(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷において、一般に感光体として公知の電荷保持面が静電的に帯電され、その後原画像の光パターンに曝露され、その光パターンに従って前記表面を選択的に放電させる。結果として生じる感光体上の帯電領域と放電領域のパターンは、原画像に一致する潜像として公知の静電電荷パターンを形成する。潜像は、トナーとして公知の静電的に引き付けられる微粉化された粉末に接触させることにより現像される。トナーは、感光体表面の静電電荷により画像領域に保持される。従って、トナー像は再現または印刷される原本の光画像に従って作成される。次に、トナー像を基板または支持部材(例えば、紙)に直接にまたは中間体転写部材を用いて転写することができ、その上に貼りついた画像は、再現または印刷される画像の永久的な記録を形成する。現像に続いて、電荷保持面に残った過剰なトナーをこの面から取り除く。このプロセスは、荷電面が多様な方法で画像通りに放電され得る場合に、原本から複写するかまたは電子的に生成または保存した原本を例えばラスタ出力スキャナ(ROS)で印刷する光レンズに有用である。
【0003】
感光体の表面を帯電させるためには、接触型の帯電装置が使用されている。接触型の帯電装置には、DC電圧にDC電圧の2倍ものAC電圧を重畳した電源から電圧を供給される導電部材が含まれる。帯電装置を、帯電される予定の部材である画像保持部材(感光体)表面に接触させる。接触型の帯電装置は画像保持部材を所定の電位まで帯電させる。一般に、接触型帯電器はロール帯電器の形態である。
【0004】
多層の感光体または画像形成部材は、少なくとも2つの層を有し、基板、導電層、任意選択の下引層(「電荷ブロッキング層」または「正孔ブロッキング層」と呼ばれることもある)、任意選択の接着層(「界面層」と呼ばれることもある)、電荷生成層(「電荷発生層(charge generation layer)」、「電荷発生層(charge generating layer)」、または「電荷発生層(charge generator layer)」と呼ばれることもある)、電荷輸送層、および、可撓性ベルト型または硬質ドラム形状のいずれかの任意選択のオーバーコーティング層が含まれてもよい。多層形状において、感光体の活性層は、電荷発生層(CGL)および電荷輸送層(CTL)である。これらの層を横断する電荷輸送を強化することにより、より優れた感光体性能が得られる。多層の可撓性感光体部材に、カール防止層を電気的活性層の面と反対側の基板の裏面に含めて、所望の感光体平坦性を与えてもよい。
【0005】
一部の感光体の電気的性質は、特定の波長の光に曝露されると変化する可能性があり、これらの望ましくない変化は質の悪い印刷品質をもたらし得る。過去の研究から、この問題が光衝撃と呼ばれる現象に起因することが示されており、この現象は順に青色光と電荷発生層の相互作用に起因する。光衝撃は、周囲室内光への露光の間、例えば、感光体の取り付けの間または例えば電子写真機などの機械の修理の間に起こり得る。特定の種類のオーバーコート層を有する有機感光体の場合、光衝撃はオーバーコート層自体に内在し、波長に強く依存することが見出されている(例えば、光衝撃の大部分は400〜500nmの光によって生じる)。先行する解決策は、光と電荷発生層の相互作用に集中し、内在するオーバーコート層の光衝撃の保護に対応しなかった。例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第6,713,220号には、アリールアミンを含む電荷輸送層の中に光吸収材料をドープすることによって400〜500nmの光が電荷発生層と相互作用することを防ぐことによる、光衝撃の影響を低減させるための方法が開示されている。しかし、有機オーバーコート層に観察される内在性の光衝撃は、米国特許第6,713,220号に教示される方法では解消されない。従って、有機オーバーコート層に起こる内在性の光衝撃に対する解決策が必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに開示される実施形態は、一般に、内在する光衝撃に対して改良された抵抗性を示す、オーバーコート層を含む、新規な画像形成部材または感光体に関する。従来の有機オーバーコート層と比較して、改良されたオーバーコート層は優れた印刷品質を示し、感光体の全般的な電気性能にマイナスの影響をほとんど及ぼさない。例えば、溶媒中に小型輸送分子、樹脂、架橋剤化合物、酸触媒、および1以上の表面添加剤を含む1種類の現行のオーバーコート層配合物では、オーバーコート層の内在する光衝撃に起因して、質の悪い印刷品質が観察される。
