特許第5795400号(P5795400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5795400トロイダル型無段変速機、及びこれを用いる自転車用内装変速ハブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5795400
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】トロイダル型無段変速機、及びこれを用いる自転車用内装変速ハブ
(51)【国際特許分類】
   F16H 15/38 20060101AFI20150928BHJP
   B62M 9/04 20060101ALI20150928BHJP
   B62M 9/08 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   F16H15/38
   B62M9/04 B
   B62M9/08 Z
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-63614(P2014-63614)
(22)【出願日】2014年3月26日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 良忠
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕久
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−071028(JP,A)
【文献】 特開2003−294098(JP,A)
【文献】 特開2013−108511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/38
B62M 9/04
B62M 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸まわりに回転可能な第1入力ディスクと、
前記第1軸まわりに回転可能であり、前記第1入力ディスクに対して相対回転可能な出力ディスクと、
前記第1入力ディスクおよび前記出力ディスクの間に配置される第1パワーローラと、
前記第1パワーローラを回転可能に支持するとともに、前記第1パワーローラとともに傾転軸まわりに傾転可能な第1トラニオンと、
流体圧を利用して、前記傾転軸方向に沿う第1方向へ前記第1トラニオンを移動可能な第1変速制御部と、
前記第1トラニオンが前記第1方向に移動にすることに伴う前記第1トラニオンの第1傾転方向への傾転によって、前記第1トラニオンを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させる第1変換部と、
を備える、トロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記第1変速制御部は、前記第1トラニオンを第2方向へ移動可能に構成され、
前記第1変換部は、前記第1トラニオンが前記第2方向に移動することに伴う前記第1トラニオンの前記第1傾転方向とは反対の第2傾転方向への傾転によって、前記第1トラニオンを前記第1方向に移動させて、前記第1変速制御部による前記第1トラニオンの第2方向へのオフセットをゼロにする、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記第1変速制御部は、油圧回路を含む、請求項1又は2に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項4】
前記第1変速制御部は、ピストンおよびシリンダを含む、請求項1から3のいずれかに記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項5】
前記ピストンは、前記第1トラニオンに接続される、請求項4に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項6】
前記第1変換部は、前記傾転軸に沿って延びる雄ねじ部と、前記雄ねじ部が螺合する雌ねじ部と、を含み、
前記雄ねじ部および前記雌ねじ部の一方は、前記第1トラニオンに設けられ、
前記雄ねじ部および前記雌ねじ部の他方は、前記第1変速制御部に設けられる、
請求項1から5のいずれかに記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項7】
前記雄ねじ部は、前記第1変速制御部に設けられ、
前記雌ねじ部は、前記第1トラニオンに設けられる、請求項6に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項8】
前記第1変換部は、前記第1傾転方向に向かって前記第2方向に傾斜する傾斜面と、前記傾斜面に当接する接触部と、を含み、
前記傾斜面および前記接触部の一方は、前記第1トラニオンに設けられ、
前記傾斜面および前記接触部の他方は、前記第1変速制御部に設けられる、請求項1から7のいずれかに記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項9】
前記第1変速制御部による前記第1方向への前記第1トラニオンの移動量を制限する第1制限部をさらに備える、請求項1から8のいずれかに記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項10】
前記第1変速制御部による前記第2方向への前記第1トラニオンの移動量を制限する第2制限部をさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項11】
ハーフトロイダル型である、請求項1から10のいずれかに記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項12】
第1軸まわりに回転可能な第2入力ディスクと、
前記第2入力ディスクおよび前記出力ディスクの間に配置される第2パワーローラと、
前記第2パワーローラを回転可能に支持するとともに、前記第2パワーローラとともに傾転軸まわりに傾転可能な第2トラニオンと、
流体圧を利用して、前記傾転軸方向に沿う第1方向へ前記第2トラニオンを移動可能な第2変速制御部と、
前記第2トラニオンが前記第1方向に移動することに伴う前記第2トラニオンの第2傾転方向への傾転によって、前記第2トラニオンを前記第2方向に移動させる第2変換部と、
をさらに備える、請求項1から11のいずれかに記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項13】
前記第2変速制御部は、前記第2トラニオンを前記第2方向へ移動可能に構成され、
前記第2変換部は、前記第2トラニオンが前記第2方向に移動することに伴う前記第1トラニオンの前記第1傾転方向への傾転によって、前記第2トラニオンを前記第1方向に移動させて、前記第2変速制御部による前記第2トラニオンの第2方向へのオフセットをゼロにする、請求項12に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項14】
前記第1変速制御部と前記第2変速制御部とは、互いに油圧で接続される、請求項12又は13に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項15】
ハブ軸と、
前記ハブ軸回りに回転可能なハブシェルと、
前記ハブ軸に回転可能に支持される駆動体と、
請求項1から14のいずれかに記載のトロイダル型無段変速機であって、前記駆動体の回転を前記ハブシェルに伝達するためのトロイダル型無段変速機と、
