特許第5795654号(P5795654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5795654-アルキルアルミニウムの製造方法 図000031
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795654
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】アルキルアルミニウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/06 20060101AFI20150928BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20150928BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   C07F5/06 A
   B01J31/22 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-14415(P2014-14415)
(22)【出願日】2014年1月29日
(62)【分割の表示】特願2011-549223(P2011-549223)の分割
【原出願日】2010年2月3日
(65)【公開番号】特開2014-80433(P2014-80433A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年2月7日
(31)【優先権主張番号】61/150,424
(32)【優先日】2009年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】トマス ピー.クラーク
(72)【発明者】
【氏名】フランシス ジェイ.ティンマーズ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン エー.フレイジャー
【審査官】 品川 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−117173(JP,A)
【文献】 米国特許第05877378(US,A)
【文献】 特開平05−271107(JP,A)
【文献】 米国特許第05124465(US,A)
【文献】 特開平06−199873(JP,A)
【文献】 米国特許第05278330(US,A)
【文献】 特表2008−506671(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0014989(US,A1)
【文献】 特表2005−513114(JP,A)
【文献】 IRRGANG, T. et al.,EUROPEAN JOURNAL OF INORGANIC CHEMISTRY,2007年 7月18日,No.26,p.4221-4228
【文献】 BIANCHINI, C. et al.,JOURNAL OF ORGANOMETALLIC CHEMISTRY,スイス,ELSEVIER-SEQUOIA S.A.,2003年11月27日,Vol.689, No.8,p.1356-1361
【文献】 BIANCHINI, C. et al.,Organometallics,2007年,26(3),p.726-739
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/06
C07C 5/25
C07C 11/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアルキルアルミニウム化合物を製造する方法であって、成分(a)、(b)、及び(c)を含む成分を一緒に接触させる工程を含む方法:
(a)式(A)のトリアルキルアルミニウム前駆物質:
【化1】
式(A)において、3つのRのうち、2つのRは独立して(C−C40)アルキルであり、ひとつのRは独立して(C−C40)アルキルである;
(b)式(B)の内部オレフィン:
C−(CH−CH=CH−(CH−CH (B)、
式中、x及びyはそれぞれ独立して0〜50の整数である;又は、
式(E)のアルファオレフィン:
CH=CH−(CHCH (E)
式中、zは1+x+yの合計に等しい整数である;又は、
式(B)の内部オレフィン及び式(E)のアルファオレフィンを含む混合物;及び
(c)触媒量の、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒
【化2】
式中:
とRのそれぞれは、独立して、(C−C40)ヒドロカルビルであり;
、R、R、及びRのそれぞれは、独立して、水素原子又は(C−C40)ヒドロカルビルであり;
Lのそれぞれは、独立して、ハロ、水素原子、(C−C40)ヒドロカルビル、(C−C40)ヘテロヒドロカルビル、(C−C40)ヒドロカルビルC(O)N(H)−、(C−C40)ヒドロカルビルC(O)N((C−C20)ヒドロカルビル)−、(C−C40)ヒドロカルビルC(O)O−、RN−、RO−、RS−、又はRP−であり、ここでR及びRはそれぞれ独立して、水素原子、(C−C40)ヒドロカルビル、[(C−C10)ヒドロカルビル]Si、[(C−C10)ヒドロカルビル]Si(C−C10)ヒドロカルビル、若しくは(C−C40)ヘテロヒドロカルビルであり、又は、R及びRは一体となって(C2−C40)ヒドロカルビレン若しくは(C−C40)ヘテロヒドロカルビレンを形成し、ここでそれぞれのLは独立して、Mに結合した1価のアニオン部分であり;及び
はコバルトであり、前記コバルトは+2の形式酸化状態にあり;
上述した(C−C40)アルキル、(C−C10)ヒドロカルビル、(C−C20)ヒドロカルビル、(C−C40)ヒドロカルビル、(C−C40)ヘテロヒドロカルビル、(C−C40)ヒドロカルビレン、及び(C−C40)ヘテロヒドロカルビレンは、それぞれ独立して、相互に同じであるか又は異なっており、かつ独立して非置換であるか又は1以上の置換基Rによって置換されており;かつ
のそれぞれは、独立して、ハロ、ポリフルオロ、パーフルオロ、非置換の(C−C18)ヒドロカルビル、FC−、FCHO−、FHCO−、FCO−、オキソ(すなわち=O)、RSi−、RO−、RS−、RS(O)−、RS(O)−、RP−、RN−、RC=N−、NC−、RC(O)O−、ROC(O)−、RC(O)N(R)−、又はRNC(O)−であり、ここでRのそれぞれは、独立して、非置換の(C−C18)ヒドロカルビルであり;
ここにおいて、接触工程は、(トリアルキルアルミニウム化合物)−生成条件下で行われ、そして、式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物を生成し:
【化3】
式中、少なくとも1つのRは、式(B)の内部オレフィンから誘導されるか又は式(E)のアルファ−オレフィンから誘導される第一級アルキル基であり、残りのRはいずれも、独立して、(C−C40)アルキルである。
【請求項2】
式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物の収量が、24時間の反応時間後で少なくとも50%である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、少なくとも1つのアルキル基が内部オレフィン又はアルファ−オレフィンから誘導される第一級アルキル基である、トリアルキルアルミニウムの新規な製造方法に関する。本方法は、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒を用いる。
【背景技術】
【0002】
アルファオレフィン(α−オレフィン及び1−オレフィンとしても知られている)製品の商業的に重要な製造には、トリアルキルアルミニウム化合物を形成するために、内部オレフィン(すなわち、官能基モチーフ(motif)C−C=C−Cを含んだ炭素鎖)をアルキルアルミニウム及び異性化触媒と接触させる工程が含まれる。このトリアルキルアルミニウムは、3つのアルキル基を含み、そのうちの少なくとも1つは内部オレフィンから誘導される第一級アルキルである。(ここにおいて第一級アルキルは、官能基モチーフ−CH−C−C−C、ここでCH炭素はアルミニウムに結合する、を含んだ炭素鎖を示す)。プロセスの別の工程において、内部オレフィンから誘導される第一級アルキルをトリアルキルアルミニウム化合物から置換し、それによってアルファ−オレフィン生成物が生成されるように、トリアルキルアルミニウム化合物を犠牲1−オレフィン(sacrificial 1-olefin)及び置換(displacement)触媒と反応させる。異性化及び置換触媒は、同一でも異なっていてもよく、典型的にはニッケルを含む。別法として、置換反応は、触媒を用いず、昇温下、短い滞留時間で、アルファオレフィンを生成するための犠牲1−オレフィンの過剰量存在下に行なうこともできる。
【0003】
少なくとも1つの第一級アルキルを有するトリアルキルアルミニウム化合物は、アルファーオレフィンから直接的に調製することもできる。したがって、トリアルキルアルミニウム化合物は、第一級アルコール及び第一級アルキルの特定の他の誘導体、例えばヒドロホルミル化誘導体など、の調製の際の有用な中間体でもある。
【0004】
米国(U.S.)特許第2959607号では、オクト−2−エン及びアルミニウムトリス(1−メチルプロピル)を塩化コバルト触媒の存在下に反応させて、少なくとも1つの1−オクチル基を含んだトリアルキルアルミニウム化合物を生成させる方法について、言及している。また、トリアルキルアルミニウム化合物を、酸化及び加水分解によって1−オクタノールに転化させることも、言及されている。
【0005】
米国特許第5124465号では、少なくとも1つのアルキル基が内部オレフィンから誘導された第一級アルキルであるトリアルキルアルミニウム化合物を介して、内部オレフィンから直鎖1−オレフィン(すなわち直鎖アルファ−オレフィン)を製造する方法について、言及している。また、特定のコバルト塩又は錯体も言及されている。
【0006】
PCT国際特許出願公開番号WO2006/005762Aでは、直鎖アルファ−オレフィンを二量体化して内部オレフィンのダイマーとすること、及び、この内部オレフィンのダイマーを、上記で参照したものと類似した方法を用いて1−オレフィンに転化させることについて、言及している。また、特定のコバルト塩又は錯体、例えば次式の2−[l−(2−ターシャリー−ブチルフェニルイミノ)エチル]−6−[l−(4−エイコサノキシ−3,5−ジフェニルフェニルイミノ)エチル]ピリジン 塩化コバルト[II]錯体なども、言及されている。
【0007】
【化1】
【0008】
Bianchini C.その他,6−(オルガニル)−2−(イミノ)ピリジル配位子との四面体コバルト(II)錯体を用いた、エチレンから直鎖α−オレフィンへの選択的オリゴマー化:触媒活性に関するオルガニル基中のヘテロ原子の影響、Organometallics,2003;22:2545−2547,では、ピリジン環の6位に適切な置換基を有する特定のピリジンイミン配位子、二塩化コバルト(CoCl)、及びメチルアルミノキサン(MAO)から形成される触媒について、言及している。前記触媒は、アルファ−オレフィンを得るためのエチレン(CH=CH)のオリゴマー化に有用である。また、特定のコバルト塩又は錯体、例えば次式の塩化[II]コバルト錯体なども、言及されている。
【0009】
【化2】
【0010】
PCT国際特許出願公開番号WO2008/112133A2では、特定の2−イミノ置換ピリジンの製造に関して、プロピレンとプロピレン以外の共重合可能なコモノマー1種以上とからの、特定のジブロック共重合体、トリブロック共重合体、及びマルチブロック共重合体を製造する場合に有用な、ハフニウムへの三座配位子としての特定の2−アミノメチル置換ピリジンの製造における中間体として、言及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
