(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力需要家毎に、固有の識別情報であるユーザIDと、使用電力の上限値を示す契約容量情報と、前記発電装置の種類に関する情報を示す契約タイプ情報と、当該電力需要家の地域を示す地域情報と、を取得して選択情報テーブルに電力需要家毎に関連付けて記憶する選択情報取得部を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力小売り管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願に係る電力小売管理装置および電力小売管理方法の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る電力小売管理装置および電力小売管理方法が限定されるものではない。
【0012】
[1.電力小売管理処理]
まず、実施形態に係る電力小売管理処理について説明する。
図1Aは、実施形態に係る電力小売管理処理の説明図であり、本実施形態においては電力小売システムにより電力小売管理処理が実行される。
【0013】
図1Aに示すように、実施形態に係る電力小売システムは、複数の発電装置、複数のスマートメータおよび電力小売管理装置を備える。発電装置、スマートメータおよび電力小売管理装置は互いに通信ネットワークまたは専用線で接続される。
【0014】
送配電網および送配電網管理装置は電力会社CBによって管理および運用される。また、送配電網管理装置によって送配電網が管理される。電力小売管理装置は、電力小売業者CAによって管理および運用される。電力小売業者CAは、複数の発電業者CEと予め発電電力の購入契約をしている。また、電力小売業者CAは、複数の電力需要家CDと予め電力小売契約をしている。電力小売管理装置は、複数の発電業者CEのそれぞれの発電装置から供給される発電電力を電力会社CBの送配電網を介して複数の電力需要家CDへ提供する。
【0015】
複数のスマートメータは、電力需要家CDの住居や施設などにそれぞれ設けられる。これらのスマートメータは、複数の電力需要家CDそれぞれの電力使用量を検出し、かかる電力使用量の情報を電力小売管理装置に通信ネットワーク経由で送信する。電力使用量は、電力需要家CDが消費する電力量であり、送配電網から電力需要家CDの設備へ供給される電力量である。
【0016】
また、電力小売管理装置は、各発電装置の電力発電量の情報を通信ネットワーク経由で各発電装置から受信する。また、電力発電量は、電力小売管理装置の制御により発電装置から送配電網へ供給される電力量である。各発電装置は、電力小売管理装置から通信ネットワーク経由で電力総量調整パラメータを取得し、かかる電力総量調整パラメータに応じた電力発電量になるように発電装置から送配電網に出力される電力発電量を制御する。
【0017】
以上のように構成される電力小売システムにより実行される電力小売管理方法の流れについて
図1Bを参照して説明する。
図1Bは、実施形態に係る電力小売管理方法の説明図である。
図1Bに示すように、各スマートメータは、各電力需要家CDによる電力使用量の情報を通信ネットワーク経由で に送信する(ステップS1)。また、各発電装置は、電力発電量を通信ネットワーク経由で電力小売管理装置に送信する(ステップS2)。
【0018】
電力小売管理装置は、地域EA〜ED(以下、地域Eと総称する場合がある)毎の情報に基づき、各発電装置に対する電力総量調整パラメータを算出する(ステップS3)。かかる処理において、電力小売管理装置は、電力発電量の総量と電力使用量の総量とを同時同量にするための発電装置毎の電力発電量を、地域毎の電力需要家CDの電力使用量と発電装置の電力発電量の状態に基づいて算出することで、電力需給計画を作成し、発電装置毎の電力総量調整パラメータを求める。
【0019】
例えば、電力小売管理装置は、地域E毎に、同一の地域に存在する電力需要家CDの電力使用量と発電装置の電力発電量を対応付ける。また、電力小売管理装置は、電力発電量が不足する場合、不足分の電力発電量を他地域に存在する発電装置の電力発電量に対応付ける。この場合、電力小売管理装置は、電力発電量が不足する地域から最も近く且つ電力発電量を供給できる発電装置が存在する地域を他地域として選択する。例えば、電力小売管理装置は、異なる電力会社の送配電網間の連結点を跨ぐ回数が少ない地域を他地域として選択したり、送配電経路の距離が最も近い地域を他地域として選択したりする。
