(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、フレーム単位に分割して送信されるフレームでは、伝送効率を高めるためにトレーニング時間としての割り付け時間は限られている。IEEE802.11aでは、トレーニングに割り当てられたシンボルが、1フレームあたり2シンボル分しかないことから、シンボルごとにトレーニングを行うと2回しか行うことができない。また、このシンボルは、全てのサブキャリアごとに既知の信号(参照信号)が割り当てた信号として規定されている。
【0008】
また、複数のアンテナから受信された無線信号を合成して、受信品質を高めることが行われている。例えば、MMSE(Minimum Mean Square Error)基準を用いて、規定の参照信号と重み付け合成出力との誤差電力を最小化する重み付け係数を導いて、重み付け演算を行う場合を想定する。複数の系統から受信された信号に基づいて、重み付け係数を収束させるには、その合成する系統の数(ブランチ数)の2倍以上の回数の重み更新が必要になる。例えば、2系統の場合では、その倍の4回以上の重み更新が必要になる。
【0009】
しかしながら、フレームに割り当てられたシンボル数が、その回数より少ない場合には、重み係数が収束しきらずに、誤差を含んだ重み係数が導かれることになる。重み係数に誤差が含まれる場合には、トレーニング処理が不完全な状態のまま終了することになる。そのような状態では、重み係数が確率的に収束しきらないサブキャリアが生じうることから、通信品質が低下する場合があるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、その目的は受信装置のトレーニング処理の精度を高めることができる受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明は、サブキャリア周波数を用いた周波数多重伝送を行う無線通信システムであって、
1フレーム周期より短い所定の単位時間が予め定められ
、当該所定の単位時間のトレーニング信号が
複数付与されたフレームを受信する
無線通信システムの受信装置であって、受信した前記フレームに付与され
る前記トレーニング信号であって、2以上の第1の自然数倍の前記単位時間に連続して割り付けられる前記トレーニング信号に対し、前記第1の自然数より大きい第2の自然数回にFFT開始時刻を設定する設定部と、第1の前記トレーニング信号と第1の前記トレーニング信号に連なる第2の前記トレーニング信号とが
前記単位時間毎に付与されており、第1の前記トレーニング信号の少なくとも一部を対象範囲に含む第1のFFT処理と、第1の前記トレーニング信号の一部と第2の前記トレーニング信号の一部とを対象範囲に含む前記
第2の自然数回に応じて定めた複数の第2のFFT処理とを含む処理により前記トレーニング信号のトレーニングを行う検出処理であって、前記第1のFFT処理と前記
複数の第2のFFT処理とのそれぞれの対象範囲に互いに共通する範囲が含まれ、前記第1のFFT処理と前記
複数の第2のFFT処理の対象範囲が互いに異なっており、前記設定されたFFT開始時刻に基づいて前記トレーニング信号に対する前記FFT開始時刻をずらして、並列に前記トレーニング信号の検出処理を行う検出部と、前記検出されたトレーニング信号と、前記トレーニング信号に応じて予め定められる参照信号とに基づいて、導かれる誤差電力が小さくなる
ように前記サブキャリア周波数毎に重み付けする重み付け係数を導く重み付け演算処理を行
