特許第5795560号(P5795560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795560
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ワークを熱加工する炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/30 20060101AFI20150928BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20150928BHJP
   F27B 9/36 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   F27B9/30
   C21D1/00 114A
   F27B9/36
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-166355(P2012-166355)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2013-47598(P2013-47598A)
(43)【公開日】2013年3月7日
【審査請求日】2014年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-164420(P2011-164420)
(32)【優先日】2011年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】中野 正昭
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宗作
【審査官】 坂巻 佳世
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−106114(JP,A)
【文献】 特開昭53−072711(JP,A)
【文献】 特開2006−284156(JP,A)
【文献】 特開2004−067509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/30
C21D 1/00
F27B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを熱加工する気流を吹き出すノズルが設けられた吹き出しフードを有するワークを熱加工する炉であって、
種々の寸法のワークに、上記ノズルから吹き出す気流が所望の流速で吹き当たるように、該ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整する駆動機構を備え、
ワークを搬送する搬送手段は、搬送面が上下方向への移動を伴う鉛直面内での矩形運動や円運動を行うウォーキングビーム式搬送手段であり、
ワークは、上記ウォーキングビーム式搬送手段で上下動を伴って搬送され、前記駆動機構は、ワークの上下動タイミングに合わせて、ワークの動きの上下方向成分の上下速度と同じ上下速度で、ワークの上下ストローク量と同じ上下ストローク量で、前記ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整し、
さらに、ワークの寸法に関する情報と上記ウォーキングビーム式搬送手段の上下動の制御値が入力される制御装置が備えられ、該制御装置は、前記駆動機構に接続されて、ワークの寸法に関する情報と制御値を出力してこれらに従って該駆動機構を駆動制御し、
さらに、前記ノズルは、熱加工を行うゾーン内に、ワークが搬送される方向に複数配列され、前記駆動機構は、各ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を、複数のノズルそれぞれで個別に調整することを特徴とするワークを熱加工する炉。
【請求項2】
前記駆動機構は、種々の寸法のワークに、前記ノズルから吹き出す気流が一定の流速で吹き当たるように、該ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整することを特徴とする請求項1に記載のワークを熱加工する炉。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記ノズルとワーク部分との距離を調整するために、前記吹き出しフードまたは該ノズルを駆動することを特徴とする請求項1または2に記載のワークを熱加工する炉。
【請求項4】