【0020】
このように、電力小売管理装置は、同一の地域での電力需要家CDと発電装置とを優先して需給の対応付けをしつつ、電力発電量の不足分については地域的に近い発電装置を電力需要家CDに対応付けて、電力需給計画を作成し、また、発電装置毎の電力総量調整パラメータを求める。
【0021】
また、発電装置の種類が電力需要家CDにより選択される場合、電力小売管理装置は、さらに、発電装置毎の電力発電量を、電力需要家CDが選択した発電装置の種類に応じた地域E毎の電力発電量と電力使用量の状態に基づき算出することで、電力需給計画を作成し、発電装置毎の電力総量調整パラメータを求める。
【0022】
次に、電力小売管理装置は、作成した電力需給計画の情報を送配電網管理装置に通信ネットワークを介して送信する(ステップS4)。電力需給計画の情報は、所定期間TA(例えば、30分間)に送配電網に供給する電力発電量と送配電網から消費する電力使用量の予定を示す情報である。
【0023】
また、電力小売管理装置は、算出した電力総量調整パラメータを各発電装置に通信ネットワーク経由で送信する(ステップS5)。各発電装置は、電力総量調整パラメータに基づき、送配電網に供給する電力発電量を調整する(ステップS6)。
【0024】
このように、実施形態に係る電力小売管理処理では、発電装置毎の電力総量調整パラメータを、電力需要家CDの地域毎の電力使用量と発電装置の地域毎の電力発電量の状態に基づいて算出する。そのため、かかる電力小売管理処理では、同時同量制御を行いつつ、送配電経路を適切に管理することができる。例えば、発電装置と電力需要家CDとの間の送配電経路が長距離になることを低減でき、また、異なる電力会社CBの送配電網に跨がることを低減でき、送配電コスト増加や送配電ロスを低減することができる。
【0025】
[2.電力システム1]
次に、
図2を用いて、実施形態に係る電力システムについてさらに説明する。
図2に示すように、電力システム1は、電力小売管理装置2と、送配電網管理装置3と、送配電網4a〜4cと、通信ネットワーク5と、電力需要家CD1〜CDnの設備6
1〜6
n(以下、電力需要家設備6
1〜6
nと記載する)と、発電業者CE1〜CEmの発電設備7
1〜7
mとを備える。
【0026】
送配電網管理装置3および送配電網4a〜4cは電力会社CBによって管理および運用される。送配電網4a〜4cは、例えば、電力会社CBと契約した電力需要家の設備(図示せず)や電力会社CBの発電装置(図示せず)と接続されており、これらの間の電力需給を管理する。
【0027】
送配電網4aと送配電網4bとは連結装置8aで連結され、送配電網4bと送配電網4cとは連結装置8bで連結される。送配電網4a〜4c(以下、送配電網4と総称する場合がある)は、それぞれ異なる電力会社CBによって管理および運用されてもよい。この場合、送配電網4a〜4cはそれぞれ異なる送配電網管理装置3によって管理される。
【0028】
また、送配電網管理装置3は、電力小売管理装置2から電力需給計画の情報を取得し、かかる電力需給計画に許可を与える。送配電網管理装置3は、許可を与えた電力需給計画に従った電力需給が行われない場合には、供給不足の電力発電量を電力会社CBの発電装置の電力発電量で補い、電力小売業者CAに対して割高な電力料金または違約金を請求する。また、送配電網管理装置3は、電力需給計画に基づき、電力小売業者CAに対する送配電料金を算出する。なお、送配電網管理装置3は、連結装置8a、8bを跨いで送配電される電力発電量がある場合には、連結装置8a、8bを跨ぐ毎に割増料金が追加された送配電料金を算出して電力小売業者CAへ請求する。
【0029】
電力需要家設備6
1〜6
n(以下、電力需要家設備6と総称する場合がある)は、それぞれスマートメータ11を有する。各スマートメータ11により各電力需要家設備6での電力使用量が測定され、各スマートメータ11で測定された電力使用量の情報が通信ネットワーク5を介して電力小売管理装置2へ送信される。
【0030】
発電設備7
1〜7
mは、それぞれ1以上の発電装置を有する。例えば、発電設備7
1は、3つの発電装置12a〜12c(以下、発電装置12と総称する場合がある)を有する。発電装置12の種類は、例えば、太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電(非揚水)、水力発電(揚水)、火力発電(天然ガス)、火力発電(石油)、火力発電(石炭)、原子力発電などである。
