(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材は、印刷ブランケット、印刷プレート、印刷胴、シート、壁の平面、壁の曲面、エッチングされた表面、加工された表面、処理された表面、疎水性表面、又は、親水性表面、の少なくとも1つを含んで構成される請求項1又は2に記載の印刷装置。
前記噴射する手段は、水溶液ジェットシステム、連続フローインクジェットシステム、サーマルジェットシステム、又は、圧電ジェットシステム、の少なくとも1つを含んで構成される請求項1〜3のいずれか1つに記載の印刷装置。
前記印刷媒体は、紙、ガラス、ニトロセルロース、織物材料、金属、プラスチック、フィルム、ゲル、プレート、回路基板、シート、又は、布地、の少なくとも1つを含んで構成される請求項1〜6のいずれか1つに記載の印刷装置。
前記主物質は、キャリア、平版インキ、染料、タンパク質、核酸、小分子、生物由来サンプル、調合薬、セル、生体適合性ポリマー、治療用物質、診断用物質、非インキマーキング物質、導電性材料、絶縁性材料、熱伝導性材料、無線自動識別タグ、親水性部分、親油性部分、酸化シリコン、金属、機能性ポリマー、接着剤、磁性インキ、三次元相互接続構造、光学接着剤、紫外線硬化ポリマー、ポリマー発光ダイオード用材料、水、又は、水溶性有機化合物、の少なくとも1つを含んで構成される請求項1〜7のいずれか1つに記載の印刷装置。
前記クリーニングシステムは、回転ブラシ、ローラー、クリーニング液、ベルト、クリーニングウェブ、熱供給装置、空気供給装置、又は、静電装置、の少なくとも1つを含んで構成される請求項11に記載の印刷装置。
前記ゲート剤は、潜在的多官能性を有する化合物、親水性領域を有する化合物、親油性領域を有する化合物、イオン性領域を有する化合物、付着又は結合領域を有する化合物、パラートープを有する化合物、付着性を与える特定の化学部分を有する化合物、反発性を与える特定の化学部分を有する化合物、付着性を与える特定の構造領域を有する化合物、反発性を与える特定の構造領域を有する化合物、ポロキサマー、界面活性剤、溶媒、防腐剤、カール防止剤、しわ入り防止剤、ゲート剤定着剤、保湿剤、消毒剤、殺生物剤、着色剤、芳香、ポリマー、消泡剤、塩類、無機化合物、有機化合物、水、pH調整剤、pH維持剤、受容面調整剤、平版インキ調整剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、マレイン酸/オレフィンコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレン、水溶性有機化合物、又は、チキソトロピック液体、の少なくとも1つを含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の印刷装置。
前記表面への前記主物質の前記第2パターンの部分の付着性は、当該主物質が前記表面に塗布されてから、前記主物質の前記第2パターンの部分が前記印刷媒体に転写されるまでの間に変化しない、請求項1〜14のいずれか1つに記載の印刷装置。
前記ゲート剤は、当該ゲート剤によって覆われる前記主物質の前記第1パターンの部分を前記印刷媒体から分離させることで、前記主物質の前記第1パターンの部分の前記印刷媒体への転写を防止する、請求項1〜16のいずれか1つに記載の印刷装置。
前記基材は、印刷ブランケット、印刷プレート、印刷胴、シート、壁の平面、壁の曲面、エッチングされた表面、加工された表面、処理された表面、疎水性表面、又は、親水性表面、の少なくとも1つを含んで構成される請求項18〜20のいずれか1つに記載の印刷方法。
前記印刷媒体は、紙、ガラス、ニトロセルロース、織物材料、金属、プラスチック、フィルム、ゲル、プレート、回路基板、シート、又は、布地、の少なくとも1つを含んで構成される請求項18〜21のいずれか1つに記載の印刷方法。
前記主物質は、キャリア、平版インキ、染料、タンパク質、核酸、小分子、生物由来サンプル、調合薬、セル、生体適合性ポリマー、治療用物質、診断用物質、非インキマーキング物質、導電性材料、絶縁性材料、熱伝導性材料、無線自動識別タグ、親水性部分、親油性部分、酸化シリコン、金属、機能性ポリマー、接着剤、磁性インキ、三次元相互接続構造、光学接着剤、紫外線硬化ポリマー、ポリマー発光ダイオード用材料、水、又は、水溶性有機化合物、の少なくとも1つを含む、請求項18〜22のいずれか1つに記載の印刷方法。
前記主物質を転写する手段は、媒介ローラー、ベルト、又は、ブランケット胴、の少なくとも1つを含んで構成される請求項18〜24のいずれか1つに記載の印刷方法。
前記ゲート剤及び前記追加のゲート剤は、それぞれ単独で、潜在的多官能性を有する化合物、親水性領域を有する化合物、親油性領域を有する化合物、イオン性領域を有する化合物、付着若しくは結合領域を有する化合物、パラートープを有する化合物、付着性を与える特定の化学部分を有する化合物、反発性を与える特定の化学部分を有する化合物、付着性を与える特定の構造領域を有する化合物、反発性を与える特定の構造領域を有する化合物、ポロキサマー、界面活性剤、溶媒、防腐剤、カール防止剤、しわ入り防止剤、ゲート剤定着剤、保湿剤、消毒剤、殺生物剤、着色剤、芳香、ポリマー、消泡剤、塩類、無機化合物、有機化合物、水、pH調整剤、pH維持剤、受容面調整剤、平版インキ調整剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、マレイン酸/オレフィンコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレン、水溶性有機化合物、又は、チキソトロピック液体、の少なくとも1つを含む、請求項20に記載の印刷方法。
前記表面への前記主物質の前記第2パターンの部分の付着性は、当該主物質が前記表面に塗布されてから、前記主物質の前記第2パターンの部分が前記印刷媒体に転写されるまでの間に変化しない、請求項18〜27のいずれか1つに記載の印刷方法。
前記ゲート剤は、当該ゲート剤によって覆われる前記主物質の前記第1パターンの部分を前記印刷媒体から分離させることで、前記主物質の前記第1パターンの部分の前記印刷媒体への転写を防止する、請求項18〜29のいずれか1つに記載の印刷方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の一態様は、基材(substrate)に一時的に塗布されたゲート剤(gating agent
)を利用した高速可変印刷方法を提供することである。この方法は、基材を供給することと、基材上への噴射が可能なゲート剤組成物を基材に塗布して基材上にイメージを形成することを含む。ゲート剤組成物には、約15と30の間の親水性−親油性バランスを有する非イオン性組成物が0.05〜3重量%含まれる。ゲート剤組成物は、その粘度が約1〜約14センチポアズ(mPa・s)の範囲内となるように、最大約8重量%の粘度調整剤を含むこともできる。ゲート剤組成物の残りは水を含んで構成される。ゲート剤組成物は識別可能な量の染料、顔料、又はその他の着色剤を含まず、そしてゲート剤は約40dynes/cm(0.04N/m)未満の表面張力を有する。
【0016】
もう一つの態様においては、基材への物質の塗布を制御する装置は、基材からの物質をブロックする(阻止する)ゲート剤の使用を含む。その装置は、カートリッジとそのカートリッジ内に収められるゲート剤を含む。ゲート剤組成物は、非イオン性界面活性剤、粘度制御剤、及び水を含む。
【0017】
本明細書に開示された装置及び方法は、噴射技術を利用することで、直接基材に、又は、中間面(intermediate surface(媒介物の表面))に、ゲート剤を塗布する。要望通りにインキの塗布をブロックするあらゆる薬剤が利用可能である。本明細書に開示された実施形態は、ブロック及び転写補助組成物のいずれか一方(もしくは、両方)、又は、両方の特性を有する1つ以上の組成物を用いることを包含するので、ゲート剤は主物質(principal substance)に対する上記機能のいずれか一方又は両方を有するものとして、以下参照される。具体的に言うと、ゲート剤は、主物質の全部、ほぼ全部、又は一部の転写をブロックする。ゲート剤は、代わりに、又は、追加的に、主物質の全部、ほぼ全部、又は一部の転写を補助することが可能であり、又は、主物質の一部分をブロックし、かつ、他部分の転写を補助することが可能である。