い、前記サブキャリア周波数毎に重み付け合成された合成信号を生成する合成部と、前記重み付け合成された合成信号に基づいて復調処理をする信号変換部と、を備えることを特徴とする受信装置である。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記設定部は、前記単位時間に第1の自然数から1を減じた数を掛け合わせた時間を前記第2の自然数から1を減じた数で分割した時点を起点とする前記FFT開始時刻をして設定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記合成部は、前記設定されたFFT開始時刻に応じて、前記参照信号の位相を補正する位相補正部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記検出部は、前記設定されたFFT開始時刻に応じて、前記受信したフレームから抽出する情報の範囲を定める窓関数を用いて得られた範囲の情報に基づいて検出処理をすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記合成部は、前記誤差電力が小さくなる重み付け係数を,MMSEを用いて導くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
前記手段により、受信装置のトレーニング処理の精度を高めることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における受信装置を示す概略ブロック図である。図に示される受信装置1は、無線部10、検出部20、合成部30、信号変換部40及びFFT窓ずらし量τ設定部50を備える。
【0019】
無線部10は、直交検波部11、アナログディジタル変換(A/D)部12及びガードインターバル(GI)除去部13を備える。直交検波部11は、アンテナから受信した電波を直交検波する。アナログディジタル変換(A/D)部12は、直交検波されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。ガードインターバル(GI)除去部13は、デジタル信号に変換された情報からフレームを検出し、フレームに含まれるガードインターバル信号を除去して、受信フレームを生成する。
【0020】
検出部20は、生成された受信フレームに基づいて、所定の時間範囲に含まれるトレーニング信号をサブキャリアごとに検出し、サブキャリア信号を生成する。検出部20は、窓制御部21、直並列変換(S/P)部22、及びFFT部23を備える。窓制御部21は、生成されたフレームのプリアンブルに含まれるトレーニング信号に含まれる周波数成分を検出する検出処理を行う範囲をFFT窓ずらし量τ設定部50からの制御信号に応じて抽出する、いわゆる窓関数として機能する。直並列変換(S/P)部22は、窓関数によって抽出範囲が定められた信号に対して、シリアル・パラレル変換を行う。FFT部23は、パラレル変換された時間領域の情報に基づいてFFT処理を行い、周波数領域の信号に変換し、サブキャリアごとにサブキャリア信号を生成する。
【0021】
合成部30は、サブキャリアごとに設けられ、それぞれの検出部20においてFFT処理された結果に基づいてサブキャリアごとに合成処理を行う。ここで,合成部30は,m番目のサブキャリアについて記述している。合成部30は、合成処理部31、参照信号部32、位相補正部33、減算器34及び重み係数算出(MMSE)部35を備える。
【0022】
また、合成処理部31は、乗算器31a、31b及び加算器31cを備える。乗算器31aは、算定された重み係数W
mn1を、抽出されたサブキャリア信号X
mn1に乗じる。乗算器31bは、算定された重み係数W
mn2を、抽出されたサブキャリア信号X
mn2に乗じる。加算器31cは、乗算器31aと乗算器31bによってそれぞれ算定された演算結果を加算して、そのサブキャリア信号の合成信号Y
mnを生成する。ここで,nは1≦n≦Nの整数であり,Nは後述する擬似トレーニングシンボル数を示す。
【0023】
参照信号部32は、トレーニング信号に応じて定められる参照信号の情報を記憶し、演算処理に応じて参照される。位相補正部33は、参照信号部32に保持される参照信号D
mnに対して、FFT窓ずらし量τ設定部50からの制御信号に応じて位相制御を行う。減算器34は、合成処理部31によって算定された合成信号Y
mnと位相調整された参照信号D
mnとの誤差信号e
mnを算出する。
【0024】
重み係数算出(MMSE)部35は、導かれた誤差信号e
mn、並びに、それぞれ抽出されたサブキャリア信号X
mn1とサブキャリア信号X
mn2に基づいて、平均2乗誤差(E[|e
mn|