【0031】
発電装置12は、電力小売管理装置2から送信される電力総量調整パラメータに応じた電力発電量になるように発電制御を行い、発電電力を送配電網4へ供給する。また、発電装置12は、現在の電力発電量と最大電力発電量の情報を電力小売管理装置2へ出力する。これらの情報により、電力小売管理装置2は、電力総量調整パラメータを生成して、各発電装置12へ通信ネットワーク5を介して送信する。
【0032】
なお、発電装置12が太陽光発電や風力発電を行う発電装置である場合、発電装置12は、例えば、蓄電装置を備える。この場合、発電装置12は、発電電力の一部を蓄電装置に蓄電することによって送配電網4へ供給する発電電力を調整する。蓄電装置として、電池型蓄電装置や圧縮空気型蓄電装置などがある。圧縮空気型蓄電装置は、例えば、太陽光発電による発電電力により圧縮空気を生成し、かかる圧縮空気をタンクに蓄積しておき、その後、蓄積した圧縮空気でタービンを回して発電する。
【0033】
また、発電装置12が太陽光発電や風力発電を行う発電装置である場合、発電装置12は、太陽光パネルの向きを変化させて電力発電量を制御したり、風車のロータ(プロペラ)の向きを変化させて電力発電量を制御することもできる。
【0034】
[3.電力小売管理装置2]
次に、実施形態に係る電力小売管理装置2について説明する。
図3は、実施形態に係る電力小売管理装置2の構成例を示す図である。
図3に示すように、電力小売管理装置2は、通信部20と、記憶部21と、制御部22とを有する。なお、実施形態に係る電力小売管理装置2の制御部22は、上述した電力需給計画も作成するが、以下においては説明を省略する。
【0035】
通信部20は、通信ネットワーク5との間で情報の送受信を行う通信インタフェースであり、通信ネットワーク5との接続を有線または無線で行う。制御部22は、通信部20および通信ネットワーク5を介して、送配電網管理装置3、電力需要家設備6のスマートメータ11および発電装置12との間で各種の情報を送受信することができる。
【0036】
記憶部21は、選択情報DB(Data Base)31および電力量情報DB32を有する。選択情報DB31および電力量情報DB32は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置である。
【0037】
制御部22は、小売電力管理処理を行う。制御部22は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。制御部22は、内部のCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)によって内部の記憶装置に記憶されたプログラムがRAMを作業領域として実行されることで、選択情報取得部41、使用量情報取得部42、発電量情報取得部43、調整パラメータ算出部44、調整パラメータ送信部45および料金算出部46として機能する。
【0038】
なお、制御部22の構成は、かかる構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。また、電力小売管理装置2は不図示の読取装置を備えており、制御部22は、読取装置を経由して記録媒体に記録されているプログラムを内部の記憶装置に読み込んだ後、かかるプログラムを実行することにより、上述した制御部22の機能を実現することができる。なお、記録媒体としては、光ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク等が挙げられる。
【0039】
[3.1.選択情報取得部41]
選択情報取得部41は、電力需要家CDにより設定された選択情報を電力需要家CDのスマートメータ11から取得し、選択情報DB31に記憶される選択情報テーブルを更新する。選択情報には、例えば、ユーザID、契約容量、契約タイプおよび地域の情報が含まれる。
【0040】
図4は、選択情報テーブルの一例を示す図である。
図4に示すように、選択情報テーブルは、「ユーザID」、「契約容量」、「契約タイプ」および「地域」を関連付けた情報である。「ユーザID」は、電力需要家CDの識別情報である。「契約容量」は、使用電力の上限値である。「契約タイプ」は、発電装置12の種類に対応する情報である。「地域」は、電力需要家CDの地域を示す。ここでは、各送配電網4に対応する地域である。例えば、地域「EA」は、電力需要家設備6が送配電網4aに接続されていることを示し、地域「EB」は、電力需要家設備6が送配電網4bに接続されていることを示す。
