特許第5795480号(P5795480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795480
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】自走式ロールベーラ
(51)【国際特許分類】
   A01F 15/08 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   A01F15/08 R
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-42096(P2011-42096)
(22)【出願日】2011年2月28日
(65)【公開番号】特開2012-178978(P2012-178978A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2013年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 晴三
(72)【発明者】
【氏名】有友 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 俊郎
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−276567(JP,A)
【文献】 特開2003−169535(JP,A)
【文献】 特開2000−188942(JP,A)
【文献】 特開平07−132019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 15/00 − 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部により刈り取った飼料作物をベーラ形成部に搬送・供給して略円柱状のベールとなす自走式ロールベーラにおいて、
前記ベーラ形成部には搬入口を有するベーラ室を設け、搬入口の近傍に飼料作物の穀稈を細断する穀稈細断体を配設するとともに、ベーラ室内に穀稈細断体により細断された細断穀稈をベールに形成加工するベーラ形成体を配設した自走式ロールベーラであって、
機体上に伝動ケースを配置するとともに、
伝動ケースは、左右幅が細幅の扁平箱状に形成したケース本体に、左右方向に軸線を向けて動力源としての原動機部に連動連結した第1支軸と、左右方向に軸線を向けて一端を前記ベーラ形成体に連動連結し、かつ、他端を前記刈取部に連動連結した第3支軸と、左右方向に軸線を向けて前記穀稈細断体に連動連結した第4支軸とを、前後方向に間隔を開けて平行状態に横架して、第1支軸と第3支軸、及び、第3支軸と第4支軸を相互に伝動ギヤを介して連動連結し、
第4軸には、前記ベーラ形成部の左右一側方に配置した細断体伝動機構を介して前記穀稈細断体を連動連結する一方、第3支軸には、前記ベーラ形成部の左右他側方に配置したベーラ形成体伝動機構を介して前記ベーラ形成体を連動連結したことを特徴とする自走式ロールベーラ。
【請求項2】
前記刈取部に設けた搬出口と前記ベーラ形成部に設けたベーラ室の搬入口との間に、後下方に下り傾斜状の搬送・供給路を連通させて形成するとともに、搬送・供給路の上流部には刈取部の搬出口から搬出された飼料作物をベーラ室の搬入口に向けて強制的に圧送する拡散ローラ体を配置し、拡散ローラ体の直下方に位置する機体上に前記伝動ケースを配置したことを特徴とする請求項1記載の自走式ロールベーラ。
【請求項3】
前記伝動ケース内には変速切替機構を設け、変速切替機構に前記細断体伝動機構を介して前記穀稈細断体を連動連結したことを特徴とする請求項1又は2記載の自走式ロールベーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式ロールベーラに関するものであり、特に、ベーラ形成部の各作動部への動力伝達構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自走式ロールベーラの一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、自走可能とした機体の前方に刈取部を配設し、機体上にベーラ形成部を配設した自走式ロールベーラが開示されている。かかる自走式ロールベーラでは、刈取部により青刈りの水稲等の飼料作物を刈り取り、刈り取った飼料作物をベーラ形成部に搬送・供給して、ベーラ形成部にて飼料作物を略円柱状のベールとなすようにしている。
【0003】
ここで、ベーラ形成部には搬入口を有するベーラ室を設け、搬入口の近傍に飼料作物の穀稈を細断する穀稈細断体を配設するとともに、ベーラ室内に穀稈細断体により細断された細断穀稈をベールに形成加工する側面視円弧状のベーラ形成体を配設している。
【0004】
また、機体上に搭載したエンジンには伝動機構を介して穀稈細断体とベーラ形成体を直列的に連動連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−148935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記した自走式ロールベーラの伝動機構は、ベーラ形成部の一側部である左側部に集中配置されるとともに、直列的に連動連結されているために、ベーラ形成部の左側部に片引き荷重が偏って、機体の重量が左側に偏るという不具合があった。
【0007】
すなわち、穀稈細断体を駆動する駆動軸とベーラ形成体を駆動する駆動軸はそれぞれ左右方向に軸線を向けて平行に配置されており、エンジンの出力軸と穀稈細断体の駆動軸との間にスプロケットを介して細断体伝動チェンを巻回して細断体伝動機構を形成するとともに、穀稈細断体の駆動軸とベーラ形成体の駆動軸との間にスプロケットを介してベーラ形成体伝動チェンを巻回してベーラ形成体伝動機構を形成している。
【0008】
ここで、ベーラ形成体の駆動力は穀稈細断体の駆動力よりも大きな駆動力を要するものであり、ベーラ形成体が受ける負荷も大きいことから、細断体伝動機構にもベーラ形成体伝動機構と同様の負荷時の対応強度(特に、引っ張り強度)を保持させる必要性から、必然的に細断体伝動機構も重量化していた。その結果、ベーラ形成部の左側部に片引き荷重が偏って、重量が左側部に偏って増大していた。
【0009】
そこで、本発明は、機体の重量を軽減することができる自走式ロールベーラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明に係る自走式ロールベーラは、刈取部により刈り取った飼料作物をベーラ形成部に搬送・供給して略円柱状のベールとなす自走式ロールベーラにおいて、前記ベーラ形成部には搬入口を有するベーラ室を設け、搬入口の近傍に飼料作物の穀稈を細断する穀稈細断体を配設するとともに、ベーラ室内に穀稈細断体により細断された細断穀稈をベールに形成加工するベーラ形成体を配設した自走式ロールベーラであって、機体上に伝動ケースを配置するとともに、伝動ケースは、左右幅が細幅の扁平箱状に形成したケース本体に、左右方向に軸線を向けて動力源としての原動機部に連動連結した第1支軸と、左右方向に軸線を向けて一端を前記ベーラ形成体に連動連結し、かつ、他端を前記刈取部に連動連結した第3支軸と、左右方向に軸線を向けて前記穀稈細断体に連動連結した第4支軸とを、前後方向に間隔を開けて平行状態に横架して、第1支軸と第3支軸、及び、第3支軸と第4支軸を相互に伝動ギヤを介して連動連結し、第4軸には、前記ベーラ形成部の左右一側方に配置した細断体伝動機構を介して前記穀稈細断体を連動連結する一方、第3支軸には、前記ベーラ形成部の左右他側方に配置したベーラ形成体伝動機構を介して前記ベーラ形成体を連動連結したことを特徴とする。
【0011】
かかる自走式ロールベーラでは、穀稈細断体に連動連結した細断体伝動機構をベーラ形成部の左右一側方に配置する一方、ベーラ形成体に連動連結したベーラ形成体伝動機構をベーラ形成部の左右他側方に配置して、原動機部に連動連結した伝動ケースに細断体伝動機構とベーラ形成体伝動機構を連動連結しているため、片引き荷重から両引き荷重に変更することができて、機体の重量を軽減することができる。つまり、伝動ケースから下流側の伝動機構を左右に振り分けたので、片引き荷重から両引き荷重に変更することができて、強度的に有利となり重量を軽減することができる。
【0012】
そして、機体上に伝動ケースを配置するとともに、伝動ケースは、左右幅が細幅の扁平箱状に形成したケース本体に、左右方向に軸線を向けて動力源としての原動機部に連動連結した第1支軸と、左右方向に軸線を向けて一端を前記ベーラ形成体に連動連結し、かつ、他端を前記刈取部に連動連結した第3支軸と、左右方向に軸線を向けて前記穀稈細断体に連動連結した第4支軸とを、前後方向に間隔を開けて平行状態に横架して、第1支軸と第3支軸、及び、第3支軸と第4支軸を相互に伝動ギヤを介して連動連結しているため、駆動系である伝動機構をシンプル化することができるとともに、エンジンの出力軸1つで全てを駆動するものよりは、伝動ケースを介して駆動(伝動機構)を分配することで個々の駆動軸を軽量化することができる。また、穀稈細断体の駆動力はベーラ形成体の駆動力よりも小さいため、穀稈細断体に異物が噛み込まれた場合の安全装置とすることができる。しかも、細断体伝動機構はベーラ形成体伝動機構と同様の負荷時の対応強度(特に、引っ張り強度)を保持させる必要性がなくなるので、細断体伝動機構はそれなりに軽量化することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明に係る自走式ロールベーラは、請求項1記載の本発明に係る自走式ロールベーラであって、前記刈取部に設けた搬出口と前記ベーラ形成部に設けたベーラ室の搬入口との間に、後下方に下り傾斜状の搬送・供給路を連通させて形成するとともに、搬送・供給路の上流部には刈取部の搬出口から搬出された飼料作物をベーラ室の搬入口に向けて強制的に圧送する拡散ローラ体を配置し、拡散ローラ体の直下方に位置する機体上に前記伝動ケースを配置したことを特徴とする。
