特許第5795320号(P5795320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5795320有機エレクトロルミネッセンス素子のための材料
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  • 特許5795320-有機エレクトロルミネッセンス素子のための材料 図000043
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795320
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子のための材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/24 20060101AFI20150928BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C07D251/24CSP
   C09K11/06 690
   C09K11/06 640
【請求項の数】15
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2012-539207(P2012-539207)
(86)(22)【出願日】2010年10月18日
(65)【公表番号】特表2013-510889(P2013-510889A)
(43)【公表日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2010006343
(87)【国際公開番号】WO2011060859
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年10月18日
(31)【優先権主張番号】102009053644.2
(32)【優先日】2009年11月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】フランツ、アダム・ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】アネミアン、レミ
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−145372(JP,A)
【文献】 特表2002−527553(JP,A)
【文献】 特開2009−182088(JP,A)
【文献】 特表2009−516652(JP,A)
【文献】 特開2007−049055(JP,A)
【文献】 特開2007−223904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0141390(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/124627(WO,A1)
【文献】 特表2012−526804(JP,A)
【文献】 特開2010−111851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(19)の化合物。
【化1】
(式中、以下が、使用される記号と添え字に適用される。
、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、Cl、Br、I、F、CN、NO、N(R、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、-CR=CR-、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、それらが結合する原子と一緒にまたは2個以上の隣接する置換基Rは、それらが結合する原子と一緒に、モノ-あるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を互いに形成してもよく;
少なくとも一つのRは、1以上の基Rにより置換されてよいトリアジンを含むことを特徴とし、または、少なくとも一つのRは、1以上の基Rにより置換されてよい六員環複素環式芳香族環構造であり、および、少なくとも一つのRは、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とし、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、CR=CR、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、2個以上の基Rは、それらが結合する原子と一緒に互いに、モノ-あるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であり;ここで、2個以上の基Rは、それらが結合する原子と一緒に互いに、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
少なくとも一つの基Rが、トリアジンであるならば、これは、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい1,3,5-トリアジンもしくは1,2,4-トリアジンであり、ここで、基Rは、水素もしくは重水素ではないことを特徴とし、;または、少なくとも一つの基Rが、六員環複素環式芳香族基であるならば、夫々が1以上の基Rにより置換されてよいトリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジンもしくはピリジンから選ばれ、ここで、基Rは、水素もしくは重水素ではないことを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
基Rは、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とする、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
トリアジン置換基RとRおよびピリミジン置換基Rが、以下に示される基から選ばれことを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の化合物。
【化2-1】
【化2-2】
(式中、破線は、この基から骨格への結合を示す。)
【請求項5】
式(28)、(33)および(34)の化合物から選ばれる、請求項1〜4何れか1項記載の化合物。
【化3】
(式中、使用される記号と添え字は、請求項1に示される意味を有する。)
【請求項6】
ビス(3,5-ジブロモ)ベンゾフェノンと、置換あるいは非置換2-リチオビフェニル、2-リチオジフェニルエーテル、2-リチオジフェニルチオエーテル、2-(2-リチオフェニル)-2-フェニル-1,3-ジオキサン、2-リチオフェニルジフェニルアミンもしくは対応するグリニャール化合物とを反応させて、トリアリールメタノールを得、酸性条件下の環化が続き、随意に、臭素基のさらなる反応に続くことを含む、請求項1〜5何れか1項記載の化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5何れか1項記載の少なくとも一つの化合物と少なくとも一つのさらなる化合物を含む混合物。
【請求項8】
少なくとも一つのさらなる化合物が、蛍光もしくは燐光ドーパントである請求項7記載の混合物
【請求項9】
請求項1〜5何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項7または8記載の混合物と一以上の溶媒を含む調合物。
