(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車輪ブレーキ(Ba〜Bd)の余剰ブレーキ液圧を吸収するリザーバ(9a,9b)と、このリザーバ(9a,9b)が吸収したブレーキ液を吸入してマスタシリンダ(M)に還流通路(11a,11b)を介して戻す液圧ポンプ(8a,8b)と、前記還流通路(11a,11b)に設けられるオリフィス(10)と、このオリフィス(10)及び前記液圧ポンプ(8a,8b)間の前記還流通路(11a,11b)に接続されて前記液圧ポンプ(8a,8b)の吐出圧脈動を減衰するダンパ(13)とを備える、車両用ブレーキ液圧制御装置において、
前記ダンパ(13)が、前記還流通路(11a,11b)の前記液圧ポンプ(8a,8b)側に連なる吸入ポート(39)、及び同還流通路(11a,11b)の前記マスタシリンダ(M)側に連なる吐出ポート(40)を有していて、そのダンパ(13)を、ダンパシリンダ(33)と、このダンパシリンダ(33)内を、ばね室(35)及び前記吸入ポート(39)に連通する受圧室(36)に仕切るダンパピストン(34)と、前記ばね室(35)に収容されて前記ダンパピストン(34)を前記受圧室(36)側に弾発的に押圧するダンパばね(37)と、前記受圧室(36)に同軸状に連なる補助受圧室(38)、及びこの補助受圧室(38)より小径でそれと同軸状に連なる前記吐出ポート(40)を有するポート部材(41)とで構成し、
その吐出ポート(40)に、前記オリフィス(10)側から前記ダンパ(13)側への液流を阻止する一方向弁(19)を配設して、該一方向弁(19)を、前記吐出ポート(40)の外端に形成される弁座(48)と、この弁座(48)と協働して前記吐出ポート(40)を開閉する弁体(49)と、この弁体(49)を閉弁方向へ付勢する弁ばね(50)とで構成したことを特徴とする、車両用ブレーキ液圧制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のかゝる車両用ブレーキ液圧制御装置では、液圧ポンプの吐出側とマスタシリンダとを接続する還流通路にオリフィスが設けられているとは言え、そのオリフィスと液圧ポンプとの間の還流通路にはダンパが接続されているので、ブレーキ操作時、マスタシリンダの出力液圧の一部が、ダンパに吸収されることになり、ブレーキ操作剛性感が低下し、ブレーキ操作フィーリング上好ましくない。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、ブレーキ操作時には、マスタシリンダの出力液圧をダンパに吸収させず、良好なブレーキ操作フィーリングを得ることを可能にした前記車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、車輪ブレーキの余剰ブレーキ液圧を吸収するリザーバと、このリザーバが吸収したブレーキ液を吸入してマスタシリンダに還流通路を介して戻す液圧ポンプと、前記還流通路に設けられるオリフィスと、このオリフィス及び前記液圧ポンプ間の前記還流通路に接続されて前記液圧ポンプの吐出圧脈動を減衰するダンパとを備える、車両用ブレーキ液圧制御装置において
、前記ダンパが、前記還流通路の前記液圧ポンプ側に連なる吸入ポート、及び同還流通路の前記マスタシリンダ側に連なる吐出ポートを有し
ていて、そのダンパを、ダンパシリンダと、このダンパシリンダ内を、ばね室及び
前記吸入ポートに連通する受圧室に仕切るダンパピストンと、前記ばね室に収容されて前記ダンパピストンを前記受圧室側に弾発的に押圧するダンパばねと、前記受圧室に同軸状に連なる補助受圧室、及びこの補助受圧室より小径でそれと同軸状に連なる吐出ポー
トを有するポート部材とで構成し、
その吐出ポートに、前記オリフィス側から前記ダンパ側への液流を阻止する一方向弁を配設して、該一方向弁を、前記吐出ポートの外端に形成される弁座と、この弁座と協働して前記吐出ポートを開閉する弁体と、この弁体を閉弁方向へ付勢する弁ばねとで構成したことを第
