(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795356
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】竪型射出成形機の金型検出方法および竪型射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/84 20060101AFI20150928BHJP
B29C 45/66 20060101ALI20150928BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/66
B22D17/26 K
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-160163(P2013-160163)
(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公開番号】特開2015-30152(P2015-30152A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2014年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】岡 和司
【審査官】
阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−091373(JP,A)
【文献】
特開平02−290662(JP,A)
【文献】
特開2006−334793(JP,A)
【文献】
特開2011−031535(JP,A)
【文献】
特開2014−205309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側金型が取り付けられる固定盤と、該固定盤の上方に配置されて上側金型が取り付けられる上可動盤と、前記固定盤の下方に配置されている下可動盤と、前記固定盤を挿通し前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構を備え、
前記タイバーのそれぞれにはその下端部近傍に形成されている雄ネジにタイバーナットが螺合し、前記タイバーナットは前記下可動盤に形成されているタイバーナットスペースに軸方向に所定の遊びが確保された状態で収納され、前記タイバーナットを回転して型厚調整するようになっている竪型射出成形機において、
前記トグル機構を駆動して型締を行うとき、前記タイバーに対して前記下可動盤が相対的に移動することを監視して金型の有無を検出することを特徴とする竪型射出成形機の金型検出方法。
【請求項2】
下側金型が取り付けられる固定盤と、該固定盤の上方に配置されて上側金型が取り付けられる上可動盤と、前記固定盤の下方に配置されている下可動盤と、前記固定盤を挿通し前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構を備え、
前記タイバーのそれぞれにはその下端部近傍に形成されている雄ネジにタイバーナットが螺合し、前記タイバーナットは前記下可動盤に形成されているタイバーナットスペースに軸方向に所定の遊びが確保された状態で収納され、前記タイバーナットを回転して型厚調整するようになっている竪型射出成形機であって、
前記タイバーと前記下可動盤の相対的な移動を検出するセンサが設けられ、型締工程時において前記移動が監視されるようになっていることを特徴とする竪型射出成形機。
【請求項3】
請求項2に記載の竪型射出成形機において、前記センサは磁気式センサまたはリニアエンコーダからなることを特徴とする竪型射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締機構がトグル式の竪型射出成形機において金型の有無を検出する金型検出方法、およびそのような検出方法が実施される竪型射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
竪型射出成形機は、従来周知のように一対の金型を上下方向に型開閉する型締装置、この型締装置の上部に設けられている射出装置とから構成されている。そして竪型射出成形機の型締装置も従来周知であり、トグル式型締機構の場合には、ベッドに固定されている固定盤と、固定盤を摺動自在に垂直に貫通している複数本のタイバーと、タイバーの上端部に固定されて固定盤に対して上下に型開閉される上可動盤と、タイバーの下端部に所定の型厚調整機構によって固定されている下可動盤と、固定盤と下可動盤の間に設けられているトグル機構と、から構成されている。そして固定盤にはその上面に下側金型が設けられ、上可動盤にはその下面に上側金型が設けられている。従って、例えばトグル機構をトグルが伸張する方向に駆動すると固定盤に対して下可動盤が下方に駆動され、タイバーによって下可動盤と連結されている上可動盤も下方に駆動され、それによって一対の金型が型締めされる。またトグル機構をトグルが折り畳まれる方向に駆動すると固定盤に対して上下可動盤が上方に駆動され、型開きされる。
