(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロックアップクラッチ(L)のクラッチピストン(21)と、このクラッチピストン(21)の外周に連設されて、一端を開放した筒状ハウジング(31)と、この筒状ハウジング(31)の開口端を覆うようにして前記クラッチピストン(21)に固設されるばねホルダ(38)とで環状のばね室(33)を画成し、このばね室(33)に、圧縮方向のセット荷重を付与されて前記筒状ハウジング(31)の周方向に配列される直線状の複数のコイルばね(43,43…)よりなるばね集合体(34)を複数組配設し、隣接するばね集合体(34,34)の対向端部間に、前記クラッチピストン(21)及びタービン羽根車(3)にそれぞれ固設されて互いに相対回転可能の駆動部材(36)及び従動部材(37)を介装し、前記各ばね集合体(34)中の相隣る2個のコイルばね(43,43)間に、これらコイルばね(43,43)より半径方向外方への付勢力を受けると共に、軸方向の動きを前記クラッチピストン(21)及びばねホルダ(38)により規制される中間ばね座部材(45)を介装し、この中間ばね座部材(45)に、前記筒状ハウジング(31)の内周面を転がるローラ(50)を支持させてなる、流体伝動装置のトルクダンパであって、
前記中間ばね座部材(45)の両端部には、前記2個のコイルばね(43,43)の対向端部を支承する一対のばね座(45a,45a)と、この両ばね座(45a,45a)から突出して前記2個のコイルばね(43,43)の対向端部の内周面に嵌合する一対の連結軸(45b,45b)とを形成し、またこの中間ばね座部材(45)の両側面には、前記クラッチピストン(21)及び前記ばねホルダ(38)にそれぞれ摺動自在に接触して前記コイルばね(43,43)の前記クラッチピストン(21)及びばねホルダ(38)との接触を防ぐスライドリブ(52,52)を突設するとともに、前記筒状ハウジング(31)の内周面に向かって開口する一対のローラ収容凹部(47,47)を形成してこの両ローラ収容凹部(47,47)間の隔壁(45c)に軸受孔(48)を形成し、
前記ローラ(50)を、前記クラッチピストン(21)の軸線と平行な軸部(50a)と、この軸部(50a)の両端にそれと同軸状に連設される、軸部(50a)より大径の一対のローラ部(50b,50b)とで構成し、
前記軸部(50a)を前記軸受孔(48)に回転自在に支承させて、前記両ローラ部(50b,50b)を前記両ローラ収容凹部(47,47)に無接触状態で収容しながら前記筒状ハウジング(31)の内周面に転がり自在に当接させたことを特徴とする、流体伝動装置のトルクダンパ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるトルクダンパでは、転がり部材としてボールを用い、これを中間ばね座部材の球状凹部に回転自在に収容したもので、ボールが広い表面積で中間ばね座部材と接触することになるので、ボールの回転時、比較的大きな摩擦が生じる。また特許文献2に開示されるトルクダンパでは、転がり部材としてローラを用い、これを中間ばね座部材の円弧状凹部に回転自在に収容したもので、ローラが広い表面積で中間ばね座部材と接触することになるので、同じくローラの回転時、比較的大きな摩擦が生じる。したがって、上記何れのものでも、ボール又はローラの摩擦抵抗によりコイルばねの伸縮にヒステリシスが発生し、トルク緩衝特性に悪影響を及ぼすことになる。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、転がり部材としてローラを用い、そのローラと中間ばね座部材との間に発生する摩擦を極力小さく抑え、ローラが筒状ハウジングの内周面をスムーズに転動してトルク緩衝特性を良好にし得る、流体伝動装置のトルクダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ロックアップクラッチのクラッチピストンと、このクラッチピストンの外周に連設されて、一端を開放した筒状ハウジングと、この筒状ハウジングの開口端を覆うようにして前記クラッチピストンに固設されるばねホルダとで環状のばね室を画成し、このばね室に、圧縮方向のセット荷重を付与されて前記筒状ハウジングの周方向に配列される直線状の複数のコイルばねよりなるばね集合体を複数組配設し、隣接するばね集合体の対向端部間に、前記クラッチピストン及びタービン羽根車にそれぞれ固設されて互いに相対回転可能の駆動部材及び従動部材を介装し、前記各ばね集合体中の相隣る2個のコイルばね間に、これらコイルばねより半径方向外方への付勢力を受けると共に、軸方向の動きを前記クラッチピストン及びばねホルダにより規制される中間ばね座部材を介装し、この中間ばね座部材に、前記筒状ハウジングの内周面を転がるローラを支持させてなる、流体伝動装置のトルクダンパであって、前記中間ばね座部材の両端部には、前記2個のコイルばねの対向端部を支承する一対のばね座と、この両ばね座から突出して前記2個のコイルばねの対向端部の内周面に嵌合する一対の連結軸とを形成し、またこの中間ばね座部材の両側面には、
前記クラッチピストン及び前記ばねホルダにそれぞれ摺動自在に接触して前記コイルばねの前記クラッチピストン及びばねホルダとの接触を防ぐスライドリブを突設するとともに、前記筒状ハウジングの内周面に向かって開口する一対のローラ収容凹部を形成し
てこの両ローラ収容凹部間の隔壁に軸受孔を形成し、前記ローラを、前記クラッチピストンの軸線と平行な軸部と、この軸部の両端にそれと同軸状に連設される、軸部より大径の一対のローラ部とで構成し、前記軸部を前記軸受孔に回転自在に支承させて、前記両ローラ部を前記両ローラ収容凹部に無接触状態で収容しながら前記筒状ハウジングの内周面に転がり自在に当接させたことを第1の特徴とする
。
【0007】
また本発明は、第
1の特徴に加えて、前記中間ばね座部材の各側面に形成される前記スライドリブを、前記筒状ハウジングの周方向に延びると共に、互いに前記筒状ハウジングの半径方向に間隔をおいて並ぶ一対のスライドリブとし、この一対のスライドリブ間を、前記ローラ収容凹部に連なっていてロックアップクラッチ内の作動オイルが流通する油溝としたことを第
2の特徴とする。
【0008】
さらにまた本発明は、第1
または第
2の特
徴に加えて、前記中間ばね座部材に、前記筒状ハウジングの周方向に並んでその内周面に同時に転がり自在に当接する一対の前記ローラをそれぞれ前記ローラ収容凹部及び軸受孔を用いて取り付けたことを第
3の特徴とする。
【0009】
さらにまた本発明は、第
3の特徴に加えて、前記各ローラの軸方向長さを、前記コイルばねの外径より小さく且つその内径より大きく設定したことを第
4の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は、第
3の特徴に加えて、前記中間ばね座部材の両側面にそれぞれ形成されるローラ収容凹部を、前記一対のローラの各同側のローラ部を共通に収容するように形成すると共に、これらローラ収容凹部間の一枚の隔壁に、前記一対のローラの支持軸部を支承する一対の軸受孔を前記筒状ハウジングに向かって開口する切欠き状に形成したことを第
5の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、ローラを、クラッチピストンの軸線と平行な軸部と、この軸部の両端にそれと同軸状に形成される、軸部より大径の一対のローラ部とで構成し、軸部を中間ばね座部材の軸受孔の底部に回転自在に支承させて、両ローラ部を中間ばね座部材のローラ収容凹部に無接触状態で収容しながら筒状ハウジングの内周面に転がり自在に当接させたので、ローラが、その回転時に受ける抵抗は、主として小径の軸部と軸受孔との間に発生する比較的小さい摩擦抵抗であり、ローラは、筒状ハウジングの内周面を極めてスムーズに転動することができ、これにより各コイルばねの伸縮にヒステリシスを殆ど発生させずに済み、トルクダンパのトルク緩衝特性を良好にすることができる。しかも各ローラの軸方向の動きは、軸部を介して連結される一対のローラ部に挟まれる中間ばね座部材の隔壁により規制され、また中間ばね座部材の軸方向の動きは、その両側面に対向するクラッチピストン及びばねホルダにより規制されるので、それらの規制構造は簡単で、製作が容易である。
【0012】
また、中間ばね座部材の両側面に、
クラッチピストン及びばねホルダにそれぞれ摺動自在に接触してコイルばねの
クラッチピストン及びばねホルダとの接触を防ぐスライドリブを突設したので、中間ばね座部材の、