ワークの寸法を予め自動検出して前記制御装置に入力するセンサを備えたことを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載のワークを熱加工する炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対して加熱、均熱、冷却等の熱加工を行うための気流を吹き出すノズルが設けられた吹き出しフードを有するワークを熱加工する炉を対象として、ワークの寸法を問わず、流速の速い気流をワークに吹き当てて効率よく熱加工することが可能であって、省スペース化及び省エネルギ化に資するワークを熱加工する炉に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材などの熱伝導性を有するワークを加熱したり、均熱したり、冷却したりして、ワークを熱加工する炉の中には、吹き出しフードを備えて、この吹き出しフードに設けたノズルから、熱風や冷風を気流にして吹き出すようにしたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1の「連続加熱炉」は、鋼材を連続搬送して加熱、均熱する加熱炉であって、燃焼用バーナと燃焼排ガスを炉内で循環するファンと鋼材搬送路を覆って燃焼排ガスを炉床から天井に誘導する仕切り板と鋼材搬送路の上部で仕切り板の下部に燃焼排ガスを整流するスリット板を有し、該スリット板のスリット幅が鋼材搬送方向で変化していて、昇温特性、炉温分布特性に優れているものである。スリットがノズルに相当し、鋼材はウォーキングビームによって搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−57621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術では、ウォーキングビームの鋼材搬送面と、気流を吹き出すスリットが形成されたスリット板との距離関係は、一定となっている。従って、大雑把に言って、鋼材搬送面上の鋼材寸法の大小により、鋼材とスリットとの間の距離が変化する。具体的には、高さ寸法が高い鋼材はスリットに近く、低い鋼材はスリットから遠くなる距離関係にある。
【0006】
スリットから吹き出される燃焼排ガスの気流は、吹き出し直後は流速が速いが、スリットから遠ざかるにつれて拡散し、流速が遅くなっていく。気流で吹き当てて鋼材を熱加工する場合、気流から鋼材への熱伝達は、流速が速いほど、すなわち鋼材とスリットとの距離が近いほど効率がよい。
【0007】
以上のことから、寸法が低い鋼材であればあるほどスリットから遠く、従って鋼材に吹き当たる気流の流速が遅くなって十分な熱伝達を確保することが難しく、このため、所望の温度に加熱するまでに長い時間を要してしまう。
【0008】
各種様々な寸法の鋼材を取り扱う熱加工用の炉を設計する場合、鋼材搬送面からその上方に位置するスリット板までの高さ寸法は、最も背の高い鋼材の寸法を基準にして決定する必要がある一方で、所望の温度まで加熱するのに必要な加熱時間については、熱伝達が悪い最も背の低い鋼材の寸法を基準にして決定する必要があり、この加熱時間を確保するために、大きな加熱能力の設備を必要としたり炉の寸法が搬送方向に長くなって、大きな設備スペースが必要になるという課題があった。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、ワークに対して加熱、均熱、冷却等の熱加工を行うための気流を吹き出すノズルが設けられた吹き出しフードを有するワークを熱加工する炉を対象として、ワークの寸法を問わず、流速の速い気流をワークに吹き当てて効率よく熱加工することが可能であって、省スペース化及び省エネルギ化に資するワークを熱加工する炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるワークを熱加工する炉は、ワークを熱加工する気流を吹き出すノズルが設けられた吹き出しフードを有するワークを熱加工する炉であって、種々の寸法のワークに、上記ノズルから吹き出す気流が所望の流速で吹き当たるように、該ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整する駆動機構を備え、ワークを搬送する搬送手段は、搬送面が上下方向への移動を伴う鉛直面内での矩形運動や円運動を行うウォーキングビーム式搬送手段であり、ワークは、上記ウォーキングビーム式搬送手段で上下動を伴って搬送され、前記駆動機構は、ワークの上下動タイミングに合わせて、ワークの動きの上下方向成分の上下速度と同じ上下速度で、ワークの上下ストローク量と同じ上下ストローク量で、前記ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整し、さらに、ワークの寸法に関する情報と上記ウォーキングビーム式搬送手段の上下動の制御値が入力される制御装置が備えられ、該制御装置は、前記駆動機構に接続されて、ワークの寸法に関する情報と制御値を出力してこれらに従って該駆動機構を駆動制御し、さらに、前記ノズルは、熱加工を行うゾーン内に、ワークが搬送される方向に複数配列され、前記駆動機構は、各ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を、複数のノズルそれぞれで個別に調整することを特徴とする。