【0003】
トグル式型締装置においては、型締力はトグルが伸張した状態で発生するが、この型締力を適切な大きさで発生させるために、金型の型厚に応じていわゆる型厚調整をする必要がある。型厚調整機構は、次のように構成されている。すなわち下可動盤にはタイバーが貫通する貫通孔が設けられていると共に、この貫通孔は下可動盤の下面から所定深さで明けられた孔によって拡径されたタイバーナットスペースが形成されている。タイバーには、その下端部近傍に雄ネジが形成されており、この雄ネジが形成されている部分が貫通孔に挿入されている。そしてこの雄ネジにタイバーナットが螺合され、このタイバーナットがタイバーナットスペースに収納されている。下可動盤にはタイバーナットを下方から押さえる押さえ板が設けられ、タイバーナットが抜け落ちないようになっている。下可動盤はこのようにしてタイバーに連結されている。このようなタイバーナットは所定の回転手段によって回転されるようになっており、タイバーナットを回転すると、タイバーに対する下可動盤の連結位置が変化する。すなわち型厚調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−203700号公報
【特許文献2】特開2008−105301号公報
【0005】
タイバーナットスペースは、タイバーナットが滑らかに回転できるようにその軸方向の深さはタイバーナットの高さよりもわずかに深い。そうするとタイバーナットスペースにおいてタイバーナットは、軸方向にわずかな遊びが確保された状態で挿入されていることになる。型締装置を駆動して型締めしたり型開すると、タイバーナットがこの遊びの分だけタイバーナットスペース内で上下することになる。本発明と直接関係はないが特許文献1には、下可動盤の下方に突き出たタイバーの端部に所定のロックナットが螺合され、このロックナットを締め付けることによってタイバーナットがタイバーナットスペース内で上下しないようにする竪型射出成形機が記載されている。このように構成されているので、特許文献1に記載の竪型射出成形機はタイバーナットはタイバーナットスペース内で固定され、型締めや型開においても下可動盤は滑らかに駆動されることになる。
【0006】
特許文献2には、固定盤の上に回転テーブルが設けられている竪型射出成形機が記載されている。この射出成形機においては回転テーブルには複数個の下側金型が円周方向に等間隔を空けて設けられ、回転テーブルを回転させることによって上側金型と型締めされる下側金型を変更できるようになっている。このような回転テーブルを備えた射出成形機は、インサート部品をインサートして射出成形するような場合に、効率よく射出成形できる。すなわち、任意の下側金型と上側金型を型締めして射出成形を実施しているときに、並行して他の下側金型にインサート部品をインサートし、同時に他の下側金型においては金型に残っている成形品をエジェクトすることができる。つまり、このようにして複数の工程を並行して実施できる。ところで、回転テーブルに設けられている複数個の下側金型は、メンテナンスを目的としてその一部を一時的に取り外す場合もある。このような場合であっても、回転テーブルに1個でも下側金型が残されている場合には、残された下側金型によって射出成形を継続したい。しかしながらもし、一部の下側金型が取り外されているときに、この取り外されている部分が上側金型と対向する位置で、誤って型締めされて射出されると、溶融樹脂が飛散して危険である。そこで、特許文献2に記載の射出成形機においては、回転テーブルに金型の有無を検出するセンサーが複数個設けられ、それぞれの下側金型について、これらが取り付けられているか否かを検出できるようになっている。これによって、一部の下側金型が取り外されている場合であっても、残されている下側金型を使って安全に型締めして射出成形することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
射出成形機においては、従来より特許文献2に記載されているようなセンサが設けられ、固定盤や可動盤に金型が取り付けられているかを検出できるようになっている。このようなセンサは色々な種類があるが、磁気式等のいわゆる近接センサからなるものも多い。近接センサは、その近傍に金型が設けられているときに金型を検出できるようになっている。特許文献2に記載の射出成形機においても、文献中の図に記載されているセンサは下側金型とわずかに離間した位置に設けられているので、近接センサであると思われる。従来の射出成形機においては、このようなセンサによって金型の有無が検出され、センサの信号がコントローラに入力されている。これによって金型が取り付けられていない場合にはインターロックをかけて、誤って型締めしたり射出することが無いように保護している。ところで金型の有無を検出するセンサについては次のように色々な問題点が見受けられる。まず、型盤に取り付けられる金型は、その大きさによっては正しく金型の有無を検出できないという問題がある。