特許第5795386号(P5795386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795386
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】表示装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20150928BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20150928BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   G01C21/26 A
   G09B29/00 F
   G09B29/10 A
   G09B29/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-546866(P2013-546866)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2011077403
(87)【国際公開番号】WO2013080283
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】藤榮 哲也
【審査官】 根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−177790(JP,A)
【文献】 特開2006−313088(JP,A)
【文献】 特開2005−069776(JP,A)
【文献】 特開2008−202987(JP,A)
【文献】 特開2007−071666(JP,A)
【文献】 特開2001−116565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
G09B 29/00−29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置を測位して位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報に基づいて、前記移動体の移動者の視点と前記移動体の進行方向の風景との間に位置する透過部材上に、前記風景に含まれ、前記移動体の位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、更に前記移動体の速度に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする請求項に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記施設との距離が遠い車線を走行中の場合には、前記施設との距離が近い車線を走行中の場合に比べて、前記移動体から遠くに存在する前記施設の情報を表示させることを特徴とする請求項に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記透過部材を通して観察される前記風景に含まれる前記施設に応じた位置に、前記施設の情報を表示させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記移動体の位置から、前記第1所定距離よりも小さい第2所定距離内に存在する施設の情報の表示を消去し、
前記表示制御手段は、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、前記第2所定距離を変化させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、更に前記移動体の速度に応じて、前記第2所定距離を変化させることを特徴とする請求項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記移動体の速度が速い場合には、前記移動体の速度が遅い場合に比べて、前記移動体から遠くに存在する前記施設の情報を表示させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記移動体の位置から、前記第1所定距離よりも小さい第2所定距離内に存在する施設の情報の表示を消去し、
前記表示制御手段は、前記移動体の速度に応じて、前記第2所定距離を変化させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示制御手段は、更に前記移動体が走行している道路の渋滞情報に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
移動体の位置を測位して位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記移動体の進行方向を撮影した画像である実写画像又は前記進行方向を模した画像である前方画像を取得する画像取得手段と、
前記位置情報に基づいて、前記前方画像に含まれ、前記移動体の位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を前記前方画像中に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、前記移動体が走行している道路の車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする表示装置。
【請求項11】
移動体の移動者に、前記移動体の前方の景色及び当該景色に含まれる施設に関する情報を視認させる表示手段と、
前記移動体と前記施設との距離が第1所定距離以下になった時に、前記表示手段に前記施設に関する情報を表示させる表示制御手段と、
を有し、
前記表示制御手段は、前記移動体が走行している道路における車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする表示装置。
【請求項12】
移動体の位置を測位して位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記移動体の搭乗者の前方に位置し、情報を表示可能な透過部材と、
前記位置情報に基づいて、前記透過部材を通して前記搭乗者により視認される、実風景に存在する施設の情報を当該透過部材上に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、前記移動体の位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させるとともに、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、情報を表示させる施設を変えることを特徴とする表示装置。
【請求項13】