化学工業においては、アルキル基の少なくとも1つが内部オレフィン又はアルファ−オレフィンから誘導される第一級アルキルである、トリアルキルアルミニウム化合物を製造する新規な方法が望まれている。新規な方法では、好適には、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒が用いられ、この触媒は、関連する市販のニッケル触媒、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(COD))などと比較して、改善された安定性及びより高い転換率を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の実施形態において、本発明は、トリアルキルアルミニウム化合物を製造する方法であって、成分(a)、(b)、及び(c)を含む成分を一緒に接触させる工程を含む方法である:
(a)式(A)のトリアルキルアルミニウム前駆物質:
【0013】
【化3】
【0014】
式(A)において、3つのRのうち、2つのRは独立して(C−C40)アルキルであり、ひとつのRは独立して(C−C40)アルキルである;
(b)式(B)の内部オレフィン:
C−(CH−CH=CH−(CH−CH (B)、
式中、x及びyはそれぞれ独立して0〜50の整数である;又は、
式(E)のアルファオレフィン:
CH=CH−(CHCH (E)
式中、zは1+x+yの合計に等しい整数である;又は、
式(B)の内部オレフィン及び式(E)のアルファオレフィンを含む混合物;及び
(c)触媒量の、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒
【0015】
【化4】
【0016】
式中:
とRのそれぞれは、独立して、(C−C40)ヒドロカルビルであり;
、R、R、及びRのそれぞれは、独立して、水素原子又は(C−C40)ヒドロカルビルであり;
Lのそれぞれは、独立して、ハロ、水素原子、(C−C40)ヒドロカルビル、(C−C40)ヘテロヒドロカルビル、(C−C40)ヒドロカルビルC(O)N(H)−、(C−C40)ヒドロカルビルC(O)N((C−C20)ヒドロカルビル)−、(C−C40)ヒドロカルビルC(O)O−、RN−、RO−、RS−、又はRP−であり、ここでR及びRはそれぞれ独立して、水素原子、(C−C40)ヒドロカルビル、[(C−C10)ヒドロカルビル]Si、[(C−C10)ヒドロカルビル]Si(C−C10)ヒドロカルビル、若しくは(C−C40)ヘテロヒドロカルビルであり、又は、R及びRは一体となって(C2−C40)ヒドロカルビレン若しくは(C−C40)ヘテロヒドロカルビレンを形成し、ここでそれぞれのLは独立して、Mに結合したモノアニオン部分であり;及び
Mのそれぞれは、独立して、鉄、コバルト、ニッケル、銅又は亜鉛の金属であり、前記金属は+2の形式酸化状態にあり;
上述した(C−C40)アルキル、(C−C10)ヒドロカルビル、(C−C20)ヒドロカルビル、(C−C40)ヒドロカルビル、(C−C40)ヘテロヒドロカルビル、(C−C40)ヒドロカルビレン、及び(C−C40)ヘテロヒドロカルビレンは、それぞれ独立して、相互に同じであるか又は異なっており(例えば、それぞれの(C−C40)アルキルは、別の(C−C40)アルキルと同じであるか異なっているなど)、かつ独立して非置換であるか又は1以上の置換基Rによって置換されており;かつ
のそれぞれは、独立して、ハロ、ポリフルオロ、パーフルオロ、非置換の(C−C18)ヒドロカルビル、FC−、FCHO−、FHCO−、FCO−、オキソ(すなわち=O)、RSi−、RO−、RS−、RS(O)−、RS(O)−、RP−、RN−、RC=N−、NC−、RC(O)O−、ROC(O)−、RC(O)N(R)−、又はRNC(O)−であり、ここでRのそれぞれは、独立して、非置換の(C−C18)ヒドロカルビルであり;
ここにおいて、接触工程は、(トリアルキルアルミニウム化合物)−生成条件下(後述する)で行われ、そして、式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物を生成する:
【0017】
【化5】
【0018】
式中、少なくとも1つのRは、式(B)の内部オレフィンから誘導されるか又は式(E)のアルファ−オレフィンから誘導される第一級アルキル基であり、残りのRはいずれも、独立して、(C−C40)アルキルである。
【0019】
好適には、Mは鉄又はコバルトであり、より好適にはコバルトである。好適には、第1級アルキル基は式−(CHCHであり、ここにおいてtは3+x+yの合計に等しい整数であり、これはまた2+zの合計にも等しい。
【0020】
第2の実施形態において、本発明は、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒であり、ここでRからR、及びLは独立して、上述した第1の実施形態の式(I)で定義されたとおりであり、Mは独立して、鉄、ニッケル、銅又は亜鉛の金属であり、前記金属は+2の形式酸化状態にある。Mは好適には鉄である。
【0021】
第3の実施形態において、本発明は、式(II)を有する式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒である:
【0022】
【化6】
【0023】
式中、RからR、及びLは独立して、上述した第1の実施形態の式(I)で定義されたとおりであり;Coは+2の形式酸化状態にあるコバルトであり;かつ、1〜5のR1Aのそれぞれは、独立して、非置換又は1以上の置換基Rで置換された(C−C40)アルキルであり、ここでそれぞれのRは独立して、上述した第1の実施形態の式(I)で定義されたとおりであり、又は、任意の2つの隣接するR1Aは一体となって、式:−C(H)=C(H)−C(H)=C(H)−のジラジカル(diradical)を形成し、かつ残りのR1Aは水素原子である。
【0024】
式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物は、アルファ−オレフィン(例えば、式(E)のアルファ−オレフィン)及び式(E)のアルファ−オレフィンの官能性誘導体をつくるために有用である。そのような官能性誘導体には、式(F):HO−(CHCH(F)、式中tは上記で定義されたとおり、の第1級アルコールが含まれるが、これに限定されるものではない。式(E)のアルファ−オレフィンは、とりわけ、アルファ−オレフィンとエチレンの共重合体を含む、ポリオレフィンの調製に有用である。前記ポリオレフィンは、例えば、被覆剤、潤滑剤、フィルム、繊維並びに型成形及び押出物品として調製され、そして有用である。式(F)のアルコールは、潤滑剤、軟膏及びシャンプーの成分として、並びに、香料及びフレーバーにおいて有用なカルボン酸エステルを調製するための中間体として、とりわけ有用である。
追加的で非制限的な実施形態が以下に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例(1)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(1)のX線分析から導かれる、単結晶構造のオークリッジ熱楕円体プロット(ORTEP(Oak Ridge Thermal Ellipsoid Plot)描写である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で用いられるとき、「一つの(a)」、「一つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも一つの(at least one)」、及び「一つ以上の(one or more)」は、相互に置き換え可能なものとして用いられる。本明細書に記載されるいずれの実施形態においても、開放型の(非排除的な)用語である「包含している(comprising)」、「包含する(comprises)」及びそれらと同様の語(これらは「含んでいる(including)」、「有している(having)」及び「によって特徴づけられる(characterized by)」の同義語である)は、それぞれの部分的に閉じた(部分的に排除的な)フレーズである、「から本質的になっている(consisting essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of」及それらと同様の語、又は、それぞれの閉じた(排除的な)フレーズである「からなっている(consisting of) 」、「からなる(consists of)」及びそれらと同様の語と、置き換えることができる。構成要素の列挙において用いられる用語「又は(or)」は、他に指示のない限り、列挙された構成要素のそれぞれを意味するとともに、その任意の組み合わせを意味する。
【0027】
米国特許実務及び参照することによる主題の組み込みを許容する他の実務のために、この「発明を実施するための形態」において参照される、各米国特許、米国特許出願、米国特許出願公開、PCT国際特許出願及びその対応WO公開の、他に記載のない限り全体の内容は、参照することにより本明細書中に組み込まれる。本明細書中の記載と、参照により組み込まれた特許、特許出願、若しくは特許出願公開、又はそれらの一部分の記載とが、抵触する場合には、いずれの場合にも本明細書の記載によるものとする。
【0028】
本出願においては、見出し(例えば、「定義」)を便宜のために使用するが、決して本開示の範囲を制限することを意味するものではなく、また、制限的に使用してはならない。
【0029】
本出願においては、数値範囲の任意の下限、又は数値範囲の任意の好適な下限は、数値範囲の任意の上限、又は数値範囲の任意の好適な上限と組み合わされて、好適な実施形態の範囲を定義づける場合がある。各数値範囲は、範囲内に含まれるすべての数字を、有理数も無理数もともに、含む(例えば、約1〜約5の範囲には、例えば1,1.5,2,2.75,3,3.80,4,及び5が含まれる。)。
【0030】
括弧をつけずに記載された単位数値、例えば2インチ、と、括弧を付して記載した対応する単位数値、例えば(5センチメートル)、とが抵触する場合には、いかなる場合にも、括弧をつけずに記載された単位数値によるものとする。
【0031】
定義
化学基(例えば(C−C40)アルキル)を記載するために用いるとき、「(Cx−Cy)」形式の括弧を付した表現は、数値xの炭素原子から数値yの炭素原子を含む化学基を意味し、ここでx及びyはそれぞれ独立して、化学基のために記載されるような整数である。したがって、例えば、非置換の(C−C40)アルキルは、1〜40の炭素原子を含む。化学基上の1以上の置換基が1以上の炭素原子を含む場合には、置換(Cx−Cy)化学基は、yを越える合計炭素原子を有することが可能である;すなわち、置換(Cx−Cy)化学基の炭素原子の合計数はyプラス各置換基の炭素原子数に等しい。
【0032】
いくつかの実施形態においては、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒のR1A、RからR及びL基のそれぞれは、非置換である、すなわち、置換基Rを使用せずに定義され得る。他の実施形態においては、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒のR1A、RからR及びL基の少なくとも1つは、独立して、1以上の置換基Rを含む。好適には、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒中では、合計で20Rを越えず、より好適には合計で10Rを越えず、なお好適には合計で5Rを越えない。本発明の化合物が2以上の置換基Rを含む場合には、各Rは独立して同一の又は異なる置換された化学基に結合する。
【0033】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのRはポリフルオロ又はパーフルオロである。本明細書において、「ポリフルオロ」及び「パーフルオロ」はそれぞれ1つのRとみなす。「ポリフルオロ」中の用語「ポリ」は、置換された化学基中において、対応する非置換の化学基の炭素原子に結合する2以上のH、ただしすべてのHではない、が、フッ素で置換されていることを意味する。「パーフルオロ」中の用語「パー」は、置換された化学基中において、対応する非置換の化学基の炭素原子に結合するそれぞれのHが、フッ素で置換されていることを意味する。