【0041】
図4に示す選択情報テーブルでは、ユーザID「U101」に対応する電力需要家CDが、地域「EA」に存在し、契約容量を「10アンペア」とし、契約タイプを「太陽光発電のみ」とする電力小売契約を電力小売業者CAとの間で行っていることが示される。また、選択情報テーブルでは、ユーザID「U102」に対応する電力需要家CDが、地域「EA」に存在し、契約容量を「30アンペア」とし、契約タイプを「自然エネルギーのみ」とする電力小売契約を電力小売業者CAとの間で行っていることが示される。
【0042】
また、選択情報テーブルでは、ユーザID「U103」に対応する電力需要家CDが、地域「EB」に存在し、契約容量を「20アンペア」とし、契約タイプを「自然エネルギー50%、火力発電50%」とする電力小売契約を電力小売業者CAとの間で行っていることが示される。また、選択情報テーブルでは、ユーザID「U104」に対応する電力需要家CDが、地域「EB」に存在し、契約容量を「40アンペア」とし、契約タイプを「電力料金プランA」とする電力小売契約を電力小売業者CAとの間で行っていることが示される。「電力料金プランA」は、コストが最も安い発電装置12から電力を使用する料金プランであり、例えば、火力発電と原子力発電とを組み合わせて電力供給が行われる。
【0043】
選択情報取得部41は、スマートメータ11から選択情報を受信する度に、選択情報テーブルを更新する。これにより、選択情報テーブルには、電力小売業者CAと電力需要家CDとの間の最新の選択情報が設定される。
【0044】
[3.2.使用量情報取得部42]
使用量情報取得部42は、各スマートメータ11から通信ネットワーク5経由で各電力需要家CDの電力使用量の情報を取得し、電力量情報DB32の電力使用量テーブルを更新する。
【0045】
図5は、電力使用量テーブルの一例を示す図である。
図5に示すように、電力使用量テーブルには、「ユーザID」、「今回電力使用量」および「前回電力使用量」の情報を関連付けた情報が含まれる。なお、図示していないが、電力使用量テーブルには、前々回以前の電力使用量の情報も含まれる。
【0046】
電力使用量テーブルに設定される電力使用量の情報は、所定期間TA(例えば、30分)毎に積算される情報である。「前回電力使用量」は、前回の所定期間TAにおける電力需要家CDの電力使用量であり、「今回電力使用量」は、前回の所定期間TA経過後から現在までの電力需要家CDの電力使用量の積算値である。
【0047】
[3.3.発電量情報取得部43]
発電量情報取得部43は、各発電装置12から通信ネットワーク5経由で各発電装置12の電力発電量と最大電力発電量の情報を取得し、電力量情報DB32の電力発電量テーブルを更新する。
【0048】
図6は、電力発電量テーブルの一例を示す図である。
図6に示すように、電力発電量テーブルには、「発電装置ID」、「発電業者」、「地域」、「発電装置の種類」、「契約発電量」、「電力発電量」、「最大電力発電量」および「発電料金」の情報を関連付けた情報が含まれる。
【0049】
「発電装置ID」は、発電装置12の識別情報であり、「発電業者」は、発電業者CEの情報である。「地域」は、発電装置12が存在する地域の情報であり、ここでは、各送配電網4に対応する地域である。例えば、地域「EA」は、発電装置12が送配電網4aに接続されていることを示し、地域「EB」は、発電装置12が送配電網4bに接続されていることを示し、地域「EC」は、発電装置12が送配電網4cに接続されていることを示す。
【0050】
「契約発電量」は、電力小売業者CAと発電業者CEとの間の契約で設定された電力発電量である。例えば、
図6に示される発電装置ID「E101」の発電装置12に関しては、最低契約電力発電量が1MW/hに設定され、最高契約電力発電量が2MW/hに設定される。最低契約電力発電量は、電力小売管理装置2から発電装置12に要求される最低限の電力発電量であり、最高契約電力発電量は、電力小売管理装置2から発電装置12に要求される電力発電量の上限値である。電力小売管理装置2から最高契約電力発電量の要求に対応できない発電装置12を有する発電業者CEは、電力小売業者CAから違約金の支払いを求められる。
