の段落[0012]に記載の“本発明(1)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、CO
2PSA装置、CO除去器、CO
2ガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCO
2ガス中のCO低減方法であって、
前記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、
前記CO
2PSA装置を経たオフガスである分離回収CO
2ガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去することを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガス中のCO低減方法である。”は、参考発明である。
この点、本願出願当初の明細書の段落[0013]〜[0023]に記載の本発明(2)〜(12)についても同じく、参考発明である。
【0013】
本発明(2)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質部を含むメンブレンリフォーマー、CO除去器、CO
2ガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法であって、上記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、上記メンブレンリフォーマーを経たオフガスである分離回収CO
2ガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去することを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法である。
【0014】
本発明(3)は、本発明(1)〜(2)のいずれかの水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法において、COを酸化するための酸素の量論比を1.2以上とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法である。
【0015】
本発明(4)は、本発明(1)〜(3)のいずれかの水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法において、CO及びH
2の両方を酸化するための酸素の量論比を1.0以下とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法である。
【0016】
本発明(5)は、本発明(1)〜(4)のいずれかの水素製造システムが、オンサイト方式の水素ステーションで設置する水素製造システムであることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法である。
【0017】
本発明(6)は、本発明(1)〜(5)のいずれかの水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法において、前記炭化水素系燃料が天然ガス、都市ガスまたはLPガスであることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減方法である。
【0018】
本発明(7)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、CO
2PSA装置、CO除去器、CO
2ガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムであって、上記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、CO
2PSA装置を経たオフガスである分離回収CO
2ガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去するようにしてなることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガス中のCO低減システムである。
【0019】
本発明(8)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質部を含むメンブレンリフォーマー、CO除去器、CO
2ガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムであって、上記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、上記メンブレンリフォーマーを経たオフガスである分離回収CO
2ガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去するようにしてなることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムである。
【0020】
本発明(9)は、本発明(7)〜(8)のいずれかの水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムにおいて、COを酸化するための酸素の量論比を1.2以上とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムである。
【0021】
本発明(10)は、本発明(7)〜(9)のいずれかの水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムにおいて、CO及びH
2の両方を酸化するための酸素の量論比を1.0以下とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムである。
【0022】
本発明(11)は、本発明(7)〜(10)のいずれかの水素製造システムが、オンサイト方式の水素ステーションで設置する水素製造システムであることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムである。
【0023】
本発明(12)は、本発明(7)〜(11)のいずれかの水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムにおいて、前記炭化水素系燃料が天然ガス、都市ガスまたはLPガスであることを特徴とする水素製造システムにおけるCO
2ガスからのCO低減システムである。
【発明の効果】
【0024】
(1)COを酸化するための量論比の1.2(酸素濃度0.6%)以上の空気を導入することにより、COを完全に酸化除去することができる(
図4)。これに関連するデータはこれまで報告されておらず、本発明者が本発明に係る今回の取り組みにより初めて明らかにできた結果である。
【0025】
(2)本発明におけるCO選択酸化触媒の例としては、Ru系CO選択酸化触媒(田中貴金属社製:TSSA−5)、Ru−Pt系CO選択酸化触媒(田中貴金属社製:TSSB−2)などを使用することができる。一方、
図4から、排気ガス中(酸化ガス雰囲気中)の未燃成分を処理するPd系燃焼触媒〔キャタラー(株)社製:RTC−B2〕では、COを除去することができなかった。このことから、CO選択酸化触媒の有効性が確認、証明された。なお、この関連で、RTC−B2(Pd系)が未燃成分を処理する燃焼触媒として有効であることに何ら変わりはないことはもちろんである。
【0026】
(3)CO選択酸化触媒は酸化ガス雰囲気中では急速に担持貴金属がシンタリングし、性能劣化することが本出願人の研究で分かっている。
CO選択酸化触媒について、COを酸化するための酸素の量論比である1.2〜1.4、COとH
2を酸化するための酸素の量論比である0.6〜0.7で耐久試験を実施したところ、長期間の性能を維持することができた(
図5)。