(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
心電図(ECG)信号を使用して心臓内またはその近くに血管内デバイスを位置決めするコンピュータベースの医療機器の作動方法であって、当該医療機器は、血管内デバイスと、この血管内デバイスに取り付けられた電極と、この電極からの信号に基づいて前記血管内デバイスの位置を算出する電子モジュール及びコンピュータモジュールと、を備え、
前記方法は、
前記電子モジュールによる、それぞれ少なくともP波成分を有する複数の波形を含む、血管内デバイスに関連する血管内ECG信号を受信するステップと、
前記コンピュータモジュールによる、各所定の期間に対するP波振幅およびスペクトル電力を算出するために、複数の所定の期間にわたって前記血管内ECG信号を処理するステップと、
前記コンピュータモジュールによる、前記複数のP波振幅から最大P波振幅を、また前記複数のスペクトル電力から、関連する最大スペクトル電力を確定するステップと、
前記コンピュータモジュールによる、前記最大P波振幅および前記最大スペクトル電力を前記心臓内またはその近くの所定の位置に関連付けるステップと、
前記コンピュータモジュールによる、前記最大P波振幅に対する前記P波振幅の比、および前記最大スペクトル電力に対する前記スペクトル電力の比に基づいて、各所定の期間に対する前記血管内デバイスの位置を算出するステップと、
前記コンピュータモジュールによる、グラフィカルユーザインターフェースに前記血管内デバイスの前記位置を表示させるステップとを含む、方法。
前記ECG信号を処理する前記ステップが、各P波振幅に対する極性を確定するステップを含んでおり、前記血管内デバイスの前記位置を確定する前記ステップが、各所定の期間に対する前記P波極性に基づいている、請求項2に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大P波振幅に対する前記P波振幅の前記比が0.4未満であり、前記最大スペクトル電力に対する前記スペクトル電力の前記比が0.4未満であり、前記P波極性が単極性である場合に、前記血管内デバイスの前記位置が上大静脈である、請求項4に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大P波振幅に対する前記P波振幅の前記比が0.4から0.6の間であり、前記最大スペクトル電力に対する前記スペクトル電力の前記比が0.4から0.6の間であり、前記P波極性が単極性である場合に、前記血管内デバイスの前記位置が前記上大静脈の下側3分の1である、請求項5に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大P波振幅に対する前記P波振幅の前記比が0.9より大きく、前記最大スペクトル電力に対する前記スペクトル電力の前記比が0.9より大きく、前記P波振幅がR波振幅より大きい場合に、前記血管内デバイスの前記位置が前記導管動脈接合である、請求項6に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大スペクトル電力に対する前記スペクトル電力の前記比が0.6から0.9の間であり、前記P波極性が双極性である場合に、前記血管内デバイスの前記位置が右心房である、請求項7に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大P波振幅に対する前記P波振幅の前記比が0.4から0.6の間であり、前記最大スペクトル電力に対する前記スペクトル電力の前記比が0.4から0.6の間であり、前記P波極性が逆極性の単極性である場合に、前記血管内デバイスの前記位置が下大静脈の上側3分の1である、請求項8に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記血管内デバイスは、カテーテルの先端に曝された生理食塩水溶液カラムと接触している電極を備えたアダプタに結合された中心静脈カテーテルであり、前記血管内ECG信号は、前記電極によって測定された電気信号に基づいている、請求項4に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大皮膚P波振幅に対する前記血管内P波振幅の前記比が0.9から1.2の間であり、前記最大皮膚スペクトル電力に対する前記血管内スペクトル電力の前記比が0.9から1.2の間であり、前記P波極性が単極性である場合に、前記血管内デバイスの前記位置が上側上大静脈である、請求項11に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大皮膚P波振幅に対する前記血管内P波振幅の前記比が1.5から2.0の間であり、前記最大皮膚スペクトル電力に対する前記血管内スペクトル電力の前記比が1.5から2.0の間であり、前記P波極性が単極性である場合に、前記血管内デバイスの前記位置が前記上大静脈の下側3分の1である、請求項12に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大皮膚P波振幅に対する前記血管内P波振幅の前記比が2.5より大きく、前記最大スペクトル電力に対する前記スペクトル電力の前記比が2.59より大きく、前記血管内P波振幅が血管内R波振幅より大きい場合に、前記血管内デバイスの前記位置が導管動脈接合である、請求項13に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大皮膚スペクトル電力に対する前記血管内スペクトル電力の前記比が2.0から2.5の間であり、前記血管内P波極性が双極性である場合に、前記血管内デバイスの前記位置が右心房である、請求項14に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
前記最大皮膚P波振幅に対する前記血管内P波振幅の前記比が0.9から1.2の間であり、前記最大皮膚スペクトル電力に対する前記血管内スペクトル電力の前記比が0.9から1.2の間であり、前記P波極性が逆極性の単極性である場合に、前記血管内デバイスの前記位置が下大静脈の上側3分の1である、請求項15に記載のコンピュータベースの医療機器の作動方法。
【背景技術】
【0002】
[0003]心臓の電気伝導系は、特定の電気信号、電気エネルギー分布およびその挙動を作り出し、これらは胸腔内の特定の位置、および/または特定の心臓機能または疾患を示すものである。血管内、すなわち血管内からまたは心臓内から測定した場合、心臓の電気活動の特定のパラメータを使用して、心臓血管系内の特定の位置、および/または機能的状態、通常または異常を特定することができる。さらに、位置および疾患のタイプを局所的および正確に特定することによって、このような疾患の治療を最適化することができ、治療の効果をリアルタイムで監視することができる。
【0003】
[0004]2つのタイプの臨床的応用が典型的には対処される。第1のタイプは、血管内システムを通して血管内デバイスをガイドすることに関し、第2のタイプは、心臓の電気活動の非侵襲性または低侵襲性遠隔監視に関する。