【0051】
「発電装置の種類」は、発電装置12の種類を示す情報である。「発電装置ID」、「発電業者」、「地域」、「発電装置の種類」、「契約電力量」の情報は、電力小売業者CAと発電業者CEとの間で契約が成された後、例えば、電力小売業者CAにより電力発電量テーブルに設定される。「電力発電量」は、所定期間TAの電力発電量の情報であり、制御部22が各発電装置12に対して電力総量調整パラメータにより要求している電力発電量の情報である。「最大電力発電量」は、次回の所定期間TAで各発電装置12が発電できる最大の発電量である。「発電料金」は、1キロワット当たりの発電電力の購入料金である。
【0052】
[3.4.調整パラメータ算出部44]
調整パラメータ算出部44は、選択情報テーブル、電力使用量テーブルおよび電力発電量テーブルに基づき、同時同量制御を行いつつ、同一の地域Eに存在する発電装置12の電力発電量と電力需要家CDの電力使用量の状態に基づいて、発電装置12毎の電力総量調整パラメータを算出する。
【0053】
同時同量制御は、発電業者CE1〜CEmの発電装置12の電力発電量の総量と、電力需要家CD1〜CDnの電力使用量の総量とを所定期間TA当たり同量にする選択である。調整パラメータ算出部44は、現在の所定期間TAの電力使用量の総量に基づき、次回の所定期間TAにおける電力使用量の総量を予測し、同時同量制御を行う。なお、電力発電量の総量と電力使用量の総量とが厳密に同量である必要はなく、電力発電量の総量が電力使用量の総量よりも多くてもよい。
【0054】
調整パラメータ算出部44は、各電力需要家CDの電力使用量に応じた電力を供給させる発電装置12として選択情報に対応する1以上の発電装置12を、電力需要家CDと同一の地域Eに存在する発電装置12を優先するように、複数の発電装置12の中から電力需要家CD毎に選択する。
【0055】
調整パラメータ算出部44は、「最低契約電力発電量」を下限とし、かつ、「最高契約電力発電量」を上限として、各電力需要家CDに対する各発電装置12の割り当てを行う。電力発電量テーブルの「電力発電量」と「最高契約電力発電量」との差分が余裕電力量であり、かかる余裕電力量分の電力発電量により、電力需要家CDの電力使用量の増加に対応できる。なお、調整パラメータ算出部44は、「最高契約電力発電量」よりも「最大電力発電量」が多い発電装置12に対して、「最大電力発電量」を上限として電力需要家CDに割り当てることもできる。「最高契約電力発電量」を超える電力発電量については、通常料金よりも高い電力料金が設定される。
【0056】
調整パラメータ算出部44は、例えば、「最低契約電力発電量」が確保できない発電装置12の存在により、同時同量制御ができない場合、「最高契約電力発電量」を超える「最大電力発電量」を上限として電力需要家CDの割り当てを行うことができる。
【0057】
ここで、選択情報テーブルが
図4に示す状態であり、電力使用量テーブルが
図5に示す状態であり、電力発電量テーブルが
図6に示す状態であるとする。この場合、調整パラメータ算出部44は、例えば、ユーザID「U101」の電力需要家CDに対しては、太陽光発電を行う発電装置12の発電電力を割り当てる。
【0058】
太陽光発電を行う発電装置12は、例えば、発電装置ID「E101」、「E106」および「E108」の発電装置12であり、これら発電装置12のうちユーザID「U101」の電力需要家CDと同一の地域Eに存在する1以上の発電装置12の発電電力を優先してユーザID「U101」の電力需要家CDに対して割り当てる。
【0059】
発電装置ID「E101」の発電装置12は地域「EA」に存在し、発電装置ID「E106」および「E108」の発電装置12は地域「EB」に存在する。また、ユーザID「U101」の電力需要家CDは地域「EA」に存在する。したがって、調整パラメータ算出部44は、ユーザID「U101」の電力需要家CDに対し、発電装置ID「E101」の発電装置12を優先して割り当てる。発電装置ID「E101」の発電装置12の電力発電量がすべて他の電力需要家CDに割り当てられている場合、調整パラメータ算出部44は、発電装置ID「E106」および「E108」の発電装置12のうち電力発電量に余裕がある発電装置12にユーザID「U101」の電力需要家CDを割り当てる。
【0060】
