特許第5795280号(P5795280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京瓦斯株式会社の特許一覧

特許5795280水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム
<>
  • 特許5795280-水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム 図000007
  • 特許5795280-水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム 図000008
  • 特許5795280-水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム 図000009
  • 特許5795280-水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム 図000010
  • 特許5795280-水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム 図000011
  • 特許5795280-水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム 図000012
  • 特許5795280-水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795280
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20150928BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20150928BHJP
   C01B 31/20 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C01B3/38
   C01B3/56 Z
   C01B31/20 B
   C01B31/20 C
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-77702(P2012-77702)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203648(P2013-203648A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮 純
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−116604(JP,A)
【文献】 特開2004−250240(JP,A)
【文献】 特開平10−130010(JP,A)
【文献】 特開平11−209117(JP,A)
【文献】 特開2004−323263(JP,A)
【文献】 特開平01−313301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/38
C01B 3/56
C01B 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、CO2PSA装置、CO除去器、CO2ガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システムであって、前記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、前記CO2PSA装置を経たオフガスである分離回収CO2ガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去するようにしてなるCO低減システムであって、
前記CO除去器における反応条件をCOを酸化するための酸素の量論比を1.2〜1.4、かつ、CO及びH2の両方を酸化するための酸素の量論比を0.6〜0.7、かつ、一酸化炭素及び水素の含有比を容量比で水素/一酸化炭素=0.71〜1.33とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法及びシステムに関し、より詳しくは、(1)炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、COPSA装置、COガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法及びCO低減システム、並びに、(2)炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質部を含むメンブレンリフォーマー、CO除去器、COガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法及びCO低減システムに関する。
【0002】
なお、本明細書中、水素PSA装置とはPSA方式でガス中の水素を分離する装置の意味であり、またCOPSA装置(CO−PSA装置も同じ)とはPSA方式でガス中のCOを分離する装置の意味である。
【背景技術】
【0003】
炭化水素系燃料である都市ガスから製造する改質水素は、水素ステーションにおける主要な水素供給源の1つである。
その一方で、改質水素を製造する水素製造プロセスから排出されるCOは地球温暖化の原因物質とされていることから、排出COをCCSする(すなわち、排出CO2を回収貯留する)ことが求められている。図1に示すフローのように回収した液化CO中(回収液化CO)にはCO(一酸化炭素)が0.1%弱(%=vol%、以下“%”について同じ)含まれており、これではドライアイスなどの工業用原料として有効利用できない可能性がある。
【0004】
家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム)での水素製造装置に使用実績のあるCO選択酸化触媒は、改質水素ガス(水素75%、CO=20%、メタン=4%)中の数%オーダーのCOを僅かな空気(O/CO=1〜2、CO酸化除去の量論比で2〜4)を添加することで数ppmにまで低減することができる。
【0005】
一方、COガス中のCOを除去するには、添加した空気が多過ぎると触媒自体が酸化され、触媒活性を維持できなくなる可能性がある。同じく、添加した空気が多過ぎると添加した空気自体が不純物となってしまう。それかと云って添加空気量を減らせば、COを除去できなくなってしまう。それらの要件を満たすには、適切なシステム設計と適切な添加空気量に制御することが必要とされている。