【0011】
本実施形態は、オーバーコート配合物に、400〜575nmの光を強く吸収する少濃度の光吸収材料、例えばキノン、ルブレン、黄色染料、赤色染料、およびそれらの混合物を組み込むオーバーコート層を提供する。具体的な実施形態では、光吸収材料はジフェノキノン(DPQ)の群から選択される。ジフェノキノンは、400〜460nmの光を強く吸収する既知の電子輸送分子である。そのような光吸収材料をオーバーコート層の中に組み込むことにより、電気的性質にマイナスの影響を及ぼすことなく、内在する光衝撃に対する抵抗性が付与される。
【0012】
本開示の例となる実施形態を、図面を参照して下に記載する。明確にするために、図面の説明のために選択された、具体的な用語が、以下の説明において使用されているが、それらは本開示の範囲を規定または制限するものではない。別に指定されなければ、異なる図中の同じ構造を同一に扱うために、同じ参照数字が使用されている。図中の構造は、その相対的比率に従って描かれているものではなく、サイズ、相対サイズ、または位置の点で本開示を限定すると解釈されるべきではない。さらに、本考察は負に帯電した系を扱うが、本開示の画像形成部材は正に帯電した系でも使用することができる。
【0013】
図1は、ドラム形状を有する多層電子写真画像形成部材の例となる実施形態である。図に示され得るように、例となる画像形成部材には、硬質支持基板10、下引層14、電荷発生層18および電荷輸送層20が含まれる。硬質基板は、金属、金属合金、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料からなってもよい。電荷発生層18および電荷輸送層20は2つの別々の層として本明細書に記載される画像形成層を形成する。図面に示される形態の代替形態では、電荷発生層は電荷輸送層の上部に配置されてもよい。これらの層の機能成分が、またもう一つの方法として、単一の層に組み込まれてもよいことは当然理解される。
【0014】
図2は、実施形態に従うベルト形状を有する画像形成部材を示す。示されるように、ベルト形状には、カール防止バックコーティング1、支持基板10、導電性接地面12、下引層14、接着層(界面層とも呼ばれる)16、電荷発生層18、および電荷輸送層20が備わっている。任意選択のオーバーコート層32およびグランドストリップ19が含まれてもよい。有機感光体は通常、金属化基板、下引層、電荷発生層(CGL)および電荷輸送層(CTL)を順次含む。感光体の表面に潜像を形成するため、帯電した感光体を光に露光させる必要があり、それは通常可視光線範囲の波長をもつレーザーである。理想的な状況は、電荷発生層が入射光子を全て吸収することができ、露光光がCGLを通り抜けない状況である。しかし、実際にはCGLおよびUCLを通過し、その後感光体によって反射し戻される少量の光が常に存在する。この光の干渉の結果、印刷に欠陥が生じる。
【0015】
(基板)
感光体支持基板10は、不透明であっても実質的に透明であってもよく、必要な機械的性質を有する任意の適した有機もしくは無機材料を含んでもよい。基板全体は、導電性表面中の材料と同じ材料を含むことができ、または、導電性表面は単に基板の上の塗膜であってもよい。任意の適した導電性材料、例えば、金属または金属合金などを用いてもよい。それは、単一の金属化合物でも、または異なる金属および/または酸化物からなる二重層でもあり得る。
【0016】
基板10はまた、全体が導電性材料で構成されてもよいし、あるいは、無機もしくは有機ポリマー材料、例えばDuPont社から市販されている二軸配向ポリエチレンテレフタラートであるMYLAR、またはKALEDEX2000として入手可能なポリエチレンナフタレートなどを含む絶縁材料であってもよく、接地面層12は、導電性のチタンもしくはチタニウム/ジルコニウム塗膜、そうでなければインジウム錫酸化物、アルミニウム、チタンなどの半導体表面層を有する有機材料もしくは無機材料からなる層を含むか、あるいはアルミニウム、クロム、ニッケル、真ちゅう、その他の金属などの導電性材料のみで構成されている。支持基板の厚さは、多数の因子によって決まり、それには機械的性能および経済的考慮事項が含まれる。
【0017】
