(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795413
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 71/10 20060101AFI20150928BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20150928BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
C08L71/10
C08J3/20 Z
C08J5/00CEZ
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-167689(P2014-167689)
(22)【出願日】2014年8月20日
(62)【分割の表示】特願2011-521977(P2011-521977)の分割
【原出願日】2010年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-210940(P2014-210940A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2009-162660(P2009-162660)
(32)【優先日】2009年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108982
【氏名又は名称】ダイセル・エボニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】六田 充輝
【審査官】
井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−331055(JP,A)
【文献】
特表昭61−500021(JP,A)
【文献】
特表平06−503104(JP,A)
【文献】
特開平04−041557(JP,A)
【文献】
特開昭62−129347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに溶融粘度の異なる複数の熱可塑性樹脂を含み、これらの熱可塑性樹脂が、結晶性の第1のポリエーテルエーテルケトンと結晶性の第2のポリエーテルエーテルケトンとを少なくとも含む熱可塑性樹脂組成物の成形性を改善する方法であって、
第1のポリエーテルエーテルケトンが、温度400℃、剪断速度1216s−1で溶融粘度が150〜1500Pa・sを有し、第1のポリエーテルエーテルケトンと、第2のポリエーテルエーテルケトンとの溶融粘度比が、温度400℃、剪断速度1216s−1において、前者/後者=1.5/1〜10/1であり、
第1のポリエーテルエーテルケトン及び第2のポリエーテルエーテルケトンの結晶化温度が、冷却速度5℃/分で測定したとき、290〜310℃であり、
第1のポリエーテルエーテルケトンと第2のポリエーテルエーテルケトンとを前者/後者=50/50〜10/90の重量割合で溶融混練して流動性及び結晶化温度が上昇した前記熱可塑性樹脂組成物を調製し、前記成形性を改善する方法。
【請求項2】
第1のポリエーテルエーテルケトンと第2のポリエーテルエーテルケトンとの溶融粘度比が、温度400℃、剪断速度1216s−1において、前者/後者=3/1〜5/1である請求項1記載の方法。
【請求項3】
温度400℃、剪断速度1216s−1における第2のポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度が90〜150Pa・sである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
第1のポリエーテルエーテルケトンと第2のポリエーテルエーテルケトンとの重量割合が前者/後者=45/55〜10/90である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1のポリエーテルエーテルケトンと第2のポリエーテルエーテルケトンとの重量割合が前者/後者=40/60〜10/90である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度を、複数の熱可塑性樹脂の結晶化温度の加重平均を超える結晶化温度に高めて成形性を改善する請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度を、第2のポリエーテルエーテルケトンの結晶化温度以上の結晶化温度に高めて成形性を改善する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度を、第1及び第2のポリエーテルエーテルケトンのうち最も高い結晶化温度以上の結晶化温度に高める請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
成形サイクルを短縮し、熱可塑性樹脂組成物の成形性を改善する請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
互いに溶融粘度の異なる複数の熱可塑性樹脂を含み、これらの熱可塑性樹脂が、第1のポリエーテルエーテルケトンと第2のポリエーテルエーテルケトンとを少なくとも含む熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度を高めるか又は成形サイクルを短縮する方法であって、
