特許第5795448号(P5795448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795448
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】熱伝達組成物および熱伝達方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20150928BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C09K5/04 E
   C09K5/04 F
   F25B1/00 396Z
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-556768(P2014-556768)
(86)(22)【出願日】2013年2月11日
(65)【公表番号】特表2015-508117(P2015-508117A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】US2013025509
(87)【国際公開番号】WO2013122854
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】61/598,056
(32)【優先日】2012年2月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/762,550
(32)【優先日】2013年2月8日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ヤナ・モッタ,サミュエル・エフ
(72)【発明者】
【氏名】スパッツ,マーク・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】フォグル,ロナルド・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ ベセラ,エリザベト デル カーメン
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/059677(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/129920(WO,A1)
【文献】 特表2014−514423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
F25B 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)26重量%のHFC−32;
(b)26重量%のHFC−125;
(c)20〜25重量%のHFO−1234yfおよび2〜7重量%のHFO−1234ze;
(d)21重量%のHFC−134a;
これに関し、重量%は、組成物中の成分(a)〜(d)の合計に基づく、
を含む低温冷凍システム及び/又は中温冷凍システムにおいて使用するための不燃性の熱伝達組成物であって、前記熱伝達組成物が2002年のASTM標準規格E−681に従って測定して不燃性組成物である、熱伝達組成物。
【請求項2】
前記HFO−1234yf及び前記HFO−1234zeの量がそれぞれ20重量%及び重量%である、請求項1に記載の熱伝達組成物。
【請求項3】
前記HFO−1234zeがtrans−HFO−1234zeを含む、請求項1または2に記載の熱伝達組成物。
【請求項4】
前記HFO−1234zeがtrans−HFO−1234zeからなる、請求項1または2に記載の熱伝達組成物。
【請求項5】
前記低温冷凍システム若しくは前記中温冷凍システムのいずれかにおいてHFC−404Aと同様であるかこれより高い効率を有する、又は前記低温冷凍システム若しくは前記中温冷凍システムのいずれかにおいてR−22と同様であるかこれより高い効率を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝達組成物。
【請求項6】
低温冷凍システム及び/又は中温冷凍システムに含有されている現行の熱伝達流体を置き換えるための方法であって、
前記システムから前記現行の熱伝達流体の少なくとも一部を除去し、これに関し、前記現行の熱伝達流体はHFC−404A又はR−22である、そして、
前記現行の熱伝達流体の少なくとも一部を、以下を含む熱伝達組成物:
(a)26重量%のHFC−32;
(b)26重量%のHFC−125;
(c)20〜25重量%のHFO−1234yfおよび2〜7重量%のHFO−1234ze;
(d)21重量%のHFC−134a;
これに関し、重量パーセントは、組成物中の成分(a)〜(d)の合計に基づく;
を前記システムに導入することにより置き換える、
ことを含み、
前記熱伝達組成物が2002年のASTM標準規格E−681に従って測定して不燃性組成物である、
前記方法。
【請求項7】
前記HFO−1234yf及び前記HFO−1234zeの量がそれぞれ20重量%及び7重量%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
低温冷凍システム又は中温冷凍システムであって、流体連通状態にある圧縮機、凝縮器および蒸発器と、前記システム中の熱伝達組成物を含み、前記熱伝達組成物が、以下:
(a)26重量%のHFC−32;
(b)26重量%のHFC−125;
(c)20〜25重量%のHFO−1234yfおよび2〜7重量%のHFO−1234ze;
(d)21重量%のHFC−134a;
これに関し、重量パーセントは、組成物中の成分(a)〜(d)の合計に基づく;
を含み、
前記熱伝達組成物が2002年のASTM標準規格E−681に従って測定して不燃性組成物であり、