【0006】
〈従来の技術〉
本願出願人の開発、出願に係る、都市ガスを原料ガスとして製造した改質水素から不純物を除去する先行技術として、COを液化する際にプロセス条件を改善することにより、不純物であるCOやN、Oを分離する技術(特許文献1)がある。また、水素を含有するガス中のCO除去触媒で、CO酸化反応の選択性が高く、水蒸気存在下においても、低O2/CO比条件(1、2、3)でCO除去率の高い触媒に関する技術(特許文献2)があるが、実施例においてO2/CO比が1未満のデータについては開示されておらず、水素ガスが僅かにしか含有されていない条件下で、COガスが選択的に除去できる点について示唆されていない。
【0007】
また、先に開発され、近年実用化されつつある家庭用燃料電池コジェネレーションシステムは、都市ガスや天然ガスなどから製造した改質水素中に含まれる数%のCO(一酸化炭素)を空気と酸化反応させることで除去する技術が適用されており、その酸化反応にはCO選択酸化触媒が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−116604号公報
【特許文献2】特許第4172139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、改質水素中に含まれる数%のCOを酸化剤ガスである空気で酸化するための上記CO選択酸化触媒は、改質水素中の還元雰囲気において使用される。何故なら、酸化雰囲気ガス中ではCO選択酸化触媒での担持貴金属が酸化し、失活してしまうからである。そのため、COガス中のCOを除去するために、CO選択酸化触媒を使用する場合、導入した空気によって当該CO選択酸化触媒が酸化して、性能低下してしまうと言う問題があり、解決すべき課題となっていた。
【0010】
そこで本発明は、水素製造システムにおけるCOガス中のCO低減方法及びCO低減システムであって、数%オーダーのCOを含有するCOガスから、数ppmオーダーまでCOを選択酸化して除去する方法及びシステムに関して、不純物の混入を避け、かつ、CO選択酸化触媒の性能劣化を抑制する制御方法及び制御システムを提供することを目的とするものである。
【0011】
〈本発明の活用〉
将来の水素ステーションの普及に向けて、都市ガスから製造した改質水素の付加価値を向上させるため、COを回収することが求められている。また、回収したCOの有効利用先の拡大のため、回収COを精製する技術が必要とされている。本発明を活用することにより、水素ステーションにおける都市ガスから製造した改質水素の付加価値を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、“炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、CO2PSA装置、CO除去器、CO2ガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システムであって、前記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、前記CO2PSA装置を経たオフガスである分離回収CO2ガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去するようにしてなるCO低減システムであって、前記CO除去器における反応条件をCOを酸化するための酸素の量論比を1.2〜1.4、かつ、CO及びH2の両方を酸化するための酸素の量論比を0.6〜0.7、かつ、一酸化炭素及び水素の含有比を容量比で水素/一酸化炭素=0.71〜1.33とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減システム。”である。
ここで、本願出願当初の明細書の段落[0012]に記載の“本発明(1)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、CO2PSA装置、CO除去器、CO2ガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減方法であって、前記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、前記CO2PSA装置を経たオフガスである分離回収CO2ガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去することを特徴とする水素製造システムにおけるCO2ガス中のCO低減方法である。”は、参考発明である。
この点、本願出願当初の明細書の段落[0013]〜[0023]に記載の本発明(2)〜(12)についても同じく、参考発明である。
【0013】
本発明(2)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質部を含むメンブレンリフォーマー、CO除去器、COガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法であって、上記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、上記メンブレンリフォーマーを経たオフガスである分離回収COガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去することを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法である。
【0014】
本発明(3)は、本発明(1)〜(2)のいずれかの水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法において、COを酸化するための酸素の量論比を1.2以上とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法である。
【0015】
本発明(4)は、本発明(1)〜(3)のいずれかの水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法において、CO及びHの両方を酸化するための酸素の量論比を1.0以下とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法である。