を備える、自転車用内装変速ハブ。
【請求項16】
前記第1軸は、前記ハブ軸である、請求項15に記載の自転車用内装変速ハブ。
【請求項17】
前記第1入力ディスクの回転方向が前記駆動体の回転方向と逆になるように前記駆動体の回転を前記第1入力ディスクに伝達する第1伝達機構をさらに備える、請求項15又は16に記載の自転車用内装変速ハブ。
【請求項18】
前記第1伝達機構は、前記駆動体の回転を増速して前記第1入力ディスクに伝達する増速機構である、請求項17に記載の自転車用内装変速ハブ。
【請求項19】
前記出力ディスクの回転を減速して前記ハブシェルに伝達する第2伝達機構をさらに備える、請求項15から18のいずれかに記載の自転車用内装変速ハブ。
【請求項20】
前記第2伝達機構は、前記ハブシェルの回転方向が前記出力ディスクの回転方向と逆になるように前記出力ディスクの回転を前記ハブシェルに伝達する、請求項19に記載の自転車用内装変速ハブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロイダル型無段変速機、及びこれを用いる自転車用内装変速ハブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業機械又は自動車などの変速機として、トロイダル型無段変速機が使用されている(特許文献1参照)。このトロイダル型無段変速機は、入力ディスクと出力ディスクとの間に、トラニオンに回転可能に支持されたパワーローラが設置されている。油圧ピストンがトラニオンを傾転軸方向に沿って移動させること、パワーローラ及びトラニオンが傾転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−108511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーローラが所望の傾転角だけ傾転して傾転動作が完了すると、このパワーローラを傾転軸方向に沿って移動した分だけ元の位置に戻す必要がある。このために、従来は、パワーローラの移動量を電気的に検出する必要があり、この検出した移動量に基づいてピストンを再度移動させるための変速サーボに油圧ポンプが必要な油圧サーボ機構が必要である。
【0005】
本発明の課題は、流体圧でパワーローラを傾倒させる構成であっても、パワーローラを傾転軸方向に沿って移動した分だけ元の位置に戻すための変速サーボに油圧ポンプを用いる油圧サーボ機構を必要としないトロイダル型無段変速機、及びこれを用いた自転車用内装変速ハブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の第1側面に係るトロイダル型無段変速機は、第1入力ディスク、出力ディスク、第1パワーローラ、第1トラニオン、第1変速制御部、及び第1変換部を備える。第1入力ディスクは、第1軸まわりに回転可能である。出力ディスクは、第1軸まわりに回転可能であり、第1入力ディスクに対して相対回転可能である。第1パワーローラは、第1入力ディスクおよび出力ディスクの間に配置される。第1トラニオンは、第1パワーローラを回転可能に支持するとともに、第1パワーローラとともに傾転軸まわりに傾転可能である。第1変速制御部は、流体圧を利用して、傾転軸方向に沿う第1方向へ第1トラニオンを移動可能である。第1トラニオンが第1方向に移動にすることに伴う第1トラニオンの第1傾転方向への傾転によって、第1変換部は、第1トラニオンを第1方向とは反対の第2方向に移動させる。
【0007】
上述した構成によれば、第1変速制御部が第1トラニオンを第1方向に移動させると、第1トラニオンが第1傾転方向に傾転し、その結果、第1変換部が第1トラニオンを第2方向に移動させる。したがって、第1トラニオンは、第1傾転方向の傾転動作が完了した際に、傾転軸の軸方向において元の位置に戻ることができる。
【0008】
(2)好ましくは、第1変速制御部は、第1トラニオンを第2方向へ移動可能に構成される。そして、第1トラニオンが第2方向に移動することに伴う第1トラニオンの第1傾転方向とは反対の第2傾転方向への傾転によって、第1変換部は、第1トラニオンを第1方向に移動させる。
【0009】
この構成によれば、第1変速制御部が第1トラニオンを第2方向に移動させると、第1トラニオンが第2傾転方向に傾転し、その結果、第1変換部が第1トラニオンを第1方向に移動させる。したがって、トラニオンは、第2傾転方向の傾転動作が完了した際に、傾転軸の軸方向において元の位置に戻ることができる。
【0010】
(3)好ましくは、第1変速制御部は、油圧回路を含む。この構成によれば、油圧によって第1トラニオンを傾転軸方向に沿って移動させることができる。
【0011】
(4)好ましくは、第1変速制御部は、ピストンおよびシリンダを含む。この構成によれば、シリンダ内を往復動するピストンによって、第1トラニオンを傾転軸方向に沿って移動させることができる。
【0012】
(5)好ましくは、ピストンは、第1トラニオンに接続される。この構成によれば、ピストンによって第1トラニオンを傾転軸方向に沿って移動させることができる。
【0013】
(6)好ましくは、第1変換部は、傾転軸に沿って延びる雄ねじ部と、雄ねじ部が螺合する雌ねじ部と、を含む。そして、雄ねじ部および雌ねじ部の一方は、第1トラニオンに設けられる。また、雄ねじ部および雌ねじ部の他方は、第1変速制御部に設けられる。
【0014】
この構成によれば、第1変速制御部が第1トラニオンを第1方向に移動させることにより第1トラニオンが第1傾転方向に傾転すると、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合状態が変化する(雄ねじ部が雌ねじ部に対して締まる又は緩まる)。これにより、第1トラニオンを第2方向に移動させることができる。同様に、第1変速制御部が第1トラニオンを第2方向に移動させることにより第1トラニオンが第2傾転方向に傾転すると、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合状態が先ほどとは逆に変化する(雄ねじ部が雌ねじ部に対して緩まる又は締まる)。これにより、第1トラニオンを第1方向に移動させることができる。
【0015】
(7)好ましくは、雄ねじ部は第1変速制御部に設けられ、雌ねじ部は第1トラニオンに設けられる。
【0016】
(8)好ましくは、第1変換部は、第1傾転方向に向かって第2方向に傾斜する傾斜面と、傾斜面に当接する接触部と、を含む。傾斜面は、カム面である。そして、傾斜面および接触部の一方は、第1トラニオンに設けられ、傾斜面および接触部の他方は、第1変速制御部に設けられる。この構成によれば、この構成によれば、第1変則制御部が第1トラニオンを第1方向に移動させることによりトラニオンが第1傾転方向に傾転すると、第1トラニオンを第2方向に移動させることができる。
【0017】
(9)好ましくは、第1変速制御部による第1方向への第1トラニオンの移動量を制限する第1制限部をさらに備える。この構成によれば、第1トラニオンが必要以上に第1方向へ移動してしまうことを防止することができる。
【0018】
(10)好ましくは、第1変速制御部による第2方向への第1トラニオンの移動量を制限する第2制限部を備える。この構成によれば、第1トラニオンが必要以上に第2方向へ移動してしまうことを防止することができる。
【0019】
(11)好ましくは、このトロイダル型無段変速機は、ハーフトロイダル型である。
【0020】