前記凝縮器が、35℃〜45℃の操作温度を有する、前記システム。
【請求項9】
前記HFO−1234yf及び前記HFO−1234zeの量がそれぞれ20重量%及び7重量%である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記熱伝達組成物がHFC−404A又はR−22と同様であるかこれより高い効率を有する、請求項8又は9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年2月13日提出の米国仮特許出願第61/598056号の優先権の利益を主張するものであり、該仮特許出願の内容を本明細書中で参考として援用する。
【0002】
本出願はまた、2009年5月8日提出の米国仮特許出願第61/176773号(期限切れ);2009年9月9日提出の第61/240786号(期限切れ)、2009年10月1日提出の第61/247816号(期限切れ)、2010年4月30日提出の第61/329955号(期限切れ)の利益を主張する2010年5月7日提出の国際出願第PCT/US2010/034120号の一部継続出願である、2011年5月2日提出の米国出願第13/099218号(現在係属中)の一部継続出願として関連し、その優先権の利益を主張するものである。国際出願第PCT/US2010/034120号は、2009年7月29日提出の米国出願第12/511954号(現在係属中)の継続出願でもある。上記確認された出願のそれぞれを、全体として本明細書中で参考として援用する。
【0003】
本出願は、2010年7月14日提出の米国仮特許出願第61/364373号(期限切れ)の優先権の利益を主張する2011年7月14日提出の米国出願第13/182591号(現在係属中)の一部継続出願として関連し、その優先権の利益を主張するものである。これらの内容を本明細書中で参考として援用する。
【0004】
本発明は、冷凍用途において実用性を有し、中温および低温での冷凍用途において特段の利益を有する組成物、方法およびシステムに関し、特定の観点において、加熱および冷却用途向け冷媒HFC−404Aの代替品のための冷媒組成物、ならびに中温および低温冷媒システム、例えばHFC−404Aと一緒に使用するために設計されたシステムの改良に関する。
【背景技術】
【0005】
冷媒液を使用する機械的冷凍システムおよびそれに関連する熱伝達機器、例えばヒートポンプおよび空調装置などは、工業的用途、商業的用途および家庭用用途向けとして、当分野でよく知られている。フルオロカーボンに基づく流体は、空調システム、ヒートポンプシステムおよび冷凍システムなどのシステムにおける作動流体としての用途を含め、多くの住宅用途、商業的用途および工業的用途において幅広く使用されている。これらの用途で従来用いられてきた組成物のいくつかの使用と関連して比較的高い地球温暖化係数など特定の環境問題が疑われるため、オゾン層破壊および地球温暖化係数が低いかさらにはゼロである流体、例えばヒドロフルオロカーボン(“HFC”)を用いることが、益々望まれるようになっている。例えば、いくつかの政府は、地球環境を保護するための京都議定書に署名し、CO排出(地球温暖化)の削減を宣言している。したがって、高度に地球温暖化をもたらす特定のHFCを置き換えるための、低燃焼性または不燃性で非毒性の代用品が必要とされている。
【0006】
冷凍システムの1つの重要なタイプは、“低温冷凍システム”として知られる。そのようなシステムは、消費者に届く食品を新鮮で食用に適した状態におくことを確実にする上で極めて重要な役割を果たすという点で、食品製造業、食品流通業および食品小売業にとってとりわけ重要である。このような低温冷凍システムにおいて、一般的に用いられている冷媒液はHFC−404A(HFC−125:HFC−143a:HFC−134aの約44:52:4の重量比での組み合わせを、当分野ではHFC−404AまたはR−404Aとよぶ)である。R−404Aは、3922という高い推定地球温暖化係数(GWP)を有する。
【0007】
したがって、新規のフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン化合物、ならびにこれらの用途および他の用途において従来用いられている組成物の魅力的な代用品である新規組成物が、益々必要とされている。例えば、塩素含有冷媒を、オゾン層を激減させない非塩素含有冷媒化合物、例えばヒドロフルオロカーボン(HFC)で置き換えることにより、塩素含有冷凍システムを改良することが望ましくなってきている。産業界全般、とりわけ熱伝達産業では、CFCおよびHCFCの代用品をもたらし、そして環境面でより安全なCFCおよびHCFCの代替物と考えられるような、フルオロカーボンに基づく新規混合物が絶えず探求されている。しかしながら、一般的に、少なくとも熱伝達流体に関し、任意の考えうる代替物はまた、もっとも広く用いられている流体の多くでみられる特性、とりわけ、優れた熱伝達性、化学的安定性、低毒性もしくは非毒性、不燃性、および/または潤滑剤との相溶性などを持っていなければならないということが、重要であると考えられる。
【0008】
使用効率に関し、冷媒の熱力学的性能またはエネルギー効率の低下は、電気エネルギーに対する需要増大に起因する化石燃料の使用量増加によって二次的な環境影響を有する可能性があるという点に、留意することが重要である。
【0009】
さらに、一般に、CFC冷媒代替物は、現在CFC冷媒と一緒に用いられている従来の蒸気圧縮技術に大きな工学的変更を加えなくても有効であることが望ましいと考えられる。
【0010】