【請求項10】
溶媒が、有機溶媒である請求項9記載の調合物。
【請求項11】
請求項1〜5何れか1項記載の化合物または請求項7または8記載の混合物の、電子素子での使用。
【請求項12】
電子素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項11記載の使用。
【請求項13】
請求項1〜5何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項7または8記載の混合物を含む、電子素子。
【請求項14】
電子素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)または有機光受容器より成る群から選ばれる、請求項13記載の電子素子。
【請求項15】
請求項1〜5何れか1項記載の化合物が、発光層中で、随意にさらなるマトリックス材料との混合物として、蛍光もしくは燐光化合物のためのマトリックス材料としておよび/または請求項1〜5何れか1項記載の化合物が、電子輸送層または正孔障壁層中で電子輸送材料としてまたは正孔障壁材料として使用されることを特徴とする、請求項14記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体とそれの電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関する。
【0002】
有機半導体は、多くの異なる電子用途で開発されている。これら有機半導体が機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、特に、US 4539507、US 5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。しかしながら、さらなる改善が、高品質で長寿命の表示装置用のこれらの素子の使用に対して、まだ、望まれている。したがって、特に、青色発光有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命と効率での改善に対する必要性が未だ現在も存在する。さらに、化合物は高い熱安定性と高いガラス転移温度を有し、分解することなく昇華される必要がある。特に、高温度での使用に対して、高いガラス転移温度は、長寿命を達成するために重要である。
【0003】
したがって、改善された材料、たとえば、蛍光および燐光エミッターのためのホスト材料に対する需要が引き続き存在するが、さらなる改善が、電荷輸送材料、すなわち、正孔-および電子-輸送材料、電荷障壁材料および励起子障壁材料においても望まれている。これら材料の特性は、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命と効率を制限することが多い。
【0004】
驚くべきことに、置換9,9-ジアリールフルオレンと窒素含有六員環複素環式芳香族基、特に、トリアジンとの組み合わせが、高い効率と長い寿命を可能とすることが、今回、見出された。
【0005】
したがって、本発明は、これらの化合物とそれの電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関する。置換基に応じて、本発明の化合物は、特に、蛍光および燐光化合物のためのマトリックスとして、励起子障壁材料、正孔障壁材料、電子輸送材料として適している。本発明の材料は、効率の増加とともに、先行技術にしたがう材料と比べて同じか改善された電子素子の寿命を可能とする。さらに、これらの化合物は、高い熱安定性を有する。一般的に、これらの材料は高いガラス転移温度を有することから、電子素子での使用のために非常にきわめて適切である、対応する拡張された構造、特に、インデノフルオレン構造とインデノカルバゾール構造は、同様に、非常に良好な特性を有する。良好な溶解性と良好なフィルム形成性は、化合物を溶液からの加工のために特に適切ともする。
【0006】
したがって、本発明は、式(1)の化合物に関する。
【化1】
【0007】
ここで、以下が、使用される記号と添え字に適用される。
【0008】
Yは、単共有結合、C(R、CO、O、S、SO、SO、NR、PRまたはP(O)Rであり、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、ここで、各環中の最大三個のXは、Nであり、
Aは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、ここで、各環中の最大三個のAは、Nであり、
、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、-CR=CR-、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、それらが結合する原子と一緒にまたは2個以上の隣接する置換基Rは、それらが結合する原子と一緒に、モノ-あるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
Xに結合する少なくとも一つの置換基Rは、1以上の基Rにより置換されてよいトリアジンであることを特徴とし、
または、少なくとも一つの置換基Rは、1以上の基Rにより置換されてよい六員環複素環式芳香族環構造であり、および、少なくとも一つのRは、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とし、
は、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基またはこれらの構造の組み合わせであり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、-CR=CR-、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、2個以上の基Rは、それらが結合する原子と一緒に、互いに、モノ-あるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であり;ここで、2個以上の基Rは、これらが結合する原子と一緒に互いに互いに、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよい。
【0009】
明確さのために、9,9-ジフェニルフルオレンの構造と番号付けが、以下に示される。
【化2】
【0010】
本発明の意味でのアリール基は、6〜60個のC原子を含む;本発明の意味でのヘテロアリール基は、1〜59個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。ここで、アリール基もしくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または単純な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合アリールもしくはヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、キノリン、イソキノリン等を意味するものと解される。
【0011】