1の特徴とする。
【0007】
さらにまた本発明は、第
1の特徴に加えて、一方向弁には、ポート部材に連結されて弁体及び弁ばねを収容するキャップ状の弁ハウジングを設け、この弁ハウジングにオリフィスを穿設したことを第
2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、マスタシリンダの作動時、マスタシリンダの出力液圧は、車輪ブレーキに供給される一方、還流通路にも供給されるが、還流通路には、ダンパ及びオリフィス間に、オリフィス側から受圧室側への液流を阻止する一方向弁が設けられるので、その一方向弁が還流通路を遮断して、オリフィス側から受圧室側へのブレーキ液の流れを阻止することにより、マスタシリンダの出力液圧がダンパに吸収されることを防ぐことができる。これにより、マスタシリンダの出力液圧を、車輪ブレーキに効率良く供給できて、良好なブレーキ操作剛性感、即ち良好なブレーキ操作フィーリングを操縦者に与えることができる。
【0009】
また、ダンパが、還流通路の液圧ポンプ側に連なる吸入ポート、及び同還流通路の前記マスタシリンダ側に連なる吐出ポートを有し、その吐出ポートに一方向弁が配設されるので、ダンパ及び一方向弁が隣接配置されることになり、これらを収容するモジュレータのボディのコンパクト化を図ることができる。
【0010】
また更に、ダンパは、ダンパシリンダと、このダンパシリンダ内を、ばね室及び受圧室に仕切るダンパピストンと、ばね室に収容されてダンパピストンを受圧室側に弾発的に押圧するダンパばねと、受圧室に同軸状に連なる補助受圧室、及びこの補助受圧室より小径でそれと同軸状に連なる吐出ポー
トを有するポート部材とで構成される一方、一方向弁は、前記吐出ポートの外端に形成される弁座と、この弁座と協働して吐出ポートを開閉する弁体と、この弁体を閉弁方向へ付勢する弁ばねとで構成されるので、液圧ポンプの作動時には、ダンパピストンの摺動方向と、一方向弁の弁体の開閉方向とが同方向となって、ダンパから一方向弁へとブレーキ液を直線的にスムーズに流すことができ、ブレーキ液中での気泡の発生を抑えることができる。またポート部材が補助受圧室を持つことで、受圧室及び補助受圧室の総合容積が拡大し、ダンパの減衰機能を高めることができる。
【0011】
本発明の第
2の特徴によれば、一方向弁には、ポート部材に連結されて弁体及び弁ばねを収容するキャップ状の弁ハウジングが設けられ、この弁ハウジングにオリフィスが穿設されるので、弁ハウジングがオリフィス部材を兼ねることになり、専用のオリフィス部材を設ける必要がなく、構造の簡素化及びコンパクト化に寄与し得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて以下に説明する。
【0014】
先ず、
図1において、マスタシリンダMは、ブレーキペダルPからピストンに加えられる入力
に応じてブレーキ液圧を出力する前後一対の第1,第2出力ポート1a,1bを備えるタンデム型に構成されており、これら第1,第2出力ポート1a,1bに個別に接続された第1,第2入力通路2a,2bと、左前輪用車輪ブレーキBa、右後輪用車輪ブレーキBb、右前輪用車輪ブレーキBc及び左後輪用車輪ブレーキBdに個別にされた第1〜第4出力通路12a〜12dとの間にモジュレータ3が介裝される。
【0015】
モジュレータ3はブレーキ制御弁手段4を備える。ブレーキ制御弁手段4は、左前輪用車輪ブレーキBa、右後輪用車輪ブレーキBb、右前輪用車輪ブレーキBc及び左後輪用車輪ブレーキBdにそれぞれ個別に対応した第1〜第4入口弁5a〜5dと、前記各車輪ブレーキBa〜Bdにそれぞれ個別に対応した第1〜第4出口弁6a〜6dとからなっており、各入口弁5a〜5dは常開型電磁弁で構成され、また各出口弁6a〜6dは常閉型電磁弁で構成される。そして、第1,第2入口弁5a,5bの入口に第1入力通路2aが、第3,第4入口弁5c,5dの入口に第2入力通路2bがそれぞれ接続される。
【0016】