表示装置が実行する制御方法であって、
移動体の位置を測位して位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報に基づいて、前記移動体の移動者の視点と前記移動体の進行方向の風景との間に位置する透過部材上に、前記風景に含まれ、前記移動体の位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させる表示制御工程と、
を備え、
前記表示制御工程は、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、施設の位置等によって、施設の情報の表示態様を変化させるナビゲーション装置が知られている。例えば特許文献1には、進行方向に対して道路の右側にある施設に立ち寄り難い状況になった場合に、左側にある施設の情報を強調表示するナビゲーション装置が開示されている。また、特許文献2には、車両前方の風景画像にナビゲーション情報を重畳表示させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−043383号公報
【特許文献2】特開2008−202987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車線が複数ある道路の走行時において、路肩から離れた対向車線寄りの車線を走行していた場合には、道路沿いにある施設のうち、自車位置からの距離が短い施設については、安全に立ち寄るのが困難な場合がある。従って、このような場合に、安全に立ち寄ることができない施設の情報を表示するのは、表示スペースの無駄となり、かつ、安全性の観点からも好ましくない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、無駄な情報表示を抑制し、安全性を損なうことなく施設の情報表示を行うことが可能な表示装置及びその制御方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、表示装置は、移動体の位置を測位して位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報に基づいて、前記移動体の移動者の視点と前記移動体の進行方向の風景との間に位置する透過部材上に、前記風景に含まれ、前記移動体の位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させる表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させる。
【0007】
請求項10に記載の発明では、表示装置は、移動体の位置を測位して位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記移動体の進行方向を撮影した画像である実写画像又は前記進行方向を模した画像である前方画像を取得する画像取得手段と、前記位置情報に基づいて、前記前方画像に含まれ、前記移動体の位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を前記前方画像中に表示させる表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記移動体が走行している道路の車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする。
【0008】
請求項11に記載の発明では、表示装置は、前記移動体の移動者に、前記移動体の前方の景色及び当該景色に含まれる施設に関する情報を視認させる表示手段と、前記移動体と前記施設との距離が第1所定距離以下になった時に、前記表示手段に前記施設に関する情報を表示させる表示制御手段と、を有し、前記表示制御手段は、前記移動体が走行している道路における車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする。
【0009】
請求項12に記載の発明では、表示装置は、移動体の位置を測位して位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記移動体の搭乗者の前方に位置し、情報を表示可能な透過部材と、前記位置情報に基づいて、前記透過部材を通して前記搭乗者により視認される、実風景に存在する施設の情報を当該透過部材上に表示させる表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記移動体の位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させるとともに、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、情報を表示させる施設を変えることを特徴とする。
【0010】
請求項13に記載の発明では、表示装置が実行する制御方法であって、移動体の位置を測位して位置情報を取得する位置情報取得工程と、前記位置情報に基づいて、前記移動体の移動者の視点と前記移動体の進行方向の風景との間に位置する透過部材上に、前記風景に含まれ、前記移動体の位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させる表示制御工程と、を備え、前記表示制御工程は、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例に係る表示システムの構成例を示す。
図2】ナビゲーション装置の概略構成である。
図3】ヘッドアップディスプレイの概略構成である。
図4】本実施例に係る表示システムの機能ブロック図を示す。
図5】POI表示タイミングテーブルの具体例を示す。
図6】進行車線及び対向車線がそれぞれ3車線ある道路の上面図を示す。
図7】画像処理部及びPOI表示範囲決定部が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図8】距離算出部が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図9】描画処理部と表示出力部とが実行する処理手順を示すフローチャートである。
図10】変形例に係るヘッドアップディスプレイの概略構成である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1つの好適な実施形態では、表示装置は、移動体の現在位置を測位して現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、前記現在位置情報に基づいて、前記移動体の移動者の視点と前記移動体の進行方向の風景との間に位置する透過部材上に、前記風景に含まれ、前記移動体の現在位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させる表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させる。