【0011】
前記駆動機構は、種々の寸法のワークに、前記ノズルから吹き出す気流が一定の流速で吹き当たるように、該ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整することを特徴とする。
【0012】
前記駆動機構は、前記ノズルとワーク部分との距離を調整するために、前記吹き出しフードまたは該ノズルを駆動することを特徴とする。
【0016】
ワークの寸法を予め自動検出して前記制御装置に入力するセンサを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるワークを熱加工する炉にあっては、ワークに対して加熱、均熱、冷却等の熱加工を行うための気流を吹き出すノズルが設けられた吹き出しフードを有するワークを熱加工する炉を対象として、ワークの寸法を問わず、流速の速い気流をワークに吹き当てて効率よく熱加工することができて、省スペース化及び省エネルギ化に資することができる。さらに、ワークを搬送する搬送手段が、搬送面が上下方向への移動を伴う鉛直面内での矩形運動や円運動を行うウォーキングビーム式搬送手段であって、ワークは、ウォーキングビーム式搬送手段で上下動を伴って搬送され、駆動機構は、ワークの上下動タイミングに合わせて、ワークの動きの上下方向成分の上下速度と同じ上下速度で、ワークの上下ストローク量と同じ上下ストローク量で、ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を調整し、さらに、ワークの寸法に関する情報とウォーキングビーム式搬送手段の上下動の制御値が入力される制御装置が備えられ、制御装置は、駆動機構に接続されて、ワークの寸法に関する情報と制御値を出力してこれらに従って駆動機構を駆動制御し、さらに、ノズルは、熱加工を行うゾーン内に、ワークが搬送される方向に複数配列され、駆動機構は、各ノズルと当該ノズルに面するワーク部分との間の距離を、複数のノズルそれぞれで個別に調整するので、このようにすれば、搬送手段がワークの搬送を停止している段階だけでなく、搬送を行う段階であっても、常にノズルから吹き出す気流をワークに的確に当てながらワークを熱加工することができ、必要加熱時間を短縮できると共に、炉の長さも短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るワークを熱加工する炉の好適な一実施形態を示す概略側断面図である。
図2図1に示したワークを熱加工する炉の均熱ゾーンの拡大概略側断面図である。
図3】従来の熱加工状況を説明するための説明図である。
図4図1に示したワークを熱加工する炉による熱加工状態を説明するための説明図である。
図5】本発明に係るワークを熱加工する炉の変形例を示す、図2に対応する拡大概略側断面図である。
図6】本発明に係るワークを熱加工する炉の他の変形例を示す、図1に対応する概略側断面図である。
図7】本発明に係るワークを熱加工する炉のさらに他の変形例を示す、図2に対応する拡大概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るワークを熱加工する炉の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係るワークを熱加工する炉1は基本的には、図1図2及び図4に示すように、ワークw1,w2を熱加工する気流Fを吹き出すノズル12bが設けられた吹き出しフード12を有するワークを熱加工する炉1であって、種々の寸法のワークw1,w2に、ノズル12bから吹き出す気流Fが所望の流速で吹き当たるように、ノズル12bと当該ノズル12bに面するワーク部分Xとの間の距離Hを調整する駆動機構13を備えて構成される。熱加工は、加熱・冷却処理だけでなく、焼き入れなどの表面加工を含む。
【0020】
駆動機構13は、種々の寸法のワークw(w1,w2)に、ノズル12bから吹き出す気流Fが一定の流速で吹き当たるように、ノズル12bと当該ノズル12bに面するワーク部分Xとの間の距離Hを調整する。駆動機構13は、ノズル12bとワーク部分Xとの距離Hを調整するために、吹き出しフード12を駆動する。
【0021】