2])が最小になるように重み係数W
mn1とW
mn2を算定する。重み係数算出(MMSE)部35は、この算定をMMSE基準により行う。合成部30によって行われる合成処理を式(1)として示し、平均2乗誤差(E[|e
mn|
2])を式(2)として示す。
【0027】
ただし、式(1)のY
mnが重み付け合成信号を示し、W
mnが重みベクトルを示し、X
mnがサブキャリア信号ベクトルを示し、Hは複素共役転置を示す。また式(2)のD
mnが参照信号を示し、e
mnが参照信号D
mnと重み付け合成出力Y
mnとの誤差信号を示す。ここで、重みベクトルW
mnとサブキャリア信号ベクトルX
mnをそれぞれ式(3)、式(4)として示す。
【0030】
ただし、式(3)、式(4)のTは転置を示す。
【0031】
信号変換部40は、復調部41と並直列変換(P/S)部42を備える。復調部41は、各サブキャリア信号の合成信号に基づいて復調処理を行う。並直列変換(P/S)部42は、復調された信号に基づいてパラレル・シリアル変換処理を行う。
【0032】
FFT窓ずらし量τ設定部50は、検出部20において、FFT部23によるFFT演算を行う情報の範囲を定める窓関数として窓制御部21を機能させるため、FFT窓のずらし量τを設定する。また、FFT窓ずらし量τ設定部50は、参照信号部32に保持される参照信号の位相変換を位相補正部33に行わせるため、窓制御部21に設定したFFT窓のずらし量τに応じて位相制御を行う。
【0033】
FFT窓ずらし量τ設定部50は、受信したフレームに含まれるトレーニング信号の基本周期にとらわれずに、連続したトレーニング信号とみなし、その連続するとみなしたトレーニング信号に対してずらし量τに基づいて時間シフトした起点時刻からの情報を擬似的なトレーニング信号(以下,擬似トレーニングシンボルと呼ぶことにする。)として、それぞれトレーニング処理を行なわせる。ずらし量τは、予め定められる一定の値とした場合、例えば、式(5)によって導かれる。
【0035】
式(5)において、τがFFTずらし量を示し、Nが擬似トレーニングシンボル数,Kが連続したトレーニング信号数を示し、TがFFT周期を示す。
【0036】
図を参照し、FFT窓の設定方法について示す。
図2は、本実施形態におけるFFT窓の設定を示す図である。本実施形態の一態様として、IEEE802.11aに準じたトレーニング信号を用いて説明する。IEEE802.11aのフレームのプリアンブルは、先に送信される「ショート・プリアンブル」と、その後に送信される「ロング・プリアンブル」からなる。「ショート・プリアンブル」は、主にタイミング検出やAFCの粗調整などに利用される。「ロング・プリアンブル」は、主にAFC微調整やチャネル推定に利用される。
【0037】
この図に示される範囲では、IEEE802.11aのフレームのプリアンブルのうち、「ロング・プリアンブル」の部分を拡大して示したものである。この「ロング・プリアンブル」は、ガードインターバルGI2に続く、2つのロング・トレーニング・シンボル(TL1とTL2)からなる。同じ時間波形の繰り返しであるロング・トレーニング・シンボルは、いわゆるトレーニング信号に用いられ、それぞれがOFDMシンボルと同じ長さを有する。したがって、TL1とTL2を合わせた長さは、OFDMシンボル2つ分の長さになる。ここで、TL1とTL2のそれぞれの長さである、OFDMシンボル1つ分の期間をFFT周期Tとして示す。
【0038】
これまでの一般的なトレーニング処理では、TL1とTL2の期間に1回ずつFFT処理を行っていた。本実施形態に示すトレーニング処理では、シンボルの周期とFFT処理の周期に位相差を設定して、複数のFFT処理を並列に実施する。ここで、N回のFFT処理を行うこととする。1番目のFFT処理をFFT_1、2番目のFFT処理をFFT_2、そして、N番目のFFT処理をFFT_Nとして示す。FFT_2は、FFT_1から所定の期間(τ)だけ遅れた時刻から処理を始める。順に所定の期間(τ)ずつ遅れた複数回のFFT処理の開始時刻を定義する。
【0039】