【0013】
上記表示装置は、例えばヘッドアップディスプレイであり、現在位置情報取得手段と、表示制御手段とを備える。現在位置情報取得手段は、移動体の現在位置を測位して現在位置情報を取得する。表示制御手段は、現在位置情報に基づいて、移動体の移動者の視点と移動体の進行方向の風景との間に位置する透過部材上に、風景に含まれ、移動体の現在位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させる。ここで、「施設」とは、建物に限らず、駐車場などの目的地として設定され得る対象を指す。そして、表示制御手段は、移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、第1所定距離を変化させる。
【0014】
一般に、走行中の車線の位置に応じて、施設に立ち寄る際の車線変更の有無及び車線変更すべき車線数が変わり、これにより、施設に立ち寄るための運転操作を開始すべきタイミングが異なる。従って、この態様では、表示装置は、移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、施設の情報を表示するための閾値となる現在位置からの施設の距離を、車線の位置に応じて変更する。これにより、表示装置は、無駄な情報表示を抑制し、安全に立ち寄り可能な施設の情報表示を行うことが可能となる。
【0015】
上記表示装置の一態様では、前記表示制御手段は、前記移動体が走行している車線と前記施設との距離に応じて、前記第1所定距離を変化させる。この態様によっても、好適に、表示装置は、無駄な情報表示を抑制し、安全に立ち寄り可能な施設の情報表示を行うことが可能となる。
【0016】
上記表示装置の他の一態様では、前記表示制御手段は、更に前記移動体の速度に応じて、前記第1所定距離を変化させる。一般に、施設に立ち寄るためには、一度右左折をする必要があるため、当該右左折地点までに所定速度以下まで減速する必要がある。従って、走行速度によって、施設への立ち寄り易さは変化する。よって、この態様により、表示装置は、安全に立ち寄り可能な施設に対する情報のみを、より的確に表示することができる。
【0017】
上記表示装置の他の一態様では、前記表示制御手段は、前記施設との距離が遠い車線を走行中の場合には、前記施設との距離が近い車線を走行中の場合に比べて、前記移動体から遠くに存在する前記施設の情報を表示させる。この態様により、好適に、表示装置は、無駄な情報表示を抑制し、安全に立ち寄り可能な施設の情報表示を行うことが可能となる。
【0018】
上記表示装置の一態様では、前記表示制御手段は、前記透過部材を通して観察される前記風景に含まれる前記施設に応じた位置に、前記施設の情報を表示させる。これにより、表示制御手段は、施設とその施設の情報とを好適に対応付けて運転者に視認させることができる。
【0019】
上記表示装置の他の一態様では、前記表示制御手段は、前記移動体の現在位置から、前記第1所定距離よりも小さい第2所定距離内に存在する施設の情報の表示を消去し、前記表示制御手段は、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、前記第2所定距離を変化させる。この態様により、表示装置は、安全に立ち寄ることができない施設に対する不要な情報表示を抑制し、安全性を高め、かつ、表示スペースを確保することができる。
【0020】
上記表示装置の他の一態様では、前記表示制御手段は、更に前記移動体の速度に応じて、前記第2所定距離を変化させる。この態様により、表示装置は、安全に立ち寄ることができない施設に対する不要な情報表示を抑制し、安全性を高め、かつ、表示スペースを確保することができる。
【0021】
上記表示装置の他の一態様では、前記表示制御手段は、前記移動体の速度が速い場合には、前記移動体の速度が遅い場合に比べて、前記移動体から遠くに存在する前記施設の情報を表示させる。この態様により、表示装置は、安全に立ち寄り可能な施設に対する情報のみを、より的確に表示することができる。
【0022】
上記表示装置の他の一態様では、前記表示制御手段は、前記移動体の現在位置から、前記第1所定距離よりも小さい第2所定距離内に存在する施設の情報の表示を消去し、前記表示制御手段は、前記移動体の速度に応じて、前記第2所定距離を変化させる。この態様により、表示装置は、安全に立ち寄ることができない施設に対する不要な情報表示を抑制し、安全性を高め、かつ、表示スペースを確保することができる。
【0023】
上記表示装置の他の一態様では、前記表示制御手段は、更に前記移動体が走行している道路の渋滞情報に応じて、前記第1所定距離を変化させる。この態様により、表示装置は、渋滞等に起因して安全に立ち寄ることができない施設に対する不要な情報表示を抑制し、安全性を高め、かつ、表示スペースを確保することができる。
【0024】
本発明の他の好適な実施形態では、表示装置は、移動体の現在位置を測位して現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、前記移動体の進行方向を撮影した画像である実写画像又は前記進行方向を模した画像である前方画像を取得する画像取得手段と、前記現在位置情報に基づいて、前記前方画像に含まれ、前記移動体の現在位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を前記前方画像中に表示させる表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記移動体が走行している道路の車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させる。「進行方向を模した画像」とは、例えばコンピュータグラフィックスにより作成した画像を指す。この実施形態であっても、表示装置は、無駄な情報表示を抑制し、安全に立ち寄り可能な施設の情報表示を行うことが可能となる。
【0025】
本発明の他の好適な実施形態では、表示装置は、前記移動体の移動者に、前記移動体の前方の景色及び当該景色に含まれる施設に関する情報を視認させる表示手段と、前記移動体と前記施設との距離が第1所定距離以下になった時に、前記表示手段に前記施設に関する情報を表示させる表示制御手段と、を有し前記表示制御手段は、前記移動体が走行している道路の車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させる。この実施形態であっても、表示装置は、無駄な情報表示を抑制し、安全に立ち寄り可能な施設の情報表示を行うことが可能となる。