基板10は、多数の多くの異なる形状、例えば、プレート、シリンダー、ドラム、スクロール、エンドレス可撓性ベルトなどを有してもよい。
図2に示されるように、基板がベルトの形態である場合、ベルトは継ぎ目があっても継ぎ目が無くてもよい。実施形態では、本明細書における感光体は、
図1に示されるようにドラム形状である。
【0018】
基板10の厚さは、柔軟性、機械的性能、および経済的考慮事項を含む多数の因子によって決まる。本実施形態の支持基板10の厚さは、少なくとも約500マイクロメートル、または約3,000マイクロメートル以下、または少なくとも約750マイクロメートル、または約2500マイクロメートル以下であってもよい。
【0019】
例となる基板支持体10は、各々のコーティング層溶液で使用される溶媒のいずれにも不溶性であり、光学的に透明または半透明であり、かつ、約150℃の高温に至るまで熱的に安定している。画像形成部材の製造に使用される基板支持体10は、約1×10
−5/℃〜約3×10
−5/℃の範囲の熱収縮係数および約5×10
−5psi(3.5×10
−4Kg/cm
2)〜約7×10
−5psi(4.9×10
−4Kg/cm
2)の間のヤング率を有し得る。
【0020】
(接地面)
導電性接地面12は、例えば、真空蒸着法などの任意の適したコーティング技法により基板10の上に形成され得る、導電性金属層であってもよい。導電層の厚さは、電子光導電性部材に望まれる光透過性および柔軟性に応じて実質的に広い範囲にわたって変動してもよい。従って、可撓性の光応答性画像形成装置には、導電層の厚さは、少なくとも約20オングストローム、または約750オングストローム以下、あるいは導電率、柔軟性および光透過率の最適な組合せには、少なくとも約50オングストローム、または約200オングストローム以下であってもよい。
【0021】
金属層を形成するために用いる技法に関わらず、空気に触れると大部分の金属の外側表面に金属酸化物の薄層が形成される。従って、金属層の上に重なる外側の層を「隣接」層と特徴付ける場合、これらの上に重なる隣接層は、実際には、酸化性の金属層の外面に形成された薄い金属酸化物層に接触し得ることを意図する。一般に、背面消去露光(rear erase exposure)のためには、導電層の光透過性は少なくとも約15%であることが望ましい。導電層は金属に限定される必要はない。導電層のその他の例は、例えば約4000〜約9000オングストロームの波長の光に対する透明層として導電性酸化インジウムスズ、または不透過性の導電層としてポリマーバインダー中に分散した導電性カーボンブラックなどの材料の組合せであってもよい。
【0022】
(正孔ブロッキング層)
導電性接地面層の付与後、下引層もしくは正孔ブロッキング層14をその上に塗布してもよい。正に帯電した感光体について電子ブロッキング層は正孔を感光体の画像形成表面から導電層に向かって移動させる。負に帯電した感光体については、導電層から反対側の光導電層への正孔の注入を防ぐための障壁を形成することのできる任意の適した正孔ブロッキング層を利用してもよい。
【0023】
下引層の一般的な実施形態は、金属酸化物および樹脂バインダーを含んでもよい。正孔ブロッキング層は連続していて約0.5マイクロメートル未満の厚さを有するべきである。厚さが大きいと望ましくないほど高い残留電位をもたらす可能性があるためである。露光段階の後の電荷の中和が促進され、かつ最適な電気性能が実現されるので、約0.005マイクロメートル〜約0.3マイクロメートルの正孔ブロッキング層が使用される。最適な電気的挙動のために正孔ブロッキング層に約0.03マイクロメートル〜約0.06マイクロメートルの厚さを使用する。ブロッキング層は、任意の適した従来の技法、例えば噴霧法、浸漬コーティング、ドローバーコーティング、グラビアコーティング、シルクスクリーニング、エアナイフコーティング、逆ロールコーティング、真空蒸着、化学処理などにより適用されてもよい。薄層を得る際の便宜上、ブロッキング層は希釈溶液の形態で付与され、溶媒は、真空、加熱などの従来技法によって塗膜の付着後に除去される。一般に、正孔ブロッキング層材料と溶媒の重量比が約0.05:100〜約0.5:100であればスプレーコーティングに十分である。
【0024】