【0018】
次に、図を見ると、
図1は、従来型のオフセット平版印刷機100を示している。従来の平版印刷工程においては、印刷されるイメージが親水性プレート102にエッチングされてインキが付着する疎水性部分が形成される。親水性プレート102は、版胴104に取り付けられ、回転して湿しシステム106及びインキシステム108を通過する。湿しシステム106は水供給装置107を含み、また、インキシステム108はインキ供給装置109を含む。親水性プレート102の親水性部分は、湿しシステム106によって湿らされる。油性のインキを用いることにより、インキは、プレート102の疎水性部分のみに付着する。
【0019】
ブランケット胴110が用いられる場合は、インキイメージが版胴104からブランケット胴110へと転写される。そして、このインキイメージが、ブランケット胴110と圧胴114との間のウェブ112(例えば、紙)に転写される。圧胴114を用いたウェブ112へのイメージ転写は、印刷されるイメージとウェブ112とを実質的に均等な圧力又は力で押圧することにより行われる。版胴104とウェブ112との間の媒介物としてゴムブランケットが用いられる場合には、この工程は一般に「オフセット印刷」と呼ばれる。プレート102は、エッチングが行われて版胴104に取り付けられているので、平版印刷は同一のイメージを何度も印刷する際に用いられる。平版印刷は、高品質の出力が得られるという点で、望ましい。4台の印刷機を連続して配置することにより、雑誌品質の4色のイメージ印刷が可能になる。
【0020】
図2は、平版印刷業界で周知のような、インキシステム202、プレート204、湿しシステム206、版胴208、ブランケット胴210、及び圧胴212を有する印刷機200を示している。プレート204は、その全体が親水性である(例えば、標準陽極酸化アルミニウムの酸化平版プレート)。但し、
図1の湿しシステム106は、
図2では、水溶液ジェットシステム214及びクリーニングシステム216に置き換えられている。
【0021】
水溶液ジェットシステム214は、湿しシステム206の前方に置かれ、一連のインクジェット型カートリッジ(例えば、バブルジェット(登録商標)カートリッジ、サーマルカートリッジ、圧電カートリッジ、連続フローカートリッジ等)を有する。カートリッジには、多数の孔があけられている。一般的な例としては、インクジェット型カートリッジは1インチ当り600ピクセルを有しており、多くの場合、1インチ当り300ピクセルずつ2列に配置されている。
【0022】
水溶液ジェットシステム214は、水溶液(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はこれらの組み合わせ)を噴射するために用いられる。本開示のある実施形態では、水溶液は1つ以上の界面活性剤(例えば、Air Products社製のSurfynol(登録商標))を含有する。この種の界面活性剤は、各分子の一端に親水基を有する一方、その他端に親油基を有する。1つ以上の界面活性剤を水溶液に添加することにより、水溶液の表面張力特性を改善することができ、また、例えば、平版インキなどの親油性溶液を引き付けるのに役立つ。
【0023】
インクジェットを用いて一枚の紙にインキ液滴を配置するのとほぼ同様に、水溶液ジェットシステム214の水溶液ジェットを用いて、親水性プレートに水溶液を配置することが可能である。ある実施形態においては、水溶液は従来型のインクジェット型ノズル(すなわち、ヘッド)を通じて噴出される。このようなインクジェット型ノズルには、例えば、HP、Lexmark、Spectra、Canon等の各社製の、既知のプリントカートリッジユニットのインクジェットノズルが含まれる。ある実施形態においては、水溶液ジェットシステム214は、様々な印刷速度及び出力解像度をサポートする。ジェットカートリッジやジェットヘッドの一例が、Murakami et al.U.S.Patent No.7,240,998に開示されている。連続システムには、Versamarkという商品名でコダック(Kodak)から市販されているシステムが含まれる。
【0024】
水溶液ジェットシステム214は、印刷されるイメージの全部又はその一部を、版胴208上に「プリント」又は噴射するために用いられる。例えば、イメージコントローラがデータシステムからイメージデータを受信することができる。このイメージデータは、印刷されるイメージ又は印刷されるネガイメージを表現する。このイメージデータには、比較的頻繁に変更される(例えば、ページごとに異なる)可変イメージデータ、変更頻度の少ない(例えば、100ページごとに異なる)準固定イメージデータ、不変の固定イメージデータ、及び、可変・準固定・固定の各イメージデータの組み合わせが含まれる。イメージデータの一部又は全部は、バイナリデータ、ビットマップデータ、ページ記述コード、又は、これらの組み合わせとして保存される。例えば、ある実施形態においては、ポストスクリプト(PostScript)やプリンタコマンド言語(PCL)などのページ記述言語(PDL)が、イメージデータを定義及び解釈するために用いられる。そして、データシステムは、水溶液ジェットシステム214を電子制御して、様々なタイプのイメージデータの一部又は全部が表現するイメージ(又はそのネガイメージ)を水溶液で版胴208にプリントする。
【0025】
本開示のある実施形態では、真空源又は熱源215が水溶液ジェットシステム214の隣に又はその近くに配置される。ある実施形態では、真空源又は熱源215は水溶液ジェットシステム214に組み込まれている。真空源又は熱源215は、プレート204又は版胴208にプリントされた後、水溶液に風を当てるか、乾燥させるか、あるいは、加熱することによって、水溶液ジェットシステム214により配置された各水溶液滴のサイズを小さくするために用いられる。代わりに、あらゆる処理条件(湿度等の周囲条件を含む)を操作して、水溶液滴の形成に影響を与えることも可能である。水溶液滴のサイズを制御する機能により、印刷イメージの品質を高めることができる。版胴208上のポジイメージは、湿しシステム206によって流し込まれる湿し水(fountain solution)に表されて、版胴208は、一般的な平版プレートと同様に濡らされる。インキシステム202からのインキは、ジェットシステム214によって供給されるイメージ領域に付着する。
【0026】
版胴208が1回転し、イメージをブランケット胴210に転写した後、版胴はクリーニングシステム216を通過して残留したインキ及び/又は水溶液が除去され、これにより、版胴208は次の回転で(又は所定回転後に)水溶液ジェットシステム214による新たなイメージプリントを行うことができる。クリーニングシステム216は、回転ブラシ、クリーニング液を含んだローラー、ベルト、クリーニング液で処理されたクリーニングウェブ、熱及び/又は空気を供給する装置、静電装置、又は、残留したインキ及び/又は水溶液を版胴208より除去するのに適切なその他の手段を含んで構成される。ある実施形態においては、ブランケット胴210についてもクリーニングシステム216と同様のクリーニングシステムが設けられており、イメージをウェブ218に転写した後、ブランケット胴210から残留物が除去される。また、ある実施形態では平版印刷で使われる湿し水に多少溶ける得る液体を含んでいるため、この溶解性は版胴208から可変イメージをクリーニングするのに役立つ。
【0027】
ある実施形態においては、版胴208は、従来の平版印刷技術によりプレート204にエッチングされた、特定の印刷ジョブに対する固定データの全てを有している。そして、水溶液ジェットシステム214を用いて、プレート204の特定部分に、可変又は準固定イメージデータによって表現されるジョブの可変部分のみを、イメージ化することができる。
【0028】
他の実施形態では、プレート204が用いられない。その代わりとして、当該技術分野で知られているように、版胴208の表面に物理的もしくは化学的処理、又は、ミーリング加工を行って、水溶液ジェットシステム214からの水溶液が付着するようにしている。また、版胴208に物理的もしくは化学的処理、又は、ミーリング加工を行って、固定データを含むと共に、水溶液を付着させて可変データを取り込めるようにしている。本開示のこれらの及び他の実施形態では、必要に応じて、ブランケット胴210を完全に除去し、イメージをウェブ218に直接転写するようにしてもよい。