【0026】
本発明の他の好適な実施形態では、表示装置は、移動体の現在位置を測位して現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、前記移動体の搭乗者の前方に位置し、情報を表示可能な透過部材と、前記現在位置情報に基づいて、前記透過部材を通して前記搭乗者により視認される、実風景に存在する施設の情報を当該透過部材上に表示させる表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記移動体の現在位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させるとともに、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、情報を表示させる施設を変える。この実施形態であっても、表示装置は、無駄な情報表示を抑制し、安全に立ち寄り可能な施設の情報表示を行うことが可能となる。
【0027】
本発明の他の好適な実施形態では、表示装置が実行する制御方法であって、移動体の現在位置を測位して現在位置情報を取得する現在位置情報取得工程と、前記現在位置情報に基づいて、前記移動体の移動者の視点と前記移動体の進行方向の風景との間に位置する透過部材上に、前記風景に含まれ、前記移動体の現在位置から第1所定距離内に存在する施設の情報を表示させる表示制御工程と、を備え、前記表示制御工程は、前記移動体が走行している同一道路における車線の位置に応じて、前記第1所定距離を変化させる。表示装置は、この制御方法を実行することで、無駄な情報表示を抑制し、安全に立ち寄り可能な施設の情報表示を行うことが可能となる。
【実施例】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0029】
[システム構成]
図1は、本実施例に係る表示システム100の構成例を示す。図1に示すように、表示システム100は、ナビゲーション装置1と、ヘッドアップディスプレイ2とを備える。また、当該表示システム100は、車両に搭載される。なお、ヘッドアップディスプレイ2にナビゲーション装置1に相当する機能がくみこまれたものであってもよい。
【0030】
ナビゲーション装置1は、出発地から目的地までの経路案内を行う機能などを有する。ナビゲーション装置1は、例えば、車両に設置される据え置き型のナビゲーション装置、PND(Portable Navigation Device)、又はスマートフォンなどの携帯電話とすることができる。
【0031】
ヘッドアップディスプレイ2は、現在位置を含む地図情報や経路案内情報、走行速度、その他運転を補助する情報を表示する画像を生成し、当該画像を運転者の目の位置(アイポイント)から虚像として視認させる装置である。ヘッドアップディスプレイ2には、車両の位置、車両の走行速度、地図情報、及び施設データなどのナビゲーション処理に用いられる各種情報がナビゲーション装置1から供給される。
【0032】
なお、ナビゲーション装置1がスマートフォンなどの携帯電話である場合、ナビゲーション装置1は、クレードルなどによって保持されても良い。この場合、ナビゲーション装置1は、クレードルなどを介して、ヘッドアップディスプレイ2と情報の授受を行うこととしても良い。
【0033】
[ナビゲーション装置の構成]
図2は、ナビゲーション装置1の構成を示す。図2に示すように、ナビゲーション装置1は、自立測位装置10、GPS受信機18、システムコントローラ20、ディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、通信装置38、インタフェース39、表示ユニット40、音声出力ユニット50、及び入力装置60を備える。
【0034】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、車両の方向変換時における車両の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、車両の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0035】
GPS受信機18は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両の絶対的な位置(以後、「現在位置」とも呼ぶ。)を検出するために用いられる。GPS受信機18は、本発明における「現在位置情報取得手段」の一例である。
【0036】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置1全体の制御を行う。
【0037】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13並びにGPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0038】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブなどのディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0039】
ディスクドライブ31は、システムコントローラ20の制御の下、CD又はDVDといったディスク33から、音楽データ、映像データなどのコンテンツデータを読み出し、出力する。なお、ディスクドライブ31は、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブのうち、いずれか一方としてもよいし、CD及びDVDコンパチブルのドライブとしてもよい。データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図データなどのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶するユニットである。通信装置38は、例えば、FMチューナやビーコンレシーバ、携帯電話や専用の通信カードなどにより構成され、VICS(Vehicle Information Communication System、登録商標)センタなどから配信される情報(以下、「VICS情報」と呼ぶ。)を電波39より取得する。そしてインタフェース37は、通信装置38のインタフェース動作を行い、VICS情報をシステムコントローラ20等に入力する。また、通信装置38は、GPS受信機18から取得した現在位置の情報や地図データなどをヘッドアップディスプレイ2に送信する。