電荷発生層18をその後に下引層14に付与してもよい。粒子の形態であって、不活性樹脂などの膜形成バインダー中に分散していてもよい、電荷発生/光導電性材料を含む任意の適した電荷発生バインダーを利用してもよい。光導電層が電荷発生層の特性を向上させるかまたは減少させる場合には多電荷発生層組成物を用いることができる。所望であれば、当分野で公知のその他の適した電荷発生材料を利用してもよい。選択された電荷発生材料は、静電潜像を形成するための電子写真画像形成プロセスにおける画像通りの放射露光段階の間、約400〜約900nmの波長を有する活性化放射に高感受性であるべきである。例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、約370〜約950nmの波長の光を吸収する。
【0025】
任意の適した不活性樹脂材料を電荷発生層18中のバインダーとして用いてもよい。電荷発生材料は、樹脂のバインダー組成物中に様々な量で存在することができる。一般に、少なくとも約5体積%、又は約90体積%以下の電荷発生材料が、少なくとも約95体積%、または約10体積%以下の樹脂バインダー中に分散している。より具体的には、少なくとも約20%または約60体積%以下の電荷発生材料が、少なくとも約80体積%、または約40体積%以下の樹脂バインダー組成物中に分散している。
【0026】
具体的な実施形態では、電荷発生層18の厚さは、少なくとも約0.1μm、または約2μm以下、あるいは少なくとも約0.2μm、または約1μm以下であってもよい。これらの実施形態は、クロロガリウムフタロシアニンまたはヒドロキシガリウムフタロシアニンまたはそれらの混合物から構成されてもよい。電荷発生材料と樹脂バインダー材料を含有する電荷発生層18の厚さは、一般に少なくとも約0.1μm、または約5μm以下、例えば乾燥している場合で約0.2μm〜約3μmの範囲である。電荷発生層の厚さは、一般にバインダー含有量に関連している。バインダー含有量の高い組成物ほど、一般に電荷発生のためにより厚い層を用いる。
【0027】
(電荷輸送層)
ドラム感光体において、電荷輸送層は、同じ組成物からなる単一の層を含む。そのようなものとして、電荷輸送層を単一の層20に関して具体的に考察するが、二重電荷輸送層を有する実施形態にその詳細を適用することもできる。その後電荷輸送層20は電荷発生層18の上に付与され、電荷輸送層20には、電荷発生された正孔または電子の電荷発生層18からの注入を後押しすることができ、かつ、これらの正孔/電子の輸送を電荷輸送層によって画像形成部材表面の表面電荷を選択的に放電させる、任意の適した透過性の有機ポリマーまたは非ポリマー材料が含まれてもよい。一実施形態では、電荷輸送層20は正孔を輸送する役割を果たすだけでなく、電荷発生層18を磨耗または化学薬品による攻撃から保護する役割を果たし、それ故に画像形成部材の耐用年数を延ばすことができる。電荷輸送層20は、実質的に非光導電性の材料であってもよいが、電荷発生された正孔の電荷発生層18からの注入を後押しする層とする。
【0028】
この層20は、通常、入射光の大部分がその下にある電荷発生層18によって確実に利用されるようにするために、露光時に電子写真画像形成部材を使用する波長領域において透過性がある。電荷輸送層は、電子写真で有用な光の波長、例えば、400〜900nmに露光されると、光吸収がごくわずかで電荷発生のない、優れた光透過性を示すべきである。感光体が、透過性の基板10と、透明もしくは部分的に透過性の導電層12も用いて作製される場合には、基板10によって全ての光を基板の裏側に通過させることにより画像通りの露光または消去を実現することができる。この場合、電荷発生層18を基板と電荷輸送層20の間に挟むならば、層20の材料は使用する波長領域内で光を伝達する必要はない。電荷輸送層20は、電荷発生層18とともに、照射光がない場合には電荷輸送層に加えられた静電電荷が伝導されないという程度に不導体である。電荷輸送層20は、放電プロセスの間に電荷が層を通過する時に最低限の電荷を捕捉するべきである。
【0029】