また、例えば、調整パラメータ算出部44は、ユーザID「U102」の電力需要家CDに対しては、太陽光発電、風力発電および水力発電(非揚水)を行う発電装置12の電力発電量を割り当てる。調整パラメータ算出部44は、例えば、発電装置ID「E101」〜「E103」、「E106」および「E108」の発電装置12のうちユーザID「U102」の電力需要家CDと同一の地域「EA」に存在する発電装置ID「E101」〜「E103」の発電装置12の電力発電量を優先してユーザID「U102」の電力需要家CDに対して割り当てる。なお、調整パラメータ算出部44は、発電装置ID「E101」〜「E103」の発電装置12のうち発電料金が安価なものを優先してユーザID「U102」の電力需要家CDに対して割り当てることができる。
【0061】
また、例えば、調整パラメータ算出部44は、ユーザID「U103」の電力需要家CDに対しては、自然エネルギーの発電を行う発電装置12の電力発電量と、火力発電を行う発電装置12の電力発電量とがそれぞれ50%の割合になり、かつ、ユーザID「U103」の電力需要家CDと同一の地域「EB」に存在する発電装置12の電力発電量を優先して割り当てる。自然エネルギーの発電は、例えば、太陽光発電、風力発電および水力発電(非揚水)である。また、火力発電は、例えば、火力発電(天然ガス)、火力発電(石油)および火力発電(石炭)である。
【0062】
また、例えば、調整パラメータ算出部44は、ユーザID「U104」の電力需要家CDに対しては、電力発電量テーブルに基づき、電力発電料金が最も安い発電電力から優先して発電電力を割り当てる。例えば、調整パラメータ算出部44は、ユーザID「U104」の電力需要家CDと同一の地域「EB」に存在し、最も発電料金が安い発電装置ID「E105」の発電装置12による発電電力を優先して割り当てる。なお、調整パラメータ算出部44は、連結装置8a、8b毎に追加される割増料金を考慮し、割増料金がかからない発電装置12を優先して電力需要家CDに割り当てる。
【0063】
このように、調整パラメータ算出部44は、選択情報テーブル、電力使用量テーブルおよび電力発電量テーブルを参照し、全体として電力使用量の総量と電力発電量の総量が同時同量となるようにしつつ、電力需要家CDが選択した発電装置12の種類毎かつ地域E毎の電力発電量と電力使用量との状態に基づき、電力需要家CDに対する発電装置12および電力発電量の割り当てを行う。
【0064】
調整パラメータ算出部44は、このように割り当てた発電装置12および電力発電量の情報に基づき、発電装置12毎の電力発電量を調整するための電力総量調整パラメータを所定期間TA毎に算出する。電力総量調整パラメータは、次回の所定期間TAでの発電電量を指定する情報である。
【0065】
なお、調整パラメータ算出部44は、各電力需要家CDが発電装置12の種類を特定しない場合、発電装置12の種類によらず、地域E毎の電力発電量と電力使用量との状態に基づき、発電装置12毎の電力総量調整パラメータを算出することができる。
【0066】
また、調整パラメータ算出部44は、各電力需要家CDに対する発電装置12および電力発電量の割り当て、および、電力総量調整パラメータの算出を所定期間TA単位で行う。したがって、電力需要家CDは、スマートメータ11から所定期間TA単位で選択情報を電力小売管理装置2へ送信することにより、所定期間TA単位で電力需要家CDの要望に沿った種類の発電電力を提供することができる。
【0067】
また、調整パラメータ算出部44は、一部の電力需要家CDに対し、選択情報に対応する種類の発電装置12が選択できない場合、選択情報に対応する種類ではない発電装置12を一部の電力需要家CDに割り当てることで、同時同量制御を優先して行う。
【0068】
[3.5.調整パラメータ送信部45]
調整パラメータ送信部45は、調整パラメータ算出部44によって生成された発電装置12毎の電力総量調整パラメータを、それぞれ対応する発電装置12へ送信する。
【0069】
[3.6.料金算出部46]
料金算出部46は、電力量情報DB32に記憶した電力使用量テーブルに設定された各電力需要家CDの電力使用量の情報に基づき、各電力需要家CDに請求する電力料金を算出する。
【0070】
また、料金算出部46は、選択情報に対応する種類ではない発電装置12の発電電力(以下、非選択発電電力と記載する)が選択された電力需要家CDに対しては、非選択発電電力の使用に対して割引料金を算出する。非選択発電電力の使用量は、選択外電力使用量として電力量情報DB32に記憶されており、料金算出部46は、選択外電力使用量に応じた電力料金を算出する。