【0029】
ある実施形態では、プレート204、版胴208、及び、ブランケット胴210のうちの1つ以上を、水溶液ジェットシステム214又は水溶液が有する様々な特性に応じてカスタマイズ又はデザインしてもよい。例えば、当該技術分野で知られているように、上記プレート及び胴のうちの1つ以上に特別な処理又はミーリング加工を行うことにより、特定の解像度やドットサイズのプリントヘッドから噴射された溶液のみが付着するようにすることも可能である。また、プレート及び胴に特別な処理を行い、特定のタイプの水溶液のみを付着させ、他のタイプの水溶液をはじくようにすることも可能である。例えば、特定の体積、比重、粘度、又は、その他の所望の特性を有する溶液のみをプレート及び胴に付着させ、所望の条件外の溶液をはじくようにすることが可能である。これにより、例えば、異物の混入を防ぐことができると共に、ある水溶液をプリント工程で用い、他の水溶液(異なる物理的特性を有するもの)をクリーニング工程で用いることができる。他の実施形態では、通常型の、一般用途用のプレート及び胴を用いる。
【0030】
一実施形態において、水溶液ジェットシステムは、パターン基材上に、水溶液、ゲート剤、又は潜在的多官能性(多官能性ポテンシャル)を有する機能剤(functional agent)、をプリント又は噴射する。一実施形態において、例えば、ゲート剤は、潜在的二官能性(二官能性ポテンシャル)を有するが、本明細書において、官能性の数はいくつであってもよい。例えば、ゲート剤は、潜在的多官能性(多官能性ポテンシャル)をそれぞれ有する一つ以上の化合物か、潜在的単官能性(単官能性ポテンシャル)をそれぞれ有する複数の化合物を含む。潜在的官能性(官能性ポテンシャル)又は官能性には、例えば、親水性領域、親油性領域、イオン性領域及びその他当該技術分野で周知の、化合物に対して付着性又は反発性を与える、化合物の特定の化学的部分及び/又は構造領域に起因する官能的な化合物部分が含まれる。本実施形態においては、第1の官能性はパターン基材に対する付着力を与え、第2の官能性は塗布される一つ以上の主物質への付着性を与える。
【0031】
別の実施形態においては、ゲート剤は、2つ以上の多官能性化合物を含んでもよく、この場合、各種多官能性化合物は、他の多官能性化合物と共通する少なくとも一つの官能性、及び、他の多官能性化合物と異なる少なくとも一つの官能性を有する。この例では、第1の多官能性化合物及び第2の多官能性化合物は、それぞれ同様のパターン基材上へプリントされるが、第1の多官能性化合物と第2の多官能性化合物の第2の官能性は、主物質が第1又は第2の多官能性化合物のいずれに付着可能であるかに関して異なる特性を有し、これは主物質が1種類の官能性のみと反応するからと考えられる。別の実施形態においては、潜在的単官能性(単官能性ポテンシャル)を有する化合物は、単一の多官能性化合物の場合と同様に、相互に作用して、多官能性を有する錯体(complexes)を形成する。本実施形態において、単官能性化合物は、一度に基材上に沈着される単一の組成物に含められてもよく、もしくは同時に沈着される分離した組成物に含められてもよく、あるいは基材上に連続して沈着される分離したゲート剤に含まれてもよい。
【0032】
本明細書において意図される多官能性化合物の一つの例としては、親水性である第1の官能基及び親油性である第2の官能基を有する化合物が含まれる。ゲート剤は、親水性表面あるいは親油性表面を有する基材上に噴射され、所望のパターンを表すのに用いられている。これにより、表面とゲート剤との間で同種の官能基が結び付いて、表面にゲート剤が付着されると共に、ゲート剤の反対の官能基が表面にはじかれて、表面に付着したゲート剤のパターンが形成される。
【0033】
同種の官能性(例えば、親水性又は親油性)を有するか、あるいは、表面には引き付けられずに、ゲート剤の第2の官能性に選択的に引き付けられ、そして、基材(至るところ、例えば、湿し水又は液体によってコーティングしている)の露出表面にはじかれるか、あるいは、基材の露出表面に付着不可能である、第2の組成物(例えば、主物質)は、噴射、浸漬、噴霧、ブラッシング、ローリング、又は、当業者に既知のあらゆる他の方法を用いて表面に塗布することができる。主物質の添加により、ゲート剤のパターンに対応する主物質のパターンが形成され、この結果、主物質のみが、ゲート剤の第2の官能性によって表面に付着される。更に、主物質の塗布後、1つ以上の追加的なステップ(例えば、クリーニングステップ)が実行され、これにより、主物質が、基材の他の領域ではなく、ゲート剤の第2の官能基のみに部位特異的に確実に付着する。この後、主物質は、第2の基材(例えば、イメージを印刷媒体に転写する中間(媒介)ローラー(例えば、ブランケット胴))、又は、印刷媒体に直接転写され、これにより、高精度かつクリーンな所望のプリントイメージを形成することができる。このようにして、主物質が後に付着するゲート剤を用いて、選択されたパターンが基材上に噴射され、この後、転写され、そして、印刷媒体上で永続的又は一時的に固定される。
【0034】
本明細書において意図される多官能性化合物の例としては、例えば、ポロキサマー又はエトキシ化アセチレンジオールなどの、少なくとも親水性の一部分及び親油性の一部分を有するポリマーが挙げられる。使用に適するポロキサマーは、化学式HO(CH
2CH
2O)
x(CH
2CHCH
3O)
y(CH
2CH
2O)
zHにより表すことができ、この場合に、x,y及びzは2〜130の範囲の整数を表し、特に、15〜100の値を取る。また、xとzとは同一の値を取るが、これらはyから独立して選択される。これらの中では、ポロキサマー188(x=75,y=30及びz=75)が使用可能であり、これは、BASF社からLutrol(登録商標)F 68(あるいはPluronic(登録商標)F 68)という商品名
で入手可能である。また、ポロキサマー185(x=19,y=30及びz=19)が使用
可能であり、これは、ISP社からLubrajel(登録商標)WAという商品名で入手可能である
。また、ポロキサマー235(x=27,y=39及びz=27)が使用可能であり、これ
は、BASF社からPluronic(登録商標)F 85という商品名で入手可能である。また、ポロキサマー238(x=97,=39及びz=97)が使用可能であり、これは、BASF社からPluronic(登録商標)F 88という商品名で入手可能である。このタイプにおける別の特定の界面活性剤は、BASF社製のPluronic(登録商標)123として知られる、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)ブロックコポリマーである。他の考えられる化合物は、ポリエチレンイミンエトキシレート等のエトキシレートを含む。加えて、BASF社製のPluronic(登録商標)127(ポロキサマー407)という商品名で知られているトリブロックコポリマー(x=106,y=70及びz=106)が使用可能である。更に、例を少し挙げると、ポロキサマー101、108、124、181、182、184、217、231、234、237、282、288、331、333、334、335、338、401、402、及び403が、それぞれ、ゲート剤に含まれ得る。使用に適するエトキシ化アセチレンジオールは、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(Air Product社製のSurfynol(登録商標)61)、及び/又は、2,4,7,9−テトラ−メチル−5−デシン−4,7−ジオール(Air Product社製のSurfynol(登録商標)104)を特に含み、そしてAir ProductのSurfynol(登録商標)400シリーズ界面活性剤(Surfynol(登録商標)420,440,465,そして485)を含む。Surfynol(登録商標)400シリーズ界面活性剤は、様々な量の2,4,7,9-テトラ-メチル-5-ディシン-4,7-ジオール(Air ProductのSurfynol(登録商標)104)を有するエチレンオキシド、2つの対称疎水基の中間に親水性部分を有する非イオン性分子を反応さることによって製造される。さらに、好適な界面活性剤は、OSi Specialties,Inc(Danbury,Conn.,以前は、Union Carbide Organo Silicon Products,Systems and Services)から入手できるシロキサンブロックポリマー、SILWET(商標)7200を含む。他の好適なゲート剤成分は、マレイン酸/オレフィンコポリマー、BASFのSokalan(登録商標)である。他の界面活性剤は、約1200の分子量を有するポリエチレンイミン(PEI)、分子量約50,000を有するエトキシ化PEI、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリ(オキシエチレン)セチル・エーテル(例えば、Atlas ChemicalsからのBrij(登録商標)56又はBrij(登録商標)58)、を含み得る。他の考えられる化合物は、各分子の一端に親水基を、各分子の他端に親油基を含み得る。