TL1とTL2の境界では、トレーニング信号の各サブキャリアの位相連続性が確保されるので、FFT周期が仮に、TL1とTL2の境界をまたいで行われても、OFDMの遅延波がガードインターバルGI2内に収まってさえいれば、伝搬路特性による線形畳み込みは、巡回畳み込みとみなすことができる。
【0040】
図を参照し、複数回のFFT処理を行って期待されるその他の効果について示す。
図3は、本実施形態におけるトレーニング信号にレベル変動の大きい干渉信号が含まれる場合の処理を示す図である。
図3に示すトレーニング処理の期間では、TL1とTL2の連続した期間のうち、TL2の期間に干渉波が混信した場合が示される。
【0041】
先に従来の方法の動作を示す。シンボル周期に応じてFFT処理を行うと、TL1の処理では所望信号のチャネル推定が行えるが、次のTL2には干渉波が混信してしまい、TL2の処理のみでは干渉波を抑圧できない。これは、TL2の処理のみでは、干渉を抑圧するための重み更新回数が1回となり、重み係数を収束させるための重み更新回数が不十分となってしまうためである。従って、従来の方法によるトレーニング処理では、干渉波を抑圧する重み係数を収束させることができないという問題がある。
【0042】
そこで、同じ干渉波が含まれたTL1とTL2に対し本実施形態を適用した場合の動作を示す。FFT_2からFFT_5のそれぞれの期間に、干渉波が混信した期間が含まれる。そのため、同じ干渉波に対して複数回の検出を行うことができる。これにより、影響の大きい干渉波の情報から、4回の重み係数の計算に供給される情報とすることができ、さらには、干渉波を打ち消す重み係数を計算することができる。そして、干渉波を打ち消す重み係数を適用した状態で、トレーニングを行うことができる。したがって、同じ長さのトレーニング信号であっても、トレーニング信号期間の一部の時間に含まれる干渉波を有効に利用し,干渉波を抑圧する重み係数に収束させることができる。
【0043】
図を参照し、
図1に示した構成について、より具体的な実施態様について示す。
図4は、本実施形態における窓制御部を示すブロック図である。図に示される窓制御部21AとFFT窓ずらし量τ設定部50Aは、
図1に示した窓制御部21とFFT窓ずらし量τ設定部50の一態様である。窓制御部21Aは、FFT窓設定部211と、FFT開始タイミング通知部212を備える。
【0044】
FFT窓設定部211は、無線部10から供給される信号に対して、設定された制御情報に従って、所定の時間範囲に含まれる信号を抽出する。FFT開始タイミング通知部212は、FFT窓設定部211が所定の時間範囲の情報を抽出するようにFFT処理の時間窓を設定する制御信号を生成し、FFT窓設定部211に供給する。FFT開始タイミング通知部212は、FFT窓ずらし量τ設定部50Aから供給される制御信号に基づいてFFT窓設定部211への制御信号を生成する。
【0045】
また、FFT窓設定部211への制御信号は、FFT窓設定部211をFFT開始時間が固定されたFFT窓とみなし、必要とされるFFT開始時間を指示する信号とする。FFT窓ずらし量τ設定部50Aは、FFT開始タイミング通知部212に対しFFT開始時間を指示する制御情報を供給する。この構成により、簡易な構成でFFT窓設定を行うことができる。
【0046】
図を参照し、FFT窓の設定に応じた参照信号の位相制御について示す。
図5は、本実施形態におけるFFT窓の設定に応じた参照信号の位相制御を示す図である。この図は、
図2、
図3に先に示したようにIEEE802.11aに準じて、参照信号の位相を制御する方法を示す。1番目のFFT処理であるFFT_1、2番目のFFT処理であるFFT_2、そして、N番目のFFT処理であるFFT_Nのそれぞれに応じた参照信号を、参照信号d
1、参照信号d
2、そして、参照信号d
Nとする。n番目の擬似トレーニングシンボルのm番目のサブキャリアに対応する参照信号D
mnは、式(6)によって導かれる。
【0048】
式(6)において、d
1が基準とする元の参照信号を示し、FFT[・]
mがm番目のサブキャリアのシンボルを示し,D
mが基準とする元の参照信号d
1のm番目のサブキャリア信号を示す。式(6)の右辺の指数演算の項は、基準とする元の参照信号である参照信号d
1に対して位相補正演算を行う位相補正項である。この演算を行うことにより、必要な位相制御を行った参照信号を生成できる。
【0049】
図を参照し、位相補正部の構成について示す。
図6は、本実施形態における位相補正部の構成を示すブロック図である。図に示される位相補正部33は、位相補正項計算部331と乗算器332を備える。位相補正項計算部331は、FFT窓ずらし量τ設定部50Aから供給される制御信号に応じて、参照信号の位相を制御する位相補正信号を生成する。
【0050】
乗算器332は、供給される参照信号(D
m)に対して、位相補正項計算部331によって生成された位相補正信号を乗じて、位相補正された参照信号を出力する。例えば、位相補正項計算部331が式(6)における右辺の指数演算の項の演算を行い、位相補正部33として式(6)の演算処理を行うことができる。
【0051】
図を参照し、本実施形態におけるトレーニング処理の効果を示す。
図7は、トレーニング処理の違いによる2乗誤差の違いを示すグラフである。図の縦軸は、2乗誤差(|e|
2)を示し、横軸はトレーニングの演算回数を示す。
【0052】
図7(a)は、本実施形態による複数回のトレーニング処理を行う擬似トレーニングシンボルを用いた場合のエラー発生状況を示すグラフである。このグラフの縦軸が2乗誤差(|e|
2)を示し、横軸が繰り返し行われるトレーニング回数を示す。このエラー発生状況は、
図1の構成に
図2に示したFFT処理の回数(N回)を、5回とした場合であり、1本ごとに示される波形は、サブキャリアごとの収束状況を示している。回数が、1から徐々に大きくなるにつれ、その回数までのトレーニング処理の結果の情報を用いて受信した場合の2乗誤差は、徐々に低下する傾向を示す。そして、擬似的トレーニング回数の5回に達すると、2乗誤差が小さくなり、2乗誤差が10
−2以下に収束し、充分トレーニングの効果が表れている。
【0053】
図7(b)は、従来の方法で行った結果が示されており、2つのシンボルTL1とTL2に応じた回数(2回)のトレーニング処理の結果の2乗誤差が示される。このグラフでは、
図7(a)のように、多くのサブキャリアの2乗誤差は、回数が多くなるほど低下する傾向にあるが、一部のサブキャリアの2乗誤差が低下せずに、10
−2よりも高い2乗誤差を示すものがある。
【0054】
図7(b)では、回数が3回以上では、トレーニング処理の期間ではなく、実際のデータが送信されている期間であるが、2乗誤差が低下しないグラフのサブキャリアでは、必要とされる2乗誤差が確保できていない状態であり、通信品質が十分に確保できていない状態である。このように、方式の異なる2つのグラフを対比することにより、本実施形態では、2乗誤差の改善が見られ、通信品質が確保されていることが示される。
【0055】
図を参照し、本実施形態におけるCNR−BER特性を示す。
図8は、トレーニング処理の違いによるCNR−BER特性の違いを示すグラフである。図の縦軸は、ビットエラー率(BER)を示し、横軸はCNR(dB)を示す。このグラフでは、DURの条件の異なる3つの場合を合わせて示している。本実施系による擬似トレーニングシンボル付加法では、従来一般的に行われている2シンボル重み更新方式に対して、DURの条件が異なってもビットエラー率が3dB改善していることが示される。
【0056】
また、本実施形態では、合成処理を行う重み係数の算出にMMSEを用いたことにより、その効果として、干渉抑圧を行うことができる。また、複数のアンテナを用いた受信系を構成することにより、ダイバーシチ利得を受信状況に応じて適応させることが可能となる。
【0057】
(第2実施形態)
図を参照し、
図1に示した受信装置における異なる態様を示す。
図9は、本実施形態における窓制御部を示すブロック図である。図に示される窓制御部21BとFFT窓ずらし量τ設定部50Bは、
図1に示した窓制御部21とFFT窓ずらし量τ設定部50の一態様である。
【0058】
