(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795638
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】円筒状容器のための包装体
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20150928BHJP
A61J 1/14 20060101ALI20150928BHJP
B65D 85/42 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
A61M5/00 516
A61J1/00 390S
!B65D85/42 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-529718(P2013-529718)
(86)(22)【出願日】2010年9月28日
(65)【公表番号】特表2013-538627(P2013-538627A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】IB2010002765
(87)【国際公開番号】WO2012042291
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2013年6月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ガニエックス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス デュボア
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−500080(JP,A)
【文献】
特表2004−513708(JP,A)
【文献】
特表2006−513782(JP,A)
【文献】
特表2005−528292(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/107961(WO,A1)
【文献】
特開平09−328181(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0221151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61J 1/14
B65D 85/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ(2a)を有する円筒状容器(2)のための包装体(1)であって、この包装体は、封止カバー(8)により封止可能であって前記容器を支持するためのネスト(5)を収容するタブ(6)を具え、
第1の側および第2の側を有する板(7)を具え、この板(7)は、前記タブ(6)を封止する前に前記容器(2)のフランジ(2a)に近接して配することができ、当該板(7)は、前記第1の側に画成されて前記容器(2)のフランジ(2a)と接触状態となるようになっている複数の第1の面(7a)と、前記第2の側に画成された複数の第2の面(7b)とを具え、前記板(7)は、リブ(18)を形成する起伏(7a)を持った輪郭を有し、これらのリブ(18)が前記第1の面(7a)を形成し、前記容器(2)が前記タブ(6)にある前記ネスト(5)によって支持されると共に前記板(7)が前記容器(2)のフランジ(2a)に近接して配された場合、前記板(7)の第1の面(7a)が前記容器(2)のフランジ(2a)に接触すると共に前記板(7)の第2の面(7b)が前記封止カバー(8)に接触するように、前記第1の面(7a)は前記第2の面(7b)から離れて空間をあけられていることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記板(7)が可撓性の材料から作られていることを特徴とする請求項1に記載の包装体(1)。
【請求項3】
前記板(7)は少なくとも1つの軸線に沿って可撓性であり、この少なくとも1つの軸線に沿って巻かれることができることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装体(1)。
【請求項4】
前記板(7)が少なくとも1つの補強壁(15)または複数のこのような補強壁(15)を具えていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の包装体(1)。
【請求項5】
前記板(7)が少なくとも1つの補強リブ(17)または複数のこのような補強リブ(17)を具えていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の包装体(1)。
【請求項6】
前記板(7)が複数の補強リブ(17)を有し、これらはこの包装体に配された場合に前記ネスト(5)によって支持された前記容器と整列するようになっていることを特徴とする請求項5に記載の包装体(1)。
【請求項7】