第1のポリエーテルエーテルケトンが、温度400℃、剪断速度1216s−1で溶融粘度が150〜1500Pa・sを有し、第1のポリエーテルエーテルケトンと、第2のポリエーテルエーテルケトンとの溶融粘度比が、温度400℃、剪断速度1216s−1において、前者/後者=1.5/1〜10/1であり、
第1のポリエーテルエーテルケトン及び第2のポリエーテルエーテルケトンの結晶化温度が、冷却速度5℃/分で測定したとき、290〜310℃であり、
第1のポリエーテルエーテルケトンと第2のポリエーテルエーテルケトンとを前者/後者=50/50〜10/90の重量割合で溶融混練して流動性及び結晶化温度を上昇させ、射出成形する、前記方法。
【請求項11】
厚さ2mm以下の領域を有する成形体を得る請求項10記載の方法。
【請求項12】
厚さが2mm以下、かつ幅が10mm以下の領域を有する成形体を得る請求項10又は11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体における所望の機械的強度等の物性を確保しつつ、成形効率を改善できる熱可塑性樹脂組成物(例えば、ポリエーテルケトン樹脂組成物など)及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)などのポリエーテルケトン樹脂は、耐熱性、耐薬品性、機械強度等に優れた代表的な半結晶性熱可塑性樹脂であり、1978年にICI社で開発されて以来、従来の合成樹脂では対応不可能であった数々のアプリケーション分野に使用されている。
【0003】
PEEK及びPEKが、従来の熱可塑性樹脂と異なる特徴的な点の一つにその高次構造が挙げられる。通常、一般の半結晶性の熱可塑性樹脂の場合、固化状態においては結晶相と非晶相を有するが、PEEKやPEKなどの主鎖にベンゼン環やナフタレン環などを有する高分子化合物の場合、結晶相と非晶相の他にリヂッド・アモルファスと呼ばれる運動性の低い非晶相があることが、例えば1999年の高分子学会で東京工業大学の研究チームより発表されている[非特許文献1(高分子学会予稿集、vol.48、No.14、p.3735、1999)]。このような複雑な高次構造を有するために、通常、一般の半結晶性高分子以上に、物性、特に溶融粘度や結晶化速度の分子量および分子量分布の依存性が大きく、それがひいては溶融粘度や結晶化速度に大きく影響を受ける成形加工プロセス後の製品の機械物性に大きな影響を及ぼしている。一方、PEEKやPEKなどの重合プロセスは、従来一般の合成樹脂と比べ、用いる溶剤の特殊性、合成されたポリマーの融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)の高さに由来する高い重合温度や高粘性、さらに重合最終工程において溶剤や残留モノマーの洗浄工程が必要である点などから、非常に複雑である。そのため、例えばポリアミド樹脂やポリエステル樹脂のように重合反応のコントロールにより、分子量の異なる種々のグレードを開発するのは必ずしも容易ではない。さらに、分子量分布のコントロールはより困難であり、必ずしも用途ごとに適切な成形加工性を有するグレードが市場に提供されてきたわけではない。
【0004】
このように、ポリエーテルケトン樹脂の結晶構造等の高次構造は複雑であり、それを重合条件により精密に調整する事は、その溶解性の低さや溶融粘度の高さ等から、一般的な熱可塑性樹脂よりも困難である。また、高次構造を精密に調整できない場合、所望の溶融粘度や結晶化温度等を有するポリエーテルケトン樹脂を安定して得る事は難しく、そのようなポリエーテルケトン樹脂から所望の機械的特性を有する成形体を安定して得るには、成形工程において相当の工夫が要求される。特に溶融粘度や結晶化温度は、成形体の強度だけでなく、成形加工における作業効率にも影響を与えるため、それらを如何に調整するかは大きな技術的課題である。
【0005】
所望の物性を有する樹脂組成物を得る方法としては、例えば2以上の樹脂を適宜混合する方法がある。特開2006−241201号公報(特許文献1)には、(A)スチレン系樹脂1種以上および(B)スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含み、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を有するスチレン系樹脂組成物であり、かつ180〜300℃、剪断速度1000s
−1における溶融粘度の比[(A)成分/(B)成分]が0.1以上であるスチレン系樹脂組成物が開示されている。しかし、スチレン系樹脂は結晶性熱可塑性樹脂ではなく、2種類の樹脂を混合しても、成形サイクルを改善できない。
【0006】
特表2008−528768号公報(特許文献2)には、溶融マスターバッチとこの溶融マスターバッチよりも溶融粘度の低い第1のポリマーとを混合して低粘度溶融マスターバッチを形成し、低粘度溶融マスターバッチと第2のポリマーとを混合して導電性組成物を形成する方法が開示されている。しかし、第2のポリマーとの混和性を高めるために、溶融マスターバッチと溶融粘度の異なる第1のポリマーとを混合しており、この混合物は、第2のポリマーと混合されるため、成形サイクル及び成形体の機械的特性に与える影響は小さい。