すなわち金型が小さくてセンサと金型の距離が遠くなっている場合には金型が取り付けられていてもこれを検出できない。この場合には格別にセンサを金型近傍に移動させなければならない。また、金型の着脱時や段取り作業時にセンサやその配線を破損し易いという問題もある。さらには一般的にセンサは高価であり、金型の大きさや形状に合わせて配線を張り回す必要があり費用が嵩む。特に特許文献2に記載の射出成形機のように回転テーブルに複数の下側金型を取り付ける場合には、少なくとも金型の個数と同数のセンサが必要になり、コストが嵩む。またセンサは汚れや熱等によって劣化してしまうが、金型の近傍に設けられているので樹脂が付着したり熱の影響を受けやすいという問題がある。さらには、センサは人為的に操作して一時的に無効化することもできるが、複数のセンサが設けられているときには無効化しているか否かの管理が煩雑で、必要なセンサを無効化した状態で放置してしまう場合もある。さらには次のような問題もある。すなわちセンサによって問題なく金型の有無を検出できたとしても、型厚調整が適正になされていない場合には、型締めしたときに一対の金型が完全に型閉じされない場合がある。このようなときに射出動作をしてしまうと溶融樹脂が周囲に飛散して危険である。
【0008】
本発明は、上記したような問題点を解決した、竪型射出成形機における金型検出方法および竪型射出成形機を提供することを目的としており、具体的にはコストが小さくセンサが劣化したり破損することもなく、金型の有無を確実に検出できると共に一対の金型が確実に型締めされていることも検出できる金型検出方法、およびそのような検出方法が実施される竪型射出成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、トグル式の竪型射出成形機における金型検出方法として構成される。トグル式の竪型射出成形機は、固定盤の上方には上可動盤が、下方には下可動盤が設けられ、上下可動盤は固定盤を摺動自在に貫通する複数本のタイバーによって互いに連結され、固定盤と下可動盤の間にはトグル機構が設けられている。ところで、タイバーの下端部にはタイバーナットが螺合され、タイバーナットは下可動盤に設けられているタイバーナットスペースに収納され、タイバーと下可動盤とが連結されているが、このタイバーナットを回転することによって型厚調整ができるようになっている。タイバーナットはタイバーナットスペース内で軸方向に所定の遊びを持って収納されている。本発明は、竪型射出成形機において型締時に、この遊びによってタイバーが下可動盤に対して相対的に移動するので、これを監視し、それによって金型が適切に設けられていること、および一対の金型が適切に型締めされていることを検出する。
【0010】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、下側金型が取り付けられる固定盤と、該固定盤の上方に配置されて上側金型が取り付けられる上可動盤と、前記固定盤の下方に配置されている下可動盤と、前記固定盤を挿通し前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構を備え、前記タイバーのそれぞれにはその下端部近傍に形成されている雄ネジにタイバーナットが螺合し、前記タイバーナットは前記下可動盤に形成されているタイバーナットスペースに軸方向に所定の遊びが確保された状態で収納され、前記タイバーナットを回転して型厚調整するようになっている竪型射出成形機において、前記トグル機構を駆動して型締を行うとき、前記タイバーに対して前記下可動盤が相対的に移動することを監視して金型の有無を検出することを特徴とする竪型射出成形機の金型検出方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、下側金型が取り付けられる固定盤と、該固定盤の上方に配置されて上側金型が取り付けられる上可動盤と、前記固定盤の下方に配置されている下可動盤と、前記固定盤を挿通し前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構を備え、前記タイバーのそれぞれにはその下端部近傍に形成されている雄ネジにタイバーナットが螺合し、前記タイバーナットは前記下可動盤に形成されているタイバーナットスペースに軸方向に所定の遊びが確保された状態で収納され、前記タイバーナットを回転して型厚調整するようになっている竪型射出成形機であって、前記タイバーと前記下可動盤の相対的な移動を検出するセンサが設けられ、型締