ワークwの寸法に関する情報が入力される制御装置14が備えられ、制御装置14は、駆動機構13に接続されて、当該駆動機構13を制御するためのワークwの寸法に関する情報を出力する。ワークwの寸法を予め自動検出して制御装置14に入力するセンサ15を備える。
【0022】
図1には、本実施形態に係るワークを熱加工する炉1の概略側断面図が示されている。このワークを熱加工する炉1は、ワークw(w1;高さ寸法の高いワーク、w2;高さ寸法の低いワーク)の装入口2から抽出口3に向かって、加熱ゾーン4、均熱ゾーン5及び冷却ゾーン6を備えている。
【0023】
ワークを熱加工する炉1は、これらゾーン4〜6を順次連続的に経過していくワークwに対し、加熱・均熱・冷却の各熱加工を施す。炉1は、鋼材などの熱伝導性を有するワークwを対象として熱加工を行う。炉1には、装入口2側から各ゾーン4〜6を通じて抽出口3側へわたって、ワークwを搬送する搬送面7aを備える搬送手段7が設けられる。搬送手段7は、ウォーキングビーム式やプッシャー式、ベルト式、ローラ式など、どのようなものであっても良い。
【0024】
搬送手段7で搬送されるワークwは、装入口2から加熱ゾーン4内に装入されて加熱処理され、次いで均熱ゾーン5内で均熱処理され、次いで冷却ゾーン6内で冷却処理され、その後、抽出口3から炉1外方へ抽出される。図示した炉1の構成は一例であって、炉1としては、これら均熱ゾーン等4〜6の少なくともいずれか一つを備えて構成されていても良いし、あるいは追加のゾーンを備えて構成されていても良い。
【0025】
図2には、加熱ゾーン4、均熱ゾーン5及び冷却ゾーン6のうち、均熱ゾーン5の拡大概略側断面図が示されている。加熱ゾーン4や冷却ゾーン6も、この均熱ゾーン5とほぼ同様に構成される。
【0026】
均熱ゾーン5は、両隣の加熱ゾーン4及び冷却ゾーン6と連通される入口開口8及び出口開口9を有する炉体10を備える。炉体10の内部空間には、炉体10の底部に配置された上記搬送手段7と、炉体10の天井部に配置された循環ファン装置11と、搬送手段7の搬送面7a上方に設けられた吹き出しフード12と、炉内雰囲気を加熱して一定の高温状態に維持するための加熱装置(図示せず)とが設けられる。
【0027】
循環ファン装置11は、上端及び下端が開放された中空ダクト11aと、中空ダクト11aの上端に設けられ、加熱装置で加熱された炉内雰囲気を炉体10内で循環させるファン11bとから構成される。特にファン11bは、吹き出しフード12により、天井部側から搬送面7aへ向かって下向きの気流を発生させる。
【0028】
吹き出しフード12は、下方へ向かって末広がりに拡張形成される。窄められた吹き出しフード12上端には、スライド筒部12aが設けられ、このスライド筒部12aは中空ダクト11aに対し、ファン11bからの気流を外側へ漏らすことなく、上下方向へスライド自在に接続される。拡張された吹き出しフード12下端の内方には、搬送面7aに面して、面状ノズル12bが設けられる。
【0029】
面状ノズル12bは、多数の孔が形成されたメッシュ状の板部材やスリットを設けた山形の板部材で構成され、多数の孔やスリットは搬送面7aに面する。ファン11bで生成された下向きの気流は、吹き出しフード12の内部空間を介して、ノズル12bの孔から搬送面7aに向かって吹き出され、吹き出す気流によってワークwが熱加工される。
【0030】
吹き出しフード12には、これを駆動する駆動機構13が設けられる。駆動機構13は図示例にあっては、炉体10の天井部に設置された駆動部13aと、炉体10を貫通して設けられ、駆動部13aに一端が連結され、他端が吹き出しフード12に連結されたロッド13bとから構成されている。駆動部13aを駆動することでロッド13bが上下動し、これにより吹き出しフード12は、スライド筒部12aが中空ダクト11aに対しスライドしつつ、搬送面7aに対し上下方向に昇降駆動される。
【0031】
吹き出しフード12を、ワークwを搬送する搬送手段7の搬送面7aに対して、近づけたり遠ざけたりすることで、搬送面7a上のワークwと吹き出しフード12のノズル12bとの間の距離が調整される。駆動機構13としては、シリンダ式やラックアンドピニオン式など、搬送面7aに対し吹き出しフード12を接近離隔駆動できるものであれば、どのようなものであっても良い。
【0032】
ノズル12bから吹き出す下向き気流は、ワークwに吹き当てられる。本実施形態のように、ノズル12bとワークwが上下関係にある場合には、気流は、ノズル12bに面するワーク部分X、すなわち搬送面7a上のワークwの高さ方向頂部に吹き当たる傾向がある。
【0033】