【0004】
[0005]血管内カテーテルのガイド、位置決め、および定置確認は、以下のようないくつかの臨床応用例で必要である。
1.中心静脈アクセス、例えば、CVC、PICC、移植可能ポート。
2.血液透析カテーテル。
3.ペースメーカリード線の定置。
4.血行動態監視カテーテル、例えば、スワン−ガンツおよび中心圧力監視カテーテル。5.左心内へのガイドワイヤおよびカテーテルのガイド。
【0005】
[0006]カテーテル先端の位置は、患者の安全、処置の持続時間および成功にとって極めて重要である。カテーテル先端の目標位置を確認するための今日の代表例は、胸部X線である。加えて、胸部X線確認の限界を克服しようとする、2つのタイプのリアルタイムガイド製品、電磁ベースおよびECGベースの製品が現在市販されている。リアルタイムガイドが使用される病院では、X線の数、処置時間、および処置の費用を少なくする観点で結果が改善された。リアルタイムガイドでは、第1回目の成功率が典型的には75%〜80%から90%〜95%まで増加した。加えて、例えばイタリア、ベルギー、ドイツのECGガイドが使用される病院では、胸部X線確認が、90%を超える患者に対してなくなった。電磁システムは主に米国で使用されており、ECGベースシステムは主にヨーロッパで使用されている。技術適合に関して米国およびヨーロッパの市場の差を確定する他の要因のうち、a)処置を行うことが認められている医療従事者のタイプでは、看護師は米国ではより多くの柔軟性があり、b)配置されるデバイスのタイプでは、PICCは米国ではより頻繁に配置され、c)価格敏感性では、ヨーロッパの市場は、より価格に敏感であり、d)現在のガイドデバイスは、カテーテルと独占的に連動するように特別な製造業者によって市販されており、ガイドシステムの市場浸透は、カテーテル製造業者の市場浸透にも影響を与える。
【0006】
[0007]また、目標先端位置が、例えばSVCまたはRAの下側3分の1である場合に関する異なる選択肢が存在することが分かった。したがって、ガイド技術によりこれらの位
置の区別が可能になるべきである。現在の代表例である胸部X線は、典型的には2cmより優れた精度を必要とするこのような区別を常に可能にするものではない。また、ECGベースシステムは、心臓活動に関連する生理学的情報を利用するので、定置をガイドする能力は、生体構造に関して正確である。脈管構造内のカテーテル先端と典型的には患者の胸部上に定置された外部基準の間の距離を測定する電磁ガイドシステムには当てはまらない。本態様により、ECGベースシステムを使用して、カテーテル定置の最終結果を実証して、潜在的に代表例として胸部X線に代わることができる。
【0007】
[0008]利用可能な最も重要な診断ツールの1つ、ECGは、心臓の電気活動を波形として記録する。これらの波形を解釈することによって、調律異常、伝導異常、および電解質不均衡を識別することができる。ECGは、急性冠症候群および心膜炎などの疾患を診断および監視するのを助ける。心臓の電気活動は、周囲の組織を通して皮膚に放射される電流を作り出す。電極が皮膚に取り付けられる場合、これらは電気電流を感知し、心電計に伝達する。心臓からの電気電流が多くの方向で皮膚に放射されるので、電極は心臓の電気活動の全体像を得るために、皮膚上の異なる位置に配置される。電極はその後、心電図デバイス、またはコンピュータに接続され、リードおよび平面と呼ばれる、異なる視点からの情報を記録する。リードは、2つの点または極の間の心臓の電気活動の図を与える。平面は、心臓の電気活動の異なる図を与える、心臓の断面である。現在、ECG波形の解釈は、波形成分振幅を識別し、これを解析し、その後、特定の基準と振幅を比較することに基づいている。これらの振幅成分の変更形態は、特定の状態、例えばSTセグメントの上昇、または心臓内の特定の位置、例えばP波の振幅を示している。今日の慣習では、ECGモニタは、ECG波形を記録するために幅広く使用されている。より頻繁に、アプリケーションがECG振幅成分の自動識別のために利用可能になっている。特定の場合では、ツールが意思決定をサポートするために、および根本的な心臓疾患に関するECG振幅成分の自動解釈のために利用可能である。
【0008】
[0009]遠隔患者監視は、十分に確立した医療分野である。心臓疾患のさらなる遠隔監視は、必要および可能であるが、幅広く認められていない。理由の1つは、心臓活動に関連する信号、特にECG信号を取得する比較的複雑な方法に関連している。現在の遠隔監視技術の別の重要な限定的要因は、患者および医師側の両方でインターフェイス接続することが難しい電話回線のような通信チャネルの使用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0031]次に、本発明を図面を参照して説明するが、同様の参照番号は全体を通して同様の部品を指す。
[0032]本発明の実施形態は有利には、多くの臨床応用例および設定で、血管内ECGを取得し使用する、(1つまたは複数の)発明装置、コンピュータベースデータ処理アルゴリズムおよび方法を提供する。例えば、デバイスを使用して、心臓内およびその周りに血管内デバイスをガイドする、例えば、上大静脈、右心房、および右心室内に中心静脈アクセスデバイスをガイドすることができる。このような中心静脈アクセスデバイスは、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢挿入中心カテーテル(PICC)、移植可能ポート、血液透析カテーテル、トンネルカテーテルなどを備えることができる。本発明の装置でのガイドにより利益を受けることができる他のデバイスは、中心静脈系を通して定置される一時ペースメーカリードである。左心処置で使用されるカテーテルおよびガイドワイヤはまた、これらのデバイスを定位置にガイドするのに必要な、造影および放射線の量を減らすことによって本発明から利益を得ることができる。別の例では、装置を使用して、その電気活動に基づいて心臓疾患を低侵襲的に監視および評価する、例えば心臓サイクル内の前負荷を評価する、または鬱血性心不全内のSTセグメントおよびT波を監視することができる。
【0017】
[0033]本発明の一態様では、無菌アダプタ、信号取得用電子モジュール、コンピュータモジュール、ソフトウェア、および周辺デバイスおよび接続部からなる装置が記載されている。一実施形態では、信号取得用電子モジュールは、身体(血管内ECG)によって生成される血管内電気信号を取得および処理する専用であってもよく、別の実施形態では、電子モジュールは、血管内ECGと皮膚ECGを取得および処理する専用であってもよい。
【0018】
[0034]一実施形態では、電子モジュールおよびコンピュータモジュールは別のモジュールであってもよく、別の実施形態では、同一のモジュールおよびエンクロージャ内で一体化させることができ、さらに別の実施形態では、ブルートゥースなどの無線接続を介して互いに通信することができる。一実施形態では、装置は一体型プリンタを含むことができ、別の実施形態では、プリンタは装置の外部にあり、装置に取り付けることができ、装置は、ネットワークを介して、例えば無線で他のデバイスに接続させることができる。さら