【0071】
また、料金算出部46は、「最高契約電力発電量」よりも「最大電力発電量」が多い発電装置12に対して、「最大電力発電量」を上限として電力需要家CDに割り当てた場合、「最高契約電力発電量」を超える電力発電量について、割増料金を算出する。割増料金は、例えば、電力発電量テーブルに規定された「発電料金」の0.5倍〜1.0倍の金額とすることができる。電力小売業者CAは、算出した割増料金を対応する発電業者CEに支払う。
【0072】
また、料金算出部46は、「最高契約電力発電量」を送配電網4に供給できない発電装置12に対応する発電業者CEに対する違約金を算出する。かかる違約金は、例えば、電力発電量テーブルに規定された「発電料金」の3倍〜5倍の金額とすることができる。なお、料金算出部46は、他の発電装置12の電力発電量により同時同量制御を行うことができる場合には、例えば、違約金を、上記「発電料金」の3倍にし、同時同量制御できず、電力会社CBの発電装置から不足分の電力発電量が送配電網4へ供給された場合には、例えば、違約金を、上記「発電料金」の5倍にすることができる。
【0073】
[4.電力小売管理装置2の処理フロー]
次に、実施形態に係る電力小売管理装置2の情報処理の手順について説明する。
図7は、実施形態に係る電力小売管理装置2の情報処理の一例を示すフローチャートである。かかる動作は、電力小売管理装置2の制御部22によって繰り返し実行される処理である。
【0074】
図7に示すように、電力小売管理装置2の制御部22は、電力需要家CDのスマートメータ11から選択情報を取得したか否かを判定する(ステップS10)。選択情報を取得したと判定した場合(ステップS10;Yes)、制御部22は、取得した選択情報に基づき、選択情報DB31に記憶された選択情報テーブルを更新する(ステップS11)。
【0075】
ステップS11の処理が終了した場合、または、選択情報を取得していないと判定した場合(ステップS10;No)、制御部22は、電力需要家CDのスマートメータ11から電力使用量情報を取得したか否かを判定する(ステップS12)。電力使用量情報を取得したと判定した場合(ステップS12;Yes)、制御部22は、取得した電力使用量情報に基づき、電力量情報DB32に記憶された電力使用量テーブルを更新する(ステップS13)。
【0076】
ステップS13の処理が終了した場合、または、電力使用量情報を取得していないと判定した場合(ステップS12;No)、制御部22は、発電装置12から電力発電量情報を取得したか否かを判定する(ステップS14)。電力発電量情報を取得したと判定した場合(ステップS14;Yes)、制御部22は、取得した電力発電量情報に基づき、電力量情報DB32に記憶された電力発電量テーブルを更新する(ステップS15)。
【0077】
ステップS15の処理が終了した場合、または、電力発電量情報を取得していないと判定した場合(ステップS14;No)、制御部22は、発電装置制御契機になったか否かを判定する(ステップS16)。発電装置制御契機は、例えば、現在の所定期間TAが経過する前であって、次回の所定期間TAで発電装置12が電力総量調整パラメータに応じた発電電力を送配電網4へ供給できるタイミングに設定される。
【0078】
発電装置制御契機になったと判定した場合(ステップS16;Yes)、制御部22は、同時同量制御を維持しつつ、電力需要家CD毎に発電装置12および電力発電量を割り当て、かかる割り当てた結果に基づき、割り当てた電力発電量の発電装置12毎の総量に応じた電力総量調整パラメータを発電装置12毎に算出する(ステップS17)。次に、制御部22は、電力総量調整パラメータを対応する発電装置12へ送信する(ステップS18)。
【0079】
ステップS18の処理が終了した場合、または、ステップS16において発電装置制御契機となっていないと判定した場合(ステップS16;No)、制御部22は処理を終了する。なお、制御部22は、所定期間毎(例えば、毎月月末)に選択情報テーブルおよび電力使用量テーブルに基づき、電力需要家CD毎の電力料金や発電装置12毎の電力料金を算出する。
【0080】
[5.その他の実施形態]