【0014】
かかる自走式ロールベーラでは、拡散ローラ体の直下方に位置する機体上のデッドスペースを有効利用して伝動ケースを配置することができる。すなわち、後下方に下り傾斜状に形成した搬送・供給路の下方に形成されるデッドスペースを伝動ケース配置空間として有効利用することで、伝動ケースを介して原動機部に左右に振り分け配置した細断体伝動機構とベーラ形成体伝動機構を堅実に連動連結することができる。
【0015】
請求項3記載の本発明に係る自走式ロールベーラは、請求項1又は2記載の本発明に係る自走式ロールベーラであって、前記伝動ケース内には変速切替機構を設け、変速切替機構に前記細断体伝動機構を介して前記穀稈細断体を連動連結したことを特徴とする。
【0016】
かかる自走式ロールベーラでは、変速切替機構により細断体伝動機構を介して穀稈細断体を適宜変速することができる。すなわち、細断体により細断する飼料作物の種類に応じて細断体の回転速度を高速度段ないしは低速度段に変速することで、効率良く切断作業を行うことができて、ベール成形作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、本発明では、機体上に原動機部に連動連結した伝動ケースを配設することで、伝動ケースから下流側の伝動機構を左右に簡単に振り分けることができて、強度的に有利となり重量を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る自走式ロールベーラの側面図。
図2】ベーラ形成部の側面説明図。
図3】ベーラ形成部の平面説明図。
図4】動力伝達図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示す1は本実施形態に係る自走式ロールベーラであり、自走式ロールベーラ1は、左右一対のクローラ式の走行部2,2の直上方に基台3を配置して、基台3の左側中途部に図2に示す支持枠体4を立設している。支持枠体4には刈取部5の基端部を枢支して、支持枠体4の前方において枢支部を中心に刈取部5を昇降回動自在となしている。支持枠体4の後方における基台3上にはベーラ形成部6を配設している。基台3の右側前部にはキャビン型の運転部7を配設し、運転部7に設けた座席8の直下方位置には、図2に示すように、動力源である原動機部としてのエンジン9を搭載している。
【0021】
刈取部5は、図1に示すように、フィーダハウス10とプラットフォーム11と刈刃体12と左右一対のデバイダ13,13と掻込リール14とを具備している。
【0022】
フィーダハウス10は前後方向に伸延する四角形筒状に形成して、内部には刈り取った穀稈を前方から後方に搬送する搬送コンベア15(図4参照)を配設している。そして、フィーダハウス10は運転部7の左側下方に配置するとともに、支持枠体4の前上部に基端部(後端部)を左右方向の軸線廻りに回動自在に枢支している。フィーダハウス10の下面中途部と基台3の前端部との間には昇降油圧シリンダ16を介設して、昇降油圧シリンダ16を伸縮作動させることにより刈取部5を昇降位置調節して、刈取高さを調節可能としている。図4に示すように、搬送コンベア15は、左右方向に軸線を向けてフィーダハウス10の基端部(後端部)に軸架した駆動軸17と、左右方向に軸線を向けてフィーダハウス10の先端部(前端部)に軸架した従動ドラム18との間に、搬送ベルト19を巻回して形成している。
【0023】
プラットフォーム11は、基台3の左右幅と略同一幅で前方が開口するケーシング状に形成して、フィーダハウス10の前端部開口部(搬入口部)に左側部を連通連結し、図4に示すように、内部に左右方向に回動軸芯を向けたオーガ支軸20を介して掻込オーガ21を横架している。掻込オーガ21は後述する刈刃体12により刈り取られた穀稈をプラットフォーム11内に掻き込むとともに、フィーダハウス10の前端部開口部(搬入口部)内に横送り搬入するようにしている。
【0024】
刈刃体12は、左右方向に伸延するバリカン型に形成しており、プラットフォーム11の前端下部に、その前端全幅にわたって配設している。そして、植立穀稈を刈り取るようにしている。
【0025】
左右一対のデバイダ13,13は、それぞれプラットフォーム11の左右側壁から前方へ突設して、機体の前進走行に伴って植立穀稈を刈取側と非刈取側とに分草するようにしている。
【0026】