クラッチピストン及びばねホルダに対する摺動をスムーズにしながら、コイルばねの、
クラッチピストン及びばねホルダとの接触を確実に防ぐことができ、トルクダンパのトルク緩衝特性を、より良好にすることができる。
【0013】
本発明の第
2の特徴によれば、中間ばね座部材の各側面の一対のスライドリブ間に形成される油溝を通してローラ収容凹部及び軸受孔にロックアップクラッチの作動オイルが供給されることになり、ローラ全体を効果的に潤滑することができ、したがってローラの極めてスムーズな回転を得て、トルクダンパのトルク緩衝特性を、一層良好にすることができる。
【0014】
本発明の第
3の特徴によれば、一対のローラの荷重分担によりそれぞれの耐久性の向上を図ることができる。その上、中間ばね座部材は、合計4個のローラ部を介して筒状ハウジングに支持されることで、中間ばね座部材の、軸方向への傾きのみならず、軸部周りの回転が拘束され、常に安定した姿勢を保つことができる。
【0015】
本発明の第
4の特徴によれば、ローラの軸方向長さを、コイルばねの外径より小さく且つその内径より大きく設定したことにより、軸方向に並ぶ一対のローラ部の軸間距離を最大限大きくして中間ばね座部材の軸方向への傾きを効果的に防ぐことができる。
【0016】
本発明の第
5の特徴によれば、中間ばね座部材の両側面にそれぞれ形成されるローラ収容凹部を、一対のローラの各同側のローラ部を共通に収容するように形成すると共に、これらローラ収容凹部間の一枚の隔壁に、一対のローラの支持軸部を支承する一対の切欠き状の軸受孔を形成したことで、中間ばね座部材の形状が単純化し、その成形を容易に行うことができると共に、一対のローラの収容、支持を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0019】
先ず、
図1において、流体伝動装置としてのトルクコンバータTは、ポンプ羽根車2と、それと対置されるタービン羽根車3と、それらの内周部間に配置されるステータ羽根車4とを備え、これら三羽根車2,3,4間に作動オイルによる動力伝達のための循環回路6が画成される。
【0020】
ポンプ羽根車2には、タービン羽根車3の外側面を覆う伝動カバー5が溶接により一体的に連設される。伝動カバー5の外周面には取り付けボス7が溶接されており、それにエンジンのクランク軸1に結合した駆動板8がこの取り付けボス7にボルト9で固着される。タービン羽根車3のハブ3hと伝動カバー5との間にスラストニードルベアリング10が介裝される。
【0021】
トルクコンバータTの中心部にクランク軸1と同軸上に並ぶ出力軸11が配置され、この出力軸11は、タービン羽根車3のハブ3hにスプライン結合されると共に、伝動カバー5中心部のハブ5hに軸受ブッシュ12を介して回転自在に支承される。出力軸11は図示しない多段変速機の主軸となる。
【0022】
出力軸11の外周には、ステータ羽根車4のハブ4hを一方向クラッチ13を介して支承する円筒状のステータ軸14が配置され、これら出力軸11及びステータ軸14間には、それらの相対回転を許容する軸受ブッシュ15が介裝される。ステータ軸14の外端部はミッションケース16に回転不能に支持される。
【0023】
ステータ羽根車4のハブ4hと、これに対向するポンプ羽根車2及びタービン羽根車3の各ハブ2h,3hとの間にはスラストニードルベアリング17,17′が介裝される。
【0024】
またステータ軸14の外周には、ポンプ羽根車2に結合した補機駆動軸18が相対回転可能に配置され、この補機駆動軸18によって、トルクコンバータTに作動オイルを供給するオイルポンプ19が駆動される。
【0025】
タービン羽根車3及び伝動カバー5は、それらの間にクラッチ室20を画成し、このクラッチ室20に、タービン羽根車3及び伝動カバー5間を直結し得るロックアップクラッチLが収容される。ロックアップクラッチLの主体をなすクラッチピストン21により、クラッチ室20は、タービン羽根車3側の内側室20aと伝動カバー5側の外側室20bとに区画される。
【0026】
