(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5795423
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】吸収式除去・濃縮装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/18 20060101AFI20150928BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20150928BHJP
B01D 53/06 20060101ALI20150928BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20150928BHJP
F24F 1/00 20110101ALN20150928BHJP
【FI】
B01D53/18 120
B01D53/26 220
B01D53/06 100
B01D53/14 100
!F24F1/00 371Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-256748(P2014-256748)
(22)【出願日】2014年12月19日
【審査請求日】2015年4月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】丸山 香名江
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏志
(72)【発明者】
【氏名】岡野 浩志
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−061389(JP,A)
【文献】
実開昭61−083433(JP,U)
【文献】
特表2014−533195(JP,A)
【文献】
特開2006−187698(JP,A)
【文献】
特開2007−021363(JP,A)
【文献】
特開2002−186822(JP,A)
【文献】
特開2005−313144(JP,A)
【文献】
特開平11−192415(JP,A)
【文献】
特開平05−337333(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0288429(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0213229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01D 53/14−53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素の吸収材がアミン担持固体吸収剤である二酸化炭素の吸収機能を有するハニカムロータを有し、前記ハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンとに分割し、前記処理ゾーンに処理対象空気を通風することで、その処理対象空気に含まれる二酸化炭素をロータ部分の保持吸収剤に吸収させて処理対象空気から分離除去するようにし、前記再生ゾーンに再生用空気を通風することで保持吸収剤が前記処理ゾーンで吸収した二酸化炭素を、再生用空気に脱離させてロータ部分の保持吸収材を再生するようにした吸収式除去・濃縮装置であって、前記再生ゾーンに通風する再生用加熱空気と処理ゾーンに通風する処理空気の両方の相対湿度を高くする湿度調整手段を有する吸収式除去・濃縮装置。
【請求項2】
前記処理ゾーンに通風する処理対象空気を湿度調整手段により相対湿度を高くするようにし、この湿度調整手段として、気化式、水噴霧式、または超音波式などの非加熱式の加湿器を設けた請求項1に記載の吸収式除去・濃縮装置。
【請求項3】
前記再生ゾーンに通風する空気を湿度調整手段により相対湿度を高くするようにし、この湿度調整手段として、水加熱式、気化式、水噴霧式、或いは超音波式の加湿器を設けた請求項1〜2いずれかに記載の吸収式除去・濃縮装置。
【請求項4】
前記再生ゾーンを通過した使用済再生用空気の一部を循環再生用空気として前記再生用空気とともに前記再生ゾーンに通過させ、前記再生用空気又は前記循環再生用空気を再生用加熱手段により加熱するとともに、前記再生用加湿手段により加湿した状態で前記再生ゾーンに通風するようにした請求項1〜3いずれかに記載の吸収式除去・濃縮装置。
【請求項5】
前記再生ゾーンに通風する再生用空気の入口と出口に全熱交換器を設けて全熱回収できるようにした請求項1〜4いずれかに記載の吸収式除去・濃縮装置。
【請求項6】