【0007】
特表2007−506833号公報(特許文献3)には、0.05〜0.12kNsm
−2の溶融粘度(MV)を有し、かつ(a)フェニル部分、(b)カルボニル部分、及び(c)エーテル部分を有する高分子材料を含むパックが開示されている。この文献には、複数の低粘度ポリエーテルエーテルケトンの混合物も記載されている。しかし、高充填材料を得るため、低粘度のポリエーテルエーテルケトン同士を混合しているので、成形サイクルや成形体の機械的特性を改善できない。
【0008】
WO2009/057255号公報(特許文献4)には、(A)分子量が5000以上200万未満の重合成分、及び、(B)分子量が1000以上5000未満の重合成分を含有し、(A):(B)の重量比が60:40〜97:3であるポリエーテルエーテルケトンが開示されている。しかし、このポリエーテルエーテルケトンは(A)樹脂成分に加えて、(B)オリゴマー成分を含んでいるため、流動性は向上するものの、機械的特性は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−241201号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特表2008−528768号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特表2007−506833号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】WO2009/057255号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】高分子学会予稿集、vol.48、No.14、p.3735、1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、成形体における強度等の物性を確保しつつ、高い流動性を有することにより成形効率を改善できる熱可塑性樹脂組成物(例えば、ポリエーテルケトン樹脂組成物)及びその成形体を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、結晶化温度を高め成形サイクルを向上できる熱可塑性樹脂組成物(例えば、ポリエーテルケトン樹脂組成物)及びその成形体を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、成形体の寸法安定性を向上できる熱可塑性樹脂組成物(例えば、ポリエーテルケトン樹脂組成物)及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特殊な重合条件や成形条件を経ることなく、互いに溶融粘度の異なる複数の特定の熱可塑性樹脂を混合することにより、樹脂特性を大きく改善できること、例えば、(1)単独では溶融粘度が高く流動性の低い射出成形が困難な第1の熱可塑性樹脂に、成形体の特性を確保するために必要最低限の分子量を有する第2の熱可塑性樹脂を少量添加すると、結晶化温度を高め、成形サイクルを向上できること、(2)第2の熱可塑性樹脂に、第1の熱可塑性樹脂を少量添加すると、機械的特性などの物性を大きく向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、互いに溶融粘度の異なる複数の熱可塑性樹脂を含み、これらの熱可塑性樹脂が、アリーレン基と、カルボニル基及び/又はエーテル基とで構成された単位を含む熱可塑性樹脂組成物であって、温度400℃、剪断速度1216s
−1での溶融粘度が150〜1500Pa・s程度である第1の熱可塑性樹脂と、第2の熱可塑性樹脂とを少なくとも含み、温度400℃、剪断速度1216s
−1での第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との溶融粘度比が、前者/後者=1.5/1〜10/1(例えば、3/1〜5/1)程度の熱可塑性樹脂組成物である。
【0016】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルケトン樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルケトンから選択された少なくとも一種など)であってもよい。
【0017】
温度400℃、剪断速度1216s
−1における第2の熱可塑性樹脂の溶融粘度は、90〜150Pa・s程度であってもよい。
【0018】
第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との割合(重量比)は、特に限定されず、前者/後者=99/1〜1/99程度の範囲から選択できる。例えば、第1の熱可塑性樹脂100重量部に対して、第2の熱可塑性樹脂の割合が少量(1〜50重量部、例えば、1〜45重量部程度)であると、結晶化温度を大きく向上できる。一方、第2の熱可塑性樹脂100重量部に対して、第1の熱可塑性樹脂の割合が少量(1〜50重量部、例えば、1〜45重量部程度)であると、機械的特性などの物性を大きく向上できる。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度は、複数の熱可塑性樹脂の結晶化温度の加重平均より高くてもよく、例えば、第2の熱可塑性樹脂の結晶化温度以上であってもよい。