このクラッチピストン21の、伝動カバー5の内側面に対向する側面には摩擦ライニング23が付設される。このクラッチピストン21は、タービン羽根車3のハブ3hの外周面に摺動可能に支承させており、摩擦ライニング23を伝動カバー5の内側面に圧接させるクラッチオン位置と、その内壁から離間するクラッチオフ位置との間を軸方向に移動し得るようになっている。
【0027】
出力軸11の中心部には第1油路26が設けられ、この第1油路は、横孔24及び、スラストニードルベアリング10側方の通溝25を介してクラッチ室20の外側室20bに連通する。また補機駆動軸18とステータ軸14との間には第2油路27が画成され、この第2油路27は、スラストニードルベアリング17,17′及び一方向クラッチ13を介して循環回路6の内周部に連通する。これら第1油路26及び第2油路27は、ロックアップ制御弁28により、オイルポンプ19の吐出側とオイル溜め30とに交互に接続されるようになっている。
【0028】
前記クラッチ室20には、クラッチピストン21及びタービン羽根車3間を緩衝的に連結する本発明に係るトルクダンパDが配設される。このトルクダンパDについて次に説明する。
【0029】
図1及び
図2において、トルクダンパDは、筒状ハウジング31と、複数組(図示例では三組)ばね集合体34,34…と、これらばね集合体34,34…とそれぞれ同数の駆動部材36,36…及び従動部材37,37…とを備えており、これらについて順次説明する。
【0030】
図1及び
図4に示すように、筒状ハウジング31は、クラッチピストン21の外周縁部からタービン羽根車3側に屈曲して形成される。またクラッチピストン21には、筒状ハウジング31の開口端を覆うようにその周方向に一定の間隔を開けて並ぶ複数個のばねホルダ38,38…がリベット41により固着される。而して、クラッチピストン21、筒状ハウジング31及びばねホルダ38,38…により環状のばね室33が画成され、このばね室33に複数組のばね集合体34,34…が収容される。
【0031】
各駆動部材36は、筒状ハウジング31の周方向に並ぶばねホルダ38,38…間においてクラッチピストン21にリベット42により固着される基部36aと、この基部36aから突出して筒状ハウジング31の内周面に近接配置されるコ字状部36bとよりなっており、そのコ字状部36bは、クラッチピストン21と反対側を開放している。
【0032】
各従動部材37はタービン羽根車3の背面に溶接により固着されるもので、その先端部は前記駆動部材36のコ字状部36b内にそれと非接触状態で配置され、その先端部の回動方向両端部はコ字状部36bより突出している。これら駆動及び従動部材36,37は、クラッチピストン21及びタービン羽根車3の相対回動と共に相対回動するようになっている。
【0033】
図2〜
図5に示すように、各ばね集合体34は、筒状ハウジング31の内周面に沿って配列される複数個(図示例では3個)の直線状のコイルばね43,43…と、最外側位置のコイルばね43の外端部を支承しながら駆動部材36及び従動部材37に離間可能に当接する外側ばね座部材44と、隣接するコイルばね43,43…間に介装される中間ばね座部材45と、この中間ばね座部材45に支持されて筒状ハウジング31の内周面に転がり自在に当接するよう、筒状ハウジング31の周方向に並ぶ一対のローラ50,50とより構成され、各コイルばね43には、所定の圧縮セット荷重が付与される。また各コイルばね43の中空部には、それより短い補助コイルばね46が収納される。
【0034】
上記外側ばね座部材44は合成樹脂製であって、その一端部には、最外側位置のコイルばね43の外端面を支承するばね座44aと、このばね座44aより突出して該コイルばね43の外端部内周面に軽圧入される連結軸44bとを一端に有し、またその他端部には、駆動部材36のコ字状部36bに当接する当接面44cが設けられる。
【0035】
筒状ハウジング31には、外側ばね座部材44が駆動部材36との当接位置にあるとき、その外側ばね座部材44の半径方向外方への動きを規制する円弧状の規制壁31aが筒状ハウジング31の一部を半径方向内方に凹入させることで形成される。また従動部材37には、上記コ字状部36b外へ突出した部分を受け入れて、外側ばね座部材44の筒状ハウジング31内周の一般面(前記規制壁31a以外の内周面)への接触を防ぐ位置決め溝44dとが設けられる。
【0036】