【0034】
本明細書で用いられるとき、用語「(C−C40)ヒドロカルビル」は、炭素原子数1〜40の炭化水素基を意味し、用語「(C−C40)ヘテロヒドロカルビレン」は、炭素原子数1〜40の炭化水素ジラジカルを意味するものであり、ここで、それぞれの炭化水素基及びジラジカルは、独立して、芳香族又は非芳香族であり、飽和又は非飽和であり、直鎖又は分枝鎖であり、環式(単環式及び多環式、縮合系及び非縮合系多環式を含む)又は非環式であり、又はそれらの2以上の組合せであり;それぞれの炭化水素基及びジラジカルは、他の炭化水素基及びジラジカルとそれぞれ同一であるか異なっており、及び独立して、非置換であるか又は1以上のRで置換されている。
【0035】
好適には、(C−C40)ヒドロカルビルは、独立して、非置換又は置換の(C−C40)アルキル、(C−C40)シクロアルキル、(C−C20)シクロアルキル−(C−C20)アルキレン、(C−C40)アリール、又は(C−C20)アリール−(C−C20)アルキレンである。より好適には、前述の基のそれぞれは、独立して、最大20までの炭素原子(例えば、(C−C20)アルキル、(C−C20)シクロアルキル、(C−C10)シクロアルキル−(C−C10)アルキレン、(C−C20)アリール、又は(C−C10)アリール−(C−C10)アルキレン)、なお好適には10までの炭素原子(例えば、(C−C10)アルキル、(C−C10)シクロアルキル、(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキレン、(C−C10)アリール、又は(C−C60)アリール−(C−C)アルキレン)を有する。
【0036】
用語「(C−C40)アルキル」は、飽和直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜40の炭化水素基であって、非置換又は1以上のRで置換されているものを意味する。好適には、(C−C40)アルキルは、最大で20までの炭素原子、より好適には10までの炭素原子、なお好適には6までの炭素原子を有する。非置換(C−C40)アルキルの例は、非置換(C−C20)アルキル;非置換(C−C10)アルキル;非置換(C−C)アルキル;メチル;エチル;1−プロピル;2−プロピル;1−ブチル;2−ブチル;2−メチルプロピル;1,1−ジメチルエチル;1−ペンチル;1−ヘキシル;1−ヘプチル;1−ノニル;及び1−デシルである。置換(C−C40)アルキルの例は、置換(C−C20)アルキル、置換(C−C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び(C45)アルキルである。好適には、(C−C)アルキルのそれぞれは、独立して、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1−プロピル、又は2−メチルエチルである。
【0037】
用語「(C−C40)アリール」は、非置換又は置換(1以上のRによって)の、単環式、二環式、又は三環式の芳香族炭化水素基であって、合計炭素原子数6〜40であり、その少なくとも6〜14は環炭素であり、単環式、二環式、又は三環式の基は1つ、2つ又は3つの環を含み、そのうちの2つ又は3つの環は独立して縮合しているか又は非縮合であり、1つの環は芳香族でありそして2つ又は3つの環の少なくとも1つは芳香族であるものを意味する。好適には、(C−C40)アリールは、最大で18の炭素原子、より好適には10までの炭素原子、なお好適には6までの炭素原子を有する。非置換(C−C40)アリールの例は、非置換(C−C20)アリール;非置換(C−C18)アリール;2−(C−C)アルキル−フェニル;2,4−ビス(C−C)アルキル−フェニル;フェニル;フルオレニル;テトラヒドロフルオレニル;インダセニル;ヘキサヒドロインダセニル;インデニル;ジヒドロインデニル;ナフチル;テトラヒドロナフチル;及びフェナントレン である。置換(C−C40)アリールの例は、置換(C−C20)アリール;置換(C−C18)アリール;2,4−ビス[(C20)アルキル]−フェニル;ポリフルオロフェニル;ペンタフルオロフェニル;及びフルオレン−9−オン−l−イルである。
【0038】
用語「(C−C40)シクロアルキル」は、炭素原子数3〜40の飽和環式炭化水素基であって、非置換又は1以上のRで置換されているものを意味する。好適には、(C−C40)シクロアルキルは、最大で20までの炭素原子、より好適には10までの炭素原子、なお好適には6までの炭素原子を有する。非置換(C−C40)シクロアルキルの例は、非置換(C−C20)シクロアルキル、非置換(C−C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C−C40)シクロアルキルの例は、置換(C−C20)シクロアルキル、置換(C−C10)シクロアルキル、シクロペンタノン−2−イル、及び1−フルオロシクロヘキシルである。
【0039】
従って、(C−C40)ヒドロカルビレンは、非置換又は置換の、(C−C40)アリール、(C−C40)シクロアルキル、又は(C−C40)アルキルのジラジカルの類似体、すなわち、それぞれ(C−C40)アリーレン、(C−C40)シクロアルキレン、又は(C−C40)アルキレンを意味する。より好適には、前述した基のそれぞれは、独立して、最大で20までの炭素原子(例えば、(C−C18)アリーレン、(C−C20)シクロアルキレン、及び(C−C20)アルキレン)、なお好適には10までの炭素原子(例えば、(C−C10)アリーレン、(C−C10)シクロアルキレン、及び(C−C10)アルキレン)を有する。いくつかの実施形態においては、ジラジカルは隣接する炭素原子上にあり(すなわち1,2−ジラジカル)、又は1,2、若しくはそれ以上の介在炭素原子によって引き離されている(例えば、それぞれの1,3−ジラジカル、1,4−ジラジカルなど)。好適には、1,2−、1,3−、1,4−、又はアルファ、オメガ−ジラジカルであり、より好適には1,2−ジラジカルである。
【0040】
用語「(C−C20)アルキレン」は、飽和直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜20の鎖状基であって、非置換又は1以上のRで置換されているものを意味する。(C−C20)アルキレンは、この(C−C20)アルキレンが結合している式(I)上の原子と一緒になって、5又は6員環を含むようになっていることが好適である。非置換(C−C20)アルキレンの例は、非置換1,2−(C−C10)アルキレンを含む非置換(C−C10)アルキレン;−CH−、−CHCH−、−(CH−、−CHC(H)(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、及び−(CHC(H)(CH)−である。置換(C−C20)アルキレンの例は、置換(C−C10)アルキレン、−CF−、−C(O)−、及び−(CH14C(CH(CH−(すなわち、6,6−ジメチル置換ノルマル−1,12−エイコシレン)である。
【0041】
用語「(C−C40)ヘテロヒドロカルビル」は、ヘテロ炭化水素基であって、1〜40の炭素原子及び1以上のヘテロ原子N(−N=を含む場合);O;S;S(O);S(O);Si(R;P(R);及びN(R)を有するものを意味し、ここで、それぞれ独立して、各Rは非置換(C−C18)ヒドロカルビルであり、各Rは非置換(C−C18)ヒドロカルビルであり、そして各Rは非置換(C−C18)ヒドロカルビルである。用語「(C−C40)ヘテロヒドロカルビレン」は、ヘテロ炭化水素ジラジカルであって、1〜40の炭素原子及び上で定義した1以上のヘテロ原子Si(R、P(R)、N(R)、N、O、S、S(O)、及びS(O)を有するものを意味する。ヘテロ炭化水素基及びへテロ炭化水素ジラジカルのそれぞれは、独立して、その炭素原子上又はヘテロ原子上で結合する。ヘテロ炭化水素基及びジラジカルのそれぞれは、独立して、非置換又は置換(1以上のRによって)であり、芳香族又は非芳香族であり、飽和又は非飽和であり、直鎖又は分枝鎖であり、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であり、又はそれらの2以上の組み合わせである;そして各へテロ炭化水素は相互に同一であるか又は異なっている。
【0042】
好適には、(C−C40)ヘテロヒドロカルビルは、独立して、非置換又は置換(C−C40)ヘテロアルキル、(C−C40)ヘテロシクロアルキル、(C−C40)ヘテロシクロアルキル−(C−C20)アルキレン、(C−C40)シクロアルキル−(C−C20)ヘテロアルキレン、(C−C40)へテロシクロアルキル−(C−C20)ヘテロアルキレン、(C−C40)へテロアリール、(C−C20)ヘテロアリール−(C−C20)アルキレン、(C−C20)アリール−(C−C20)ヘテロアルキレン、又は(C−C20)ヘテロアリール−(C−C20)ヘテロアルキレンである。より好適には、前述した基のそれぞれは、最大で20までの炭素原子、なお好適には10までの炭素原子を有する。従って、より好適な(C−C40)ヘテロヒドロカルビルは、独立して、非置換又は置換(C−C20)ヘテロヒドロカルビル、例えば、(C−C20)ヘテロアルキル、(C−C20)ヘテロシクロアルキル、(C−C10)ヘテロシクロアルキル−(C−C10)アルキレン、(C−C10)シクロアルキル−(C−C10)ヘテロアルキレン、(C−C10)へテロシクロアルキル−(C−C10)ヘテロアルキレン、(C−C20)へテロアリール、(C−C10)ヘテロアリール−(C−C10)アルキレン、(C−C10)アリール−(C−C10)ヘテロアルキレン、又は(C−C10)ヘテロアリール−(C−C10)ヘテロアルキレンである。なお一層好適な(C−C40)ヘテロヒドロカルビルは、独立して、非置換又は置換(C−C10)ヘテロヒドロカルビルを含み、例えば、(C−C10)ヘテロアルキル、(C−C10)ヘテロシクロアルキル、(C−C)ヘテロシクロアルキル−(C−C)アルキレン、(C−C)シクロアルキル−(C−C)ヘテロアルキレン、(C−C)へテロシクロアルキル−(C−C)ヘテロアルキレン、(C−C10)へテロアリール、(C−C)ヘテロアリール−(C−C)アルキレン、(C)アリール−(C−C)ヘテロアルキレン、又は(C−C)ヘテロアリール−(C−C)ヘテロアルキレンである。
【0043】
前述したヘテロアルキル及びヘテロアルキレン基は、飽和の直鎖又は分枝鎖の、それぞれ基又はジラジカルであり、(C−C)炭素原子及び上で定義した1以上のヘテロ原子Si(R、P(R)、N(R)、N、O、S、S(O)、及びS(O)を含み、ここでヘテロアルキル及びヘテロアルキレン基のそれぞれは、独立して、非置換であるか又は1以上のRによって置換されている。
【0044】
非置換(C−C40)ヘテロシクロアルキルの例は、非置換(C−C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C−C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン−1−イル、オキセタン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、ピロリジン−1−イル、テトラヒドロチオフェン−S,S−ジオキシド−2−イル、モルフォリン−4−イル、1,4−ジオキサン−2−イル、ヘキサヒドロアゼピン−4−イル、3−オキサ−シクロオクチル、5−チア−シクロノニル、及び2−アザ−シクロデシルである。
【0045】
非置換(C−C40)ヘテロアリールの例は、非置換(C−C20)ヘテロアリール、非置換(C−C10)ヘテロアリール、ピロール−1−イル;ピロール−2−イル;フラン−3−イル;チオフェン−2−イル;ピラゾール−1−イル;イソオキサゾール−2−イル;イソチアゾール−5−イル;イミダゾール−2−イル;オキサゾール−4−イル;チアゾール−2−イル;1,2,4−トリアゾール−l−イル;1,3,4−オキサジアゾール−2−イル;l,3,4−チアジアゾール−2−イル;テトラゾール−1−イル;テトラゾール−2−イル;テトラゾール−5−イル;ピリジン−2−イル;ピリミジン−2−イル;ピラジン−2−イル;インドール−1−イル;ベンズイミダゾール−1−イル;キノリン−2−イル;及びイソキノリン−1−イルである。