本発明の意味での芳香族環構造は、環構造中に6〜60個のC原子を含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造は、1〜59個の芳香族環原子と少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含む。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、その代わりに、加えて、複数のアリールもしくはヘテロアリール基が、たとえば、sp混成のC、NもしくはO原子のような短い非芳香族単位(H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、例えば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン、ベンゾフェノン等のような構造も、本発明の意味での芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。同様に芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、複数のアリールもしくはヘテロアリール基が、単結合により互いに結合される構造、たとえば、ビフェニル、ターフェニルもしくはビピリジンを意味するものと解される。
【0012】
本発明の目的のためには、C〜C40-アルキル基は、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH基が、上記した基により置換されていてよく、特に好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび2,2,2-トリフルオロエチルを意味するものと解される。本発明の意味でのアルケニル基は、特に、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニルもしくはシクロオクテニルを意味するものと解される。本発明の意味でのアルキニル基は、特に、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルヘプテニルもしくはオクチニル基を意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、特に好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、又は2-メチルブトキシを意味するものと解される。5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、各場合にも、上記した基Rにより置換されていてもよく、任意の所望の部位で、芳香族又は複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンゾフェナントレン、ベンゾアントラセン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-あるいはトランス-インデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザピレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールに由来する基を意味するものと解される。
【0013】
具体例では、式(1)の化合物は、式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)または(15の化合物に対応する。
【化3-1】
【化3-2】
【0014】
ここで、使用される記号と添え字は、上記に示される意味を有する。
【0015】
式(2)〜(15)中で、Xは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、CRである。
【0016】
上記記載したとおり、本発明は、少なくとも一つの基Rが、トリアジンであることを特徴とし、または、少なくとも一つのRが、六員環複素環式芳香族環構造であることを特徴とし、同時に少なくとも一つの基Rが、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とする。これらは、夫々1以上の基Rにより置換されてよい。
【0017】
少なくとも一つの基Rが、トリアジンであるならば、これは、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい1,3,5-トリアジンもしくは1,2,4-トリアジン、特に、好ましくは、1,3,5-トリアジンである。基Rは、水素もしくは重水素ではなく、好ましくは、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、特に、好ましくは、フェニル、ビフェニル、ターフェニルもしくはコーターフェニルである。
【0018】
少なくとも一つの基Rが、六員環複素環式芳香族環基であるならば、これは、好ましくは、夫々が1以上の基Rにより置換されてよいトリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジンもしくはピリジン、特に、好ましくは、1,3,5-トリアジンもしくはピリミジンから選ばれる。基Rは、水素もしくは重水素ではなく、好ましくは、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、特に、好ましくは、フェニル、ビフェニル、ターフェニルもしくはコーターフェニルである。
【0019】
特に、好ましいトリアジン置換基RとRおよびピリミジン置換基Rは、以下に示される構造である。
【化4-1】
【化4-2】
【0020】
ここで、破線は、この基からの骨格への結合を示す。
【0021】
本発明のさらに好ましい具体例では、式(1)の化合物は、式(16)または(17)の化合物に対応する。
【化5】
【0022】
ここで、使用される記号と添え字は、上記に示される意味を有する。
【0023】
式(1)の化合物に対する、特に、好ましい構造は、式(18)〜(27)の化合物である。
【化6-1】
【化6-2】
【0024】
ここで、使用される記号と添え字は、上記に示される意味を有する。
【0025】
式(24)および(25)において、炭素ブリッジに結合する、すなわち、基Yに結合する基Rは、各場合に、互いに独立して、好ましくは、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、特に、好ましくは、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルであり、ここで、二個のフェニル基は、互いに環を形成し、そのためにスピロ系を形成してよい。
【0026】
さらに、特に、好ましい化合物は、以下に示される式(28)〜(34)の化合物である。
【化7】
【0027】
ここで、使用される記号と添え字は、上記に示される意味を有する。
【0028】
化合物(33)中で、基Rは、特に、好ましくは、Rが芳香族環構造を示し、基Rが、窒素含有六員環複素環式芳香族基、特に、置換あるいは非置換1,3,5-トリアジンを含むように、選択される。トリアジン上の置換基は、好ましくは、芳香族基である。
【0029】
式(1)の好ましい化合物の例は、以下に示される構造(1)〜(122)である。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【化8-5】
【化8-6】
【化8-7】
【化8-8】
【化8-9】
【化8-10】
【化8-11】
【化8-12】
【化8-13】
【化8-14】
【化8-15】
【化8-16】
【化8-17】
【化8-18】
【化8-19】
【0030】