掻込リール14は、左右一対のデバイダ13,13間の上方に掻込回転自在に配置して、両デバイダ13,13により分草された刈取側の植立穀稈をプラットフォーム11側に回転しながら掻き込むようにしている。
【0027】
このように構成して、刈取部5により刈り取った飼料作物は、後記するベーラ形成部6に搬送・供給して略円柱状のベール(図示せず)を形成するとともに、機外へ放出するようにしている。
【0028】
ベーラ形成部6は、図2図4に示すように、基台3に固定して後方開口状となした固定ケース体33と、固定ケース体33の後上端部に連結体44を介して枢着して前方開口状となした開閉ケース体34とから中空箱状に形成している。そして、内部には搬入口29を有するベーラ室30を設けて、搬入口29の近傍に飼料作物の穀稈を細断する穀稈細断体31を配設している。ベーラ室30内には、穀稈細断体31により細断された細断穀稈をベールに形成加工するベーラ形成体32を配設している。
【0029】
ベーラ室30は、図1に示すように、固定ケース体33と開閉ケース体34の各天井部間に開閉シリンダ35を介設して、開閉シリンダ35により枢着部を中心に開閉ケース体34を開閉作動可能としている。
【0030】
ベーラ形成体32は、固定ケース体33と開閉ケース体34に左右方向に軸線を向けたベーラ形成ローラ36を略同一円周上に多数配置して形成している。各ベーラ形成ローラ36はローラ支軸37により回転自在に支持するとともに、各ローラ支軸37の左側端部にスプロケット38を取り付けている。
【0031】
固定ケース体33に軸架した多数のベーラ形成ローラ36には、最上部に配置したベーラ形成ローラ36を除いて、スプロケット38を介して固定側連動チェン39を掛け廻している。開閉ケース体34に軸架した多数のベーラ形成ローラ36と固定ケース体33の最上部に配置したベーラ形成ローラ36には、スプロケット38を介して開閉側連動チェン40を掛け廻している。最上部に配置したベーラ形成ローラ36と最前部に配置したベーラ形成ローラ36には、それぞれ入力スプロケット41を介してローラ伝動チェン42を掛け廻して後記するベーラ形成体伝動機構43の一部を形成している。45はガイド用スプロケットである。
【0032】
ベーラ室30内に送給された飼料作物は、同一方向に回転(自転)される多数のベーラ形成ローラ36によって、自転されながら巻き付いて徐々に円柱状の径を増大させ、所定の大きさのベールが形成される。ベールが所定の大きさになると図示しない結束装置により紐やテープで結束される。その後は、開閉ケース体34が開放作動されて、結束されたベールが機外に放出される。
【0033】
穀稈細断体31は、回転刃体50と固定刃51を対向させて配置して、両者が協働して飼料作物を細断するようにしている。回転刃体50は左右方向に軸線を向けて横架した回転支軸52に支持されている。固定刃51は、その先端部を回転刃体50同士の間に配置している。回転支軸52の右側端部には細断体入力スプロケット54を取り付けて、後記する細断体伝動機構55の一部を形成している。図2中、56は穀稈細断体31に飼料作物が詰まるのを防止するスクレーパである。
【0034】
図2に示すように、フィーダハウス10の基端部(後端部)に形成した搬出口60とベーラ形成部6に設けたベーラ室30の搬入口29との間には、後下方へ下り傾斜状に四角形筒状の搬送・供給路形成体61を介設して、搬送・供給路形成体61内に下り傾斜状の搬送・供給路62を搬出・入口60,29に連通させて形成している。搬送・供給路62の上流部(上部)には拡散ローラ体63を配置している。拡散ローラ体63は、搬送・供給路形成体61に左右方向に軸線を向けた拡散ローラ本体支軸64を横架し、拡散ローラ本体支軸64に拡散ローラ本体65を取り付けて、拡散ローラ本体65を回転させることで、フィーダハウス10の搬出口60から搬出された飼料作物をベーラ室30の搬入口29に向けて強制的に圧送するようにしている。搬送・供給路形成体61の底部内面には、図3に示すように、前後方向に伸延する拡散ガイド体68を凸条に配設して、圧送される飼料作物を左右幅方向に均等に拡散させるようにしている。拡散ローラ本体支軸64の右側端部には拡散ローラ入力スプロケット66を取り付けて、後記する拡散ローラ体伝動機構67の一部を形成している。
【0035】
拡散ローラ体63の直下方に位置する基台3上のデッドスペースは、図2に示すように、伝動ケース配置空間Sとなしている。そして、伝動ケース配置空間Sに伝動ケース(カウンターケース)70を配置している。伝動ケース70は、左右幅が細幅の扁平箱状に形成したケース本体71に、左右方向に軸線を向けた第1〜第4支軸72,73,74,75を前後方向に間隔を開けて平行状態に横架している。
【0036】
