特許第5795382号(P5795382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5795382床下式車輪旋盤上で輪軸の輪郭を矯正する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795382
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】床下式車輪旋盤上で輪軸の輪郭を矯正する方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 5/32 20060101AFI20150928BHJP
   B23B 25/06 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B23B5/32
   B23B25/06
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-540233(P2013-540233)
(86)(22)【出願日】2010年11月26日
(65)【公表番号】特表2013-543798(P2013-543798A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】DE2010001399
(87)【国際公開番号】WO2012069027
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】505006839
【氏名又は名称】ヘゲンシャイト−エムエフデー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディト ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ナーウマン・ハンス・ヨット
(72)【発明者】
【氏名】ネイセン・テオ
(72)【発明者】
【氏名】メルテンス・ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェ・ハンス−ヨアヒム
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−526533(JP,A)
【文献】 特開平06−285702(JP,A)
【文献】 特開昭56−139803(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/014972(WO,A2)
【文献】 中国特許出願公開第101125370(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 5/04
5/28 − 5/34
25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削用加工工具、その加工工具の機械加工制御部、駆動ローラ(15)、軸方向ガイドロール(17)、計測ローラ(13)及び軸箱筐体(6)に取り付ける固定機構(21;22)を備えた床下式車輪旋盤(12;14)上において、軸箱筐体(6)内で軌道車両に回転可能な形で軸支された輪軸(1)の輪郭を矯正する方法において、
駆動ローラ(15)を用いて、線路から輪軸(1)を持ち上げて、重量を測定し、
軸箱筐体(6)を駆動ローラ(15)と固定機構(21;22)の間で固定し、
輪軸(1)の二つの車輪(3;4)の各々の内側(16)に軸方向ガイドロール(17)を当接させて、その位置に固定し、
駆動ローラ(15)に追加の力(20)を加え、
計測ローラ(13)により各車輪(3;4)の測定円周面における実際の直径(8)を測定し、
その測定結果に基づき、実際の直径(8)の短い方を決定し、その直径から所定の加工許容差し引いて、目標とする直径(11)として切削用加工工具の機械加工制御部に入力
車輪(3;4)の輪郭を三つの領域に分けて、これらの領域をそれぞれ所定の切込み深さで加工することによって、単一の加工工程で輪郭を矯正する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
駆動ローラ(15)に加える追加の力(20)を駆動ローラ(15)当たり20KN〜50KN又は30KNに選定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加工許容を0.10mm〜0.25mm又は0.15mmに選定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
車輪(3;4)の外側(10)から測定円周面の方に向かって車輪(3;4)の輪郭最初の1/3の領域を2mm〜6mm又は4mmの切込み深さで加工することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
測定円周面の領域、即ち、車輪(3;4)の走行円周部を0.10mm〜0.25mm又は0.15mmの切込み深さで加工することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
車輪フランジ(9)の側面の領域を0.0mm〜4.0mm又は2.0mmの切込み深さで加工することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
車輪フランジ(9)の先端部を2.0mm〜6.0mm又は4.0mmの切込み深さで加工することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
クランプ爪(21)を備えた挟持部によって、軸箱筐体(6)を固定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
下支え部(22)によって、軸箱筐体(6)を固定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