前記板(7)が少なくとも1つの連続する周端縁(6)を具えていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の包装体(1)。
【請求項8】
前記板(7)が少なくとも1つの完全な仕切り溝または複数のこのような完全な仕切り溝(21)を具えていることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の包装体(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば注射器やカートリッジまたは他の円筒状容器の如きフランジを有する円筒状容器のための包装体に向けられる。それぞれの円筒状容器は、円筒状、特に管状の本体と、この本体の一端またはその近傍に配されたフランジとを具えている。フランジは、注射器本体と一体に形成されることができ、または本体にまたは本体に対して取り付けられる別個の部品であってよい。
【背景技術】
【0002】
しばしば注射器は、これらが一方の場所で製造されて他の場所で充填される場合か、あるいはそれほど多くはないが、これらが同じ場所で製造されて充填され、そして充填されたならば他の場所に運ばなければならない場合、ある場所から他方へと移送する必要がある。
【0003】
この移送のため、注射器は(i)グループ分けトレーまたはネストと、(ii)包装体のタブと、(iii)封止カバーとを具えた包装体内に通常、置かれる。トレーまたはネストは、チムニーの上端に対して当接するフランジを有する注射器を収容するためのチムニーによって同軸に囲まれた開口を具えている。このトレーまたはネストが包装体のタブに置かれ、次に封止カバーによって封止されると共に滅菌される。行き先で受け取られた場合、タブが自動化手段によって開けられ、トレーまたはネストをそこから引き出し、次に注射器の取り扱いおよび/または充填のために用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
注射器本体の内面は、注射器本体に対し、注射器のピストンまたはストッパーの後に続く滑動性を改善するために概ねコーティングされており、このコーティングは例えばシリコーンタイプの潤滑材である。このようなコーティングが注射器本体の内面に存在するので、コーティングが微量であったとしても注射器の先端および/または注射針へと落ちてこれらの開口を塞ぐことを回避するため、注射器を収容するタブを逆さまにして移送する必要がある。
【0005】
さらに、この種の包装体に関し、これらの移送中の振動によってチムニーに対する注射器本体の反復摩擦が発生するため、いくつかの望ましくない小さな欠陥またはかき傷が注射器本体の外面に発現する可能性がある。これらの欠陥またはかき傷は、美観的結果のみならず、これらの出現はタブの内側の微片の発生と同義であるので、注射器の汚染につながる。場合によっては、注射器の破損が発生する可能性さえある。
【0006】
この発明の主目的は、この欠点を克服することである。
【0007】
並行して、本出願人は円形でないフランジを持った注射器が方向付けられる、すなわち、注射器のフランジがあらかじめ設定した位置に特定の角度でチムニーに維持され、フランジの列を相互に組み合わせることができる新奇のトレーまたはネストを開発している。このトレーは、規格タブにおいて注射器本体をより高密度へともたらし、従ってこのタブで移送することができる注射器の数の増大を可能にする。
【0008】
だが、このような包装体でさえ、チムニーの上端とのフランジの接触が回避されず、従って欠陥,かき傷,破損以外に微片もまた、注射器本体の移送中、特にタブを逆さまにした場合に発生する可能性がある。
【0009】
この発明の目的はまた、この問題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
関係する包装体は、本質的に周知の方法でカバーにより封止可能であって、それぞれフランジを有する容器を支持するためのネストを支持するタブを具えている。
【0011】
本発明によると、この包装体はまた、第1の側および第2の側を有する板を具え、
この板は、タブを
封止カバーによって封止する前に容器のフランジに近接して配することができる。前記板は、前記第1の側に画成されて
前記容器のフランジと接触状態となるようになっている複数の第1の面と、前記第2の側に画成された複数の第2の面とを具え、前記板は、リブを形成する起伏を持った輪郭を有し、これらのリブが前記第1の面を形成し、前記容器がタブにあるネストによって支持されると共に前記板が
容器のフランジに近接して配された場合、
前記板の第1の面が
前記容器のフランジに接触すると共に前記
板の第2の面が封止カバーに接触するように、前記第1の面は前記第2の面から離れて空間をあけられている。
【0012】
本出願人は、微片や、かき傷または破損の問題がトレーの穴および/またはチムニー内の容器、特に注射器の移動によって、フランジと封止カバーとの間の明確な空間のために引き起こされることを見出している。従って、このような移動を回避するか、または少なくともこれを減少させるため、本出願人は注射器のフランジと封止カバーとを直接接触状態にする本発明による板を開発した。