に別の実施形態では、遠隔測定のために、および、例えば電話回線、インターネット、および/または無線電話を介して遠隔位置に血管内心電図を伝達するために装置を使用することができる。上に記載した実施形態のあらゆる組合せも可能である。
【0019】
[0035]本発明の別の態様では、様々な構成により、信号取得および処理用電子モジュールへの中心静脈アクセスデバイスなどの血管内デバイスの接続が可能になる。一実施形態では、デバイスは、2つの端部を有する接続ワイヤ、および各端部にある特殊コネクタからなる。一端部では、ワイヤは、市場で普通に市販されているような、金属またはニチノールガイドワイヤまたは探り針に接続させることができる。他端部では、ワイヤは電子モジュールに安全に接続させることができる。別の実施形態では、デバイスは、例えば被覆されていない遠位端および近位端、およびcmマーキングを備えたニチノールまたはステンレス鋼でできた被覆ガイドワイヤを備えている。このような一実施形態では、被覆されたガイドワイヤは血管内に挿入され、接続ワイヤは被覆されたガイドワイヤの近位端に接続される。別の実施形態では、デバイスは、電気接続ワイヤを備えたカテーテル/注射器アダプタを備えている。一端部では、電気接続ワイヤは、流体、例えばカテーテル/注射器アダプタ内に流れる生理食塩水に接触している。他端部では、接続ワイヤは電子モジュールに接続させることができる。
【0020】
[0036]本発明の別の態様では、様々な電極構成により、血管内ECGの最適な取得が可能になる。一実施形態では、単一のリードを使用して、脈管構造内での血管内デバイスの先端位置に関する情報を提供する。別の実施形態では、変形型3リード構成を使用して、先端位置情報を提供しながら同時に心臓活動の同時3リード監視を行う。別の実施形態では、遠隔測定のために、およびカテーテルの先端からの情報を遠隔で伝達するために、変形型単一リード構成プラスアースが使用される。
【0021】
[0037]本発明の別の態様では、ECG波形の解析のために、およびこれらの波形に基づく意思決定をサポートするために、アルゴリズムが導入されている。これらのアルゴリズムは、脈管構造内の異なる位置を区別し、身体機能(全身的および身体の特殊な位置での)、特に心機能を評価する。様々な実施形態では、これらのアルゴリズムは、波形の時間領域解析、すなわち、形態、例えば形状、統計、例えば挙動を使用する。
【0022】
[0038]他の実施形態では、アルゴリズムは、波形の周波数領域解析、すなわち、形態、例えば形状、統計、例えば挙動を使用する。別の実施形態ではまた、形態および統計など、時間および周波数領域内の信号エネルギー解析が行われる。曖昧な、統計および知識に基づく意思決定も、本発明によって、決定サポートツールとして考えられる。
【0023】
[0039]本発明の別の態様では、有利にはデータおよびワークフローの解釈を容易にする、ユーザインターフェイスが提供される。一実施形態では、ユーザインターフェイスは、ECG波形のいずれかを示すことなく、脈管構造内、および使用中の血管内デバイスの先端の心臓内の位置を示す単純化グラフィックスを含んでいる。別の実施形態では、ユーザインターフェイスは、使用中の血管内デバイスの先端の位置の変化をリアルタイムで示している。
【0024】
[0040]本発明の別の態様では、臨床応用例で本明細書に記載された装置を使用する、いくつかの発明方法が提示されている。一実施形態では、上大静脈、下大静脈、右心房、おおよび右心室に、探り針、ガイドワイヤおよび生理食塩水溶液を使用して、中心静脈カテーテル(CVC、PICC、血液透析、移植可能ポートなど)をガイドする、コンピュータベースの方法が提供される。この方法は有利には、従来技術よりも不整脈がある患者に対して敏感ではなく、多くの臨床ケースにおいて中心静脈カテーテルの先端位置の胸部X線確認の代わりとなる。別の実施形態では、被覆されたガイドワイヤを右心および左心内
にガイドするコンピュータベースの方法が提供される。別の実施形態では、中心静脈系を通して一時ペースメーカリードの定置をガイドするコンピュータベースの方法が提供される。別の実施形態では、低侵襲性であり、脱分極および心拍数を使用して前負荷を監視する方法が提供される。別の実施形態では、低侵襲性であり、P波解析を使用して不整脈を監視する方法が提供される。別の実施形態では、低侵襲性であり、STセグメントおよびT波解析を使用して心不全を監視する方法が提供される。
【0025】
[0041]
図1は、本発明の一実施形態による装置を示すブロック図である。
[0042]装置100は、アダプタ(120)を通して幅広い様々な市販およびカスタム設計された血管アクセスデバイス(110)に取り付けることができる。このようなデバイスの例としては、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢挿入中心カテーテル(PICC)、移植可能ポート、トンネルカテーテル、血液透析カテーテル、ペースメーカリード用ガイドカテーテル、冠状およびその他の血管インターベンションに使用されるガイドワイヤ、冠状およびその他の血管インターベンションに使用されるガイドカテーテル、探り針、注射針などが挙げられる。血管アクセスデバイスが探り針、ガイドワイヤまたは注射針である場合、その材料は十分に導電性があるもの、例えばステンレス鋼またはニチノールでなければならない。このような場合、本発明によるフックまたはダブルクリップアダプタを使用すべきである。血管アクセスデバイスがカテーテルである場合、生理食塩水を使用して、カテーテルの管腔の1つを通して導電経路を確立すべきである。このような場合、本発明による注射器/カテーテルアダプタを使用すべきである。
【0026】
[0043]電子モジュール(130)は、アダプタから、および患者の皮膚(115)上に定置された1つまたは複数の他の電極から電気信号を受信する。別の方法では、電子モジュールに異なる電気信号を与えるために、2つ以上の血管内デバイスに接続するように、2つ以上のアダプタを同時に使用することができる。皮膚電極の使用は、特定のデバイス構成で任意選択である。電子モジュールは、電気信号を処理し、別の処理および他の機能のためのコンピュータモジュール(140)にこれらを伝達する。一実施形態では、電子モジュールおよびコンピュータモジュールを別々にパッケージすることができ、別の実施形態では、同じパッケージ内に一体化させることができる。一実施形態では、電子モジュールとコンピュータモジュールの間の接続は有線であってもよく、別の実施形態では、例えばブルートゥースを使用して無線であってもよい。
【0027】