窓制御部21Bは、FFT窓設定部211−1から211−Nと、遅延器213−2から213−Nと、連結部214を備える。FFT窓設定部211−1から211−Nは、無線部10から供給される信号に対して、固定的に設定された遅延量を有する遅延器213−2から213−Nによってそれぞれ位相差が設定された信号が入力され、それぞれの入力される信号に応じて、所定の時間範囲に含まれる信号を抽出する。
【0059】
遅延器213−2から213−Nは、無線部10から供給される信号に対して、固定的に設定された遅延量を有する。設定する遅延量は、遅延器213−2から213−Nの順に、基準の遅延量τずつ遅延量が大きくなる。連結部214は、FFT窓設定部211−1から211−Nがそれぞれ所定の時間範囲の情報を抽出した結果を連結し、出力する。FFT窓ずらし量τ設定部50Bは、遅延器213−2から213−Nに対し、遅延量τの設定を行う制御情報を供給する。
【0060】
この構成は、固定的に遅延量τが設定された複数の系統の機能部が並列に処理することから、FFT窓ずらし量τ設定部50Bからの制御を簡素化することができる。
【0061】
(第3実施形態)
図を参照し、
図1に示した受信装置における異なる態様を示す。
図10は、本実施形態における窓制御部を示すブロック図である。図に示される窓制御部21CとFFT窓ずらし量τ設定部50Cは、
図1に示した窓制御部21とFFT窓ずらし量τ設定部50の一態様である。
【0062】
窓制御部21Cは、トレーニング2シンボルバッファ215Cと、FFT窓ずらし部216と、FFT窓設定部217を備える。トレーニング2シンボルバッファ215Cは、2個連続して受信するトレーニングシンボルを蓄積する。
【0063】
FFT窓ずらし部216は、FFT窓設定部217が所定の時間範囲の情報を抽出するようにFFT処理の時間窓を設定する制御信号を生成し、FFT窓設定部217に供給する。FFT窓設定部217は、設定された制御信号に基づいて、所定の時間範囲の情報を抽出するようにFFT処理の時間窓を設定する。そして、FFT窓設定部217は、その設定された時間窓の範囲を、蓄積されたトレーニングシンボルから抽出して出力させる。FFT窓ずらし量τ設定部50Cは、FFT窓ずらし部216に対しFFT開始時間を指示する制御情報を供給する。
【0064】
(第4実施形態)
図を参照し、
図1に示した受信装置における異なる態様を示す。
図11は、本実施形態における窓制御部を示すブロック図である。図に示される窓制御部21DとFFT窓ずらし量τ設定部50Dは、
図1に示した窓制御部21とFFT窓ずらし量τ設定部50の一態様である。
【0065】
窓制御部21Dは、FFT窓設定部211−1から211−Nと、遅延器213D−2から213D−Nと、連結部214と、トレーニング2シンボルバッファ215を備える。
図9と同じ構成には、同じ符号を附す。
【0066】
遅延器213D−2から213D−Nは、トレーニング2シンボルバッファ215Dから供給される信号に対して、固定的に設定された遅延量を有する。設定する遅延量は、遅延器213D−2から213D−Nの順に、基準の遅延量τずつ遅延量が大きくなる。FFT窓ずらし量τ設定部50Dは、遅延器213D−2から213D−Nに対し、遅延量τの設定を行う制御情報を供給する。
【0067】
この構成は、トレーニング2シンボルバッファ215Dによって、一時的にバッファリングされたトレーニングシンボルに対してトレーニング処理が行われる。そのトレーニング処理は、第2実施形態として示したように固定的に遅延量τが設定された複数の系統の機能部が並列に処理することから、FFT窓ずらし量τ設定部50Dからの制御を簡素化することができる。
【0068】
以上に示した、第2実施形態から第4実施形態に示した構成であっても、第1実施形態に示した受信特性に対する効果と同様の効果を得ることができる。選択された構成により、実装形態の差が生じているが、いずれかの構成を適宜選択することができる。
【0069】