【0013】
本出願人はまた、トレーまたはネストを方向付けたフランジと共に用いた場合、相当な程度の望ましくないかき傷や微片の問題または破損であっても発生する可能性があることを見出している。実際のところ、このようなトレーまたはネストに関し、フランジは決められた角度位置にフランジを配するために設けられたトレーまたはネストに存在する突起に対して移動することができる。注射器のこの動きは、決定した方向付けの喪失をもたらし、従ってフランジが相互に重なり合って一方の直近にあるので、異なるフランジ間、特にこの種のトレーまたはネストとの接触を引き起す。
【0014】
本発明による板と共に得られる注射器の軸線方向の移動の除去は、フランジを前記突起と係合状態に保持し、従ってタブが逆さまの場合にフランジをこれらの決められた向きに保持することを可能にし、従って前述の欠点を克服することを可能にする。
【0015】
板は、単一の前記第1の面と単一の前記第2の面とを具えることができる。しかしながら、この板はリブを形成する起伏を持った輪郭を有することが好ましく、これらのリブは前記第1の面を形成し、すなわち注射器本体の列の前にそれぞれ配された複数の前記第1の面と、封止カバーの側面に配された複数の前記第2の面とを具えている。
【0016】
従って、起伏または溝を持つこのカバー板は、平行平面のカバー板よりも少ない材料で構成され、特により軽くて製造するのが高価ではなく、熱成形によって付加的に製造することができる。さらに、この種のカバー板は可撓性の構造を有する利点を有しり外される場合、板を巻き付けるため適当な可撓性の材料から作る必要があるか、または、これは封止カバーと共に巻き取ることによって取り外されることを可能にする。
【0017】
板が封止カバーの除去と同時に巻き取ることによって取板が一方向に堅くなっていない構造を有し、この方向に沿って適切に巻かれるようにする必要がある。
【0018】
板が把持および/または吸引、例えば吸着カップにより取り外される場合、この場合には板は少なくとも1つの補強壁または複数のこのような補強壁を具える。
【0019】
板はまた、少なくとも1つの補強リブまたは複数のこのような補強リブ具えることができ、例えば補強リブは、包装体の中に配された場合、これらをネストにある注射器列に対して整列させるように構成される。
【0020】
板はまた、連続する周端縁を具えることができる。
【0021】
板はまた、少なくとも1つの完全な仕切り溝または複数のこのような完全な仕切り溝を具えることができる。
【0022】
上のこれらの特徴は、個々にまたは組み合わせてカバー板に剛性をもたらし、把持および/または吸引によってこれが取り外されることを可能にする。
【0023】
限定ではなく網羅的ではない例示による包装体の好ましい実施形態およびこの包装体を具えた板のいくつかの実施形態を表す添付した概略図を参照して本発明がさらに良好に理解されると共に他の特徴およびその利点が明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態による板を持った包装体の立体投影分解図である。
【
図2】封止後の第2の実施形態の側面断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態による板の底面立体投影図である。
【
図5】本発明の他の実施形態による板の上面立体投影図である。
【
図6】本発明の他の実施形態による板の底面立体投影図である。
【
図7】本発明の他の実施形態による板の上面立体投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜
図3は、注射器2を収容するためのグループ分けネスト5と、タブ6と、板7と、このタブ6の封止カバー8(
図2および
図3において見ることができる)とを具え、注射器2をある場所から他へと移送するための包装体1を示す。
【0026】
グループ分けネスト5は、円形の連続するチムニー10によって同軸に囲まれた複数の開口と、これらのチムニー10の間に配された位置決め突起11とを具えている。円形のチムニー10は、注射器2の円筒状リザーバーのための調整ハウジングを形成し、注射器2の円筒状リザーバーまたは注射筒2bをこれらチムニー10に完全に係合した場合、注射器2の基部の円形ではないフランジ2aをそこで支える。フランジ2aは、突起11がこれらフランジ2aの方向付けをもたらし、後者が他方と接触することなく相互に近接して配置されることができるような方法で、突起11間の完全な係合位置に挿入される。このような構成は、同じ出願人の特許出願第PCT/IB2009/006907号の文献に開示されている。
【0027】
タブ6は、封止カバー8を封止するための上部フランジ12と、ネスト5を支えるための上部肩部13と、ネスト5が肩部13に対して支持された場合に注射器2を収容するための底部14とを有する。板7は、ネスト5およびタブ6に似ており、成形された合成材料から作られる。