本発明による式(1)化合物は、当業者に一般的に知られる合成方法により調製することができる。本発明の対称置換された化合物に使用される出発化合物は、たとえば、3,3’,5,5’-テトラブロモベンゾフェノン(Eur.J.Org.Chem.2006,2523-2529)であり得る。これが、たとえば、スキーム1にしたがって、置換あるいは非置換2-リチオビフェニル、2-リチオジフェニルエーテル、2-リチオジフェニルチオエーテル、2-(2-リチオフェニル)-2-フェニル-1,3-ジオキサンもしくは2-リチオフェニルジフェニルアミンと反応して、対応するトリアリールメタノールを得、ついで、酸性条件下、たとえば、酢酸と臭化水素等の鉱酸の存在下、環化される。この反応に必要とされる有機金属化合物は、n-ブチルリチウム等のアルキルリチウム化合物を使用する対応する臭化アリール(2-ブロモビフェニル、2-ブロモジフェニルエーテル、2-ブロモジフェニルチオエーテル、2-(2-ブロモフェニル)-2-フェニル-1,3-ジオキサン、2-ブロモフェニルジフェニルアミン等)の金属転移により調製することができる。同様に、対応するグリニャール化合物を使用することができる。
【0031】
スキーム1
【化9】
【0032】
こうして製造された四臭化物は、当業者に知られる方法によりさらに変換することができる。ボロン酸との(スズキカップリング)または有機錫化合物との(ネギシカップリング)パラジウム触媒反応は、本発明による芳香族もしくは複素環式芳香族化合物を生じる(スキーム2)。ここで、少なくとも一つの基Rは、窒素含有六員環ヘテロ環を含むか、または少なくとも一つのBrは、トリアジン基を含む基により置換される。
【0033】
スキーム2
【化10】
【0034】
本発明は、さらに、ビス(3,5-ジブロモ)ベンゾフェノンと、置換あるいは非置換2-リチオビフェニル、2-リチオジフェニルエーテル、2-リチオジフェニルチオエーテル、2-(2-リチオフェニル)-2-フェニル-1,3-ジオキサン、2-リチオフェニルジフェニルアミンもしくは対応するグリニャール化合物とを反応させて、トリアリールメタノールを得、酸性条件下の環化が続き、随意に、臭素基のさらなる反応に続くことを含む、式(1)の化合物の製造方法に関する。ここで、少なくとも一つの基Rは、窒素含有六員環ヘテロ環を含むか、または少なくとも一つのBrは、トリアジン基を含む基により置換される。
【0035】
上記記載された本発明の化合物、特に、臭素、沃素、トリフレート、トシレート、ボロン酸、ボロン酸エステル等の反応性脱離基で置換された化合物は、対応するダイマー、トリマー、テトラマーもしくはペンタマー、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーのコアの調製のためのモノマーとして使用することができる。ここで、オリゴマー化またはポリマー化は、好ましくは、ハロゲン官能基またはボロン酸官能基を介して実行される。これは、少なくとも一つの基RまたはR、好ましくは、二個の基Rおよび/またはRが、夫々、特に、上記言及した基から選ばれる反応性脱離基である式(2)〜(15)の化合物に、特に、あてはまる。
【0036】
したがって、本発明は、さらに、一以上の式(1)の化合物を含むダイマー、トリマー、テトラマーもしくはペンタマー、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーに関し、式(1)の一以上の基RもしくはRまたは一以上のH原子が、ダイマー、トリマー、テトラマーもしくはペンタマー中の式(1)の化合物間の結合または式(1)の化合物からポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーへの結合を含む。
【0037】
本発明の意味でのオリゴマーは、少なくとも六個の式(1)の単位を有する化合物を意味するものと解される。本発明の意味でのポリマーは、少なくとも十個の式(1)の単位を有するモノマー単位から構築される化合物を意味するものと解される。ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーは、共役、部分共役もしくは非共役であってよい。トリマー、テトラマー、ペンタマー、オリゴマーまたはポリマーは、直鎖もしくは分岐鎖であってよい。直鎖状に連結された構造においては、式(1)の単位は、互いに直接的に連結し得るか、または、2価の基を介して、たとえば、置換あるいは非置換アルキレン基を介してか、ヘテロ原子を介してか、または、2価の芳香族基あるいは複素環式芳香族基を介して、互いに直接連結し得る。分岐状構造においては、3個以上の式(1)の単位は、たとえば、三価あるいは多価基、たとえば、三価あるいは多価芳香族もしくは複素環式芳香族基を介して連結し、分岐状トリマー、テトラマー、ペンタマー、オリゴマーもしくはポリマーを生じてもよい。
【0038】
ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、オリゴマーおよびポリマー中の式(1)の繰り返し単位に対して、同じ選好が上記記載のとおり適用される。したがって、好ましい繰り返し単位は、再度、上記記載の式の単位である。
【0039】
オリゴマーまたはポリマーの調製のために、本発明によるモノマーは、さらなるモノマーとホモ重合するか共重合する。適切で好ましいコモノマーは、フルオレン(たとえば、EP842208もしくはWO00/22026にしたがう)、スピロビフルオレン(たとえば、EP707020、EP894107もしくはWO06/061181にしたがう)、パラ-フェニレン(たとえば、WO92/18552にしたがう)、カルバゾール(たとえば、WO04/070772もしくはWO04/113468にしたがう)、チオフェン(たとえば、EP1028136にしたがう)、ジヒドロフェナントレン(たとえば、WO 05/014689にしたがう)、シス-およびトランス-インデノフルオレン(たとえば、WO4/041901もしくはWO04/113412にしたがう)、ケトン(たとえば、WO05/040302にしたがう)、フェナントレン(たとえば、WO05/104264もしくはWO07/017066にしたがう)、または複数のこれらの単位から選ばれる。ポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーは、通常、さらなる単位を、たとえば、(たとえば、WO07/068325にしたがう)ビニルトリアリールアミンまたは(たとえば、WO 06/003000にしたがう)燐光金属錯体等の発光(蛍光もしくは燐光)単位および/または電荷輸送単位をも含む。本発明による繰り返し単位は、電子のための電荷輸送単位として特に適している。
【0040】
本発明は、さらに、少なくとも一つの式(1)の化合物または対応するダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、オリゴマーもしくはポリマーと少なくとも一つのさらなる化合物を含む混合物に関する。さらなる化合物は、式(1)の化合物が、マトリックス材料として使用されるならば、特に、蛍光もしくは燐光ドーパントであることができる。適切な蛍光および燐光ドーパントは、有機エレクトロルミネッセンス素子に関連して、以下に言及され、本発明の混合物のためにも好ましい。さらなる化合物は、式(1)の化合物が、正孔輸送または電子輸送化合物であるならば、ドーパントでもあり得る。適切なドーパントは、有機エレクトロルミネッセンス素子に関連して、以下に言及される。
【0041】