工程時において前記移動が監視されるようになっていることを特徴とする竪型射出成形機として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の竪型射出成形機において、前記センサは磁気式センサまたはリニアエンコーダからなることを特徴とする竪型射出成形機として構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明は、下側金型が取り付けられる固定盤と、該固定盤の上方に配置されて上側金型が取り付けられる上可動盤と、固定盤の下方に配置されている下可動盤と、固定盤を挿通し上可動盤と下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、固定盤と下可動盤の間に設けられているトグル機構を備え、タイバーのそれぞれにはその下端部近傍に形成されている雄ネジにタイバーナットが螺合し、タイバーナットは下可動盤に形成されているタイバーナットスペースに軸方向に所定の遊びが確保された状態で収納され、タイバーナットを回転して型厚調整するようになっている竪型射出成形機を対象として、金型を検出する金型検出方法として構成されている。つまりトグル式からなる一般的な竪型射出成形機が対象となる。そして本発明は、トグル機構を駆動して型締を行うとき、タイバーに対して下可動盤が相対的に移動することを監視して金型の有無を検出するように構成される。型締めされていない状態では、上可動盤やタイバーの重量によってタイバーナットスペース内ではタイバーナットは遊びの分だけ下方に押し付けられている。しかしながら型締めを実施すると、上可動盤と上側金型が下方に駆動され、最初に上側金型と下側金型とが当接して、上可動盤の下方向へ移動が規制され、そしてタイバーやタイバーナットも下方向への移動がストップする。下可動盤は引き続き下方向に駆動されるのでタイバーナットはタイバースペース内で相対的に上方向へ移動することになる。これによってタイバーナットはタイバーナットスペース内で上側に押し付けられる。このときタイバーは下可動盤に対して相対的に移動することになる。この相対的な移動を検出して金型の有無を検出するので、金型の形状や大きさに拘わらず、金型が取り付けられている点、および金型が適切に型締めされた点を確実に検出することができる。そして、検出すべき対象はタイバーと下可動盤の相対的な移動だけであるので、センサは1個で済む。そしてこのセンサは、一般的な竪型射出成形機において設けられているセンサを兼用すればよく、本発明を実施するために格別に設ける必要はない。つまり竪型射出成形機においては、型厚調整時にタイバーと下可動盤の相対位置を検出するためにセンサが設けられているが、このセンサを利用できる。またこのセンサは金型近傍に設ける必要がないので破損したり配線が邪魔になったりセンサが劣化することもなく信頼性が高い。そして本発明によると、金型の有無だけではなく金型が型締めされたか否かを確実に検出できるので、この検出される信号を射出動作のインターロック解除の条件にすれば、金型が開いた状態での射出を確実に防止できることになる。つまり型厚調整が適切にされていない場合であっても、溶融樹脂が飛散するような危険がなく安全が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る竪型射出成形機を示す図で、その(ア)は竪型射出成形機の正面図、その(イ)、(ウ)は下可動盤の一部を拡大した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1を参照しながら本実施の形態について説明する。本実施の形態に係るトグル式の竪型射出成形機1も、従来の竪型射出成形機と略同様に構成され、竪型の型締装置2と、型締装置2の上部に設けられている射出装置3とから構成されている。型締装置2は、図示されていないベッドに固定されている固定盤5と、この固定盤5の上方に配置されている上可動盤6と、固定盤5の下方に配置されている下可動盤7と、固定盤5を摺動自在に貫通し上可動盤6と下可動盤7とを連結している複数本のタイバー9、9、…と、固定盤5と下可動盤7の間に設けられているトグル機構10とから構成されている。固定盤5の上面には下側金型12が、上可動盤6の下面には上側金型13が設けられ、トグル機構10を駆動するとこれらの金型12、13が型締めされるようになっている。上可動盤6には中央部にくり抜き6aが明けられ、上部から射出装置3が挿入されて、上側金型13のスプルに射出装置3の射出ノズルが当接している。
【0014】
下可動盤7とタイバー9、9、…には、従来周知のように型厚調整機構が設けられている。すなわちタイバー9、9、…には下端部に所定長さに渡って雄ネジが形成され、この雄ネジにタイバーナット15、15、…が螺合している。下可動盤7にはタイバー9、9、…が貫通する孔が明けられ、この孔は下可動盤7の下面から所定の深さで拡径されておりタイバーナット15、15、…が収納されている。そしてタイバーナット15、15、…は、その下面が押さえ板16、16、…で押さえられている。すなわちこの所定の深さで拡径された穴はタイバーナット15、15、…を収納するタイバーナットスペース18、18、…になっている。タイバーナット15、15、…には、プーリ等の回転手段が設けられて回転できるようになっているが図には回転手段は示されていない。回転手段によってタイバーナット15、15、…を回転すると、タイバー9、9、…に対する下可動盤7の連結位置を変化させることができ、これによって型厚調整ができるようになっている。
