特許第5795510号(P5795510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5795510-圧着端子の電線に対する接続方法 図000002
  • 特許5795510-圧着端子の電線に対する接続方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795510
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】圧着端子の電線に対する接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-187630(P2011-187630)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-51079(P2013-51079A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】大沼 健太郎
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−077156(JP,A)
【文献】 特開昭52−001489(JP,A)
【文献】 実開平07−041977(JP,U)
【文献】 実開平06−031072(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部に相手方端子に対して接続するための電気接続部を有し、その後部に、底板部と、該底板部の両側縁から上方に延在し、且つ接続すべき電線の端末部を包み込むように内側に曲げられることで前記電線の端末部を前記底板部の上面に密着した状態となるように加締める一対の電線加締片と、を備える断面視略U字状に形成された第1と第2の2つの電線接続部を有し、該2つの電線接続部の前記底板部を共通とし且つ前記第1の電線接続部の電線加締片と第2の電線接続部の電線加締片とを前後に独立した状態で離間させて有し、屈曲不要な部位に使用され被覆に包まれた導体を単芯導体とする単芯電線又は被覆に包まれた導体を多芯導体とする多芯電線に共用する圧着端子の電線に対する接続方法であって、
前記電線が、前記単芯電線よりなる場合は、その被覆を除去して露出させた単芯導体を前記第1と第2の電線接続部の共通の底板部の上にセットし、その状態で、前記第1と第2の電線接続部の各一対の電線加締片を内側に曲げて前記単芯導体に共に加締めることにより、電線の端末部に端子を圧着固定し、
前記電線が、前記多芯電線よりなる場合は、その被覆を除去して露出させた多芯導体を前記第1の電線接続部の底板部の上にセットし、その状態で、第1の電線接続部の一対の電線加締片を内側に曲げて多芯導体に加締めると共に、被覆の付いた部分を前記第2の電線接続部の底板部の上にセットし、その状態で、第2の電線接続部の一対の電線加締片を内側に曲げて被覆の付いた部分に加締めることにより、電線の端末部に端子を圧着固定することを特徴とする圧着端子の電線に対する接続方法。
【請求項2】
前記単芯電線が、被覆に包まれた導体をアルミ単芯導体とする単芯アルミ電線よりなることを特徴とする請求項1に記載の圧着端子の電線に対する接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子の電線に対する接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
端子を圧着する電線には通常、多数の芯線を撚りあわせた多芯電線を使用している(例えば、特許文献1参照)。しかし、多芯電線は、導体の断面積が大きくなるに従って使用する芯線の数が多くなるため、コストが高くなるという問題がある。そのため、屈曲性を必要としない部位に使用する電線に関しては、コストの安い単芯電線を多芯電線に代わり使用したいという要望がある。
【0003】
図2は単芯電線に対して端子を圧着する場合の従来の問題点を説明するための図であり、図2(a)は圧着する前の状態を示す断面図、図2(b)は圧着した後の状態を示す断面図、図2(c)は圧着した部分が高温と低温の繰り返し負荷を受けることによりクリープした状態を示す断面図である。
【0004】
図2(a)〜図2(c)において、10Aは単芯電線、11Aは単芯導体、12は単芯導体11Aを包む被覆である。また、20は圧着端子、21は底板部、22は電線接続部、22aは電線加締片である。図2(a)に示すように、圧着端子20は、前部に相手方端子等に対して接続するための電気接続部(図示略)を有し、その後部に、底板部21と、該底板部21の両側縁から上方に延在し、且つ接続すべき電線の端末部を包み込むように内側に曲げられることで電線の端末部を底板部21の上面に密着した状態となるように加締める一対の電線加締片22aと、を備える断面視略U字状に形成された電線接続部22を有している。
【0005】