電荷輸送層20には、電気的に不活性なポリマー材料、例えばポリカーボネートバインダーに溶解または分子分散させて固溶体を形成し、それによりこの材料を電気的に活性にする添加剤として有用な、任意の適した電荷輸送成分または活性化化合物が含まれてもよい。「溶解した」とは、例えば、小分子がポリマーに溶解して均質相をなす溶液を形成することを指し;実施形態において分子分散したとは、例えば、ポリマー中に分散した電荷輸送分子を指し、この小分子は分子規模でポリマーに分散している。電荷輸送成分は、そうでなければ電荷発生された正孔の電荷発生材料からの注入を後押しすることができず、これらの正孔の輸送を可能にすることのできない、膜形成ポリマー材料に加えることができる。この添加により、電気的に不活性のポリマー材料が、電荷発生層18から電荷発生された正孔の注入を後押しすることができ、かつ電荷輸送層の表面電荷を放電するために電荷輸送層20を通じて、これらの正孔の輸送を可能にすることのできる材料に変換される。高移動度電荷輸送成分は、協働して分子間にそして最終的には電荷輸送層の表面に電荷を輸送する有機化合物の小分子を含んでもよい。
【0030】
多数の電荷輸送化合物を電荷輸送層に含めることができ、この層は一般に約5〜約75マイクロメートルの厚さ、より具体的には、約15〜約40マイクロメートルの厚さである。電荷輸送成分の例は、次の式/構造のアリールアミン:
【化1】
(式中、Xは、アルキル、アルコキシ、アリール、およびそれらの誘導体のような適した炭化水素;ハロゲン、またはそれらの混合物、および特にClおよびCH
3からなる群から選択される置換基である);ならびに次式の分子
【化2】
(式中、X、YおよびZは、各々独立に、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、またはそれらの混合物であり、かつ、YおよびZの少なくとも1つが存在している)である。
【0031】
高分子バインダー材料の具体例としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、およびエポキシ、ならびにそれらのランダムもしくは交互共重合体が挙げられる。実施形態では、電荷輸送層、例えば正孔輸送層は、少なくとも約10μm、または約40μm以下の厚さを有してもよい。
【0032】
例えば、改良された、側方の電荷移動(LCM)抵抗性を可能にするために、所望により複数の電荷輸送層または少なくとも1つの電荷輸送層に組み込まれる成分または材料の例としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、およびその他のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ヒンダードアミン系酸化防止剤;チオエーテル系酸化防止剤;亜リン酸系酸化防止剤;その他の分子、例えばビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン(BDETPM)、ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]−フェニルメタン(DHTPM)などが挙げられる。少なくとも1つの電荷輸送層中の酸化防止剤の重量%は、約0〜約20、約1〜約10、または約3〜約8重量%である。
【0033】
電荷輸送層は、その上の静電潜像の形成および保持を妨げるために十分な比率での照射光がない場合には、正孔輸送層に加えられた静電電荷が伝導されないという程度に不導体であるべきである。電荷輸送層は、可視光線または意図する使用領域内の放射に対して実質的に非吸収性であるが、それは光導電層、つまり電荷発生層からの電荷発生された正孔の注入を可能にし、さらにこれ自体を経由してこれらの正孔を輸送し、活性層の表面の表面電荷を選択的に放電させるという点で電気的に「活性」である。
【0034】
さらに、ベルト形状を用いる本実施形態では、電荷輸送層は、単一パス(single pass)電荷輸送層、あるいは同一または異なる輸送分子比の二重パス(dual pass)電荷輸送層(または二重層の電荷輸送層)から構成されてもよい。これらの実施形態では、二重層電荷輸送層の全体の厚さは約10μm〜約40μmである。その他の実施形態では、二重層電荷輸送層の各々の層の個々の厚さは2μm〜約20μmであり得る。さらに、電荷輸送層は、電荷輸送層とオーバーコート層の界面での結晶化を阻止するために、感光体の最上層として使用されるように構成されてもよい。もう一つの実施形態では、電荷輸送層は、第一パス層と第二パス層の間の界面で起こる微結晶化を阻止するために、第一パス電荷輸送層として使用されるように構成されてもよい。
【0035】
電荷輸送層混合物を形成し、その後に支持基板層に適用するために、あらゆる適した従来の技法を用いることができる。電荷輸送層は、単一のコーティング段階または複数のコーティング段階で形成することができる。浸漬コーティング、リングコーティング、噴霧、グラビアまたは任意のその他のドラムコーティング法を使用してもよい。