(12)好ましくは、トロイダル型無段変速機は、第2入力ディスクと、第2パワーローラと、第2トラニオンと、第2変速制御部と、第2変換部とをさらに備える。第2入力ディスクは、第1軸まわりに回転可能である。第2パワーローラは、第2入力ディスクおよび出力ディスクの間に配置される。第2トラニオンは、第2パワーローラを回転可能に支持するとともに、第2パワーローラとともに傾転軸まわりに傾転可能である。第2変速制御部は、流体圧を利用して、傾転軸方向に沿う第1方向へ第2トラニオンを移動可能である。第2トラニオンが第1方向に移動することに伴う第2トラニオンの第2傾転方向への傾転によって、第2変換部は第2トラニオンを第2方向に移動させる。
【0021】
この構成によれば、第2変速制御部が第2トラニオンを第1方向に移動させると、第2トラニオンが第2傾転方向に傾転し、その結果、第2変換部が第2トラニオンを第2方向に移動させる。したがって、第2トラニオンは、第2傾転方向の傾転動作が完了した際に、傾転軸の軸方向において元の位置に戻ることができる。
【0022】
(13)好ましくは、第2変速制御部は、第2トラニオンを第2方向へ移動可能に構成される。そして、第2トラニオンが第2方向に移動することに伴う第1トラニオンの第1傾転方向への傾転によって、第2変換部は、第2トラニオンを第1方向に移動させる。
【0023】
この構成によれば、第2変速制御部が第2トラニオンを第2方向に移動させると、第2トラニオンが第1傾転方向に傾転し、その結果、第2変換部が第2トラニオンを第1方向に移動させる。したがって、第2トラニオンは、第1傾転方向の傾転動作が完了した際に、傾転軸の軸方向において元の位置に戻ることができる。
【0024】
(14)好ましくは、第1変速制御部と第2変速制御部とは、互いに油圧で接続される。この構成によれば、容易に第1変速制御部と第2変速制御部とを同期させることができる。
【0025】
(15)本発明の第2側面に係る自転車用内装変速ハブは、ハブ軸と、ハブシェルと、駆動体と、上述したいずれかのトロイダル型無段変速機と、を備える。ハブシェルは、ハブ軸回りに回転可能である。駆動体は、ハブ軸に回転可能に支持される。トロイダル型無段変速機は、駆動体の回転をハブシェルに伝達する。
【0026】
(16)好ましくは、第1軸は、ハブ軸である。
【0027】
(17)好ましくは、自転車用内装変速ハブは、第1伝達機構をさらに備える。この第1伝達機構は、第1入力ディスクの回転方向が駆動体の回転方向と逆になるように駆動体の回転を第1入力ディスクに伝達する。
【0028】
(18)好ましくは、第1伝達機構は、駆動体の回転を増速して第1入力ディスクに伝達する増速機構である。この構成によれば、トロイダル型無段変速機への入力トルクを低減することができ、より大きな動力を伝達することができる。また変速スピードを早くすることができる。
【0029】
(19)好ましくは、自転車用内装変速ハブは、第2伝達機構をさらに備える。この第2伝達機構は、ハブシェルの回転方向が出力ディスクの回転方向と逆になるように出力ディスクの回転をハブシェルに伝達する。
【0030】
(20)好ましくは、第2伝達機構は、出力ディスクの回転を減速してハブシェルに伝達する減速機構である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、流体圧でパワーローラを傾倒させる構成であっても、パワーローラを傾転軸方向に沿って移動した分だけ元の位置に戻すための変速サーボに油圧ポンプを用いる油圧サーボ機構を必要としないトロイダル型無段変速機、及びこれを用いた自転車用内装変速ハブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】自転車の後部を示す側面図である。
図2】自転車用内装変速ハブの車輪の回転軸線に沿った第1断面図である。
図3】自転車用内装変速ハブの車輪の回転軸線に沿った第2断面図である。
図4図2の切断面IV−IVから見た自転車用内装変速ハブの側面断面図である。
図5】変形例1に係るトラニオンとピストンとの係合部分の詳細を示す斜視図である。
図6】変形例2に係るトラニオンとピストンとの係合部分の詳細を示す斜視図である。
図7】変形例3に係る自転車用内装変速ハブの側面断面図である。
図8】変形例8に係る自転車用内装変速ハブのシステム構成図である。
図9】変形例8に係る回転検出機構を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係るトロイダル型無段変速機及びこれを用いた内装変速ハブの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は自転車の後部を示す側面図、図2は内装変速ハブの車輪の回転軸線に沿った第1断面図、図3は内装変速ハブの車輪の回転軸線に沿った第2断面図、図4は内装変速ハブの側面断面図である。なお、第1断面図と第2端面図とは垂直に交わる。
【0034】
[自転車の全体構成]
図1に示すように、自転車100は、フレーム101と、クランクアセンブリ102と、チェーン103と、リアホイール104と、内装変速ハブ1と、を有している。自転車の運転者がクランクアセンブリ102を回転させると、クランクアセンブリ102の回転が、チェーン103を介して内装変速ハブ1のエレメントへ伝達され、そして内装変速ハブ1を介してスポークからリアホイール104へと伝達される。フレーム101、クランクアセンブリ102、チェーン103、及びリアホイール104はすべて、従来の自転車の部品である。これらの部品については周知であるので、その説明を省略する。
【0035】
[内装変速ハブ1]
図2に示すように、内装変速ハブ1は、ハブ軸11と、駆動体13と、トロイダル型無段変速機2と、ハブシェル14と、を備える。ハブ軸11は、フレーム101に固定される。なお、このハブ軸11が本発明の第1回転軸に相当する。駆動体13は、ハブ軸11にベアリングを介して回転可能に支持される。この駆動体13にはリアスプロケット12が固定されており、リアスプロケット12と駆動体13とは一体的に回転する。リアスプロケット12は、チェーン103と係合し、チェーン103から駆動体13に回転を伝達する。
【0036】
トロイダル型無段変速機2は、トロイダル型無段変速機2に入力される回転数とトロイダル型無段変速機2から出力する回転数の比である変速比を変えて、ハブシェル14に回転を伝達する。ハブシェル14は、ベアリングを介してハブ軸11に回転可能に支持される。ハブシェル14のハブ軸方向の一端部は、ハブ軸11に支持され、他端部は、駆動体13に支持される。ハブシェル14は、略円筒状に形成され、内部にトロイダル型無段変速機2などが収容される。ハブシェル14の外周面には、一対のハブフランジ141a、141bがハブ軸方向に間隔をおいて形成される。各ハブフランジ141a、141bには、リアホイール104の各スポーク(図示省略)が連結される。また、ハブシェル14の内周部には、周方向に沿ってギア部120が形成される。
【0037】
ギア部120は、円環部121を有し、この円環部121の外周部に歯が形成される。円環部121は側面から径方向外側に延びる取付け部122を有し、この取付け部122がハブシェル14に固定される。ハブシェル14は、ハブシェル本体14aと、カバー体14bとを有する。
【0038】
ハブシェル本体14aは、ハブ軸11まわりの外周部と第1側面部(図2の左側面部)とが一体に形成されている。また、ハブシェル本体14aは、第2側面部(図2の右側面部)において開口を有する。この開口はカバー体14bによって覆われる。
【0039】
ハブシェル本体14aの第1側面部は、ハブ軸11が通過する孔を有し、ベアリングを介してハブ軸11に支持される。カバー体14bは、外周部にねじが形成され、ハブシェル本体14aの開口に形成される雌ねじに螺合して、ハブシェル本体14aに固定される。カバー体14bは、円環状に形成される。カバー本体14bは、内周部において、ベアリングを介して駆動体13に支持される。ギア部120は、ハブシェル本体14aに設けられてもよいし、カバー体14bに設けられてもよい。