【0040】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図データを読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図データなどを表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、画像表示部として機能し、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0041】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、CD−ROMドライブ31又はDVD−ROM32、若しくはRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0042】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式の場合、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。
【0043】
[ヘッドアップディスプレイの構成]
図3は、ヘッドアップディスプレイ2の概略構成図である。図3に示すように、本実施例に係るヘッドアップディスプレイ2は、光源ユニット3と、カメラ6と、コンバイナ9とを備え、フロントウィンドウ25、天井部27、ボンネット28、及びダッシュボード29などを備える車両に取り付けられる。
【0044】
光源ユニット3は、支持部材5a、5bを介して車室内の天井部27に設置され、運転を補助する情報を示す画像を構成する光を、コンバイナ9に向けて出射する。具体的には、光源ユニット3は、制御部4の制御に基づき、光源ユニット3内に表示像の元画像(実像)を生成し、その画像を構成する光をコンバイナ9へ出射することで、コンバイナ9を介して運転者に虚像「Iv」を視認させる。光源ユニット3は、本発明における「表示手段」の一例である。
【0045】
コンバイナ9は、光源ユニット3から出射される表示像が投影されると共に、表示像を運転者のアイポイント「Pe」へ反射することで当該表示像を虚像Ivとして表示させる。そして、コンバイナ9は、天井部27に設置された支持軸部8を有し、支持軸部8を支軸として回動する。コンバイナ9は、本発明における「透明部材」の一例である。支持軸部8は、例えば、フロントウィンドウ25の上端近傍の天井部27、言い換えると運転者用の図示しないサンバイザが設置される位置の近傍に設置される。なお、支持軸部8は、上述のサンバイザに代えて設置されてもよい。
【0046】
制御部4は、図示しないCPUやRAM、ROMなどを有し、ヘッドアップディスプレイ2の全般的な制御を行う。また、制御部4は、ナビゲーション装置1と通信が可能であり、ナビゲーション処理に用いられる各種情報をナビゲーション装置1から受信する。
【0047】
特に、本実施例では、制御部4は、コンバイナ9から視認される風景にPOI(Point of Interest)が含まれる場合に、当該POIを表すマークや当該POIの関連情報などの表示(「POI表示」とも呼ぶ。)を、当該POIが視認される位置と対応した位置に、虚像Ivとして表示させる。なお、ここで、「POI」とは、ナビゲーション装置1又はヘッドアップディスプレイ2が記憶する地図データに登録されている施設、又は、これらのうち、ユーザが指定した特定の施設を指すものとする。制御部4は、本発明における「表示制御手段」及び「画像取得手段」の一例である。
【0048】
カメラ6は、車両の前方に向けられ、虚像Ivと重畳する範囲の風景を撮影した画像(「前方画像If」とも呼ぶ。)を生成し、フレームメモリに記憶する。その後、前方画像Ifは、有線又は無線により制御部4に供給される。なお、図3では、支持部材5a、5bが取り付けられる光源ユニット3の上面にカメラ6が設置されているが、これに代えて、光源ユニット3の他の面、天井部27、又はダッシュボード29等の任意の位置に固定されてもよく、また、光源ユニット3に内蔵されていてもよい。
【0049】
[制御方法]
次に、本実施例に係る制御方法について説明する。図4は、本実施例に係る表示システム100の機能ブロック図を示す。制御部4は、画像処理部71と、POI表示範囲決定部72と、距離算出部74と、描画処理部75と、表示出力部76とを備える。また、光源ユニット3に内蔵されたメモリ又はデータ記憶ユニット36には、後述するPOI表示タイミングテーブル82と、各POIの位置データであるPOI位置データ83と、各POIに対応するPOI表示を行うのに必要なデータであるPOI表示データ84とが記憶されている。なお、図4において、破線枠「LB1」内の処理フローは、後述する図7のフローチャートに相当し、破線枠「LB2」内の処理フローは、後述する図8のフローチャートに相当し、破線枠「LB3」内の処理フローは、後述する図9のフローチャートに相当する。
【0050】
画像処理部71は、カメラ6から前方画像Ifを示す信号「S1」が供給され、供給された信号S1が示す前方画像Ifに基づき、車両が走行中の車線(単に「走行車線」とも呼ぶ。)を認識する。具体的には、画像処理部71は、周知の画像処理技術により、前方画像Ifから各車線を抽出し、進行方向への走行用に設けられた車線(「進行車線」とも呼ぶ。)の車線数を認識すると共に、進行車線を路肩に近い車線から順に数えた場合の走行車線の番号(「進行車線番号Nrf」とも呼ぶ。)を算出する。後述するように、進行車線番号Nrfは、進行車線に近接するPOIから、POI表示の対象となるPOI(「表示対象POI」とも呼ぶ。)を定めるために用いられる。
【0051】
また、画像処理部71は、進行車線を対向車線に近い車線から順に数えた場合の走行車線の番号(「対向車線番号Nrb」とも呼ぶ。)を算出する。後述するように、対向車線番号Nrbは、対向車線に近接するPOIから、POI表示を行うPOIを定めるために用いられる。そして、画像処理部71は、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbを示す信号「S2」を、POI表示範囲決定部72に供給する。
【0052】
POI表示範囲決定部72は、POI表示タイミングテーブル82を参照し、進行車線番号Nrf、対向車線番号Nrb、及び車両の走行速度に基づき、自車位置を基準とする表示対象POIの存在範囲(「POI表示範囲」とも呼ぶ。)を決定する。POI表示範囲は、自車位置から車両の進行方向(即ち走行車線の延在方向)における距離の範囲を示す。より具体的には、POI表示範囲決定部72は、進行車線に近接するPOIから表示対象POIを決定するためのPOI表示範囲(「進行車線側のPOI表示範囲」とも呼ぶ。)と、対向車線に近接するPOIから表示対象POIを決定するためのPOI表示範囲(「対向車線側のPOI表示範囲」とも呼ぶ。)とをそれぞれ決定する。そして、POI表示範囲決定部72は、決定した進行車線側のPOI表示範囲及び対向車線側のPOI表示範囲を示す信号「S3」を、描画処理部75へ送信する。POI表示範囲の上限値は、本発明における「第1所定距離」の一例であり、POI表示範囲の下限値は、本発明における「第2所定距離」の一例である。