【0046】
用語「ハロ」は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、又はヨード(I)基を意味する。好適には、ハロはフルオロ又はクロロであり、より好適にはフルオロである。
【0047】
式(I)の金属錯体中には、0−0結合、S−S結合、又は、S(O)若しくはS(O)二価官能基中のO−S結合以外のO−S結合は、存在しないことが望ましい。
【0048】
置換された(C1−C40)ヒドロカルビルのそれぞれは、非置換又は置換(C1−C40)ヘテロヒドロカルビルを除外したものとし、これと異なっていることが好ましい(すなわち、置換された(C1−C40)ヒドロカルビルのそれぞれは、第1の実施形態で定義されたとおりであって、ここにおいて置換(C1−C40)ヒドロカルビルは、非置換又は置換(C1−C40)ヘテロヒドロカルビルではない);置換された(C1−C40)ヒドロカルビレンのそれぞれは、非置換又は置換(C1−C40)ヘテロヒドロカルビレンを除外したものとし、これと異なっていることが好ましい;より好適にはその組合せである。
【0049】
用語「触媒量」は、触媒反応のための触媒のモル数、又はそれと等価な重量(例えば、グラムで表す等)であって、触媒反応において用いられる反応物質の化学量論的なモル数よりも少なく、触媒反応のある生成物が生成し検出される(例えば質量分析によって)ために必要な最少限のモル数又はそれと等価な質量と同量又はそれ以上である。触媒量のモル数は、反応物質の化学量論的なモル数のモルパーセント(モル%)で表してもよい。モルパーセントで表した最小限の触媒量は、好適には0.001モルパーセントである。好適には、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒の触媒量は、式(A)のトリアルキルアルミニウム前駆物質のモル数、又は、オレフィン(すなわち、式(B)の内部オレフィン若しくは式(E)のアルファ−オレフィン)のモル数の、いずれか低い方のモル数の0.01モル%〜50モル%である。典型的には(A)のモル数は、(B)又は(E)のモル数よりも低く、従って、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒の触媒量は、[(式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒のモル数)の100倍]を(式(A)のトリアルキルアルミニウム前駆物質のモル数)で割ったものに等しい。より好適には、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒の触媒量は、少なくとも0.05モル%、さらに好適には少なくとも0.1モル%である。また、より好適には、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒の触媒量は、40モル%以下であり、なおより好適には35モル%以下である。
【0050】
用語「飽和」は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基においては)炭素−窒素、炭素−リン、及び炭素−ケイ素二重結合がないことを意味する。飽和の化学基が1以上の置換基Rによって置換される場合、置換基Rには1以上の二重結合及び/又は三重結合が随意に存在しても又はしなくてもよい。用語「不飽和」は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基においては)炭素−窒素、炭素−リン、及び炭素−ケイ素二重結合の1以上を含むことを意味するが、置換基R又は(ヘテロ)芳香族環を持つ場合、置換基R又は(ヘテロ)芳香族環に存在し得るそのような二重結合は含まれない。
【0051】
いくつかの実施形態では、ジラジカルの三価又は四価の類似体を予期している。ジラジカルの場合と同様に、用語「三価又は四価の類似体」は、それぞれ、ジラジカルから1つ又は2つの水素原子を取り去ることによって形式的に誘導される、三価又は四価の基を意味する。好適には、取り去られる水素原子のそれぞれは、独立して、C−H官能性から取り去られる。四価類似体よりも三価類似体のほうが好適である。
【0052】
用語「溶媒」は、好適には非プロトン性である液体であって、本発明のプロセスと化学的に適合する(すなわち可能とする)ものを意味する。適切な溶媒としては、脂肪族及び芳香族炭化水素、エーテル、及び環状エーテル、特にはイソブタンのような分枝鎖炭化水素、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びそれらの混合物;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタンなどの、環式及び脂環式炭化水素及びその混合物;ISOPAR(登録商標)炭化水素(エクソンモービル コーポレーション、アービング、テキサス、米国;例えば、ISOPAR(登録商標)E);ベンゼン、及びトルエンやキシレンのような(C−C)アルキルで置換されたベンゼン;(C−C)アルキル−O−(C−C)アルキル;(C−C)へテロシクロアルキル、例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン及び1,4−ジオキサンなど;(ポリ)アルキレングリコールの(C−C)アルキルエーテル;並びにそれらの混合物が含まれる。
【0053】
式(A)のトリアルキルアルミニウム前駆物質
好適には、Rのそれぞれは、独立して、少なくとも2つの炭素原子を含み、24以下の炭素原子を含むものであり、より好適には18以下の炭素原子を含み、なお好適には12以下の炭素原子を含む。また好適には、Rのそれぞれは残りのRと同数の炭素原子を含む。さらに好適な式(A)のトリアルキルアルミニウムの例は、イソ−アルキルアルミニウム類:トリ(l−メチルエチル)アルミニウム及びトリ(1−メチルプロピル)アルミニウム、及びノルマル−アルキルアルミニウム類:トリエチルアルミニウム(すなわち、各Rがエチルである)、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリヘプチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、トリウンデシルアルミニウム、トリドデシルアルミニウム、トリテトラデシルアルミニウム、トリヘキサデシルアルミニウム、及びトリオクタデシルアルミニウムである。
【0054】
式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物
好適には、Rのそれぞれは、独立して、少なくとも2つの炭素原子を含み、24以下の炭素原子を含むものであり、より好適には18以下の炭素原子を含み、なお好適には12以下の炭素原子を含む。また好適には、Rのそれぞれは残りのRと同数の炭素原子を含む。さらに好適な式(D)のトリアルキルアルミニウムの例は、ノルマル−アルキル含有アルミニウム類(すなわち、少なくとも1つ、好適には少なくとも2つ、より好適にはRのそれぞれがノルマル−アルキルであるもの):エチル−含有アルミニウム、プロピル−含有アルミニウム、ブチル−含有アルミニウム、ペンチル−含有アルミニウム、ヘキシル−含有アルミニウム、ヘプチル−含有アルミニウム、オクチル−含有アルミニウム、デシル−含有アルミニウム、ウンデシル−含有アルミニウム、ドデシル− 含有アルミニウム、テトラデシル−含有アルミニウム、ヘキサデシル−含有アルミニウム、及びオクタデシル−含有アルミニウムである。従って、例えば用語「オクチル含有アルミニウム」は、式(D)のノルマル−トリアルキルアルミニウム化合物であって、少なくとも1つのRが1−オクチルであるものを意味する。
【0055】
式(B)の内部オレフィン、及び式(B)の内部オレフィンから誘導される第1級アルキル基
いくつかの実施形態において、式(B)の内部オレフィン、及び式(B)の内部オレフィンから誘導される第1級アルキル基は、それぞれ独立して、4つ以上の炭素原子を含み、他の実施形態においては5つ以上の炭素原子を、なお他の実施形態においては6つ以上の炭素原子を、そしてさらに他の実施形態においては8つ以上の炭素原子を含む。いくつかの実施形態においては、式(B)の内部オレフィン、及び式(B)の内部オレフィンから誘導される第1級アルキル基は、それぞれ独立して、24以下の炭素原子を含み、他の実施形態においては20以下の炭素原子を、なお他の実施形態においては20以下の炭素原子を、そしてさらに他の実施形態においては18以下の炭素原子を含む。そのような実施形態において、より好ましくは、式(B)の内部オレフィン、及び式(B)の内部オレフィンから誘導される第1級アルキル基は、それぞれ同数の炭素原子を有する。
【0056】
式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒
式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒のいくつかの実施形態において、R、R、及びRのそれぞれは水素原子又はメチルであり、M、L、R、R、及びRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。式(I−A)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒がより好適である:
【0057】
【化7】
【0058】
式中、M、L、R、R、及びRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。
【0059】
式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒のいくつかの実施形態において、Rはフェニルであり、M、L、及びRからRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。式(I−B)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒がより好適である:
【0060】
【化8】
【0061】
式中、R6Cは独立して水素原子又は(C−C)アルキルであり、そしてR6A及びR6Bのそれぞれは独立して、水素原子若しくは(C−C)アルキルであり、又はR6A及びR6Bは一体となって、式:−C(H)=C(H)−C(H)=C(H)−のジラジカルを形成し、そしてM、L、及びRからRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。より好適には、R6Aのそれぞれは独立して、水素原子又は(C−C)アルキルであり、そしてR6B及びR6Cのそれぞれは水素原子である。
【0062】
式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒のいくつかの実施形態において、Rはフェニルであり、M、L、及びRからRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。式(I−C)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒がより好適である:
【0063】
【化9】
【0064】
式中、0〜5のR1Aが存在し、R1Aのそれぞれは、独立して、水素原子又は(C−C)アルキルであり、そしてM、L、及びRからRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。
【0065】
式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒のいくつかの実施形態において、Rはナフチルであり、M、L、及びRからRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。式(I−D)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒がより好適である:
【0066】
【化10】
【0067】