【0015】
本実施の形態においても、タイバーナット15は、タイバーナットスペース18内に軸方向に所定の遊び、すなわち隙間19をもって収納されている。この様子が
図1の(イ)に示されている。このような隙間19が確保されているので、タイバーナット15はタイバーナットスペース18内で滑らかに回転させることができる。型締装置2において型開きしているときには、タイバーナット15、15、…にはタイバー9、9、…、上可動盤6等の重量が作用するので、タイバーナット15、15、…は押さえ板16、16、…に押さえつけられている。従って隙間19はタイバーナット15の上方に形成されている。しかしながら型締めすると、上可動盤6と上側金型13が下方に駆動され、最初に上側金型13と下側金型12とが当接して、上可動盤6の下方向へ移動が規制され、そしてタイバー9、9、…やタイバーナット15、15、…も下方向への移動がストップする。下可動盤7は引き続き下方向に駆動されるのでタイバーナット15、15、…はタイバーナットスペース18、18、…内で相対的に上方向へ移動することになる。これによって
図1の(ウ)に示されているようにタイバーナット15、15、…がタイバーナットスペース18、18、…の上方に押し付けられ、隙間19は、タイバーナット15、15、…の下方に形成される。本願発明はこのような型締
工程時においてタイバーナット15、15、…の移動を検出して、金型の有無を検出するようになっている。
【0016】
本実施の形態に係る竪型射出成形機1には、金型検出装置21が設けられている。金型検出装置21は1本のタイバー9の下端部に固定されているセンサ保持具22と、このセンサ保治具22に設けられている磁性体からなる位置検出マーカ23と、下可動盤7に設けられているセンサ24とから構成されている。センサ24は本実施の形態においては磁気式のセンサからなり位置検出マーカ23の位置を検出できるようになっている。位置検出マーカ23はタイバー9に対してセンサ保治具22によって固定的に設けられているので、位置検出マーカ23はタイバー9と相対的にずれることはない。従って下可動盤7に対してタイバー9が軸方向に相対的に移動すると、センサ24によって移動が検出されることになる。センサ24の信号は、図には示されていないコントローラに入力されている。なお、金型検出装置21のセンサ24は、一般的な竪型射出成形機において設けられているセンサであり、本発明を実施するために格別に設けたものではない。つまり一般的な竪型射出成形機においても、型厚調整時にタイバー9と下可動盤7の相対位置を検出するためにセンサが設けられていて、これを利用している。
【0017】
本実施の形態に係る竪型射出成形機1によって金型の有無と、金型が型締めされたか否かを検出する方法を説明する。型締工程の開始時から型締完了時にかけて、金型検出装置21において下可動盤7に対するタイバー9の相対的な移動の有無を検出する。型締めされる直前までは、
図1の(イ)に示されているように、タイバーナット15はタイバーナットスペース18内で下方に位置している。型締装置2に適切に金型12、13が取り付けられ、そして適切に型厚調整されていれば型締完了時にタイバーナット15はタイバースペース18内で上側に押し付けられる。このときタイバー9が下可動盤7に対して相対的に移動する。移動距離は、ちょうど隙間19である。金型検出装置21においてこの移動が検出された場合には、金型12、13が型締装置2に設けられ、かつ適切に型締されたと判断する。コントローラによって射出装置3のインターロックが解除され、射出装置3から溶融樹脂を射出する。一方、金型12、13が型締装置2に設けられていない場合、あるいは型厚調整が適切にされていない場合には、型締装置2を駆動して型締めしてもタイバーナット15はタイバーナットスペース18内で移動しない。そうすると金型検出装置21においてタイバー9の下可動盤7に対する相対的な移動を検出できない。この場合には、金型12、13が設けられていない、あるいは適切に型厚調整されていないと判断し、コントローラは射出装置3のインターロックを維持する。すなわち射出が禁止される。
【0018】
本実施の形態に係る竪型射出成形機1は色々な変形が可能である。例えば、金型検出装置21のセンサ24は、例えばリニアエンコーダから構成することもできる。この場合においても位置検出マーカ23の位置の変化を正確に検出できる。また本実施の形態においては、タイバー9が下可動盤7に対して相対的に移動したか否かによって金型12、13の有無、および適切に型締されたか否かを判断しているが、相対的な移動の長さを評価してこれが適切であるか否かによって判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 5 固定盤
6 上可動盤 7 下可動盤
9 タイバー 10 トグル機構
12 下側金型 13 上側金型
15 タイバーナット 16 押さえ板
18 タイバーナットスペース 19 隙間
21 金型検出装置 22 センサ保持具
23 位置検出マーカ 24 センサ