クランプ爪(21)を備えた挟持と下支え部(22)とによって、軸箱筐体(6)を固定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削用加工工具、その加工工具の機械加工制御部、駆動ローラ、軸方向ガイドロール、計測ローラ及び軸箱筐体に取り付ける固定機構を備えた床下式車輪旋盤上において、軸箱筐体内で軌道車両に回転可能な形で軸支された輪軸の輪郭を矯正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、材料を節約した形で切削プロセスにより軌道車輪の輪郭を矯正する方法を記載している。この周知の方法は、走行面及び/又は車輪フランジにおける材料の磨耗により輪郭の領域が目標とする輪郭からずれている場合に、小さく磨耗した輪郭領域を検出して、それに対して、変形加工を実施し、それによって、その輪郭領域の材料を押し出して、窪んだ領域に移動させることで、最も大きく磨耗した領域を少なくとも部分的に材料で埋め合わせた後、研削プロセスによって作り出される、磨耗した輪郭に対して半径方向に関して外側にずれた矯正された輪郭の半径方向の位置を決定することを特徴としている。即ち、この方法の使用は、磨耗した車輪フランジが、例えば、圧延又は鍛造による、変形加工を実施され、それによって、車輪フランジの先端部から材料を取り崩し、その結果、車輪フランジの先端部から押し出され、そのため車輪フランジをより厚くしていた材料の部分を走行面の方に移動させることを前提としている。当業者であれば、このような従来技術を参照すると、鉄道用輪軸の輪郭矯正が床下式機械に分類されない機械でのみ実行可能であることが分かる。従って、特許文献1により周知の方法を床下式車輪旋盤にも適用する手法は明らかではない。
【0003】
特許文献2により、切削加工により鉄道用輪軸の構成要素である軌道車輪の輪郭を矯正する方法が周知である。この方法は、軌道車輪の測定円周面の両側における第一の中間領域では、輪郭矯正を丸くなった状態の除去に限定し、輪郭の外縁から中間領域にまで延びる第二の領域では、目標とする輪郭を再び作り出し、中間領域から車輪フランジにまで延びる第三の領域では、輪郭矯正を表面に近い層の除去に限定することを特徴としている。しかし、この方法は、ずっと前から床下式車輪旋盤での使用にも適しているにも関わらず、そのような特許文献2による知識からは、如何にすれば床下式車輪旋盤上での高精度の輪郭矯正を実現できるかとの示唆は得られていない。
【0004】
しかし、輪軸の高精度の輪郭矯正は、その輪軸を高速車両に採用できるための前提条件である。速い速度領域で使用した場合の輪軸の磨耗発生に関して特徴的なことは、初期段階では測定円周面の領域の材料が押し出されて、車輪フランジの側と車輪外周部の外側の方に等しく移動することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0201619号明細書
【特許文献2】ドイツ特許公開第102006054437号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の知見に基づき、本発明の課題は、最小限の材料の除去により輪軸の走行性能を大幅に向上できる方法を提案することである。特に、実現しようとする方法では、高速車両の輪軸の輪郭を矯正できるようにする。その場合、床下式車輪旋盤上で輪郭を矯正する車輪は、単一の工程により0.1mm〜0.2mmの切込み深さで加工できるようにする。この場合、目標とする直径からの最大偏差は、0.1mmの値を上回らないようにする。床下式車輪旋盤上での高精度の輪郭矯正は、輪郭矯正のために車両から輪軸を取り外す必要が無いので、同時に経済性も高める。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、本発明に基づき、
床下式車輪旋盤の駆動ローラを用いて、線路から輪軸を持ち上げて、重量を測定し、
軸箱筐体を駆動ローラと固定機構の間で固定し、
輪軸の二つの車輪の各々の内側に軸方向ガイドロールを当接させて、その位置に固定し、
駆動ローラに追加の力を加え、
計測ローラにより、実際の直径と各車輪の磨耗した輪郭を測定し、
その測定結果に基づき、実際の直径の短い方を決定し、それに所定の加工許容差を加えて目標とする直径として加工工具の機械加工制御部に入力する、
ことによって解決される。
【0008】
本方法の有利な実施形態では、駆動ローラに加える追加の力を駆動ローラ当たり20KN〜50KN、有利には、30KNに選定するものと規定する。それによって、床下式車輪旋盤上で輪軸を特に堅固に固定することができる。
【0009】
別の有利な実施形態の特徴では、所定の加工許容差を0.10mm〜0.25mm、有利には、0.15mmに選定するものと規定する。そのような規定は、細かいひび割れによる矯正する輪郭の表面の損傷を排除することを目的とし、本発明の目的に適うことである。
【0010】
輪郭の修復は、有利には、単一の加工工程により実施される。この場合、以下の通り実施される。
【0011】
車輪の外側から測定円周面の方に向かって、即ち、実際の輪郭の1/3の部分を2mm〜6mm、有利には、4mmの切込み深さで加工する。測定円周面の領域、即ち、実際の輪郭の走行円周部を0.10mm〜0.25mm、有利には、0.15mmの切込み深さで加工する。その後、車輪フランジの側面の領域を0.0mm〜4.0mm、有利には、2.0mmの切込み深さで加工する。従って、車輪フランジの側面の領域では、材料の研削を行わないものと規定することもできる。最終的に、車輪フランジの先端部を2.0mm〜6.0mm、有利には、4.0mmの切込み深さで加工する。
【0012】