燃焼性は、多くの用途に関し重要なもう1つの特性である。すなわち、不燃性の組成物を用いることが、多くの用途、例えば、とりわけ熱伝達用途において、重要または必須であると考えられる。したがって、そのような組成物では、不燃性の化合物を用いることが有益であることが多い。本明細書で用いる“不燃性”という用語は、本明細書中で参考として援用する2002年のASTM標準規格E−681に従って決定して不燃性であると決定される化合物または組成物をさす。残念なことに、通常なら冷媒組成物に用いることが望ましいはずの多くのHFCは、本明細書で用いる用語としての不燃性ではない。例えば、フルオロアルカンであるジフルオロエタン(HFC−152a)とフルオロアルケンである1,1,1−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)はそれぞれ燃焼性であり、したがって多くの用途において使用するのには実用的でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、出願人らは、加熱および冷却システムおよび方法、とりわけ蒸気圧縮加熱および冷却システム、さらにより詳細には低温冷媒システム、例えば、HFC−404Aと一緒に用いられるシステム、および/またはHFC−404Aと一緒に用いるように設計されているシステムにおいて、非常に有利である組成物、とりわけ熱伝達組成物が、必要とされているとの理解に達した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
出願人らは、上記必要性および他の必要性を、多成分混合物を含むまたは利用する組成物、方法およびシステムにより満たすことができることを見いだした。これに関し、該多成分混合物は、特定の態様において以下を含む:(a)重量に基づき約10%〜約35%のHFC−32;(b)重量に基づき約10%〜約35%のHFC−125;(c)重量に基づき0%超〜約30%のHFO−1234ze;(d)重量に基づき約10%〜約35%のHFC−134a、(e)所望によるが、好ましくは、重量に基づき約0%超〜約30%のHFO−1234yf、ならびに、所望により(f)最大約10重量%のCFIおよび/または最大約5重量%のHFCO−1233ze、重量に基づき約0%〜約30%のHFO−1234yf;これに関し、重量パーセントは、組成物中の成分(a)〜(f)の合計に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特定の好ましい態様では、HFC−32を、重量に基づき約15%〜約30%の量で提供し、他の好ましい態様では、重量に基づき約20%〜約30%の量で提供する。これに関し、重量パーセントは、組成物中の成分(a)〜(f)の合計に基づく。
【0014】
特定の好ましい態様では、HFC−125を、重量に基づき約10%〜約30%の量で提供し、他の好ましい態様では、重量に基づき約20%〜約30%の量で提供する。これに関し、重量パーセントは、組成物中の成分(a)〜(f)の合計に基づく。
【0015】
特定の好ましい態様では、HFO−1234yfを、重量に基づき約0%以上〜約25%、または約0%以上〜約22%のHFO−1234yfの量で提供する。これに関し、重量パーセントは、組成物中の成分(a)〜(f)の合計に基づく。同様または代替的態様では、HFO−1234zeを、重量に基づき約1%〜約30%のHFO−1234zeまたは重量に基づき約5%〜約30%のHFO−1234zeの量で提供する。これに関し、重量パーセントは、組成物中の成分(a)〜(f)の合計に基づく。
【0016】
特定の好ましい態様では、HFC−134aを重量に基づき約15%〜約35%の量で提供し、他の好ましい態様では、重量に基づき約15%〜約30%の量で提供する。これに関し、重量パーセントは、組成物中の成分(a)〜(f)の合計に基づく。
【0017】
他の態様において、該組成物は、約0.9:1.2〜約1.2:0.9のHFC−32:HFC−125の重量比を有する。他のまたは代替的態様において、該組成物は、約5:1〜約0.1:1のHFO−1234ze:HFO−1234yfの重量比または約3:1〜約0.2:1のHFO−1234ze:HFO−1234yfの重量比を有する。さらに他のまたは代替的態様において、該組成物は、約5:7〜約1:1または約4:6の、134a対HFO−1234zeとHFO−1234yfの組み合わせの重量比を有する。
【0018】
本発明は、本発明の組成物を利用する方法およびシステム、例えば、熱伝達のための、および現行の熱伝達システムを改良するための、方法およびシステムも提供する。本発明の特定の好ましい方法観点は、低温冷凍システムなどにおける比較的低温での冷却の提供方法に関する。本発明の他の好ましい方法観点は、R−404A冷媒を含有するように設計されている、および/またはR−404A冷媒を含有している現行の冷凍システム、好ましくは低温冷凍システムの改良方法であって、本発明の組成物を、前記現行の冷凍システムを実質的に工学的に変更することなく、該システム中に導入することを含む、前記方法を提供する。
【0019】
本明細書では、HFO−1234zeという用語を、cis体であるかtrans体であるかに関わらず、1,1,1,3−テトラフルオロプロペンを総称的にさすために用いる。本明細書では、“cisHFO−1234ze”および“transHFO−1234ze”という用語を、それぞれ1,1,1,3−テトラフルオロプロペンのcis体およびtrans体を表わすために用いる。したがって“HFO−1234ze”という用語は、その範囲内に、cisHFO−1234ze、transHFO−1234ze、ならびにこれらのすべての組み合わせおよび混合物を包含する。
【0020】