[0044]コンピュータモジュールは、本発明によって記載されるように、電子モジュールから信号を処理して、アルゴリズム(170)を適用する。コンピュータモジュールはまた、周辺機器(160)、例えばプリンタまたはラベルプリンタおよび記憶デバイスに接続させることができ、他のコンピュータまたはインターネットへの無線接続性(150)を含む接続性を与える。記憶デバイスを使用して、当面の応用例に関する知識および情報のデータベースを記憶することができる。接続性インターフェイスを使用して、最新の関連知識および情報、例えば新しい臨床ケース、心電図と心臓疾患の関係に関する新しい発見でこのデータベースを遠隔更新することができる。コンピュータモジュールは、当面の臨床応用例の目的で最適化されるグラフィカルユーザインターフェイス(180)をサポートする。
【0028】
[0045]
図2A、2Bおよび2Cは、様々な血管内アダプタデバイスを示している。
[0046]
図2Aは、2つの端部を有する銅またはステンレス鋼で作られた絶縁性導電ワイヤ(255)で作ることができるアダプタを示しており、一端部は血管アクセスデバイス(255)に接続されており、もう一端部は電子モジュール(250)に接続されている。血管アクセスデバイスに接続する端部は、いくつかの構成を有することができるコネクタを備えている。一実施形態では、コネクタは、J先端が延ばされていない場合の絶縁用途のばねを備えたJクリップコネクタ(230)である。別の実施形態では、コネクタは
絶縁性ダブルクリップ(220)である。別の実施形態では、コネクタはカテーテル/注射器アダプタ(210)である。カテーテル/注射器アダプタの一端部(211)は、カテーテルルアに接続することができる。他端部(215)は注射器に接続することができる。金属インサート(214)、例えば金属リングは、アダプタの本体内側に配置され、カテーテル管腔に向かって注射器から流れるときの生理食塩水溶液と接触する。金属インサートは、アダプタ壁面を通してワイヤ(212)に接続され、その後、ワイヤはコネクタ(250)に接続される。一実施形態では、コネクタ(250)は、外部絶縁(241)を通して固定され、電子モジュール内で安全プラグ内に接続する。別の実施形態では、コネクタ(250)は、最適化されたニップル形状(242)を有し、標準的ECGケーブルコネクタの容易で安全な接続が可能になる。
【0029】
[0047]
図2Bは、その遠位端(261)のみで電気情報を収集することを可能にする新しいガイドワイヤ(260)を示している。ガイドワイヤは、優れた十分な導電性を有する電気導電性材料、例えばステンレス鋼またはニチノールで作られている。ガイドワイヤは、遠位端および近接端を除いた、その全長にわたって絶縁するコンフォーマルパリレンコーティングなどの電気絶縁性コーティングで被覆されている。カテーテルは、上に長さマーキング(262)がプリントされている。J先端として、または任意の他のa−外傷性実施形態のいずれかで、a−外傷性先端である遠位端は、被覆されていなく、血液との電気接触が可能になる。近接端は、被覆されていなく(263)、
図2に示すような(220または230)コネクタをガイドワイヤに電気接続させることを可能にする。
【0030】
[0048]
図2Cは、カテーテル/注射器アダプタの別の実施形態を示している。プラスチック片(270)は、標準的カテーテルルア内、またはその管腔内に嵌合することができる成形端部(271)からなる。形状および材料により、端部(271)とルアまたは管腔の内壁の間の優れた接触が可能になり、それによって、流体は漏れることなく流れることができ、空気がプロセス中に管腔内内に導入されない。部片(272)の他端部は、あらゆる標準的注射器と嵌合することができるルアタイプコネクタである。アダプタまたは内側チャンバ(273)の本体は、ルア(272)の直径を内側カテーテル管腔(271)のサイズに適合させ、チャンバ壁面(274)内の穿孔を通してチャンバの外側に接続されたワイヤへの内側チャンバ内の電気導電性要素の接続を行う。チャンバ壁面を通した接続は防水である。生理食塩水がアダプタを通して注入されると、接続部(274)は、生理食塩水と外側ワイヤの間の防水導電経路を作り出す。アダプタ(290)は、2つのサイズの直径(291)および(292)とインターフェイス接続するプラスチック片である。一実施形態では、アダプタ(270)の端部(271)は、アダプタ(290)の管腔端部(291)と嵌合し、アダプタ(290)の他端部(292)は、移植可能ポートを定置するために使用されるカテーテルの管腔に嵌合する。
【0031】
[0049]
図3は、本発明の一実施形態による、血管内心電図の取得および処理のための電子モジュール(300)のブロック図である。
[0050]患者コネクタインターフェイス(310)は、患者(305)に電気リードを接続させることを可能にする。皮膚電極および/または上に論じたアダプタを使用した血管内デバイスへの電気接続のあらゆる組合せを使用することができる。一実施形態では、増幅器(320)は、可変ゲインを備えた4段階増幅器であり、患者ケーブルを通して入力される電気信号、例えば典型的には心電計値を増幅させることができる。アナログデジタル変換器(330)は、マイクロプロセッサ(340)によって読取可能なデジタル形式の信号を変換する。あらゆる数および構成のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサを使用して、マイクロ処理機能(340)を実施することができる。
【0032】
[0051]一実施形態では、マイクロコントローラは、直列インターフェイス(370)、
または無線インターフェイス(380)を介してコンピュータモジュール(390)との直列通信を制御する役割を果たし、デジタル信号プロセッサ(DSP)は、本明細書に記載された発明のアルゴリズムの1つまたはいくつかを実施する役割を果たす。別の方法では、通信および処理の両方のために、単一のプロセッサを使用することができる。
【0033】
[0052]マイクロプロセッサ(340)はまた、コンピュータモジュール(390)からのコマンドを受信し、電子モジュールの異なる要素、例えば増幅器(320)をそれに応じて制御する。患者絶縁ブロック(350)は、電気ショックに対する患者保護を保証するために、電力(360)および直列通信チャネル(370)を患者インターフェイス(310)から電気分離させる。一実施形態では、絶縁ブロック(350)は、変圧器および/または結合器、例えば光学結合器からなっていてもよい。
【0034】
[0053]
図4A、4B、4Cおよび4Dは、本発明の様々な実施形態による、血管内心電図の最適な取得を行う電極構成を示している。
[0054]
図4Aは、例えば右腕上で患者の皮膚に取り付けられた基準電極(410)、およびアダプタを通して血管内デバイス(415)に取り付けられた他の電極を備えた単一のリード構成を示している。右腕上で皮膚に取り付けられた基準電極は、本構成では例示的な目的のみで提示されている。基準電極の他の位置は、必要なECGのタイプによって可能である。アダプタで使用される血管内デバイスの先端と共に、右腕上の基準電極は、基準ECGのリードIIと同様であってもよい。この場合、上大静脈(401)および下大静脈(402)から得られるECGを最適化することができる。標準的ECGの他のリードをシミュレートするために、基準電極をあらゆる他の位置で皮膚に取り付けることができる。基準電極は、患者の心臓(400)内からより局所的な情報を得るために、他の血管内デバイスに取り付けられたアダプタに接続させることができる。