【0020】
これらの熱可塑性樹脂組成物は、前記複数の熱可塑性樹脂を溶融混練することにより得てもよい。また、熱可塑性樹脂組成物は、ゲルろ過クロマトグラフィー分子量測定において単一又は2以上の複数の分子量ピークを有していてもよい。
【0021】
本発明は、温度400℃、剪断速度1216s
−1での溶融粘度が150〜1500Pa・s程度である第1の熱可塑性樹脂に、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との溶融粘度比が、温度400℃、剪断速度1216s
−1において前者/後者=1.5/1〜10/1程度である第2の熱可塑性樹脂を添加し、結晶化温度を高める方法も包含する。この方法では、樹脂組成物の結晶化温度を、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との加重平均の結晶化温度よりも高めることができる。
【0022】
また、本発明には、前記熱可塑性樹脂組成物により形成された成形体も含まれる。前記成形体は、射出成形により形成されていてもよい。本発明の成形体は、薄肉成形部、例えば、厚さ2mm以下の領域を有する成形体であってもよく、厚さ2mm以下、かつ幅10mm以下の領域(例えば、バンド状領域)を有する成形体であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、特殊な重合条件や成形条件を経ることなく、互いに溶融粘度の異なる複数の特定の熱可塑性樹脂を混合することにより、成形体の機械的特性を確保しつつ、流動性及び結晶化温度を高め、成形効率を大きく向上できる。特に、溶融粘度の差が大きいほど、成形効率の改善効果は大きい。より具体的には、単独では溶融粘度が高く流動性の低い射出成形が困難な第1の熱可塑性樹脂に、成形体の特性を確保するために必要最低限の分子量を有する第2の熱可塑性樹脂を少量添加すると、結晶化温度を大きく向上できる。一方、第2の熱可塑性樹脂に、第1の熱可塑性樹脂を少量添加すると、成形体の機械的特性を大きく向上できる。本発明の熱可塑性樹脂組成物では、結晶化温度を、混合する熱可塑性樹脂の結晶化温度から想定される結晶化温度(加重平均の結晶化温度)よりも高くでき、短時間で結晶化して金型から離型できるため、成形サイクルを大幅に短縮できる。また、本発明では、結晶化温度が高く、結晶化速度も大きいため、成形体の寸法安定性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例及び比較例でのポリエーテルケトン樹脂又は組成物の結晶化温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、互いに溶融粘度の異なる複数(例えば、2〜4、好ましくは2〜3程度)の熱可塑性樹脂(結晶性熱可塑性樹脂など)を含んでいる。前記熱可塑性樹脂は、アリーレン基と、エーテル基及び/又はカルボニル基とで構成された単位、例えば、下記式(1)
【0027】
[式中、環Zはアレーン環を示し、Rは、各単位において、互いに同一又は異なって、酸素原子又はカルボニル基(−C(O)−)を示す]
で表される単位(繰り返し単位)を含んでいる。各単位において、R及び環Zの種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、Rは、一部の単位において、−C(O)O−(エステル結合)を形成してもよいが、通常、−C(O)O−結合を形成しない。
【0028】
環Zで表されるアレーン環としては、ベンゼン、ナフタレンなどのC
6−10アレーン環、ビフェニル、ビナフチルなどのC
6−10アリールC
6−10アレーン環などが挙げられる。なお、環Zは置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル、エチル基などのC
1−6アルキル基(好ましくはC
1−4アルキル基)などが挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテルなど)であってもよいが、通常、ポリエーテルケトン樹脂(芳香族ポリエーテルケトン樹脂)である。ポリエーテルケトン樹脂は、特に制限されないが、一般的にはフェニレン基などのアリーレン基、カルボニル基、及びエーテル基から適宜構成され、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテル−ジフェニル−エーテル−フェニル−ケトン−フェニル等が挙げられる。
【0030】
これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリエーテルケトン樹脂が好ましく、特に、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンが好ましい。
【0031】
熱可塑性樹脂組成物での熱可塑性樹脂の組合せは、特に制限されないが、複数のポリエーテルエーテルケトンのみの組合せや複数のポリエーテルケトンのみの組合せ等、同種のポリエーテルケトン樹脂の組合せが好ましい。
【0032】