【0053】
ここで、POI表示タイミングテーブル82について、図5を参照して説明する。図5は、POI表示タイミングテーブル82の具体例である。図5において、「速度」は、車両の走行速度を示す。
【0054】
図5に示すように、進行車線側のPOI表示範囲は、進行車線番号Nrfが大きいほど、即ち、走行車線が対向車線に近いほど、自車位置から遠ざかる方向に遷移する。一般に、進行車線沿いにあるPOIに立ち寄る場合、進行車線番号Nrfが大きいほど、即ち走行車線が対向車線に近いほど、車線変更が必要となり、POIに立ち寄るために必要な自車位置からPOIまでの距離が長くなる。以上を勘案し、POI表示範囲決定部72は、進行車線番号Nrfが大きいほど、進行車線側のPOI表示範囲を自車位置から遠ざかる方向に遷移させることで、立ち寄りが困難なPOIに対する不要なPOI表示を抑制する。これにより、ヘッドアップディスプレイ2は、安全性を高めつつ、不要なPOI表示を抑制した分の表示スペースを他の有用な表示に活用することができる。
【0055】
同様に、反対車線側のPOI表示範囲は、対向車線番号Nrbが大きいほど、即ち、走行車線が対向車線と遠いほど、自車位置から遠ざかる方向に遷移する。一般に、対向車線沿いにあるPOIに立ち寄る場合、対向車線から遠い車線ほど、車線変更が必要となり、POIに立ち寄るために必要な自車位置からPOIまでの距離が長くなる。以上を勘案し、POI表示範囲決定部72は、対向車線番号Nrbが大きいほど、対向車線側のPOI表示範囲を自車位置から遠ざかる方向に遷移させることで、立ち寄りが困難なPOIに対する不要なPOI表示を抑制する。これにより、ヘッドアップディスプレイ2は、安全性を高めつつ、不要なPOI表示を抑制した分の表示スペースを他の有用な表示に活用することができる。
【0056】
さらに、図5に示すように、進行車線側のPOI表示範囲及び対向車線側のPOI表示範囲のいずれの場合についても、車両の走行速度が高いほど、POI表示範囲は、自車位置から遠ざかる方向に遷移する。言い換えると、走行速度が高いほど、POI表示のタイミングが早くなる。一般に、走行速度が高いほど、安全にPOIに立ち寄るために必要な自車位置からPOIまでの距離は長くなる。以上を勘案し、POI表示範囲決定部72は、走行速度が高いほど、POI表示範囲を自車位置から遠ざかる方向に遷移させる。これにより、ヘッドアップディスプレイ2は、立ち寄りが困難なPOIに対する不要なPOI表示を抑制し、安全に立ち寄りが可能なPOIに対してのみPOI表示を行うことができる。
【0057】
再び、図4に戻り、距離算出部74について説明する。距離算出部74は、GPS受信機18から自車位置の緯度経度等を示す自車位置情報を受信する。そして、距離算出部74は、自車位置から各POIまでの距離(「POI到達距離」とも呼ぶ。)を、POI位置データ83を参照することで算出する。POI到達距離は、自車位置からPOIへ車両が到達するまでに必要な走行距離であってもよく、自車位置からPOIまでの直線距離であってもよい。なお、POI到達距離を算出する対象となるPOIは、例えば、運転者がコンバイナ9を介して視認可能な位置に存在するPOIであって、進行車線側に存在するPOIと、反対車線側に存在するPOIとの両方を含む。そして、距離算出部74は、算出したPOI到達距離を示す制御信号「S4」を、描画処理部75に供給する。
【0058】
描画処理部75は、POI表示範囲決定部72から供給された制御信号S3が示すPOI表示範囲と、距離算出部74から供給された制御信号S4が示す各POIのPOI到達距離とに基づき、表示対象POIを決定する。具体的には、描画処理部75は、進行車線側のPOI表示範囲と、進行車線側に存在する各POIのPOI到達距離とを比較し、進行車線側に存在するPOIから表示対象POIを定める。また、描画処理部75は、反対車線側のPOI表示範囲と、反対車線側に存在する各POIのPOI到達距離とを比較し、反対車線側に存在するPOIから表示対象POIを定める。
【0059】
次に、描画処理部75は、決定した表示対象POIに対応するPOI表示データ84を参照して、表示対象POIのPOI表示を含む画像を生成し、当該画像を示す信号「S5」を表示出力部76に供給する。そして、表示出力部76は、描画処理部75から供給された信号S5に基づき、表示像を構成する光をコンバイナ9へ出射する。
【0060】
次に、図6を参照し、走行車線ごとにPOI表示範囲が異なることを示す具体例を説明する。図6は、進行車線及び対向車線がそれぞれ3車線あり、進行車線側に「POI 1」〜「POI 12」の各POIが存在し、反対車線側に「POI 21」〜「POI 34」の各POIが存在する道路の上面図を示す。図6において、矢印「97A」及び矢印「98A」は、自車位置が第1車線91上のマーク「96A」の位置にある場合の進行車線側及び反対車線側それぞれのPOI表示範囲を示す。矢印「97B」及び矢印「98B」は、自車位置が第2車線92上のマーク「96B」の位置にある場合の進行車線側及び反対車線側それぞれのPOI表示範囲を示す。矢印「97C」及び矢印「98C」は、自車位置が第3車線93上のマーク「96C」の位置にある場合の進行車線側及び反対車線側それぞれのPOI表示範囲を示す。
【0061】
図6に示すように、自車位置が第1車線91上のマーク96Aにある場合には、進行車線番号Nrfが「1」であり、自車位置が第2車線92上のマーク96B又は第3車線93上のマーク96Cにある場合と比較して、車両は、容易に進行車線側のPOIに立ち寄ることが可能である。よって、この場合の進行車線側のPOI表示範囲は、自車位置がマーク96B又はマーク96Cにある場合のPOI表示範囲と比較して、自車位置に最も近い範囲、即ち「POI 5」〜「POI 12」までが表示対象POIとなる範囲に設定される。
【0062】
また、自車位置が第3車線93上のマーク96Cにある場合には、進行車線番号Nrfが「3」であり、自車位置が第1車線91上のマーク96A又は第2車線92上のマーク96Bにある場合と比較して、車両は、進行車線側のPOIに立ち寄る際に、より多くの車線変更が必要となる。従って、この場合の進行車線側のPOI表示範囲は、自車位置がマーク96A又はマーク96Bにある場合のPOI表示範囲と比較して、自車位置から最も離れた範囲、即ち「POI 1」〜「POI 8」までが表示対象POIとなる範囲に設定される。
【0063】