【0035】
[0055]
図4Bは、4本の電極を備えた、監視およびガイド能力を有する変形型3リード構成を示している。3本の電極は、標準的ECG電極、基準として使用される右腕(RA、420)、左腕(LA、425)、および左脚(LL、430)に対応している。第4の電極は、アダプタを通して血管内デバイス(C、435)に取り付けられている。この構成では、電子モジュールおよびアルゴリズムは、2つの機能を同時に行う。3本の標準的電極(RA、LLおよびLL)は、心臓の監視機能を行い、C電極(435)は、デバイスの先端でECGを記録することを可能にする。
【0036】
[0056]
図4Cは、
図4Aに示す構成およびアース基準(450)を含む、単一の接地リードを備えた遠隔測定構成を示している。この構成を使用して、遠隔測定システム構成を通してECGを遠隔伝達することができる。
【0037】
[0057]
図4Dは、血管内デバイスをガイドするためのECGモニタの1つの使用を示している。標準的入力RA(465)、LA(460)、およびLL(470)を有する、標準的ECGモニタが使用される。LA(460)は左腕に接続され、LL(470)は患者の左脚に接続されている。RA入力(465)は、医師がRA入力(465)をRA電極とカテーテル(C)電極475の間で切り換えるために使用することができるスイッチに接続されている。したがって、カテーテル定置の監視またはガイドのいずれかを交互に達成することができる。
【0038】
[0058]
図5は、中心静脈系内の異なる位置での例示的な心電図信号振幅を示している。
[0059]心臓(504)、右心房(501)、上大静脈(SVC)(502)、および下大静脈(IVC)(503)が図示されている。位置Aは上側SVCにあり、位置BはSVCの下側3分の1にあり、位置Cは導管動脈接合(caval−artial junction)にあり、位置Dは右心房にあり、位置Eは上側下大静脈にある。
【0039】
[0060]グラフ510は、位置Aで記録された時間関数としてECG波形を示している。波形の絶対振幅は、振幅スケール(590)上に記録されている。血管内ECGの場合、心電図の標準的要素、P波(560)、R波(570)、およびT波(580)が図示されている。
図4Dと同様にリード構成で記録された位置Aでの振幅および形状は、同じ電極構成で皮膚レベルで記録された心電図と同様である。
【0040】
[0061]グラフ520は、位置Bで示された血管内ECGを示している。この位置での振幅は、位置Aでのものより高いが、波形の全体形状は位置AおよびBで同様である。
[0062]グラフ530は、位置Cで示された血管内ECGを示している。導管動脈接合の位置Cでは、波形の振幅は位置Bでのものよりさらに高く、P波は飛躍的に変化して、R波より高くなる。この波形は、洞房結節の近接の表示である。
【0041】
[0063]グラフ540は、位置Dで示された血管内ECGを示している。右心房の位置Dでは、振幅は位置Cと同様であるが、P波は極性を変えて、双極性となる。これは、ECGの測定が洞房結節を越えて起こる表示である。
【0042】
[0064]グラフ550は、位置Eで示された血管内ECGを示している。下大静脈の位置Eでは、波形はP波が逆極性を有することを除いて、振幅に関して位置Aと同様である。異なる位置でのECG波形の差は、対応する位置を区別し、心臓および血管機能を評価するために、本明細書で導入されたアルゴリズムによって使用される。
【0043】
[0065]
図6は、スペクトルスケール(690)を使用して、中心静脈系内の異なる位置での例示的な心電図信号電力スペクトルを示している。
[0066]心臓(604)、右心房(601)、上大静脈(SVC)(602)、および下大静脈(IVC)(603)が図示されている。グラフ610は、位置Aで示された血管内ECGスペクトルを示している。位置Aでは、スペクトル(610)は、単一の中心周波数または単一のバンド(660)の外観を有し、周波数分布スペクトル電力およびエネルギーは皮膚レベルのものと同様である。
【0044】
[0067]グラフ620は、位置Bで示された血管内ECGスペクトルを示している。位置Bでは、周波数分布は2つの主な帯域、および位置Aより高いエネルギーおよびスペクトル電力を有する。
【0045】
[0068]グラフ630は、位置Cでの血管内ECGスペクトルを示している。位置Cでは、より幅広い範囲の周波数(670)上で分布された多数の(3〜4の)主な周波数または主なスペクトル成分がある。このスペクトル分布は、洞房結節周りのエネルギー分布を示している。スペクトル電力および信号エネルギーは、位置Bと比較して増加した。
【0046】
[0069]グラフ640は、位置Dで示された血管内ECGスペクトルを示している。位置Dでは、スペクトルはより幅広くより多くの広帯域であり、右心房の電気活動を示す。
[0070]グラフ650は、位置Eで示された血管内ECGスペクトルを示している。位置Eでの周波数スペクトルは、位置Aでのものと同様である。異なる位置でのスペクトル波形の差は、対応する位置を区別し、心臓および血管機能を評価するために、本明細書で導入されたアルゴリズムによって使用される。
【0047】
[0071]
図7は、中心静脈系内の異なる位置での例示的な心電図信号電気エネルギー分布を示している。心臓(704)、右心房(701)、上大静脈(SVC)(702)、および下大静脈(IVC)(703)が図示されている。グラフ(710、720、730、740、750)は、異なる位置(それぞれ、A、B、C、DおよびE)でのエネルギ
ー分布を示しており、時間内の変化は、対応する位置を区別し、心臓および血管機能を評価するために、本明細書で導入されたアルゴリズムによって使用される。
【0048】
[0072]
図8は、本発明の一実施形態によるグラフィカルユーザインターフェイスを示している。
[0073]ウィンドウ(810)は、取り付けられた電極構成を使用して、電子モジュールによって取得される場合の、ECG波形をリアルタイムで示している。ウィンドウ(820)は基準ウィンドウであり、現在のウィンドウと比較するために使用される凍結波形を示している。一実施形態では、ウィンドウ(820)内の基準波形は、カテーテルの基準位置で電子モジュールに接続された電極を通して、および/または皮膚電極の基準構成を使用して得ることができる。例えば、このような基準波形は、導管動脈接合に定置された血管内デバイスに接続された、本発明によるアダプタを使用して記録されたECGであってもよい。異なる実施形態では、ウィンドウ820内の基準波形は、波形のデータベース内に記録されているとき、およびコンピュータシステムの記憶媒体内に記憶されているときの、脈管構造内の特定の位置での、または特定の心臓疾患の典型的な波形であってもよい。電極構成により、血管内デバイスを使用した心電図の同時心臓監視および記録が可能になる場合、ウィンドウ(830)は、心臓監視のための標準的ECGリードの1つを示しており、ウィンドウ(810)は、上に論じたような、アダプタに接続された場合の、血管内デバイスの先端でのECGを示している。