熱可塑性樹脂の分子量は、溶融混練や成形加工が可能である限り、特に制限されず、例えば、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、5,000以上(例えば、5,000〜1,000,000)、好ましくは8,000以上(例えば、10,000〜500,000)、さらに好ましくは15,000以上(例えば、18,000〜100,000)、特に20,000以上(例えば、20,000〜50,000)であってもよい。また、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1.5〜5、好ましくは1.8〜4、さらに好ましくは2〜3.5程度であってもよい。なお、一般に熱可塑性樹脂では、分子量が高くなると、機械的特性が向上し、流動性が低下する。しかし、ポリエーテルケトン樹脂では、からみ合い分子量が小さいため、特異的な挙動を示す。すなわち、分子量が僅かに増加するだけで、流動性は大きく変化(例えば、低下)する。また、分子量が増加すると、分子の絡み合いが増加するとともに、結晶化速度が低下するため、分子量に応じて機械的特性などの物性は複雑な変化を示す。
【0033】
熱可塑性樹脂の溶融粘度は、特に制限されないが、例えば、温度400℃、剪断速度1216s
−1における溶融粘度が、90〜1500Pa・s程度の範囲から選択でき、90〜800Pa・s、好ましくは95〜700Pa・s、さらに好ましくは100〜600Pa・s(例えば、100〜500Pa・s)程度であってもよい。なお、溶融粘度が90Pa・sより低い樹脂は、分子量がオリゴマー領域にあり、高粘度の熱可塑性樹脂と混合しても、成形体の機械的強度を改善できない場合がある。
【0034】
熱可塑性樹脂の結晶化温度は、溶融混練や成形加工が可能であれば、特に制限されず、例えば、冷却速度5℃/分における結晶化温度が、290〜310℃、好ましくは291〜309℃、さらに好ましくは292〜308℃程度であってもよい。
【0035】
これらの熱可塑性樹脂は、市販品を使用してもよく、公知の方法により製造してもよい。例えば、ポリエーテルケトン樹脂の代表的な製造方法としては、芳香族ジオール成分と芳香族ジハライド成分(但し、いずれか一方の成分は、少なくともカルボニル基を有する成分を含む)、又は芳香族モノハライドモノオール成分(但し、少なくともカルボニル基を有する芳香族モノハライドモノオール成分を含む)を、アルカリ金属塩及び溶媒の存在下、150℃〜400℃の温度範囲で重縮合させる方法が挙げられる。
【0036】
芳香族ジオール成分の例としてはハイドロキノン等、芳香族ジハライド成分の例としては4,4’−ジフルオロベンゾフェノン等、芳香族モノハライドモノオール成分の例としては4−フルオロフェノール、4−フルオロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン等が各々挙げられる。
【0037】
アルカリ金属塩の例としては無水炭酸カリウム等が挙げられる。溶媒の例としてはジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0038】
重縮合反応完了後は、粉砕し、アセトン、メタノール、エタノール、水等により洗浄し、乾燥してもよい。なお、ポリエーテルケトン樹脂は、末端基(通常、ハロゲン原子)をアルカリ性スルホン酸基(スルホン酸ナトリウム基、スルホン酸カリウム基、スルホン酸リチウム基など)などで修飾すること等により、結晶化温度を適宜調整して使用してもよいが、末端基を修飾しないで使用するのが好ましい。
【0039】
熱可塑性樹脂組成物は、互いに溶融粘度の異なる第1の熱可塑性樹脂(高粘度熱可塑性樹脂など)と第2の熱可塑性樹脂(低粘度熱可塑性樹脂など)とを少なくとも含んでいる。第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とは、互いに化学構造が同一又は異なっていてもよい。化学構造が同じであっても樹脂特性を大きく改善できる。
【0040】
熱可塑性樹脂組成物を構成する複数の熱可塑性樹脂のうち、温度400℃、剪断速度1216s
−1における第1の熱可塑性樹脂(例えば、最も溶融粘度の高い熱可塑性樹脂)の溶融粘度は、例えば、150Pa・s以上(例えば、150〜1500Pa・s程度)の範囲から選択でき、例えば、160Pa・s以上(例えば、170〜800Pa・s)、好ましくは200Pa・s以上(例えば、250〜700Pa・s)、さらに好ましくは300Pa・s以上(例えば、350〜600Pa・s)、特に400Pa・s以上(例えば、400〜500Pa・s)であってもよい。また、温度400℃、剪断速度1216s
−1における第2の熱可塑性樹脂(例えば、最も溶融粘度の低い熱可塑性樹脂)の溶融粘度は、例えば、170Pa・s 以下(例えば、90〜160Pa・s)、好ましくは150Pa・s以下(例えば、95〜140Pa・s)、さらに好ましくは130Pa・s以下(例えば、100〜120Pa・s)、特に110Pa・s以下(例えば、100〜110Pa・s)であってもよい。第2の熱可塑性樹脂の溶融粘度が170Pa・sより高いと、所望の流動性を得ることが困難となる場合がある。
【0041】
温度400℃、剪断速度1216s