【0035】
多官能性化合物の意図されるさらなる例には、一端で微粒子を受容するように官能化されかつ反対端が例えばパターン表面などの基材に付着する、自己組織化単分子膜の形成に関する物質(例えば、アルキルシロキサン、酸化物材料上の脂肪酸、アルカンチオレート、アルキルカルボン酸塩等)が含まれる。本開示では、好適な官能性を提供するものとして当業者に既知の他の同様の多官能性化合物が意図される。更に、本開示にて意図されるゲート剤は、1つ以上の多官能性化合物に加えて、例えば、水、水溶性有機化合物、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0036】
好適な水溶性有機化合物は、アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、又はtert−ブチルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド)、カルボン酸、エステル(例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、及びエチレンカーボネート)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、又はジオキサン)、グリセリン、グリコール、グリコールエステル、グリコールエーテル、ケトン(例えば、アセトン、ジアセトンアルコール、又はメチルエチルケトン)、ラクタム(例えば、N−イソプロピルカプロラクタム、又はN−エチルバレロラクタム)、ラクトン(例えば、ブチロラクトン)、有機硫化物(有機スルフィド)、スルホン(例えば、ジメチルスルホン)、有機スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、又はテトラメチレンスルホキシド)、及び、これらの派生物、並びに、これらの混合物を含む。
【0037】
さらに、ゲート剤の意図される成分は、溶媒、防腐剤、ゲート剤定着材、粘度調整剤、保湿剤(例えば、プロピレン・グリコール)、殺生物剤(バイオサイド)、着色剤、芳香、界面活性剤、ポリマー、発泡剤、消泡剤、塩類、無機化合物、有機化合物、水、pH調整剤、及びこれらあらゆる組合せを含む。本明細書で意図される主物質のいくつかの例としては、平版インキ、染料、着色料等が挙げられる。
【0038】
粘度調整剤(viscosity modifying agents)について数例を挙げると、これには、プロピレングリコール、セルロース系材料(例えば、CMC)、キサンタンゴム、又は、BASF社
製のJoncryl(登録商標)60、Joncryl(登録商標)52、Joncryl(登録商標)61、Joncryl(登録商標)678、Joncryl(登録商標)682が含まれる。ゲート剤には、加圧又は撹拌によって粘
度が変わるチキソトロピー液も含まれる。ゲート剤の表面張力を高めることによっても、拡散を抑制することができる。表面張力調整剤(surface tension modifiers)には、特
に、ポロキサマー(poloxamer)(例えば、BASF社製のPluronic(登録商標))、又は、Air Product社製のSurfynols(登録商標)が含まれる。加えて、ゲート剤組成物は、他の
薬剤(例えば、カール防止剤、シワ入り防止剤、ブロック剤用定着剤、平版インキ調整剤(litho ink modifiers)、受容面調整剤(receiving surface modifier)、消毒剤、殺
生物剤(バイオサイド)、pH調整剤、及びpH保持剤)を含有することが可能である。
【0039】
考察される印刷媒体は、主物質が付着可能な任意の物質を含み、紙、ガラス、ニトロセルロース、布地、織物材料、金属、プラスチック、フィルム、ゲル、及びこれらの組合せを含む。
【0040】
本明細書に開示される実施形態においては、ゲート剤は、例えば、ポロキサマー、エトキシ化アセチレンジオール又は他のエトキシ化界面活性剤等、一つ以上の非イオン性界面活性剤を0.05〜3重量%含み得る。このような界面活性剤は、親水基と親油基の両方を含み、約15と30の間の親水性−親油性バランスを有する。望ましくは、非イオン性界面活性剤は、10〜80%のポリオキシエチレンを含み得る。ゲート剤組成物の残りは、水を含み得る。
【0041】
ゲート剤組成物は、1から14センチポアズ(cP)の範囲内の粘度を実現するために粘度調整剤を含み得る。さらに望ましくは、粘度は、2〜8cP、最も望ましくは3〜5cPに設定される。ある実施形態においては、ゲート剤組成物は、拡散を抑制する表面張力調整剤をさらに含み得る。望ましくは、表面張力は、40dynes/cm(0.04N/m)未満に設定され、さらに望ましくは、35dynes/cm(0.035N/m)未満の表面張力が実現され得る。表面張力調整剤は、とりわけ、ポロキサマー(例えば、BASFのPluronic(登録商
標))又はAir ProductのSurfynols(登録商標)、(登録商標)(例えば、Surfynol(登録商標)400シリーズ界面活性剤)、を含み得る。
【0042】
一実施形態においては、ゲート剤は、約1%から約50%まで、又は約2%から約40%まで、又は約4%から約25%まで、又は約5%から約20%まで、又は約20%のポリエチレンイミンエトキシレート、約50%から約99%まで、又は約60%から約98%まで、又は約75%から96%まで、約80%から約95%まで、又は約80%の水、及び選択的にポリエチレングリコール400、選択的にポリビニルピロリドン、及び/又は選択的にプロピレングリコール含み得る。さらに、ゲート剤は、噴霧又は噴射によって塗布され得る液体システムの場合、約1から約14センチポワズまで、又は約2から約8センチポワズまで、又は約2.5から約4センチポワズまでの範囲内の粘度を有し得る。他の様々な塗布技術に対しては、粘度はより高く、最大1000センチポワズまでにもなり得る。
【0043】
以上によって明らかなように、様々な特性を有するブロックコポリマー界面活性剤を様々な物性のイメージング胴に用いることにより、イメージング胴に親油性表面と親水性表面とを選択的に形成することが可能となる。界面活性剤とイメージング胴の表面との間に生じる物理的結合によってイメージング胴を同じイメージで何度も繰り返し使用することができ、又はイメージング胴の任意の回転回数ごとにイメージを選択的に変えることもできる。イメージング胴及びブロックコポリマー界面活性剤の物性を利用することにより、耐久性があり、しかも可変で、既知の平版印刷技術の品質を有するイメージシステムを実現することができる。さらに、主物質(例えばインキ等)を理論的に結合させるという要望なしに、主物質が塗布される本明細書において意図されるゲート剤を用いることによって、主物質の剥がれは、従来の印刷システムと比較して著しく最小化され得ると考えられている。
【0044】
他の実施形態において、ゲート剤配合には、平版インキ調整剤が含まれる。平版インキ調整剤は、下層の遮られたインキ又は他の主物質の一つの又は複数の特性を変える。平版インキ調整剤は、特に、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、鉱油、液体アスファルト、燃焼プレートオイル、フラッシュオイル、コバルト、大豆油、及び塊ロジンを含み得る。
【0045】
さらに他の実施形態において、ゲート剤組成物は、受容面調整剤を含む。付着面(例えば紙)調整剤は、遮られたインキ又は他の主物質の付着面への転写を補助する。受容面調整剤は、数例を挙げて言うと、例えば金属粉、及びコルク粉等の散布剤を含み得る。面調整化合物の他の例としては、ポリエチレンイミンとエトキシ化ポリエチレンイミン(10〜80%のエトキシル化)が挙げられる。