【0036】
付着した塗膜の乾燥は、オーブン乾燥、赤外線放射乾燥、空気乾燥などの任意の適した従来技法により実現することができる。乾燥後の電荷輸送層の厚さは、最適な光電子的および機械的結果のためには約10μm〜約40μmまたは約12μm〜約36μmである。もう一つの実施形態では、厚さは約14μm〜約36μmである。
【0037】
(オーバーコート層)
有機感光体に用いられる従来のオーバーコート層と比較して、光衝撃に対して改良された抵抗性を示し、かつ優れた電気性能も示すオーバーコート層32を提供するために、本実施形態は光吸収材料36をドープしたオーバーコート層32を用いる。本実施形態において、オーバーコート層配合物は、キノン、ルブレン、黄色染料、赤色染料、およびそれらの混合物からなる群から選択される特定の光吸収材料36を含む。これらの実施形態は、内在する光衝撃、特に400〜500nmの光により引き起こされる光衝撃に対する抵抗性の増加を示す。一般に、光吸収材料は、約700nm以下の波長の光がオーバーコート層と相互作用することを実質的に防ぐ。光とオーバーコート層との間の相互作用の実質的な阻止は、ドーパントまたは光吸収材料が400〜500nmの範囲の光を強力に吸収し、それ故にそうでなければオーバーコート層と相互作用して光衝撃効果を引き起こす光の大部分を吸収するという事実に基づく。
【0038】
実施形態では、オーバーコート層は、溶媒中に小型の輸送分子、樹脂、架橋剤化合物、酸触媒、および1以上の表面添加剤を含む配合物または溶液から形成される。架橋プロセスを促進するため、小型輸送分子と架橋剤化合物の組合せは、強酸性溶液の存在下で行われる。
【0039】
実施形態では、小型輸送分子は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(ヒドロキシフェニル)−[1,1’−テルフェニル]−4,4’−ジアミン(DHTER)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(DHTBD)等、ならびにそれらの混合物からなる群から選択することができる。実施形態では、樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール等、ならびにそれらの混合物からなる群から選択することができる。使用される1つの具体的な樹脂は、BASF Corp.社(Florham Park,New Jersey)より入手可能なアクリルポリオールである、JONCRYLである。架橋剤化合物は、実施形態では、メチル化ホルムアルデヒド−メラミン樹脂、メトキシメチル化メラミン樹脂、エトキシメチル化メラミン樹脂、プロポキシメチル化メラミン樹脂、ブトキシメチル化メラミン樹脂、ヘキサメチロールメラミン樹脂、アルコキシアルキル化メラミン樹脂、例えばメトキシメチル化メラミン樹脂、エトキシメチル化メラミン樹脂、プロポキシメチル化メラミン樹脂、ブトキシメチル化メラミン樹脂等、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。一例では、メラミンホルムアルデヒド架橋剤化合物は、Cytec Corporation社(West Paterson,New Jersey)より入手可能なCYMEL 303である。酸触媒は、トルエンスルホン酸、アミン保護トルエンスルホン酸等、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。実施形態では、使用される酸触媒は、King Industries社(Norwalk,Connecticut)より入手可能なNACURE XP−357である。表面添加剤は、アルキルシラン、パーフルオロ化アルキルアルコール等、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。溶媒は、アルコール、エーテル、エステル等、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。一実施形態では、使用される溶媒は、The Dow Chemical Co.社(Midland,Michigan)より入手可能なグリコールエーテルであり、固形分約20%で使用できる(DOWANOL PM)。
【0040】