【0049】
[0074]アイコン(870)は、心臓の表示であり、位置AからE(875)は、本明細書に開示した方法により血管内ECGを解析することによって区別することができる、心臓および脈管系内の異なる位置を示している。脈管構造内の位置がアルゴリズムによって識別されるので、アイコン(875)上の対応する場所および文字は強調される、またはいくつかの他の方法で、ユーザに見えるようにされる。バー(884)、(885)および(886)は、信号エネルギーレベルを示している。Eバー(885)は、血管内デバイスの先端の現在位置でのECG周波数スペクトルから算出された電気エネルギー量を示している。Rバー(884)は、基準位置でのECG周波数スペクトルから算出された電気エネルギー量を示している。Mバー(886)は、皮膚電極からの監視ECG信号を使用して、ECG周波数スペクトルから算出された電気エネルギー量を示している。ウィンドウ(840)は、情報、例えば心拍数を監視していることを示している。患者情報(名前、処置日など)がウィンドウ(850)に示されている。ウィンドウ(860)は、ボタンのようなシステム制御要素、およびステータス情報、例えば、スケール、スクロール速度、システムパラメータおよびシステム診断を含んでいる。
【0050】
[0075]
図9は、本発明の別の実施形態によるグラフィカルユーザインターフェイスを示している。
[0076]アイコン(920)は、心臓の表示であり、位置AからE(930)は、血管内ECGを解析することによって区別することができる、心臓および脈管系内の異なる位置を示している。脈管構造内の位置がアルゴリズムによって識別されるので、アイコン(930)上の対応する場所および文字は強調される、またはいくつかの他の方法で、ユーザに見えるようにされる。バー(940)、(950)および(960)は、信号エネルギーレベルを示している。Eバー(940)は、血管内デバイスの先端の現在位置でのECG周波数スペクトルから算出された電気エネルギー量を示している。Rバー(950)は、基準位置でのECG周波数スペクトルから算出された電気エネルギー量を示している。Mバー(960)は、皮膚電極から入力される監視ECG信号を使用して、ECG周波数スペクトルから算出された電気エネルギー量を示している。「プリント」ボタン(960)により、ユーザが、患者のチャートへの迅速な取り付けのために、プリンタ上、例えばラベルプリンタ上に事例を記録する情報をプリントすることが可能になる。
【0051】
[0077]
図10Aおよび10Bは、本発明の一実施形態による、グラフィカルユーザインターフェイスによって表示された情報に対する例示的なプリントアウトを示している。
[0078]
図10Aは、SVCの下側3分の1内のカテーテル先端定置処置の事例に対するプリントアウト(1000)を示している。フィールド1010は、上大静脈(SVC)の下側3分の1に対応する文字Bが強調された(1040)心臓アイコンを示している。フィールド1030は、洞房結節に近接した導管動脈接合でのカテーテルの先端で記録された基準ECG波形を示している。フィールド1020は、処置の終了時に定置された位置でのカテーテルの先端のECG波形を示している。
図10Aでは、この位置はSVCの下側3分の1にあり、ECG波形はこの位置に対応している。患者名(1001)および処置日(1002)もプリントされる。
【0052】
[0079]
図10Bは、処置の終了の最終位置が心臓アイコン(1060)上の位置C(1090)での洞房結節にあることを除いた、同様のプリントアウト(1050)を示している。「SA節」フィールドは、基準ECG波形(1080)を示しており、「最終位置」フィールド(1070)は、カテーテルが洞房結節での先端で定置されていることを示しており、最終位置のECG波形は、洞房結節(SA節)での基準位置のものと同様またはさらには同一である。SA節の近接は、導管動脈接合での位置を示していることが知られている。これらの位置はときどき、何人かの医師によって同一であると考えられる。
【0053】
[0080]
図11は、心電図信号を使用した、心臓内またはその近くに血管内デバイスを位置決めするコンピュータベースの方法(1100)のブロック図である。
[0081]アルゴリズムは、血管内デバイスにアダプタによって取得された入力信号(1102)(ECG)に、任意選択で皮膚電極を通してでも適用される。エラー検出ブロック(1105)は、例えば、除細動器が患者に付けられた場合、ペースメーカが励起パルスを放出している場合、および/またはリード/電極がオフになっている場合などの、少なくとも3つのタイプのエラー状態/例外を検出する。これらのエラー/例外は異なる方法で処理することができ、ユーザに例外の存在および例外の処理方法を知らせることができる(1110)。
【0054】
[0082]前処理ブロック(1115)は、信号を増幅する、雑音を減らす、アーティファクトをなくすことなどができる。一実施形態では、多くの最近利用可能なECGモニタと同様に、信号を表示範囲に再スケーリングすることがユーザの制御のもとで起こり、自動ではない。したがって、ECGの振幅の変化に容易に気が付く。高域通過フィルタは、ベースラインを修正し、呼吸アーティファクトなどのアーティファクトを少なくする。広帯域雑音抑制は、選択フィルタ、例えばウェーブレット変換を使用して達成することができる。他の機器および送電網との電磁干渉は、国内および国際電力供給に対応するために、60Hzまたは50Hzで中心とするノッチフィルタ(狭帯域フィルタ)によって抑制することができる。高周波数雑音は、一実施形態では、例えば心臓サイクルに対応する実行ウィンドウなどの可変長平均化、いくつかの連続心臓サイクル上のECGの平均化などで実施される、低域通過フィルタで抑制することができる。適応フィルタリングブロック(1120)は、エラー信号を最小限に抑えることによって、フィルタ係数を最適化する。
【0055】
[0083]時間領域パターン認識ブロック(1130)は、ECG波形の要素、(1つまたは複数の)関係および(1つまたは複数の)挙動を時間内に識別する。ブロック1130内の時間領域パターン認識アルゴリズム、および周波数領域パターン認識ブロック1140の重要な態様は、データ履歴である。ECGは、特定の要素ではリアルタイムで解析され、他の要素では、適当なバッファ長のデータバッファは、この解析に基づいた履歴データ解析および予測を可能にするために、電子および/またはコンピュータモジュールのメモリ内に維持される。一実施形態では、データ履歴バッファは数秒の長さであり、いくつかの心拍に対応するECG信号をバッファ内に保存することが可能になる。二重バッファ