溶液または液相からの加工のために、たとえば、スピンコーティングによるまたは印刷プロセスによる加工のために、式(1)の化合物の溶液または調合物が必要である。二以上の溶媒の混合物を使用することも好ましいかもしれない。適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-あるいはp-キシレン、メチルベンゾエート、ジメチルアニソール、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサンまたはこれら溶媒の混合物である。
【0042】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの式(1)の化合物と一以上の溶媒、特に、有機溶媒を含む調合物に関する。これらは、好ましくは、溶液、懸濁液またはミニエマルジョン、特に、溶液である。この型の溶液を調製することができる方法は、当業者に知られており、たとえば、WO02/072714、WO03/019694およびそこに引用された文献に記載されている。
【0043】
本発明の式(1)の化合物と対応するダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーは、電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)での使用に適している。置換に応じて、化合物は、異なる機能と層で使用される。ここで、好ましい具体例は、上記式である。
【0044】
したがって、本発明は、さらに、式(1)の化合物とまたは対応するダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーの電子素子での、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関する。
【0045】
本発明は、さらに、なお、少なくとも一つの式(1)の化合物または対応するダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーを含む電子素子に関する。ここで、電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)または有機光受容器より成る群から選ばれる。
【0046】
特に、好ましいものは、アノード、カソードと少なくとも一つの発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも一つの有機層は、発光層または別の層であってよく、少なくとも一つの式(1)の化合物または対応するダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーを含む。
【0047】
カソードは、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)のような種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造を含む。多層構造の場合、たとえば、Agのような比較的高い仕事関数を有するさらなる金属を前記金属に加えて使用することもでき、たとえば、Mg/Ag、Ca/Ag、Ba/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と銀を含む適切な合金、たとえば、MgとAgを含む合金も適切である。高い誘電定数を有する材料の薄い中間層を金属カソードと有機半導体との間に挿入することも好ましいかもしれない。この目的のために適切なものは、たとえば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩である(たとえば、LiF、LiO、CsF、CsCO、BaF、MgO、NaF等)。たとえば、リチウムキノリナート等の有機金属化合物も使用することができる。この層の層厚は、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0048】
アノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eV超の高い仕事関数を有する。この目的に適切なものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高い還元電位を有する金属である。他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましいかもしれない。いくつかの用途のためには、少なくとも一つの電極は、有機材料の照射(O-SC)もしくは光のアウトカップリング(OLED/O−laser)の何れかを可能とするために、透明か半透明でなければならない。透明か半透明の好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特に、伝導性のドープされたポリマー、たとえば、PEDOTまたはPANIである。
【0049】
カソード、アノードおよび発光層に加えて、有機エレクトロルミネセンス素子は、さらなる層を含んでもよい。これらは、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、電子障壁層、励起子障壁層、電荷生成層および/または有機あるいは無機p/n接合から選択される。さらに、層、特に、電荷輸送層は、ドープされていてもよい。層のドープは、改善された電荷輸送のために有利であるかもしれない。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在する必要はないこと、および層の選択は、常に使用される化合物、特に、また素子が蛍光または燐光であるかどうかに依存することが指摘されねばならない。
【0050】
本発明のさらに好ましい具体例では、有機エレクトロルミネセンス素子は、複数の発光層を含み、少なくとも一つの有機層は、少なくとも一つの式(1)の化合物を含む。これらの発光層は、特に、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発し、青色および黄色、オレンジ色もしくは赤色発光することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に、好ましいものは、3層構造であり、すなわち、3個の発光層を有する構造であり、ここで、これらの層の少なくとも一つは、少なくとも一つの式(1)の化合物を含んでよく、その3層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、たとえば、WO 05/011013参照。)。広帯域発光を有し、それにより白色発光を呈するエミッターが、同様に白色発光のために適している。白色発光ルミネセンス素子のためには、一以上の発光層が、燐光発光であり、一以上の発光層が、蛍光発光であることが、同様に好ましい。
【0051】
本発明の好ましい具体例では、式(1)の化合物は、発光層中で蛍光もしくは燐光化合物のためのマトリックス材料として、特に、燐光化合物のためのマトリックス材料として使用される。
【0052】
マトリックスとドーパントとを含む系中のマトリックス材料は、系中により高い割合で存在する成分を意味するものと解される。一つのマトリックスと複数のドーパントを含む系中では、マトリックスは、混合物中でその割合が最も高いものであるものを意味するものと解される。
【0053】