第1入口弁5aの出口及び第1出口弁6aの入口に第1出力通路12aが、第2入口弁5bの出口及び第2出口弁6bの入口に第2出力通路12bが、第3入口5cの出口及び第3出口弁6cの入口に第3出力通路12cが、第4入口弁5dの出口及び第4出口弁6dの入口に第4出力通路12dがそれぞれ接続される。
【0017】
共通の電動モータ17で駆動される第1及び第2液圧ポンプ8a,8bが設けられる。第1及び第2出口弁6a,6bの出口は第1減圧通路7aを介して第1液圧ポンプ8aの吸入ポー
トに接続され、第3,第4出口弁6c,6dの出口は第2減圧通路7bを介して第2液圧ポンプ8bの吸入ポー
トに接続され、第1及び第2減圧通路7a,7bには第1及び第2リザーバ9a,9bがそれぞれ接続される。
【0018】
第1減圧通路7aには、第1入力通路2aから分岐した第1サクション通路15aが接続され、この第1サクション通路15aに、第1液圧ポンプ8aの作動時開弁する常閉型のサクション弁16が設けられる。また第1減圧通路7aには、第1サクション通路15aの接続点より上流側で一方向弁18が介装される。
【0019】
また第2減圧通路7bには、第2入力通路2bから分岐した第2サクション通路15bが接続され、この第2サクション通路15bにも第2液圧ポンプ8bの作動時に開弁する常閉型のサクション弁16が設けられる。また第2減圧通路7bにも、第2サクション通路15bの接続点より上流側で一方向弁18が介装される。
【0020】
第1液圧ポンプ8aの吐出ポー
トは、第1還流通路11aを介して第1入力通路2aに接続され、第2液圧ポンプ8bの吐出ポー
トは、第2還流通路11bを介して第2入力通路2bに接続される。また第1及び第2還流通路11a,11bには、対応する液圧ポンプ8a,8bの吐出圧の脈動を減衰するオリフィス10及びダンパ13が接続される。
【0021】
第1,第2入力通路2a,2bには、これに対する第1,第2還流通路11a,11bの接続点より上流側で常開型のレギュレータ弁14,14がそれぞれが介装される。
【0022】
第1入力通路2a又は第2入力通路2bに、マスタシリンダMの出力液圧を検知して、それに応じた信号を出力する液圧センサ21(マスタシリンダ作動状態検知手段)が接続され、その信号は電子制御ユニット20に入力されるようになっている。この電子制御ユニット20は、液圧センサ21の他に、各車輪の回転速度を検知する車輪速センサ22や、操向ハンドルの舵角を検知する舵角センサ23、車両のヨーレートを検知するヨーレートセンサ24等からの検知信号を入力され、それら信号を演算して、ブレーキ制御弁手段4,4の各部を制御するようになっている。
【0023】
次に、
図2及び
図3を参照して、各還流通路11a,11bに接続されるオリフィス10及びダンパ13について具体的に説明する。
【0024】
モジュレータ3のボディ3aには、その一側面に開口するダンパ取り付け孔31と、このダンパ取り付け孔31の内端に開口する、それよりも小径の一方向弁取り付け孔32とが同軸状に設けられ、ダンパ取り付け孔31の一側に還流通路11a,11bの上流側(液圧ポンプ8a,8b側)に連なる吸入ポート39が開口し、一方向弁取り付け孔32の一側に還流通路11a,11bの下流側(マスタシリンダM側)通路が開口する。そしてダンパ取り付け孔31に前記ダンパ13が、一方向弁取り付け孔32に前記一方向弁19がそれぞれ装着される。
【0025】
ダンパ13は、ダンパ取り付け孔31に圧入して固定されるダンパシリンダ33と、このダンパシリンダ33内を、ばね室35及び受圧室36に仕切るダンパピストン34と、ばね室35に収容されてダンパピストン34を受圧室36側に弾発的に押圧するゴム等の弾性材製のダンパばね37と、受圧室36に同軸状に連なる補助受圧室38、及びこの補助受圧室38より小径でそれと同軸状に連なる吐出ポート4
0を有するポート部材41とで構成され、ポート部材41は、一方向弁取り付け孔32に圧入して固定される。
【0026】