−1において、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との溶融粘度比は、樹脂特性を大きく改善できる点から、前者/後者=1.5/1〜10/1、好ましくは2/1〜8/1(例えば、2.5/1〜6/1)、さらに好ましくは3/1〜5/1程度であってもよい。第1の熱可塑性樹脂の溶融粘度が第2の熱可塑性樹脂の溶融粘度の1.5倍より低いと、当該組成物を構成する樹脂の性質が近似し過ぎる傾向があるため、所望の結晶化度や機械的強度等を得ることは困難となる場合がある。
【0042】
本発明では、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂のいずれか一方の熱可塑性樹脂に対して、他方の熱可塑性樹脂を少量添加するだけで、組成物の特性(結晶化温度、耐衝撃性などの機械的特性など)を大きく改善できる。そのため、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との重量比は、特に制限されず、前者/後者=99/1〜1/99程度の範囲から適宜選択できる。例えば、得られる成形体の強度を重視する場合、第1の熱可塑性樹脂/第2の熱可塑性樹脂(重量比)=95/5〜50/50、好ましくは90/10〜60/40(例えば、85/15〜65/35)、さらに好ましくは80/20〜70/30程度であってもよい。成型加工性を重視する場合、第1の熱可塑性樹脂/第2の熱可塑性樹脂(重量比)は、50/50〜1/99(例えば、45/55〜5/95)、好ましくは40/60〜10/90(例えば、35/65〜10/90)、さらに好ましくは30/70〜10/90程度であってもよい。
【0043】
特に、第1の熱可塑性樹脂100重量部に対して、第2の熱可塑性樹脂を1〜50重量部(例えば、1〜45重量部、好ましくは10〜40重量部、好ましくは20〜35重量部)程度の割合で含有すると、結晶化温度を大きく向上し、成形サイクルを大幅に短縮できる。一方、第2の熱可塑性樹脂100重量部に対して、第1の熱可塑性樹脂を1〜50重量部(例えば、1〜45重量部、好ましくは10〜40重量部、好ましくは20〜35重量部)程度の割合で含有すると、機械的特性などの物性を大きく向上できる。
【0044】
第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との合計の割合は、熱可塑性樹脂組成物全体に対して、例えば、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、90〜100重量%程度)であってもよい。
【0045】
温度400℃、剪断速度1216s
−1における熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、100〜800Pa・s(例えば、100〜700Pa・s)、好ましくは100〜600Pa・s、さらに好ましくは110〜500Pa・s(例えば、120〜450Pa・s、好ましくは130〜400Pa・s)程度である。溶融粘度が100Pa・sより低い場合、得られる成形体の強度に問題が生じる場合があり、溶融粘度が800Pa・sより高い場合、成形加工性に問題が生じる場合がある。
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、結晶化温度が高い。結晶化温度は、成形工程のタイムサイクルに影響を与える結晶化速度を反映する指標である。すなわち、結晶化速度は、例えば示差走査熱量測定において、溶融状態からある一定温度で冷却した際の結晶化温度により評価でき、結晶化温度が高いほど結晶化速度は大きく、成形サイクルを短縮できる。熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度は、例えば、300℃以上、好ましくは303℃以上、さらに好ましくは306℃以上(例えば、306〜308℃程度)であってもよい。結晶化温度が300℃より低いと、成形工程後の金型からの離型までに時間を要し、成形サイクルに悪影響を与える場合がある。
【0047】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度は、例えば、第1の熱可塑性樹脂の結晶化温度以上(例えば、当該組成物を構成する樹脂の結晶化温度の中で最も低い結晶化温度以上)、好ましくは構成樹脂の結晶化温度の加重平均よりも高く、さらに好ましくは第2の熱可塑性樹脂の結晶化温度以上(例えば、構成樹脂の結晶化温度の中で最も高い結晶化温度以上)であってもよく、加重平均結晶化温度+1〜10℃(例えば、1〜5℃)以下であってもよい。このような熱可塑性樹脂組成物は、当該組成物を構成する樹脂のいずれか又は全てを各々単独で使用する場合よりも高い温度で結晶化するため、例えば溶融混練工程から押出又は射出等の成形工程を経た後、より早く結晶化して金型から素早く離型できる等、成形サイクル短縮という改良効果を得ることができる。なお、各熱可塑性樹脂及び樹脂組成物の結晶化温度は、−10℃から410℃まで速度20℃/分で昇温し、410℃で1分間保持した後、冷却速度5℃/分で冷却する冷却過程での結晶化温度を意味し、この結晶化温度は
示差走査熱量計を用いて測定できる。
【0048】