ハニカムロータ1を少なくとも処理ゾーン2、3と再生ゾーン4とに分割し、処理対象空気を処理用加湿手段7により加湿して処理ゾーン2に通過し、処理ゾーン2を通過した使用済処理対象空気の一部または全量を再び処理ゾーン3に通過させる請求項1に記載の吸収式・除去濃縮装置。
【請求項7】
二酸化炭素の吸収性能を有するハニカムロータと、湿気吸着又は吸収機能を有するハニカムロータと、SOx、NOx等の酸性ガスの吸着又は吸収機能を有するハニカムロータと、アルカリ性ガスの吸着又は吸収機能を有するハニカムロータと、VOC吸着機能を有するハニカムロータのいずれかを有するハニカムロータとを組み合わせた請求項1〜6いずれかに記載の吸収式除去・濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば炭酸カリウム、アミン添着多孔質材、弱塩基性イオン交換樹脂などの炭酸ガス吸収剤を保持したハニカムロータ用いて、処理対象空気に含まれる二酸化炭素を処理対象空気から分離することで、例えばビル等の室内の二酸化炭素を除去する目的や、ビニルハウスや植物工場などに濃縮した高濃度の二酸化炭素を供給する目的など、目的に応じて二酸化炭素を除去・濃縮できる吸収式除去・濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス状の除去対象物質を処理対象空気から濃縮状態で、低温で分離除去できる装置として、例えば特許文献1、2に見られるように吸着材を保持させた通気性の吸着ロータと再生用加熱・加湿手段やパージ用加熱・加湿手段を用いる吸脱着式濃縮装置が知られている。
【0003】
また現在、二酸化炭素の分離回収技術の一つに、アミン水溶液による化学吸収法が知られている。アミン水溶液は、二酸化炭素を吸収したアミン水溶液から二酸化炭素を分離(アミン水溶液を加熱再生)するために莫大なエネルギーを要することから、再生エネルギーの低減が望まれている。その解決策の一つとして、固体吸収剤の開発が進んでいる。固体吸収剤は、再生時に水溶液系で存在する余分な水分の加熱に関するエネルギーを低減することができる。
【0004】
アミン水溶液を用いた二酸化炭素の吸収過程は非特許文献1に見られるように一般的に以下の式で示される。
一級アミン(R−NH
2)
[1] 2R−NH
2 + CO
2 ⇔ R−NH
3+ + R−NH−COO
−
[2a] R−NH
2 + CO
2 + H
2O ⇔ R−NH
3+ + HCO
3−
[2b] R−NH−COO
− + H
2O ⇔ R−NH
2 + HCO
3−
二級アミン(R
1R
2−NH)
[3] 2R
1R
2−NH + CO
2 ⇔ R
1R
2−NH
+ + R
1R
2−N−COO
−
[4a] R
1R
2−NH + CO
2 + H
2O ⇔ R
1R
2−NH
2+ + HCO
3−
[4b] R
1R
2−N−COO
− + H
2O ⇔ R
1R
2−NH + HCO
3−
【0005】
二酸化炭素吸収液が第二番目に示した経路[2a][2b][4a][4b]により二酸化炭素吸収を行えると、 [1]あるいは[3]で示される反応よりも反応熱が小さくなり、脱離再生のエネルギーを少なくできるというメリットがある。即ち、アミン担持固体吸収剤を用いる場合、例えば吸収摂氏15℃(以降、温度は全て「摂氏」とする)、脱離45℃のような低温条件では、[2a][2b][4a][4b]で示されるような反応が起こると考えられる。ただし、これらの反応は水の存在下で進むため、水分(湿分)の共存が必須である。
【0006】
三級アミンはNH結合を持たないため、ここで示した反応は起きず、例えば吸収15℃、脱離45℃といった低温条件においては二酸化炭素の吸収脱離性能を示さない。
【0007】
アミン水溶液には臭いや劣化の問題もあり、これを低減するためにも再生温度を低くすることは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−61389号公報
【特許文献2】特開2012−115773号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】公益財団法人 地球環境産業技術研究機構 平成22年二酸化炭素回収技術高度化事業 成果報告書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2に開示されたものは吸着材の吸着・脱着により、ガス状の除去対象物質を処理対象空気から分離除去し、加熱した低温の再生用空気を加湿状態にして吸着状態にある除去対象物質を水分により吸着材から追い出す形態で置換脱着し、吸着状態にある除去対象物質を再生ゾーンにおいて吸着材から再生用空気へ効率よく脱着させるものである。
【0011】