【0016】
本発明(5)は、本発明(1)〜(4)のいずれかの水素製造システムが、オンサイト方式の水素ステーションで設置する水素製造システムであることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法である。
【0017】
本発明(6)は、本発明(1)〜(5)のいずれかの水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法において、前記炭化水素系燃料が天然ガス、都市ガスまたはLPガスであることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法である。
【0018】
本発明(7)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、COPSA装置、CO除去器、COガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムであって、上記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、COPSA装置を経たオフガスである分離回収COガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去するようにしてなることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガス中のCO低減システムである。
【0019】
本発明(8)は、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質部を含むメンブレンリフォーマー、CO除去器、COガス液化装置を備えてなる水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムであって、上記CO除去器においてCO選択酸化触媒を使用し、上記メンブレンリフォーマーを経たオフガスである分離回収COガス中のCOを酸素により選択的に酸化し、不純物であるCOをppmオーダーまで除去するようにしてなることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムである。
【0020】
本発明(9)は、本発明(7)〜(8)のいずれかの水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムにおいて、COを酸化するための酸素の量論比を1.2以上とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムである。
【0021】
本発明(10)は、本発明(7)〜(9)のいずれかの水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムにおいて、CO及びHの両方を酸化するための酸素の量論比を1.0以下とすることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムである。
【0022】
本発明(11)は、本発明(7)〜(10)のいずれかの水素製造システムが、オンサイト方式の水素ステーションで設置する水素製造システムであることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムである。
【0023】
本発明(12)は、本発明(7)〜(11)のいずれかの水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムにおいて、前記炭化水素系燃料が天然ガス、都市ガスまたはLPガスであることを特徴とする水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減システムである。
【発明の効果】
【0024】
(1)COを酸化するための量論比の1.2(酸素濃度0.6%)以上の空気を導入することにより、COを完全に酸化除去することができる(図4)。これに関連するデータはこれまで報告されておらず、本発明者が本発明に係る今回の取り組みにより初めて明らかにできた結果である。
【0025】
(2)本発明におけるCO選択酸化触媒の例としては、Ru系CO選択酸化触媒(田中貴金属社製:TSSA−5)、Ru−Pt系CO選択酸化触媒(田中貴金属社製:TSSB−2)などを使用することができる。一方、図4から、排気ガス中(酸化ガス雰囲気中)の未燃成分を処理するPd系燃焼触媒〔キャタラー(株)社製:RTC−B2〕では、COを除去することができなかった。このことから、CO選択酸化触媒の有効性が確認、証明された。なお、この関連で、RTC−B2(Pd系)が未燃成分を処理する燃焼触媒として有効であることに何ら変わりはないことはもちろんである。
【0026】
(3)CO選択酸化触媒は酸化ガス雰囲気中では急速に担持貴金属がシンタリングし、性能劣化することが本出願人の研究で分かっている。
CO選択酸化触媒について、COを酸化するための酸素の量論比である1.2〜1.4、COとHを酸化するための酸素の量論比である0.6〜0.7で耐久試験を実施したところ、長期間の性能を維持することができた(図5)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は本発明適用前の先行技術である水素製造システムを説明する図である。
図2図2は本発明及び実験方法を説明する図である。
図3図3は本発明を説明する図である。
図4図4は本発明で使用するCO選択酸化触媒と排気ガス用酸化触媒のCO除去に係る実験結果を説明する図である。
図5図5は本発明で使用するCO選択酸化触媒の耐久試験結果を示す図である。
図6図6は本発明で使用し得るCO選択酸化触媒(TSSA−2、TSSA−5)の特性を示す図である(SV=6,600/h)。
図7図7は本発明で使用し得るCO選択酸化触媒(TSSA−2、TSSA−5)の特性を示す図である(SV=10,000/h)。
【0028】
〈発明の説明〉
本発明は、水素製造システムにおけるCOガス中のCO低減方法であり、CO選択酸化触媒を劣化させずに、COガス中に含まれる一酸化炭素(CO)を選択酸化除去する方法及びシステムを提供するものである。
【0029】