一対のローラ50,50は、合成樹脂製で同一構造を有するものであり、何れもクラッチピストン21の軸線と平行な軸部50aと、この軸部50aの両端にそれと同軸状に形成される、軸部50aより大径の一対のローラ部50b,50bとで構成される。その際、各ローラ50の軸方向長さSは、コイルばね43の外径D1より小さく且つその内径D2より大きく設定される。
【0037】
中間ばね座部材45も合成樹脂製であって、これに隣接する2個のコイルばね43,43の対向端部を支承する一対のばね座45a,45aを両端に有し、これらばね座45a,45aの中心部からは、上記2個のコイルばね43,43の対向端部の内周面に嵌合する一対の連結軸45b,45bが一体に突設される。中間ばね座部材45の両側面には、筒状ハウジング31の内周面に向かって開口する一対のローラ収容凹部47,47が形成され、各ローラ収容凹部47は、前記一対のローラ50,50の同側のローラ部50b,50bを共通に収容し得る大きさを有する。また両ローラ収容凹部47,47間の一枚の隔壁45cには、筒状ハウジング31の内周面に向かって開口する切欠き状の一対の軸受孔48,48が筒状ハウジング31の周方向に並んで形成される。
【0038】
而して、一対のローラ50,50の軸部50a,50aは、それぞれに対応する切欠き状の軸受孔48,48の底部に回転自在に支承され、一対のローラ50,50のローラ部50b,50b;50b,50bは、一対のローラ収容凹部47,47に無接触状態で収容されながら筒状ハウジング31の内周面に同時に転がり自在に当接させられる。そして、各ローラ50の軸方向の動きは、軸部50aを介して連結される一対のローラ部50b,50bに挟まれる中間ばね座部材45の隔壁45cによって規制され、また中間ばね座部材45の軸方向の動きは、その両側面に対向するクラッチピストン21及びばねホルダ38により規制される。
【0039】
前記一対の連結軸45b,45bは、これらと嵌合する2個のコイルばね43,43の中心軸線Y,Yに沿うよう相互に鈍角θをなしており、上記2個のコイルばね43,43の圧縮セット荷重によって、中間ばね座部材45を半径方向外方に付勢して、ローラ50,50を筒状ハウジング31の内周面に押圧する。
【0040】
かくして外側ばね座部材44及び中間ばね座部材45に支持されるコイルばね43は、筒状ハウジング31内周面との接触を阻止される。
【0041】
さらに中間ばね座部材45において、中間ばね座部材45の両側面には、それぞれ筒状ハウジング31の周方向に延びると共に、互いに筒状ハウジング31の半径方向に間隔をおいて並ぶ各一対のスライドリブ52,52;52,52が一体に形成される。各一対のスライドリブ52,52は、コイルばね43,43の外周面より外方に突出していて、クラッチピストン21又はばねホルダ38に摺動自在に接触するようになっており、その接触により、コイルばね43,43のクラッチピストン21又はばねホルダ38との接触を防ぐようになっている。しかも各一対のスライドリブ52,52間は、前記ローラ収容凹部47に連なっていてロックアップクラッチL内の作動オイルが流通する油溝53とされる。
【0042】
尚、図示例では、中間ばね座部材45の各側面の一対のスライドリブ52,52のうち、筒状ハウジング31側のスライドリブ52では、その中間部がローラ収容凹部47により分断されるが、これを分断させずに連続させることもできる。
【0043】
前記各ばねホルダ38には、駆動部材36及び従動部材37の相対回動時、駆動部材36の端部を受容し得る案内溝38aが設けられる。
【0044】
次に、この実施形態の作用について説明する。
【0045】
エンジンのアイドリングないし極低速運転域では、ロックアップ制御弁28は、
図1に示すように、第1油路26をオイルポンプ19の吐出側に接続する一方、第2油路27をオイル溜め30に接続するように、図示しない電子制御ユニットにより制御される。したがって、エンジンのクランク軸1の出力トルクが駆動板8、伝動カバー5、ポンプ羽根車2へと伝達して、それを回転駆動し、更にオイルポンプ19をも駆動するので、オイルポンプ19からの吐出される作動オイルがロックアップ制御弁28から第1油路26、横孔24及び通孔25、クラッチ室20の外側室20bを順次経て循環回路6に流入し、該回路6を満たした後、スラストニードルベアリング17,17′及び一方向クラッチ13を順次経て第2油路27に移り、ロックアップ制御弁28からオイル溜め30へと還流する。