光吸収材料を上記オーバーコート溶液の中に組み込むことにより、内在する光衝撃に対して実質的な抵抗性を示すオーバーコート層がもたらされる。光吸収材料は、約700nm以下の波長を有する光を吸収する。具体的な実施形態では、光吸収材料は約400nm〜約575nmの波長を有する光を吸収する。実施形態では、光吸収材料は、オーバーコート溶液の約1%〜約10%、または約2%〜約3%の量で存在する。
【0041】
さらなる実施形態では、小型輸送分子は、オーバーコート溶液の約40%〜約70%、または約35%〜約40%の量で存在する。その他の実施形態では、樹脂は、オーバーコート溶液の約30%〜約60%、または約24%〜約28%の量で存在する。実施形態では、架橋剤化合物はオーバーコート溶液の約5%〜約35%、または約4%〜約6%の量で存在する。本実施形態では、酸触媒は、オーバーコート溶液の約0.5%〜約3%、または約1%〜約2%の量で存在する。本実施形態では、1以上の表面添加剤は、オーバーコート溶液の約1%〜約6%、または約1%〜約2%の量で存在する。さらなる実施形態では、溶媒は、オーバーコート溶液の約18%〜約35%、または約20%〜約24%の量で存在する。
【0042】
実施形態では、光吸収材料は、乾燥したオーバーコート層の約0.1%〜約10%、または約2%〜約5%の量で存在する。特定の実施形態では、小型輸送分子は、乾燥したオーバーコート層の約34%〜約36%、または約34.5%〜約35.5%の量で存在する。実施形態では、架橋剤化合物は、乾燥したオーバーコート層の約35%〜約39%、または約36.5%〜約37.5%の量で存在する。その他の実施形態では、樹脂は、乾燥したオーバーコート層の約24%〜約29%、または約26%〜約27%の量で存在する。さらに、実施形態では、1以上の表面添加剤は、乾燥したオーバーコート層の約1%〜約3%、または約1%〜約2%の量で存在してもよい。
【0043】
調製したオーバーコート溶液は、その後感光体の上に被覆され、乾燥される。155℃で40分間乾燥させた後の、乾燥したオーバーコート層の平均厚さは、約3μm〜約7μm、または約3μm〜約4μmである。
【0044】
従来のオーバーコート層とは違って、本実施形態によって形成されるオーバーコート層は、オーバーコート層自体に内在する光衝撃を阻止し、それ故に全体的な電気的性能にマイナスの影響を及ぼすことなく印刷品質を改良する。
【0046】
光導電体を以下の通り作製した。3成分の正孔ブロッキングまたは下引層を以下の通り作製した。ジルコニウムアセチルアセトナートトリブトキシド(zirconium acetylacetonate tributoxide)(35.5部)、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(4.8部)、およびポリ(ビニルブチラール)BM−S(2.5部)をn−ブタノール(52.2部)に溶かした。得られる溶液をディップコーターによって30mmのアルミニウム管に被覆し、得られる層を59℃にて13分間予熱し、58℃(露点54℃)にて17分間加湿し、135℃にて8分間乾燥させた。得られた下引層の厚さはおよそ1.3μmであった。
【0047】
V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを含む厚さ約0.2μmの電荷発生層を、上記の正孔ブロッキング層または下引層の上に厚さ約1.3μmで付着させた。この電荷発生層コーティング分散体は以下の通り作製した。3gのヒドロキシガリウムV型色素を、2gのポリマーバインダー(The Dow Chemical Companyより入手可能なカルボキシル変性ビニル共重合体、VMCH)、および45gのn−酢酸ブチルと混合した。得られる混合物を、Attritorミル中で約200gの1mm Hi−Beaホウケイ酸塩ガラスビーズとともに約3時間磨砕した。得られる分散体を20μmナイロン布フィルターに通して濾過し、分散体の固形分を希釈して約6重量%とした。
【0048】
その後、30gのテトラヒドロフラン(THF)および10gのモノクロロベンゼン(MCB)の溶媒混合物中の、N,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(5g)、三菱ガス化学株式会社より入手可能な膜形成高分子バインダーPCZ 400[ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン、M