具体例では、式(1)の化合物は、エミッターとともに混合物中でマトリックス材料としてのみ使用される。さらなる具体例では、式(1)の化合物は、さらなるマトリックス材料とエミッターと一緒に混合物として使用される。好ましくは、マトリックス材料のこの混合物の一成分は、正孔輸送化合物であり、他方は、式(1)の電子輸送化合物である。
【0054】
式(1)の化合物が、混合物として使用されることができる適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 04/013080、WO 04/093207、WO 06/005627もしくはWO 2010/006680による芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドあるいは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、またはトリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)、mCBPもしくはWO 05/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527もしくはWO 08/086851に記載されたカルバゾール誘導体、たとえば、未公開出願DE 102009023155.2もしくはDE 1020090231021.5にしたがうインデノカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160にしたがうアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 07/137725にしたがうバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 05/111172にしたがうシラン、たとえば、WO 06/117052にしたがうアザカルバゾールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2010/015306、WO 07/063754もしくはWO 08/056746にしたがうトリアジン誘導体、または、たとえば、EP 652273もしくはWO 09/062578にしたがう亜鉛錯体、たとえば、WO 2010/054729にしたがうジアザシロールあるいはテトラアザシロール誘導体またはUS2009/0136779もしくは未公開出願DE 102009048791.3にしたがう架橋カルバゾール誘導体より成る群から選択される。通常のエミッターよりも短い波長で発光するさらなる燐光エミッターは、コホストとして、混合物中に同様に存在してもよい。さらに、二個以上の式(1)の化合物の混合物をマトリックス材料として使用することも可能である
式(1)の化合物が、発光層中で発光化合物のためのマトリックス材料として使用されるならば、一以上の燐光材料(トリプレットエミッター)と組み合わせて使用することができる。本発明の意味での燐光発光は、比較的高いスピン多重度、すなわち>1のスピン状態を有する励起状態から、特に、励起三重項状態からのルミネッセンスを意味するものと解される。本発明の目的のために、すべてのルミネッセンス遷移金属錯体とすべてのルミネッセンスランタノイド錯体、特に、ルミネッセンスイリジウム、白金、オスミウム、金および銅化合物は、燐光発光材料と呼ばれる、そこで、式(1)の化合物と発光化合物の混合物は、エミッターとマトリックス材料の全混合物を基礎として、99〜1重量%、好ましくは、98〜10重量%、特に、好ましくは、97〜60重量%、特に、95〜75重量%の式(1)化合物を含む。対応して、混合物は、エミッターとマトリックス材料の全混合物を基礎として、1〜99重量%、好ましくは、2〜90重量%、特に、好ましくは、3〜40重量%、特に、5〜25重量%のエミッターを含む
適切な燐光化合物(三重項エミッター)は、適切な励起により、好ましくは、可視域で発光する化合物を含み、加えて、20より大で、好ましくは、38より大で、84より小な、特に好ましくは、56より大で、80より小な原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む。使用される燐光発光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウムもしくは白金を含む化合物である
上記エミッターの例は、出願WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、WO 05/033244、WO 05/019373、US2005/0258742、 WO 09/146770、WO 10/015307、WO 10/031485、WO 10/054731およびWO 10/054728により明らかにされる。さらに適切なものは、たとえば、DE 102009007038.9、DE 102009011223.5およびDE 102009013041.1にしたがう錯体である。一般的に燐光OLEDに対して先行技術にしたがって使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子の分野の当業者に知られるあらゆる燐光化合物が適切であり、当業者は進歩性を必要とすることなく、さらなる燐光錯体を使用することができる。
【0055】
式(1)の化合物が、蛍光化合物のためのマトリックス材料として使用されるならば、発光層中のマトリックス材料の割合は、50.0〜99.9重量%、好ましくは、80.0〜99.5重量%、特に、好ましくは、90.0〜99.0重量%である。対応してドーパントの割合は、0.1〜50.0重量%、好ましくは、0.1〜20.0重量%、特に、好ましくは、0.5〜15重量%、非常に、特に、好ましくは、1.0〜10.0重量%である。
【0056】
好ましいドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテルおよびアリールアミンの種から選択される。モノスチリルアミンは、1個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。ジスチリルアミンは、2個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。トリスチリルアミンは、3個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。テトラスチリルアミンは、4個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。スチリル基は、特に好ましくは、スチルベンであり、さらに置換されていてもよい。対応するホスフィンとエーテルは、アミンと同様に定義される。本発明の意味でのアリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含む。これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は、特に、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環構造である。それの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンまたは芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、一個のジアリールアミノ基が、アントラセン基に、好ましくは、9-位で直接結合している化合物を意味するものと解される。