水素ステーション内に水素製造装置を設置して製造した改質水素すなわちオンサイト改質水素は、多くの場合、PSA(Pressure Swing Adsorption)法やメンブレン(メンブレンリフォーマー)方式のガス分離技術を利用している。それらの方法で分離回収したCOガス中には不純物としてCOやH、CHなどが数%含まれている。その1例として、本出願人が実証試験を実施している水素ステーションにおいて、PSA方式を採用したオンサイト改質水素を製造した際に分離回収したCOには、不純物としてCO=1%、H=1%、CH=0.5%(残りはCO)が含まれている。
【0030】
本発明は、上記のような組成の分離回収COガスからCO選択酸化触媒を使用して、COガスに含まれる不純物であるCOをppmオーダーまで除去する水素製造システムにおけるCOガスからのCO低減方法である。そのために、添加する空気は、COを酸化するための量論比の1.2以上、COとHを酸化するための量論比の1以下とする。これにより、COガスに含まれる不純物であるCOを完全に除去し、かつ、Hを残すことでCOガスを還元雰囲気に保つことができるため、CO選択酸化触媒の酸化による劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
PSA法による水素精製では、吸着剤を用いて高圧下で不純物を吸着除去し、常圧あるいは減圧下で不純物を吸着剤から脱着・再生を行う循環操作で高純度の水素を得ることができるため、従来の深冷分離法や化学薬品による吸収法などと比べて、加熱や冷却を必要とせず、操作性、経済性において利点を有する。
【0032】
水素PSA装置に導入される原料ガスについては、原料ガスを得るプロセスによって水素濃度が異なるが、水素以外の不純物ガスとして、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素などが含まれている。これらの不純物ガスを含み且つ目的成分である水素を含む原料ガスから不純物ガスを取り除くために吸着剤を用いる。各種吸着剤により、主に吸着する物質は異なっているが、吸着量は圧力により変化する。
【0033】
つまり、高圧下では不純物を多量に吸着し、低圧下では少量しか吸着しない。この差を利用して不純物を吸着除去する。また、一般的に用いられる吸着剤は、水素をほとんど吸着しないため、水素を分離することができる。水素PSAでは、その原理を利用して、高圧下で不純物ガスを吸着し、高純度の水素を取り出す吸着工程と、低圧下で不純物を脱着する吸着剤の再生工程を連続的に繰り返すことで、水素の精製を行う方法である。
【0034】
〈従来の水素製造からCO回収までの工程〉
図1は、原料ガスとして都市ガスを例にし、脱硫器を経て、水素製造からCO回収までの工程を説明する図である。図1のとおり、順次、水蒸気改質器1、CO変成器2、水素PSA装置3、CO−PSA装置4、CO液化装置、液化COボンベが配置される。水蒸気改質器1とCO変成器2とで水素製造装置が構成されている。
【0035】
本例での原料ガスである都市ガスは、付臭剤成分である硫黄化合物が脱硫器で脱硫され、次いで水蒸気改質器1へ導入される。水蒸気改質器1において原料ガスが水蒸気改質され、生成改質ガスはCO変成器2へ導入される。CO変成器2において、CO変成反応(CO+HO→CO+H)により生成改質ガス中のCOがHへ変えられる。
【0036】
CO変成器2からの改質ガスは、水素PSA装置3へ導入された後、さらにCO−PSA装置4へ導入される。水素PSA装置3では吸着剤を用いて高圧下で不純物を吸着除去し、ここで水素を分離精製し、高純度の製品水素として収得する。水素を分離精製した残りのガスすなわちオフガスは、さらにCO−PSA装置4(PSA方式でCOを分離する装置)へ導入される。CO−PSA装置4では、COとCO以外のガスであるオフガスとに分離される。
【0037】
COとCO以外のガスであるオフガスは前述水蒸気改質器1での燃焼用燃料として利用される。一方、CO−PSA装置4で分離されたCOガスは、CO液化装置へ導入されて液化される。液化COはボンベに収容され、液化COとしての用途に供される。
【0038】
以上のように、COガスは液化COとして回収されるが、図1に記載するフローのように回収した液化CO中にはCO(一酸化炭素)が0.1%弱(%=vol%、本明細書中“%”について同じ)含まれており、これではドライアイスなどの工業用原料として有効利用できない可能性がある。
【0039】
家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム)の水素製造装置に使用実績のあるCO選択酸化触媒は、改質水素ガス中(水素75%、CO=20%、メタン=4%)の数%オーダーのCOを僅かな空気(O/CO=1〜2、CO酸化除去の量論比で2〜4)を添加することで数ppmにまで低減することができる。
【0040】
一方、COガス中のCOを除去する際には、添加した空気が多過ぎると触媒自体が酸化され、触媒活性を維持できなくなる可能性がある。また、添加した空気が多過ぎると添加した空気自体が不純物となってしまう。それかと云って、添加空気量を減らせば、COを除去できなくなってしまう。それら上記要件を満たすには、適切なシステム設計と適切な添加空気量に制御することが必要である。
【0041】
そこで本発明は、水素製造システムにおけるCOガス中のCO低減方法であって、数%オーダーのCOを含有するCOガスから、数ppmオーダーまでCOを選択酸化除去する方法に関して、不純物の混入を避け、かつ、CO選択酸化触媒の性能劣化を抑制する制御方法を提供するものである。
【0042】
〈〈本発明(1)、(3)〜(6)〉及び〈本発明(7)、(9)〜(12)〉における水素製造からCO回収までの工程(図2)〉
図2は、本発明(1)、(3)〜(6)及び本発明(7)、(9)〜(12)における水素製造からCO回収までの工程を説明する図である。
【0043】
なお、〈本発明(1)、(3)〜(6)〉における(3)〜(6)とは、本発明(1)及び(2)に従属する(3)〜(6)のうち、〈本発明(1)に従属する分〉の〈(3)〜(6)〉との意味であり、この点〈本発明(7)、(9)〜(12)〉についても同様である。
【0044】
前述〈従来の水素製造からCO回収までの工程(図1)〉で対象とする水素製造システムにおいては、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、COPSA装置、COガス液化装置を備えて構成されている。
【0045】