ダンパシリンダ33及びダンパピストン3
4は、互いに対向する環状の段部33a,34aを有しており、それら段部33a,34a間に、ダンパピストン34の摺動を妨げないように変形するOリング45が設けられる。ダンパ取り付け孔31とダンパシリンダ33との間には、吸入ポート39を受圧室36に連通する環状通路42が形成される。
【0027】
ダンパピストン34の、受圧室36の容積を最小にする前進位置は、ダンパピストン34がダンパ取り付け孔31の内端面に当接することで規制されるようになっており、ダンパピストン34の、ダンパ取り付け孔31内端面との当接面には、受圧室36を前記補助受圧室38に連通する凹部43及び複数の通溝44,44…が設けられる。
【0028】
一方向弁19は、一方向弁取り付け孔32にポート部材41と共に圧入して固定されるフランジ47aを有するキャップ状の弁ハウジング47に収容される。ポート部材41の吐出ポート40の、弁ハウジング47内に臨む端面には円錐状の弁座48が形成され、この弁座48と協働して吐出ポート40を開閉する球状の弁体49と、この弁体49を閉弁方向に付勢するコイルばねよりなる弁ばね50とが弁ハウジング47に収容される。こうして一方向弁19は、弁体49の開閉方向がダンパピストン34の摺動方向と同方向となるように、ダンパ13に隣接して配設される。
【0029】
また弁ハウジング47の端壁には、その内部を外部に開放する前記オリフィス10が穿設され、このオリフィス10を還流通路11a,11bの下流側に連通する筒状通路51が、弁ハウジング47と一方向弁取り付け孔32との間に形成されている。而して、還流通路11a,11bの上流側と下流側とは、環状通路42、受圧室36、補助受圧室38、吐出ポート40、オリフィス10及び筒状通路51を介して連通することになり、吐出ポート40を開閉する弁体49は、受圧室36側からオリフィス10側への液流を許容し、それと反対方向の液流を阻止することになる。
【0030】
次に、この実施形態の作用について説明する。
[通常ブレーキ]
各車輪がロックを生じる可能性のない通常ブレーキ時には、各入口弁5a〜5dが消磁状態にあって開弁しており、また各出口弁6a〜6dも消磁状態にあって閉弁している。いま、ブレーキペダルPを踏み込んでマスタシリンダMを作動すると、第1出力ポート1aからの出力液圧は、第1入力通路2a、レギュレータ弁14、第1,第2入口弁5a,5b 及び第1,第2出力通路12a,12bを経て左前輪用車輪ブレーキBa及び右後輪用車輪ブレーキBbに供給され、それらを作動する。また第2出力ポート1bからの出力液圧は、第2入力通路2b、レギュレータ弁14、第3,第4入口弁5c,5d及び第3,第4出力通路12c,12dを経て右前輪用車輪ブレーキBc及び左後輪用車輪ブレーキBdに供給され、それらを作動する。
[アンチロック制御]
上記ブレーキ時、車輪がロック状態に入りそうになると、電子制御ユニット20の作動により、第1〜第4入口弁5a〜5dのうちロック状態になろうとした車輪に対応する入口弁を励磁して閉弁すると共に、第1〜第4出口弁6a〜6dのうち上記車輪に対応する出口弁を励磁して開弁する。すると、上記車輪に対応する車輪ブレーキの余剰ブレーキ液圧が対応する開弁した出口弁6a〜6d及びそれの対応する減圧通路7a,7bを通して第1リザーバ9a又は第2リザーバ9bに吸収されて、その車輪ブレーキの液圧が減圧されることになる。
【0031】
その車輪ブレーキの液圧を一定に保持する場合には、その車輪ブレーキに対応する入口弁5a〜5dを励磁して閉弁すると共に、出口弁6a〜6dを消磁して閉弁状態にすればよく、ブレーキ液圧を増圧する際には、入口弁5a〜5dを消磁して開弁すると共に、出口弁6a〜6dを消磁して閉弁した状態にすればよい。このように制御することにより車輪をロックさせることなく、効率良く制動することができる。
【0032】