この圧着端子20を単芯電線10Aに接続する場合は、図2(b)に示すように、被覆12を除去して露出させた単芯導体11Aを電線接続部22の底板部21の上にセットし、その状態で、電線接続部22の一対の電線加締片22aを内側に曲げて単芯導体11Aに加締めることにより、単芯電線10Aの端末部に圧着端子20を圧着固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−31072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このように単芯電線10Aに対して圧着端子20の電線加締部22を加締めた場合、電線の導体11Aが単芯であるがゆえに圧着荷重が分散し難くなり、その結果、図2(b)中のA部とB部に接触圧力が集中し、C部では接触圧力が低くなってしまうという問題がある。ここで、A部は一対の電線加締片22aの両先端が擦れ合いながら食い込んでいる圧着部断面の上側部分であり、接触圧力が非常に高くなっている。また、B部はA部に対向する底板部21の接触部分であり、A部ほどではないが接触圧力が高くなっている。また、C部は圧着部断面の両側方部分であり、接触圧力が低くなっている。
【0008】
このような接触圧力は、高温と低温を繰り返す環境下で単芯導体11Aや圧着端子20がクリープした際に変化を生じ、接触圧力が高かったA部やB部で接触圧力が低下し、これによって圧着部での電線と端子の接触抵抗が増加するという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧着部での接触面積を増やすことにより端子と電線の接触抵抗を減らすことができ、それにより電気接続の信頼性を高めることのできる圧着端子の電線に対する接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 前部に相手方端子に対して接続するための電気接続部を有し、その後部に、底板部と、該底板部の両側縁から上方に延在し、且つ接続すべき電線の端末部を包み込むように内側に曲げられることで前記電線の端末部を前記底板部の上面に密着した状態となるように加締める一対の電線加締片と、を備える断面視略U字状に形成された第1と第2の2つの電線接続部を有し、該2つの電線接続部の前記底板部を共通とし且つ前記第1の電線接続部の電線加締片と第2の電線接続部の電線加締片とを前後に独立した状態で離間させて有し、屈曲不要な部位に使用され被覆に包まれた導体を単芯導体とする単芯電線又は被覆に包まれた導体を多芯導体とする多芯電線に共用する圧着端子の電線に対する接続方法であって、
前記電線が、前記単芯電線よりなる場合は、その被覆を除去して露出させた単芯導体を前記第1と第2の電線接続部の共通の底板部の上にセットし、その状態で、前記第1と第2の電線接続部の各一対の電線加締片を内側に曲げて前記単芯導体に共に加締めることにより、電線の端末部に端子を圧着固定し、
前記電線が、前記多芯電線よりなる場合は、その被覆を除去して露出させた多芯導体を前記第1の電線接続部の底板部の上にセットし、その状態で、第1の電線接続部の一対の電線加締片を内側に曲げて多芯導体に加締めると共に、被覆の付いた部分を前記第2の電線接続部の底板部の上にセットし、その状態で、第2の電線接続部の一対の電線加締片を内側に曲げて被覆の付いた部分に加締めることにより、電線の端末部に端子を圧着固定することを特徴とする圧着端子の電線に対する接続方法。
【0013】
(2) 前記単芯電線が、被覆に包まれた導体をアルミ単芯導体とする単芯アルミ電線よりなることを特徴とする上記(1)に記載の圧着端子の電線に対する接続方法。
【0016】
上記(1)の構成の圧着端子の電線に対する接続方法によれば、接続対象の電線が単芯電線の場合は、第1と第2の両方の電線接続部の電線加締片を電線の単芯導体に共に加締め、接続対象の電線が多芯電線の場合は、前側の第1の電線接続部の電線加締片を電線の多芯導体に加締め、後側の第2の電線接続部の電線加締片を電線の被覆の付いている部分に加締めるので、1種類の端子の使い分けにより、電線の種類に応じて、それぞれに最適な接続状態を作り出すことができる。
【0017】
上記(2)の構成の圧着端子の電線に対する接続方法によれば、単芯電線として単芯アルミ電線を用いるので、銅電線に比べて軽量化を図りながら上記の効果を発揮することができる。また、電線のアルミ導体に対して端子が銅製である場合は、電食防止の観点などから電線の導体表面や端子の表面に鉄やニッケル等の中間電位のメッキを介在させることが一般的であるが、メッキが経年劣化などで剥がれても、電線の導体と端子の接触面積の増大により電気接続信頼性の維持を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電線の単芯導体に圧着した部分における導体と端子の接触面積を増やすことができ、それにより端子と電線の接触抵抗を減らすことができて、電気接続の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の説明図で、図1(a)は圧着端子を単芯電線に接続した部分の構成を示す斜視図、図1(b)は圧着端子を多芯電線に接続した部分の構成を示す斜視図である。
図2】単芯電線に対して端子を圧着する場合の従来の問題点を説明するための図であり、図2(a)は圧着する前の状態を示す断面図、図2(b)は圧着した後の状態を示す断面図、図2(c)は圧着した部分が高温と低温の繰り返し負荷を受けることによりクリープした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の説明図で、図1(a)は圧着端子を単芯電線に接続した部分の構成を示す斜視図、図1(b)は圧着端子を多芯電線に接続した部分の構成を示す斜視図である。
【0021】