リング技術により、第2のバッファが信号を記憶し続けながら、1つのバッファ内の波形を処理することが可能になる。したがって、1つのバッファ内の波形が処理されている間に、信号データは損失しない。1つのバッファ上のデータ処理が完了した後に、結果が決定サポートアルゴリズム(1150)に送信され、2つのバッファが役割を切り換える。バッファの長さは、データが損失しないことを保証するために、データ処理の持続時間に対応する。同様の二重バッファリング技術がまた、周波数領域パターン認識ブロック(1140)の影響を受けるデータに適用される。
【0056】
[0084]血管内ECGの場合、関連する要素としては、これに限らないが以下の1つまたは複数を挙げることができる。
1.P、Q、R、S、TおよびU波、そのピーク、振幅および持続時間
2.P−R、S−TおよびT−Pセグメント/インターバルの持続時間
3.S−Tセグメントの上昇
4.P−PおよびR−Rインターバルの分散
5.S−TおよびR−Tインターバルなどの分散
6.P波およびQRS複合のピーク間値
7.P波およびR波振幅の比、およびP波およびQRS複合ピーク間振幅の比
8.P波の極性、単一の正極、単一の負極、または双極
9.P波、QRS複合、およびT波の導関数
10.R−Rインターバルおよび心拍数の時間的平均
11.特定の期間にわたるP波振幅/ピーク、およびP波ピーク間振幅の最大値
12.特定の期間にわたるR波振幅/ピーク、およびORS複合ピーク間振幅の最大値
[0085]これに限らないが以下の1つまたは複数を含む、いくつかの技術を使用して、上に挙げた情報をECG波形から導き出すことができる。
1.「ピーク検出」
2.第1の導関数の算出
3.1心拍数内の信号に沿った、および多数の心拍数に沿った平均化
4.適応閾値化
5.自己相関
[0086]ブロック(1125)内の高速フーリエ変換は、特定の長さのバッファ内に記憶された、いくつかのECGサンプル、例えば256、512、1024、2048以上のデータサンプルに高速フーリエ変換を行う。フーリエ変換は、波形を時間領域から周波数領域に変換する。
【0057】
[0087]周波数領域パターン認識ブロック(1140)は、これに限らないが、以下の1つまたは複数を含む、周波数領域内でECGに行われるパターン認識の様々な態様を示している。
1.主成分解析、すなわち周波数スペクトルの最も重要な要素の確定(心電図の形態要素、例えば時間領域内の特定の波形およびセグメントの確定と同様である)
2.主成分に基づいた、算出量を少なくするためのデータ圧縮
3.主成分の数および形態の確定、特にスペクトルが1つだけ、2つまたは多数の主な周波数(周波数帯域)を有するかどうかの確定
4.スペクトル電力、および周波数スペクトルからの信号エネルギーの算出
5.広帯域雑音を減らすための、単一スペクトル上での周波数寸法に沿った平均化
6.アーティファクトをフィルタリングするための、いくつかのスペクトルに沿った平均化
7.スペクトルの追加の形態要素、例えば最大周波数、最大周波数に含まれるエネルギー、周波数ヒストグラム、すなわちどの周波数がどれだけのエネルギーを含んでいるか、最も高い重要な最大エネルギーピークの周波数などの確定
8.スペクトル分布から確定した主成分および他のパラメータの時間経過にわたる挙動お
よび平均の算出、例えば、特定の期間にわたる信号エネルギーおよびスペクトル電力の最大値の確定
9.スペクトル解析に基づいた特定の心臓疾患の確定/推定。この確定/推定はまた、決定サポートブロック1150および1250内でより詳細に行われる。
【0058】
[0088]いくつかの決定サポートアルゴリズムは、時間領域パターン認識アルゴリズムおよび周波数領域パターン認識アルゴリズムによって提供される情報を使用する。一実施形態では、ブロック(1150)は、SVCの下側3分の1、または導管動脈接合のいずれかに血管内デバイスを定置することをサポートする。
【0059】
[0089]特に、ブロック1150は、カテーテル定置中に導管動脈接合に最初に到達する概念に基づいている。導管動脈接合で、または洞房結節の近くで、P波および他の電気パラメータが最大値に到達する。導管動脈接合では、P波は単極性である。導管動脈接合で洞房結節、すなわちPピーク振幅およびスペクトル電力の最大値に到達した後に、カテーテルは、P波が導管動脈接合で到達された振幅の半分に減少するまで、数センチ引き戻される。P波が導管動脈接合の半分の振幅まで減少した位置で、カテーテルは、上大静脈の下側3分の1にあると考えられる。P波ピーク振幅またはピーク間振幅と、スペクトル電力は、脈管構造内の位置をECG波形にマッピングするために使用される。
【0060】
[0090]より詳細には、血管内デバイスに関連する血管内ECG信号を受信した後に、信号は、複数の所定の期間にわたって処理されて、各所定の期間に対してP波振幅およびスペクトル電力を算出する。最大P波振幅はその後、複数のP波振幅から確定され、関連する最大スペクトル電力は複数のスペクトル電力から確定される。これら最大値が確定される位置は、導管動脈接合などの心臓内またはその近くの所定の位置に関連している。血管内デバイスの位置はその後、最大P波振幅に対するP波振幅の比、および最大スペクトル電力に対するスペクトル電力の比に基づいて、各所定の期間に対して算出され、血管内デバイスの位置はその後、ユーザに表示される。加えて、P波の極性およびR波振幅を使用して、血管内デバイスの位置を確定することもできる。
【0061】
[0091]単一の基準、またはこのような基準の組合せを使用して、意思決定をサポートすることができる。一実施形態では、T1、T2およびT3は、各患者に対して異なる経験的に確立された閾値であり、アルゴリズムは、現在の測定に基づいて閾値を調節するために適応ループを使用することができる。別の実施形態では、これらの閾値は所定のものである。
【0062】
[0092]代替実施形態では、Pピーク/P振幅またはP波ピーク間振幅とRピーク/R振幅またはQRS複合ピーク間振幅の間の比を使用して、洞房結節に対する位置を確立することもできる。一実施形態では、Pピーク/振幅は、Rピーク/振幅の約半分でなければならず、P波はSVCの下側3分の1に対応する位置に対して単極性でなければならない。別の実施形態では、P波ピーク間は、QRSピーク間振幅の半分でなければならず、P波はSVCの下側3分の1に対応する位置に対して単極性でなければならない。
【0063】
[0093]上に論じたように、決定サポートアルゴリズムブロック1150の結果は、例えば、システム(1160)によって識別されるECGのタイプに対応する心臓アイコン上の適当な位置を強調することによって、ユーザに提示することができる。
【0064】
[0094]
図12に示す決定サポートアルゴリズムブロック1250は、現在の位置でのP波、R波およびP波スペクトル電力を、同等リード、例えばリードII内の皮膚心電図から確定されたこれらのパラメータの値と比較することに基づいている。閾値T1からT6は、各患者に対する適応調節が行われた経験的値である。
図12に示す各基準または基準
の組合せを使用することもできる。
【0065】