違う高さ寸法のワークwを搬送して熱加工するに際し、駆動機構13はワークwに対し、これらワークwのノズル12bに面するワーク部分(ワーク頂部)Xとノズル12bとの距離が一定となるように、吹き出しフード12を昇降駆動する。距離が一定に調整されることで、ノズル12bから吹き出す気流が、違う高さ寸法を有するワークwに対し、一定の流速で吹き当てられる。
【0034】
ワークwに吹き当たる気流の流速は、ノズル12bとワーク部分Xとの距離を調整することでコントロールすることが可能であって、所望の流速でワークwに気流を吹き当てることができることは勿論である。また、駆動機構13は、吹き出しフード12を昇降駆動する場合だけでなく、図5に示した変形例のように、吹き出しフード12は炉体10に固定し、駆動機構13のロッド13bを、吹き出しフード12を貫通させて、ノズル12bに備えた通風穴付き支持板20に連結し、さらにノズル12bを吹き出しフード12に対しスライド部21でスライド自在として、ロッド13bを上下動することで吹き出しフード12に対し上下移動可能としたノズル12b自体を昇降駆動するようにしても良い。この場合、中空ダクト11aとスライド筒部12aが省略されて、吹き出しフード12は循環ファン装置11に一連に一体的に構成される。
【0035】
上記説明では、炉内雰囲気をファン11bで循環させる均熱ゾーン5について説明したが、加熱ゾーン4及び冷却ゾーン6も、加熱用空気や冷却用空気を炉外から炉内へ供給し、降温されたもしくは昇温された炉内雰囲気を炉外へ排出することを除き、均熱ゾーン5と同様に構成される。
【0036】
駆動機構13を駆動制御する装置構成が図1に示されている。駆動機構13の駆動部13aには、これを制御する制御装置14が接続される。制御装置14には、作業員等による手動操作でワークwの寸法、本実施形態にあっては、高さ寸法が入力される。
【0037】
制御装置14は、入力されたワークwの高さ寸法を駆動部13aに出力し、駆動部13aは、制御装置14から入力されるワークwの高さ寸法に応じて、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を上下昇降駆動し、異なる高さ寸法のワークwであっても、ノズル12bとノズル12bに面するワーク部分Xとの距離が一定になるように調整する。
【0038】
炉1には、装入口2から装入される前にワークwの高さ寸法を予め自動検出するセンサ15を備えて構成しても良い。センサ15は、制御装置14に接続され、検出したワークwの高さ寸法を自動的に制御装置14に入力する。そのようにセンサ15を備えることで、自動制御によっても吹き出しフード12(もしくはノズル12b)が制御される。
【0039】
次に、本実施形態に係るワークを熱加工する炉1の作用について説明する。炉1では、ワークw(w1,w2)の高さ寸法ごとにまとめて連続して搬送し、ワークwの熱加工を行う。ワークwの高さ寸法が変化するとき、それまでの同じ高さの全てのワークwを一旦抽出し、その後、高さ変化に合わせて全てのゾーン4〜6で駆動機構13により吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を駆動して高さ位置を変更する。
【0040】
また、同じ高さのワークwを抽出し終えたゾーン4〜6から順番に吹き出しフード12(またはノズル12b)を駆動して高さ位置を変更し、寸法の異なる新たなワークwを装入していけば、生産に寄与しない時間を減らすことができる。
【0041】
具体的に説明すると、ワークwの高さ寸法が変化する際、制御装置14には、手動操作でワークwの寸法が入力される。あるいは、センサ15がワークwの高さ寸法を予め自動検出し、自動検出された高さ寸法が制御装置14に入力される。
【0042】
高さ寸法が入力された制御装置14は、これから加工するワークwの高さ寸法に従って駆動機構13を駆動して吹き出しフード12(またはノズル12b)を上下移動し、ノズル12bとノズル12bに面するワーク部分Xとの間の距離を調整する。すなわち、ワークwの高さ寸法が変化しても、ノズル12bとノズル12bに面するワーク部分Xとの距離が常に一定になるように、駆動機構13により吹き出しフード12(またはノズル12b)を駆動する。
【0043】
準備完了後、炉1の装入口2から同じ高さ寸法のワークwを順次装入し、加熱ゾーン4、均熱ゾーン5及び冷却ゾーン6で熱加工して、抽出口3からワークwを抽出する。その後、ワークwの高さ寸法が変化する場合には、再度駆動機構13で吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を上下昇降駆動して、再設定する。
【0044】