上述の実施形態では、電力需要家設備6毎に1以上の発電装置12を選択することができるものとして説明したが、スマートメータ11において、電力需要家設備6内の装置毎に1以上の発電装置12を選択することもできる。例えば、冷蔵庫は太陽光発電の発電装置12を選択し、照明機器や扇風機は風力発電の発電装置12を選択することができるようにしてもよい。この場合、調整パラメータ算出部44は、スマートメータ11から送信される電力需要家設備6内の装置毎の選択情報に基づいて、かかる選択情報に対応する1以上の発電装置12を複数の発電装置12の中から電力需要家CD毎に割り当てる。
【0081】
[6.効果]
実施形態にかかる電力小売管理装置2は、使用量情報取得部42と、発電量情報取得部43と、調整パラメータ算出部44と、調整パラメータ送信部45とを備える。使用量情報取得部42は、複数の発電業者CEがそれぞれ有する複数の発電装置12から送配電網4へそれぞれ供給する電力量の情報を電力発電量の情報として取得する。発電量情報取得部43は、送配電網4から複数の電力需要家CDにそれぞれ供給される電力量の情報を電力使用量の情報として取得する。調整パラメータ算出部44は、全体として電力発電量と電力使用量とを同時同量にする電力総量調整パラメータを、同一の地域Eに存在する発電装置12の電力発電量と電力需要家CDの電力使用量の状態に基づいて、発電装置12毎に算出する。調整パラメータ送信部45は、電力総量調整パラメータを発電装置12へ送信する。
【0082】
これにより、電力小売管理装置2は、同時同量制御を行いつつ、送配電経路を適切に管理することができる。例えば、発電装置12と電力需要家CDの設備との間の経路が長距離になることを低減でき、また、異なる電力会社CBの送配電網4に跨がることを低減でき、これにより、送配電コスト増加や送配電ロスを低減することができる。
【0083】
また、調整パラメータ算出部44は、電力需要家CDの設備および発電装置12がそれぞれ接続される送配電網4に対応させて地域Eを設定する。
【0084】
これにより、同時同量制御を行いつつ、送配電経路が異なる電力会社CBの送配電網4に跨がることを低減でき、送配電経路を適切に管理することができる。
【0085】
また、電力需要家CDが選択した発電装置12の種類に応じた地域E毎の電力発電量と電力使用量との状態に基づき、発電装置12毎の電力総量調整パラメータを算出する。
【0086】
これにより、各電力需要家設備6と各発電業者CEの発電装置12との間で仮想送配電経路が構築されることになり、電力需要家CDの嗜好に応じた要望を反映することができる。そのため、魅力ある電力小売サービスを提供することができ、電力小売サービスへの加入者を増加させることができる。
【0087】
また、実施形態にかかる電力小売管理装置2は、料金算出部46を備える。かかる料金算出部46は、予め設定された電力発電量を送配電網4に供給できない発電装置12を有する発電業者CEに対する違約金を算出する。予め設定された電力発電量は、電力発電量テーブルに規定された「最高契約電力発電量」である。
【0088】
このように、予め設定された電力発電量を送配電網4に供給できない発電装置12を有する発電業者CEに対して違約金が算出されるため、予め設定された電力発電量の送配電網4への供給違反が低減することを期待でき、同時同量制御を安定して行うことができる。
【0089】
また、発電量情報取得部43は、発電装置12毎の余裕電力量の情報を取得する。また、調整パラメータ算出部44は、予め設定された電力発電量を送配電網4に供給できない発電装置12があることにより電力発電量の総量が不足すると判定した場合、余裕電力量を有する発電装置12から送配電網4へ供給する電力を増加させるように電力総量調整パラメータを算出する。なお、余裕電力量は、例えば、電力発電量テーブルの「電力発電量」と「最高契約電力発電量」との差分である。
【0090】
これにより、予め設定された電力発電量を送配電網4に供給できない発電装置12がでてきた場合であっても、同時同量制御を安定して行うことができる。
【0091】
[7.その他]
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0092】
上述した電力小売管理装置2は、複数のサーバコンピュータで実現してもよく、また、機能によっては外部のプラットフォーム等をAPI(Application Programming Interface)やネットワークコンピューティングなどで呼び出して実現するなど、構成は柔軟に変更できる。