しかしながら、特許文献1、2に記載のものは、例えば、二酸化炭素の吸着材として一般的なゼオライトを用いて、二酸化炭素を水分との置換脱着により分離しようとすると、ゼオライトの細孔に水分が吸着することになり、ゼオライトの二酸化炭素吸着能力が著しく低下し、結果として装置の物質回収率η(即ち、処理ゾーンにおいて処理対象空気から除去対象物質を吸着により分離除去する効率)が著しく低下してしまうため、加熱・加湿による運転は不可能であった。
【0012】
また、アミンの水溶液を用いるにしても、再生に例えば120℃といった高温が必要で多量のエネルギーを要する。また、高温で再生することで劣化や臭いの問題も生じる。
【0013】
二酸化炭素吸収剤としてゼオライトの代わりにアミン担持固体吸収剤を用いて、再生ゾーンに通風する再生用気体として水蒸気を用いれば、アミン担持固体吸収剤からの二酸化炭素脱着と湿度を与える効果が得られるが、ボイラの設備が必要になり高価でエネルギー消費の多い装置になってしまう。
【0014】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題はアミン担持固体吸収剤のような二酸化炭素の吸収剤を用いて、低温の再生空気を加湿することにより、再生エネルギーを抑えながらも装置の物質回収率ηを高く確保できる吸収式除去・濃縮装置を提供することにある。アミン担持固体吸収剤の場合、低温で再生することにより、前述の劣化や臭いの問題も低減される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以上のような課題を解決するため、二酸化炭素の吸収剤を保持したハニカムロータを有し、このハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンとに分け、処理ゾーンに処理対象空気を通風することで、その処理対象空気に含まれる二酸化炭素をロータ部分の保持吸収材に吸収させて処理対象空気から分離除去し、再生ゾーンでは、再生用空気を通風することで、その保持吸収剤が前記処理ゾーンで吸収した二酸化炭素を、再生用空気で脱離させて、ロータ部分の保持吸収剤を再生する吸収式除去・濃縮装置であって、前記再生ゾーンに通風する再生用加熱空気と処理ゾーンに通風する処理空気の何れか、または両方の相対湿度を高くする湿度調整手段を設けたものである。なお、再生用湿度調整手段は加熱後、加湿することが望ましいが、加湿後に加熱してもよい。
【0016】
再生ゾーンに通風する再生用空気として高湿度空気を用いれば吸収剤からの水分脱離に伴うエネルギーロスを減少させることができるとともに、アミン担持固体吸収剤のような水分の共存が必要な吸収剤が反応しやすくなる。また、再生ゾーンの再生用空気を加湿することによって吸収剤の含水率を維持すれば、低温の再生用空気を用いながら、再生ゾーンにおいて脱離不足の状態が生じることを効果的に回避することができる。一方、処理ゾーンでは吸収剤の含水が保たれるため、二酸化炭素を効率よく吸収することができる。
【0017】
再生ゾーンにおいて外気又は室内と同程度の湿度の空気を加熱して再生すると再生空気は低相対湿度になり、再生エネルギーが水分の脱離に消費されてしまう結果二酸化炭素脱離性能が低下するが、再生空気を加湿して高湿度空気にすることで水分の脱離が抑えられ、二酸化炭素脱離性能が向上する。
【0018】
処理ゾーンにおいて処理対象空気を、加熱式以外の気化式、水噴霧式、超音波式にて加湿すると、処理対象空気の温度を気化冷却効果で下げて二酸化炭素の吸収性能が向上すると共に、処理ゾーンで吸湿した水分は再生ゾーンで脱離されて再生循環系路に湿度を供給する効果が有る。この場合前述した水分の脱離による再生エネルギーの消費が一時的に発生するが、再生循環系の空気が高湿度に保たれるようになると、再生空気による水分の脱離が抑えられ、従って処理ゾーンでの吸湿も少なくなる。ビル等の室内の二酸化炭素を除去する目的に使用する場合、特に冬期〜中間期においては、給気の乾きすぎを防止する効果も有る。
【0019】
再生ゾーンで脱離した水分と熱は、再生循環系路や全熱交換器等を併用することで、再生入口に湿分と温度を供給することができる。
【0020】
再生入口の温度は所要の物質回収効率ηが得られる範囲で極力低くするのが望ましく、再生用空気を加湿すれば再生ゾーン入口を100℃未満にすることができる。加湿手段としては水加熱式、気化式、水噴霧式、超音波式など種々の方式の加湿装置を採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の吸収式除去・濃縮装置は前述の如く構成したもので、処理ゾーンに処理対象空気を通風することで、その処理対象空気に含まれる二酸化炭素をロータ部分の保持吸収材に吸収させて処理対象空気から分離除去し、再生ゾーンでは、再生用空気を通風することで、その保持吸収材が前記処理ゾーンで吸収した二酸化炭素を、再生用空気に脱離させて、ロータ部分の保持吸収材を再生する。また、処理ゾーンに通風する処理対象空気か、加熱再生ゾーンに通風する再生用空気の何れか又は両方に加湿手段を設けることにより、二酸化炭素の除去・濃縮性能の向上が期待できる。