【0040】
図3に示すように、内装変速ハブ1は、トロイダル型無段変速機2とハブシェル14との間に配置される複数のピニオンギア15をさらに備える。本実施形態では、2つのピニオンギア15a、15bが設けられる。各ピニオンギア15a、15bは、ピニオンギア15a,15bよりも小径のピニオンギア16a,16bに連結されている。ピニオンギア15aとピニオンギア16aとは、回転軸を介して同軸に設けられ、一体的に回転可能である。ピニオンギア15bとピニオンギア16bとは、回転軸を介して同軸に設けられ、一体的に回転可能である。各ピニオンギア16と回転軸とは一体形成されていてもよい。
【0041】
ピニオンギア16a,16bは、ハブシェル14のギア部120と噛み合い、ピニオンギア15a,15bは、トロイダル型無段変速機2の出力ディスク4とに噛み合う。各ピニオンギア15a、15b,16aおよび16bは、出力ディスク4の回転を減速してハブシェル14に伝達する減速機構である。なお、この減速機構が、本発明の第2伝達機構に相当する。
【0042】
ペダリング時の出力ディスク4の回転方向が、自転車の進行方向へのハブシェル14の回転方向と同じ方向であれば、出力ディスク4によって直接ハブシェル14を回転させる構成としてもよい。この場合には、出力ディスク4の外周部と、ハブシェル14の内周面との間に、ローラクラッチまたは爪クラッチなどのワンウェイクラッチを設けてもよい。またペダリング時の出力ディスク4の回転方向が、自転車の進行方向へのハブシェル14の回転方向と逆方向の場合には、ギアを介して回転方向を変換して、出力ディスク4からハブシェル14に回転を伝達する回転伝達機構を設けてもよい。この回転伝達機構は、上述の減速機構のように回転速度の減速を行う機構を持ち合わせてもよい。各ピニオンギア15a、15b,16aおよび16bを支持する回転する回転軸は、ハブシェル14の内部に設けれ、ハブ軸14に固定して設けられる枠体に支持される。トロイダル型無段変速機2では、入力ディスク3a、3bと出力ディスク4との回転方向が逆になるが、駆動体13が自転車の進行方向に回転したときにハブシェル14も自転車の進行方向に回転するように、第1伝達機構と第2伝達機構とのいずれか一方によって回転方向を変換すればよい。
【0043】
また、内装変速ハブ1は、複数の遊星歯車17と、太陽歯車18と、リング歯車29とをさらに備えている。リング歯車29には、駆動体13の回転がクラッチ13aを介して伝達される。駆動体13の外周部には、ハブ軸方向に延びる円筒部13bが設けられる。円筒部13bの内周側には、リング歯車29が設けられる。クラッチ13aは、円筒部13bとリング歯車29との間に設けられる。クラッチ13aは、ローラクラッチまたは爪クラッチによって形成される。円筒部13bとリング歯車29とが、クラッチ13aの一部を構成してもよい。
【0044】
各遊星歯車17は、キャリア17aに回転可能に支持される。キャリア17aは、ハブ軸11に回転不能に固定される。したがって、各遊星歯車17は、自転するのみであり、太陽歯車18の周りを公転しない。太陽歯車18は、ハブ軸11に回転可能に設けられ、ハブ軸11を中心に回転する。また、太陽歯車18は、遊星歯車17a、17bと噛み合っており、遊星歯車17a、17bの回転が伝達される。太陽歯車18は、後述する入力ディスク接続部材9に固定されており、入力ディクス接続部材9と一体的に回転する。このように駆動体13と入力ディスク3a、3bとの間に、遊星歯車機構が介在しているため、入力ディスク3a、3bの回転方向が駆動体13の回転方向と逆になる。なお、このリング歯車29、遊星歯車17及び太陽歯車18が本発明の第1伝達機構に相当する。この第1伝達機構は、駆動体13の回転を増速して入力ディスク3a、3bに伝達する増速機構である。
【0045】
[トロイダル型無段変速機2]
次に、トロイダル型無段変速機2について詳細を説明する。トロイダル型無段変速機2は、変速比を連続的に変化させる装置である。図2及び図4に示すように、トロイダル型無段変速機2は、第1及び第2入力ディスク3a、3b、出力ディスク4、第1〜第4パワーローラ5a〜5d、第1〜第4トラニオン6a〜6d、及び第1〜第4ピストン7a、7b(第2及び第4ピストンは図示省略)を備える。なお、本実施形態に係るトロイダル型無段変速機2は、ハーフトロイダル型であり、かつダブルキャビティ型である。
【0046】
図2に示すように、第1及び第2入力ディスク3a、3b、及び出力ディスク4は、ハブ軸11を中心に回転する。具体的には、トロイダル型無段変速機2は、ハブ軸11に対して回転可能に支持される筒状の入力ディスク接続部材9をさらに備える。入力ディスク接続部材9は、ハブ軸11の延びる方向において、ハブ軸11に対して摺動可能である。例えば、ハブ軸11と入力ディスク接続部材9との間にはニードルベアリングが介在している。この入力ディスク接続部材9は、駆動体13によって回転駆動される。なお、入力ディスク接続部材9と駆動体13との間には、上述したように遊星歯車機構が介在している。入力ディスク接続部材9のハブ軸方向の第1端部(図2の右端部)に太陽歯車18が接続されている。
【0047】
第1入力ディスク3aは、入力ディスク接続部材9に固定されている。このため、第1入力ディスク3aは、入力ディスク接続部材9と一体的に回転し、また、入力ディスク接続部材9と一体的にハブ軸方向に移動する。第1入力ディスク3aは、入力ディスク接続部材9の第2端部(図2の左端部)に接続されている。
【0048】
第2入力ディスク3bは、入力ディスク接続部材9に回転可能に設けられている。第2入力ディスク3bは、たとえばニードルベアリングを介して、入力ディスク接続部材9の一端部の外周部に設けられる。さらにハブ軸方向において、第2入力ディスク3bは入力ディスク接続部材9と相対的に移動可能に設けられている。すなわち、第2入力ディスク3bは、軸方向において入力ディスク接続部材9上を摺動可能である。
【0049】
出力ディスク4は、第1及び第2入力ディスク3a、3b間に配置される。また、出力ディスク4は、ニードルベアリングを介して入力ディスク接続部材9に支持される。このため、出力ディスク4は、入力ディスク接続部材9に対して相対回転可能である。すなわち、各入力ディスク3a、3bと、出力ディスク4とは互いに相対回転可能である。また、出力ディスク4は、ハブ軸方向において、入力ディスク接続部材9上を移動可能である。すなわち、第2入力ディスク3bは、軸方向において入力ディスク接続部材9上を摺動可能である。
【0050】
出力ディスク4は、外周部においてギア部41が形成される。図3に示すように、出力ディスク4のギア部41は、各ピニオンギア15a、15bと噛み合う。
【0051】
図2に示すように、太陽歯車18には、ローディングカム19が固定されており、ローディングカム19と第2入力ディスク3bとの間には円筒コロ21が配置されている。ローディングカム19は太陽歯車18ととともに回転し、この回転に伴い円筒コロ21が第2入力ディスク3bを第1入力ディスク3a側に押圧する。これにより、第2入力ディスク3bおよび出力ディスク4が第1入力ディスク3aにわずかに移動する。
【0052】
第1及び第3パワーローラ5a、5cは、第1入力ディスク3aと出力ディスク4との間に配置され、第2及び第4パワーローラ5b、5dは、第2入力ディスク3bと出力ディスク4との間に配置される。第1パワーローラ5aと、第3パワーローラ5cとは、ハブ軸11を中心として反対に位置する。同様に、第2パワーローラ5bと、第4パワーローラ5dとは、ハブ軸11を中心として反対に位置する。各パワーローラ5a〜5dは、各第2回転軸Xを中心に回転可能である。