低温冷凍システムは、食品製造業、食品流通業および食品小売業など多くの用途において重要である。そのようなシステムは、消費者に届く食品を新鮮で食用に適した状態におくことを確実にする上で極めて重要な役割を果たす。そのような低温冷凍システムにおいて、一般的に用いられている冷媒液の1つはHFC−404Aであり、これは3922という高い推定地球温暖化係数(GWP)を有する。出願人らは、より低いGWP値を有すると同時に、前記システムにおける冷却能力および/または冷却効率がHFC−404Aにほぼ匹敵する実質的に不燃性で非毒性の流体を提供する、前記用途における冷媒、詳細には好ましくはHFC−404Aの代用品および/または代替品の必要性が、本発明の組成物により例外的かつ予想外に満たされることを見いだした。
【0021】
本発明は、中温冷凍組成物、システムおよび方法も包含することができる。特定の好ましい態様に従って、本方法およびシステムは、約−15℃より高温〜約5℃の蒸発器温度を包含する。そのような中温システムおよび方法の一例は、家庭用冷蔵庫の生鮮食品室における冷却の提供を包含する。
熱伝達組成物
本発明の組成物は、一般に、熱伝達用途、すなわち、加熱および/または冷却媒体としての使用に適合することができるが、上記のように、中温および低温冷凍システム、好ましくは、従来HFC−404Aを用いてきた低温システムおよび/または従来R−22を用いてきたシステムでの使用に、とりわけ良好に適合する。
【0022】
出願人らは、本明細書に記載する広い範囲および狭い範囲の範囲内で本発明の成分を使用することが、現行の組成物により示されている特性の有利であるが達成困難な組み合わせを、とりわけ、好ましいシステムおよび方法において達成するのに重要であり、これらの同一成分を、確認されている範囲の実質的に範囲外で使用すると、本発明の組成物、システム、または方法の重要な特性の1以上が悪影響を受ける可能性があるということを、見いだした。
【0023】
特定の好ましい態様において、本発明の組成物は、(a)ジフルオロメタン(HFC−32);(b)ペンタフルオロエタン(HFC−125);(c)HFO−1234ze、HFO−1234yf、またはそれらの組み合わせ;(d)1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a);ならびに所望により(e)CFIおよび/または1233zeを含むか、実質的にこれらからなるか、これらからなる。
【0024】
HFC−32は、それぞれ成分(a)〜(e)の全重量に基づき、組成物の重量に基づき0重量%超〜約50重量%の量、特定の好ましい観点において組成物の重量に基づき約10重量%〜約40重量%の量、他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約10重量%〜約35重量%の量、さらに他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約15重量%〜約30重量%の量、さらに他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約20重量%〜約30重量%の量で、提供することができる。
【0025】
HFC−125は、それぞれ成分(a)〜(e)の全重量に基づき、組成物の重量に基づき0重量%超〜約50重量%の量、特定の好ましい観点において組成物の重量に基づき約10重量%〜約40重量%の量、他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約10重量%〜約35重量%の量、さらに他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約10重量%〜約30重量%の量、さらに他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約20重量%〜約30重量%の量で、提供することができる。
【0026】
HFO−1234zeは、それぞれ成分(a)〜(e)の全重量に基づき、組成物の重量に基づき0重量%超〜約30重量%の量、特定の好ましい観点において組成物の重量に基づき約1重量%〜約30重量%の量、他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約5重量%〜約30重量%の量で、提供することができる。
【0027】
HFO−1234yfは、前記組成物中に存在する場合、それぞれ成分(a)〜(e)の全重量に基づき、組成物の重量に基づき約0重量%以上〜約30重量%の量、特定の好ましい観点において組成物の重量に基づき約0重量%以上〜約25重量%の量、他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約0重量%以上〜約30重量%の量で、提供することができる。
【0028】
HFC−134aは、それぞれ成分(a)〜(e)の全重量に基づき、組成物の重量に基づき0重量%超〜約50重量%の量、特定の好ましい観点において組成物の重量に基づき約5重量%〜約40重量%の量、他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約10重量%〜約35重量%の量、さらに他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約15重量%〜約35重量%の量、さらに他の好ましい観点において組成物の重量に基づき約15重量%〜約30重量%の量で、提供することができる。
【0029】
特性の非常に好ましい組み合わせは、約0.9:1.2〜約1.2:0.9のHFC−32:HFC−125の重量比を有する組成物で達成され、特定の態様では約1:1の比が好ましい。出願人らは、特性の非常に好ましい組み合わせが、約5:1〜約0.1:1または約0.2:1〜3:1のHFO−1234ze:HFO−1234yfの重量比を有する組成物でも達成されることを見いだした。
【0030】