式中、0〜5のR1Aが存在し、R1Aのそれぞれは、独立して、水素原子又は(C−C)アルキルであり、そしてM、L、及びRからRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。好適にはRは1〜3つの(C−C)アルキルで置換されたフェニルである。
【0068】
式(I−A)〜(I−D)のいずれか1つの異性化/ヒドロアルミニウム化触媒であってMがFe+2のものは、なおより好適である。式(I−A)、(I−C)、及び(I−D)のいずれか1つの異性化/ヒドロアルミニウム化触媒であって、Rが(C−C)アルキル又は(C−C10)アリールであるもの、より好適にはフェニル又はナフチルであるもの、なお一層好適にはフェニルであるものもまた、なお一層好適である。式(I−A)又は(I−B)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒であって、Rが(C−C)アルキル又は(C−C10)アリールであるもの、より好適にはフェニル又はナフチルであるもの、なお一層好適にはフェニルであるものもまた、なお一層好適である。
【0069】
式(I−A)から(I−D)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒中のフェニル及びナフチルは、独立して、非置換であるか又は1〜3の置換基Rによって置換されており、ここでRは第1の実施形態に関して前に定義されたとおりである。特に好適な置換フェニルの1つは、2,6−(ジ(C−C)アルキル)フェニルである。
【0070】
式(II)を有する式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒
式(II)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒のいくつかの実施形態において、1〜3のR1Aが存在し、より好適には2R1Aが存在し、ここにおいて、R1A、L、及びRからRは第3の実施形態に関して前に定義されたとおりである。式(II−A)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒がなおより好適である:
【0071】
【化11】
【0072】
式中、各R1A、L、及びRからRは第3の実施形態に関して前に定義されたとおりである。さらにより好適には、各R1Aは独立して(C−C)アルキルである。
【0073】
式(II−B)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒がより好適である:
【0074】
【化12】
【0075】
式中、各R1A、L、及びRからRは第3の実施形態に関して前に定義されたとおりであり、R6Cは独立して水素原子又は(C−C)アルキルであり、そしてR6A及びR6Bのそれぞれは独立して水素原子又は(C−C)アルキルである。
より好適には、各R6Aは独立して水素原子又は(C−C)アルキルであり、そしてR6B及びR6Cのそれぞれは水素原子である。
【0076】
式(II−C)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒がより好適である:
【0077】
【化13】
【0078】
式中、L及びRからRは第3の実施形態に関して前に定義されたとおりであり、R6Cは独立して水素原子又は(C−C)アルキルであり、そしてR6A及びR6Bのそれぞれは独立して、水素原子又は(C−C)アルキルである。なおより好適には、R6Cは水素原子であり、そしてR6A及びR6Bのそれぞれは独立して(C−C)アルキルである。
【0079】
実施例1〜5、これらは後ろの方で記載される、のいずれか1つである式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒が、なおより好適である。
【0080】
式(I)、(I−A)から(I−D)、(II)、及び(II−A)から(II−C)のいずれか1つの異性化/ヒドロアルミニウム化触媒であって、各Lがハロのもの、さらに好適には各Lがクロロであるものもまた、なお一層好適である。
【0081】
式(I)、(I−B)から(I−D)、(II)、及び(II−A)から(II−C)のいずれか1つの異性化/ヒドロアルミニウム化触媒であって、R、R、及びRのそれぞれが独立して、水素原子又はメチルであるもの、より項敵意は水素原子であるものもまた、なお一層好適である。
【0082】
式(I)、(I−A)から(I−D)、(II)、及び(II−A)から(II−C)のいずれか1つの異性化/ヒドロアルミニウム化触媒であって、Rが水素原子、(C−C)アルキル又は(C−C10)アリールであるもの、なおより好適には水素原子、メチル、又はフェニルであるもの、さらに好適には水素原子又はメチルであるものもまた、なお一層好適である。
【0083】
いくつかの実施形態において、第1の実施形態のプロセスは、式(I−A)から(I−D)及び(II−A)から(II−C)のいずれか1つの異性化/ヒドロアルミニウム化触媒を用いる。
【0084】
(トリアルキルアルミニウム化合物)−生成条件とは、溶媒、雰囲気、温度、圧力、時間などの反応条件であって、第1の実施形態の方法から、24時間の反応時間の後に、式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物の反応収量として少なくとも10パーセント(%)の反応収量をもたらすのに適した反応条件をいう。より好適には、24時間の反応時間の後に、反応収量は少なくとも20%であり、さらに好適には少なくとも50%であり、なお一層好適には少なくとも70%である。
【0085】
好適には、第1の実施形態のプロセスは、不活性雰囲気下で(すなわち、実質的に、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、又はそれらの任意の2以上の混合物からなる不活性ガスの下で)実行される。しかしながら、他の雰囲気も考えられ、そのようなものには気体状の犠牲オレフィンが含まれる。
【0086】
いくつかの態様において、第1の実施形態のプロセスは、溶媒を使わないで、すなわち非希釈プロセス(neat process)で実行され、この場合、式(A)のトリアルキルアルミニウム前駆物質、オレフィン(例えば式(B)の内部オレフィン、式(E)のアルファ−オレフィン、又はそれらの混合物)、及び式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒の非希釈混合物(neat mixture)中で実行される。他の態様では、非希釈混合物はさらに、溶媒以外の追加的な成分(例えば、トリフェニルホスフィンのような触媒安定剤)を含む。さらに別の態様では、第1の実施形態のプロセスは、溶媒を用いて又は2以上の溶媒の混合物を用いて、すなわち、溶媒型プロセスとして実行され、この場合、式(A)のトリアルキルアルミニウム前駆物質、オレフィン(例えば式(B)の内部オレフィン、式(E)のアルファ−オレフィン、又はそれらの混合物)、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒、及び少なくとも1種の溶媒、例えば非プロトン性溶媒、の混合物である溶媒含有混合物として実行される。
【0087】
好適には、第1の実施形態の非希釈プロセス又は溶媒型プロセスは、非希釈混合物又は溶媒含有混合物が−20℃〜約200℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、温度は少なくとも30℃、より好適には少なくとも40℃である。他の実施形態では、温度は100℃以下であり、より好適には90℃以下、さらに好適には80℃以下である。約60℃の温度が便利である。
【0088】
好適には、第1の実施形態のプロセスは、約0.9気圧(atm)〜約10atmの圧力(すなわち、約91キロパスカル(kPa)から約1010kPa)で実行される。より好適には圧力は約1atm(すなわち約100kPa)である。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスで、式(E)のアルファ−オレフィンではなく、式(B)の内部オレフィンを用いる;他の実施形態では、本発明のプロセスで、式(B)の内部オレフィンではなく式(E)のアルファ−オレフィンを用いる;そしてさらに別の実施形態では、本発明のプロセスで、少なくとも1種の式(E)のアルファ−オレフィン及び少なくとも1種の式(B)の内部オレフィンの両方を、好適には前述したそれらの混合物として用いる。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスで、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒を異性化触媒として用い(例えば、第1の実施形態のプロセスで、式(E)のアルファ−オレフィンではなく式(B)の内部オレフィンを用い、式(B)の内部オレフィンを異性化し、それから誘導されて生じるトリアルキルアルミニウム化合物から、そのアルファ−オレフィン誘導体を製造する場合)、他の実施形態ではヒドロアルミニウム化触媒として用い(例えば、第1の実施形態のプロセスで、式(B)の内部オレフィンではなく式(E)のアルファ−オレフィンを用い、式(E)のアルファ−オレフィンをヒドロアルミニウム化してそれから誘導されるトリアルキルアルミニウム化合物を製造する場合)、そしてさらに別の実施形態では、異性化触媒及びヒドロアルミニウム化触媒の両方として用いられる(例えば、第1の実施形態のプロセスで、式(E)のアルファ−オレフィンではなく式(B)の内部オレフィンを用い、又は、少なくとも1種の式(E)のアルファ−オレフィンと少なくとも1種の式(B)の内部オレフィンとの混合物を用いる場合)。式(B)の内部オレフィンの2種以上の混合物;式(E)のアルファ−オレフィンの2種以上の混合物;又はそれらのオレフィン3種以上の任意の組合せが、本発明の方法において用いることができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、(トリアルキルアルミニウム化合物)−形成条件は、式(B)の内部オレフィンの異性化により;式(E)のアルファ−オレフィンのヒドロアルミニウム化により;又は、原料(b)が式(B)の内部オレフィンと式(E)のアルファ−オレフィンとの混合物を含む場合には、(B)の内部オレフィンの異性化及び式(E)のアルファ−オレフィンのヒドロアルミニウム化の両方により、式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物を調製する。
【0091】
いくつかの実施形態において、(トリアルキルアルミニウム化合物)−形成条件は、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒と少なくとも1種の第1の実施形態のプロセスの他の原料との反応により、派生的な異性化/ヒドロアルミニウム化触媒を、反応現場において生成する。(トリアルキルアルミニウム化合物)−形成条件での派生的な異性化/ヒドロアルミニウム化触媒は、式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物を生じる。そのような他の原料には、限定的ではないが、(a)式(A)のトリアルキルアルミニウム化合物、(b)式(B)の内部オレフィン、(c)式(I)の他の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒、(d)式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物、(e)共触媒(もしあれば)、(f)触媒安定剤(もしあれば)、(g)溶媒(もしあれば)、及びそれらの任意の2種以上の混合物が含まれる。
【0092】
式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物のアルファ−オレフィンへの転換