このようなアンチロック制御中、電子制御ユニット20は電動モータ17を作動して第1,第2液圧ポンプ8a,8bを駆動する。而して、第1,第2液圧ポンプ8a,8bは、第1,第2リザーバ9a,9bに吸収されたブレーキ液を第1,第2減圧通路7a,7bを通して吸入して、第1,第2還流通路11a,11bに吐出する。各還流油路11a,11bに吐出されたブレーキ液は、対応するダンパ13の受圧室36及び補助受圧室38に流入し、その際、対応する液圧ポンプ8a,8bの吐出圧脈動は、ダンパばね37の弾性変形を伴なうダンパピストン34の往復摺動による受圧室36の体積変化により減衰され、更に、受圧室36に流入したブレーキ液は、補助受圧室38から吐出ポート40へと移り、一方向弁19の弁体49を押し開けて吐出ポート40を通過し、次いでオリフィス10を通過する。その間、液圧ポンプ8a,8bの吐出圧脈動は、弁座48及び弁体49間の隙間、及びオリフィス10の絞り抵抗によっても減衰される。オリフィス10を通過したブレーキ液は、還流油路11a,11bの下流側へ、そしてレギュレータ弁14,14を介して第1,第2入力通路2a,2bへと還流する。この還流によって、リザーバ9a,9bのブレーキ液の吸収によるブレーキペダルPの踏み込み量の増加が抑制される。
【0033】
ところで、マスタシリンダMの作動時、マスタシリンダMから第1及び第2入力通路2a,2bに出力されるブレーキ液圧は、前述のように対応するレギュレータ弁14を通過した後、第1,第2出力通路12a,12b、並びに第3,第4出力通路12c,12dに供給される一方、前記第1,第2還流通路11a,11bにも供給されるが、上記のように、各還流通路11a,11bにおいては、ダンパ13及びオリフィス10間に、オリフィス10側から受圧室36側への液流を阻止する一方向弁19が設けられるので、その一方向弁19が各還流通路11a,11bを遮断して、オリフィス10側から受圧室36側へのブレーキ液の流れを阻止することにより、マスタシリンダMの出力液圧がダンパ13に吸収されることを防ぐことができる。これにより、マスタシリンダMの出力液圧を、車輪ブレーキBa〜Bdに効率良く供給できて、良好なブレーキ操作剛性感、即ち良好なブレーキ操作フィーリングを操縦者に与えることができる。
【0034】
またダンパ13は、還流通路11a,11bの液圧ポンプ8a,8b側に連なる吸入ポート39、及び同還流通路11a,11bのマスタシリンダM側に連なる吐出ポート40を備え、その吐出ポート40に一方向弁19が配設されるので、ダンパ13及び一方向弁19が隣接配置されることになり、これらを収容するモジュレータ3のボディ3aのコンパクト化を図ることができる。
【0035】
またダンパ13は、ダンパシリンダ33と、このダンパシリンダ33内を、ばね室35及び受圧室36に仕切るダンパピストン34と、ばね室35に収容されてダンパピストン34を受圧室36側に弾発的に押圧するダンパばね37と、受圧室36に同軸状に連なる補助受圧室38、及びこの補助受圧室38より小径でそれと同軸状に連なる吐出ポート4
0を有するポート部材41とで構成される一方、一方向弁19は、前記吐出ポート40の外端に形成される弁座48と、この弁座48と協働して吐出ポート40を開閉する弁体49と、この弁体49を閉弁方向へ付勢する弁ばね50とで構成されるので、各液圧ポンプ8a,8bの作動時には、ダンパピストン34の摺動方向と、一方向弁19の弁体49の開閉方向とが同方向となって、ダンパ13から一方向弁19へとブレーキ液を直線的にスムーズに流すことができ、ブレーキ液中での気泡の発生を抑えることができる。またポート部材41が補助受圧室38を持つことで、受圧室36及び補助受圧室38の総合容積が拡大し、ダンパ13の減衰機能を高めることができる。
【0036】
また一方向弁19には、ポート部材41に連結されて弁体49及び弁ばね50を収容するキャップ状の弁ハウジング47が設けられ、この弁ハウジング47にオリフィス10が穿設されるので、弁ハウジング47がオリフィス部材を兼ねることになり、専用のオリフィス部材を設ける必要がなく、構造の簡素化及びコンパクト化に寄与し得る。