便宜上、本明細書ではHFO−1234zeとHFO−1234yfの組み合わせを“テトラフルオロプロペン成分”または“TFC”とよぶ。特定の態様において、特性の非常に好ましい組み合わせは、約5:7〜約1:1のHFC−134a:TFCの重量比を含む組成物で達成することができ、特定の態様では約4:6の比が好ましい。
【0031】
HFO−1234zeのいずれの異性体を用いてもよいと考えられるが、出願人らは、特定の態様において、HFO−1234zeが、transHFO−1234zeを含み、好ましくはtransHFO−1234zeを大きな割合で含み、特定の態様では実質的にtransHFO−1234zeからなることが好ましいことを見いだした。
【0032】
上記のように、出願人らは、本発明の組成物が、達成困難な特性の組み合わせ、とりわけ低いGWPを含む組み合わせを、達成することができることを見いだした。非限定的な例として、以下の表Aは、GWPが3922であるHFC−404AのGWPと比較して、本発明の特定の組成物により示されるGWPが実質的に改善していることを例示している。
【0033】
【表1】
【0034】
本発明の組成物は、組成物の特定の機能性を向上させるために、または組成物に特定の機能性を提供するために、あるいは、場合によっては、組成物の費用を削減するために、他の成分を包含することができる。例えば、本発明に従った冷媒組成物、特に、蒸気圧縮システムに用いられるものは、潤滑剤を、一般に組成物の約30〜約50重量パーセントの量で、場合によっては約50パーセントを超える可能性がある量で、他の場合では約5パーセントという少ない量で、包含する。本組成物はさらに、潤滑剤の相溶性および/または溶解性を補助するために、プロパンなどの相溶化剤を包含することもできる。そのような相溶化剤、例えば、プロパン、ブタン、およびペンタンは、組成物の約0.5〜約5重量パーセントの量で存在することが好ましい。開示内容を参考として援用する米国特許公報第6516837号により開示されているように、界面活性剤と可溶化剤の組み合わせを本組成物に加えて、油溶性を補助することもできる。一般に用いられている冷凍潤滑剤、例えば、ヒドロフルオロカーボン(HFC)冷媒と一緒に冷凍機械装置で用いられているポリオールエステル(POE)およびポリアルキレングリコール(PAG)、PAG油、シリコーン油、鉱油、アルキルベンゼン(AB)、およびポリ(アルファ−オレフィン)(PAO)を、本発明の冷媒組成物と一緒に用いることができる。市販の鉱油としては、WitcoからのWitco LP 250(登録商標)、Shrieve ChemicalからのZerol 300(登録商標)、WitcoからのSunisco 3GS、およびCalumetからのCalumet R015が挙げられる。市販のアルキルベンゼン潤滑剤としては、Zerol 150(登録商標)が挙げられる。市販のエステルとしては、Emery 2917(登録商標)およびHatcol 2370(登録商標)として入手可能なネオペンチルグリコールジペラルゴネートが挙げられる。他の有用なエステルとしては、リン酸エステル、二塩基酸エステル、およびフルオロエステルが挙げられる。場合によっては、炭化水素に基づく油は、ヨードカーボンで構成される冷媒に対して十分な溶解性を有し、ヨードカーボンと炭化水素油の組み合わせは、他のタイプの潤滑剤より安定である可能性がある。したがって、そのような組み合わせが有利である可能性がある。好ましい潤滑剤としては、ポリアルキレングリコールおよびエステルが挙げられる。ポリアルキレングリコールは、可動式の空調装置など特定の用途で現在用いられているので、特定の態様では非常に好ましい。言うまでもなく、異なるタイプの潤滑剤のさまざまな混合物を用いてもよい。
【0035】
当業者なら、本明細書に含まれる教示を考慮して、本発明の新規および基本的特徴から逸脱することなく、本明細書に記載していない他の添加剤を包含させることもできる。
熱伝達方法および熱伝達システム
したがって、本方法、システムおよび組成物は、多種多様な熱伝達システム全般、とりわけ、空調システム(固定式および可動式の空調システムを含む)、冷凍システム、ヒートポンプシステムなどのような冷凍システムと接続して用いるために、適合させることができる。特定の好ましい態様において、本発明の組成物は、もともと例えばR−404などのHFC冷媒と一緒に用いるために設計された冷凍システムに用いられる。本発明の好ましい組成物は、R−404Aの望ましい特徴の多くを示す傾向があるが、R−404Aより実質的に低いGWPを有すると同時に、R−404Aと実質的に同様であるかこれに実質的に匹敵する、好ましくは、R−404Aと同程度またはこれより高い、能力および/または効率を有する。とりわけ、出願人らは、本組成物の特定の好ましい態様が、比較的低い地球温暖化係数(“GWP”)、好ましくは約2500未満、より好ましくは約2400未満、さらにより好ましくは約2300以下の地球温暖化係数を示す傾向があることを認識した。特定の態様において、本組成物は、約1500以下、さらにより好ましくは約1000未満のGWPを有する。
【0036】
特定の他の好ましい態様において、本組成物は、R−404Aを含有していた冷凍システム、および/または、もともとR−404Aと一緒に用いるために設計された冷凍システムに用いられる。本発明の好ましい冷凍組成物は、従来R−404Aと一緒に用いられてきた潤滑剤、例えば、鉱油、ポリアルキルベンゼン、ポリアルキレングリコール油などを含有する冷凍システムで用いることができ、または、これまでHFC冷媒と一緒に用いられてきた他の潤滑剤と一緒に用いることができる。本明細書で用いる“冷凍システム”という用語は、一般に、冷却をもたらすために冷媒が採用される任意のシステムもしくは装置、またはそのようなシステムもしくは装置の任意の部品もしくは部分をさす。そのような冷凍システムとしては、例えば、空調装置、電気冷蔵庫、冷却装置(遠心圧縮機を用いる冷却装置を含む)などが挙げられる。