なお、本実施形態に示した受信装置1は、受信したフレームに付与され、2以上の第1の自然数倍の単位時間(T)に連続して割り付けられるトレーニング信号に対し、FFT窓ずらし量τ設定部50が、第1の自然数より大きい第2の自然数回にFFT開始時刻を設定する。検出部20は、設定されたFFT開始時刻に基づいて、FFT開始時刻をずらして、並列に前記トレーニング信号の検出処理を行う。合成部は、検出されたトレーニング信号と、トレーニング信号に応じて予め定められる参照信号とに基づいて、導かれる誤差電力が小さくなる重み付け係数を導く重み付け演算処理を行う。信号変換部40は、重み付け合成された合成信号に基づいて復調処理をする。ここで、FFT窓ずらし量τ設定部50が、第1の自然数より大きい第2の自然数回にFFT開始時刻を設定することにより、各FFT開始時刻の差を予め定めた所定の時間とすることができる。
【0070】
FFT窓ずらし量τ設定部50は、前記単位時間に第1の自然数から1を減じた数を掛け合わせた時間を第2の自然数から1を減じた数で分割した時点を起点とする前記FFT開始時刻を設定する。このFFT開始時刻の差を一定の値とすることにより、等間隔の時間差を設定することができる。この時間差の設定は、遅延器などによって設定することができる遅延量τとして設定することができ、繰り返し行う処理の構成を簡素化することができる。
【0071】
また、本実施形態の合成部30は、起点して設定されたFFT開始時刻に応じて、参照信号の位相を補正する位相補正部33を備える。ここでは、起点して設定されたFFT開始時刻に応じた参照信号を生成することができる。
【0072】
また、本実施形態の検出部20は、設定された開始時刻に応じて、受信したフレームから抽出する情報の範囲を定める窓関数を用いて得られた範囲の情報に基づいて検出処理をする。これによって,受信したフレームに付与されたトレーニング信号数によらず,シンボル周期に応じた検出処理よりも多い数のトレーニング信号を検出することができる。
【0073】
また、本実施形態の合成部30は、誤差電力が小さくなる重み付け係数をMMSEを用いて導く。これによって,サブキャリア毎にSINRを最大化することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態に示した構成では、既知シンボルがIEEE802.11aのロング・トレーニング・シンボルのような同じ信号の繰り返しである場合、トレーニングシンボルをオーバーラップさせてFFT窓を設定しても,1周期分の所望信号を取得でき、擬似トレーニングシンボルとして使用してトレーニング(更新)回数を増やすことができる。
【0075】
また、伝搬路特性の変動が小さければ、アンテナ重みはほぼ一定である。つまり、アンテナ重みは、時間軸上の切り出し位置によって変動するものではない。そこで、既知信号に切り出し位置に応じた位相回転を与えることで、アンテナ重みは位相回転しないことになり、MMSE基準にて真値に収束させることができる。
【0076】
また、本実施形態に示したように、トレーニングシンボルを切り出して擬似トレーニングシンボルを生成し、その切り出し時のずらし量(遅延量τ)を少なくし過ぎると、擬似トレーニングシンボル数は増やすことができるが、シンボルに付帯している熱雑音に相関が生じアンテナ重みが最適値から外れてしまう場合がある。切り出し時のずらし量(遅延量τ)は、熱雑音の相関が生じない範囲の値に設定し、擬似トレーニングシンボル数を稼ぐようにすることが望ましい。
【0077】
なお、本発明は、上記の実施形態に示した構成に制限されず、発明の要旨を変更しない範囲で構成、数量などを適宜変更することができる。例えば、アンテナの数(素子数)、トレーニングシンボル数等は、具体的な固有値を例にあげて示したが、任意の数を選択することができる。
【0078】
また、MMSEを実現する方式として、LMS、RLSなどの方法を選択することができる。
【0079】
また、無線LANの規格をIEEE802.11a方式を例示して示したが、他の規格の無線LANに適用することができる。例えば、IEEE802.11g方式やIEEE802.11n方式,IEEE802.11p方式に適用することにより、干渉抑圧に効果を得ることできる。
【0080】
また、FFT窓のずらし量(遅延量)τは、等間隔であることを例示して説明したが、そのずらし量(遅延量)を一定の値とせずに、不等間隔に設定することも可能である。