【0022】
本発明の吸収式除去・濃縮装置の処理ゾーンに、室内の還気を通過させると、出口空気の二酸化炭素濃度が低くなり、ビルなどの二酸化炭素濃度が高くなっている室内に供給することで室内の二酸化炭素濃度を低くすることができる。この場合、室内の二酸化炭素濃度を低減させるために導入する外気量を大幅に低減することができるため、通常の換気と比べて省エネルギーとなる。また、本発明の吸収式除去・濃縮装置の再生ゾーンを通過した再生出口空気は二酸化炭素濃度が高くなっているため、ビニルハウスや植物工場などの植物の育成室に導くと植物の成長が早くなるとともに、環境への二酸化炭素の放出を抑制できる。本発明の吸収式除去・濃縮装置にて処理された、再生出口空気と処理出口空気の両方を用いて、室内の二酸化炭素を除去しながら、再生ゾーンの高濃度の二酸化炭素をビニルハウスに供給してもよい。本発明の吸収式除去・濃縮装置で、例えば、処理出口空気でビルを空調し、室内でヒトなどから発生した二酸化炭素をビルの屋上に設けたビニルハウスに供給し、植物の生長を促進させる、といった、二酸化炭素の循環空調も可能となる。
【0023】
さらに揮発性有機化合物(以下VOCと書く)やアンモニアなどの臭気物質の吸着能力を有するハニカムロータと組み合わせることによって、さらに室内空気質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は本発明の吸収式除去・濃縮装置の実施例1におけるフロー図である。
【
図2】
図2は本発明の吸収式除去・濃縮装置の実施例2におけるフロー図である。
【
図3】
図3は本発明の吸収式除去・濃縮装置の実施例3におけるフロー図である。
【
図4】
図4は再生ゾーン出口における二酸化炭素の濃度と再生用空気の絶対湿度との相関を示すグラフである。
【
図5】
図5は再生ゾーン出口における二酸化炭素の濃度と再生用空気のエンタルピとの相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、二酸化炭素吸収機能を持つハニカムロータを有し、ハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンとに分割する。処理対象空気を処理ゾーンに通風して、処理対象空気から二酸化炭素を分離除去し、再生用空気を再生ゾーンに通風して、二酸化炭素を脱離させるという作用を有する。再生ゾーンに通風する再生用加熱空気と処理ゾーンに通風する処理空気の何れか、または両方の相対湿度を高くする湿度調整手段を設ける構成にしてある。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の吸収式除去・分離装置の実施例について
図1に沿って詳細に説明する。1はハニカムロータであり、セラミック繊維紙などの不燃性のシートをコルゲート(波付け)加工しロータ状に巻き付け加工したもので、炭酸カリウム(重炭酸カリウム)、炭酸ナトリウム(重炭酸ナトリウム)などの無機系吸収剤、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどの有機系吸収剤、或いは弱塩基性イオン交換樹脂が担持されている。
ハニカムロータ1は処理ゾーン2と再生ゾーン4に分割されている。処理ゾーン2には室内空気がブロアなど(一般的であるので図示せず)で供給される。
【0027】
処理対象空気を処理ゾーン2に通風して、処理対象空気に含まれる二酸化炭素をロータ部分の吸収剤に吸収させて処理対象空気から分離除去し、二酸化炭素の濃度は低減する。
【0028】
再生ゾーン4では、ヒータ5により加熱した再生用空気を、再生用加湿手段6に通風し、ロータに吸収した二酸化炭素を再生用空気に脱離させ、ゾーン内通過過程にあるロータ部分の保持吸収剤は再生される。
【実施例2】
【0029】
図2に示されるように、ハニカムロータ1は処理ゾーン2と処理ゾーン3と再生ゾーン4に分割されている。処理ゾーン2には室内空気がブロアなど(一般的であるので図示せず)で供給される。
【0030】
処理対象空気を処理用加湿手段7に通過させ、処理ゾーン2に通風して、処理対象空気に含まれる二酸化炭素をロータ部分の吸収剤に吸収させて処理対象空気から分離除去する。そして、その処理出口空気の一部または全てを処理ゾーン3に通して、二酸化炭素はさらに除去され、二酸化炭素の濃度は低減する。
【0031】
再生ゾーン4では再生ゾーン4を通過した使用済再生用空気と外気を混合して、ヒータ5により加熱した再生用空気を、再生用加湿手段6に通風し、吸収した二酸化炭素を再生用空気に脱離させ、ゾーン内通過過程にあるロータ部分の保持吸収剤は再生される。再生用空気の一部は循環させることにより、二酸化炭素の濃度はさらに高められる。