【0037】
上記のように、本発明は、低温冷凍システムとして知られるシステムに関連して特に優れた利点を達成する。本明細書で用いる“低温冷凍システム”という用語は、1以上の圧縮機および約35℃〜約45℃の凝縮器温度を利用する蒸気圧縮冷凍システムをさす。そのようなシステムの好ましい態様において、該システムは、約−40℃〜約−15℃未満、より好ましくは約−35℃〜約−25℃の蒸発器温度を有し、好ましい蒸発器温度は約−32℃である。さらに、そのようなシステムの好ましい態様において、該システムは、蒸発器出口において約0℃〜約10℃の過熱度(degree of superheat)を有し、蒸発器出口における過熱度は好ましくは約4℃〜約6℃である。さらに、そのようなシステムの好ましい態様において、該システムは、吸引ラインにおいて約15℃〜約25℃の過熱度を有し、吸引ラインにおける過熱度は好ましくは約20℃〜約25℃である。
【0038】
非限定的な一態様において、本発明の熱伝達組成物は、実質的にシステムを改変しなければならないか否かに関わらず、そして現行の冷媒を完全に排出させなければならないか否かに関わらず、現行の冷凍システムを改良するために用いることができる。一観点では、5%超、10%、25%、50%、75%などであることができる冷媒装入量の一部を、システムから排出させる。その後、除去した冷媒装入量を、本明細書で論じる不燃性で低GWPの冷媒の1つまたは組み合わせで置き換える。
【0039】
他の態様では、現行のシステムで部分的な排出を行うのではなく、本発明の冷媒を用いて、冷媒が部分的に漏出した後に現行のシステムに“つぎ足す”ことができる。例えば、多くの商業的システムは比較的高い冷媒漏出率を有し、これにより、システムの寿命の全期間にわたり冷媒を日常的に添加することが必要である。本発明の一方法では、冷媒システムに、最大限または設計装入量より少ないシステム中の冷媒を提供する。この状態は、好ましい態様において、システムからの冷媒の漏出の結果もたらされ、本発明の冷媒組成物を、好ましくは標準的な再装入メンテナンス中に、システムに再装入するために用いる。例えば、システムからR404Aが漏出したら、本明細書中で確認されたブレンドの1つまたは組み合わせを再装入する。本方法により、このようなことを行う一方、システムの能力を実質的に維持し、エネルギー効率を維持または改善し(より少ない電力消費、これは、使用者の操業コストの低減と同等である)、システムに含有される冷媒のGWPを低下させる(環境影響を低下させる)ことが可能になる。好ましい態様において、そのような方法は、冷媒の漏出量に関わらず、好ましくはブレンドを考慮することなく、実施することができ、システムの日常的メンテナンス計画から逸脱することなく、現行のシステムの再装入に付随する環境影響を低減する単純な(そして低コストの)方法を提供する。
【0040】
上記内容に従って、出願人らは、意図的ではない汚染物の形であるか、意図的に加えた構成成分としてであるか、システムの置き換えまたは再装入後に残存する冷媒としてであるかに関わらず、本発明のブレンドと組み合わせて用いられる場合、R404Aは、比較的大量であっても、本発明の冷媒および/または冷凍システムの性能に対し実質的に悪影響を有さないことを認識した。反対に、出願人らは、R404A中の比較的大量の本発明のブレンドが、意図的ではない汚染物の形であるか、意図的に加えた構成成分としてであるかに関わらず、冷媒の性能に実質的に悪影響を有さないことも認識するようになった。したがって、他の場合なら、そのような汚染物が存在すると汚染物を含む冷媒の使用は不適格になるはずであるが、出願人らは、そのような冷媒混合物の使用が目的用途に概して許容されうることを認識するようになった。したがって、本発明の方法および組成物の1つの利点は、実現可能性の視点から、R404Aが低GWP冷媒に完全に存在しないことを確実にしようとする大きな誘因が一般的に存在せず、逆の場合も同様であるということである。そのような環境では、本発明により提供される方法なしでは、多くの現行の自動パージシステムの操作において実質的で難しい問題が生じる可能性が高くなる。しかしながら、本方法は、これらの問題を克服し、システムに信頼性、安全性および効率性を補足するものである。
【実施例】
【0041】
以下の実施例を、本発明の範囲を制限することなく、本発明を例示するために提供する。
実施例1:性能パラメーター−低温システム
性能係数(COP)は、一般的に受け入れられている冷媒性能の尺度であり、特に、冷媒の蒸発または凝縮が関与する特定の加熱または冷却サイクルにおける冷媒の相対的熱力学的効率を表すのに有用である。冷凍工学において、この用語は、蒸気を圧縮する際に圧縮機により加えられるエネルギーに対する有用な冷凍の比を表す。冷媒の能力は、冷媒がもたらす冷却または加熱の量を表し、冷媒の所定の体積流量に対する熱量をポンプ移送するための圧縮機の能力の何らかの尺度を提供する。言い換えれば、ある特定の圧縮機が与えられた場合、冷媒の能力が大きいほど、より多くの冷却力または加熱力がもたらされる。特定の操作条件において冷媒のCOPを見積もるための1つの手段は、標準的な冷凍サイクル分析技術を用いての冷媒の熱力学的特性に由来する(例えば、R.C.Downing,FLUOROCARBON REFRIGERANTS HANDBOOK,第3章,Prentice−Hall,1988年参照)。
【0042】