芳香族アントラセンジアミンは、二個のジアリールアミノ基が、アントラセン基に、好ましくは、9,10-位で直接結合している化合物を意味するものと解される。芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンおよび芳香族クリセンジアミンも同様に定義され、ここで、ジアリールアミノ基は、好ましくは、1-位または1,6-位でピレンに結合している。さらに好ましいドーパントは、たとえば、WO06/122630にしたがうインデノフルオレンアミンまたはインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO 08/006449にしたがうベンゾインデノフルオレンアミンまたはベンゾインデノフルオレンジアミンおよびたとえば、WO07/140847にしたがうジベンゾインデノフルオレンアミンまたはジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。スチリルアミンの種からのドーパントの例は、置換あるいは非置換トリスチルベンアミンまたは、たとえば、WO 06/000388、WO 06/058737、WO 06/000389、WO 07/065549およびWO 07/115610に記載されるさらなるドーパントである。さらに適切な蛍光ドーパントは、WO 2010/012328に開示された縮合芳香族炭化水素である。
【0057】
本発明のなおさらなる具体例では、式(1)の化合物は、電子輸送層もしくは正孔障壁層中の電子輸送もしくは正孔障壁材料として使用される。電子欠損複素環式芳香族基Rおよび/またはRに基づいて、これらの化合物は、非常に良好な電子輸送特性を有する。さらに、化合物は電子供与性化合物でドープされることが好ましいかもしれない。本発明の意味での正孔障壁層は、発光層と電子輸送層との間に位置し、発光層に直接隣接する層である。式(1)の化合物が、電子輸送材料として使用されるならば、これをさらなる化合物との混合物として使用することが好ましいかもしれない。好ましい混合物成分は、アルカリ金属化合物、好ましくは、リチウム化合物、特に、好ましくは、Liq(リチウムキノリナート)またはLiq誘導体である。
【0058】
本発明のさらなる具体例では、式(1)の化合物は、正孔輸送材料もしくは正孔注入材料もしくは電子障壁材料もしくは励起子障壁材料として使用される。正孔輸送を改善する好ましい基は、たとえば、基N(R)、SまたはO、特に、ブリッジYとしてのN(R)であり、または、電子リッチ複素環式芳香族基、特に、基Rとしてのチオフェン、ピロールまたはフランである。化合物は、好ましくは、正孔輸送材料もしくは正孔注入材料もしくは電子障壁材料もしくは励起子障壁材料として使用される。本発明の意味での正孔注入層は、アノードに直接隣接する層である。本発明の意味での正孔輸送層は、正孔注入層と発光層との間に位置する層である。本発明の意味での電子障壁層もしくは励起子障壁層は、アノード側の発光層に直接隣接する層である。式(1)の化合物が、正孔輸送材料または正孔注入材料として使用されるならば、それらは、電子受容性化合物、特に、F4-TCNQでもしくはEP1476881もしくはEP1596445に記載された化合物でドープされることが好ましいかもしれない。
【0059】
式(1)の繰り返し単位は。ポリマー中で、ポリマー骨格として、正孔輸送単位としておよび/または電子輸送単位として使用されることもできる。ここで、好ましい置換パターンは、上記記載されたものに対応する。
【0060】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10−7mbar未満でもよいことに留意する必要がある。
【0061】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相インクジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、そして構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0062】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、またはLITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷もしくはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のために必要である。高い溶解性は、化合物の適切な置換により達成することができる。ここで、個々の材料の溶液だけでなく、複数の化合物、たとえば、マトリックス材料とドーパントを含む溶液を適用することもできる。
【0063】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、一以上の層が溶液から適用され、一以上の他の層が気相堆積により適用されるハイブリッドシステムとして製造することも可能である。したがって、たとえば、式(1)の化合物と燐光ドーパントを含む発光層を溶液から適用し、その上に正孔障壁層および/または電子輸送層を真空気相堆積により適用することも可能である。式(1)の化合物と燐光ドーパントを含む発光層が、同様に、真空気相堆積により適用され、一以上の他の層が溶液から適用されることもできる。代替として、加えて、たとえば、発光層を溶液から適用し、その上に式(1)の化合物を含む電子輸送層を随意に有機金属化合物と組み合わせて真空気相堆積により適用することも可能である。
【0064】
これらのプロセスは、当業者に一般的に知られており、当業者により、問題なく、上記定義される好ましい具体例の式(1)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に適用することができる。
【0065】
本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子の使用に関して、先行技術を超える以下の優位性を有する。
【0066】
1.本発明の化合物は、高い熱安定性を有する。
【0067】
2.本発明の化合物は、通常の有機溶媒中で高い溶解性と非常に良好なフィルム形成性を有し、そのため、溶液からの加工のために特にきわめて適切である。
【0068】
3.本発明の化合物を使用して製造されるOLEDは、一般的に、非常に長い寿命を有する。
【0069】
4.本発明の化合物を使用して製造されるOLEDは、一般的に、非常に長い高い量子効率を有する。
【0070】
本発明は、以下の例により、詳細に説明すされるが、それにより、本発明を限定するつもりではない。当業者は、発明性を要することなく、本発明のさらなる化合物を調製し、それらを電子素子に使用することができるだろうし、特許請求の範囲全体にわたって本発明を実施することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は素子の典型的構造を示す。
【0072】

以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下で、無水溶媒中で行われる。出発物質8と溶媒はたとえば、アルドリッチ(ALDRICH)から商業的に入手可能である。化合物1と5は、WO 09/124627にしたがって調製することができる。化合物2は、J. Mater. Chem. 2007, 17, 3714-3719と同様に調製することができる。
【0073】
例1:化合物4の調製
【化11】
【0074】
a)化合物3の調製:
850mlのジメチルスルホキシド、25.18g(1.1モル当量、0.099ミリモル)のビス(ピナコラート)ジボランと25.66g(2.9モル当量、0.261ミリモル)の酢酸カリウムが、35.0g(1モル当量0.090ミリモル)の化合物2、2.25g(3ミリモル)の1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)クロライド(ジクロロメタン(1:1)、Pd13%の錯体)が、引き続き、添加される。バッチは、100℃で3時間加熱され、ついで、室温まで冷却され、400mlの水が添加される。混合物は、酢酸エチルで抽出され、結合した有機相は、ついで、硫酸ナトリウムで乾燥され、減圧下蒸発される。精製は、再結晶化(ヘプタン)により実行され、ベージュ色の固形物(81.3%)を得る。
【0075】
b)化合物4の調製:
10.97g(1モル当量、0.017ミリモル)の化合物1、33.14g(4.4モル当量、0.076ミリモル)の化合物3と29.42g(8.0モル当量0.139ミリモル)の燐酸三カリウムが、250mlのトルエン、125mlのジオキサンと325mlの水中に懸濁される。1.270g(4.2ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、ついで、0.156g(0.7ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、この懸濁液に添加され、反応混合物は40時間還流下加熱される。冷却後、有機相は分離される。水性相は、ジクロロメタンで抽出され、結合した有機相は、ついで、硫酸ナトリウムで乾燥され、ろ過され、減圧下蒸発される。残留物は、ジメチルホルムアミドから再結晶化され、熱トルエンで抽出される。収率は、9.4g(6.1ミリモル)で、理論値の35.1%に対応する。
【0076】
例2:化合物9の調製
【化12】
【0077】
a)化合物6の調製:
20g(32.1ミリモル)の化合物5が、3.4g(19.2ミリモル)の沃素酸と4.9g(19.2ミリモル)の沃素とともに、10mlのクロロホルムと50mlの氷酢酸中に懸濁され、混合物は、80℃で加熱される。TLCチェック後、バッチは、室温まで冷却され、250mlの水が添加される。混合物は、塩化メチレンで抽出され、結合した有機相は、ついで、硫酸ナトリウムを使用して乾燥され、ろ過され、減圧下蒸発される。精製は、洗浄(エタノール)と再結晶化(トルエン/酢酸エチル)により実行され、無色の固形物(15.3g、理論値の64%)を得る。
【0078】
b)化合物7の調製:
化合物7の合成が、化合物3と同様に実行される。収率は、7.0g(9.2ミリモル)で理論値の46%に対応する。
【0079】
c)化合物9の調製:
化合物9の合成が、化合物4と同様に実行される。収率は、4.48g(5.2ミリモル)で理論値の57%に対応する。
【0080】
例3:化合物11の調製
【化13】
【0081】
a)化合物10の調製:
化合物10の合成が、化合物1と同様に実行される。79.8g(理論値の91.9%)の固形物が得られる。
【0082】
b)化合物11の調製:
10.0g(1モル当量、21ミリモル)の化合物10、20.1g(2.2モル当量、46ミリモル)の化合物3と53.3g(11.9モル当量、251ミリモル)の燐酸三カリウムが、200mlのトルエン、200mlのジオキサンと200mlの水中に懸濁される。この混合物は、アルゴンを使用して15分間脱気され、458mg(1.50ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、ついで、230mg(1.03ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、ついで、添加される。反応混合物は、16時間還流下加熱され、その間に白色沈殿物が堆積する。冷却後、0.60lの水と1lのジクロロメタンが添加され、有機相は分離される。有機相は、水で三度洗浄される。結合した有機相は、減圧下溶媒から解放される。得られた残留物は、200mlの熱エタノールで撹拌され、吸引ろ過され、さらなるエタノールで洗浄され、実質的に無色の固形物が残る。ジオキサンからの再結晶化により、1.90g(2.04ミリモル、理論値の96.5%)の無色の固形物を得る。
【0083】
例4:化合物15の調製
【化14】
【0084】
a)化合物12の調製:
化合物12の合成が、化合物3と同様に実行される。収率は、590mg(1.04ミリモル)で理論値の25%に対応する。
【0085】
b)化合物14の調製:
化合物14の合成が、化合物8と同様に実行される。6.80g(9.39ミリモル、理論値の27%)のベージュ色の固形物が得られる。
【0086】
c)化合物15の調製:
化合物15の合成が、化合物11と同様に実行される。収率は、8.00g(47.0ミリモル)で理論値の66%に対応する。
【0087】
例5:本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造と特性決定
TEG(WO 04/026886にしたがって合成)、TMM-1(DE 102008036982.9にしたがって合成)とTMM-2(WO 09/124627にしたがって合成)と、本発明によるTMM-3〜6の化合物は、明確さのために、以下に示される。
【化15】
【0088】
本発明による材料は、溶液から使用することができ、良好な特性を有し、顕著に単純な素子をもたらす。このような素子の製造は、ポリマー発光ダイオード(PLED)の製造に基づいており、文献(たとえば、WO 04/037887)に、何度も記載されてきた。本場合には、本発明の化合物または同様に可溶性の比較例の化合物(TMM-1およびTMM-2)が、トルエンまたはクロロベンゼン中に溶解される。このような溶液の典型的な固形物含量は、スピンコートにより達成される素子の典型的な層厚が、80nmであるならば、16〜25g/lである。図1は、この型の素子の典型的な構造を示す。構造化されたITO基板といわゆるバッファー層のための材料(PEDOT、実際にはPEDOT:PSS)は、商業的に入手可能である。(ITOは、テクノプリント社その他。PEDOT:PSSは、H.C.StackからのClevios Baytron P水性分散液。)。使用される中間層は、正孔注入層として機能し、この場合、メルク社のHIL-012が使用される。発光層は、不活性ガス、本場合はアルゴン雰囲気中でスピンコートにより適用され、120℃で10分間の加熱により乾燥される。最後に、バリウムとアルミニウムを含むカソードが、真空気相堆積により適用される。正孔障壁層および/または電子輸送層も、発光層とカソードとの間に真空気相堆積により適用され、中間層も一以上の層により置き代えられてもよく、引き続く溶液からの発光層の堆積加工工程により再度剥離しないという条件を満足せねばならないだけである。
【0089】
素子は、標準方法により特性決定される。言及したOLEDの例は、未だ最適化されていない。表1は、得られたデータを要約している。二個の三重項マトリックス材料は、例8、13および14の夫々中に1:1の比(化合物の重量に基づく)で存在する。ここで、加工された素子の場合、本発明による材料は、以前入手可能のものよりも、効率および/または寿命の点で優れていることが明らかである。
【0090】
有機エレクトロルミネッセンス素子の構造は、図1に示される。
【0091】
表1:図1の構造の素子で溶液加工材料を使用する結果
【表1】
図1