【0053】
第1及び第3パワーローラ5a、5cは、第1入力ディスク3aと出力ディスク4とに接触し、第1入力ディスク3aの回転を出力ディスク4に伝達する。また、第2及び第4パワーローラ5b、5dは、第2入力ディスク3bと出力ディスク4とに接触し、第2入力ディスク3bの回転を出力ディスク4に伝達する。すなわち、第1及び第3パワーローラ5a、5cは、第1入力ディスク3aと接触することにより、各第2回転軸Xを中心に回転する。そして、第1及び第3パワーローラ5a、5cは、出力ディスク4と接触するため、出力ディスク4を回転させる。また、第2及び第4パワーローラ5b、5dは、第2入力ディスク3bと接触することにより、各第2回転軸Xを中心に回転する。そして、第2及び第4パワーローラ5b、5dは、出力ディスク4と接触するため、出力ディスク4を回転させる。なお、出力ディスク4の回転方向は、第1及び第2入力ディスク3a、3bの回転方向と逆となる。
【0054】
各トラニオン6a〜6dは、対応する各パワーローラ5a〜5dを支持する。より具体的には、第1トラニオン6aは第1パワーローラ5aを、第2トラニオン6bは第2パワーローラ5bを、第3トラニオン6cは第3パワーローラ5cを、第4トラニオン6dは第4パワーローラ5dを支持する。各パワーローラ5a〜5dは、各トラニオン6a〜6dに支持された状態において、各第2回転軸Xを中心に回転可能である。各トラニオン6a〜6dは、各傾転軸Yを中心に傾転可能である。各トラニオン6a〜6dが傾転すると、各トラニオン6a〜6dに支持される各パワーローラ5a〜5dも同様に傾転する。
【0055】
各トラニオン6a〜6dは、図4に示すように、一対の第1支持部材8a、8bに傾転可能な状態で支持される。第1支持部材8a、8bは、ハブ軸14に固定して設けられる枠体に設けられる。より具体的に説明すると、第1トラニオン6aは、傾転軸Yに沿って図4の左方向(本発明の第1方向に相当)に延びる第1突出部61aと、傾転軸Yに沿って図4の右方向(本発明の第2方向に相当)に延びる第2突出部62aとを有する。第1突出部61aは、円筒形状であって、一方の第1支持部材8aに軸受部材を介して支持される。また、第2突出部62aは、円筒形状であって、他方の第1支持部材8bに軸受部材を介して支持される。この第2突出部62aの内周面には雌ねじ部63aが形成される。すなわち、第1トラニオン6aには、ねじ孔が形成される。
【0056】
第3トラニオン6cは、傾転軸Yに沿って図4の右方向(本発明の第1方向に相当)に延びる第1突出部61cと、傾転軸Yに沿って図4の左方向(本発明の第2方向に相当)に延びる第2突出部62cとを有する。第1突出部61cは、円筒形状であって、第1支持部材8bに軸受部材を介して支持される。また、第2突出部62cは、円筒形状であって、第1支持部材8aに軸受部材を介して支持される。この第2突出部62cの内周面には雌ねじ部63cが形成される。すなわち、第トラニオン6は、ねじ孔が形成される。第2トラニオン6bは第1トラニオン6aと基本的に同じ構成であり、第4トラニオン6dは第3トラニオン6cと基本的に同じ構成であるため、第2及び第4トラニオン6b、6dの詳細な説明を省略する。なお、第2及び第4トラニオン6b、6dの雌ねじ部63b、63dにおけるねじ溝の螺旋方向は、第1及び第3トラニオン6a、6cの雌ねじ部63a、63cにおけるねじ溝の螺旋方向と逆である。
【0057】
図4に示すように、第1ピストン7aは第1トラニオン6aを、第3ピストン7cは第3トラニオン6cを、各傾転軸Yの軸方向に沿って移動させる。第1ピストン7aは、第2支持部材10に形成される第1シリンダ室10a内に収容される。第2支持部材10は、ハブ軸14に固定して設けられる枠体に設けられる。第1ピストン7aは、第1シリンダ室10a内に収容された状態において、第1トラニオン6aの傾転軸Yに沿って移動可能であり、回転不能である。なお、第1シリンダ室10aには第1油路110aが連通される。第1ピストン7aと第1シリンダ室10aの内周面との間には、シール部材が設けられ、第1シリンダ室10aに充填される油をシールする。シール部材は、たとえばOリングによって形成される。この第1ピストン7a、第1シリンダ室10a、及び第1油路110aが、本発明の第1変速制御部に相当する。第3ピストン7cは、第2支持部材10に形成される第3シリンダ室10c内に収容される。第3ピストン7cは、第3シリンダ室10c内に収容された状態において、第3トラニオン6cの傾転軸Yに沿って移動可能であり、回転不能である。なお、第3シリンダ室10cには第3油路110cが連通される。第3ピストン7cと第3シリンダ室10cの内周面との間には、シール部材が設けられ、第3シリンダ室10cに充填される油をシールする。
【0058】
自転車のハンドル(図示省略)などに装着されたレバーまたは回転操作片などの操作装置(図示省略)を操作することによって、パワーローラの傾転角指令に対応する油量を内装変速ハブ1に与えると、第1シリンダ室10a内の作動油の量が変化し、第1ピストン7aが傾転軸Yの軸方向に移動する。例えば、第1シリンダ室10a内に作動油が供給されると第1ピストン7aは図4の左方向に移動する。また、第1シリンダ室10a内から作動油が排出され、ハブシェル14が回転すると、第1ピストン7aは図4の右方向に移動(オフセット)する。また、上述したように操作装置を操作することによって第3シリンダ室10c内の作動油の量が変化し、第3ピストン7cが傾転軸Yの軸方向に移動(オフセット)する。例えば、第3シリンダ室10c内に作動油が供給されると第3ピストン7cは図4の右方向に移動(オフセット)する。また、第3シリンダ室10c内から作動油が排出され、ハブシェル14が回転すると第3ピストン7cは図4の左方向に移動(オフセット)する。なお、図示されていないが、第2ピストンのための第2シリンダ室、及び、第4ピストンのための第4シリンダ室が、第2支持部材10に形成される。そして、これら第1〜第4シリンダ室10a、10bは、1つの油路から分岐された各油路に接続されるため、1つの操作装置の操作によって、第1〜第4シリンダ室10a、10bの全てに作動油が供給されたり排出されたりする。第1〜第4シリンダ室10a、10bが相互に油路で接続されているので、各第1〜第4ピストンを容易に同時に制御することができる。油路はハブ軸11にも形成されている。ハブ軸11の第1端部(図2の右端部)まで油路が延び、この第1端部で操作装置に接続される配管に接続される。ハブ軸11の第1端部には配管に連結される連結部が形成される。配管は、この連結部に着脱可能に連結される。配管は、可撓性を有し、たとえば樹脂によって形成される。
【0059】
第1ピストン7aは、第1トラニオン6aと螺合する。具体的には、第1ピストン7aは、第1トラニオン6a側に突出する雄ねじ部71aを有する。この雄ねじ部71aは、第1トラニオン6aの雌ねじ部63aに螺合される。なお、この雄ねじ部71aと雌ねじ部63aとが、本発明の第1変換部に相当する。雄ねじ部71a及び雌ねじ部63aの中心軸は、傾転軸Yと同一直線状にある。第1トラニオン6aが傾転していない状態(初期状態)において、雄ねじ部71aと雌ねじ部63aとの螺合状態は、さらに締まることもできるし、さらに緩まることもできる。すなわち、第1トラニオン6aが初期状態にあるとき、第1トラニオン6aと第1ピストン7aとは、傾転軸Yの軸方向において、第1トラニオン6aが回転することによって相対的に移動可能である。なお、第1ピストン7aは回転不能であるため、第1トラニオン6aが第1ピストン7aに対して移動可能である。なお、第2ピストンは、第1ピストン7aと基本的に構造が同じであるため、その説明を省略する。なお、第2ピストンは第2トラニオン6bを傾転軸Yの軸方向に沿って移動させる。また、第2ピストンの雄ねじ部におけるねじ山の螺旋方向は、第1ピストン7aの雄ねじ部71aにおけるねじ山の螺旋方向と逆である。