低温冷凍システムを提供する。この実施例に例示するようなシステムの場合、凝縮器温度を40.55℃に設定する。これは、概して約35℃の戸外温度に相当する。膨張機器入口における過冷却度(degree of subcooling)は5.55℃に設定する。蒸発温度は−31.6℃に設定する。これは、約−26℃のボックス温度に相当する。蒸発器出口における過熱度は5.55℃に設定する。吸引ラインにおける過熱度は13.88℃に設定し、圧縮機効率は65%に設定する。接続ライン(吸引ラインおよび液体ライン)における圧力低下および熱伝達はごくわずかであると考え、圧縮機シェルを介した熱漏洩は無視する。いくつかの操作パラメーターを、本発明に従った上記表A中の確認された組成物A1〜A5について決定し、これらの操作パラメーターを、100%のCOP値、100%の能力値、および97.6℃の排出温度を有するHFC−404Aに基づき以下の表1に報告する。
【0043】
【表2】
【0044】
上記表1からわかるように、出願人らは、本発明の組成物が、R−404Aに関するパラメーターに近い、詳細には、前記組成物を低温冷凍システムにおいてR−404Aのドロップイン代替品(drop-in replacement)として用いることおよび/または前記現行のシステムでシステムを少しだけ改変して用いることが可能になるぐらい十分近い、重要な冷凍システム性能パラメーターの多くを、即座に達成することができることを見いだした。例えば、組成物A1〜A5は、この低温冷凍システムにおいて、R404Aの能力の約8%以内、さらにより好ましくは約5%以内の能力を示す。これらのブレンドの効率(COP)はすべてR404Aを10%程度上回り、これは非常に望ましい。特に組成物A1〜A5の改善されたGWPを考慮すると、本発明のこれらの組成物は、R−404Aをもともと含有している、および/または含有するように設計されている低温冷凍システムのドロップイン代替品として用いるための優れた候補材料である。
【0045】
多くの現行の低温冷凍システムは、R−404A用またはR−404Aと同様の特性を有する他の冷媒用に設計されているので、当業者なら、低GWPおよび優れた効率を有し、システムに比較的少ない改変を加えてR−404Aまたは同様の冷媒の代替品として用いることができる冷媒の実質的な利点を、理解するであろう。さらに、当業者なら、本組成物が、新規または新たに設計される冷凍システム、例えば、好ましくは低温冷凍システムでの使用に実質的な利点を提供することができることを、理解するであろう。
【0046】
実施例2:改良パラメーター−低温システム
特定の態様において、本発明は、好ましくはシステムを実質的に改変することなく、さらにより好ましくは、圧縮機、凝縮器、蒸発器および膨張弁など主要なシステム構成部品を変更することなく、システムから現行の冷媒の少なくとも一部を除去し、除去された冷媒の少なくとも一部を本発明の組成物で置き換えることを含む、改良方法を提供すると考えられる。低温冷凍システム、例えば、詳細にはR404A冷媒を含有しているか含有するように設計されている低温冷凍システムの特定の特徴に起因して、特定の態様では、前記システムが、ドロップイン冷媒を用いて信頼性のあるシステム操作パラメーターを示すことができることが重要である。そのような操作パラメーターとしては以下が挙げられる:
・R404Aを用いるシステムの高側圧の約105%以内、さらにより好ましくは約103%以内である高側圧。このパラメーターにより現行の圧力構成部品の使用が可能になるので、このパラメーターは前記態様において重要である。
・好ましくは約130℃未満、さらにより好ましくは約125℃未満である排出温度。このような特徴の利点は、圧縮機構成部品を保護するように設計されていることが好ましいシステムの熱的保護の観点を作動させることなく、現行の設備の使用が可能になる点である。このパラメーターは、排出温度を低下させるための液体注入など高価な制御装置の使用が回避されるという点で有利である。
・システムが低い蒸発温度において大気圧未満にならない場合、より低い吸引圧が許容可能である。この正圧は、システムが常に正圧を有することを確実にして、漏出の場合に湿潤空気で汚染されるのを回避するために必要である。この要件を評価するために、当該流体の“標準沸点”(NBT:大気圧における沸点)とよばれる特性が採用される。このNBTは、置き換えられる流体の1つ(R404A)にできるだけ近く、少なくとも典型的な商業的システムで見いだされる最低蒸発温度(例:−40℃)より低い温度であるべきである。
【0047】
上記および他の操作パラメーターを、本発明に従った上記表A中の確認された組成物A1〜A5について決定し、これらの操作パラメーターを以下の表2に報告する:
【0048】
【表3】
【0049】
特定の好ましい態様において、置き換え段階は、システムの実質的な再設計または改変を必要とせず、本発明の冷媒を収容するために設備の主要アイテムを置き換える必要がないという意味で、ドロップイン的置き換えである。これは組成物A1〜A5に関する場合であり、これらの組成物は一般に、主要構成部品を変更することなく、ほとんどの改良手順に用いることができる。組成物A1〜A5のすべてにおいて、排出圧および排出温度は限度未満であり、標準沸点はR404Aと同様である。したがって、該組成物は、ほとんどの現行の冷凍システムで用いることができる。
【0050】
実施例3:性能パラメーター
中温冷凍システムを提供する。この実施例に例示するようなシステムの場合、凝縮器温度を40.55℃に設定する。これは、概して約35℃の戸外温度に相当する。膨張機器入口における過冷却度は5.55℃に設定する。蒸発温度は−3.88℃に設定する。これは、約1.66℃のボックス温度に相当する。蒸発器出口における過熱度は5.55℃に設定する。吸引ラインにおける過熱度は13.88℃に設定し、圧縮機効率は65%に設定する。接続ライン(吸引ラインおよび液体ライン)における圧力低下および熱伝達はごくわずかであると考え、圧縮機シェルを介した熱漏洩は無視する。いくつかの操作パラメーターを、本発明に従った上記表A中の確認された組成物A1〜A5について決定し、これらの操作パラメーターを、100%のCOP値、100%の能力値、および76℃の排出温度を有するHFC−404Aに基づき以下の表3に報告する。