熱可塑性樹脂組成物は、流動性と機械的特性とのバランスにも優れている。例えば、幅6mm、厚み2mm、シリンダー温度380℃、金型温度180℃、及び圧力1000バールの条件下での流動長(スパイラルフロー)は、30〜70cm、好ましくは35〜65cm、さらに好ましくは40〜60cm(例えば、45〜55cm)程度であってもよい。また、引張り破断強度は、ISO527に準拠して、95〜120MPa、好ましくは100〜110MPa程度である。また、シャルピー衝撃強度は、ISO179/1eAに準拠して、8〜20KJ/m
2、好ましくは9〜18KJ/m
2、さらに好ましくは10〜15KJ/m
2程度であってもよい。なお、混合する熱可塑性樹脂の溶融粘度の差が大きいと、衝撃強度をより一層向上でき、例えば、熱可塑性樹脂単独の衝撃強度よりも大きくできる。
【0049】
熱可塑性樹脂組成物は、ゲルろ過クロマトグラフィー分子量測定において単一のピークを有していてもよく、2以上の複数の分子量ピークを有していてもよい。また、分子量ピークは各熱可塑性樹脂に対応していてもよい。異なる分子量ピークが混在することにより、溶融混練後において、分子レベルでの結晶構造や充填構造の改善により、強度が著しく改善される。具体的には、分子量の小さい樹脂は一種の結晶核剤として機能すると推定され、特に分子量の小さい樹脂と分子量の大きい樹脂との物性(溶融粘度、結晶化温度、結晶化速度等)が大きく異なる場合、得られる樹脂組成物のそれら物性を顕著に改善できる。当該組成物は、分子量の異なる2以上の複数の樹脂を混合して得てもよく、1又は2以上の分子量ピークが得られるような重合工程条件等の製造工程条件により得てもよい。このように、本発明の熱可塑性樹脂組成物では、結晶核剤を実質的に含有しなくても、結晶化温度を大きく向上できる。
【0050】
なお、分子量ピークの数は一般的に当該組成物を構成する樹脂の数に依存するが、それに限定されるものではなく、当該組成物を構成する樹脂自身が2以上の分子量ピークを有してもよく、当該組成物が同じ分子量値に分子量ピークを有する2以上の樹脂より構成されていてもよいが、所望の結晶化度や機械的強度等を調整し易いという観点から、当該組成物を構成する分子量が各々異なることが好ましい。ゲルろ過クロマトグラフィー分子量測定法は、特に制限されないが、例えば、特開2004−45166号公報に記載の方法が挙げられる。
【0051】
熱可塑性樹脂組成物は、当該樹脂組成物を構成する各々の熱可塑性樹脂の混合物[又は単純混合物(例えば、ドライブレンド物、予備混合物)、例えば、ペレットの混合物、粉粒体の混合物又はペレットと粉粒体とを混合した物]であってもよく、当該樹脂組成物を構成する複数の熱可塑性樹脂(又は前記混合物)を溶融混練して得られた物であってもよい。溶融混練されることにより、分子レベルでの結晶構造や充填構造の改善により、物性が大きく改善されるとともに、均一で安定した品質の樹脂組成物を提供することができる。
【0052】
熱可塑性樹脂組成物を構成する樹脂又は当該組成物には、添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、補強剤[鉱物質粒子(タルク、シリカ、カオリンなど)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛など)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)などの粉粒状補強剤;カーボン繊維、ガラス繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などの繊維状補強剤など]、熱伝導性改良材料(アルミナなど)、色材又は着色剤(カーボンブラックなど)、安定剤、可塑剤、滑剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
熱可塑性樹脂組成物は、慣用の方法、例えば、各成分を混合することにより調製できる。熱可塑性樹脂組成物は、例えば、各成分を、溶融混練することなく、粉粒状又はペレット状の形態で単純に混合するドライブレンド(通常、タンブラー、V型ブレンダーなどの混合機を用いて、室温で混合するドライブレンド)により調製してもよく、各成分を溶融混練することにより調製してもよい。より具体的には、必要により混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)で各成分を予備混合した後、種々の溶融混練機(例えば、ニーダー、一軸又は二軸押出し機など)を用いて、温度300〜450℃(好ましくは350〜400℃)程度で溶融混練する場合が多い。この溶融混練物は、慣用のペレット化手段(ペレタイザーなど)により、ペレット化してもよい。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、所望の形状に成形することができる。成形方法は特に制限されず、押出成形や射出成形等、公知の方法により成形することができる。これらの成形方法のうち、射出成形が好ましい。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、結晶化温度の改善により結晶化速度を向上できるため、例えば、押出成形又は射出成形等により成形した後の冷却工程において通常発生する成形体の外面付近と内部との結晶化度の差異を抑制することができ、結果的に成形体の寸法精度を高くすることができる。