【0046】
而して、クラッチ室20では、上記のような作動オイルの流れにより外側室20bの方が内側室20aよりも高圧となり、その圧力差によりクラッチピストン21が伝動カバー5の内壁から引き離される方向へ押圧されるので、ロックアップクラッチLはオフ状態となっており、ポンプ羽根車2及びタービン羽根車3の相対回転を許容している。したがって、クランク軸1からポンプ羽根車2が回転駆動されると、循環回路6を満たしている作動オイルが矢印のように循環回路6を循環することにより、ポンプ羽根車2の回転トルクをタービン羽根車3に伝達し、出力軸11を駆動する。
【0047】
このとき、ポンプ羽根車2及びタービン羽根車3間でトルクの増幅作用が生じていれば、それに伴う反力がステータ羽根車4に負担され、ステータ羽根車4は、一方向クラッチ13のロック作用により固定される。
【0048】
トルク増幅作用を終えると、ステータ羽根車4は、これが受けるトルク方向の反転により、一方向クラッチ13を空転させながらポンプ羽根車2及びタービン羽根車3と共に同一方向へ回転するようになる。
【0049】
トルクコンバータTがこのようなカップリング状態となったところで、電子制御ユニットによりロックアップ制御弁28を切換える。その結果、オイルポンプ19の吐出作動オイルは、先刻とは反対に、ロックアップ制御弁28から第2油路27を経て循環回路6に流入して、該回路6を満たした後、クラッチ室20の内側室20aに移って、該内側室20aをも満たす。一方、クラッチ室20の外側室20bは、第1油路26及びロックアップ制御弁28を介してオイル溜め30に開放されるので、クラッチ室20では、内側室20aの方が外側室20bよりも高圧となり、クラッチピストン21は、その圧力差により伝動カバー5側に押圧され、摩擦ライニング23を伝動カバー5の内側壁に圧接させ、ロックアップクラッチLはオン状態となる。したがって、クランク軸1からポンプ羽根車2に伝達した回転トルクは、伝動カバー5からクラッチピストン21、駆動部材36、ばね集合体34及び従動部材37を介してタービン羽根車3に機械的に伝達することになるから、ポンプ羽根車2及びタービン羽根車3は直結状態となり、クランク軸1の出力トルクを出力軸11に効率良く伝達することができ、燃費の低減を図ることができる。
【0050】
このようなロックアップクラッチのオン状態において、エンジンの加速又は減速運転に伴ないポンプ羽根車2及びタービン羽根車3間でトルク変動が生ずると、
図7に示すように、クラッチピストン21に連結した駆動部材36と、タービン羽根車3に連結した従動部材37とが相対的に回動し、各ばね集合体34の複数のコイルばね43,43…は、外側ばね座部材44と中間ばね座部材45との間、或い中間ばね座部材45同士間において圧縮される。
【0051】
そして駆動部材36及び従動部材37の相対回動が所定角度以上に進むと、各コイルばね43内の補助コイルばね46が、外側ばね座部材44と中間ばね座部材45との間、或いは中間ばね座部材45同士間において補助コイルばね46も圧縮されるようになる。
【0052】
このようにコイルばね43及び補助コイルばね46の段階的圧縮変形により、ばねの総合反発力が非直線的に増加し、ポンプ羽根車2及びタービン羽根車3間で発生するトルクショックを効果的に吸収することができる。
【0053】
ところで、各ばね集合体34において、各コイルばね43は、外側ばね座部材44と中間ばね座部材45、或いは中間ばね座部材45同士により両端部を支持され、伸縮中、筒状ハウジング31の内周面に接触することはない。またコイルばね43の伸縮に伴ない、コイルばね43,43同士間を連結する中間ばね座部材45が筒状ハウジング31の周方向に沿って移動するが、この中間ばね座部材45に支持されるローラ50,50が筒状ハウジング31の内周面を転がることにより、中間ばね座部材45の上記移動がスムーズに行われる。
【0054】