そのような異なる切込み深さでは、固定部の剛性に、そのため修復する輪郭の目標とする直径の精度に影響を与える受動的な切削力も変化する。この場合、「比切削力」を考慮する。この比切削力とは、1mmの切削断面当たりの材料を切削するために必要な力である。この力は、材料の研削し易さ、切削する厚さ、切削速度及び切削工具の切削形状に依存する。切削する厚さが小さい場合、この比切削力は、幾何級数的に増大する。このような力の増大は、形成すべき輪郭の精度に影響を与える。即ち、車輪の輪郭、直径及び真円度の正確な加工に関して、輪軸の堅固な設定、即ち、固定を行なうことが重要である。この場合、床下式車輪旋盤上における加工時に引き続き軸箱筐体内に輪軸を軸支した状態に留めることも考慮すべきである。そのため、所要の軸受の遊びは、それが加工結果に影響を与えないように対処しなければならない。そのためには、先ずは、軸方向ガイドロールを輪軸の二つの車輪の内側に当接させて、その加工位置に固定することによって、これらの車輪を内側から固定することが有効である。更に、クランプ爪を備えた挟持部によって軸箱筐体を固定するものと規定する。しかし、軸箱筐体は、下支え部によって固定することもできる。最終的には、軸箱筐体を挟持部と下支え部の両方によって固定すると規定することもできる。
【0013】
本方法を使用することにより、最低限の材料だけを除去することによって、輪軸の走行性能を大幅に向上することが可能である。そのため、特に、高速車両の輪軸の輪郭を経済的に矯正することができる。
【0014】
以下において、一つの実施例により本発明を詳しく説明する。図面は、それぞれ簡略化されて、非常に模式的に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】取り外した輪軸の縮小した縮尺での斜視図
図2】輪軸の磨耗した輪郭の横断面図
図3】挟持部により軸箱を固定した変化形態の側面図
図4】下支え部により軸箱を固定した変化形態の側面図
図5】下支え部と挟持部とにより軸箱を固定した変化形態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に図示された輪軸1は、一つの車軸2と二つの車輪円板3及び4から構成される。組み立てられた状態では、この輪軸1の軸ピボット5は、軸箱筐体6内で(図示されていない)軌道車両に回転可能な形で軸支されている。
【0017】
図2は、車輪円板3及び4の外周の境界を画定する車輪の輪郭7の一部を図示している。この場合、輪軸1の所定の走行性能を決める磨耗した輪郭は線8で示されている。この磨耗した輪郭8は、実際の輪郭であり、測定円周面の領域から材料が押し出されて、その材料が車輪フランジ9の側の方にも車輪の輪郭7の外側10の方にも等しく移動したことが分かる。
【0018】
輪郭矯正のためには、実際の輪郭8を削り取って、輪軸1の輪郭矯正の要件に合致する目標とする輪郭11を再び作り出すことが必要である。この場合、床下式車輪旋盤は、実際の輪郭8を検知するための計測ローラ13を備えており、このローラは、再び作り出された目標とする輪郭11の加工結果を確認するためにも使用される。計測ローラ13により得られた結果は、(図示されていない)機械加工制御部に入力され、左の車輪円板4と右の車輪円板3の測定結果が互いに比較された後、二つの車輪円板3;4の二つの実際の直径の中の小さい方が、例えば、2×0.15mmの加工許容差を差し引かれて、目標とする直径として入力される。このように0.15mmを設定することは、材料が移動することによって小さいひび割れの形で発生する可能性が有る、目標とする輪郭11における余分な損傷分を除外するために必要である。図2には、実際の輪郭8を初期値として、目標とする輪郭11を再び作り出すことが可能な切込み深さがそれぞれ示されている。
【0019】
図3は、挟持部により軸箱筐体6を固定する実施形態を図示している。床下式車輪旋盤12内では、車輪円板3が、二つの駆動ローラによって下方から支持され、それらの中の一方の駆動ローラ15だけが図示されている。それと同時に、車輪円板3の内側16は、軸方向ガイドロール17によって固定されている。矢印で表された車輪負荷18は、同じく矢印で表された駆動ローラ15の力19と対抗しており、その力は、車輪負荷18の大きさに相当する反力と別の矢印で表された追加負荷20とを合算したものである。この追加負荷20は、床下式車輪旋盤12上で軸箱筐体6を挟持するためのクランプ爪21を曲げて変形させるように作用する。この場合、追加負荷20は、クランプ爪21に作用して、その剛性に応じて、クランプ爪を変形させる。追加負荷20は、加工の間、既に前に説明した比切削力だけ増大する。車輪円板3、軸ピボット5、軸箱筐体6、クランプ爪21、床下式車輪旋盤12及び駆動ローラ15から成る全体システムの最終的な剛性の範囲内において、追加負荷20は、加工精度に作用する。
【0020】
図4は、下支え部22により軸箱筐体6を固定する実施形態を図示している。そのような下支え部22は、例えば、(矢印で表された)充分な大きさの車輪負荷23が約120KNよりも大きい車両で使用される。矢印で表された約20KNの負荷軽減部24は、同じく矢印で表された結果として得られる力25を生み出し、その力は、軸箱筐体6を介して床下式車輪旋盤14の下支え部22に作用して、その剛性に応じて下支え部を変形させる。この結果として得られる力25は、加工の間、比切削力だけ減少する。本システムの最終的な剛性の範囲内において、この減少分も加工精度に作用する。
【0021】
図5は、クランプ爪21を備えた挟持部と下支え部22とにより軸箱筐体6を固定する実施形態を図示している。この固定部の変化形態により、図3及び図4と関連して説明した負の作用が、受動的な切削力によって取り除かれる。従って、それは、単一の工程で鉄道の輪軸1の輪郭を経済的に矯正するための最適な固定部である。
【符号の説明】
【0022】
1 輪軸
2 車軸
3 車輪円板
4 車輪円板
5 軸ピボット
6 軸箱筐体
7 車輪の輪郭
8 実際の輪郭(磨耗した輪郭)
9 車輪フランジ
10 外側
11 目標とする輪郭(矯正輪郭)
12 床下式車輪旋盤
13 計測ローラ
14 床下式車輪旋盤
15 駆動ローラ
16 内側
17 軸方向ガイドロール
18 車輪負荷
19 車輪負荷と追加負荷
20 追加負荷
21 クランプ爪
22 下支え部
23 車輪負荷
24 車輪負荷の軽減部
25 結果として得られる力
図1
図2
図3
図4
図5