【実施例3】
【0032】
図3に示されるように、実施例2の再生出口空気と外気とをそれぞれ全熱交換器8の別の流路に通すことでエンタルピを回収し、再生エネルギーを低減する。実施例2のみならず他の実施例においても、全熱交換器を組み合わせてエンタルピの高い再生出口空気と再生用外気とを熱交換することで省エネルギー効果を図ることができる。
【0033】
以上は吸収式除去・濃縮装置の構成の説明であり、実施例2を例にとり、その空気条件を入れながら動作を説明する。まず
図4に示す例は、ここで低温再生用空気(55℃)の絶対湿度を4〜30g/kg'にした場合における二酸化炭素の再生ゾーン出口濃度を比較するものである(二酸化炭素濃度:450ppm)。処理ゾーンの処理対象空気の条件は、二酸化炭素濃度1000ppm、温度23℃、絶対湿度12.3g/kg'(相対湿度70%)、面風速は2.0Nm/sである。
【0034】
この例から分かるように、低温(55℃)の再生用空気の絶対湿度を上げる、即ち加湿して水分濃度を高くするほど、再生ゾーン出口空気の二酸化炭素の濃度(即ち再生ゾーンにおいて吸収剤から脱離した二酸化炭素の濃度)を高く確保できており、言い換えれば加湿により水分脱離のエネルギーロスが防止され、吸収状態にある二酸化炭素が効率よく吸収剤から脱離されている。
【0035】
図5に示す例は再生用空気の温度が40℃でも55℃の場合でも、加湿によりエンタルピを等しくすれば、再生ゾーン出口の二酸化炭素濃度はほぼ等しくなることを示すものである。すなわち、加湿によりエンタルピを高めることで、再生用空気の温度が低くても二酸化炭素分離性能を高めることができる。
【0036】
さらに、弱塩基性イオン交換樹脂と弱酸性イオン交換樹脂を混ぜてハニカムロータに担持すると、二酸化炭素の他にSO
x、NO
xなど酸性ガスとアンモニアなどアルカリ性ガスも除去できる。これに加えて活性炭、疎水性ゼオライト、合成吸着剤を用いたロータと組み合わせてもよい。この場合にはハニカムロータは室内の臭気やVOCを吸着除去できる機能も有するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、二酸化炭素の吸収剤を用いて処理ゾーンで処理対象空気に含まれる二酸化炭素を吸収し、40〜80℃に加熱・加湿した再生用空気によって処理ゾーンで吸収した二酸化炭素を脱離するため、再生ゾーンに高温再生用空気を用いる場合に比べて省エネルギーである。
【0038】
本発明の吸収式除去・濃縮装置の処理ゾーンを通過した処理出口空気は、二酸化炭素濃度が低くなっているため、ビルなどの二酸化炭素濃度が高くなっている室内に供給することで室内の二酸化炭素濃度を低くすることができる。この場合、室内の二酸化炭素濃度を低減させるために導入する外気量を大幅に低減することができるため、通常の換気と比べて省エネルギーとなる。また、本発明の吸収式除去・濃縮装置の再生ゾーンを通過した再生出口空気は二酸化炭素濃度が高くなっているため、ビニルハウスや植物工場などの植物の育成室に導くと植物の成長が早くなるとともに、環境への二酸化炭素の放出を抑制できる。再生出口空気と処理出口空気の両方を用いて、室内の二酸化炭素を除去しながら、再生ゾーンの高濃度の二酸化炭素をビニルハウスに供給してもよい。例えば、本発明の吸収式除去・濃縮装置で、室内空気からヒトなどから発生した二酸化炭素を除去して低濃度にした処理出口空気でビルを空調し、二酸化炭素が高濃度になった再生出口空気をビルの屋上等に設けたビニルハウスに供給して植物の生長を促進させるといった、二酸化炭素の循環空調も可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 ハニカムロータ
2 処理ゾーン
3 処理ゾーン
4 再生ゾーン
5 再生用ヒータ
6 再生用加湿手段
7 処理用加湿手段
8 全熱交換器
【要約】
【課題】二酸化炭素を除去あるいは濃縮し、高い回収効率を確保できる吸収式二酸化炭素除去・濃縮装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素吸収剤を保持したハニカムロータ1を有し、ハニカムロータ1を少なくとも処理ゾーン2と再生ゾーン4とに分割し、加熱再生用空気と処理空気の何れかまたは両方に、加湿手段7により加湿してそれぞれのゾーンを通過させることで吸収性能及び濃縮性能を高めることができる。
ハニカムロータ1を少なくとも処理ゾーン2、3と再生ゾーン4とに分割し、処理対象空気を処理用加湿手段7により加湿して処理ゾーン2に通過し、処理ゾーン2を通過した処理空気の一部または全量を再び処理ゾーン3に通過させることでさらに吸収性能及び濃縮性能を高めることができる。
【選択図】
図1