【0060】
また、第3ピストン7cは、第3トラニオン6cと螺合する。具体的には、第3ピストン7cは、第3トラニオン6c側に突出する雄ねじ部71cを有する。この雄ねじ部71cは、第3トラニオン6cの雌ねじ部63cに螺合される。なお、この雄ねじ部71c及び雌ねじ部63cの中心軸は、傾転軸Yと同一直線状にある。第3トラニオン6cが傾転していない状態(初期状態)において、雄ねじ部71cと雌ねじ部63cとの螺合状態は、さらに締まることもできるし、さらに緩まることもできる。すなわち、第3トラニオン6cが初期状態にあるとき、第3トラニオン6cと第3ピストン7cとは、傾転軸Yの軸方向において、第3トラニオン6cが回転することによって相対的に移動可能である。なお、第3ピストン7cは回転不能であるため、第3トラニオン6cが第3ピストン7cに対して移動可能である。なお、第4ピストンは、第3ピストン7cと基本的に構造が同じであるため、その説明を省略する。なお、第4ピストンは第4トラニオン6dを傾転軸Yの軸方向に沿って移動させる。また、第4ピストンの雄ねじ部におけるねじ山の螺旋方向は、第3ピストン7cの雄ねじ部71cにおけるねじ山の螺旋方向と逆である。
【0061】
[内装変速ハブ1の動作]
次に、上述したように構成される内装変速ハブ1の動作について説明する。内装変速ハブ1は、基本的に駆動体13から回転を入力していないときには、変速しない。
【0062】
まず、自転車の運転者がクランクアセンブリ102を回転させると、クランクアセンブリ102の回転が、チェーン103、リアスプロケット12、駆動体13、クラッチ13a、リング歯車29、遊星歯車17a、17b、及び太陽歯車18を介して、入力ディスク接続部材9に伝達する。そして、入力ディスク接続部材9と一体的に第1入力ディスク3aが回転するとともに、ローディングカム19および円筒コロ21を介して第2入力ディスク3bが回転して、第1及び第3パワーローラ5a、5cが第1入力ディスク3の回転数を所定の変速比で出力ディスク4に伝達し、第2及び第4パワーローラ5b、5dが第2入力ディスク3bの回転数を所定の変速比で出力ディスク4に伝達する。出力ディスク4の回転は、ピニオンギア15a、15bを介してハブシェル14に伝達し、ハブシェル14が回転する。この結果、ハブシェル14と一体的にリアホイール104が回転する。
【0063】
上述した変速比は、第1〜第4パワーローラ5a〜5dの傾転角を変更することによって変更することができる。具体的には、自転車のハンドルに装着された操作装置を操作することによって、各シリンダ室10a、10bに作動油を供給したり、各シリンダ室10a、10bから作動油を排出したりして、各パワーローラ5a〜5dの傾転角を変更する。
【0064】
この各パワーローラ5a〜5dの傾転角の変更方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、第1及び第3パワーローラ5a、5cを中心に説明する。
【0065】
まず、操作装置を操作することにより第1シリンダ室10a内に作動油が供給されると、第1ピストン7a、第1トラニオン6a、及び第1パワーローラ5aが、傾転軸Yに沿って図4の左方向(第1方向の一例)に移動する。この結果、第1パワーローラ5aと、第1入力ディスク3a及び出力ディスク4との当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。この力の向きの変化に伴って、第1パワーローラ5a及び第1トラニオン6aが、図4の右側から見た状態において、傾転軸Yを中心に反時計回り(第1傾転方向の一例)に傾転する。この傾転によって、第1パワーローラ5aと、第1入力ディスク3a及び出力ディスク4との当接位置が変化し、第1入力ディスク3aの回転数と出力ディスク4の回転数とを変えることができる。なお、第1ピストン7a、第1トラニオン6a、及び第1パワーローラ5aの傾転軸Yに沿った移動量を変えることにより、すなわち、第1シリンダ室10a内に供給する作動油の量を変えることにより、第1パワーローラ5a及び第1トラニオン6aの傾転角、すなわち変速比を変えることができる。
【0066】
ここで、第1トラニオン6aと第1ピストン7aとは螺合によって係合している。具体的には、第1ピストン7aの雄ねじ部71aが、第1トラニオン6aの雌ねじ部63aに螺合している。このため、第1トラニオン6aが上述したように傾転することにより、第1トラニオン6aの雌ねじ部63aと、第1ピストン7aの雄ねじ部71aとが、締まる方向に相対的に回転する。ここで、第1ピストン7aは回転不能に第1シリンダ室10a内に支持されている。このため、第1トラニオン6aが傾転軸Yに沿って図4の右方向(第2方向の一例)に移動し、最終的に第1パワーローラ5a及び第1トラニオン6aは、傾転動作が完了したときに、傾転軸Yの軸方向において元の位置に戻る。なお、このように第1トラニオン6aが傾転動作を完了した際に元の位置に戻るように、雄ねじ部71aのねじ山のピッチと雌ねじ部63aのねじ溝のピッチとが形成される。このように第1ピストン7aの移動によって生じる第1トラニオン6a及び第1パワーローラ5aの傾転軸Yに沿ったオフセットを、雌ねじ部63aおよび雄ねじ部71aによって0にして、第1パワーローラ5aの傾転角を、傾転指令値に追従させる。
【0067】
また、第3シリンダ室10cにも第1シリンダ室10aと同様に作動油が供給される。すると、第3ピストン7c、第3トラニオン6c、及び第3パワーローラ5cが、傾転軸Yに沿って図4の右方向(第1方向の一例)に移動する。この結果、第3パワーローラ5cと、第1入力ディスク3a及び出力ディスク4との当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。この力の向きの変化に伴って、第3パワーローラ5c及び第3トラニオン6cが、図4の右側から見た状態において、傾転軸Yを中心に時計回り(第1傾転方向の一例)に傾転する。この傾転によって、第3パワーローラ5cと、第1入力ディスク3a及び出力ディスク4との当接位置が変化し、第1入力ディスク3aの回転数と出力ディスク4の回転数とを変えることができる。なお、第3ピストン7c、第3トラニオン6c、及び第3パワーローラ5cの傾転軸Yに沿った移動量を変えることにより、すなわち、第3シリンダ室10c内に供給する作動油の量を変えることにより、第3パワーローラ5c及び第3トラニオン6cの傾転角、すなわち変速比を変えることができる。
【0068】
ここで、第3トラニオン6cと第3ピストン7cとは螺合によって係合している。具体的には、第3ピストン7cの雄ねじ部71cが、第3トラニオン6cの雌ねじ部63cに螺合している。このため、第3トラニオン6cが上述したように傾転することにより、第3トラニオン6cの雌ねじ部63cと、第3ピストン7cの雄ねじ部71cとが締まる方向に相対的に回転する。ここで、第3ピストン7cは、第3シリンダ室10c内に回転不能に支持されている。このため、第3トラニオン6cが傾転軸Yに沿って図4の左方向(第2方向の一例)に移動し、最終的に第3パワーローラ5c及び第3トラニオン6cは、傾転動作が完了したときに、傾転軸Yの軸方向において元の位置に戻る。なお、このように第3トラニオン6cが傾転動作を完了した際に元の位置に戻るように、雄ねじ部71cのねじ山のピッチと雌ねじ部63cのねじ溝のピッチとが形成される。