この実施形態で使用する圧着端子20は、前部に相手方端子に対して接続するための電気接続部(図示略)を有し、その後部に、底板部21と、該底板部21の両側縁から上方に延在し、且つ接続すべき電線の端末部を包み込むように内側に曲げられることで電線の端末部を底板部21の上面に密着した状態となるように加締める一対の電線加締片22a、23aと、を備える断面視略U字状に形成された第1と第2の2つの電線接続部22、23を有しており、これらの電線接続部22、23の断面形状は図2(a)に示すものと同様に設定されている。この場合、2つの電線接続部22、23は、底板部21を共通とし、且つ、第1の電線接続部22の電線加締片22aと第2の電線接続部23の電線加締片23aとを前後に独立した状態で離間させて設けられている。
【0022】
そして、1種類の圧着端子20を電線の種類(単芯か多芯か)によらず共用することとし、図1(a)のように、電線が、被覆12に包まれた導体を単芯導体11Aとする単芯電線10Aよりなる場合は、その被覆12を除去して長目に露出させた単芯導体11Aを、前側の第1の電線接続部22の底板部21の上から後側の第2の電線接続部23の底板部21の上までの範囲にセットし、その状態で、第1と第2の電線接続部22、23の各一対の電線加締片22a、23aを内側に曲げて単芯導体11Aに共に加締めることにより、電線10Aの端末部に端子20を圧着固定する。
【0023】
また、図1(b)のように、電線が、被覆12に包まれた導体を多芯導体11Bとする多芯電線10Bよりなる場合は、その被覆12を除去して露出させた多芯導体11Bを前側の第1の電線接続部22の底板部21の上にセットし、その状態で、第1の電線接続部22の一対の電線加締片22aを内側に曲げて多芯導体11Bに加締めると共に、被覆12の付いた部分を第2の電線接続部23の底板部21の上にセットし、その状態で、第2の電線接続部23の一対の電線加締片23aを内側に曲げて被覆12の付いた部分に加締めることにより、多芯電線10Bの端末部に端子20を圧着固定する。
【0024】
ここでは、特に単芯電線10Aとしては、アルミ単芯導体(例えば、15sqのアルミ単線)を有する単芯アルミ電線を使用している。この単芯アルミ電線は、あまり屈曲性を有していないので、屈曲の不必要な部位に使用するようにする。
【0025】
この実施形態によれば、図1(a)のように、接続対象の電線が単芯電線10Aの場合は、第1と第2の両方の電線接続部22、23の電線加締片22a、23aを電線10Aの単芯導体11Aに共に加締め、図1(b)のように、接続対象の電線が多芯電線10Bの場合は、前側の第1の電線接続部22の電線加締片22aを電線10Bの多芯導体11Bに加締め、後側の第2の電線接続部23の電線加締片23aを電線10Bの被覆12の付いている部分に加締めるので、1種類の圧着端子20の使い分けにより、電線の種類に応じて、それぞれに最適な接続状態を作り出すことができる。
【0026】
特に、接続対象の電線が単芯電線10Aの場合は、第1の電線接続部22の電線加締片22aに加えて第2の電線接続部23の電線加締片23aも、電線10Aの単芯導体11Aに加締めるので、電線10Aの単芯導体11Aと圧着端子20の接触面積の増大を図ることができ、多芯電線10Bに比べて可撓性の少ない単芯電線10Aである場合にも、電線10Aと圧着端子20の電気接続の信頼性を高めることができる。また、第1の電気接続部22の電線加締片22aとその後側の第2の電線接続部23の電線加締片23aとが互いに独立して分離しているので、各電線加締片22a、23aを単芯導体11Aに加締めた際に、圧着端子20にかかる応力を明確に分散化することができ、第1および第2のそれぞれの電気接続部22、23において強固な圧着強度を維持することができて、その点からも電線10Aと端子20の電気接続の信頼性を高めることができる。また、電線の種類によらず圧着端子20の種類を1種類に統一したので、端子20の成形型を電線の種類に応じて用意する必要がない。
【0027】
また、圧着端子20の接続対象の電線として単芯アルミ電線10Aを用いた場合は、銅電線に比べて軽量化を図りながら上記の効果を発揮することができる。また、電線のアルミ導体に対して端子が銅製である場合は、電食防止の観点などから電線の導体表面や端子の表面に鉄系やニッケル系などのアルミと銅の中間電位の材料のメッキを介在させることが一般的であるが、メッキが経年劣化などで剥がれても、電線の導体と端子の接触面積の増大により電気接続信頼性の維持を図ることができる。
【0028】
また、第1の電線接続部22の電線加締片22aと第2の電線接続部23の電線加締片23aとを互いに分離させているので、多芯電線10Bに接続する際に、第2の電線接続部23の電線加締片23aによって、防水栓を被覆12と一緒に加締めることも可能である。
【0029】
なお、本明細書では、アルミニウムとアルミニウム合金を略称して単に「アルミ」と記述し、銅と銅合金を略称して単に「銅」と記述している。
【0030】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0031】
10A 単芯電線
10B 多芯電線
11A 単芯導体
11B 多芯導体
12 被覆
20 圧着端子
21 底板部
22 第1の電線接続部
22a 電線加締片
23 第2の電線接続部
23a 電線加締片
図1
図2