いくつかの実施形態で、第1の実施形態の本発明のプロセスは、さらに、原料(d)、(h)、及び(i)を含む原料を一緒に接触させる工程を含み:ここで(d)は式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物;(h)は触媒量の置換触媒;そして(i)は少なくとも1種の犠牲オレフィンであり、(d)、(h)、及び(i)の接触は、(アルファ−オレフィン)−形成条件下に実施され、式(E)のアルファ−オレフィンを調製する。置換触媒及び式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒は、同じものであってもよいが、異なっているほうが望ましい。
【0093】
置換反応が、その代わりに熱置換反応を含むことが、より好適である。熱置換反応は、好適には、従来方式で、置換触媒を用いず(すなわち、成分(h)なしで)、昇温昇圧下に短い滞留時間(すなわち接触時間)で、過剰の犠牲1−オレフィンの存在下で実行してアルファ−オレフィンを生成する。好適な熱置換反応は、米国特許番号3391219号(例えば、7欄30〜70行の実施例1の部分を参照)に記載された熱置換反応と類似のものである。好適には、昇温は少なくとも140℃であり、昇圧は周囲圧力を越えて(すなわち、15ポンド・パー・平方インチ(psi;101キロパスカル(kPa)を越えて)行う。例えば、280℃に昇温し、150psi(1010kPa)に昇圧する。滞留時間は状況に応じた妥当なものとし、容易に決定できる。
【0094】
いくつかの実施形態において、(アルファ−オレフィン)−形成条件は、式(B)の内部オレフィンから誘導されるか又は式(E)のアルファ−オレフィンから誘導される第一級アルキル基の少なくともいくつかを、式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物から置換し、それから式(E)のアルファ−オレフィンを生産することを含む。(アルファ−オレフィン)−形成条件は、実質的に、上述した(トリアルキルアルミニウム化合物)−形成条件と同じである。好適には、置換触媒の触媒量は、犠牲オレフィン又は式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物の0.01モル%〜50モル%で、いずれか少ないほうである。
【0095】
用語「置換触媒」は、上述した第一級アルキル基であるRの少なくとも1つを、式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物から置換し、式(E)のアルファ−オレフィンを生成する反応に対して、これを触媒する作用がある任意の化合物を意味し、好適には第1の実施形態について前に定義した遷移金属Mを含む化合物である。いくつかの実施形態において、置換触媒は、コロイドNi、Pt、又はCo、ニッケルアセチルアセトネート、カルボン酸コバルト(例えば、コバルト 1−ナフテネート(naphthenoate)又は酢酸コバルト)、ニッケルビス−l,5−シクロオクタジエン(Ni(COD)2)、又はカルボン酸ニッケル(例えば、ニッケル 1−ナフテネートである。置換触媒は、三価リンの配位子(例えばトリフェニルホスフィン)と混合して随意に安定化させることができる。
【0096】
用語「犠牲オレフィン」は、式(E)のアルファ−オレフィンを含めた任意のアルファ−オレフィン、又はそれらの2種以上の混合物を意味する。好適には、犠牲オレフィンは、式(E)のアルファ−オレフィンに含まれる炭素原子よりも少ない炭素原子を含んでいる。いくつかの実施形態において、犠牲オレフィンは3〜10の炭素原子を含む。犠牲オレフィンの好適な例は、プロペン、1−ブテン、及び2−メチル−プロペンである。
【0097】
式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物の、式(F)の第1級アルコールへの転換
いくつかの実施形態において、本発明の第1の実施形態のプロセスは、さらに、成分(d)及び(j)を含む成分を一緒に接触させる工程を含み、ここで、(d)は式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物であり(j)は空気又は他の酸素ガス供給源であって、この接触により、式(B)の内部オレフィンにより誘導されるか又は式(E)のアルファ−オレフィンにより誘導される第1級アルキル基の少なくともいくつかのアルコキシドを含む、アルミニウムアルコキシドを生じる。成分(k)及び(l)を含む成分を一緒に接触させることを含む、さらなる接触工程、ここで(k)はアルミニウムアルコキシドであり(l)は水である、によって式(F)の第1級アルコールが生じる。
【0098】
材料及び方法
概論
CoClをアルドリッチ・ケミカル・カンパニーから購入(ロット番号10820BA)。FeClを、グローブボックスに貯蔵したビーズ状無水物として入手。6−ブロモ−2−ピリジンカルボキシアルデヒド(CAS登録番号[34160−40−2])、2−アセチル−6−ブロモピリジン(CAS登録番号[49669−13−8])、アニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ビス(l−メチルエチル)アニリン、n−ブタノール(無水物)及び塩化メチレン(無水物)を、アルドリッチ・ケミカル・カンパニーから購入。ヘキサン溶媒を、活性アルミナのカラム、次いでアルミナ上の酸化銅Q5(Cu−0226SをBASFの子会社エンゲルハルド社から入手)のカラムを通して精製。テトラヒドロフラン(THF)及びジエチルエーテルを、活性アルミナのカラムを通して精製。Vacuum Atmospheres社の乾燥窒素雰囲気下にある不活性雰囲気グローブボックス中で、すべての金属錯体を合成し貯蔵。Varian社のINOVA スペクトロメータにより、300メガヘルツ(MHz)で核磁気共鳴(NMR)スペクトルを記録。化学シフトをテトラメチルシランに対して百万分の一単位で(δ)記録し、重水素化した溶媒中の残存プロトンを参照して、報告する。
【0099】
反応収率の決定:既知量のヘプタンを、内部標準として、反応混合物に対して、反応成分を添加した直後であって反応混合物を過熱する前に、添加する。反応混合物からアリコートを取ってバイアル中に入れる。アリコートをトルエンで希釈し、次いで生じた希釈反応混合物にメタノールをゆっくり添加して急冷する。生じた急冷混合物をシリカゲルを通してろ過し、ジクロロメタンで溶出する。ろ液中のオクタンの量を、長さ30メートルのAlltec EC−1カラムを用いたガスクロマトグラフィー(GC)により、温度40℃、流速毎分1.0ミリリットル(ml./min.)を含むGC条件で分析する。オクタンの理論的な最大収量のモル数は、使用したオクテンのモル数の合計数の低い方又は使用したトリアルキルアルミニウム前駆物質のモル数の3倍に等しい。オクタンの収量は、ヒドロアルミニウム化反応中の1−オクチルアルミニウムの収量に等しい。
【0100】
略語(意味):r.t.(室温);g(グラム);mL(ミリリットル);℃(摂氏温度);mmol(ミリモル);MHz(メガヘルツ);Hz(ヘルツ);及びH−NMR(プロトン−NMR)。
【0101】
X線分析
X線分析はここに記載されるように行う。
大きさが0.19ミリメートル(mm)×0.16mm×0.15mmの赤いブロック形状の結晶をオイル、エクソンのParatone N、に浸漬し、細いガラス繊維上に取り付ける。そして、グラファイト単色結晶(monochromatic crystal)、MoKα放射源(ラムダ(λ)=0.71073オングストローム(Å))、及び、結晶から4.930センチメートルのところに保持したCCD(電荷結合素子)面検出器、を備えたブルカー社のSMART PLATFORM回折計に、前記結晶を移す。データ収集の間、結晶は冷たい窒素流を浴びる(−100℃)。オメガ(ω)走査法を用い、照射時間10秒で、3つの垂直な空間区域をカバーしつつ、各10フレームを3セット収集した。フレームの統合、次いで反射指数付け及び最小二乗法による精密化により結晶配向マトリックス及び単斜晶系の格子が得られる。
【0102】
データの半球をカバーする4回の異なるラン(run)で、合計1381のフレームを収集するように、データ収集を設定する。フレーム走査パラメータを次の表にまとめる:
【0103】
【表1】
【0104】
最後のラン(番号4)は、ラン番号1の最初の50フレームの再測定である。これは、結晶及び回折計の安定性をモニターするため、及び結晶の崩壊があればそれを補正するために行われる。
【0105】
回折計の設定には、直径0.5mmのX線ビームを提供する0.5mmモノカップコリメータを含む。発生器の出力を50キロボルト(kV)及び35ミリアンペア(mA)にセットした高精度焦点X線管を使用する。回折計制御、フレーム走査、インデキシング、配向マトリクス計算、セルパラメータの最小二乗法精密化、結晶面測定、及び実際のデータ収集のために、プログラムSMARTを使用する。データ収集ストラテジーを設定するためにプログラムASTROを使用する。
【0106】
データの調製:1381の結晶学的な生データフレームのすべてが、プログラムSAINTにより読み取られ、3次元(3D)プロファイリングアルゴリズムを用いて統合される。得られたデータは変換されて、hkl反射及びその強度及び推定標準偏差を生成する。データはローレンツ及び偏光効果のために補正される。合計で16990の反射が収集され、2.82〜3.96の冗長レベル(redundancy level)の範囲を示し、Rsym数値が、最低2θ反射シェルで2.8%、から、最高2θ反射シェル(55°)で3.2%の範囲となる。結晶崩壊による補正が適用され、1%未満である。単位格子パラメータが8129の反射のセッティング角の最小二乗法により精密化される。単位格子パラメータは:
a=12.1823(10)Å α=90°
b=13.9766(11)Å β=110.823(1)°
c=16.1375(13)Å γ=90°
V=2568.2(4)立方オングストローム(Å
【0107】
指数付けされた測定面に基づいて統合することにより、吸収補正がなされる。吸収係数は0.814mm−1であり最小及び最大の透過は、それぞれ0.8217mm−1及び0.914mm−1である。
【0108】
データの調製はプログラムXPREPを用いて行われる。空間群は、規則正しい消滅に基づきP2/c(14番)と決定される。XPREPは、次の結晶学的パラメータを提供する:インデックス−11≦h≦15、−18≦k≦16、−20≦l≦20とともに5835の特有反射(unique reflections)(Rint=3.17%)。
【0109】
構造の解析はSHELXTL6.1における直接法により行われ、これにより非−H原子のすべての位置が得られる。構造は、SHELXTL6.1においても、フルマトリクス最小二乗精密化により精密化される。非−H原子は異方性の熱パラメータによって補正され、すべてのH原子は理想的な位置で計算され、それらの親原子に依存して補正される。精密化の最終サイクルにおいて、I>2σ(I)で観測された5294の反射は、302のパラメータを精密化するのに使用され、そしてもたらされたR、wR及びS(適合度)は、それぞれ、3.07%、7.65%及び1.049である。二次消衰のための補正は適用しない。差フーリエマップ(difference Fourier map)における最大及び最小の残存電子密度ピークは、それぞれ、0.319e.Å−3及び−0.307Å−3である。精密化はF値ではなくFを用いて実行する。Rは従来のR値に標準を提供するために計算されるが、その関数は最小化されない。加えるに、wRは最小化され関数であり、Rはそうではない。
【0110】
線吸収係数、原子散乱因子、及び異常分散補正は、X線結晶学のためのインターナショナル・テーブルからの値により計算する。
【0111】
【表2】
【0112】
R1=Σ(||Fo|-|Fc||)/Σ|Fo|
wR2=[Σ[w(Fo2-Fc2)2]/Σ[w(Fo2)2]]1/2
S=[Σ[w(Fo2-Fc2)2]/(n-p)]1/2
w=1/[σ2(Fo2)+(m*p)2+n*p],p=[max(Fo2,0)+2*Fc2]/3,m及びnは定数。
本明細書に記載される熱楕円体(thermal ellipsoids)はすべて、40%の確率水準で表現される。
【0113】
調製
調製1:配位子(1a)の調製