【0056】
本発明の成形体は、前記熱可塑性樹脂組成物で形成されている限り、特に限定されず、種々の形状(例えば、フィルム状又はシート状、バンド状などの二次元構造、棒状、パイプ状など、立体形状などの三次元構造など)の成形体であってもよい。成形体は、薄肉成形品又は薄肉成形部を有する形成品、例えば、厚み2mm以下(例えば、0.01〜2mm、好ましくは0.1〜1.5mm程度)の領域(薄肉領域)を有する成形体であってもよく、厚み2mm以下でかつ幅が10mm以下の領域(例えば、バンド状領域又はバンド状薄肉成形部)を有する成形体であってもよい。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は薄肉成形しても高い強靱性を示す。そのため、薄いフィルム状又はシート状に成形した場合、又は薄く細いバンド状に成形した場合に、当該組成物を構成する樹脂を単独で成形した場合よりも、優れた強靭性を示す。フィルム状又はシート状成形品の場合、厚さは2mm以下(例えば、0.01〜2mm、好ましくは0.1〜1.5mm程度)が好ましい。バンド状成形品の場合、厚さは2mm以下(例えば、0.01〜2mm、好ましくは0.1〜1.5mm程度)、幅は10mm以下(例えば、1〜10mm、好ましくは2〜8mm程度)が好ましい。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
[ポリエーテルケトン樹脂]
以下のポリエーテルケトン樹脂を使用した。
【0058】
1000G:ポリエーテルエーテルケトン VESTAKEEP 1000G(ダイセル・エボニック社製)
2000G:ポリエーテルエーテルケトン VESTAKEEP 2000G(ダイセル・エボニック社製)
4000G:ポリエーテルエーテルケトン VESTAKEEP 4000G(ダイセル・エボニック社製)
[溶融粘度の測定方法]
ポリエーテルケトン樹脂又は樹脂組成物につき、キャピラリーレオメーター(島津製作所(株)製 レオロスタ
SCER−01、キャピラリー長さ10mm、キャピラリー径1mm、バレル径9.55mm)を使用し、400℃、剪断速度1216s
−1、予備加熱時の加重0.1kNの条件にて測定を行った。
[結晶化温度の測定方法]
ポリエーテルケトン樹脂又は樹脂組成物(4.5〜10.0mg)につき、示差走査熱量測定装置(セイコー電子工業社製 SSC5200)を使用し、−10℃に冷却して1分間保持した後、昇温速度20℃/分にて昇温し、410℃にて1分間保持した後、冷却速度5℃/分にて冷却し、冷却過程で最初に得られたピーク位置を結晶化温度とした。
[流動性の評価]
ポリエーテルケトン樹脂又は樹脂組成物につき、スパイラルフロー測定用金型(幅6mm、厚さ2mm)を使用し、金型温度180℃、シリンダー温度380℃、圧力1000バールにおける流動長を測定した。
[破断強度の評価]
破断強度は、ISO527に準じて測定した。
[衝撃強度の評価]
シャルピー衝撃強度は、ISO179/1eAに準じて測定した。
[強靭性の評価]
ポリエーテルケトン樹脂又は樹脂組成物をバンド状成形体(幅5mm×厚さ1mm×長さ500mm)とし、一重に巻いて直径20mm以上のループを形成した後、バンドの両端を引っ張ることによりループ部分の直径を徐々に小さくし、ループの直径が5mmになった時点でのループ部分の破断状況を観察した。計5個の試料を使用し、得られた結果は以下の通り評価した。
【0059】
A:破断しない(全て破断せず)
B:破断し難い(1〜2個破断)
C:破断する(3個以上破断)
[実施例及び比較例]
上記のポリエーテルケトン樹脂単独について、又はポリエーテルケトン樹脂を、それぞれ表1に示した割合で混合し、得られたポリエーテルケトン樹脂組成物について、溶融粘度、結晶化温度、流動性、破断強度、衝撃強度、強靭性を測定又は評価した結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例2〜5はいずれも、当該組成物を構成する樹脂が有する強靭性を十分に保持しつつ、良好な流動性及び高い結晶化温度を与えていることが認められる。特に実施例1〜2においては、当該組成物を構成する樹脂である1000G及び4000Gのいずれよりも高い結晶化温度を示している点が顕著である。特に、1000Gに4000Gを少量添加した実施例1〜2では、強靱性や衝撃強度などの機械的特性が、1000Gと4000Gとの混合比率から想定される値よりも大きく向上している。また、4000Gに1000Gを少量添加した実施例5では、結晶化温度が、1000Gと4000Gとの混合比率から想定される値[例えば、加重平均の結晶化温度(298℃)]よりも大きく向上している。
【0062】
実施例6〜9はいずれも、当該組成物を構成する樹脂が有する以上の強靭性や流動性を示しつつ、高い結晶化温度を与えていることが認められる。特に実施例8〜9においては、当該組成物を構成する樹脂である1000G及び2000Gのいずれよりも高い強靭性を示している点が顕著である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその成形体は、半導体、電子機器、自動車、航空機等の、耐熱性、耐薬品性、強靭性等を必要とされる製品の部材として、フィルム状、バンド状、棒状、パイプ状、その他種々の形状にして使用できる。