ノズル12bから吹き出す気流Fで熱加工する際、図3に示した従来のように、吹き出しフード12と搬送面7aとの距離Dが一定であって、ワークw1,w2の高さ寸法の高低によってノズル12bとワークw1,w2との距離d1,d2が変化し、それにより吹き当たる気流Fの流速が変化する場合、寸法の低いワークw2については、気流の拡散(図中、点線Yで示す)に伴って流速が遅くなることにより熱伝導が悪く熱加工に長い時間が必要になる。
【0045】
これに対し、本実施形態にあっては、加熱ゾーン4、均熱ゾーン5及び冷却ゾーン6のいずれにあっても、駆動機構13で吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を上下昇降駆動してノズル12bとノズル12bに面するワーク部分X、例えばワーク頂部との距離Hを一定に保つことにより、図4に示すように、一定流速の気流Fをワークw(w1,w2)に吹き当てることができる。
【0046】
一定の流速で気流Fをワークwに吹き当てることで、寸法の高低(大小)に関わらず、ほぼ等しい熱伝達でワークwを熱加工することができ、低い寸法のワークw2であっても、高い寸法のワークw1とほぼ同様に熱加工することができる。従って、寸法の低いワークw2に合わせて炉1を長く設計する必要がなくなり、炉1の設備スペースを省スペース化することができると共に、省エネルギ化することができる。
【0047】
また、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)をワークwに接近させて流速の速い気流Fをワークwに吹き当てることも可能となり、熱伝達が向上して効率よく熱加工することができて、必要熱加工時間を短縮することができ、さらに炉1を短くして省スペース化できると共に、併せて時間当たりの処理量を増大することができて、省エネルギ化も達成することができる。
【0048】
ワークwの寸法が入力される制御装置14を備え、駆動機構13を、制御装置14に接続してこれより出力されるワークwの寸法に応じて吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を駆動するようにしたので、炉1の運転操作性を向上することができる。
【0049】
ワークwの寸法を予め自動検出して制御装置14に入力するセンサ15を備えたので、炉1を自動運転することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るワークを熱加工する炉1の構成は、既存の炉を容易に改造して適用することができ、今まで運転されていたゾーンのいずれかを休止し、少ないゾーンを用いてほぼ同様な処理量を確保することができる。
【0051】
上記実施形態にあっては、吹き出しフード12(またはノズル12b)を上下昇降駆動して、下向きに気流Fを吹き出すノズル12bとノズル12bに面するワーク部分Xとの間の高さを一定に調整する場合を例示して説明したが、上部から吊り下げたワークに対してノズル12bから上向きに気流Fを吹き出す場合であっても同様に、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を上下昇降駆動して距離を調整することができる。
【0052】
また、ワークwに対し、ノズル12bから水平方向横向きに気流Fを吹き当てる場合には、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を左右水平方向に駆動することで、ノズル12bに面するワーク部分(特に、左右幅方向突出部など)とノズル12bとの間の水平距離を調整することができる。このような変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0053】
図6には、上記実施形態に係るワークを熱加工する炉1の他の変形例が示されている。上記実施形態(図1参照)では、各ゾーン4〜6それぞれに単一の吹き出しフード12(もしくはノズル12b)が設けられている。吹き出しフード12(もしくはノズル12b)の高さ位置は、これから搬送されてくる先行のワークwの高さ寸法に応じてセットされ、その後に搬送されてくる後続の異なる高さ寸法のワークwを熱加工するときには、先行するワークw全てが吹き出しフード12(もしくはノズル12b)下を通過し終えた後でなければ、後続するワークwに合わせた高さ位置に再調整することができない。
【0054】
すなわち、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)直下にワークwが無くなって空になった後で、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)の高さが再調整される。