【0114】
【化14】
【0115】
工程(a):2−ホルミル−6−ブロモピリジンの調製
500mLの三つ口丸底フラスコを、追加的な漏斗、メカニカルスターラー、及び熱電対鞘を取り付ける。2,6−ジブロモピリジン(20g、84ミリモル(mmol)) をトルエン(150mL)に溶解させ、生じた溶液を、500mLの三つ口丸底フラスコの口に取り付けた添加漏斗に入れる。丸底フラスコに、トルエン(50mL)及びヘキサン(アクロスオーガニック、へール(Geel)、ベルギー)中の1−ブチルリチウム溶液(25mL、63mmol、2.5モル(M)を入れる。得られたトルエン/1−ブチルリチウム溶液を、攪拌し、メタノール/ドライアイス浴中の丸底フラスコに入れて−10℃に冷却する。前記丸底フラスコへのシリンジを経由して、ゆっくりと1−ブチルマグネシウムクロライド溶液(16mL、32mmol、2.0M)をジエチルエーテル(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー、セントルイス、ミズーリ、米国)))に、温度を−5℃に維持しながら添加する。次いで、生じたトルエン/1−ブチルリチウム/1−ブチルマグネシウムクロライド混合物を0.5時間−10〜−5℃で攪拌し、乳状白色溶液にする。2,6−ジブロモピリジン/トルエン溶液を、添加漏斗から1時間にわたり滴状で添加し、この間、丸底フラスコの内容物の温度は−5℃よりも低く(普通は−10℃)維持する。次いで1.5時間〜2時間攪拌を続け、この間、同じ浴温度に保つ。丸底フラスコの内容物の色は、徐々にオリーブグリーンに変わる。ありコート(約0.1mL)を取り、水中で急冷し(2−ブロモピリジンをいずれかの6−ブロモ−ピリジンリチウム/塩化マグネシウムから作るため)、次いで生じた急冷物質をガスクロマトグラフィー(GC)で検査し、何らかの残留2,6−ジブロモピリジンが存在しないか調べる。もしGC の結果、すべての2,6−ジブロモピリジンが消費されたと示されれば、N,N−ジメチルホルムアミド(8.5mL、0.11mol、3Aのふるいで予備乾燥)を、シリンジを経由して迅速に、丸底フラスコの中の内容物に添加する。浴の温度は−10〜−5℃に保つ。5分後にアリコートを取り、水中で急冷し、急冷後の物質をGCで分析する。GCで、2−ホルミル−6−ブロモピリジンのかなり大きなピーク、及び場合によりやっと検出できる程度の2−ブロモピリジンのピークを観察する。水性のモノナトリウムクエン酸塩(200mLの水に150mLを懸濁状/溶解状で;約1M)を丸底フラスコの内容物に加えることによって反応を急冷する。生じた急冷混合物を10分間激しく攪拌し、次いでジエチルエーテル(200mL)で希釈する。生じた有機層を水相から分離し、塩水(塩化ナトリウムの水性飽和物)で一度洗浄する。水相をジエチルエーテルで一度抽出を行い、抽出物を塩水で一度洗浄し、この抽出物を、塩水で洗浄したもとの有機層と一緒にする。一緒にしたジエチルエーテル混合物を硫酸ナトリウム(NaSO)上で乾燥させ、そして回転式に溶液を蒸発させて15g(理論収量16g)の2−ホルミル−6−ブロモピリジンが、黄褐色の固形物として得られる。この2−ホルミル−6−ブロモピリジンを精製せずに、次の工程(b)で使用する。
【0116】
工程(b):6−ブロモ−2−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノピリジンの調製
工程(a)の2−ホルミル−6−ブロモピリジン(72g、0.8mol)と2,6−ジイソプロピルアニリン(73g、0.38mmol)との混合物を、0.3ナノメートル(nm)の孔径のモレキュラーシーブ(6g)及び80mgの4−メチルベンゼンスルホン酸(p−TsOH)を含む無水トルエン500mL中で調製し、混合物とする。この混合物を乾燥した500mLの、凝縮器、オーバーヘッド型機械式攪拌機、及び熱電対鞘を備えた三つ口丸底フラスコに添加する。混合物を窒素ガス雰囲気下に70℃まで加熱し12時間攪拌する。混合物を室温まで冷却し、ろ過し、減圧下で一定重量になるまで揮発分を除去し、6−ブロモ−2−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノピリジンを茶色い油状物として得る。収量は0.11kg(82%)である。GC/MS346(M+)、331、289、189、173、159、147、131、116、103、91、78。この6−ブロモ−2−(2,6−ジイソプロピルフェニルピリジンを更なる精製をすることなく、次の工程(c)で用いる。
【0117】
工程(c):6−(l−ナフチル)−2−[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]ピリジンの調製
1−ナフチルボロン酸(55g、0.32mmol)と炭酸ナトリウム(Na2CO3;84g、0.79mmol)を200mLの脱ガスした1:1水/エタノールに溶解することにより、混合物を調製する。工程(b)の6−ブロモ−2−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミノピリジン(0.11g、0.32 mmol)のトルエン溶液(500mL)を、三つ口丸底フラスコ中で調製し、この丸底フラスコを窒素ガスでパージする。
1−ナフチルボロン酸混合物をトルエン溶液に添加して、最後から2番目の混合物を得る。乾燥箱の内部で、1.0g(0.86mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を50mLの脱ガスしたトルエンに溶解する。生じた脱ガスしたトルエン溶液を乾燥箱から取り出し、それを窒素ガスのパージ下に最後から2番目の混合物に添加する。生じた2相の混合物を激しく攪拌し、4時間〜12時間70℃まで加熱する。丸底フラスコの内容物を室温まで冷却し、水性層から有機層を分離し、水性層を3回トルエン(3×75mL)で洗浄する。有機相と3回のトルエン洗浄液を一緒にし、この一緒にした有機物を3回HO(3×200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO)上で乾燥する。減圧下で揮発成分を除去し、生じた明るい黄色のオイル状物を、メタノールから再結晶して精製し、6−(l−ナフチル)−2−[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]ピリジンを黄色い固形物として得る。収量0.11kg(87%); mp142−144℃。1H NMR(CDCl)δ1.3(d,12H)、3.14 (m,2H)、7.26(m,3H),7.5−7.6(m,5H)、7.75−7.8 (m,3H)、8.02(m IH)、8.48(m,2H)。13CNMR(CDCl)δ23.96, 28.5, 119.93, 123.50, 124.93, 125.88、125.94、126.49、127.04、127.24、128.18、128.94、129.7、131.58、134.5、137.56、137.63、138.34、148.93、154.83、159.66、163.86。GC/MS 396(M)、380、351、337、220、207、189、147.
【0118】
調製2:配位子(2a)の調製
【0119】
【化15】
【0120】
2−ブロモ−6−アセチルピリジンを調製する。N,N−ジメチルホルムアミドをN,N−ジメチルアセトアミドと置き換えること以外は、調製1の手順を繰り返して配位子(2a)を生じるようにして、配位子(2a)を調製する。
【0121】
調製3:配位子(3a)の調製
【0122】
【化16】
【0123】
1−ナフチルボロン酸を2,6−ジメチルフェニルボロン酸と置き換えて配位子(3a)となるようにすること以外は、調製1の手順を繰り返して、配位子(3a)を調製する。
【0124】
調製4:配位子(4a)の調製
【0125】
【化17】
【0126】
1−ナフチルボロン酸をフェニルボロン酸(PhB(OH))に置き換えて配位子(4a)となるようにすること以外は、調製1の手順を繰り返して、配位子(4a)を調製する。
【実施例】
【0127】
本発明の実施例
実施例1:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(1)の調製
【0128】
【化18】
【0129】
グローブ・ボックス内で、塩化鉄(II)(FeCl)のペレットをガラス瓶中に 秤量し、そして無水ブタノール(15ミリリットル(mL))中で懸濁させる。混合物は、ペレットが砕けるように一晩激しく攪拌する。黄色い混合物は、80℃のアルミニウム加熱ブロック内に置く。調製1の黄褐色の固体配位子(1a)が、攪拌混合物にゆっくりと添加される。混合物は赤くなり、そして80℃で15分間攪拌される。室温に冷却した後、赤い固形物が生成する。混合物は冷凍庫中に一晩置かれる。混合物は、中くらいのガラスフリットを通してろ過される。明るい赤色の固形物は冷たいブタノールで洗浄される。ろ液は暗褐色である。明るい赤色の固形物は真空下で数時間乾燥して収量0.38gを得る。H−NMRをCDCl(前記固形物はd−ベンゼンに不溶)中でとる。溶液中では色がオレンジに変化する。グローブ・ボックス中で、赤い固形物の試料がNMRチューブ内に充填され、最少量の塩化メチレンが添加される(約0.7mL)。チューブを満たすために、上部にヘキサン層が添加される。前記の二層はグローブ・ボックスの後ろの方に静置する。NMRチューブ内にX線クオリティーの(1)の結晶が生じる。H−NMR(CDCl):δ(ppm)=−84.4、−48.6、−16.6、−13.6、−8.5、−0.5、1.5、2.3、3.1、5.2、5.5、6.0、8.2、18.8、50.3、54.8。(1)の結晶につきX線解析を行う。図1は、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(1)のX線解析により導かれた単結晶構造のオークリッジ熱楕円体プロット(ORTEP(Oak Ridge Thermal Ellipsoid Plot)描写である。図1に見られるように、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(1)は、上方で二次元で描写され、三次元では四面体の、鉄と単一配位子(1a)との錯体の構造を有する。
【0130】
実施例2:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)の調製
【0131】
【化19】
【0132】
グローブ・ボックス内において、CoCl(0.30g、2.3mmol)を1−ブタノール(15mL、アルドリッチから入手した無水物)中で懸濁させ、30分間攪拌する。混合物を80℃のアルミニウム加熱ブロック中に置き30分間攪拌する。調製2の配位子(2a)(0.93g、2.3mmol)を固形物として、80℃で攪拌している溶液に(ゆっくり)添加する。混合物は緑色に変わり、そして30分間攪拌される。混合物は−40℃に冷却され、ガラスフリットを通してろ過される。緑色の固形物は冷たいブタノール及びジエチルエーテルによって洗浄される。緑色の固形物は真空下で約10分間乾燥してH−NMRをCDCl中でとる:まだブタノールが存在すると思われる。固形物は真空下で一晩乾燥される。H−NMRは引き続きブタノールが存在することを示す。固形物を5mLのCHClに懸濁させる。混合の後、約15mLのヘキサンが懸濁液に添加される。混合の後、固形物はガラスフリットを通してろ過され、真空下で乾燥して、(2)の収量0.87g(収率71%)を得る。H−NMRがCDCl中でとられる:δ(ppm)=−48.8、−20.1、−13.6、−8.6、−7.3、−4.4、−1.4、4.2、5.7、6.3、7.0、8.8、9.7、13.7、41.4、46.5、61.3、63.5。
【0133】
実施例3:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(3)の調製
【0134】
【化20】
【0135】