【0046】
上述したように、ゲート剤は、1つ以上のジェットヘッドを用いて、版胴に塗布されるか、又は、ブランケット胴に直接塗布される。そして、インキが選択的でない方法で版胴又はブランケット胴に塗布される。この後、インキは、版胴又はブランケット胴上のイメージ領域から紙ウェブに転写される。ゲート剤及びインキがブランケット胴に直接塗布される場合には、版胴を用いる必要はない。固定印刷ジョブ(特に短期間のものであるが、これに限らない)、又は、あらゆるサイズの可変もしくはカスタマイズ可能な印刷ジョブ(例えば、ターゲットメーリング、顧客への取引明細書、壁紙、カスタマイズされた包装紙等)を含む特定の印刷用途にとって有益となり得る。
【0047】
ゲート剤は、例えば、インクジェット、又は、他の精密制御可能なスプレー技術又は塗布技術を用いて、基材への選択的な直接噴射、中間面(媒介物の表面)への選択的な噴射、又は、主物質への選択的な直接噴射によって、含水液体の状態で塗布される。含水液体は、通常、低粘度であり、また、障害物の形成を抑制する傾向を有するので、インクジェットヘッドでの使用には有利である。但し、ゲート剤は、含水液体以外の形態で、インクジェット技術を用いて塗布されてもよい。UV硬化システムと非水性シロキサンシステムなどがその例である。更に、ゲート剤は、液体に限られているわけではなく、固体(例えば、薄膜、ペースト、ゲル、発泡体、又は、母材(matrix)等)の状態で使用されてもよい。ゲート剤は、粉末固体を含んで構成可能であり、この粉末固体は、主物質の塗布を抑制もしくは補助するように帯電され、又は、反対の極性の静電気電荷によって適切な位置に保持される。
【0048】
一例では、溶媒である液体のゲート剤を、1つ以上のインクジェットヘッドによってプレートに塗布し、この後、溶媒中で分散可能な粉末インキ着色剤を、プレートの表面全体にわたって沈着させることにより、噴射領域にてその場で液体インキが形成される。非噴射領域の粉末は、(例えば、プレートを反転させて、粉末を真下に落とすことによって、又は、空気圧力や遠心力等によって)除去され、これにより、インキ領域と非インキ領域とが得られる。この場合には、溶媒をイメージ領域に噴射することにより、この領域に液体インキが形成され、また、静電気電荷を除去することにより、非湿潤領域(非ウェット領域)の粉末が除去される。どちらの場合でも、生成されたイメージは、その後に、基材(例えば、紙ウェブ)に塗布される。
【0049】
本開示のいずれのシステムについても、異なるサイズのゲート剤液滴を形成できるように、変更することが可能である。例えば、1200ドット/インチ(dpi)までの解像度で、約14ピコリットル(pl)の液滴サイズを得るためには、HP社製のインクジェット型ヘッドを用いることができる。一方で、Xaar社製のインクジェットヘッドは、360dpiで3plの噴射が可能であるが、この他に、6pl、9pl、及び12plの液滴の噴射も可能である。形成されるイメージ領域の解像度については、ゲート剤の塗布に用いられるインクジェットヘッドを適切に選択することによって管理することができる。本明細書に記載されたシステムは、異なるサイズのゲート剤液滴を形成できるように、変更することが可能である。一般に、適合液滴サイズと共に、より高い解像度グリッド(換言すれば、300dpi又はそれ以上のグリッド)は、例えばインキ等の主物質の、ブロック、又は、転写及び/又は収集、との相互作用を改善する。また、グリッドのdpiが増加するに
つれて、最も効果的な液滴サイズは一般的に小さくなる。より大きなサイズの液滴は、イメージ領域における強制湿潤化(強制ウェッティング)の影響をより受けやすい。この強制ウェッティングは、イメージが表面間(例えば、プレートとブランケットとの間の押圧(ニップ)領域)で転写されるときに、隣接した噴射液滴が結合することに起因するものであり、プリント濃度の低下によるイメージ品質の低下をもたらすものである。この強制ウェッティングについては、1つ以上の成分の追加もしくは除去、及び/又は、ゲート剤における1つ以上の物理的特性の変更もしくは調整によって最小化することが可能である。例えば、界面活性剤を若干減らすことによって、ゴーストの発生(ghosting)を抑制することができる一方、他の界面活性剤を使用、追加、及び/又は、代用することによっても、イメージ品質を改善することができる。あるいは、胴に塗布されるゲート剤の電荷と反対の極性を有する静電気電荷を胴に印加することも可能である。これにより得られる静電気引力によって、強制ウェッティングが抑制されるか、又は、解消される。
【0050】
さらなるオプションは、一つ以上のプロセスパラメータの温度を調節/管理することである。例えば、ゲート剤の付着力を改善し調剤を容易にするために、ゲート剤を表面へ塗布する時の温度を上昇させることもあり得る。あるいは、又はそれに加えて、ゲート剤の塗布の間、表面を初めに加熱して、付着、液滴形状/サイズ等を管理し、及び/又は、ゲート剤が塗布されたなら、そのプロセスのいくつかのポイントで、表面を冷却(又は加熱)して、ゲート剤の粘度を高め、これによって、ゲート剤の非湿潤領域への拡がりを低減してもよい。
【0051】
本実施形態の実施に用いられ得る装置の別の例は、
図3に示される。印刷機310は、平版印刷業界で周知のような、主物質塗布システム312、パターン表面314、パターン表面胴316、ブランケット胴318、及び圧胴320を含み得る。パターン表面314は、ポリシロキサン又はインキ転写を防止する他のコーティングでコーティングされ得る。さらに、余分、及び/又は、古いゲート剤及び主物質もしくは他の混入物質、の除去のためのクリーニングシステム322が含まれる(この場合、パターン表面胴316とブランケット胴318の双方に示されているが、それ以上あるいはそれ以下のケースも考えられる)。ゲート剤塗布用の上記に記載されたものと同様の水溶液ジェットシステム324は、パターン表面胴316と関連して示されるが、その配置は可変である。
【0052】
印刷機310の動作は、本明細書に記載された他の実施形態と同様である。例えば、ゲート剤は、水溶液ジェットシステム324によって、パターン表面胴316のパターン表面314に塗布される。続いて、主物質は、塗布システム312を介してパターン表面314に塗布される。パターン表面314がブランケット胴318の表面と接触する時に、主物質は、そこに転写されて、さらに基材326上に沈着されるまで、その表面上で運ばれる。さらに、装置からは、ブランケット胴318を除くことができ、従って主物質は、パターン表面314から基材326に直接転写されるということも考察される。あるいは、追加の水溶液ジェットシステム324、塗布システム312、及びクリーニングシステム322を含む追加のローラーも、要望通りに加えることもできる。
【0053】
図4は、一つ以上のインキジェット型ヘッドから噴射されたゲート剤を用いて表面にプリントされた文字“A”414を有するパターン表面胴412の、例えばアルミ表面等の親水性パターン表面410を示す。パターン表面410の残りの部分には、物質が付着していないため、他の水性物質を引きつけるか又は付着させることが可能である。
図5において、パターン表面(示されていない)は、印刷に備えて、例えば、親油性インキ516等の主物質、及び、親水性湿し液(hydrophilic fountain fluid)518によって下塗りされている。湿し液518は、パターン表面の、ゲート剤によってプリントされていない残り部分へのインキ付着を防止するブロック剤としての機能を果たす。さらに、本明細書において考えられる湿し液は、ゲート剤の可溶化を促進し、これにより、主物質(例えば、インキ)転写後のゲート剤を除去を容易にする。しかし、ゲート剤が、その親油部分を介してインキを引きつけることにより、文字“A”の表面がインキで覆われる。
図6は、版胴612の下塗りされたパターン表面610の断面図を示す。インキ616は、ゲート剤614に付着しており、そして湿し液618は間のスペースを満たし、パターン表面上においてインキと湿し液の連続した表面を作りあげる。下塗りされたパターン表面と、プリント材料(示されていない)又は中間ローラー(intervening roller)、ベルト、又は他の表面とが接触することで、わずかな裂け目でパターン表面と新たな表面間でのインクの転写が可能となる。