一方、自車位置が第1車線91上のマーク96Aにある場合には、対向車線番号Nrbが「3」であり、自車位置が第2車線92上のマーク96B又は第3車線93上のマーク96Cにある場合と比較して、車両は、進行車線側のPOIに立ち寄る際により多くの車線変更が必要となる。従って、この場合の反対車線側のPOI表示範囲は、自車位置がマーク96B又はマーク96Cにある場合のPOI表示範囲と比較して、自車位置から最も離れた範囲、即ち「POI 21」〜「POI 28」までが表示対象POIとなる範囲に設定される。
【0064】
また、自車位置が第3車線93上のマーク96Cにある場合には、対向車線番号Nrbが「3」であり、自車位置が第1車線91上のマーク96A又は第2車線92上のマーク96Bにある場合と比較して、車両は、容易に対向車線側のPOIに立ち寄ることが可能である。よって、この場合の対向車線側のPOI表示範囲は、自車位置がマーク96A又はマーク96Bにある場合のPOI表示範囲と比較して、自車位置に最も近い範囲、即ち「POI 25」〜「POI 32」までが表示対象POIとなる範囲に設定される。
【0065】
[処理フロー]
次に、本実施例において、本実施例に係る処理手順について図7図9を参照して説明する。
【0066】
図7は、画像処理部71及びPOI表示範囲決定部72が実行する処理手順を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、例えば所定の周期に従い、繰り返し実行される。
【0067】
まず、画像処理部71は、カメラ6が生成した前方画像Ifを取得する(ステップS101)。そして、画像処理部71は、画像認識処理により、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbを算出する(ステップS102)。具体的には、画像処理部71は、前方画像Ifから、走行車線及び他の進行車線の車線を認識することで、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbを算出する。
【0068】
次に、POI表示範囲決定部72は、走行速度を距離センサ13から取得する(ステップS103)。そして、POI表示範囲決定部72は、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbと、走行速度とに基づき、POI表示タイミングテーブル82を参照してPOI表示範囲を決定する(ステップS104)。具体的には、POI表示範囲決定部72は、進行車線番号Nrf及び走行速度を入力値としてPOI表示タイミングテーブル82を参照することで、進行車線側のPOI表示範囲を決定すると共に、対向車線番号Nrb及び走行速度を入力値としてPOI表示タイミングテーブル82を参照することで、対向車線側のPOI表示範囲を決定する。
【0069】
図8は、距離算出部74が実行する処理手順を示すフローチャートである。距離算出部74は、図8に示す処理を、所定の周期に従い繰り返し実行する。
【0070】
距離算出部74は、自車位置情報を取得する(ステップS201)。具体的には、距離算出部74は、GPS受信機18から自車位置情報を受信する。次に、距離算出部74は、POI位置データ83に基づき、自車位置からPOIの位置までのPOI到達距離を算出する(ステップS202)。具体的には、距離算出部74は、コンバイナ9を介して視認可能な各POIに対応するPOI位置データ83と、取得した自車位置情報とに基づき、当該POIと車両との直線距離又は当該POIに車両が到達するのに必要な走行距離等をPOI到達距離として算出する。
【0071】
図9は、描画処理部75と表示出力部76とが実行する処理手順を示すフローチャートである。図9に示す処理は、所定の周期に従い繰り返し実行される。
【0072】
まず、描画処理部75は、POI表示範囲の情報を取得する(ステップS301)。具体的には、描画処理部75は、POI表示範囲決定部72から、進行車線側のPOI表示範囲及び対向車線側のPOI表示範囲の情報を示す信号S3を受信する。また、描画処理部75は、POI到達距離の情報を取得する(ステップS302)。具体的には、描画処理部75は、距離算出部74から各POIのPOI到達距離を示す信号S4を受信する。
【0073】
次に、描画処理部75は、POI表示データ84を用いて、POI表示範囲内にある各POIのPOI表示が描かれた画像を生成する(ステップS303)。具体的には、まず、描画処理部75は、進行車線側にある各POIに対するPOI到達距離と、進行車線側のPOI表示範囲とを比較することで、進行車線側の表示対象POIを定めると共に、反対車線側にある各POIに対するPOI到達距離と、反対車線側のPOI表示範囲とを比較することで、反対車線側の表示対象POIを定める。次に、描画処理部75は、POI表示データ84を参照し、表示対象POIのPOI表示を含む画像を生成する。
【0074】
そして、表示出力部76は、描画処理部75が生成した画像を構成する光をコンバイナ9に向けて出射する(ステップS304)。これにより、運転者は、コンバイナ9を介して、表示対象POIと対応する位置にPOI表示の虚像Ivを視認する。
【0075】
以上、本実施例では、ヘッドアップディスプレイに本発明を適用させた例として説明したが、本発明は、ヘッドアップディスプレイにかかわらず、ヘッドマウントディスプレイなどの他の表示装置であっても用いることができる。
【0076】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0077】
(変形例1)
図3では、ヘッドアップディスプレイ2は、コンバイナ9を介して虚像Ivを運転者に視認させていたが、本発明が適用可能なヘッドアップディスプレイ2の構成は、これに限定されない。
【0078】
図10は、変形例に係るヘッドアップディスプレイ2Aの概略構成を示す。図10に示すように、ヘッドアップディスプレイ2Aでは、光源ユニット3は、表示像を構成する光をフロントガラス25に向けて出射する。そして、フロントウィンドウ25は、光源ユニット3から出射される表示像が投影されると共に、表示像をアイポイントPeへ反射することで当該表示像を虚像Ivとして表示させる。この場合、フロントウィンドウ25は、本発明における「透明部材」の一例である。
【0079】
また、光源ユニット3の位置は、天井部27に設置される場合に限らず、ダッシュボード29の内部に設置されてもよい。この場合、ダッシュボード29には、図3のコンバイナ9又は図8のフロントウィンドウ25に光を通過させるための開口部が設けられる。
【0080】
(変形例2)