【0055】
この際、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)の搬送方向長さ寸法が長いと、炉1の設備として、熱加工が行われない区間が長距離に及んでしまい、時間的にも、エネルギ的にも、大きなロスとなると共に、炉1も大型化してしまう。
【0056】
この変形例は、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)の搬送方向長さ寸法Lを短くしたものである。例えば、各ゾーン4〜6内で、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)が、ワークwの搬送方向に複数,例えば3つ配列される。換言すると、上記実施形態で、各ゾーン4〜6に一つずつ設けられている吹き出しフード12(もしくはノズル12b)が、複数に分割される。同じ長さのゾーン4〜6であれば、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)の搬送方向長さ寸法Lが短縮される。
【0057】
駆動機構13は、これら各吹き出しフード12(もしくは各ノズル12b)とノズル12bに面するワーク部分Xとの間の距離Hを、複数の吹き出しフード12(もしくはノズル12b)で独立して個別に調整する。
【0058】
このようにすれば、ワークwの高さ寸法が切り替わる際、各吹き出しフード12(もしくは各ノズル12b)の搬送方向長さ寸法Lが短いので、ワークwが無くなって空になってしまう距離を狭めることができ、時間的・エネルギ的なロスを削減できて、生産効率を向上できると共に、炉1の長さも短くすることができる。
【0059】
図7には、上記実施形態に係るワークを熱加工する炉1のさらに他の変形例が示されている。例えば、ワークwを搬送する搬送手段7が、ウォーキングビーム式など搬送面7aが上下方向への移動(図中、矩形運動を表示する矢印のうち、矢印Qを参照)を伴う方式の場合、搬送を行う過程で、ワークwと吹き出しフード12(もしくはノズル12b)との間の距離Hが変動してしまい、ノズル12bから吹き出してワークwに当たる気流Fが安定せず、殊に、距離Hが広がった場合には、風速が落ちて熱効率が下がってしまう。従って、搬送を行う段階では、適切な熱加工を期待することができない。
【0060】
この変形例では、ワークwが搬送手段7により上下動を伴って搬送される場合には、駆動機構13が、ワークwの上下動タイミングに合わせて、ワークwの上下速度と同じ上下速度で、ワークw(搬送面7a)の上下ストローク量Sと同じ上下ストローク量Tで、ノズル12bと当該ノズル12bに面するワーク部分Xとの間の距離Hを常に一定に調整するようになっている。
【0061】
すなわち、ウォーキングビーム式の場合には、搬送面7aが鉛直面内で矩形運動や円運動を行うが、このような場合には、動きの上下方向成分と同じ速度、同じタイミングで、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を駆動機構13で上下方向に動かし、常に距離Hを一定にするという意味である。
【0062】
この場合、制御装置14に、搬送手段7の上下動の制御値を予め入力しておくようにし、この制御値に従って駆動機構13を駆動して、吹き出しフード12(もしくはノズル12b)を上下駆動すればよい。
【0063】
このようにすれば、搬送手段7がワークwの搬送を停止している段階だけでなく、搬送を行う段階であっても、常にノズル12bから吹き出す気流Fをワークwに的確に当てながらワークwを熱加工することができ、必要加熱時間を短縮できると共に、炉1の長さも短くすることができる。
【0064】
これら図6及び図7に示す変形例にあっても、吹き出しフード12またはノズル12bのいずれを昇降動作しても良いことはもちろんである。
【符号の説明】
【0065】
1 ワークを熱加工する炉
2 装入口
3 抽出口
4 加熱ゾーン
5 均熱ゾーン
6 冷却ゾーン
7 搬送手段
7a 搬送面
8 入口開口
9 出口開口
10 炉体
11 循環ファン装置
11a 中空ダクト
11b ファン
12 吹き出しフード
12a スライド筒部
12b ノズル
13 駆動機構
13a 駆動部
13b ロッド
14 制御装置
15 センサ
20 通風穴付き支持板
21 スライド部
F 気流
D,d1,d2,H 距離
L 吹き出しフード(もしくはノズル)の搬送方向長さ寸法
w(w1,w2) 熱伝導性のワーク
X ノズルに面するワーク部分
Y 気流の拡散
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7