【0054】
特定用途において、高速可変印刷システム及びゲート剤は、主物質の塗布をブロックもしくは補助するために用いられるが、具体的には、イメージ領域内もしくは非イメージ領域内の主物質を除去もしくはブロックするか又はイメージ領域内もしくは非イメージ領域内に主物質を塗布すること、非イメージ領域内の補助剤を除去すること、特定の領域もしくは全領域における主物質の塗布を防止すること、ゲート剤もしくは主物質の塗布に影響を及ぼすようにゲート剤もしくは主物質の物理的特性もしくは化学的特性(例えば、ゲート剤もしくは主物質の粘度もしくは表面張力)を変化させること、上述のあらゆる組み合わせ、又は、あらゆる他の適切な方法によって、主物質の塗布をブロックもしくは補助する。
【0055】
更に他の実施形態では、基材に塗布される主物質の塗布量が、障壁性を有するバリア剤又はブロック剤の形でゲート剤を用いることにより変化する。この実施形態では、主物質の基材への塗布が、完全に又は部分的にブロックされ、この結果、主物質は、障壁性を有するバリア剤又はブロック剤の及ぶ範囲で、中間レベルで基材に塗布され、この結果、所望の中間レベルでの主物質塗布に従って、基材上における主物質の密度勾配がもたらされる。
【0056】
さらなる実施形態は、表面への主物質の塗布後又はその前に、表面又は他の基材上の主物質に選択的に加えられるゲート剤を含む。例えば、ゲート剤は、その中で分散し、かつ、特定の実施形態において使用される主物質との反親和性を有する材料を含有する。そして、ゲート剤は、非イメージ領域内の表面に塗布され、ゲート剤内に分散した材料と共に、表面の内側に吸収されるか、又は、表面上で付着もしくは保持される。その表面は、後続の表面(その上に配置された主物質を有する)の近傍を通過する。ゲート剤中に分散される材料が非イメージ領域への主物質の付着を妨げるため、主物質は、ゲート剤を含まない領域においてのみ前者の表面に転写される。
【0057】
ゲート剤及び印刷媒体の特性を変えること(例えば、ボンド紙、光沢紙を用いたり、様々なコーティング技術を使用したりすること)により、水溶液ジェットシステムを用いてプリントされる保護ネガイメージと、印刷媒体との間に、好ましい相互作用を生じさせることが可能である。例えば、イメージの鮮明さが求められる場合には、印刷媒体に全く吸収されないようなゲート剤を選択するとよい。しかしながら、水溶液ジェットシステムからの水溶液で覆われた部分であっても、ある程度のインキ転写が望ましい場合には、水溶液を急速に吸収する印刷媒体を用いることによって、覆われた部分からもある程度のインキを転写することが可能となる。また、非イメージ領域とイメージ領域との間の境界が保持されるように、ゲート剤の粘度及び/又は表面張力を高めたり、サポート剤(supporting agent)を用いたり、非イメージ領域及びイメージ領域のそれぞれに対するシステムを採用したりすることによって、拡散を抑制することができ、これにより、品質を改善することができる。特に、ゲート剤の粘度を1から14cPにコントロールすることにより、フラッディング、すなわちイメージをなくしたりエッジ及び線をギザギザにする強制ウェッティング、を防止し、ゴーストの発生を最小限にもする。インキが胴の非イメージ領域に移動する場合、又は、残インキ又はゲート剤が前の印刷から胴上に残る場合、ゴーストが発生する。ゲート剤がジェットヘッドから放出されるように、ゲート剤の粘度は、14cPより小さい値に維持されることが重要である。この影響を抑制又は解消するためには、他の化学薬品及び/又は材料の科学特性を用いることが可能である。ゲート剤には、加圧又は撹拌によって粘度が変わるチキソトロピー液も含まれる。ゲート剤の表面張力のコントロールによっても、拡散を抑制することもできる。
【0058】
さらにまた、様々な特性を有するブロックコポリマー界面活性剤を様々な物性のイメージング胴に用いることにより、イメージング胴に親油性表面と親水性表面とを選択的に形成することが可能となる。界面活性剤とイメージング胴の表面との間に生じる物理的結合によってイメージング胴を同じイメージで何度も繰り返し使用することができ、又は、イメージング胴の任意の回転回数ごとにイメージを選択的に変えることもできる。イメージング胴及びブロックコポリマー界面活性剤の物性を利用することにより、耐久性があり、しかも可変で、既知の平版印刷技術の品質を有するイメージシステムを実現することができる。
【0059】
他の可変処理としては、基材自体の処理がある。紙基材の場合には、適切なサイズ、重量、明るさ(白色度)等を有する、従来のコート紙が用いられる。これには、1つ以上のコーティング剤(例えば、クレー)が塗布され、これにより、主物質及び/又はゲート剤の吸収を遅らすか、又は、抑制する。他の基材(例えば、印刷ブランケット、印刷プレート、印刷胴、回路基板、プラスチックシート、フィルム、布地もしくは他のシート、壁の平面もしくは曲面、又は、他の部材等)の場合には、この基材のうち主物質が塗布される部分の表面が、必要に応じて、又は、要望通りに、適切に事前準備され、物理的もしくは化学的に処理され、機械加工され、テクスチャード加工され、又は、別の方法で修正加工されてもよく、これにより、主物質の一部における転写を、要望通りに補助するか、又は、ブロックする。
【0060】
インキ又は他の主物質については、所望の効果が得られるように、その種類、物理的特性、及び/又は、化学組成物を選択又は変更することが可能である。例えば、インキの表面張力を管理することにより、色相互のにじみと、紙裏の透き通しとを抑制することができる。また他の例では、ウォーターレス印刷に用いられる1つ以上のインキが、噴射されるゲート剤と共に用いられ(後者は、水溶性又は非水溶性)、これにより、プレートから紙へのインキ転写がブロック又は促進され得る。水溶性ゲート剤と共にウォーターレス印刷用インキを用いる場合には、このインキの親油性を考慮して、ゲート剤の組成が調整される。この結果、ゲート剤は、必要に応じて又は要望通りに、インキを引き付ける分子構造、及び/又は、インキをはじく分子構造を有する。あるいは、噴射されて、親水性のプレートに最初に塗布されるゲート剤には、プレートに結合する1つ以上の親水性組成物と、インキ分子に結合又は反発する1つ以上の他の組成物と、が含まれる。
【0061】
また、更なる例では、ゲート剤及び主物質の少なくとも一方の相変化を用いて、物質のブロック、又は、転写もしくは回収を抑制するか、又は促進する。例えば、ゲート剤がプレート等の表面に選択的に噴射され、この塗布されたゲート剤を有する表面に主物質が塗布されると、主物質のうち、噴射されたゲート剤と接触する部分は、ゲル又は固体に変化する。あるいは、主物質が、区別なく(換言すれば、非選択的に)プレートに塗布され、この後、プレートのうちイメージ化されない部分(換言すれば、非イメージ領域)にゲート剤が選択的に塗布(噴射)されると、噴射領域内の主物質は、ゲル又は固体に変化する。また更に、2つ(又はそれ以上)の成分で構成されるゲート剤を用いることが可能である。ここで、これらの成分は、個別かつ選択的に、連続して塗布されるものであり(個別に噴射されるものであり)、これらの成分が同じ位置に塗布されると、この位置でエポシキ系及び他の化学結合(例えば、共有結合、イオン結合等)、及び物理的相互作用(例えば、水素結合、ファン・デル・ワールス力等)と、類似又は同一の反応をし、これにより、有益なゲート特性(gating characteristic)が更に向上する。ゲート剤の1つ以上の成分が塗布される前又は後に、主物質(インキ等)が塗布され得る。上述の例のいずれにおいても、基材(紙ウェブ等)は、プレートによりイメージ化される。
【0062】
図7は、本発明の他の実施形態を示している。
図7は、当該技術分野で知られている平版印刷機1000(例えば、インキシステム1002、版胴1006、ブランケット胴1008、圧胴1010など)を示している。但し、平版印刷機1000の上流側には、コーティングシステム1016及び水溶液ジェットシステム1014が設けられている。
図7に示すような実施形態においては、標準の平版プレートは、任意のジョブの固定情報をエッチングされ、又は、十分なインキの付着が可能である。一実施形態においては、プレートの一部は可変情報のために確保しておく(例えば、