w40,000)](7.5g)から単純な混合により調製した溶液から、18μm厚さの電荷輸送層を電荷発生層の上面に被覆した。この電荷輸送層を約135℃にて約40分間乾燥させた。
【0050】
オーバーコート溶液を、4.53gのCYMEL(登録商標)303(Cytec Industries Inc.社より得られるメチル化ブチル化メラミン−ホルムアルデヒド)、4.22gのN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(DHTBD)、3.24gのJONCRYL樹脂、0.12gのBYK−SILCLEAN(登録商標)3700(米国BYK−Chemie社より得られるヒドロキシル化シリコーン変性ポリアクリレート)、および0.12gのNACURE(登録商標)XP357(King Industries社より入手可能なブロックされた酸触媒)を、48.8gのDOWANOL(登録商標)PM(The Dow Chemical Company社より得られる1−メトキシ−2−プロパノール)に添加することにより形成したことを除いて、比較例Iのプロセスを反復することによりオーバーコートされた光導電体を調製した。オーバーコート層溶液を電荷輸送層の上面に塗布し、155℃にて40分間乾燥させると、
3.1μmの厚さのオーバーコート層が形成された。
【0052】
0.4gのジフェノキノン(DPQ)をオーバーコート配合物に添加したことを除いて、比較例IIのプロセスを反復することによりオーバーコートされた光導電体を作製した。
【0054】
上で作製した3種類の光導電体装置(比較例IおよびIIならびに実施例I)をスキャナで試験して、各々のスキャナサイクルとともに、電子写真方式の露光光強度を徐々に低下させて様々な露光強度での一連の表面電位を生成した、光誘起放電曲線を得た。
【0055】
スキャナは定電圧充電のためのスコロトロンセットを備えていた。発光ダイオードへの電流を制御して異なる露光レベルを得るデータ取得システムによって露光光強度を徐々に低下させ、この装置を−700V(ボルト)の表面電位で試験した。露光光源は、780nm発光ダイオードであった。電子写真シミュレーションは、周囲条件(相対湿度45%および20℃)で、環境制御された遮光チャンバ中で達成された。
【0056】
光誘起放電特性(PIDC)を3種類の光導電体全てについて終了した。光誘起放電曲線は、対照オーバーコート層を有するドラムと、ジフェノキノン(DPQ)を含むオーバーコート層で被覆された本発明のドラムとの間に差がないことを実証した。表1に、電気特性の概要を記載する。
【表1】
【0057】
表1で用いた略語に関して:
V
0は、初期表面電位であり;
V
ddは、露光前に失った電位(暗失活)であり;
Sは、PIDC曲線の初期傾斜であり、かつ感受性の測定値であり;
E
1/2は、表面電位が前記露光の開始時の電位の半分に減衰した時の感光体の光感受性であり;
V(3)は、露光量3エルグ/cm
2の表面電位であり;
V(10)は、露光量10エルグ/cm
2の表面電位であり;かつ
V
rは、光消去後の残留表面電位である。
【0058】
電気特性の概要は、オーバーコート層を3%DPQでドープすることが電気特性にマイナスの影響を及ぼさないことを明らかに示す。
【0059】
光衝撃の評価は、ドラムのほんの一部(1インチ四方)を規定量の400〜500nmの波長をもつ光に露光することにより達成された。次に、ドラムを従来の画像形成装置で機械試験した。結果を
図3に示す。光衝撃は、400〜500nmの光に露光した領域における電気的特性の望ましくない変化として表れ、これは順に前記領域における印刷ハーフトーンの望ましくない変化を示す。
図3から分かるように、3%のDPQを含む標準的なオーバーコート層をドープした結果、DPQを含まない感光体と比較して、光衝撃に対する感光体の抵抗性に有意な改良がもたらされた。3%のDPQを含むドラムは、印刷ハーフトーンにごくわずかしか変化を示さないが、DPQを含まないドラムは、露光領域においてハーフトーンに著しい暗色化を示す。光衝撃印刷試験は、少量の光吸収材料、例えばDPQをオーバーコート層の中に添加することによる飛躍的な利点を実証するものである。
【0060】
要約すれば、本実施形態は、現在用いられている従来型オーバーコート層と比較して光衝撃に対する抵抗性において顕著な改良を示すオーバーコート層を提供する。さらに、本実施形態は、電気的性能に何らマイナスの影響を及ぼすことなく、より優れた印刷品質を提供する。