ケース本体71内において、第1支軸72に第1伝動ギヤ76を取り付け、第2支軸73に第1伝動ギヤ76と噛合する第2伝動ギヤ77を取り付け、第3支軸74に第2伝動ギヤ77と噛合する第3伝動ギヤ78を取り付けている。また、第3支軸74には第4伝動ギヤ79を取り付け、第4支軸75に変速切替機構80を設けている。変速切替機構80は、第4支軸75に高速ギヤ81と低速ギヤ82を一体的に摺動自在にスプライン嵌合して、高速ギヤ81を第3伝動ギヤ78に噛合させるか、又は、低速ギヤ82を第4伝動ギヤ79に噛合させて、変速切替可能となしている。なお、変速切替機構80は運転部7に配設した変速切替手段(図示せず)により適宜切替操作することができる。
【0037】
第1支軸72は、ケース本体71から右側方へ突出させるとともに右側方へ伸延させて、右側端部に作業部入力プーリ83を取り付けている。エンジン9は左側方に出力軸84を突出させており、出力軸84に第1出力プーリ85を取り付けて、第1出力プーリ85と作業部入力プーリ83との間に作業部用伝動ベルト86を巻回している。87はミッション部、88はミッション部入力軸、89はミッション部入力プーリ、90は第2出力プーリ、91はミッション部伝動ベルト、92は駆動軸、98は走行部2の駆動輪である。
【0038】
第3支軸74は、ケース本体71から左側方へ突出させて、左側端部に左側出力スプロケット93を取り付けている。左側出力スプロケット93とベーラ形成体32の最上部に配置した入力スプロケット41と最前部に配置した入力スプロケット41には、ローラ伝動チェン42を掛け廻してベーラ形成体伝動機構43を形成している。つまり、ベーラ形成体伝動機構43は、伝動ケース70にベーラ形成部6の左右他側方(本実施形態では左側方)に配置して、ベーラ形成体32に連動連結している。
【0039】
第3支軸74は、ケース本体71から右側方へ突出させて、右側端部に右側出力スプロケット94を取り付けている。第3支軸74の直上方には拡散ローラ本体支軸64を配置しており、拡散ローラ本体支軸64の右側端部に取り付けた拡散ローラ体入力スプロケット66と右側出力スプロケット94との間には、拡散ローラ体伝動チェン95を巻回して、拡散ローラ体伝動機構67を形成している。
【0040】
第4支軸75は、ケース本体71から右側方へ突出させて、右側端部に細断体出力スプロケット96を取り付けている。穀稈細断体31の回転支軸52の右側端部に取り付けた細断体入力スプロケット54と細断体出力スプロケット96との間には、細断体伝動チェン97を巻回して、細断体伝動機構55を形成している。つまり、細断体伝動機構55は、ベーラ形成部6の左右一側方(本実施形態では右側方)に配置して、穀稈細断体31に連動連結している。
【0041】
図4に示す動力伝達図において、100は搬送コンベア伝動機構、110は刈取主軸、120は主軸伝動機構、130はオーガ伝動機構、140は刈刃体作動軸、150は刈刃体伝動機構、160は掻込リール支軸、170はリール伝動機構である。
【0042】
上記のように構成した自走式ロールベーラ1では、穀稈細断体31に連動連結した細断体伝動機構55をベーラ形成部6の右側方に配置する一方、ベーラ形成体32に連動連結したベーラ形成体伝動機構43をベーラ形成部6の左側方に配置して、エンジン9に連動連結した伝動ケース70に細断体伝動機構55とベーラ形成体伝動機構43を連動連結しているため、機体の左側部が偏って重量化するのを回避することができる。つまり、伝動ケース70から下流側の伝動機構を左右に振り分けたので、機体の重量を軽減することができる。
【0043】
しかも、細断体伝動機構55はベーラ形成体伝動機構43と同様の負荷時の対応強度(特に、引っ張り強度)を保持させる必要性がなくなるので、細断体伝動機構55はそれなりに軽量化することができる。
【0044】
さらには、伝動ケース70は、拡散ローラ体63の直下方に位置する基台3上のデッドスペースを有効利用して配置することができる。すなわち、後下方に下り傾斜状に形成した搬送・供給路62の下方に形成されるデッドスペースを伝動ケース配置空間Sとして有効利用することで、伝動ケース70を介してエンジン9に左右に振り分け配置した細断体伝動機構55とベーラ形成体伝動機構43を堅実に連動連結することができる。
【0045】
また、伝動ケース70には変速切替機構80により細断体伝動機構55を介して穀稈細断体31を適宜変速することができる。すなわち、穀稈細断体31により細断する飼料作物の種類に応じて回転刃体50の回転速度を高速度段ないしは低速度段に変速することで、効率良く切断作業を行うことができて、ベール成形作業効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 自走式ロールベーラ
2 走行部
3 基台
4 支持枠体
5 刈取部
6 ベーラ形成部
31 穀稈細断体
32 ベーラ形成体
43 ベーラ形成体伝動機構
55 細断体伝動機構
図1
図2
図3
図4