図8に示すように、プレート1100は、可変イメージボックス1102や1104を含んでいる)。可変イメージボックスに対応する平版プレートの部分は、可変イメージボックスの全体にインキが付着するように形成される(すなわち、平版プレートの可変イメージボックス部分がインキシステムを通過すると、その四角い部分の全体にインキが付着する)。他の実施形態においては、プレート全体にインキが付着可能であり、水溶性ジェットシステムはウェブ1012一面にわたってブロック流体を提供できる。
【0063】
可変イメージを生成するため、可変イメージのネガイメージが水溶液ジェットシステム1014によって直接ウェブ1012上にゲート剤で塗布される。ウェブ1012が水溶液ジェットシステム1014に到達するより前に、ウェブ1012には、ある実施形態においては、ゲート剤の吸収を防止するためのコーティングが施される。他の実施形態においては、ウェブ1012はコーティングされていないため、水溶液ジェットシステム1014によって塗布されたゲート剤は、ウェブ1012一面にイメージを塗布することができる。このため、ウェブ1012の可変イメージがプリントされる部分が、可変イメージのためのインキを転写するブランケット胴1008の部分に接触すると、ウェブ1012には、水溶液ジェットシステム1014によってプリントされていない部分のみにインキが選択的に付着することになる。標準的な平版印刷機では、同じイメージ(例えば、四角いベタ塗り(a solid rectangle))を繰り返しプリントする。しかしながら、ウェブ1012には、まず水溶液ジェットシステム1014によってネガイメージがプリントされ、次にブランケット胴1008の四角いベタ塗りインキが選択的に付着することで、可変イメージがウェブ1012に生成される。コーティングシステム1016は、全体にコーティングを施すことが可能である。また、コーティングシステム1016は、ウェブ1012にコーティングを施してゲート剤の吸収能力を低下させるための好適な代替手段となり得る。例えば、コーティングシステム1016は、適切な溶液をウェブ1012にスプレーする噴霧器を含む。この溶液によってウェブ1012によるゲート剤の全部又は一部の吸収が抑制される。
【0064】
上述の実施形態のいずれの場合も、ブランケット胴と版胴との組み合わせを、単一のイメージング胴に置き換えることが可能であり、また、その逆も可能である。さらに、実施形態における1つ以上の水溶液ジェットシステム、クリーニングシステム、剥がしシステム、真空又は加熱システムは、データシステムを介して電子制御され得る。
【0065】
さらにまた、主物質を基材に塗布するローラーのニップ圧及びローラーの圧縮特性を変更することにより、イメージ品質及びニップローラーの圧縮特性を制御することができる。また、テクスチャード加工された表面を有するロール又は胴を用いて、主物質の基材への塗布を要望に応じて制御する。さらにまた、又は加えて、ゲート液体の液滴の容量を調整することにより、各セルへ転写されるインキの量を制御することができ、それによって、グレースケールに影響を及ぼす。
【0066】
更なる追加事項としては、1つ以上の処理パラメータの温度を調節又は制御することが挙げられる。例えば、表面にゲート剤を塗布する際に、ゲート剤の温度を上昇させることにより、粘着性を改善して、塗布を容易にすることができる。代わりとして、又は、追加として、ゲート剤塗布の間で最初に表面を加熱することにより、粘着性、液滴の形状もしくはサイズ等を制御してもよい。また、ゲート剤塗布後の工程中のある時点で、表面を冷却し、これにより、ゲート剤の粘度を高めて、非ウェット領域へのゲート剤拡散を抑制するようにしてもよい。
【0067】
個別の噴射装置によって各別に塗布される複数の異なった液体を更に用いることが可能である。これらの液体が一緒に塗布される場合には、この噴射装置は、粘着性、粘度、又は、他の所望の特性の少なくとも1つを向上させたゲート剤を生成する。この液体は、異なるか又は同一の温度、圧力、流量等で塗布され得る。
【0068】
また別の実施形態には、2つ以上の配列(アレイ)又はインクジェットヘッドを用いて、ゲート剤のみを選択的に塗布すること、又は、表面における1つ以上の領域にゲート溶液を選択的に塗布すること、そして、追加的に、表面における1つ以上の残りの領域にインキを塗布することが含まれる。この場合に、1つ以上の配列は、それぞれ、印刷機の運転中に取り外し可能か、もしくは、切り替え可能であり、又は、次に続くジョブ(例えば、局所的なカスタマイズが要求される場合)のために(位置決めという点で)再構成可能である。
【0069】
印刷ユニットごとにインキタック(ink tack)が変化するため、ユニットごとにゲート剤特性を連続的に変更させて、各ユニットによるインキ転写を効果的に最適化することができる。さらに別の変更は、印刷表面を確立するために相変化材料の使用を含む。
【0070】
更に他の実施形態では、主物質の基材への塗布を制御するために用いられるゲート剤は、ブロック剤と補助剤との組み合わせである。一例では、主物質は、表面に配置され、そして、非イメージ領域では、主物質の基材への塗布を阻止するブロック剤によって覆われている。イメージ領域では、主物質は、補助剤によって覆われる。この補助剤は、主物質と結合する傾向があり、これによって、基材上への塗布が補助される。あるいは、ゲート剤が、表面に配置され、かつ、主物質によって覆われてもよい。一例では、親油性のブロック剤が、表面の非イメージ領域に選択的に配置され、そして、親水性の補助剤が、表面のイメージ領域に選択的に配置される。そして、主物質は、両方のゲート剤により形成された層の上面に配置される。表面上に均一な高さで形成された両方のゲート剤の層により、主物質と補助剤との間の移動が妨げられる。表面が基材の近傍に移動すると、ブロック剤は、主物質が基材に塗布されるのを防止する一方、補助剤は、主物質が基材に塗布されるのを可能にする。
【0071】
別の実施形態では、表面は、平版プレートや版胴等であり、これらの一部を用いて、可変形状の主物質を基材に塗布することによって、主物質の基材への塗布を制御する。この実施形態では、可変記号論、符号化、アドレス指定、番号付け、又は、あらゆる他のタギング技術が、主物質塗布の制御用に確保された最初の表面の一部分で用いられる。主物質は、まず、区別なく最初の表面上に配置される。主物質の塗布のために基材が最初の表面の近傍を通過する前に、ブロック剤が、ある領域内の基材に、選択的に塗布される。この塗布領域は、基材の近傍を後に移動する最初の表面の上記確保部分に対応する領域であり、主物質が所望の形状又はイメージで塗布されるように、ブロック剤が塗布される。より一般的な実施形態では、同様か又は異なる主物質が配置された1つ以上の表面の近傍に、基材が移動し、そこで、ブロック剤及び/又は補助剤が、上記確保部分内の表面から基材に選択的に転写される。ある実施形態では、磁性インキが、これらの表面のうちの1つから基材(例えば紙ウェブ)に転写される。また、1つ以上の非磁性インキが、同じ表面から転写されるか、又は、1つ以上の追加の表面から転写されてもよい。上記確保部分にて所望の形状で紙ウェブに磁性インキを塗布する際に、この塗布をブロックするか、又は、補助するために、ゲート剤を用いることが可能であり、これには、上述のブロック剤及び補助剤を使用するためのいかなる技術も用いることができる。この結果、1刷りごとに変更された磁性インキマーキング(例えば、MICRマーキング、又は、他のコード化された情報)を有する紙ウェブが印刷される。1つの実施形態においては、可変印刷工程の一部としてコード化されたRFID回路が使用される。これは、後の印刷プログラミングを不要にする。
【0072】
更に別の実施形態では、ゲート剤が、1つ以上のジェットヘッドによって、受容面に選択的に塗布され、そして、中間液(例えば、従来の湿し溶液(fountain solution))を
引き付けるか、又は、ブロックする。この湿し溶液は、受容面に区別なく塗布されるが、しかし、ゲート剤によってゲートされる。このため、湿し溶液は、インキの塗布に先立って、受容面に選択的に付着する。この実施形態では、ゲート溶液が、湿し溶液と相互作用するように、そして、湿し溶液を制御可能なように調合されており、この点で、インキを制御するものと対照的になっている。別の実施形態では、湿し溶液を中和もしくは機能低下させるか、又は、湿し溶液を受容面から選択的に除去可能としている。より一般的に言うと、これらの実施形態では、区別なく塗布される湿し溶液及びインキと共に選択的に塗布されるゲート剤を用いることを含み、この場合に、湿し溶液が保持される領域を、ゲート剤によって制御する。