特に、ローラ50は、一対のローラ部50b,50bを、これらより小径の軸部50aを介して一体に連結して構成され、その軸部50aが、中間ばね座部材45の隔壁45cの軸受孔48に支承されると共に、筒状ハウジング31の内周面を転がるローラ部50b,50bは、中間ばね座部材45の両側の一対のローラ収容凹部47,47に無接触状態で収容されるので、ローラ部50b,50bの外周面が中間ばね座部材45と接触することがない。またローラ50の軸方向の動きは、一対のローラ部50b,50b間に介在する中間ばね座部材45の隔壁45cにより規制され、また中間ばね座部材45の軸方向の動きは、クラッチピストン21及びばねホルダ38により規制されるが、このローラ50及び中間ばね座部材45に作用するスラスト荷重は極めて小さいので、ローラ部50b,50bと隔壁45cとの間に生じる摩擦抵抗は無視し得る程に小さい。
【0055】
結局、ローラ50が、その回転時に受ける抵抗は、主として小径の軸部50aと軸受孔48との間に発生する比較的小さい摩擦抵抗であるから、ローラ50は、筒状ハウジング31の内周面を極めてスムーズに転動することができ、これにより各コイルばね43の伸縮にヒステリシスを殆ど発生させずに済み、トルクダンパDは良好なトルク緩衝特性を発揮することができる。
【0056】
また中間ばね座部材45には、筒状ハウジング31の軸方向に並ぶ一対のローラ50,50が支持され、これらが筒状ハウジング31の内周面を同時に転がり可能に当接するので、一対のローラ50,50の荷重分担によりそれぞれの耐久性の向上を図ることができる。その上、中間ばね座部材45は、合計4個のローラ部50b,50b;50b,50bを介して筒状ハウジング31に支持されることで、中間ばね座部材45の、軸方向への傾きのみならず、軸部50a,50a周りの回転が拘束され、常に安定した姿勢を保つことができる。その際、ローラ50の軸方向長さSを、コイルばね43の外径D1より小さく且つその内径D2より大きく設定したことは、軸方向に並ぶ一対のローラ部50b,50bの軸間距離を最大限大きくして中間ばね座部材45の、軸方向への傾き防止を図る上に有効である。
【0057】
しかも、中間ばね座部材45の両側面には、一対のローラ50,50の各同側のローラ部50b,50bを共通に収容するローラ収容凹部47,47が形成され、これらローラ収容凹部47,47間の一枚の隔壁45cに、一対のローラ50,50の軸部50a,50aを支承する切欠き状の一対の軸受孔48,48が形成されるので、中間ばね座部材45の簡単な構造により一対のローラ50,50を容易に収容、支持することができる。
【0058】
また中間ばね座部材45の両側面にはスライドリブ52,52が突設され、これらが
クラッチピストン21及びばねホルダ38にそれぞれ摺動自在に接触してコイルばね43,43の
クラッチピストン21及びばねホルダ38との接触を防ぐようになっているので、中間ばね座部材45の、
クラッチピストン21及びばねホルダ38に対する摺動をスムーズにしながら、コイルばね43,43の
クラッチピストン21及びばねホルダ38との接触を確実に防ぐことができる。
【0059】
さらに中間ばね座部材45の各側面に形成されるスライドリブ52は、筒状ハウジング31の周方向に延びると共に、互いに筒状ハウジング31の半径方向に間隔をおいて並ぶスライドリブ52,52の一対とされ、しかも各一対のスライドリブ52,52間は、ローラ収容凹部47に連なっていてロックアップクラッチL内の作動オイルが流通する油溝53とされるので、その油溝53を通してローラ収容凹部47及び軸受孔48,48に作動オイルが供給されることになり、ローラ50,50全体を効果的に潤滑することができ、したがってローラ50,50の極めてスムーズな回転を得て、トルクダンパDの、より良好なトルク緩衝特性を得ることができる。
【0060】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、各ばね集合体34のコイルばね数は3個以上とすることもでき、またばね集合体34は二組又は四組以上とすることもでき、筒状ハウジング31はタービン羽根車3側に形成することもできる。またローラ50を金属その他の材料で構成することもでき、またローラ50を構成する軸部50a及び一対のローラ部50b、50b間を相対回転自在に連結することもできる。さらに本発明は、ステータ羽根車を持たない流体継手に適用することもできる。