【0069】
次に、第1及び第3パワーローラ5a、5を上述した傾転方向とは逆方向に傾転させる際の動作についても説明する。
【0070】
まず、操作装置を操作することにより第1シリンダ室10a内から作動油が排出されると、第1ピストン7a、第1トラニオン6a、及び第1パワーローラ5aが、傾転軸Yに沿って図4の右方向(第2方向の一例)に移動する。この結果、第1パワーローラ5aと、第1入力ディスク3a及び出力ディスク4との当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。この力の向きの変化に伴って、第1パワーローラ5a及び第1トラニオン6aが、図4の右側から見た状態において、傾転軸Yを中心に時計回り(第2傾転方向の一例)に傾転する。この傾転によって、第1パワーローラ5aと、第1入力ディスク3a及び出力ディスク4との当接位置が変化し、第1入力ディスク3aの回転数と出力ディスク4の回転数とを変えることができる。なお、第1ピストン7a、第1トラニオン6a、及び第1パワーローラ5aの傾転軸Yに沿った移動量を変えることにより、すなわち、第1シリンダ室10a内から排出する作動油の量を変えることにより、第1パワーローラ5a及び第1トラニオン6aの傾転角、すなわち変速比を変えることができる。
【0071】
ここで、第1トラニオン6aと第1ピストン7aとは螺合によって係合している。このため、第1トラニオン6aが傾転することにより、第1トラニオン6aの雌ねじ部63aと、第1ピストン7aの雄ねじ部71aとが緩まる方向に相対的に回転する。ここで、第1ピストン7aは第1シリンダ室10a内に回転不能に支持されている。このため、第1トラニオン6aが傾転軸Yに沿って図4の左方向(第1方向の一例)に移動し、最終的に第1パワーローラ5a及び第1トラニオン6aは、傾転動作が完了したときに、傾転軸Yの軸方向において元の位置に戻る。
【0072】
また、第3シリンダ室10cも第1シリンダ室10aと同様に作動油が排出される。すると、第3ピストン7c、第3トラニオン6c、及び第3パワーローラ5cが、傾転軸Yに沿って図4の左方向(第2方向の一例)に移動する。この結果、第3パワーローラ5cと、第1入力ディスク3a及び出力ディスク4との当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。この力の向きの変化に伴って、第3パワーローラ5c及び第3トラニオン6cが、図4の右側から見た状態において、傾転軸Yを中心に反時計回り(第2傾転方向の一例)に傾転する。この傾転によって、第3パワーローラ5cと、第1入力ディスク3a及び出力ディスク4との当接位置が変化し、第1入力ディスク3aの回転数と出力ディスク4の回転数とを変えることができる。なお、第3ピストン7c、第3トラニオン6c、及び第3パワーローラ5cの傾転軸Yに沿った移動量を変えることにより、すなわち、第3シリンダ室10c内から排出する作動油の量を変えることにより、第3パワーローラ5c及び第3トラニオン6cの傾転角、すなわち変速比を変えることができる。
【0073】
ここで、第3トラニオン6cと第3ピストン7cとは螺合によって係合している。このため、第3トラニオン6cが傾転することにより、第3トラニオン6cの雌ねじ部63cと、第3ピストン7cの雄ねじ部71cとが緩まる方向に相対的に回転する。ここで、第3ピストン7cは第3シリンダ室10c内に回転不能に支持されている。このため、第3トラニオン6cが傾転軸Yに沿って図4の右方向(第1方向の一例)に移動し、最終的に第3パワーローラ5c及び第3トラニオン6cは、傾転動作が完了したときに、傾転軸Yの軸方向において元の位置に戻る。
【0074】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0075】
変形例1
上記実施形態では、変換部の一例として、ピストンに設けられた雄ねじ部とトラニオンに設けられた雌ねじ部とを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、以下に説明するような構成とすることができる。
【0076】
図5に示すように、第1トラニオン6aの第2突出部62には、傾転軸Yの軸方向に沿って延びる筒状の凹部621が形成され、この凹部621内に接触部材64が固定される。この接触部材64の先端面(図5の右端面)641が本発明の接触部に相当する。第1ピストン7aは、第1トラニオン6側に突出する突出部72を有する。この突出部72は、第1トラニオン6aの第2突出部62の凹部621内に収容される。突出部72は、先端面において、傾斜面721を有する。この傾斜面721は、図5の右側から見て反時計回り(第1傾転方向の一例)に向かって図5の右側(第2方向の一例)に傾斜する。なお、この場合、第1ピストン7aが第1トラニオン6aを図5の左方向(第1方向の一例)に移動させることにより、第1トラニオン6aは図5の右側から見て反時計回りに傾転するものとする。これにより、第1ピストン7aが第トラニオン6aを図5の左方向に移動させて第1トラニオン6aを傾転させると、第1トラニオン6aは、図5の右方向に移動し、傾転軸Yの軸方向において元の位置に戻る。なお、この変形例1に係るトロイダル型無段変速機では、傾斜面721と先端面641とが本発明の変換部に相当する。また、第1トラニオン6は、図示しないバネ部材などの付勢手段によって、傾転軸Yに沿って第1ピストン7側に付勢されていてもよい。このようにカム機構を利用して、各トラニオンの移動を制御してもよい。
【0077】
変形例2
トロイダル型無段変速機は、図6に示すような構成とすることもできる。すなわち、第1ピストン7aは、第1トラニオン6a側に突出する突出部72を有する。この突出部72には、長孔720が形成される。傾転軸Yの方向において、長孔720の向かい合う一対の内壁面721は、図6の右側から見て時計周り(第1傾転方向の一例)に向かって図6の右側(第2方向の一例)に傾斜する。なお、一対の内壁面721は、本発明の傾斜面に相当する。突出部72は、突出部72の先端面から図6の右方向に延びる凹部723を有している。
【0078】
第1トラニオン6aの第2突出部62aの先端部は、第1ピストン7aの突出部72の凹部に収容される。第2突出部62aの外周面から径方向に突出する接触部材64を有する。この接触部材64は、第1ピストン7aの突出部72に形成された長孔720を貫通して延びる。この接触部材64の側面のうち、長孔720の一対の内壁面721と接触する部分が、本発明の接触部に相当する。
【0079】
変形例2に係る第1トラニオン6aは、第1ピストン7aによって図6の左方向(第1方向の一例)に移動させると、図6の右側から見て時計回りに傾転するものとする。これにより、第1ピストン7aが第1トラニオン6aを図6の左方向に移動させて第1トラニオン6aを傾転させると、第1トラニオン6aは、図6の右方向に移動し、傾転軸Yの軸方向において元の位置に戻る。このようにカム機構を利用して、各トラニオンの移動を制御してもよい。
【0080】
変形例3
図7に示すように、トロイダル型無段変速機2は、第1制限部22をさらに備えていてもよい。第1制限部22は、図7の左方向(第1方向の一例)への第1トラニオン6aの移動量を制限する部材である。具体的には、第1制限部22は、第2支持部材10に固定されており、その先端面(図7の右端面)が、第1トラニオン6aの第1突出部61aの先端面(図7の左端面)と対向する。このため、第1トラニオン6aが図7の左方向に所定の移動量だけ移動すると、第1突出部61aの先端面が第1制限部22の先端面と当接する。このため、第1トラニオン6aは、所定の移動量以上、図7の左方向に移動することができない。なお、他のトラニオン6b〜6cにも、対応する第1制限部を設置することができる。