【0073】
前述したように、ゲート剤は、一つ以上の界面活性剤を含むことが可能であり、また、高品質なイメージを生成するのに好適な液滴サイズ及び粘度特性が得られるように、温度制御又は真空制御が行われる。しかしながら、イメージの品質は、連続したイメージが異なる場合、特に深刻な問題であるゴースト発生として、当業者には知られている現象が生じる。
【0074】
連続する印刷間で、イメージ及び非イメージ領域のインキ又はあらゆるゲート剤をしっかりと除去することによって、ゴースト発生を少なくすることができる。前述したクリーニングシステムのいずれについても、上記したようにインキを塗布した後には常に、版胴を清浄することは、版胴をクリーンに保つ1つの方法である。また、クリーニングシステムによる一層完全な清浄を促進してゴースト発生を減らすために、ゲート剤の組成を変更することができる。
【0075】
ゴーストの発生を少なくする他の方法として、版胴上の、イメージ領域から非イメージ領域へのインキの移動を抑制する方法がある。イメージ領域にインキを引きつけて、親油性溶液が正確にイメージ領域に塗布され、そして、イメージ領域からのインキの移動が抑制される。疎油性溶液は、版胴の非イメージ領域に、単独で又は親油性溶液と共に、正確に塗布され、版胴の非イメージ領域へのインキの移動が抑制される。
【0076】
本開示のように、可変印刷のジョブ処理と固定印刷のジョブ処理とを行うというコンセプトを用いる場合には、その利点の1つとして、従来の平版印刷機に関連する固有速度を挙げることができる。しかし、実際には、従来の平版印刷機と比較すると、印刷速度は、イメージ領域が形成可能な速度によって制限されており、つまり、イメージ領域を形成する方法によって左右されている。この種の方法は、本明細書で説明されており、また、イメージ領域の形成のためのゲート剤塗布を含んでいる。ゲート剤は、親油性溶液もしくは親水性溶液、又は、静電気電荷が印加された他の溶液であり得る。また、ゲート剤自体が、胴の一部に印加される静電気電荷であってもよい。印刷機の運転速度は、上述のあらゆるゲート剤が、印刷機の1つ以上の胴に塗布可能な最高速度によって、制限される。
【0077】
インクジェットカートリッジが、通常のインクジェット印刷において、最も使用される運転状態に対応するように、カートリッジからの液滴噴射は、瞬間的な事象であると考えられ、この瞬間的な事象によって、対象基材上に所定サイズのインキスポットが形成される。しかし、実際には、インクジェットカートリッジからの液滴噴射は、瞬間的な事象ではなく、現実には、初期、中期、及び終期を有する過渡的な事象である。対象基材が、高速で移動している場合には、インキ液滴が基材に衝突し、そして、基材の移動方向とは反対方向に延びる尾部(テール)を有するインキスポットが形成される。この現象は、テーリング(tailing)として知られており、液滴形成における過渡的性質によって生じる直
接的な結果である。高速印刷時に発生するテーリングにより、印刷品質に懸念が生じるので、印刷機の実効速度が制限され得る。しかし、あるゲート剤が、特定のジェットカートリッジと共に用いられる場合には、噴射液滴のテーリングを抑制又は緩和することが可能であり、これにより、最高印刷速度を制限するファクターであるこの現象が解消されることが見出されている。
【0078】
本開示の装置及び方法は、他の産業及び他の技術(例えば、繊維、製薬、生物医学、及び、特に電子工学)にも関連する。可変でカスタマイズ可能なグラフィックもしくはテキスト、又は、シール性が強化された主物質や耐水性もしくは耐火性を有する主物質は、繊維ウェブに選択的に塗布されて、例えば、衣類又は敷物の製造に用いられる。製薬業界では、主物質は、製剤原料、治療用物質、診断用物質、もしくはインキ以外のマーキング用物質であり得、又は、他のあらゆる種類の物質用のキャリアであり得る。生物医学用途では、例えば、主物質は、生物由来材料又は生体適合性ポリマーである。電子工学用途では、主物質は、基材の1つ以上の層に塗布される導電性材料又は電気絶縁性材料であり得る。他の電子工学用途には、製品に取り付けられる無線自動識別(「RFID」)タグの製造が含まれる。主物質の基材への選択的塗布は、他の産業にとっても有益となり得る。例えば、主物質は、製品(例えば、熱交換器、料理用鍋、又は、断熱性の高いコーヒー用マグカップ)の構成部品に選択的に塗布される熱伝導性材料又は断熱性材料である。また、主物質は、吸収性、反射性、又は放射性が強化された材料であってもよく、これらの性質の一部又は全部が他の製品にとって有用となり得る。これは、例えば、主物質を、オーブン、ランプ、又はサングラスの構成部品に選択的に塗布する場合である。また更に、主物質は、カスタマイズ可能な包装フィルム又はホログラムに使用可能である(イメージ生成の前に屈曲くぼみの選択的充填を経る)。更に、この技術は、燃料電池の製造に適用可能であり、この場合に、主物質は、官能性ポリマー、接着剤、及び、三次元(3−D)相互接続構造を含み得る。マイクロ光学素子の製造用途では、主物質は、光学接着剤又は紫外線硬化性ポリマー(UV-curing polymer)であり得る。更なる用途としては、ディスプレー製造があり、この場合に、主物質は、ポリマー発光ダイオード用材料である。
【0079】
さらに、特定の用途としては、本開示の装置及び高速可変印刷方法が、数多くの平版印刷の用途で利用され得る。例えば、本開示の装置及び方法は、ダイレクトメール、広告、明細書、請求書等の高品質な一対一マーケティングの用途に理想的である。本開示の装置及び方法に適した他の用途としては、パーソナライズされた書籍、定期刊行物、出版物、ポスター、ディスプレイ等の印刷が挙げられる。本開示における高速可変印刷システム及び高速可変印刷方法は、上述の製品のポストプレス処理(例えば、製本や仕上げ)も迅速化することができる。
【0080】
さらに、次の例は開示を示すが、もちろん、何らかの範囲の限定として解釈されるべきではない。
【0081】
例1.本開示において有用なゲート剤配合は次のように調合された。
8wt% Sokalan(登録商標)マレイン酸/オレフィン コポリマー(95%活性)
1wt% SILWET(商標)7200シロキサンブロックコポリマー
91wt% 水
【0082】
例2.本開示において有用な第2のゲート剤配合は次のように調合された。
30wt% PEG200
1wt% Sufynol(登録商標)400シリーズ
1wt% Pluronic(登録商標)
68wt% 水
【0083】
例3.本開示において有用な第3のゲート剤配合は次のように調合された。
15wt% Joncry(登録商標)50
10wt% イソプロピルアルコール
1wt% SILWET(商標)7200シロキサンブロックコポリマー
30wt% PEG200
44wt% 水
【0084】
例1−3の配合の全ては、ゲート剤として有用であり、ゴースト発生、テーリング(tailing)、フラッディング、又は背景色を最小限に抑えた可変プリントがもたらされた。
【0085】
以上は、本開示の装置及び方法の原理を例示するためのものに過ぎず、当業者によって本開示の装置及び方法の範囲及び理念から逸脱することなく様々な改変が可能であることは明らかであろう。例えば、記載された手順におけるいくつかのステップの順序は、決定的なものではなく、必要に応じて変更が可能である。また、様々なステップは、様々な技術によって実行され得る。
【0086】
本開示の好ましい実施形態は、本明細書に記載され、本開示を実用化する発明者に知られている最良の形態を含んでいる。当業者にとって、これらの好ましい実施形態のバリエーションは、本明細書を読めば明らかなものとなる。発明者は、熟練工が適切なバリエーションを採用すると考え、そして、発明者は、本開示が本願明細書に特に記載されたものとは別の方法で実践され得ることを意図する。従って、本開示は、適用される法によって許される限り、本願明細書に添付する請求項に詳述される全ての変更及び均等物を含む。さらに、本開示は、本明細書に特に示されておらず、又は文脈が明らかに矛盾しなければ、上述の構成要素のその全ての可能なバリエーションにおける任意の組み合わせを含む。