【0051】
【表4】
【0052】
上記表3からわかるように、出願人らは、本発明の組成物が、R−404Aに関するパラメーターに近い、詳細には、前記組成物を中温冷凍システムにおいてR−404Aのドロップイン代替品として用いることおよび/または前記現行のシステムでシステムを少しだけ改変して用いることが可能になるぐらい十分近い、重要な冷凍システム性能パラメーターの多くを、即座に達成することができることを見いだした。例えば、組成物A1〜A5は、この中温冷凍システムにおいて、R404Aの能力の約8%以内、さらにより好ましくは約5%以内の能力を示す。これらのブレンドの効率(COP)はすべてR404Aを7%程度上回り、これは非常に望ましい。特に組成物A1〜A5の改善されたGWPを考慮すると、本発明のこれらの組成物は、R−404Aをもともと含有している、および/または含有するように設計されている中温冷凍システムのドロップイン代替品として用いるための優れた候補材料である。
【0053】
多くの現行の中温冷凍システムは、R−404A用またはR−404Aと同様の特性を有する他の冷媒用に設計されているので、当業者なら、低GWPおよび優れた効率を有し、システムに比較的少ない改変を加えてR−404Aまたは同様の冷媒の代替品として用いることができる冷媒の実質的な利点を、理解するであろう。さらに、当業者なら、本組成物が、新規または新たに設計される冷凍システム、例えば、好ましくは中温冷凍システムでの使用に実質的な利点を提供することができることを、理解するであろう。
【0054】
実施例4:改良パラメーター
特定の態様において、本発明は、好ましくはシステムを実質的に改変することなく、さらにより好ましくは、圧縮機、凝縮器、蒸発器および膨張弁など主要なシステム構成部品を変更することなく、システムから現行の冷媒の少なくとも一部を除去し、除去された冷媒の少なくとも一部を本発明の組成物で置き換えることを含む、改良方法を提供すると考えられる。中温冷凍システム、例えば、詳細にはR404A冷媒を含有しているか含有するように設計されている中温冷凍システムの特定の特徴に起因して、特定の態様では、前記システムが、ドロップイン冷媒を用いて信頼性のあるシステム操作パラメーターを示すことができることが重要である。そのような操作パラメーターとしては以下が挙げられる:
・R404Aを用いるシステムの高側圧の約105%以内、さらにより好ましくは約103%以内である高側圧。このパラメーターにより現行の圧力構成部品の使用が可能になるので、このパラメーターは前記態様において重要である。
・好ましくは約130℃未満、さらにより好ましくは約125℃未満である排出温度。このような特徴の利点は、圧縮機構成部品を保護するように設計されていることが好ましいシステムの熱的保護の観点を作動させることなく、現行の設備の使用が可能になる点である。このパラメーターは、排出温度を低下させるための液体注入など高価な制御装置の使用が回避されるという点で有利である。
・システムが低い蒸発温度において大気圧未満にならない場合、より低い吸引圧が許容可能である。この正圧は、システムが常に正圧を有することを確実にして、漏出の場合に湿潤空気で汚染されるのを回避するために必要である。この要件を評価するために、当該流体の“標準沸点”(NBT:大気圧における沸点)とよばれる特性が採用される。このNBTは、置き換えられる流体の1つ(R404A)にできるだけ近く、少なくとも典型的な商業的システムで見いだされる最低蒸発温度(例:−40℃)より低い温度であるべきである。
【0055】
上記および他の操作パラメーターを、本発明に従った上記表A中の確認された組成物A1〜A5について決定し、これらの操作パラメーターを以下の表4に報告する:
【0056】
【表5】
【0057】
特定の好ましい態様において、置き換え段階は、システムの実質的な再設計または改変を必要とせず、本発明の冷媒を収容するために設備の主要アイテムを置き換える必要がないという意味で、ドロップイン的置き換えである。これは組成物A1〜A5に関する場合であり、これらの組成物は一般に、主要構成部品を変更することなく、ほとんどの改良手順に用いることができる。組成物A1〜A5のすべてにおいて、排出圧および排出温度は限度未満であり、標準沸点はR404Aと同様である。したがって、該組成物は、ほとんどの現行の冷凍システムで用いることができる。
【0058】
特定の好ましい態様において、置き換え段階は、システムの実質的な再設計または改変を必要とせず、本発明の冷媒を収容するために設備の主要アイテムを置き換える必要がないという意味で、ドロップイン的置き換えである。これは組成物A1〜A5に関する場合であり、これらの組成物は一般に、主要構成部品を変更することなく、ほとんどの改良手順に用いることができる。組成物A1〜A5のすべてにおいて、排出圧および排出温度は限度未満であり、標準沸点はR404Aと同様である。したがって、該組成物は、ほとんどの現行の冷凍システムで用いることができる。
【0059】
本発明を好ましい態様に関し記載してきたが、当業者なら、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えてもよく、本発明の要素を等価物で置き換えてもよいことを、理解するであろう。加えて、本発明の実質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示に関する特定の状況または材料に適合するように、多くの改変を加えてもよい。したがって、本発明は、開示した特定の態様に限定されるものではなく、本発明は、添付する請求項または後で加えられる任意の請求項の範囲内にある態様をすべて包含するものとする。