グローブ・ボックス内において、CoCl(0.33g、2.5mmol)を1−ブタノール(15mL、アルドリッチから入手した無水物)中で懸濁させ、30分間攪拌する。混合物を80℃のアルミニウム加熱ブロック中に置き30分間攪拌する。調製3の配位子(3a)(0.94g、2.5mmol)を固形物として、80℃で攪拌している溶液に(ゆっくり)添加する。混合物は緑色に変わり、そして30分間80℃で攪拌される。混合物は−40℃に冷却され、ガラスフリットを通してろ過される。生じた緑色の固形物は冷たいブタノール及びジエチルエーテルによって洗浄される。緑色の固形物は真空下で約10分間乾燥してH−NMRをCDCl中でとる:まだブタノールが存在すると思われる。固形物は真空下で約1時間乾燥される。固形物を5mLのCHClに懸濁させる。混合の後、約15mLのヘキサンが固形物に添加される。混合の後、固形物はガラスフリットを通してろ過され、真空下で乾燥して、(3)の収量1.03g(収率81%)を得る。H−NMR(CDCl):δ(ppm)=−18.9、−15.7、−8.7、−3.7、1.1、2.0、3.4、3.8、4.0、12.9、51.6、52.1。
【0136】
実施例4:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(4)の調製
【0137】
【化21】
【0138】
グローブ・ボックス内において、CoCl(0.33g、2.5mmol)を1−ブタノール(15mL、アルドリッチから入手した無水物)中で懸濁させ、30分間攪拌する。混合物を80℃のアルミニウム加熱ブロック中に置き30分間攪拌する。調製4の配位子(4a)(0.86g、2.5mmol)を固形物として、80℃で攪拌している溶液に(ゆっくり)添加する。混合物は暗緑色に変わり、そして30分間80℃で攪拌される。混合物は−40℃に冷却され、ガラスフリットを通してろ過される。緑色の固形物は冷たいブタノール及びジエチルエーテルによって洗浄される。暗緑色の固形物は真空下で約10分間乾燥してH−NMRをCDCl中でとる:まだブタノールが存在すると思われる。暗緑色の粉末は真空下で約1時間乾燥される。固形物を5mLのCHClに懸濁させる。混合の後、約15mLのヘキサンが固形物に添加される。混合の後、固形物はガラスフリットを通してろ過され、真空下で乾燥して、(4)の収量0.673g(収率56%)を得る。H−NMR(CDCl):δ(ppm)=−131、−33.4、−18.2、−12.9、−11.2、−5.5、−0.2、3.3、4.6、5.1、6.6、46.1、58.3。
【0139】
実施例5:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(5)の調製
【0140】
【化22】
【0141】
グローブ・ボックス内において、CoCl(0.227g)を1−ブタノール(15mL、アルドリッチから入手した無水物)中で懸濁させ、30分間攪拌する。混合物を80℃のアルミニウム加熱ブロック中に置き30分間攪拌する。調製1の配位子(1a)(0.686g)を固形物として、80℃で攪拌している溶液に(ゆっくり)添加する。
混合物は緑色に変わり、そして30分間攪拌される。混合物は−40℃に冷却され、ガラスフリットを通してろ過される。緑色の固形物は冷たいブタノール及びジエチルエーテルによって洗浄される。真空下で約1時間乾燥した後に、固形物のH−NMRをとる:(5)に一致する;(5)の収量0.756g。H−NMR(dベンゼン):δ(ppm)=−132.4、−49.0、−18.3、−15.3、−13.5、−7.0、−6.3、−2.4、−0.3、3.0、4.1、5.2、8.9、10.6、13.6、36.2、49.2、53.9。
【0142】
実施例6:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(5)により触媒された、1−オクテンのヒドロアルミニウム化
別個の反応段階において、触媒量(1mol%)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(5)をトルエン及び過剰の1−オクテンと混ぜ合わせ、そして次にトリイソブチルアルミニウム(1−オクテンに対して0.5モル当量)を添加する。室温で攪拌する。既述のようにして反応収量を決定する。1モル%の触媒を投入した場合、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(5)は1−オクテンからオクチル含有アルミニウムに2時間で73%までの収率で転化する。
【0143】
実施例7:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(5)に触媒された、トランス−4−オクテンの異性化/ヒドロアルミニウム化
1−オクテンをトランス−4−オクテンに置き換えて異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(5)を用いて実施例6の手順を繰り返して、14時間で7%までの収率のオクチル−含有アルミニウムを得る。
【0144】
実施例8:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(5)に触媒されたトランス−2−オクテンの異性化/ヒドロアルミニウム化
異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(I/HC)(5)の触媒量を秤量し(0.0084g)、ポリテトラフルオロエチレンで被覆したマグネチック攪拌棒及びポリテトラフルオロエチレンで内側を覆ったふたを含む、ガラス製のねじぶたをしたバイアルに入れる。次いでバイアルにトランス−2−オクテン(1.0mL)を添加し、予備混合物を形成する。2分から3分攪拌し、次にトリイソブチルアルミニウム(オクテンに対して0.25 モル当量、約0.32g)を予備混合物に滴状で添加すると、予備混合物は暗色になる。生じた反応混合物を45分間攪拌し、次いで0.25mLのヘプタン、これは内部標準としての役目を持つ、を添加する。ヘプタン含有混合物には他の成分は存在しないことに留意すべきである。ヘプタン含有混合物をアルミニウム加熱ブロック内に入れ、60℃で18時間加熱する。ヘプタン含有混合物を冷却し、トルエン(3mL)で希釈し、そしてメタノールで急冷する。オクタンの量を、記述のようにGCで分析する。結果の示すところでは、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(5)は168倍転換し、そして反応はトリイソブチルアルミニウム中のイソブチル基の56%を1−オクチル基で置換する。
【0145】
実施例9:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)、(3)、(4)、又は(5)により触媒された、トランス−2−オクテンの異性化/ヒドロアルミニウム化
実施例8の手順と同じようにして、別個の反応段階において、触媒量(0.25モル%)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(I/HC)(2)、(3)、(4)、(5)又はCoClからなる比較触媒を過剰のトランス−2−オクテン(トリイソブチルアルミニウムに対して4モル当量)と混ぜ合わせ、次いでトリイソブチルアルミニウムを添加うする。生じた反応混合物を60℃で加熱する。触媒を0.25モル%投入した場合、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)、(3)、(4)、及び(5)はそれぞれ、トランス−2−オクテンをオクチル含有アルミニウムに転化する。既述のようにして、40分(0.67時間)、3時間、及び17時間の加熱後に反応収量を決定する。結果を下記表1に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
表1のデータによって示されるように、実施例(1)から(5)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)から(5)は、トランス−2−オクテンからのオクチル含有アルミニウムの調製を触媒し、最大約250の転換率(turnover)をもたらす、ここで転換率とは、オクチル含有アルミニウムの収量をミリモル(mmol)で表したものを、投入した触媒のmmol数で割ったものを意味する。
【0148】
実施例10:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)又は比較触媒Ni(COD)により触媒された、トランス−2−オクテン、トランス−3−オクテン、及びトランス−4−オクテンの混合物の異性化/ヒドロアルミニウム化
実施例8の手順と同じようにして、別個の反応段階において、触媒量(0.13モル%、0.017mmol)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(I/HC)(2)又は比較触媒Ni(COD)を、2.0mLのISOPAR(登録商標)中の、合計12.7ミリモル(mmol)のトランス−2−オクテン、トランス−3−オクテン、及びトランス−4−オクテンと混ぜ合わせ、次いで、4.2mmolのトリイソブチルアルミニウムを添加する。生じた反応混合物を60℃で加熱する。触媒を0.13mol%投入した場合に、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)及び比較触媒Ni(COD)は、それぞれ、トランス−2−オクテン、トランス−3−オクテン、及びトランス−4−オクテンを、オクチル含有アルミニウムに転化する。既述のようにして、30分(0.50時間)、2時間、4時間、及び19時間の加熱時間の後で反応収量を決定する。結果を下記の表2に示す。
【0149】
【表4】
【0150】
表2の結果に示されるように、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)は、内部オレフィン、トランス−2−オクテン、トランス−3−オクテン、及びトランス−4−オクテンを、オクチル含有アルミニウムに、長時間にわたり収率を増加させつつ転化する。対照的に比較触媒Ni(COD)では、オクチル含有アルミニウムの収率が長時間にわたり増加することはなく、又は、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)に見られる増加と比較して相当低い増加しか示さない。従って、異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)は明らかに、比較触媒Ni(COD)よりも、60℃においてより安定である。異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)を用いた反応は、転換率100を越えて進行する。
【0151】
実施例11:異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(2)により触媒された、トランス−2−オクテン、トランス−3−オクテン、及びトランス−4−オクテンの混合物の異性化/ヒドロアルミニウム化
異性化/ヒドロアルミニウム化触媒(I/HC)(2)を用いて、反応混合物が80℃で加熱されること以外は、実施例10の手順が繰り返される。反応時間15時間の後で、オクタンの反応収量は1.4mmol(収率11%)である。
【0152】
実施例を含めた上述の説明に示されるように、式(I)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒、式(II)の異性化/ヒドロアルミニウム化触媒を含めて、は、式(A)のトリアルキルアルミニウム前駆物質と、式(B)の内部オレフィン、式(E)のアルファ−オレフィン、又は両者との、式(D)のトリアルキルアルミニウム化合物生成反応を触媒するのに有用である。
【0153】
本発明を、好適な実施形態に従って以上のように説明してきたが、本発明は本開示の精神及び範囲内において変更を加えることが可能である。従って、この出願は、本明細書に開示された一般原則を用いたこの発明のいかなる変形、使用、及び改作をもカバーすることを意図している。さらに、この出願は、この開示から発展したものであって、本発明に関連する分野における既知の又は慣用的な実施に属し、及び次の特許請求の範囲の範囲内となるものをカバーすることを意図している。
図1