図4の説明では、ヘッドアップディスプレイ2の制御部4は、画像処理部71、POI表示範囲決定部72、距離算出部74、描画処理部75、及び表示出力部76を有していた。しかし、本発明が適用可能な構成はこれに限定されず、制御部4に代えて、ナビゲーション装置1のシステムコントローラ20は、画像処理部71、POI表示範囲決定部72、距離算出部74、又は/及び描画処理部75、即ち、表示出力部76以外の任意の処理部を備えてもよい。例えば、表示出力部76以外の処理部をシステムコントローラ20が備える場合、ナビゲーション装置1は、POI表示を含む画像を生成して当該画像をヘッドアップディスプレイ2に送信し、ヘッドアップディスプレイ2は、受信した画像を構成する光を出射する。この態様であっても、好適に、ヘッドアップディスプレイ2は、安全に立ち寄り可能なPOIに対するPOI表示を虚像Ivとして運転者に視認させることができる。なお、この場合、ナビゲーション装置1及びヘッドアップディスプレイ2は、本発明における「表示装置」の一例である。
【0081】
他の例では、ヘッドアップディスプレイ2は、ナビゲーション装置1と通信を行うことなく、POI表示を含む画像を生成し、当該画像を構成する光を出射してもよい。この場合、ヘッドアップディスプレイ2は、GPS受信機及び距離センサなどの測位装置を備え、自車位置情報や走行速度の情報をこれらの測位装置から取得する。この場合、ヘッドアップディスプレイ2は、本発明における「表示装置」の一例である。
【0082】
(変形例3)
運転者は、ヘッドアップディスプレイ2によりPOI表示を視認していた。しかし、本発明が適用可能な構成は、これに限定されない。これに代えて、ナビゲーション装置1がPOI表示を行ってもよい。この場合、ナビゲーション装置1は、カメラ6から前方画像Ifを取得し、当該前方画像Ifに重畳させて、POIの表示位置に、対応するPOI表示を重畳させる。この場合、前方画像Ivは、「実写画像」の一例であり、ナビゲーション装置1は、本発明における「表示装置」の一例である。
【0083】
他の例では、ナビゲーション装置1は、前方画像Ivを模式的に描いたグラフィック画像(CG画像)を表示し、当該グラフィック画像内において、POIの表示位置に、対応するPOI表示を重畳させる。この場合、グラフィック画像は、本発明における「進行方向を模した画像」の一例であり、ナビゲーション装置1は、本発明における「表示装置」の一例である。
【0084】
(変形例4)
POI表示範囲決定部72は、車速パルスを計測する距離センサ13から供給される信号から、車両の走行速度を取得した。これに代えて、POI表示範囲決定部72は、例えば、GPS受信機18から所定時間幅ごとに現在位置情報を受信し、当該現在位置の変化幅から車両の走行速度を算出してもよい。
【0085】
(変形例5)
本実施例に係るヘッドアップディスプレイ2は、カメラ6を有し、画像処理部71は、カメラ6から供給される画像に基づき、走行車線を認識し、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbを算出した。しかし、本発明が適用可能な構成は、これに限定されない。これに代えて、表示システム100は、カメラ6を有さず、制御部4は、自車位置情報と、走行道路の情報とに基づき、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbを算出してもよい。例えば、データ記憶ユニット36が記憶する地図データには、進行車線の車線数の情報と、各車線の位置情報とが含まれている場合、制御部4は、これらの情報をナビゲーション装置1から受信し、自車位置情報に基づき、進行車線内における走行車線の位置を認識し、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbを算出する。
【0086】
(変形例6)
POI表示範囲決定部72は、図5に示すPOI表示タイミングテーブル82を参照し、走行速度と、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbにより特定される進行車線中の走行車線の位置とに基づきPOI表示範囲を決定した。しかし、本発明が適用可能なPOI表示範囲の決定方法は、これに限定されない。これに代えて、POI表示範囲決定部72は、進行車線中の走行車線の位置、又は、走行速度のいずれか一方のみに基づいて、POI表示範囲を決定してもよい。
【0087】
(変形例7)
POI表示範囲決定部72は、走行速度又は/及び進行車線中の走行車線の位置に代えて、又はこれに加えて、渋滞情報に基づき、POI表示範囲を決定してもよい。具体的には、この場合、POI表示範囲決定部72は、VICS情報などに含まれる渋滞情報に基づき、走行道路に渋滞が発生していると判断した場合には、走行道路に渋滞が発生していない場合と比較して、POI表示範囲を自車位置から遠ざかる方向に遷移させる。
【0088】
一般に、渋滞が発生している場合には、車線変更が難しくなり、渋滞が発生していない場合には、車線変更が容易である。従って、本変形例によれば、POI表示範囲決定部72は、渋滞が発生している場合には、現在位置から十分に距離があるPOIを表示対象POIとして選ぶ。これにより、ヘッドアップディスプレイ2は、安全に立ち寄り可能なPOIのみに対し、POI表示を付すことができる。
【0089】
(変形例8)
ユーザが立ち寄りたい施設又はユーザが立ち寄りたい種類の施設(単に「指定施設」とも呼ぶ。)が予め指定されていた場合であって、当該指定施設に立ち寄るには車線変更が必要な場合には、ヘッドアップディスプレイ2は、当該指定施設のPOI到達距離と比較するPOI表示範囲を、自車位置から遠くなる方向に拡大してもよい。この場合、ヘッドアップディスプレイ2は、コンバイナ9を介して運転者がまだ指定施設を視認できない場合であっても、指定施設に対するPOI表示を出力してもよい。
【0090】
(変形例9)
ヘッドアップディスプレイ2は、進行車線番号Nrf及び対向車線番号Nrbに代えて、走行車線と施設との距離に応じて、POI表示範囲を定めてもよい。この場合、走行車線と施設との距離とは、具体的には、走行車線の幅方向における走行車線と施設との距離を指す。そして、ヘッドアップディスプレイ2は、例えば地図データに含まれる位置情報に基づき、走行車線と施設との距離を算出し、算出した距離を入力値として所定のマップ又は式を用いて、POI表示範囲を定める。この態様であっても、ヘッドアップディスプレイ2は、好適に、無駄な情報表示を抑制し、安全に立ち寄り可能な施設の情報表示を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、経路案内や車両の情報を運転者に視認させるヘッドアップディスプレイ、又は、カメラから撮影した画像に案内表示を付すナビゲーション装置などに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 ナビゲーション装置
2 ヘッドアップディスプレイ
3 光源ユニット
9 コンバイナ
25 フロントウィンドウ
28 ボンネット
29 ダッシュボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10