[0095]他の決定アルゴリズムを、特にECGスペクトルから算出したような電気エネルギーレベルに関連して使用することもできる。血管内デバイスを定置する場合、SVCの下側3分の1に対応する位置で、血管内ECGから算出された平均電気エネルギーが、皮膚レベルでの血管内ECGから、または対応するリード、例えばリードII内での皮膚ECGから算出された平均電気エネルギーの2倍の高さであることが1つの基準である可能性がある。
【0066】
[0096]
図13は、心臓の心臓伝導系を示しており、
図14は、心臓の伝導系内の電気信号伝播を示している。
[0097]これらの図は、心臓の伝導機構を示しており、測定したような心臓内の電気エネルギー分布がなぜ心臓内の特定の位置を示しているのかを説明している。したがって、局所電気信号、挙動およびエネルギー集中を測定することができ、心臓および血管内の位置をより正確に確定することができ、局所心臓疾患をより正確に説明することもできる。
【0067】
[0098]心臓の伝導系は、心臓の主要なペースメーカ、洞房結節(1310)で始まる。SA節の固有速度は、60から100拍/分である。インパルスがSA節から出ると、房室(AV)節(1320)および心室への途中で、バッハマン束(1350)および節内経路に沿って心房を通って進む。インパルスがAV節を通過した後、心室まで進み、最初にヒス束(1330)へと下り、その後、索枝に沿って、最後にプルキンエ線維(1340)へと下って進む。SA節からインパルスを受けるので、接合部組織内のペースメーカ細胞、および心室上のプルキンエ線維は通常、休止したままである。これらは、インパルスを開始するだけであり、SA節からはインパルスを受けない。AV接合部の固有速度は、40から60拍/分であり、心室の固有速度は20から40拍/分である。電気インパルスの異なる伝播速度が、
図14に示されている。SA節(1410)から、インパルスは心房筋(1420)を通して、および心室筋(1460)を通して約0.5ミリ秒で、索枝(1440)および(1450)を通して約2m/秒で、プルキンエ線維(1470)を通して約4m/秒で、AV節(1430)を通して約0.05m/秒で伝播する。
【0068】
[0099]電気信号および電気エネルギー分布は有利には、不整脈の場合でさえも、すなわち、標準的皮膚心電図によって測定されたコヒーレントP波の不存在下で、洞房結節および右心房電気活動の近接を識別するために使用される。不整脈のいくつかの場合では、右心房内で発生するランダム電気信号は、身体を通して皮膚まで伝搬するのに十分コヒーレントではなく、電気エネルギーが右心房内にまだ存在し、局所血管内測定によって非コヒーレントP波として、すなわちECG波形のPセグメント内の重要な電気活動として検出することができる。エネルギー測定はまた、インパルス伝導においていくつかの局所異常、変更自動能(不整脈)、インパルスの逆行性伝導、回帰性異常にあまり敏感ではない。
【0069】
[0100]電気信号および電気エネルギー分布はまた有利には、心臓機能、例えば心筋の脱分極および拡張に関連する前負荷を定量化するために使用される。
[0101]電気信号および電気エネルギー分布はまた有利には、ガイドワイヤおよびガイドカテーテルを大動脈を通して左心内にガイドするために使用される。この方法は、左心房および冠動脈へのアクセスを単純化するのに、およびこれらの位置に血管内デバイスをガイドするのに必要な造影および放射線の量を減らすのに有用である。異なる応用例では、本発明の装置はまた、カテーテル、例えばスワン−ガンツを右心房を通して肺動脈内にガイドするために使用することができる。他の血管内デバイスをガイドし、使用して本発明に導入された新しい装置で測定された心電図によって識別可能な心臓血管系の他の位置での血管内電気活動を測定することができる。
【0070】
[0102]
図15は、神経調節系による心臓血管系内の電気活動を示している。いくつかの伝導経路は、心臓(1530)および血管(1520)活動の制御の機構に関するものであり、受容体(1510)、例えば圧力受容体は、血管の状態、および心臓の状態に関連する情報を延髄中枢(1500)を通して神経系に伝達する。視床下部(1540)およびより高い中枢(1550)は、センサ/受容体から受信した情報を処理し、これに反応することに関連している。次に、これらはインパルス(1560)を血管および心臓に送り戻す。調節系に関連する電気活動を測定することによって、前には得ることができなかった、心臓疾患に関する情報を得ることができる。
【0071】
[0103]本発明の多くの特徴および利点は、詳細な明細書から明らかであり、したがって、添付の特許請求の範囲によって、本発明の真の趣旨および範囲内に含まれる本発明のこのような特性および利点すべてを含むことを意図している。さらに、多くの変更形態および変形形態が当業者には簡単に分かるので、本発明を図示および記載した厳密な構成および動作に限ることを望むものではなく、したがって、すべての適切な変更形態および同等物を本発明の範囲内に含まれるものとすることができる。
【0072】
なお、本願発明は、特許請求の範囲に記載されるものの他、以下の態様を含む。
1.少なくとも1つのリアルタイムECG波形を表示するための第1の心電図(ECG)波形領域と、
少なくとも1つの記憶されたECG波形を表示するための第2のECG波形領域と、
脈管構造内にカテーテル先端の位置を表示するためのカテーテル先端位置領域と、
前記脈管構造内の前記カテーテル先端位置の異なる位置に関連する前記ECG波形の定量的特徴を表示するためのカテーテル先端位置識別領域と、
ユーザが複数の関連機能に直接または遠隔のいずれかでアクセスすることを可能にする、複数の制御要素を含む制御領域と、
複数のパラメータに基づいて前記表示を自動的に最適化する手段とを備えた、コンピュータベースの方法として実施される、カテーテル位置決めおよびナビゲーションシステム用グラフィカルユーザインターフェイス。
2.2つの端部および内側管腔を有する部材であって、前記端部の一方がカテーテルに連結されており、他方の端部が注射器に連結されているとき、前記注射器からの流体が前記内側管腔を通して前記カテーテル内に流される、部材と、
前記部材の外側に、密封された電気接続部を介して接続する、前記部材の前記内側管腔に沿って配置された金属インサートとを備えた、血管内心電図用アダプタ。
3.患者の上に1つ、2つまたは3つの電極を定置するステップと、
血管内アクセスデバイスを通過する導電経路を通して電極に結合された、血管内アクセスデバイスを前記患者内に導入するステップと、前記血管内アクセスデバイスの先端部の位置を皮膚電極と血管内電極から受け取った電気信号に基づいて確定するステップとを含む、血管内アクセスデバイスのガイドおよびナビゲーション方法であって、
1つの皮膚電極が前記患者上に定置される場合に、前記皮膚電極が左下腹部に配置され、
2つの皮膚電極が前記患者上に定置される場合に、第1の皮膚電極が左下腹部に配置され、第2の皮膚電極が左肩に配置され、
3つの皮膚電極が前記患者上に定置される場合に、第1の皮膚電極が左下腹部に配置され、第2の皮膚電極が左肩に配置され、第3の皮膚電極が右下腹部に配置される、方法。