[自動ブレーキ制御1(トラクション制御)]
例えば自動車の発進時、駆動輪たる前輪が空転しそうになると、電子制御ユニット20は、各車輪の車輪速センサ22から送られてくる信号から前輪及び後輪の回転差を演算し、その回転差が規定の閾値を超えると空転状態と判定して、レギュレータ弁14、第2入口弁5b及び第4入口弁5dを励磁して閉弁すると共に、電動モータ17を作動して第1,第2液圧ポンプ8a,8bを駆動する。これら第1,第2液圧ポンプ8a,8bは、マスタシリンダMの作動液を第1,第2出力ポート1a,1bから第1,第2サクション通路15a,15bを通して吸入し、そして第1,第2還流通路11a,11b、第1,第3入口弁5a,5cを通して左右の前輪用車輪ブレーキBa,Bcに供給すると共に、その供給液圧をレギュレータ弁14により調整することで、左右の前輪用車輪ブレーキBa,Bcを適正に作動して、前輪の空転を効率良く防ぐことができる。
[自動ブレーキ制御2(ブレーキアシスト)]
ブレーキペダルPの踏み込みによるマスタシリンダMの作動時、液圧センサ21がマスタシリンダ出力液圧を検知して、それに応じた信号を電子制御ユニット20に出力すると、電子制御ユニット20では、その信号からマスタシリンダMの出力昇圧速度を演算し、その昇圧速度が規定の閾値を超えたとき、急ブレーキ操作時と判定して、電動モータ17を作動して、第1,第2液圧ポンプ8a,8bを駆動すると共に、レギュレータ弁14を励磁して閉弁する。第1,第2液圧ポンプ8a,8bの作動によれば、サクション弁16,16の開弁により、第1,第2入力通路2a,2b中のマスタシリンダMの出力液圧を第1,第2サクション通路15a,15bを通して吸入し、これを昇圧して還流通路11a,11bから開弁状態の入口弁4a〜4dを経て各車輪ブレーキBa〜Bdに圧送するので、それらを強力に作動できて、急ブレーキ操作に対応することができる。
【0037】
その際、マスタシリンダMの出力液圧が開弁したサクション弁16,16を通過しても、一方向弁18,18により第1,第2リザーバ9a,9bへの吸収が阻止されるので、マスタシリンダMの出力液圧の損失を抑制することができる。
[自動ブレーキ制御3(車両の走行姿勢制御)]
車両が、例えば左旋回中、舵角センサ23及びヨーレートセンサ24の出力信号が互いに対応せず、それらの信号から電子制御ユニット20が、車両が例えば過剰に左旋回しそうとしていると判定すると、電子制御ユニット20は、その向きを修正すべく、電動モータ17を作動して、第1、第2液圧ポンプ8a,8bを駆動すると共に、レギュレータ弁14、第1入口弁5a及び第4入口弁5dを励磁して閉弁する。その結果、第1,第2液圧ポンプ8a,8bがマスタシリンダMの作動液を第1、第2出力ポート1a,1b から第1サクション通路15aを通して吸入し、そして還流通路11a,11b、第2,第3入口弁5b,5c を通して右前輪用車輪ブレーキBc及び右後輪用車輪ブレーキBbのみに供給すると共に、その供給液圧をレギュレータ弁14により調整するので、右前輪用車輪ブレーキBc及び右後輪用車輪ブレーキBbのみが適正に作動して、車両の走行姿勢を舵角に対応させるよう、右側に修正することになる。
【0038】
また車両の向きを左側に修正するには、上記とは反対に第2入口弁5b及び第3入口弁5cを励磁して閉弁して、第1,第2液圧ポンプ8a,8bの吐出液圧を第1、第4入口弁5a,5dを通して左前輪用車輪ブレーキBa及び左後輪用車輪ブレーキBdのみに供給して、それらを作動する。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、本発明を後輪駆動車にも適用することができる。またダンパ13、一方向弁19及びオリフィス10は、それぞれ分離独立して配置することもできる。また本発明は、自動ブレーキ機能を持たず(レギュレータ弁14やサクション弁16を備えない。)、アンチロックブレーキ機能のみ有するブレーキ液圧制御装置に適用しても良い。