【0028】
図2および
図3に記述された実施形態においてより詳細に示されるように、カバー板7は
図3の断面において見られる起伏のある輪郭を有することができる。起伏の軸線間の距離は、ネスト5上の注射器2の列間距離に対応し、カバー板7の全体の厚さは、注射器2がネスト5に配されると共にネスト5がタブ6に配された場合、フランジ2aの上面と封止カバー8の内面とを分離する距離に対応する。従って、
図3に明瞭に示すように、カバー板7は、フランジ2aに対して支持するようになっている複数の第1の面7aと、これら第1の面の反対側のカバー板7の側方に配される複数の第2の面7bとを形成する複数のリブ18を画成し、第1の面7aと第2の面とを分離する距離は、第2の面7bが封止カバー8と接触状態になった時に第1の面7aがフランジ2aに対して支持するように選択される。
【0029】
この実施形態において、カバー板7はまた、前記第2の面7bを形成するその面に、補強壁15と、カバー板7の側面を越えて面7bの反対側に延在する連続した周端縁16とを具えている。壁15は、前記第1の面7aを形成するリブ18によってカバー板7の上側に形成されたキャビティー21に配されると共に前記第1の面7aを横切って配置されるように、これらのキャビティー21に沿って規則的に配置される。
【0030】
このような構成のため、カバー板7は相対的に高い剛性を有し、把持および/または吸引により、例えば吸着カップによって取り外すことができる。
【0031】
図1に示すように、カバー板7はまた、ブリッジ20(
図1には4つ存在する)、すなわちキャビティー21が全く存在しない領域を具えることができる。これらのブリッジ20は、吸込カップが用いられる場合、カバー板7の取り外しを容易にするために配される。
【0032】
図2および
図3に示すように、他の一実施形態において、カバー板7はまた、リブ18に対して直交し、これらリブ18の底壁から突出する補強リブ17を具えることができる。これらの補強リブ17は、隣接する壁15を結合してカバー板7の底側の剛性を改善する。
【0033】
封止カバー8は、適当な加熱封止可能な材料のシート、特にタイベック(登録商標:Dupont De Nemours Companyにて販売される材料)のシートによって形成される。
【0034】
この板7に関し、フランジ2aおよび封止カバー8とのその同時接触のため、チムニー10内の注射器2のあらゆる軸線方向の移動が回避される。このカバー板7がない場合、フランジ2aと前記封止カバー8との間に存在する距離のためにこれらの移動が可能となろう。これによって、このカバー板7は、この軸線方向の移動の可能性に起因する注射器2の痕,微片,かき傷または破損の発生の問題の解消をもたらす。
【0035】
カバー板7はまた、包装体1を逆さまに保持した場合であっても、位置決め突起11と係合状態でフランジ2aの安定した保持をもたらす。従って、このような突起11によりあらかじめ決められた向きにフランジ2aが保持されるネスト5と共に存在する高水準の望ましくない痕,微片および破損の危険性の問題をこれは解決する。
【0036】
図4(底面図)および
図5(上面図)はカバー板7の他の実施形態を示し、これは把持および/または吸引により取り外されるようになっている。この実施形態において、カバー板7は成形プラスチックで作ることができる硬質のカバー板である。
図1〜
図3の実施形態に関し、いくつかの壁15がキャビティー21に配されてカバー板7の剛性を補強し、連続する周端縁16はまた、カバー板7をタブ6に留めるために存在している。
【0037】
図6(底面図)および7(上面図)はカバー板7のさらに他の実施形態を示し、このカバー板は可撓性であって熱成形により作ることができる。これらの図に関し、カバー板は前記第1の面7aを形成したリブ18を具え、このカバー板7を横切る方向に完全に延在し、従ってリブ18が突出する方と反対の面に完全な仕切り溝21を第1の面が有する。これらの完全な仕切り溝21は、カバー板7をこの板の一つの主方向に硬くし、注射器のフランジに当接する。これらは、カバー板7の片側または両側に出口21aを有することができる。
【0038】
この実施形態は、どのような連続する周端縁16も具えていない。出口21aは、注射器がネストに配された場合、周端縁16と同様に、カバー板7がネスト5に留められることを可能にする。このカバー板7は、巻き取ることによって封止カバー8の除去と同時に取り外されるようになっており、リブ18または完全な仕切り溝21に対して直交方向に巻かれるようになっている。
【0039】
前述の事項から明らかになっているように、本発明は円筒状の容器、特に注射器のための包装体を提供し、従来技術の包装体に関して上述の確定した利点を有している。
【0040】
本発明は、例示によって与えた実施形態を参照して前述している。本発明がこれらの実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって包含される他のすべての実施形態まで拡がっていることは明らかである。