【0081】
また、トロイダル型無段変速機2は、第2制限部23をさらに備えていてもよい。第2制限部23は、図7の右方向(第2方向の一例)への第1トラニオン6aの移動量を制限する部材である。具体的には、第2制限部23は、第1トラニオン6aの第1突出部61aに固定されている。第1制限部22は傾転軸Y方向に延びる貫通孔を有しており、この貫通孔内に第2制限部23の一部が収容されている。第2制限部23は、第1制限部22の貫通孔内において傾転軸Y方向に沿って移動可能である。第2制限部23は、フランジ部231を有しており、このフランジ部231が第1制限部22の内向きフランジ部221と当接することによって、第2制限部23の図7の右方向への移動が制限される。この結果、第2制限部23に固定される第1トラニオン6aの図7の右方向への移動も制限される。第1制限部22および第2制限部23の少なくともいずれか一方を備えることによって、パワーローラが不所望に傾斜してしまうことを抑制することができる。
【0082】
変形例4
上記実施形態に係るトロイダル型無段変速機2は、2つの入力ディスク3a,3bと、1つの出力ディスク4とを備えるが、これら各ディスクの数は特に限定されない。例えば、トロイダル型無段変速機2は、1つの入力ディスクと1つの出力ディスクとを備える、シングルキャビティ型の変速機であってもよい。また、どちらか一方の入力ディスク3と出力ディスク4との間には、2つのパワーローラ5が設置されるが、このパワーローラ5の数も特に限定されない。例えば、どちらか一方の入力ディスク3と出力ディスク4との間には、1つのパワーローラ5が設置されてもよいし、3つ以上のパワーローラ5が設置されてもよい。
【0083】
変形例5
上記実施形態では、トラニオンに雌ねじ部が形成され、ピストンに雄ねじ部が形成されていたが、特にこれに限定されない。例えば、トラニオンに雄ねじ部が形成され、ピストンに雌ねじ部が形成されていてもよい。
【0084】
変形例6
上記実施形態では、トロイダル型無段変速機2をハーフトロイダル型無段変速機として説明したが、特にこれに限定されるものではなく、トロイダル型無段変速機2はフルトロイダル型無段変速機であってもよい。
【0085】
変形例7
上記実施形態では、自転車のハブ変速機に本発明を適用しているが、本発明は、たとえばアシスト自転車の駆動ユニットに適用してもよい。たとえば、駆動ユニットは、自転車のボトムブラケットに取り付け可能であり、モータおよび本発明のトロイダル型無段変速機と、クランク軸とを備える。このような駆動ユニットでは、クランク軸からの入力をトロイダル型無段変速機に与えて、トロイダル型無段変速機からの出力をフロントスプロケットに出力する。モータの出力は、たとえば減速機を介してフロントスプロケットに与えられる。本発明のトロイダル型無段変速機は、小型に形成できるので、自転車用として特に有効に用いることができる。
【0086】
変形例8
図8は、変形例8に係る自転車用内装変速ハブのシステム構成図である。ここでは、自転車用内装変速ハブの基本的な構造は前述したものと同様であるが、電気スイッチを用いて各ピストンを制御する。操作装置は、電気スイッチ80と、制御部81と、モータ82と、操作ピストン83と、変換機84とを備えている。
【0087】
電気スイッチ80は、押しボタン式であってもよく、ロータリー式であってもよい。電気スイッチ80が押しボタン式の場合には、増速用と減速用のスイッチをそれぞれ設ける。
【0088】
制御部81は、電気スイッチ80が操作されたときにモータ82を制御する。詳細には、制御部81は、電気スイッチ80の操作に応じてモータ82の動作を制御する。
【0089】
変換機84は、モータ82の回転を直線運動に変換する。変換器84は、たとえばカムまたはラックアンドピニオンなどによって構成される。モータ82の回転量と、操作ピストン83のピストンの移動量とは対応する。操作ピストン83は、ハブ軸の油路に配管を介して接続される。
【0090】
図9に示すように、自転車用内装変速ハブは、上述の構成に加えて、入力ディスク3の回転を検出する第1回転検出部91と、出力ディスク4の回転を検出する第2回転検出部92とを備えてもよい。第1回転検出部91は、たとえば入力ディスク3に設けた磁石と、この磁石を検出する磁石センサと、を備える。第2回転検出部92は、たとえば出力ディスク4に設けた磁石と、この磁石を検出する磁石センサと、を備える。
【0091】
制御部81は、第1回転検出部91および第2回転検出部92に電気的に接続されている。変速のために電気スイッチ80が操作されると、制御部81は、第1回転検出部91が回転しているときだけ、モータ82を動作させることができる。これによってモータ82に不所望な負荷が与えられることを抑制することができる。また制御部81は、第1回転検出部91および第2回転検出部92の検出結果に基づいて変速比を求め、電気スイッチ80が一回操作されると所定の変速比だけ変速比が変更されるように、モータ82を制御する。所定の変速比は、たとえばサイクルコンピュータなどの設定装置を用いて、ライダーが自由に選択できる構成としてもよい。
【0092】
また、パワーローラ5の1つまたは複数に、このパワーローラ5の傾転角度を検出する傾斜センサを設けてもよい。傾斜センサを設けることによって、第1回転検出部91および第2回転検出部92を設けなくても、予め傾転角度と変速比との関係を計測しておけば、変速比を検出することができる。また傾斜センサを設けることによって、装置が正常に動作しているか否かを検出することもできる。
【0093】
変形例9
上記の実施の形態では、各トラニオンに対して、独立して第1変換部が設けられているが、複数のトラニオンのうちの1つのトラニオンに対してのみ第1変換部が設けられる構成としてもよい。このような構成にすると、第1変換部が設けられているトラニオンのパワーローラの接線力と、他のパワーローラの接線力が等しくなるように、油圧力で各ピストンが支持される。したがって、摩耗、弾性変形等により回転半径がかわっても、接線力が等しくなる傾転角で他のパワーローラは自動的に停止する。1つのトラニオンに対してのみ第1変換部が設けられる構成であっても、各トラニオンに対して、独立して第1変換部が設けられる場合と同様の動作を実現することができ、構成がより簡素になる。
【符号の説明】
【0094】
1 自転車用内装変速ハブ
2 トロイダル型無段変速機
3a 第1入力ディスク
3b 第2入力ディスク
4 出力ディスク
5a 第1パワーローラ
5b 第2パワーローラ
5c 第3パワーローラ
5d 第4パワーローラ
6a 第1トラニオン
6b 第2トラニオン
6c 第3トラニオン
6d 第4トラニオン
7a 第1ピストン
7b 第2ピストン
【要約】
【課題】流体圧でパワーローラを傾倒させる構成であっても、複雑な制御回路を必要としないトロイダル型無段変速機、及びこれを用いた自転車用内装変速ハブを提供する。
【解決手段】第1ピストン7aは、油圧を利用して、傾転軸Y方向に沿う第1方向へ第1トラニオン6aを移動可能である。第1ピストン7aの雄ねじ部71aが第1トラニオン6aの雌ねじ部63aと螺合している。このため、第1トラニオン6aが第1方向に移動にすることに伴う第1トラニオン6aの第1傾転方向への傾転によって、第1トラニオン6aは第1方向とは反対の第2方向に移動する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9