これに対して、本発明(1)、(3)〜(6)及び本発明(7)、(9)〜(12)においては、〈従来の水素製造からCO回収までの工程(図1)〉において配置する、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、COPSA装置、COガス液化装置に加えて、当該COPSA装置に続き“CO除去器”を配置する。すなわち〈従来の水素製造からCO回収までの工程(図1)〉における“COPSA装置”と“COガス液化装置”との間に“CO除去器”を配置する。
【0046】
そのように、本発明(1)、(3)〜(6)及び本発明(7)、(9)〜(12)においては、水素製造システムを“炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、COPSA装置、CO除去器、COガス液化装置を備えてなる水素製造システム”とすることを必須とする。
【0047】
図4に、TSSA−5、TSSB−2、RTC−B2の各触媒につき、CO選択酸化触媒と排気ガス用酸化触媒のCO転化率及びCO選択酸化率に係る実測データを示している。すなわち、図4は、本発明(1)、(3)〜(6)及び本発明(7)、(9)〜(12)で使用するCO選択酸化触媒と排気ガス用酸化触媒のCO除去に係る実験結果を説明する図である。図4中左側縦軸はTSSA−5、TSSB−2におけるCO転化率ならびにCO選択酸化率、右側縦軸はRTC−B2におけるCO転化率ならびにCO選択酸化率である。
【0048】
図4のとおり、TSSA−5でのCO転化率は、酸素濃度0.5%で78%、酸素濃度0.6%で100%、酸素濃度0.75%でもそのまま100%のCO転化率を維持している。また、同じくTSSA−5でのCO選択酸化率は、酸素濃度0.5%で79%、酸素濃度0.6で83%、酸素濃度0.75%では70%のCO選択酸化率を示している。
【0049】
また、図4のとおり、TSSB−2でのCO転化率は、酸素濃度0.5%で84%、酸素濃度0.6%で94%、酸素濃度0.75%で99%のCO転化率を示している。また、同じくTSSB−2でのCO選択酸化率は、酸素濃度0.5%で84%、酸素濃度0.6%で77%、酸素濃度0.75%では67%のCO選択酸化率を示している。
【0050】
一方、図4のとおり、RTC−B2でのCO転化率は、酸素濃度0.5%で4.2%、酸素濃度0.6%で5%、酸素濃度0.72%で7.1%のCO転化率を示している。また、同じくRTC−B2でのCO選択酸化率は、酸素濃度0.5%で4.2%、酸素濃度0.6%で4%、酸素濃度0.72%では4.7%のCO選択酸化率を示している。
【0051】
表1に通常のPSA方式(図1参照)によるガス組成を示し、表2に本発明(1)、本発明(7)に係るCO選択酸化触媒を組み合わせた場合(図2参照)のガス組成を示している。表3は、後述〈本発明(2)、(3)〜(6)及び本発明(8)、(9)〜(12)における水素製造からCO回収までの工程(図3)〉に関し、〈本発明(1)、(3)〜(6)、本発明(7)、(9)〜(12)における水素製造からCO回収までの工程(図2)〉に係る[表2]のデータに対応するデータを示している。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
CO選択酸化触媒は、酸化ガス雰囲気中では急速に担持貴金属がシンタリングし、性能劣化することが本出願人の研究で明らかになっている。COを酸化するための量論比の1.2〜1.4、COとH2を酸化するための量論比0.6〜0.7で耐久試験を実施したところ、長期間の性能を維持することができた。図5に、図4で用いた各種触媒のうちTSSA−5につき、その耐久試験の結果、経過を示している。耐久試験の条件、プロセス条件は、それぞれ表4、表5のとおりである。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
〈本発明(2)、(3)〜(6)〉及び〈本発明(8)、(9)〜(12)〉における水素製造からCO回収までの工程(図3)〉
図3は、本発明(2)、(3)〜(6)及び本発明(8)、(9)〜(12)における水素製造からCO回収までの工程を説明する図である。
前述〈従来の水素製造からCO回収までの工程(図1)〉で対象とする水素製造システムにおいては、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器から順次、CO変成器、水素PSA装置、COPSA装置、COガス液化装置を備えて構成されている。
【0059】
これに対して、本発明(2)、(3)〜(6)及び本発明(8)、(9)〜(12)においては、〈従来の水素製造からCO回収までの工程(図1)〉のうち、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器からCOPSA装置までの工程、すなわち、炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質器、CO変成器、水素PSA装置及びCOPSA装置の工程をメンブレンリフォーマーに置き換えたものに相当している。
【0060】
そのように、本発明(2)、(3)〜(6)及び本発明(8)、(9)〜(12)においては、水素製造システムを“炭化水素系燃料の水蒸気改質による水蒸気改質部を含むメンブレンリフォーマー、CO除去器、COガス液化装置を備えてなる水素製造システム”とすることを必須とする。この点以外の構成については、前述本発明(1)、(3)〜(6)及び本発明(7)、(9)〜(12)と同様である。
【0061】
本発明(1)〜(12)のいずれにおいても、そのCO除去器にはCO選択酸化触媒が配置される。CO選択酸化触媒としては、例えば、Ru系CO選択酸化触媒(田中貴金属社製:TSSA−5)、Ru−Pt系CO選択酸化触媒(田中貴金属社製:TSSB−2)などを使用することができる。
【0062】
図6〜7にそれらのTSSA−5、TSSA−2の実例(性能例)を示している(http://pro.tanaka.co.jp/products/groupf/f5.html)。図6〜7のとおり、水素と水蒸気が多く含有されるガス中において、O/CO=2.0とした場合において、COを数ppmにまで低減することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 水蒸気改質器
2 CO変成器
3 水素PSA装置
4 CO−PSA装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7